LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2004/3/18 西荻窪 アケタの店
出演:AKETA& Two girl
hunters
(明田川荘之:p,オカリーナ,翠川敬基:vc、吉野弘志:b)
だいぶ暖かくなってたのに、雨がぱらついて急に冷えこんだ夜。ちょいと風邪引いてしまい、午後は仕事休んだ。
午後は薬飲んで爆睡。そして頭が半分ボーっとしたまま、アケタの店へ行く。
演奏前に明田川がざっとそれぞれに曲の流れを説明してた。
ライブは20時ごろから始まる。
この顔ぶれでのセッションは、聴くの初めて。楽しみだった。
まずは無伴奏で明田川が、イントロを弾いた。
翠川も吉野も譜面を見つめながらピアノを聴く。
やがてピアノはテーマの旋律へ。セッションなためか、ルバートは控えめ。
繰り返されるメロディの途中から、翠川がユニゾンでそっとチェロを乗せた。
<セットリスト>
1.テイク・パスタン
2.三階節〜侍一本ブルーズ
3.アルプ
4.アケタズ・ブルーズ
(休憩)
5.I
closed my eyes
6.チンギス・ハーンの二頭の駿馬
7.Blues in five
8.インバ
9.Cruel days
of life〜(?)
(2)の前半と(5),(6)を除いて、明田川のオリジナル曲。
ドラムレス、オール・アコースティックと変則的なアンサンブル。この日は「男子ニ楽坊」だ、とMCで明田川が笑って紹介してた。
(3)や(6)はライブで久しぶりに聴く。弦楽器2本の編成を意識して、選曲したのか。
かなりきっちりした構成の"テイク・パスタン"は、探りあいっぽい雰囲気も。
しかし、美しいオブリを弓で入れるチェロが、まず聴きもの。
明田川も音数を少なくして、アンサンブルの響きを生かす。
ベースは音量を絞り気味。シンプルに刻んでた。
オカリーナのソロで三階節のテーマをひとしきり吹いたあと、"侍一本ブルーズ"へ。
今晩はこの曲に限らず、どれもピアノでイントロをつけてた気がする。
ソロピアノのライブで幾度も聴いた曲だから、かなり音の隙間を減らした伴奏なのが分かる。
"侍一本ブルーズ"では翠川が、フリーなグリサンドを取り混ぜたプレイで応える。"テイク・パスタン"ではクラシカルなメロディのみだったが。
アンサンブルが次第に溶け始めた。
最初の曲では指弾きのみだった吉野も弓を使い分け、重厚なアンサンブルを組み立てる。
チェロがソロのとき、明田川はアフリカン・ベルを掴んでゆっくりと降った。
シンプルなリズムは、なおさらソロを盛り立てる。
ベースのソロはじわじわとテンションをあげていく。
吉野の楽器はちょっと普通と違う。弦巻きの上まで一弦だけ伸びていた。
より低音まで弾けるようにって工夫なのか。初めて見たな。
チェロからベースにソロが移ると、今度はアフリカン・ベルがより速いテンポで何度も降られた。
続く"アルプ"で奏でられた、ピアノのイントロって聴き覚えない。
冒頭はやはりインテンポ。
演奏が進むにつれ(1)の時と逆に、フレーズごとでピアノはテンポを揺らす。
しかしほかの二人は、迷わずリズムに同期した。
中盤でフリーに変化。きっかけは翠川と明田のみの演奏だった。
チェロがソロを弾いてると、ピアノが童謡っぽいメロディをぽろぽろ鳴らす。
チェロがあわせて、サウンドは次第にフリーへ突き進む。
ベースも加わり音が収斂した。メロディの断片が散発し、噛み合う。
いったん"アルプ"のテーマへ戻り、曲を終えた後。すぐさま"アケタズ・ブルーズ"へ繋げる。
吉野の無伴奏ソロが聴きもの。生音がアケタの店内へ拡がった。
わずかにスラップさせ、猛烈に低音を唸らせた。
絶妙のタイミングで、吉野のソロへチェロが薄くかぶさる。
一呼吸置いて、ピアノも加わった。
"アケタズ・ブルーズ"のラストは軽くクラスターで。前半は1時間くらい。
休憩を挟んだ2ndセット、まずは"I
closed my eyes"から。
最近の深夜ピアノソロ・ライブでは超定番なこの曲を、ピアノとベースのみの編成で演奏する。
ストレートなジャズで幕を開けた。
「短めに」と演奏前に明田川が言ってたが、ソロ交換もじっくりやられた。
翠川が加わっての"チンギス・ハーンの二頭の駿馬"。これ、ライブで聴くのひさしぶり。
雄大なメロディをユニゾンで翠川が弾くと、素晴らしく気持ちいい。
メロディとオブリガードを使い分け、チェロは曲に広がりを持たせた。
今夜の翠川はほぼ弓を使った演奏。フリーなプレイは抑え気味か。
だからこそ、たまに繰り出す指弾きが効果的だった。
"Blues in
five"は聴き覚えない曲。
最初は二種類のオカリーナを使い分け、明田川はアップテンポのアドリブを聴かせる。
ひとしきりオカリーナでセッションしたあと、おもむろにピアノへ向かった。
今夜の圧巻は、なんと言っても"インバ"。
時間はすでに、22時半を軽くまわってたはず。
昔は良くやった曲だそう。ぼくは昨年末のセッションで聴いて以来かな。 濃密な空気が充満し、音が絡み合う。夢中で聴いていた。
吉野のベース・ソロでは翠川が弓を置き、ピチカートで支える。
明田川も音量を控え、ベースを中心にサウンドが静かに緊張した。
いっぽうピアノソロになると、明田川は無伴奏で盛大に唸りながら弾きまくる。
チェロのソロもばっちり。奔放に旋律が輝いた。
今夜最後は吉野に明田川が捧げた曲、"Cruel days of
life"。前曲と同じように、アンサンブルが溶け合って心地いい。
テンションを保ったままソロが交錯し、テーマへ戻りかけたころ。
明田川が強引に、コミカルな違う曲を弾き始めた。
アンサンブルは一呼吸置いて、明田川のメロディにあわせる。
ピアノを軽くひっぱたきながら、立ち上がって鼻歌を始めた。
マイクが入ってない、とボヤきつつ「あなた私のなんなの〜♪」と繰り返す。
翠川がさりげなく"Cruel〜"のテーマを弾くと、その瞬間はピアノで曲へ戻りかける。
しかし結局はコミカルな曲を続けた。ラストをは軽めのクラスター。腕を鍵盤に叩きつける。
が、そのままコーダへ行かず、演奏途中で「終わりです」とつぶやいた。
中途半端に曲が続く中、かまわずステージを降りてしまう。
戸惑ってたら、吉野や翠川がすばやく演奏の幕を下ろす。拍手しそびれちゃったな。
生楽器の響きを強調しつつ、アンプを効果的に使って音のバランスが崩れることもない。
ドラムレスな編成が良い方向に働き、リズム高い自由度ならではの演奏だった。
もしドラムがいたら、あそこまでくるくるテンポが変わらなかったんじゃないか。美しい世界を堪能できた。
明田川がアケタの店でライブをやる常として、今夜もきちんと録音されていた。
ぜひ、CD化を。