LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/10/16   西荻窪 アケタの店

出演:緑化計画
 (翠川敬基:vc、片山広明:ts、石塚俊明:ds + 北陽一郎:tp)


 月に一回ライブをやってる緑化計画だが、毎回平日は仕事が終わらずなかなか行けない。ぼくが聴くのは半年ぶりだ。
 今回ベースの早川岳晴は海外レコーディングで不在。
 サポートには緑化へゲストでおなじみの北陽一郎が加わる。
 なおHPで出演を示唆されていた林栄一は、ダブルブッキングにより残念ながら欠席だった。

 メンバー登場は20時を回った頃。店内は10数人とほぼ埋まっていた。
 片山がいち早くステージにどっかと座り、リードを選ぶ。
 ライブ開始は20時10分頃だったかな。
 翠川と片山による、静かなフリーから始まった。

<セットリスト>
1.Untitled
2.メノウ
3.TAO 
(休憩)
4.A-hen
5.seul B
6.uzpe
 *セットリストは緑化計画のHPを参照しました。
 
 選曲は翠川がその場で「あれやろう」と譜面を指差す。客はどの曲をやろうとしてるかさっぱり謎だ。
 そういえば。譜面を常に置く緑化だが、ドラムのまえには何もない。
 特に打ち合わせしてないみたいだけど、テーマが始まった瞬間に譜面も無しで曲を聞き分け、自在に叩きわける石塚のセンスは改めてすごいと感じた。
 
 ステージ奥のアンプはベース不在なのでチェロが使う。いつものアンプより、若干ボリューム大きくしてたかも。低音がチェロのみになったせいか、きっちり聴こえた。
 あとの3人は、いつもどおり生音そのままだ。

 音がでかくなると、さすがにチェロの音は埋もれがちだった。
 北もバッキングにまわるときは小さな音を多用し、聴こえづらい部分が多々あり。生音だとバランス難しいなぁ。

 今夜は一曲目から緊張感が漂うセッション。音量は小さめ。
 石塚がマレットで、そっとシンバルを叩く。
 中盤で翠川のソロになり、小さな音でフレーズを奏でた。

 旋律が断続的になり、このまま終わるか・・・と思った瞬間。
 一音激しく、シンバルが鳴る。
 そこからまたぐうっと盛り上がった。

 続く二曲目でも石塚のボリュームは控えめ。今度はブラシでタムをこする。
 チェロとテナーによるテーマのアンサンブルがとてもきれいだった。
 この曲、かなりいい演奏だったと思う。
 アドリブが盛り上がり、4人の演奏が絡み合う時間がえんえん続く。
 ただ、気持ちよすぎたせいかぼくは途中でうとうと・・・。細かいとこ覚えてません。すまん。

 「メノウ」は20分くらい演奏してたかな。
 テーマへ戻りかけるあたりで頭がしゃっきり、演奏に集中した。
 エンディングでは片山がキーを押さえず、断続的に一音を濁った音で吹く。
 その上に翠川のメロディが乗り、すばらしくロマンティックな音像が産まれた。

 三曲目でやっとテンションが上がり気味。
 石塚のエイトビートっぽいドラムを軸に、各々がソロを繰り広げる。
 翠川はリフをず弾き続けた。

 ここでトランペットによる長いソロ。
 片山はおもむろにタバコへ火をつける。
 次に翠川も演奏を止め、トランペットのソロへ視線を投げた。
 ドラムとトランペットだけの、しゃきっとしたサウンド。
 片山がテナーを咥えなおし、切り込んでいった。

 今度はドラムとテナーだけのアンサンブルに。ベースなしの音像が新鮮だ。
 どちらのソロのときも、石塚がマーチング・バンドっぽいリズムで煽った。
 強くぶっ叩きすぎて、スタンドからシンバルがころげ落ちてたっけ。

 エンディングはまた4人のアンサンブルに戻る。
 音が小さくなってゆく。
 テナーの極小音でのロングトーン。
 最後は翠川の指が、弦の上を静かに滑った。
 下から上へ、すうっと。

 休憩は約30分。後半は開口一番、翠川が「前半の曲は『先月と同じじゃないか』と突っ込み入ったので、まだやってないはずの曲をやります」と前置きした。最近の緑化は常連がずいぶん多いみたい。

 「エヘン」はジャジーな雰囲気の曲。
 翠川は弓を横に起き、ほぼずっと指で弦をはじいてた。
 早川が不在の分、ベース的な役割が多かったかも。

 続く「seul B」でも「これ、こないだやってないよね?」と片山に尋ねる翠川。
 別におんなじ曲を毎回やってくれてもかまわないのに。
 緑化の演奏はどのテイクもライブ毎に、まったく違う解釈で演奏されるもの。
 ちなみにぼくはこの曲、たぶん聴くの初めて。

 石塚が空き缶で作ったシェイカーを軽やかに振った。
 その後は手のひらでドラムを叩く。単なるアクセントではなく、ほとんど素手で叩きっぱなし。
 すごく静かな雰囲気で、なおかつ緊張感漂う好演だった。

 エンディングで片山が翠川に「もう一回テーマね」と合図を送る。
 ここまではまったくアイコンタクトなしで演奏してたから、妙に新鮮だ。

 そして今夜の名演が「uzpe」。
 しょっぱなのチェロとホーン二人によるきれいなメロディから、いきなり耳が釘付け。
 トランペットの長いソロが勇ましく店内に響いた。
 
 この曲では一丸となって、静と動を繰り返す。
 メリハリ効いてる上に、個々の音像がとても心地よい。
 20分くらいにわたりえんえん弾いてたろうか。

 最後は音が止まると同時に、翠川が弓をほおりだしてエンディング。
 後半も約50分のステージ。すぐに楽器を片付け始め、あっさりとライブが終わった。

 今回ベースレスなため、全般的に重心が軽く感じた。
 翠川のチェロが特に大活躍。
 フリーとクラシカルなメロディ、さらにベース役のリフやアンサンブルの低音部分と、奔放に変化するチェロを堪能できた。

 ライブを通して、かなり隙間の多い音像で緊張感が強まった。
 常に音を出しつづけなのは、石塚くらい。 
 片山や北もときおり薄くロングトーンで厚みを出してたな。

 柔軟なアンサンブルの絡み合いが刺激的な緑化計画だけど、今夜は非常に新鮮で面白かった。

 初CD(?)のレコーディングも完了、今年はアケタ定例ライブ以外に7th Floorでライブも控えてる。 
 活動歴が何年かよく知らないが、ここに来て急に盛り上がってる気がする緑化計画。
 このままずんずん、とびきりのフリージャズを繰り広げて欲しい。

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