LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/8/9 新宿PIT-INN
出演:BOZO
(津上健太:as,ss、南博:p、水谷浩章:b、外山明:ds)
BOZOを聴くのは初めてで楽しみだった。
バンドリーダーは津上健太、サイドメンに凄腕メンバーをずらりとそろえる。
むちゃくちゃ隙が無いジャズをやるのかな、と想像していた。
今夜は初CD"1st"レコ発ライブ。観客が30人くらい入ったかな。
20時を過ぎる頃、おもむろに津上と水谷がステージへ上がる。
他の二人がステージに上がってないのに、かまわず津上がメンバー紹介を始めてて面白かった。
<セットリスト>
1.Easy Crunch
2.朝霞み
3.「マウススープ組曲」
"Bees and the Mud"〜"Two large stones"
4.「マウススープ組曲」
"The Crickets"〜"The thorn bush"
(休憩)
5.Calm up
6.LI'L DARLIN'
7.いまだ見ぬ山
8.ロイカトン
9.But Not For Me
10.The Quintessence
基本はCD"1st"に収録の曲が中心。結局全曲演奏されたな。
最初のセットは、曲順までCDに合わせたとのこと。
津上はあらかたアルトを吹く。滑らかなソプラノ・サックスの響きを期待してたが、数曲で吹かれただけだった。
まずはアルトのフリーっぽいフレーズなイントロで"Easy
Crunch"がはじまる。 ベースとピアノが滑り込んだ瞬間、ぐうっとジャジーな雰囲気が広がるとこが快感だ。
外山は先日のperデュオと同様に、カウベルを首からぶら下げてフレーズへ織り込んでた。
ソロは津上から南へと進む。
とっぴな演奏はほとんどない。オーソドックスにフレーズがすうっと流れた。
そのサウンドの生み出すグルーヴが心地よい。
思い返せば2曲目くらいからBOZOのサウンドに、僕の耳が馴染んだろう。
とにかく外山のドラミングが気になった。
ビートを拍の頭や裏に打たず、変なところにアクセントをつける。4/4拍子のはずなのに、なんとも奇妙なリズムが提示される。
それを力技で水谷が合わせて、南が加わった時には暖かいグルーヴの出来上がり。すごいすごい。
津上はがしっとバックの演奏を受け止めて、ソロをきっぱり吹き鳴らす。
独特のテンションが常にステージから受けた。
外山が癖のあるリフを叩くたびに、水谷がにこにこ笑いながら身体をぐいっとまげ、おもむろにウッドベースの弦を弾いてたのが印象的。
津上は一曲ごとに丁寧にMCをした。
基本的に今夜は彼のオリジナルばかり。"朝霞"は徹夜明けの朝に作ったとか。
MCといえば、物販のCDを宣伝してる時。
発売時期や参加ミュージシャンを紹介するたび、メンバーの細かな突っ込みが津上に入る。
そのたび律儀に発言を修正してた姿が、妙なギャグになっていた。
"マウススープ組曲"はもともと4曲からなる組曲。
70年代に発売された童話"マウススープ"が作曲のきっかけだそう。2曲づつにわけ演奏された。
童話のストーリーをMCで説明したが、おもいきり話をはしょってるのか、むちゃくちゃシュールで意味不明な物語だった。
津上がソプラノへ持ちかえる。やっとぼくは演奏へ心ゆくまでのめりこめた。
今まで吹いてたアルトは、ところどころブレス・ノイズが気になっちゃって。
ふくよかなソプラノの音がなめらかで耳にすうっと溶ける。
でもそのあとでアルトの音を聴いても気にならなかったよ。あのノイズはマイキングのせい?
続くメドレー"The Crickets"〜"The thorn
bush"で、外山がついに立ち上がってドラムを叩きはじめた。
左右に置いたコンガもリズムに組み入れる。
アクセントをずらしたドラムが前回で、奇妙なノリが気持ちよい。
ここでいったん休憩。前半セットは約一時間。
後半の最初はやはりアルバム収録の"Calm up"でスタートした。
水谷は小さな棒で弦を叩く。ドラムとのコンビネーションで、フリー気味なイントロにした。
そのまま津上のソロに続きピアノが滑り込んだとたん、ごきげんなグルーヴ大会になった。
続いてアルバム未収録曲を二曲続ける。
ニール・ヘフティの"LI'L DARLIN'"と津上オリジナルの"いまだ見ぬ山"。
BOZOを聴くのは初めてなため、馴染みの選曲かどうかわかりませんが。
"LI'L DARLIN'"ではコンガの上にいくつもカウベルを載せ、鉄棒で叩き分けて外山はリズムを組み立てる。
アルトサックスがロマンティックにメロディを奏でる好演だった。
"いまだ見ぬ山"はレコーディングもしたが、収録から漏れたとか。
リフが個性的な曲だったし、次の機会にはCD化してほしい。
演奏はすいすい進行する。
続く"ロイカトン"はアルバムのタイトル候補だったそう。タイの祭りをモチーフにした曲だ。
これが今夜のクライマックスかな。
アルコで金属的な音を水谷がベースから引き出す。
外山は首を揺らし、ぶら下げたカウベルに鉄棒をぶつけてランダムなリズムを合わせる。
イメージ的にゆったりした演奏を想像してたが、常にどこか緊張した空気の曲だった。
あと二曲は、ひたすらまったり路線。
ガーシュウィンの"But Not For Me"(アルバム未収録)から、クインシー・ジョーンズの"The
Quintessence"へ続ける。
外山がどんなにリズムを崩しても、南や水谷がすぐさま合わせて素敵なグルーヴにしてしまうのに舌を巻いた。
後半も一時間くらいかな。あっというまに終わってしまった。
演奏は一見聴きやすそうだが、すごく奥は深そう。
リズムの対比が鍵なんだろうか。じっくりCDを聴きこんでみたくなった。