LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/8/2  吉祥寺 WARP

出演:大友良英、JON(犬)

 ドイウロコが企画したイベント"規格外vol.2"へ行ってきた。
 昼間に降ったすさまじい雷を引き連れた大雨が、観客の出足へ影響したかな。
 ぼくが入場したときはすでにイベントは始まってたが、動員は数十人くらいといったとこ。あらかたフロアに座ってDJを聴いていた。
 他に数バンド出演したが、ぼくが見たミュージシャンだけ紹介します。

JON(犬)

 OZディスクのコンピで音を聴いて以来、一度ライブを見たかった。
 JON(犬)は犬の(今は狼か)の着ぐるみを着て、足踏みオルガンで弾き語る女性ミュージシャン。
 
 ステージには小さなオルガンがセッティングされる。 
 DJがザッパの"Call any vegetables"を廻す中、着ぐるみ姿でJON(犬)がよたよたフロアを横切り登場した。

 いきなりオルガンでメロディを弾き始める。着ぐるみ姿なのにうまいもんだな〜。
 まずはDJの音を受けてザッパの"Let`s make the water turn black"を一節演奏した。

 そのあとはオリジナルを5〜6曲。面白いや。
 演奏は調子っぱずれにぶかぶか鳴り、歌は輪をかけて奇怪な音程だ。
 着ぐるみのせいか声がこもり、いまいち歌詞が聞き取れない。
 甲高い声のボーカルが、とてもユニークだった。

 足踏みオルガンを弾く音は、演奏中もひっきりなしにバタバタ鳴るのが難点。
 あのノイズは狙いなの?

 ポップスとは言いがたいし、えんえん長丁場で演奏されたらしんどいかもしれない。
 でも20分くらいの短いステージで、単純に楽しむうちに終わってしまった。
 ほとんど動きのないスタイルだが、ちょっと顔を動かすたびに、ぬいぐるみの瞳がライトに反射してきらりと光る。
 まるで表情が変化してるみたいだった。
 
 ラストの曲は"Night on the planet"。トム・ウエイツのカバーだそう。
 ただし歌詞はJON(犬)のオリジナル。
 この曲でのパフォーマンスがかっこよかった。

 今までマイクへ屈みこむように歌ってたのに、この曲だけは顔をステージ側へときおり向けた。
 大きなぬいぐるみの顔へライトが効果的にあたり、なんともいえない異様な雰囲気を醸し出す。
 JON(犬)の存在感を、初めて生々しく感じた。
 エンディングでのけぞりながら弾く姿が、妙に勇ましかったぞ。

大友良英
 
 エレキギターを膝に乗せ、無造作にライブの開始。
 まずはフィードバックを店内へ高らかに響かせる。
 甲高い音が複数からみあい、微妙に変化した。

 ギターのピックアップ部分を左手で鷲掴みにして、右手はときおりピックをひらめかす。
 そっとネックへピックを押し付けるたび、かすかに音像が変化した。
 耳へ飛び込む高音のノイズが心地よい。

 音は大きめだが、耳鳴りするほどじゃないのがありがたい。おかげで細かな音の変化も着実に楽しめた。

 10分くらいこのフィードバックを聴かせていたろうか。
 唐突にピックを構えて、弦を弾く。
 一瞬で音の風景が変わった。すごいぞ。スリリングさにぞくっと来た。

 ひしゃげた音でジャズっぽいメロディをゆっくり奏でる。
 すばらしくかっこいい。
 エフェクターで歪ませた音で、太く旋律を紡いだ。

 このメロディ中心な演奏も約10分。もっともっと聴いていたい。
 そしてプレイは再び、冒頭と同じフィードバック中心の単音ノイズへ変化した。

 金属棒を取り出し、なんどもピックアップへ押し付ける。
 そのたび、ひときわ激しく音が軋んだ。
 ノービートな演奏だけど、エンジン音のような脈動を感じた。
 何人かの観客は、そのうねりに合わせて身体を揺らす。

 フィードバック音はぐいぐい激しくなった。
 メロディは欠片もなくなり、混沌がステージを支配する。

 唐突に音が消え、大友が一礼してライブが終了。

 終演後、片付ける大友の足元をぼくを含めた数人の客が覗き込む。
 どんな機材で今のノイズを出してたか知りたくって。
 意外なことにエフェクターは二つだけ。横に一台、ワウペダルがあるのみ。

「ただのディストーションだよ。アンプでフィードバックさせてるんだ」
 大友が笑いながら説明してくれた。

 約30分。男っぽくてクールな上、むちゃくちゃ迫力あるステージだ。
 静と動、ノイズとメロディなど、さまざまな要素を詰め込み両立させていた。

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