LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/7/20  表参道 FAB

  〜変拍子で 踊ろう!vol.8 「7拍子9拍子は当り前!変拍子以外禁止!」
出演:CICALA-MVTA、あぶらだこ、Pochakaite malko、RUINS

 磨崖仏が企画した、変拍子バンドを集めたイベント。
 前回(99/12/28)とは異なり、吉田達也が叩かないバンドもブッキングされた。
 もっともどのバンドも過去に吉田と共演経験あり。いっそ特別ゲストで叩かないかなって期待したが、かなわなかった。

 FABは行くの初めて。動員は200人くらいか。ほぼ満員状態。思ったよりこじんまりしたハコだった。
 辛かったのが当日のPA。高音と低音が異様に強調され、耳にキンキン突き刺さる。音の細かなニュアンスがわからず困りもの。
 
RUINS
(吉田達也:ds,Vo、佐々木恒b,Vo)


 「『変拍子で踊ろう』なので、よければ踊ってください」とからかう吉田のMCのあと、演奏が始まった。

 まずは一曲一曲区切って演奏。これは新譜からかな。曲名不明でした。
 間を活かしてじっくり叩く。
 佐々木は細かくサンプラーを演奏に盛り込んでいた。
 冒頭に書いたとおりいくぶん耳に辛い音だが、吉田のタムがカンカン鳴るのはやっぱり気持ちいい。

 そのあと、一気に7曲メドレー。見事に次々曲が切り替わる。
 途中では、インプロっぽい瞬間も聴けた。

 今夜は新譜「TZOMBORGAH」からか、更なる新曲群で押すと思ったら。
 意外に前のアルバムからも選曲する、王道セットリストだった。

 前々作「VRRESTO」から"SNARE"や前作「PALLASCHTOM」から"GARAVISS PERRDOH"、"KIPPSSIDAMN"などを演奏。
 どの曲も微妙にアレンジが変わってる。リズムパターンやハモりのタイミングをよりタイトに組み立てていた。

 いったんMCを挟んだあと8曲メドレー。
 こんども"PALLASCHTOM"や"BLIMMGUASS"を披露した。
 佐々木はぴょんぴょん飛び跳ねつつ、鋭くベースを叩き込む。

 そしてライブが進むにつれ、吉田の手数は増えてゆく一方。
 アンサンブルはきっちり組み立てられ、安定していた。
 "BLIMMGUASS"で連打される、スネアの音色がとてもかっこよかったっけ。

 わずか30分ながら、充実したライブだった。

Pochakaite malko
(壷井彰久:vln、桑原重和:b、荻野和夫:key、立岩潤三:ds)


 壷井が加入したポチャカイテ・マルコは見るの初めて。
 暗黒チェンバー・プログレっぽい音像が、予定調和な構成で進行する。

 中央に壷井がすっくと立ち、ときおり弓でリズムを取りながら、5弦バイオリンをひたむきに弾き続けた。
 ソリストが明確で、わかりやすいアレンジだったと思う。
 今回もアンサンブルで即興部分がなく、少々辛かった。

 "不整脈"、"5th element"、"Holy Mountain"など、なじみのレパートリーを中心に演奏。約30分強のステージ。

あぶらだこ
(長谷川裕倫:vo、小町裕:b、伊藤健一:ds、大國正人:g)

 客電が落ちるなり、いきなり歓声。今夜一番の盛り上がりだった。
 
 まずはg,b,dsの三人だけで一曲演奏。
 変拍子を多用しているが、テクニック優先の音楽じゃない。
 自分らの音楽像を明確にしたら、たまたま変拍子だったって感じ。

 そしておもむろにヒロトモが登場。
 客席から腕が何本も突き上げられ、テンションがぐいぐいあがる。

 ヒロトモは直立不動。視線を泳がせながら、無表情に叫び始めた。
 バックバンドはときおりリズムを揺らせながら、奇妙なビートの演奏をぶちまける。
 歌声は演奏に埋もれて、なにを言ってるかまったくわからず。
 収まりの悪い譜割りのメロディをそのまま、バンドが変拍子フレーズに昇華させていた。

 メドレー形式でがんがんステージは進行。
 たよりなげに立ち尽くすヒロトモだが、言葉を激しく吐き捨て、ときおり高らかに叫ぶ。
 演奏がどんなに激しく揺れても、ボーカルの唯一のステージアクションはマイクスタンドをたまに握るのみだった。

 ハードコアよりの演奏は今夜のバンドとは違和感あるが、インパクトはピカイチ。

 クライマックスは「Row Hide」だ。吉田達也が参加した「木盤」へ収録の曲。
 ステージ前方で、いきなりモッシュが始まった。
 ヒロトモは表情ひとつ変えず、歌を続ける。
 荒れ狂う客席や演奏と、冷静に歌うボーカルとの対比が面白い。すばらしくかっこよかった。

 ネットで調べてみたら、「Row Hide」はラスト曲の定番じゃないみたい。
(2001/5/5の渋谷CLUB eggsiteでのライブぶりか?)
 ずいぶんいいタイミングで演奏してくれたんだな。

CICALA-MVTA
(大熊ワタル:cl、太田惠資:vln、桜井芳樹:g、坂本弘道:vc、関島岳郎:tuba、ツノ犬:ds、吉田達也:ds)


 シカラムータは初めて聴いたが、大熊の音楽性に収斂されたバンドだな、と感じた。
 先日の欧州ツアーに同行した吉田達也が、ドラマーとしてステージでずっと叩く。

 まずは"急な坂”からスタート。
 北欧、アラブ、クレツマー、ちんどん。いろんな音楽性が浮かんでは消えてゆく。
 ソロや即興は控えめ。大熊のクラリネットがサウンドの中心みたいだが、PAバランスのせいでよく聴こえない。
 今夜のPAでいちばんワリを食ったのがシカラムータでは。

 二曲目から女性ダンサーが参加。暗黒舞踊っぽい踊りを披露する。
「よかったら踊ってくださいな」と大熊はMCで促すが、ダンスミュージックというより、じっくり聴く音楽じゃないのかな。

 二曲目の"レクイエムのためのスケッチ”は比較的しっとりした曲。
 坂本弘道はステージに屈みこみ、エフェクターをいじってノイズを振り掛ける。
 桜井芳樹がソロを取り、するっと太田や大熊のテーマへ滑り込むアレンジがきれいだった。
 
 次の曲が素晴らしい。吉田達也作曲(曲名聞き漏らしました)の、変拍子ビシバシな作品。
 むりやりダンスにこじつける、ダンサーの振り付けが爆笑だった。

 リズムアレンジが面白いうえ、中盤で太田・吉田・大熊らが聴かせるアカペラ・ハーモニーがびしりと決まる。
 この曲はじっくりCDで聴きたいな。

 なお、坂本がおもむろにチェロをひっくり返して火花を飛ばしてた。
 降りかかる火の粉に、たまらずダンサーが避難する。
 大熊も笑いながら、洋服で払ってたな。
 
 シカラムータの演奏もだいたい40分くらい。あっけなかった。
 最後は"ターキッシュ・ダンス"。
 つの犬と吉田のドラムソロが挿入されたのはこの曲だっけ?

 メンバーが屈みこみ、ドラムセットをくっきり見せる。
 吉田とつの犬は、ひたすらタムを連打。
 さほどリズム的に複雑なことをやってるわけじゃない。
 手数はめっぽう多いが、普通のフィルだ。
 だけど、圧倒的な迫力に夢中になって聴いていた。ドラムソロがここまで心に響いたのはひさしぶり。

 アンコールにも1曲だけ応える。トリのわりにはそっけないステージ。
 太田が「やっとエンジンがかかってきた」とぼやくのも当然かもしれない。

 磨崖仏イベントとして、吉田達也の出番が少ないのは残念だけど。
 多種多様な音楽性を飲み込んでしまう、吉田の特長がよく出たイベントだった。
 さて、ぼくはこのあともう一本ライブへ行ってきまっす。

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