LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/2/8   吉祥寺 曼荼羅

出演:ricca/シナモンド/月下美人/あめあめ


 これまで聴いたことないミュージシャンのポップスを、味わいたい気分だった。
 今夜は渋谷でさかな、合羽橋で塩ととのライブがあったけど。近場のライブハウスのスケジュールをあれこれ見比べて、曼荼羅へ行くことにした。

 店内はそこそこの入り。ここは椅子が堅くて、長時間座ってると尻が痛くなるのが難だ。
 開演前のBGMはドリフの歌。選曲はバンドの希望かな?
 ほかのバンドの演奏前は、ちがうミュージシャンの音楽が鳴っていた。
 まずは「ズンドコ節(だっけ?)」やら「エンヤ〜コーラヤッ♪」って曲やら(曲名知らん)が脳天気に流れる。加藤茶の声が若いなーと、のんきに聴いていた。

 ライブはほぼ時間どおりに始まった。

あめあめ(19:00〜19:50)

 ステージが暗くなり、ステージ片隅でぱっと番傘が開かれる。
 ライトに照らされ、傘の中にはいったメンバー二人が登場した。

 主にアコギやマンドリンを担当する雨宮広哲は作務衣にゲタ、顔は白塗りというすごい扮装で登場。
 ボーカルのキャンディポップは、派手でゆったりした服装にて現れる。

 えらく低いセッティングのマイクだと思ったら、そのまま床へぺたんと座り込む。これが基本スタイルらしい。
 アンケートにセットリスト載ってたので転載します。たぶん、このとおり演奏したはず。
 
<セットリスト>
1.春の夜
2.ざしき雨<インスト>
3.コンセント
4.風車(新曲)
5.まりも男の人生
6.み空
7.夜空アンドロイド(新曲)
8.プロペラ
9.蛍の光<インスト>
10.真昼の月(新曲)

 基本はアコースティック。雨宮がカポをはめ淡々と弾き、キャンディポップは鼻にかかった声で歌う。ほんのり矢野顕子風味かな。

 歌謡曲ぽかったり、演歌ぽかったり。たんなるポップスにおわらず、あんがいアクの強いアレンジだった。
 気分は60年代の四畳半フォークとでもいいましょうか。21世紀だって忘れそうな、むちゃレトロな雰囲気だった。

 キャンディポップが次々にパーカッションを使い分け、時にはアコギやアコーディオンも披露し、アレンジに幅を持たせた音が面白い。
 さほど違和感なく聴けた。

 どうやらこのバンド、今夜で活動停止らしい。キャンディポップが函館に帰る(?)とか。
 "風車"や「あめあめの定番曲」と紹介された"プロペラ"はかなり楽しめた歌だった。

 活動停止の記念として、ラスト2曲はバンド編成。ドラムとエレキベースが加わった。
 キャンディポップは立ち上がって歌う。

 「最後だから・・・どうしようかな。みんな立って踊ろう!」
 って観客をあおる。だけどそのままのんびり座ってるもんだから、
 「・・・だめじゃん」
 と笑ってた。

 雨宮は座ったままピアニカをプレイ。バンドの音に負けるかな、と思いきや。
 オルガン風にうまく吹きこなした。

 異様なコスチュームと、歌謡曲臭が濃い音楽に最初はひいたけど。ほのぼのした感触でよかった。
 進行はちょい押し気味だったようす。ここからはサクサク進む。

月下美人(20:00〜20:45)
(山本佳名子:A.G、Vo、石田珠紀:B、Cho)


 今夜一番の収穫!むちゃくちゃ面白かった。
 出身は京都の、女性デュオ・ユニット。3ヶ月に1度くらいのペースで、東京でライブしてるそう。
 フレットレスのエレキベースとアコギを弾きながら歌う、ユニークな編成のバンド。
 最初はふちがみとふなとを連想したが、ユーモラスさを控え穏やかな雰囲気が漂う。

 初っ端、ベースがぐんっと弦の上でさりげなく、指を滑らす奏法に耳を奪われた。
 山本のアコギはコードを軽く鳴らす程度。ほとんど石田のベースがサウンドの主役となる。
 低音のスライドをうまく差し込むベースの演奏が、すごくうまかった。

 セットリストは残念ながら書けませんが、「赤い土」「空が映らない」「黒と白のメロディ」「Blue Moon」「君住むマチカド」など8〜9曲演奏したかな。

 緊張してるのか、MCはぼそっと二言三言喋る程度。
 印象に残ってるのは「Blue Moon」の演奏前に山本が、
 「月下美人ってバンドの名前は月に由来していて・・・」
 とまちがえたら、すかさず石田が
「ちがうやろ、花や」
 って、つっこんでたとこ。

 あとは最後の曲を演奏する前。曲が始まりかけて、拍手しようか戸惑う観客に、
 「拍手しても、ええよ」
 さらっと山本が苦笑しながら言ってたっけ。

 山本は低めの音程で歌う。バックがベースなだけに、ぐっとしっとりした空気を感じた。
 符割りの多いメロディも魅力的。

 アレンジの必然性がすごい。
 たぶんドラムやキーボードを入れても、魅力をそこねることなく彼女たちの音楽は成立するだろう。
 しかし、ベースとアコギだけでも、きっちり音世界を作り出してる。
 シンプルな音像に過不足も遜色もない。自らの音楽を知りぬいたアレンジのセンスにぶっとんだ。

 石田がハミングでコーラスをいれた曲もいくつかある。だけど時には、バックで分厚く白玉でハーモニーをつける幻聴が聴こえた。
 それくらい音に拡がりあったってことかな?自分でもよくわからない。

 帰りに手売りでCDを買ったが、今日のライブは違った魅力がある。
 素のステージにすっと立つ、ストイックなステージングが魅力だ。
 その前に出たあめあめが、床にいろいろ小物をぶちまけ、にぎやかな絵柄のステージだったので、なおさらそう感じたのかも。ま、これは狙ってないだろうが。

 さらに低音が身体を包み込み、ほんのりフェイクを入れる歌声が染み込む。
 しみじみ味わい深いライブだった。

 このバンドが終わると、あんがい客席が空いた。月下美人目当ての人が多かったんだろうか。
 
シナモンド(20:50〜21:30)

 二番目に楽しめたバンド。
 Key(♀)とg(♂)のユニットで、ボサノヴァ風味のポップスを聴かせる。
 アンケートにセットリストあったので転載します。

<セットリスト>
1.clap
2.ススム
3.チーコ
4.雨あがるまじないの唱
5.サルベージ
6.さよならぼくの昔

 前半2曲、後半3曲はメドレーで演奏。あっというまに終わった気分だ。
 ほとんどの曲はテープも使って、打ち込みのリズムやSEを流す。(4)の前で雨音や、(5)あたりで波の音を使ってたかな。

 ボサノヴァといっても、ギターのフレーズにちょっと影響があるだけ。リズムはさほどボサノヴァって感じじゃなかった。
 
 音楽は心地よいし、メロディも悪くない。だがいかんせんボーカルが弱い。
 特にkeyの方はピッチも所々怪しく、ふたりとも喉声で歌ってるのでインパクトに欠ける。
 歌い方はわざとだろうから、単純にぼくの好みが違うだけだろう。

 おっとりした雰囲気のライブだった。

ricca(21:40〜22:20)

 最後のバンドだけ音楽の色合いが違う。
 ここまで比較的アコースティックっぽいバンドが多かったのに、いきなり3ピースのポップ・バンドに変わった。
 賑やかに音ならしをし、そのまま自然に曲へ行く。

 g、dsの男2人にリーダーらしき女性がkeyを弾きながら歌う。gの男は曲によってベースに持ち替えた。
 アレンジは気を使ってる。サイケポップ(ギターがアーミングぐしゃぐしゃしながら弾くフレーズは面白かった)や、ファンク、ロックンロールにバラード、ポップスと多彩だ。

 MCの合間でも常にハイハットを刻み、ノリをきらさないドラミングは評価します。
 しかし、あまりにもアンサンブルが雑じゃないでしょうか。
 特にスローではドラムが、半拍くらいずれて聴こえた。
 リストを使わずシンバルを強打するドラミングは、ロックンロールならともかく、それ以外のリズムだと聴くのがちとつらかった。

 なまじkeyのリズム感が抜群だけに惜しい。
 キーボードに耳を集中させて聴くと、けっこう楽しかった。
 
 まっすぐに声を伸ばすボーカルも爽やか。ここまで静かな音楽を聴いてたから、戸惑ってるうちにライブ終わったのが正直なところ。
 別の対バンで聴いたら違う感想かもね。

 特にイベントではなく、ライブハウス側が設定した対バンでの企画だったろう。
 音の統一感だけでいうなら、前半3バンドだけって手もあるはず。
 月下美人をトリにして、1時間半くらいじっくり聴いてみたかったな。

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