LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/10/18 新宿 LOFT
〜"DAMAGEXPRESS"〜
出演:MERZBOW
(秋田昌美:pc,electronics)
メルツバウのライブはひさびさ。
怒涛のリリースな近作群を聴いてて、メルツバウはすっきりめの音像へ変化してたと思う。だから最新鋭の姿を聴くのが、とても楽しみだった。
なにせ当日にライブの存在を知ったもんだから、昼間はうきうき。。
もっとも都合よく仕事は終らない。けっきょくライブハウスに着いた時は最初のバンドの演奏が終わるとこだった。
本イベントはメルツバウが西新宿のレコード屋(?)"Les
Apson?"で行う、アクリル絵画展の記念ライブらしい。
他に3バンド出演したが、特に秋田昌美と共演ないのが残念。
ここではメルツバウに絞って感想を書きます。
新宿ロフトは2年位前にYBO2関連ライブでメルツバウを聴きにいって以来。
あの時はかなり広々と感じたが、記憶よりこじんまりしてて違和感あった。
客入りは上々。若い連中中心に100人以上集まったんじゃないかな。男女比率は・・・男:女=2:1くらいか。
前のバンドが終わって、ステージ前に幕が降りる。
スクリーンにサイケな映像が映し出された。
イベントのテーマ・キャラクターはアザラシらしい。
そのため幕間には動物園で世話されるアザラシの映像を、スクラッチ風リピートで映す。
ところがメルツバウ前の映像はさらに抽象化してた。
画面下部には、ほんのり膨らんだオットセイ。上部からカナリヤらしき小鳥が見下ろす。
ふたつの画像は固定され、バックをきらびやかな抽象映像が万華鏡のように姿を変える。
DJの音楽もノイジーながら、刺激的なテクノで面白かった。
幕の下から、ステージ準備する姿が見える。
ステージ中央のパイプ椅子に座ってるのは秋田昌美だろうか。
幕間の間はステージ以外の場所をふらふらしていた観客も、ステージ前のフロアにぺたんと座りライブ開始を待っていた。
メルツバウのライブが始まったのは21時を回った頃。
スクリーンがすうっと上がり、観客がステージ前へ詰め掛ける。
ノイズがゆっくり膨らんでいった。
今夜の機材は黒のパワーブック2台と、機材がひとつ。あれはミキサーかな?
前回見たときと同じ編成だが、聴いててひしひし違いを感じた。
まず、ボリュームが明らかに小さめ。
中盤で豪音をぶちまけたとこを見ると、意識的にダイナミック・レンジを調整してたはず。
これまでは開始からいきなりトップギアだったのに。
音圧も違う。ほぼ最前列で聴いてたが、聴いてて圧迫を感じなかった。
数年前に同じ場所でメルツバウを聞いたとき、あまりの大音響が恐怖だった。
音圧がすさまじく息をするのすら苦しい。フロア後方へ行ってもまったく音量が変わらず、壁がビリビリ唸っていた。
ところが今回はさほどでもない。後述するが音色が多彩で、すごく爽快な感触だった。
もうひとつの違いは二つのPCの使い分け。かなりDJ風スタイルになっていた。
ここ数年で数回だけ聴いたライブでは、マックで電子音を設定しリアルタイムで波形編集しサウンドを作っていた。
だけど今夜は波形編集したノイズを半固定させ、ループさせる。その上でもう一方のマックで、別のノイズを編集しかぶせる手法を多用していた。
半固定、と書いたのは秋田が何も操作してないみたいなのに、しばらくたつとループしたノイズが変化してたから。
モニタ画面は見えないし、もちろん秋田が操作してた可能性もある。
3つ目の違いが、明確にグルーヴを感じたこと。
これまで聴いたメルツバウのライブは、いつも疾走感があった。
だが今夜ほど、くっきりビートを浴びなかったはず。たぶん。
当然、既存のエイトビートなどが提示されたわけじゃない。
だがループされるノイズが微妙なグルーヴを提示し、特有の疾走感も手伝って全身で堪能できた。
今夜は約45分一本勝負。細かい部分の変化はさっぱり覚えてない。
始めは小さかったハーシュ・ノイズが、次第に音を重ね凶暴に成長していくさまがスリリングだ。
冒頭部分だったかな。極低音のドラムっぽい金属音が、ループしてた時。
ほかのノイズがすうっと消え、その低音だけが一瞬クリアに聴こえたのが印象的だった。
披露されたノイズは、多分全て電子音ばかり。さまざまな金属めいた音が溢れた。
メルツバウは多彩な音波を同時に操る。
超高音から極低音まで、ある瞬間にスピーカーを震わせるノイズの種類が豊富なこと。
低音で身体を震わされ、鼓膜には超高音波が突き刺さる。
常にハーシュ・ノイズは変化して、一瞬足りとも同じ音が存在しない。
さらに分離が良く、どのレンジのノイズを聴くのも自由自在。
複数の電子ノイズが絡み合う、多層的なサウンドだった。
音量が小さ目といったが、十数分過ぎた頃にはかなりボリュームは上がってた。前述したように、音圧は控えめで心地よい響き。
秋田は無表情にマックをマウスで操作する。
ストレートのロングヘアを無造作に垂らし、まじめな顔で画面を見つめていた。
ときおり唾を飲み込むくらい。あとはなにも表情に変化なし。
ライティングは青のピンスポ2本だけ。
黒尽くめな服装に、簡素なステージ。いつもながらにストイックな構成だ。
唯一カラフルなのは、マウスくらいか。
激しくカーソルを動かす時、光学式マウスから真っ赤な光がときおり漏れる。
数少ない、ステージ上での変化だった。
秋田はずっとパイプ椅子に座ったままなので、けっこう姿を見づらいのが難点。
いや、たしかにメルツバウの姿を見ても、ノイズをどう操作してるかわからないよ。とはいえせっかくだから、姿を見たいのが人情じゃない。
後半になると、明らかに音量が上がる瞬間が多々あった。
極太のノイズを右側のマックから召還する。
キラキラと辺りを埋め尽くす高音を切り裂いて、猛烈にノイズ獣が咆哮した。
いつもと違うメルツバウを、夢中で聴いていた。
スタンディングなのが辛い。ゆったりソファに座って、ノイズに身を任せたかったな。こんな感想、年寄りの証拠だろうか。
エンディングはフェイドアウト。
各種ノイズが身をこごめて消えてゆく。
最後のノイズを秋田はマックに封じた。
立ち上がる。一言も喋らず、歓声には数度の会釈で応えてステージを去った。
新しいスタイルに変化したメルツバウはすさまじく面白かった。
願わくば、次のライブも見たい。いつやるんだろう・・・情報がさっぱりないや。
そしてライブハウスを出たとき、盛大に耳鳴りしていた。
体感はともあれ、豪音が吹荒れたのは間違いない。
耳へは強烈なダメージだったんだろう。翌日でも、まだまだ鼓膜に違和感あるもん。