LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/12/14  原宿 Nadiff

出演:Warehouse
 (鬼怒無月;g,etc、高良久美子:vib,per、大坪寛彦:b,etc)


 彼らのライブを聴くのは7月ぶり。最近はツアーも何度か行い、活発に活動してる。
 もともとボンデージ・フルーツの派生バンドだが、MCで鬼怒が「ROVOで売れてないほう」と、みもふたもないギャグを飛ばしてた。

 会場はカフェも併設された、アート系本屋の店内で行われたコンサート。
 はじめて行ったが、フロアが広いわりにあんがい客席スペースは狭い。
 会場設営も手馴れていると言えず、開場までの進行には不満が残った。

 warehouseの3人は開場ギリギリまでサウンド・チェック。"Cat box"などをぱらぱら弾く。このあとすぐに聴けるのに。ほんのり得した気分。

 動員は40人くらい。予想より多かったらしく、急遽パイプ椅子がずらっと出た。
 開演は少し押し、20時40分くらいから演奏が始まった。

 ステージ中央にヴィブラホン。向かって右手に大坪がエレクトリック・ウッドベースを構え、鬼怒はvibを挟んで左側。椅子に腰掛け、数本のギターを使い分ける。
 鬼怒へはハイハット、大坪の足元にはバスドラがセッティングされて新鮮だった。
 このバンド、どんどん一人数役の演奏が多くなってそう。

<セットリスト>
1.Cat box
2.Ezumi
3.Good night honey
4.Cazoo suite#5
5.Liquied beauty(?)
6.Mad cafe
 (休憩)
7.Jack in the box(?)<新曲>
8.ヨンヨトナ(?)<新曲>
9.(無題)<新曲>
10.Mana`s roux
11.Bunbaka
(encore)
12.Dog and pepper

 (?)がついてるとこは自信ないです。
 今回も一曲づつ丁寧に曲名を説明してくれた。そのあとには、おなじみのほのぼのMCがしっかり入る。
 鬼怒は寸前にギター・マガジンのインタビューを受け「テンパってるんだよ〜」とのことで、MCは逆に控えめ。高良と大坪の掛け合いが中心だった。

 (5)は多分この曲。なぜか高良が"即興三部作"と紹介していた。
 後半の新曲群もタイトルが良く聴き取れず・・・。

 最初は"Cat box"からスタート。前半はボリュームをぐっと抑える。エフェクターを切り替えるカチリって音すら明瞭に聴こえた。

 この曲にかぎらず、基本的にはアルバムと同じ曲構成。
 ステージへ持ち込む楽器の都合で、いくつか音が代用されたり抜かれたりするくらい。
 たとえば"Cat box"では自転車のベルがなかったような気も。せいぜいその程度の違いだ。
 
 こじんまりしたアンサンブルの妙味がwarehouseの魅力だが、"Cat box"中盤では大坪、高良、鬼怒の順でソロも挿入される。
 それぞれ8小節くらいか。あくまで曲の一部としてさりげなく弾いただけ。これが正直物足りない。即興を堪能は、ステージが進むまでおあずけとなった。

 ソロの最中、鬼怒がいきなり弦を切ってしまう。
 一部のフレーズを弾くのが辛くなったか、後半のテーマ部分は違う響きに聴こえた。ちょっとどたばたしたか。

 曲が終わり、高良が作曲者の鬼怒へタイトルの説明を求める。
 弦を替えつつ説明しようとする鬼怒だが、しどろもどろでまったく説明が進まなかったっけ。
 譜面は鬼怒によるイメージイラスト(「箱の中にぎっしり詰め込まれた猫」らしい)付だとか。見たいー。

 続く"Ezumi"も鬼怒の曲。サキの短編に出てくる架空の動物をイメージしたそう。
 高良が「動物の絵は譜面に描かないの?」って笑うと、即座に「ないよ、そんなもんっ」と返す鬼怒。

 演奏が始まり、大坪がベースを弾きながらメロディを唸る。
 最初に歌い始めたときは意外だったか、高良がくすりと笑ってた。
 朗々と歌う大坪の歌が頼もしい。

 鬼怒が「おやすみハチミツ」と、まんまの邦題(?)をつけた"Good night honey"は、アルバムのイメージそのまま、優しく演奏される。
 大坪によるリコーダーの2本吹きが、店内にそっと拡がった。
 
 "Cazoo suite#5"は鬼怒が自分のカズーを忘れ、大坪から借りる。
 「あんまり鳴らない」とぼやく鬼怒へは、大坪が自分の腕をぽんぽん叩きにやりと笑う。

 この曲で高良と大坪のMCは盛り上がっていた。
 中間部で高良はカズーでメロディを吹きつつvibを弾く。このときの課題だった「涎をたらさない」は達成されてたそう。
 「あれがアーティストの熱演っぽくて気に入ってたのに」とコメントした大坪には苦笑した。

 いっぽう高良は、この曲を演奏しつつシーボーズ(初代ウルトラマンで宇宙に返された怪獣)をイメージしてると告白。
 作曲者の大坪が笑うと「違うの〜?」と大まじめにツッコんでいた。
 大坪の解題はされず。まずバンド内のミーティングで意思統一をはかるそうだ(笑)

 "Cazoo suite#5"の演奏は文句なし。高良がカズーを咥えながらしみじみvibを叩く時の音像が素晴らしい。
 スネアが入る後半部分は、カズーとのバランスが少々厳しかったか。

 次の"即興三部作"(?)とコメントした曲の演奏が素晴らしい。
 テーマを素早く演奏し、鬼怒のエレキギターがノイジーに単音を響かせる。
 混沌さがステージから滲みだす。
 大坪はリコーダーの2本吹きソロ。高良が弓でvibの鍵盤をそっとこすり上げた。

 鬼怒はかがみこみ、エフェクターのスイッチを次々捻る。
 ディレイでフレーズをループさせ、音を重ねてゆく。音量はあくまで極小。
 風が色を変えるように、スペイシーなサウンドを静かに披露した。
 高良はvibのソロをその上で展開する。
 今夜の一番の聴きものだった。

 前半最後は鬼怒の曲"Mad cafe"。
 曲の説明を高良に求められ「麻布にあってスコーンが美味しくて・・・」と即興で説明し、客席から笑いが起こる。
 演奏はすごくかっこいい。
 vibソロをはさみ、大坪がベースをランニングさせる。
 ジャジーに雰囲気が一変し、鬼怒が鋭くソロを繰り広げた。

 途中で鬼怒がハイハットを踏み、アクセントを入れる。少々タイミングがずれてたのはご愛嬌か。
 ここで一息休憩。約45分の演奏だった。

 後半はさくっと始まった。冒頭からいきなり新曲三連発。
 まずはキュートなムードのメロディから。出来たての曲だそう。
 鬼怒が超ピチカートで細かいフレーズをばら撒いたのが印象的だった。

 続く曲では、アコギのソロをたっぷり盛り込む。アレンジからヨーロッパっぽさを感じた。
 大坪も負けじとスキャットを入れる。vibのソロもよい。
 後半セットはこの曲に限らず、メンバーのソロが多くて嬉しかった。

 新曲三連発最後は高良の曲。3日前のリハの前日に作ったという、まさに出来たほやほや。
 まだタイトルは決まっていないそう。

 これは奇妙な符割りが面白い。大坪のバスドラ、鬼怒のハイハットが大活躍。
 二人でリズムを分け合って踏みあう。
 さらに3人とも口にはカズー。もちろんギターやベース、vibも演奏しながら。すごいなぁ。

 ギターソロの前で、鬼怒が咥えてたカズーを床に投げ捨てる。
 カズーの持ち主である大坪はそれを見逃さず、苦笑していた。

 "Mana`s roux"はほのぼのしたハワイアン風の曲。
 ウクレレをギター風にムリヤリ膝の上で構える、鬼怒の奏法がユニークだ。
 鬼怒がウクレレのチューニングに苦労する間、大坪と高良はほのぼのMCで場をつなぐ。
 作曲者の大坪が曲を評して「ゴンチチだよ」。またみもふたもないことを・・・。

 この曲できれいにしめるかと思ったら。
 チューブ・パーカッションを持ち出した。そう、"Bunbaka"だ。
 冒頭に高良の無伴奏ソロを入れ、テーマへ繋げた。

 パーカッションの音色こそユーモラスだが、演奏は凄みが漂う名演。
 ドブロのソロはフレーズがぐいぐい冴える。
 アルバム同様、続くベースソロは、完全に無伴奏。重厚に低音を響かせる。
 再度アンサンブルに戻ってコーダへ。
 アレンジはアルバムと同様だが、すぐ目の前で弾いてる分だけ、音の迫力が違った。

 メンバーはステージを去るが、アンコールの拍手がやまない。
 一呼吸置いて再登場。配置につく前、大坪は先ほど鬼怒が投げ捨てたカズーをそっと拾っていたっけ。

 アンコールは"Dog and pepper"。レコーディング中の仮題は「ワンワン」だったそう。
 いきなりこの曲をを猛スピードで弾き始めた。

 弾いてる最中も鬼怒と高良があおり合い、ぐいぐいテンポが上がってゆく。
 大坪は途中でかなり苦笑しながらベースを弾いていた。
 もともとこの曲、かなりテンポが速い。なのにそれよりさらに速い。
 あまりにテンポを上げすぎ、ところどころフレーズがろれってたのはご愛嬌。
 複雑なフレーズを的確に弾きこなす、鬼怒のテクニックにほとほと感動した。

 一息で駆け抜け、メンバーはステージを去る。
 後半も約40分くらい。時間は短めだが、新曲も連発される充実したライブだ。

 こういうサロン形式が、warehouseの音楽に似合うのかもしれないな。
 小気味よい演奏とほのぼの(?)MCで、寛げた一夜だった。

目次に戻る

表紙に戻る