LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/12/30   原宿 クロコダイル

出演:Bondage Fruit
  (鬼怒無月:g、勝井祐二:vln、大坪寛彦:b、高良久美子:per、岡部洋一:per)


 ここ数年恒例のボンフル年末ワンマンライブは、すっかり正月モードに飾られたクロコダイルにて。観客はほぼ満員、40人強入ったろうか。
 クロコは店内左側に柱があり、スペースのわりにあまり座れずもったいない。

 鬼怒は足を痛めたようで、松葉杖姿。ステージに椅子をおき、座ったままで演奏した。
 「ロバート・フリップみたいでしょ」とおどける。

<セットリスト>
1.I/O(新曲)
2.トレイン
3.ミニマル
(休憩)
4.ロコモーティブ
5.skin
(encore)
6.Storm bird Strom dreamer

 アンコールと定番「Skin」を除き、ここ数年の未CD化曲ばかり。
 現在のボンフルを明確に提示した選曲といえる。

 彼らのライブは約1年ぶり。音世界もだいぶ変わった。
 CDとはまったく異なり、鬼怒のブルーズやC/W趣味を前面に出し、より内省的になっていた。 

 今夜は鬼怒と勝井のほにゃららMCがほとんど無い。
 前半で写真写りをぼやき、後半に岡部の服装(派手なシャツで『21世紀のテキ屋仕様』だ、と盛り上がっていた)をつっこんだくらい。
 あとは真剣な顔で音楽へ没入する。
 MCと演奏のギャップも好きだから、二人のかけあいが減っちゃって残念だった。
 
 冒頭の新曲はドブロの早弾きでスタートし、全員が軽快なアンサンブルを聴かせた。キメは重たく変拍子っぽい。
 いわばボンフル流ウエスタン。
 高良のソロはヴィブラフォンで駆け抜けた。
 
 途中で全休止のブレイクも数度あり。新曲なので勝手がわからず、最初のブレイクでぱらぱら拍手してしまう。
 椅子に座って超高速フレーズを弾きまくる鬼怒は、まさにロバート翁の「フラクチャード」っぽかった。

 続く"トレイン"ではサイケなループを勝井が小さく流す。鬼怒はチョーキングを使ったブルージーなソロを展開。
 ゆったりvibが絡み、ソロ回しも鬼怒から高良へ繋がった。

 ふたたび鬼怒がソロの時、勝井もバイオリンで同時進行で旋律を重ねる。
 PAの関係か、いまひとつ今夜はvlnが聴こえづらい。

 大坪が胴のみのウッドベースでソロ、岡部はwave drumで味付けした。
 最後に鬼怒がピックを弦の上で滑らせる。引っ掻くように上から下へギチギチと軋ませた。
 この曲と次の"ミニマル"を比較的じっくり、それぞれ20分くらい演奏してたはず。

 "ミニマル"は途中のフレーズに聴き覚えあり。
 タイトルどおり鬼怒と高良の、チャカポコとミニマルなリフがイントロだ。
 ベースで静かに雄大なテーマを提示し、vibがその上へ乗りロマンティックなソロを奏でた。

 中盤でアグレッシブなテンポに急転換。ギター・ソロでは聴き覚えあるテーマを弾く。
 勝井も鋭いソロで暴れるが、音がオフ気味でろくに聴こえやしない。むー。

 一瞬、音が全てやむ。
 ギターのミニマルなリフが復活した。
 高良はvibの鍵盤を弓で曳き響かせる。大坪がメロディを演奏して終わった。
 静→動→静のメリハリが効いた曲。
 
 ここであっさりと休憩。一時間くらいがあっというま。
 けっこう長めの休憩時間をぼおっと過ごす。
 最近は"skin"で後半を終える展開が恒例なため、ワンマンは前半のほうが刺激的かも・・・と考えていた。
 
 さて、後半。"ロコモーティブ"はボトルネックを使う。
 鬼怒はホワイト・ブルーズっぽいフレーズを根底に置いた。
 高良は金物やパーカッション中心に連打。岡部と一緒に突き進む。勝井は屈みこんでエフェクタを操作。
 10分くらいの演奏にもかかわらず、アンサンブルがすさまじく充実してるので小品って印象すらした。
 後述するが、この曲が今のボンフルの鍵になっているようす。

 いよいよクライマックス、"Skin"の登場だ。
 大坪がじわり、じわり、とイントロを弓弾き。岡部のドラムへ切り替わる。
 リバーブをたっぷり降りかけて、フロアタムを一打ち。
 スネアを一打ち。またフロアタムへ。
 強く打つタムの響きが、店内へ轟く。

 大坪が朗々とリフを弾いた。
 じわじわ鬼怒らが加わる。ネックを叩き、ギターを胴鳴りさせる。
 パワーを溜め、一気にテーマの旋律がはじけた。

 勝井のvlnが空気を切り裂く。
 力強く弾くあまり、弓のツルが片端から切れてしまう。
 切れたツルが逆光のライトに照らされ、幾本もおどろにきらめいた。

 vlnはいつしかソロを終え、ロングトーンへ切り替わる。最後までそのままドローンを続けた。
 一方、ギターのフレーズは激しさを増す。
 鬼怒が弦をかきむしりながら腰を浮かす。
 二度、三度。
 ついに立ち上がった。
 顔をしかめながら猛烈に弾き殴る。
 リズムが高まり、緊張感いっぱいの音像が生まれた。

 鬼怒は椅子に崩れ落ち、うつむいたままギターと格闘。
 ペグに手を伸ばし片端からチューニングを緩め、低音で咆えた。

 "Skin"は約40分。エンディングはあっさりめか。
 フェイドアウトで音が消えるのを、鬼怒は微動だにせず聴き入った。
 何度聴いてもすばらしい迫力。しかも毎回印象が違う。
 今夜の"Skin"は音が収斂し、見通しがよかった。

 「よいお年を・・・って曲でもないね」
 鬼怒と勝井が苦笑し、挨拶したあとステージを去った。
 
 観客のアンコールの拍手へは「これ("Skin")で終わりにしません?」と口火を切る鬼怒。
 しばし黙っていたが、観客のムードに負けて演奏してくれた。

 ラストはアコギを構えてメロディは勝井へ委ねる。
 この曲は大好き。でも演奏に違和感を覚えてしまった。

 "ロコモーティブ"のあとで鬼怒が漏らしたMCこそが、今のボンフルを象徴していると思う。
 「演奏してて楽しい〜。でも、初演では観客もメンバーすらも『?』だったんだよな」

 ボンフルの曲は鬼怒が書きつつも、初期から「勝井と双頭ユニット」ってイメージで聴いていた。しかし今夜は勝井の影があまりにも薄い。
 明確に「鬼怒無月の音」が提示されていた。
 鬼怒のブルーズ趣味はCoilだけでなく、ボンフルでも掘り下げているようだ。

 アンコールの"Storm bird Strom dreamer"に違和感あったのも、この曲ではギターが完全にバックへ回ってしまうため、鬼怒のイメージを掴みづらいせいだろう。
 
 以前にも増してアンサンブルは強力そのものだが、ここへ勝井がさらに絡んで欲しい。このままだと勝井が脱退しそうで不安になってしまった。
 複数のラインが絡みあう破壊力を、もっともっと聴きたい。
 ちなみにPere-Furuみたいな勝井とのデュオでは、今の二人はどんな音だろう。無性に聴きたくなった。
 一番近々のライブだと1/25のin Fか。八木美知依も入れたトリオ編成だが。

 ともあれアンコールも含め、しめて約2時間半弱。凄みに満ちていた。
 約10年前に一度、7年くらい前に一度。そしてここ数年で数度。何度も聴いてきたが、ボンデージ・フルーツはどの時代も充実していた。
 だが今に到ってもなお、右肩上がりで集中力を増している。
 次のワンマンはどんな音になってるだろう。さらなる高みへ登っていそうで楽しみ。

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