LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2001/09/11  新宿 ピットイン

出演:大友良英NEW Jazz Quintet/EMERGENCY!

 両バンドのメンバー中3人が同じという変則的な対バンによる、新ピでの2days初日。
 予想通り動員は好調で、座席は埋まって立ち見も出た。
 ぼくは当日券で入ったが、ぴあのチケットを持った人が過半数。ちなみに当日券は、開場前にカウンターで売ってたらしい。知らんかった・・・。

EMERGENCY!(20:00〜21:05)
 (芳垣安洋:Ds、大友良英:G,Electronics、斉藤"社長"良一:G、水谷浩章:B)


 ステージ向かって左に社長、右に大友が座る。
 MCマイクは大友の前に置かれ、自称「司会進行役」の芳垣が一曲終わるごとに、袖へ行って喋る律儀なスタイルがおかしい。

<セットリスト>
1.Re-boptism
2.The inflated tear
3.The Look of love
4.Jelly roll

 全曲、CDに収録されているレパートリー。
 演奏前のMCで言ってたとおり、ゴツッとした感じの演奏だった。
 ぼくが好きな"The inflated tear"も"Jelly roll"もやってくれて嬉しい。

 芳垣オリジナルの"Re-boptism"からいきなり耳を惹かれる。
 ノイジーなフリーっぽいスタートで、互いに即興をぶつけ合い高まる中、大友がじわりとテーマを提示し、社長があわせる。
 そのまま二人がアドリブを始めた。

 テンポは突っ込み気味。比較的音を歪ませたプレイが同時進行で飛び交う。
 この曲だけで30分くらいやってたと思う。
 ラストはテーマのユニゾンを積み重ねる。長丁場ながら、まったく飽きなかった。

 カークの「溢れ出る涙」では、一転して音像が静かに。
 このあたりから、大友のギターはどんどんストイックになる。
 椅子に座ってうつむき加減でギターを断続的に響かせた。
 
 芳垣は各種スティックを使い分け、リズム・キープよりパーカッション的なドラミング。紙袋を取り出し、くしゃくしゃに丸めてタムをこすったりもした。
 
 この日はずっとウッドベースで通した水谷だが、この曲では弓弾きを多用。
 ネックの思いきり下のほうを押さえ、弦を軋ませドローン・ノイズを出していた。

 しばし静かな音像が続いた後、唐突に社長がテーマを弾く。これまでエフェクターで歪ませた音を多用してたから、明るいトーンでのフレーズが耳へ素直に飛び込んだ。

 そして一瞬の無音。

 テーマのメロディは大友へ受け継がれた。
 大友も太い音で素直にメロディを惹く。テーマを弾いてるだけなのに、かっこよかったなぁ。

 終盤でマレットによる芳垣のソロは、大友のノイズだけが伴奏する。そこへおもむろに社長がエフェクターをいじって切り込んだ。
 この曲ではサイケなアレンジで終始した。
 
 前回聴いた時はアンコールで演奏された、バカラックの"The Look of love"。
 こんどは水谷がまずは弓によるきれいなソロ。大友が小さくノイズを響かせた。
 そのまま大友のソロをはさみ、エンディングへ。
 ロングトーンを多用する大友に、歯切れのいいフレーズを次々繰り出す社長。
 対照的な二人のアンサンブルが面白い。

 最後は全員が音を止め、芳垣ひとりがハイハットで刻む。
 "Jelly roll"へはそのままメドレーで繋がった。
 
 テーマのメロディはギターのユニゾンで、たどたどしくフレーズを弾く。
 この曲はソロからテーマへ戻るとき、ぴたりとはまるのが楽しい。
 ところがあえて全員が中盤でタイミングをわざと外し、奇妙なノリになった。
 水谷と芳垣は大笑いしながらプレイする。
 最後はもちろんぴたりとあわせ、約1時間のライブが終わった。 

 大友はもっとジャジーに演奏するかと思ったが、今夜はかなり音響的なアプローチを採用。
 両バンドの異なる音楽性にそって、芳垣や水谷は明らかに演奏スタイルを変えていた。
 あんがい今夜のライブを通じて、音のスタイルが統一してたのは大友だったのかも。

大友良英NEW Jazz Quintet(21:40〜22:55)
 (大友良英:electronics,g、菊地成孔:ts、津上研太:as、
  水谷浩章:b、芳垣安洋:ds,tp)


<セットリスト>
1.Sweet-Pea
2.Drift/Les
3.Flutter
(アンコール)
4.Night Lights

 2daysのセットリストはがらっと変えるそう。"ユリイカ"は2日目に回したか?
 "Flutter"が見事なクライマックスの、緊張感たんまりなライブだった。

 まずは3rdに収録されたウエイン・ショーターの曲。
 基調は滑らかなアドリブなソロだが、時にノイジーな音を挟み込む。
 つかず離れず、テーマを奏でるアレンジがかっこいい。

 大友はかがみこんで、静かにギターを響かせる。
 つねにうねりを感じた演奏だった。

 この曲ではアルト・サックスの音色が、たまたまぼくの苦手なタイプの響きだった。
 鳥肌が立ってしまい、聴いてて音にのめりこめず辛い・・・。

 続くドルフィーの曲から津上と菊地が、たんまりと時間を取ってソロを繰り広げる。
 まずは大友のソロから。小細工なしの無骨なフレーズを選ぶ。
 その間、ホーンの二人はステージ袖へ引っ込み、タバコを吸いながら大友のソロを聴いていた。

 おもむろに津上がステージへ戻ってきてソロ。青白くストイックな響きのアドリブだった。
 袖で聴いてた菊地が、その場でテナー・サックスを吹きはじめる。
 完全オフマイクだが、暖かいフレーズがかすかにかぶって聴こえた。

 津上と交代し、こんどは菊地がソロを取る。音を出した瞬間、風景が明るくなった。
 メロディアスでほんのり暖かさを感じる。
 リズム隊が演奏をストップさせノー・リズムでソロを取る場面では、アルト・サックスかギターがずしんと低音ドローンを響かせた。

 今夜最大の聴きものが、続く"Flutter"。
 ここでも津上、菊地のソロのノイジーなサックス・ソロを思いっきり聴けた。

 津上が最初にアルトを軋ませる。
 芳垣と水谷の演奏はどんどん加速するが、最初はあえて津上はそのグルーヴに乗らずブレーキをかけるようなソロに聴こえた。
 大友はピックアップへ何かを押し付け、ロングトーンでバックアップ。
 淡々と独自のペースでギターと戯れた。
 
 菊地は今度もステージ袖でタバコを吸いながら津上のソロを眺める。
 聴いてて演奏にのめりこんだか、満面の笑顔で身体を揺すっていた。

 いざ自分のソロでは猛烈に凄みを感じさせた。
 最初こそメロディを感じさせたがどんどんノイジーさを増し、ひっきりなしにテナーに悲鳴をあげさせる。
 隙のないテンションで、とびきりの演奏だった。
 
 リズム隊はやはりテンポを上げてゆく。だが津上の時ほど急ピッチで加速せず、じわっとノリを高めていた。

 最後はギター・ソロ。ディストーションかな?フレーズよりも音の響きを重視していた。
 一方でリズム隊のテンポは一気に突き進む。
 芳垣はシンバル・スタンドをついにはぶっ倒す熱演。
 アンプにギターを押し付け、フィードバックさせて大友はソロを纏めた。
 "Flutter"だけで30分くらい演奏してたのでは。

 アンコールは大友いわく「封印してた」"Night Lights"。2年ぶりにやるそう。
 芳垣がトランペットに切り替え、白玉中心に吹く。
 静かで音がしたたる、幻想的な演奏だった。

 11時ギリギリまで使い、お腹一杯な演奏だった。
 菊地は1ステージだけなので「楽でいいな〜」とまだパワーを余らせてたな。
 
 「男気」のEMERGENCY!と繊細な音像のONJQ。
 対照的なサウンドを大友のギターで貫く、充実したライブだった。

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