LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/9/13   吉祥寺 Star-Pins cafe

   〜月下楽遊(満月の夜に)〜
出演:渋谷毅オーケストラ、DUO、クワイエット・ストーム、
    清水くるみトリオ、渋谷毅エッセンシャル・エリントン


 渋谷オケの新譜「ずっと西荻」レコ発を記念・・・というより「兼ねて」、イベントが組まれた。
 夜中の0時半に開演、「始発まで演奏」がコンセプト。
 この手のジャズのイベントはあんがい珍しい。

 恐縮ながら「動員はあっさりだろ」とたかをくくり、スタパへ行ったら。
 開演時間廻ってるのに入場を待つ客がずらり。驚いた。
 中盤で一度フロアの客を詰めさせ補助椅子を出したのに、それでも立ち見が出る盛況の入り。150人くらい入ったか。
 これほどとは・・・甘く見てました。

 長丁場のライブということで、MCが入った。珍しい。
 でもこれは正解でしょう。バンド・チェンジのいい場つなぎだった。

渋谷毅エッセンシャル・エリントン
 (渋谷毅:p、峰厚介:ts、松風鉱一:as,cl,fl,bs、関島岳郎:tuba、外山明:ds、清水秀子:vo)


 時間は0時40分。10分押しで始まった。
 なんだかかなり眠くって・・・帰ろうか真剣に悩んだ。

 音楽がまた気持ちいいんだ。タイトルどおり、エリントンばかりらしい。
 ベースをチューバに置き換え、ふわりと優しいハーモニーを聴かせた。

 渋谷のピアノは耳をくすぐる。
 心地よいが、眠気覚ましにならないんだよぅ。くう。
 初手から半分うとうとしつつ聴いてました。
 
 異物感あるのは外山のドラム。1曲目からいきなり立ってドラムセットをランダムに叩いた。
 4ビート感皆無で、不安定なリズムのノリが楽しめる。
 そう、あくまで異物感。グルーヴが変になることは皆無だった。
 
 外山のドラムじゃなかったら、熟睡してたかも。
 2曲目からは、立ったり座ったりでドラムを叩く。
 シンバルを鋭く刻み、スネアのリムをぴしりとはじく。
 音数は少なめ。断片のようなリズムだった。

 渋谷はピアノだけをプレイ。
 無造作に紡がれるメロディの素晴らしいこと。
 彼のライブへ積極的に足は運べてない。だが聴くたびに彼のピアノに惹かれる。

 ホーン隊のソロも悪くない。関島はソロではなくアンサンブルを支える役割って印象だ。
 松風は「担当楽器はreeds」と紹介されたとおりアルトサックスだけでなく、曲によってクラリネットやフルート、バリトンサックスを吹いた。

 まず4曲ほどインストでプレイ、その後にボーカルを迎える。
 清水秀子の歌入りでも4曲くらいやったかな。
 もうしわけないが、ボーカルが入った時点でより眠気が強まる・・・。

 さほど張り上げないが、しっかりした歌声だ。
 けれど主導権を取るほどの強引さが無く、こじんまりまとまってしまう。

 「スイングなければ意味ないね」のスマートな演奏が気持ちよかった。
 最後は確か、「A列車で行こう」。
 このバンドに限らず、ほぼ50分くらいの持ち時間だった。

清水くるみトリオ

 (清水くるみ;pf、是安則克:b、藤井信雄;ds)


 清水くるみのピアノを聴くのは初めてだが、面白かった。
 しょっぱなかから早いテンポ。硬質な音色で鍵盤を叩く。オリジナルかな。
 いくぶんそっけなく、きれいなメロディに惹かれる。

 凛として、優しさも兼ね備える。うまく言えないが、そんなピアノだった。
 フリー要素はなく、オーソドックスにピアノを弾く。

 編成はオーソドックスなトリオだが、瑞々しい清水の音がバンドを引っ張る。
 サイドメンも見事に応えた。
 是安はウッドベースを軽々扱い、重みを加える。
 いっぽう藤井のドラムはシャープに刻んだ。ハイハットの勢いが痛快。

 全部で5曲くらいやったか。いっきに眠気が飛ぶ。
 持ち時間が終ると、ピアノから立ち上がる清水。
 ひらりとサイドメンへ手を振り、軽く紹介。 
 そのまま無造作にステージを降りてしまった。

 いさぎよくもあっけないステージだ。
 清水くるみはアケタの店で定期的にライブやってる。今度ワンマンをぜひ聴こう。

クワイエット・ストーム
 (秋山一将:g、石渡明廣:g、峰厚介:ts、岡田勉:b、セシル・モンロー:ds)


 当初は"with金子マリ"の告知ながら、なぜか会場に到着せず。
「間に合えば渋オケで共演してもらいましょう」
 と、司会者が弁解する。

 深夜で眠いのか、そもそもこういうドタキャンに慣れっこなのか。
 金子マリの不在を告げられた観客が、ブーイング無しに素直に受け入れてたのが可笑しかった。

 クワイエット・ストームも聴くの初めて。先日、地方ツアーが終ったばかりとか。
 秋山がリーダーみたい。
 ブルーズ要素を取り入れたジャズをクリアなアレンジで演奏した。
 正直ちょっと趣味が違う。フュージョンよりに感じたな。

 石渡のギターのサイケに歪むフレーズには惹かれるが、それ以上のめりこめなかった。
 もっとも深夜でいいかげん疲れてたからなぁ。万全の体調だったら印象変わるかも。

 セシル・モンローのドラミングがタイトで気持ちいい。
 ハイハットを鋭く叩くのに、どこか余裕あり。
 軽やかなスティック・ワークは見てて飽きなかった。

DUO
 (渋谷毅:p、小川美潮:vo)

 
 「お休みになっても、聴いて下さっても。これから30分間寛いでください」

 軽やかに挨拶して小川美潮が挨拶した。
 始まりは夜中の3時半頃かな?だいたい30分押してたはず。
 はにわオールスターズのCDで、美潮の歌は聴いたことある。
 が、まったく変わらぬ伸びやかな声にびっくりした。

 渋谷のピアノはまさにバッキング。隙間の多いフレーズをそっと抑える。
 すっと背筋を伸ばして、美潮はマイクの前に立った。
 何も小細工なし。声の魅力だけで観客を引き寄せる。
 素晴らしいライブだった。これもワンマンで聴きたい。

 ときおり手を軽く踊らせ、さりげなくフェイクを入れる。
 美潮節とも言える、独特のフレーズ使い。
 リバーブはほとんどなし。生音で聴いてるような、きれいなPAだった。

 ハイトーンを難なく出すテクニックがすごい。
 声を張り上げる部分はほとんどなく、クルーナーっぽい歌ばかり。
 一曲くらい張って欲しかった。最近はそういうタイプ、歌ってないのかな。

 オリジナルがほとんどだと思う。
 一音一音確認するように、くっきりと歌詞が聴こえる。
 一曲だけハンドマイクだったが、あとはスタンドマイクのまま。存在感が素敵だ。
 ボケ倒しのMCは、深夜聴くと腰砕けでした・・・。

 前置き無しにジョビン=ニウトン作"ワン・ノート・サンバ"の、カバーを唄い始めてびっくり。
 歌詞はオリジナルのニュアンスを見事に取り入れてる。絶妙の歌だった。
 
 渋谷は曲が終わるたびに、腕組みして頬杖をつく得意のポーズ。
 二言三言、美潮と相談して曲を決める。ピアノの上、オルガンへ広げた譜面から曲を探した。
 たまにコップの酒(?)をぐびりと飲む。

 曲によっては立ったままでピアノを弾いた。
 間奏で軽くソロを取る以外、ほとんど前面に出ない。
 あれは確か最後のほうの曲。ふっと弾きやめ、美潮がアカペラで唄う。
 ワンフレーズ終ったところで、するりと渋谷のピアノが支えるシーンが印象に残ってる。

 実際には30分以上やってたろう。
 キュートな美潮の歌声に癒された好ライブだった。

渋谷毅オーケストラ
 (渋谷毅:p,org、峰厚介:ts、松風鉱一:as,fl,bs、林栄一:as、 
  津上研太:ss,as、松本治:tb、石渡明廣:g、上村勝正:b、古澤良治郎:ds)


 さて、真打の登場。
 冒頭は渋谷がオルガンをプレイ。
 もやもやとしたフリーがあたりを包み、おもむろに松本がきっかけのフレーズを吹く。
 おなじみ「Great Type」だ。

 ホーン隊のめまぐるしいリフも快調だった。
 曲が終わったところで渋谷のMC。
「これをやらないと始まった気がしないという。・・・さ、次なにやろうか」
 あとはなにも決めてなかったのか。松風あたりとちょっと打ち合わせ、次の曲を選ぶシーンが多かった。

<セット・リスト>
1.Great Type
2.もはやちがう町
3.Aita`s Country Life
4.Emerald Cove
5.Such Sweet Thunder
6.Ballad
7.Brother
8.Soon I will be down with the troubles of this world

 たぶんセットリストはこんな感じ。寝ぼけてて間違えてるかも。
 (2)〜(5)までが新譜からの曲。
 (2)では林がソプラノ・サックスを吹くのが新鮮だった。

 渋オケは気持ちいいんだが、それが仇となる。猛烈に眠気が襲ってきた。
 一人一人のソロは比較的長めだが、ソロ回しをほとんどせずにさくさく曲が進む。
 だが眠気で集中力が続かない。しみじみ悔しい。

 一曲毎に渋谷はこまめにMCを入れた。曲名と作曲者を軽く紹介するくらい。
 「金子マリさん、こないですね」
 と、中盤でぼそっとつぶやいた。

 (6)の前後で1時間くらいたっている。
 持ち時間はここまで。
 だが金子マリを待ってか、演奏をそのまま続けた。
 (7)や(8)は渋谷がさくっと曲を決めてた。

 (8)ではテーマのフレーズに低いハミングがかぶさる。
 金子マリ登場か?とあたりを見回したが・・・どうやら古澤が歌ってたみたい。

 心地よい雰囲気でライブが進み、(8)が終ったとこで渋谷が時間を確認する。
 「5時15分か。始発もとっくに動いてますね。今夜はここまで」
 あっさり継げてステージを降りた。
 渋オケの演奏は1時間半くらい。

 眠気に耐えかねすぐさま帰っちゃったが、あのあと「ロータス・ブロッサム」でしめたんだろうか。
 なんだか尻切れトンボな印象が拭えない。

 しかし長丁場でしんどかったが、時間はあっというまにたった気分。
 音楽がジャズだったせいかな。
 いずれにせよこの手のライブへ行く時は、万全の体調で臨もうっと。

 なおこの日は全員にCD−Rのプレゼントあり。
 家内制手工業でパッケージは渋谷毅自ら、秋葉原へ買いに行き値切ったとか。
 中身はcarcoレーベルでの渋オケのサンプラー。
 渋オケの過去4作から一曲づつチョイスされ、石渡のバンドMull houseの1stからも一曲入る。

 目玉は渋谷毅の未発表音源。
 松風の作品「Blue Blackの階段」をピアノソロで演奏してる。
 今年4/1に録音された、スタジオ未発表音源だ。

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