LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/7/19 江古田 cafe Flying Teapot
出演:Warehouse
(鬼怒無月;g,etc、高良久美子:vib,per、大坪寛彦:b,etc)
cafe Flying Teapotで約半月にわたって行う「まぼろしの世界」博覧会の一環としてWarehouseのライブが行われた。
7/21発売予定の1stCDレコ発でもある。
店内には「まぼろしの世界」各種CDジャケの版下や別テイク、ライブ写真などが並ぶ。
観客の入りも順調で、数十人はいたかな。意外に女性客が多い。コンパクトな音楽性からだろうか。
ジャケットのイラストを担当した高野文子も、観客として姿を見せていた。
開演時間を15分ほど押し、店内でくつろいでたメンバーが楽器を手にする。
ステージ奥に高良がヴィブラフォンやパーカッションを置き、上手に鬼怒が座った。足元にエフェクターを各種並べ、ギターやシンセで周りを囲む。
下手は大坪。胴のみのエレクトリック・ウッドベースを使う。
アンプの後ろに巨大な岡部洋一ポスターがあり、高良にMCで「つるつる頭コンビ」とからかわれていた。
全員が目の前に譜面を置き、じっくり見ながら演奏してたのが新鮮だった。
(セットリスト)
1.Fuh
2.Cat box
3.Ezumi
4.Good night honey
5.MUGI no march
6.Cazoo suite#5
7.Bunbaka
(休憩)
8.Fuhi Fuhi
9.Liquid Bounly
10.8/28
11.”鬼怒ボサノヴァ”<アルバム未収録曲>
12.Tonekey
13.Mad cafe
14.Mona`s roux
(アンコール)
15.Dog and pepper
レコ発を意識してか、第一部はCDの曲順そのまま。
高良と大坪がペットボトルに息を吹く音でリフを組み立てる「Fuh」をイントロに、「Cat
box」へ繋げた。
鬼怒はギターを弾く合間にシンセへ手を伸ばし、ノイズを挿入する。
CDと同じアレンジだった。
続く「Ezumi」で奏でるメロディーのキュートなこと。
3月のライブでもこの曲を聴いたが、こじんまりとしたセッティングで涼しげに舞い上がるメロディを奏でる瞬間の、爽快感がたまらない。
第一部はほとんどソロなし。淡々と曲をこなしてゆく。
メンバーによる即興の応酬を期待してたから、拍子抜け。
一方でMCは、しょっぱなから弾ける。高良が司会による、雑談風しゃべりが楽しい楽しい。
鬼怒はぶっきらぼうに二言三言突っ込むだけ。機嫌悪いのかな。第二部のMCで「歯が痛い」と言ってたので、そのせいかも。
第一部MCの話題は京都のFM番組収録ネタ、まぼろし展示会の紹介、初CDの営業など。数曲演奏するたびに、いっぱいおしゃべりが入る。
緊張感漂う演奏とのギャップが可笑しい。
MCネタで印象に残ってるのは「Cat box」(鬼怒の作曲)を弾く時「どんな風景が頭に浮かんでいるか」って話題。
話をふった高良は「金髪の少女が自転車で軽やかに走ってる風景」ときれいにまとめる。
実際「Cat box」は、ちょっと翳ったメロディがきれいな佳曲だ。
ところが大坪は「おばちゃんがイトーヨーカドーのバーゲンへ自転車で駆け込む姿」らしい。
作曲者の鬼怒は「猫の死体が宅急便で届く、きれいな(?)イメージ」だと主張し、高良は「初めて聞いた、それ」と意外がっていた。
さらに「送った少女はサムで、宅急便は外国で・・」と細部を補足する鬼怒だが、いかにも思いつきをそのまま喋るだけ。
だから高良に「脳に一度、言葉を通してから喋ってる?」と突っ込まれ、爆笑を呼んた。
肝心の演奏は高水準が続く。メロディがロマンティックに繰り出され、幻想的な空気が漂った。
曲によっては大坪がカズーやリコーダーの二本吹きで、音色に彩りをつける。
一部のラストは「Bunbaka」。名称不明な、筒を縦に数本並べた打楽器でリフを高良が叩く曲。
ここでだいぶ鬼怒のソロがたっぷり挿入された。
バンジョーを膝に乗せ、フレーズを矢継ぎ早に弾きまくる。胴を叩く奏法も効果的に挿入。
休憩を挟んだ第二部は、やはり高良・大坪によるペットボトル演奏の「Fuhi
Fuhi」から。
第二部ではソロや即興っぽい瞬間を多く取り入れた。
ややこしくもキュートな曲をきっちり再現しつつ、自由にソロを折込み、充実した演奏だった。
「8/28」のあたりから、鬼怒が曲順メモを間違えたらしく「次なにやるんだっけ?」と二人へ聞き続けていた。
ちなみに「8/28」とは、先日行われたダンサーとのコラボライブに出演した、ダンサーの誕生日だとか。
続く”鬼怒ボサノヴァ”は高良のMCより。正式曲名はちゃんとあるはず。アルバム未収録曲です。
しゃくるギターのリフに乗った、きれいな曲だった。確かにボサノヴァっぽい。
その次に演奏された「Tonekey」も似たような雰囲気で、きれいな流れな選曲だった。
第二部でものんきなMCは炸裂。
今後のツアー紹介をしつつも、話題はあちこちへ飛ぶ。
高良は鬼怒と大坪に「タコ/イカ」「ヘップバーン/モンロー」のどちらが好きか尋ね、「どの組み合わせで答えたかで、性格がわかる」と一人納得していた。
答えを言わず演奏へ入ってしまい、どんな意味があったか謎です。今後のライブMCの中で解明されるのかな・・・?(笑)
鬼怒はリハのときに「おおシャンゼリゼ」をよく弾くらしい。
「練習に最適だ」と主張する。冗談と思って聴いてたが、「せっかくだから弾いてみなさいよ」と大坪に促され、一節を披露。
確かに小指がぴょこぴょこ動く、複雑な運指だった。へえぇ。
その「おおシャンゼリゼ」をイントロにした「Mad
cafe」が今夜一番の名演だったろう。
ソロあり、インプロあり。盛りだくさんなアレンジで、三人のアンサンブルを堪能した。
巧みにエフェクターを切り替える鬼怒のテクニックがすごい。
最後の曲は、アルバムでも最後を飾る「Mona`s
roux」。
鬼怒は小さな8弦の楽器を爪弾き、大坪はウクレレを構える。
優しく、心地よいフレーズを店内に響かせた。
大きな拍手が起こり、すぐさまアンコールへ。
「Dog and pepper」では再びバンジョーを抱え、高速フレーズを鬼怒が滑らせる。
アラビアっぽい猛烈なフレーズを、フレットを見もせず的確に弾くテクニックがさすが。
さくっと演奏を終わらせ、ライブが完了した。
しめて2時間弱かな。充分なボリュームだ。
今後warehouseは小さなハコを中心に演奏を続けるとか。ぴったりだと思う。
こじんまりした空間こそが、彼らの繊細な音楽に似合う。
欲を言えば、今度はライティングに凝ったステージを見てみたい。
幻想的なサウンドが、さらに強調されて楽しめるはず。