LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/8/3 新宿ピットイン(昼の部)
出演:外山+大儀見デュオ
(外山明:ds&perc、大儀見元:perc)
客席の真中をスポッと空け、向かい合うようにセットが向かい合う。
聴き手はぐるりと周囲を囲って聴く、変則的な座席設営だ。
あんがい観客が多い。20人くらい入ったのかな。
数ヶ月に一度くらい、外山と大儀見はここでライブをやっている。
今回は7月末に行ったデュオ・ツアー(名古屋、大阪、鳥取で演奏)のファイナル・ライブでもあるようだ。
外山は通常のドラムセット。タムをボンゴ風の小さな太鼓にしている。
いっぽう大儀見はコンガを5〜6個並べた編成。
二人がそれぞれのセットに座る。今日はゲストが二人いるみたい。
マイクを立て、女性がヴォイスで参加する。
もう一人は3歳くらいの幼児。大儀見の息子らしい。
愛敬を振り撒くだけかと思ったら、いっちょまえにスティックを構え、そのままフル・ステージで演奏に加わったから驚いた。
最初は何事かと思ったが、あんがいまともな叩き方で面白い。
彼のために各種カウベルを組み合わせたスタンドが与えられる。
ランダムではあるものの、いくつものカウベルを叩き分ける。
ときにはスタンドにぶら下がった鉄板を、小さな鉄棒で乱打。
いちおう音楽を聴きながら使い分けてるみたい。たいしたもんだ。
冒頭、外山が首からぶら下げたカウベルを叩く。大儀見も探るようにコンガを一打ち、二打ち。
どうやら大儀見ジュニアを演奏へ積極的に絡ませたいようだ。
さすがにジュニアは意図にぴんと来ず、おずおずとカウベルを一打ち、一打ち。
音像が静かなうちは、自分勝手に叩かないみたい。
そのままゆっくりとビートは盛り上がっていった。
ヴォイスはパフォーマンス風のランダムな叫びを多用。
メロディのないサウンドだけに、ワイルドな雰囲気だ。
前半部分は外山と大儀見がリズムをうねらすにつれて、ジュニアが絡む構図が多かった。
カウベルの連打で飽きてきたな、と思う頃に、すかさず鉄板を叩き分けるジュニアのセンスが年齢を考えるとすごい。どこまで意識してるかわかんないけど。
だがジュニアがついて来れるように外山・大儀見が肩の力を抜いたプレイだったため、グルーヴはとてもまったり。
中間部から、ぼくはうとうとしながら聴いていた。約40分の演奏。
後半セットでは、外山がステージ横に置かれたガムラン風のマリンバを叩く。大儀見は引き続き各種コンガをプレイ。
女性ヴォイスも大儀見ジュニアも、引き続き演奏に加わる。
後半はパーカッション・デュオのみでリズムの奔流の醍醐味を聴こうと思ってただけに、ちょっと残念。
ところが実際にはぼくの望みがかなった。
冒頭は第一セットのように大儀見ジュニアを加え、リラックスした演奏。
ただしマリンバで繰り出すオリエンタル風味なメロディが、音像に締まりを与えた。
複雑な高速フレーズを叩き出す、外山のマレットさばきがさすが。
ここでジュニアのカウベルセットにハプニング。
1個のネジが緩み、ずり落ちてくる。ジュニアはなんとか治そうと悪戦苦闘。
必然的に、聴こえる音は外山と大儀見だけ。
一気に外山がぐいぐいノリを厳しくしていった。
ハイテンションでマレットが踊る。奔放にフレーズがばら撒かれる。
大儀見が食いつき、緊張したアンサンブルの始まりだ。
ジュニアはしばらくしてセットの応急処置をつける。ずり落ちるカウベルをぐいぐい逆方向に押し付け、ちょっと叩いても落っこちてこないようにした。
おもむろにカウベルを二三度叩く。
第1セットでは、外山がジュニアのペースに合わせてレベルダウンして音楽が成立していた。
ところが外山はマレットの勢いを崩さない。そのまま猛烈なビートを維持する。
この時の大儀見ジュニアの態度も立派だ。自分が音楽に加われないことをわかったんだ。
演奏を止めて、客席をちょろちょろしだす。
自分の音楽を客観的に聴ける耳を持ってることにびっくりした。3歳児ってみんなあれくらい分別ついてるの?
自分勝手に叩きまくって、音楽をぶち壊しにしないかなって心配したのに。えらいぞ。
マリンバとコンガのセッションはフェイドアウトぎみに終わる。
このひとときが、このライブで一番の聴きどころだった。
再び外山はドラムセットへ座る。
ジャンベを加えて、ランダムに叩いた。
ここから大儀見ジュニアも加わる。
テクニックが追いつかず、出したい音と出る音にギャップがあるみたい。
いまいち二人のグルーヴとずれている。こういうのはポリリズムとは言わないだろうなぁ。
後半戦はずいぶん長く演奏していた。約1時間くらいかな。
タイマーをセットしそびれて、終わるタイミングに気付かずえんえん演奏してしまったとか。
大儀見ジュニアの加わるハプニング付ライブは予想外のクオリティだったが、後半は完全に外山・大儀見の二人だけで、パーカッションの饗宴を楽しませて欲しかった。
その点で、ちょっともどかしいライブだったかな。