LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/11/26  西荻窪 アケタの店

出演:緑化計画
(翠川敬基:vc、片山広明:ts、早川岳晴:b、石塚俊明:ds)


 あー、風邪ひいた。今夜はなんか頭がぼおっとした状況でライブ聴いていた。
 そのせいかな。静かなフリージャズが、耳からしみじみ染み込んだ気がする。

 前日が、来年2/23にStudio WEEから発売予定のCD「植樹祭」のトラックダウンだったそう。
 昼から初めて「朝の3時まで飲んでいた」と翠川が笑う。

 今夜は藤井郷子カルテットのヨーロッパツアーから帰国そうそうの早川も合流し、メンバー4人だけで演奏された。
 観客は10人程度の入り。もうちょっと混むかと思ってたんだが。

<セットリスト>
1.Go-hon
2.Chris
3.Agri
(休憩)
4.コントラ・ロンド
5.Fair game
6.Uzpe
*セットリストはオフィシャルHPを参照しました。

 "Go-hon"は4ビートっぽい雰囲気から。音像は次第に溶け、フリーに展開する。
 早川のエレキベースが、さほどボリューム大きくないのに店の内へずしんと響いた。
 今夜はチェロのアンプのバランスも程よい。メンバーの音がいい感じでミックスされていた。

 ドラムとサックスはノーPA。
 目の前で演奏される音が、ストレートに耳へ入る。

 今夜は石塚のプレイがやたらと印象的だった。
 表情をさまざまに変えつつ、上体を大きく揺らしドラムセットと格闘する。
 リズムキープはむしろ早川が担っていたかも。
 ときにはあからさまにリズムをずらし、奔放に響き線を使わずにスネアを叩いてた。
 熱心に叩くうちに暑くなったか、一ステージ目で演奏しながら一枚脱ぎ、Tシャツ一枚になってたっけ。

 まるで引っ掻くようなしぐさ。マレットやブラシを、タムやシンバルからすくい上げる。
 一曲目のドラムは、シンバルの音色がいいアクセント。
 ときおり鋭く叩くシンバルは、空気をぴしりと切り裂いた。

 ベースもフリーになり、空間がもやっとしてくる。
 ときおりベースがテーマの旋律を浮び上がらせた。
 ラストは片山のテナーとユニゾンで、早川が口笛を吹く。
 まさに目の前で吹かれる口笛が、生音できちんと耳へ届くことが妙に嬉しかった。

 2曲目でも石塚のドラムは大活躍。シンバルだけをスティックで軽やかに撫ぜる。
 そのプレイの途中でスティックが二度も指から零れてしまい、苦笑していた。

 翠川はフルステージ、ほぼずっと弓による演奏。
 メロディとアヴァンギャルドなフレーズがランダムに現れる。
 "Chris"の冒頭は、無伴奏によるチェロのソロから。
 きれいなメロディを奏でる翠川へ、片山が野太いテナーで絡んだ。
 同時進行でアドリブが繰り出される。
 翠川のチェロも、いつのまにか弓で激しく弦をこすっていた。

 ベースのソロを聴けたのは"Agri"にて。
 石塚は左足を高々と上げ、がっしんがっしんハイハットを踏む。
 4人によるグルーヴィな演奏がたっぷり盛り上がったあと、片山がふっと吹き止めた。
 石塚と早川が四つ打ちっぽくリズムを提示。
 翠川がチェロでアドリブをひとしきり。
 そのあと、おもむろにベースのソロが始まった。

 前半は約45分。あっというまだ。
 軽く15分くらいの休憩取って、すぐさま二ステージ目へ。
 「早川岳晴をフィーチャーして」という翠川の紹介で、"コントラ・ロンド"から。
 この曲、てっきり「コント・アローン」って曲かと思ってたよ。

 探るように早川がフレーズを重ねる。
 この曲、メロディの最後の拍で一音だけ高く飛ぶんだけど。
 そのタイミングで翠川や石塚が、ひゅるりっと音をあわせていた。

 アドリブ部分になると、曲の展開はベースが重心となる。
 表れては消えるテーマのフレーズは、片山や翠川のフリーな演奏へ輪郭をつけてるようだった。
 片山のしっかりしたソロが印象に残ったのもこの曲か。
 
 曲の後半ではテーマで一音あわせる拍を、あえて全員がずらして楽しむ。
 翠川は指板をわしづかみにしてこすり倒し、風切り音みたいな音色をふりまいた。
 エンディングで音楽が急に収束。
 「・・・終わっちゃった」
 石塚がポツリと呟いた。

 続く"Fair game"がぼくにとって、今夜のベスト・プレイ。
 メロディと混沌さが絶妙のバランスで混在した。
 さらにこの曲では柔らかいムードを保持し、音量は控えめだったのも効果的。
 風邪気味でボケた頭へ、一騎当千の四人によるフリージャズが染み透った。

 決して音像が甘く流れなかったのも嬉しい。
 ベースが着実に一音づつ、しっかり音を置いてたせいだろうか。

 前回ライブでも最後に演奏された"Uzpe"では、片山の朗々と吹くメロディがかっこよかった。
 この曲でも途中で音量がぐっと下がる。
 だが次の瞬間、石塚の乱打が炸裂するから油断できない。
 ピアニッシモからフォルテまで、振り幅大きかった。

 ラストは片山がテーマへ戻るのを狙ったようだが、演奏はそのままコーダへ。
 腰砕けっぽくなってたのが面白い。

 後半も約45分。時間的にはあっさりめだけど、さまざまな味わいが楽しめて大満足。

 今夜は早川がしっかりベースでサウンドを支えた分、奔放に弾く翠川をたっぷり聴けた。
 時に一人くらいメンバーが欠席しても、緑化計画の音は成立する。
 だけどこの4人だからこそ産まれる音像が確かにある。
 CDはどんな音がつまってるんだろう。早く聴きたいな。

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