LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/9/28 大泉学園 in−F
出演者:灰野敬二+鬼怒無月
この二人によるセッションは、意外に珍しいはず。
共演歴は意外に古く、この二人に勝井祐二も加わった「ブラック・ステージ」名義で94年にアルバムを残してる。
だが最近はブラック・ステージもライブをやってないはず。
他には今年の6月に新ピで行われた、鬼怒が主宰のセッション"ギター・ジャンポリー3"に灰野が参加したくらいかな。(ぼくはこれ、仕事で行けなかったけど)
風邪っぴきで体調がいまいちだったが、聴き逃したら後悔するぞ、とて薬を飲んでin−Fへ。
店内は一通り席が埋まり、立ち見もでる。最終的に20人くらい入ったかな。
ぼくが見てた位置は鬼怒がほとんど見えず、灰野の演奏よりで聴いていた。
演奏が始まったのは20時半くらいか。
今夜はの演奏は全て即興だと思う。どちらもアコースティック楽器を使用。
アンプは通しているものの、音は小さい。
しかし二人の音楽の相性がこれほどいいとは。刺激的な音が連発のライブだった。
鬼怒は二本のアコースティック・ギターを弾き分け、灰野が曲によって楽器を持ち替える。
残念ながらMCはなし。灰野がフレンドリーに鬼怒と喋るって構図も期待したが、さすがに甘かった(笑)
時間配分はこんな感じだろうか。
1.灰野(ブルガリー、vo)、鬼怒(Ag)<20分>
2.灰野(Ag)、鬼怒(Ag)<20分>
3. 同 上 <10分>
(休憩)
4.灰野(?→ジャンベ→Ag、vo)、鬼怒(Ag)<45分>
5.灰野(Ag)、鬼怒(Ag)<10分>
6.灰野(Ag、vo)、鬼怒(Ag)<5分>
まず、灰野がブルガリーを持つセッションから。
冒頭に視線を合わせた後は、ずっと二人ともうつむいたままプレイ。
あえて分けるなら、灰野がパーカッシブで鬼怒がメロディ主体か。
ブルガリーの細いネックの上を灰野の指がせわしなく動く一方で、鬼怒がさらに高速フレーズを噴出させる。冒頭からいきなりすごい。
二人とも即興馴れしているし、個々に独自の世界を築いてる。
だが、互いの音にきちんと反応してた。
どちらかのテンポが上がると、間髪入れず合わせる。
ブレイクっぽい瞬間もビタリとタイミングが合っていた。
まるで楽譜があるみたい。
絶妙のコンビネーションで、テンションを上下させる。
ブルガリーはコンタクト・マイクで増幅させてるだけだが、鬼怒は微妙にエフェクタを噛ませてサイケな音を作っていた。
風邪っぴきのぼくは、二人が作り上げる幽玄な音楽にぼおっとしてた。
中盤でおもむろに灰野がマイクを持ち上げ、ヴォイスを挿入。
歌いっぱなしではなく、演奏の合間で思いついたように単語をつぶやく。
このセッションが20分くらいだったかな。
次に灰野はアコギへ持ち替える。ガムテープでマイクをしっかり貼り付けていた。ちょっと間があいてしまう。
その間鬼怒もまったくの無言で灰野を眺めている。
灰野のカラーでステージを進めたせいだろうが、せめてつなぎのMCがほしかった。
準備完了したところで、鬼怒はいきなり超高速のコード・ストロークを始める。
灰野がアコギでメロディをぶつけた。
スリリングなはじまり方だった。たしか灰野のボーカルはなし。約20分くらいの演奏かな。
灰野が得意とする、フレーズをサンプリング&ループさせる手法は、この曲でちょっと披露する。
もっともループさせたアコギのフレーズは、すぐに音に埋もれてしまった。
二曲目が終わったところで鬼怒が客席に時間を確認、「あと一曲」って灰野へ合図を送る。
楽器編成はそのまま。10分ほどセッションした。この曲はそれほど印象に残っていない。
前半はしめて50分くらい。
メロディの奔流と息の合いっぷりに圧倒された一曲目と、爽快なギターのリズムに酔った二曲目がよかったな。
30分くらい休憩時間を置いて、第二セットの始まり。
ここで灰野は見かけない民族楽器を持ち出してきた。
ギター風の楽器だがネットで調べても名称がわからない。アフリカ系かな?
四角いボディは共鳴穴がなく、ボディの表面は皮張りみたい。
ネックは丸い棒で、数本の弦はネックに巻きつけているだけ。
ピッチはボディに置かれた、琴の駒みたいな物を左右させ調整する。
なんかわかりにくい説明ですいません。
とにかくその名称不明な楽器を灰野は持ち出した。
アンプから出す音もやたら小さく、低音中心の響きだ。
ベース部分を灰野が確保し、自由に鬼怒がフレーズを遊ばせる。
微妙なグルーヴが生まれて面白かった。
いつのまにかこのフレーズを灰野はループさせ、楽器をジャンベへ持ち替える。
ドライヤーを取り出し、鳴りを確かめつつ皮を温めた。
店内にドライヤーの音が響く。ドローン効果は・・・狙ってないか。
鬼怒はその間、ずっとギターを弾き続けっぱなし。
ベースラインのループは静かに鳴っている。
合間で灰野がボーカルを挟んだ。
いかにも場つなぎのボーカルっぽい。こんな取ってつけたようなつなぎ方は灰野らしくないな。
念入りにドライヤーを使っていた灰野だったが、満足したかドライヤーを止め、そのまま激しく連打した。
乱打するリズムが降り注ぐ音像の中で、低音ループは消えてゆく。
ボトルネックによるスペイシーな音で、鬼怒が対抗したのはこの曲だったか。
一段落つけて、アコギへ持ち替える灰野。
ギターを構えて、おもむろにチューニングを始める。
一音、一音、ゆっくりと鳴らす灰野に、鬼怒が着かず離れず即興を繰り広げた。
狙ってないだろうけど、チューニングすら音楽に組み入れる姿勢が面白かった。
最後は二人によるアコギのデュオ。結局45分くらいかけてじっくり演奏してくれた。
さすがに中だるみっぽい部分こそあれ、聴きどころもたっぷりたんまり。
続いて演奏されたアコギのデュオは印象に残ってない。
どんなインプロだったっけ・・・。
そして一番最後のセッション。これが最高だった。
アコギを構えた灰野が、爪弾きながらゆっくりと歌いだす。
この曲だけは、もしかしたら即興じゃないかも。
静かに、細い声で間を取りながら歌うさまが素晴らしい。
鬼怒のギターも音像を壊さず、ふくよかに盛り上げる。
最近灰野は哀秘謡を一人でやっているようだが、鬼怒とデュオでも素敵だろうな。
しみじみした雰囲気のままライブが終了した。
指癖っぽい単調なフレーズもときおり見られたが、ほとんどの時間は二人が繰り出す即興に圧倒される。
今回鬼怒はアコギ一本で通したが、他の弦楽器も使い分けるセッションも聴いてみたい。
自分の音世界に没入し、かつ互いの音とセッションさせる。バランス感覚にすぐれた二人だけに、即興の展開は果てしなく可能性がありそうだ。
鬼怒のHPを見てたら、このコンビによるライブはまたありそう。やったー。