LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

 03/10/12   西荻窪 アケタの店

   〜ずばり3管だけex.〜
出演:山本ヤマ+忍田耕一+金子泰子
 (山本ヤマ:tp flh、忍田耕一:tb flh、金子泰子:tb frh)

 バンド「スマン」を率いる山本ヤマの特別企画で、ホーンのみを抽出した顔ぶれ。
 先月アケタで行われた、山本+金子デュオのセッションに次ぐ企画か。
 今までスマンは未体験。山本ヤマの演奏を3年前に明田川のセッションで聴いたのみ。
 でも3管のみってどんな音楽か興味あって、行ってみた。

 店にはいると、メンバーは譜面を広げてあれこれ準備に余念がない。
 もっとも雰囲気はリラックス。ゆったりおしゃべりしながらだった。
「この楽器はピッチが高いのよ〜。なんでだろ」
 ピアノでチューニングをしながら、金子がホルンを吹いてぼやいてた。

 準備万端ととのい、忍田はタバコをふかす。
 ちょっと一息つき、20時前くらいに始まった。観客は10人弱ってところ。
 PAは使わず、生音で勝負した。全員ボリュームは抑え目で、ホルンもきちんと聴こえたよ。

 演奏が始まると、予想と違って戸惑った。
 譜面をじっくり見ながら、ディキシー風に演奏する。
 アドリブはあるかもしれないが、ほとんど感じさせない。あらかた書き譜のようだ。
 てっきりもっとフリーかと思ってたよ。

 でも演奏は気持ちいい。
 きれいなメロディを3管にアレンジし、トロンボーン二本が低音部分を受け持つ。山本のトランペットがゆっくりメロディを奏でた。
 こういう音楽、久々に聴いたな。
 クラシカルな要素もあるが、ジャズにくるまれてる。不思議な感覚だった。

 ステージはさくさく進む。前半で5〜6曲やったかな。
 山本のMCによれば、この編成で2セットのワンマンやるのは初体験だそう。
 「え、そうなの?」と、金子も驚いていた。案外その辺は事前説明してなかったみたい。
 そもそもこの3人の共演は初めて。

 途中で金子がホルンに持ちかえる。
 「さめると水がたまるの・・・」
 あっちこっちの管を片っ端から抜いて、掃除する。
 「ホルンって、全部のばすと6m位になるらしいよ」
 忍田が話題を唐突にふって、しばし盛り上がっていた。

 全般的にとにかく穏やかな雰囲気のライブ。
 いちばん印象的だったのが山本の表情だ。

 演奏中は真剣に譜面やメンバーの動きをにらむが、曲が終わったとたんに満面の笑みを浮かべる。
 にこにこで次の譜面を準備するさまは、すっごく嬉しそう。
 誰よりもステージを楽しんでいた。

 前半は「サニー」のカバーを織り込みつつ、「ツバメと太陽」「S-dur」などを演奏。山本の友人が書いた曲らしい。
 山本や忍田がフリューゲル・ホーンにもちかえて吹く編成もあった。

 忍田はフリューゲル・ホーンを吹き始めて間もないらしい。
「すごい緊張した・・・でもうまくいったな」
 曲が終わったとたん、安堵の言葉を漏らす。「そうそう、リハとは大違い」って、金子らも喜んでいた。

 最初はこもり気味ながら、曲を重ねるにつれ音色が膨らむ。 
 とはいえどこか遠慮がち。もっとばりばり押すのも一曲くらい聴きたかったな。
 こじんまりしたジャズ風室内楽のようだ。

 1stセット最後は「この日のために準備した」というファンク。
 「ジミヘンに聴かせたくないな〜」
 演奏前に忍田がつぶやく。ジミヘンの曲なのかな。ちょっと曲名が思い浮かびませんでした。

 ファンクとはいえ、どこかゆったりムード。
 アンサンブルはキュートで楽しかった。
 前半は約40分くらいの短めなセットだ。
 
 後半の空気も基本はかわらない。
 けれどもアンサンブルはさらに練られて、凝った響きに深まった。

 「組曲」「経過」などを披露。「経過」は新曲でタイトルがつく前、「経過中」って意味だそう。
 これも金子が「そうなの?知らなかった〜」って意外がってたな。

 「忍田のテーマソングで"ドンガバチョ"がどうこう」いうMCで演奏された曲が聴きどころか。
 トロンボーンをフィーチュアした佳曲だった。

 「最後はスタンダードを。"Sunny side of the street"」
 さくっと演奏されたこれが、最もジャズっぽかった。 
 3管のみだとやはりディキシー風のニュアンスが強まる。

 トロンボーン2本にバックを任せ、山本はやわらかなフレーズでじっくりソロを取った。
 トランペットの音量が小さめで、ちょっと聴き取りづらくて惜しい。

 キュートでいい演奏だった。
 ほかの二人へソロ廻しを期待したので、あっさり終わって物足りないや。
 
 観客から盛大な拍手が飛ぶ。が、アンコールは特になし。
 鳴る拍手へ向かって、山本がコミカルにガッツ・ポーズ。
 腕を振り下ろすタイミングにぴたりと合わせ、拍手が止まって可笑しかった。

 後半も40分強。すべてが譜面を前提とした、アンサンブル重視のライブだった。
 ぼくの好みだと、もうちょいアドリブ要素を多くして欲しいかな。

 アットホームな雰囲気が常に漂う。山本のMCもくつろげた。
 とにかくほのぼの。まったりさが似合う、穏やかなひとときだった。

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