LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2002/7/13   高円寺 20000V

出演:不失者、K2 + INCAPACITANTS


 リハが押して、30分ほど開場を待たされた。
 サウンド・チェック中な豪音が店内から漏れ、予告編を聴いているようだ。
 すでにビリビリ壁が揺れている。
 
 ほかに2バンド出演したが、いまいち趣味じゃなかったので感想は割愛します。
 観客はまずまずの入り。改めて感じたが、20000Vはステージが低いよ。
 スタンディングなので、後ろにいるとステージで何をやってるかさっぱりわかんない。

K2 + INCAPACITANTS (20:05〜20:30)
 (T・美川:electronics,vo、F・小堺:electronics,vo
  K2:electronics,vo)


 おもむろに登場した3人は、挨拶無しで演奏を始めた。
 ぼくが立ってた位置からは小堺がまったく見えず、どんなパフォーマンスをしてたか不明。

 まず美川もK2もマイクを持って絶叫しだす。
 機材から吹き出る豪音が耳をつんざき、なにを叫んでいるのかまったくわからない。
 ひとしきりわめいたあとに、今度はテーブルのノイズマシンを操作開始した。
 
 もっとも音像は終始フルボリューム。たまーに音像の変化を感じるものの、ビートもリズム感もないハーシュノイズがひたすら支配する。

 美川は以前見たときと似たような機材構成。鉄板二枚をトリガーにし、横に置いたエフェクターで変化させる。
 体調がいまいちなのか、テンション低い。
 ペットボトル風のもので激しく鉄板を叩いたりもしてたが、終始うつむき加減だった。
 唯一、マイクで叫ぶ時のみ、鋭い視線を客席へ飛ばす。

 K2はMTR風の機材を中心に操作。細かくツマミをいじり、音像を変化させたと思うが・・・すみません。
 たらふく豪音を耳に注ぎこまれ、サウンドの変化がよくわかりません。

 ボリュームこそ大きいが、冒頭部分はさほど低音成分がない。
 神経質な高音中心で、ふわりと肌にノイズがまとわりつく。
 
 ところが後半部分に迫力は右肩上がり。ぶおんっと低音がスピーカーから襲い掛かる。ぐいぐい音がでっかくなって、一瞬びびった。
 小堺がマイクを引っつかみ、ステージ前へやってくる。

 客席へ身を乗り出し、叫びながら煽り始めた。
 前回聴いた時はそのまま客席へダイヴしステージが終わったが、今夜は客がコサカイのアジに応えモッシュが始まった。
 ひとり元気な若い女の子がいて、嬉々として廻りの観客にぶつかりだす。
 ビートがないノイズの中、数人の客を巻き込む。

 小堺が、続いてK2が。マイクを掴んで客席に飛び降りた。
 観客と一緒にモッシュを始める。
 サウンドは美川一人が引き受ける。ほとんど音量は変わらなかったのがすごい。
 しばし大騒ぎのあとメンバーがステージに戻り、そのまま楽屋へ淡々と引き上げる。
 熾烈なライブだった。

不失者(21:00〜22:00)
(灰野敬二:g,vo,etc.、小沢靖(?):b)


 ここまで店内BGMは、ルー・リードの「メタル・マシーン」。が、BGMがレトロなストリングス・ミュージックへ変わった。
 お香の匂いもほんのりしだし、急速に灰野の世界に変わる。
 そこかしこでタバコを吸ってるのが、唯一灰野のライブっぽくないけど(笑)

 30分ほどと長めの休憩をはさみ、不失者が登場した。
 冒頭にベースが刻み始めたリズムは、先日の灰野生誕ライブで聴いたパターンとよく似てる。
 シンプルながら、ぶっきらぼうなグルーヴがたまらない。

 ベースも灰野も、足元にエフェクターがずらりとならぶ。
 ベースの足元にはセットリストらしきものまで貼ってあった(6曲ほど記入)。
 ちなみにセットリストとおり演奏したかは不明です。大体6曲くらい演奏した気はするけど。
 
 ベースのフレーズに載って、灰野がエレキギターを弾きつついきなりシャウト。
 普通のロックバンド然とした構成が意外だった。

 ギターを抱え、ステージ狭しと動きながら弾き殴る。髪の毛を激しく振り乱す。
 リバーブをたんまりかけ、団子になった音をステージからぶちまけた。

 灰野の叫びはメロディなし。ギターをかきむしる合間に、即興的に詩の断片を吼える。
 かっこよかったけど、やっぱり座ってじっくり灰野の音を味わいたい。
 スタンディングで疲れた身体にはきつかった。

 2曲ほど演奏したあとかな。灰野がステージ上手にかがみこみ、大正琴らしき楽器をかき鳴らす。
 今まで底に響く豪音が支配してたから、きらびやかな高音の響きは心地よかった。
 メロディはさほどないものの、せわしないフレーズが爽快だ。

 しばらくして再びギターを掴む。もしかしたら琴風の楽器をループさせて、ギターの音を重ねてたかも。耳鳴りがすごくて、いまいち自信ありません。
 ギターの音も、高音を強調しキンキンな音色で弾いてたし。

 ベースのフレーズ感覚が抜群だ。
 灰野におもねらず、好き勝手に弾くでもなく。
 奔放に低音を操りつつ、灰野の音と違和感が全然ない。すばらしい演奏だった。
 身体に染み込む轟音こそが心地よいのに。「小さな音でじっくり聴いてみたいな」って、妙なことを考えていた。

 再び灰野がステージ上手へ座り込む。
 今度はノイズマシン。操作してる手元はよく見えなかったが、なにやらツマミをいじくる。
 アンビエント・テクノ風の音像が紡がれた。
 音量は馬鹿でかく、ビート感も特になかったが。

 またギターを持ち、しばし奏でたところで、ベースに耳打ち。エンディングへの合図かな?
 演奏はそのまま即興っぽく、たんまりリバーブがかかった音を膨らませる。

 そのインプロをずうっと続けた後。ベースが再び、冒頭に聴かせたリズムパターンらしきものを弾き始めた。
 ひとしきり演奏したところで、ライブが終了。

 ここまで純粋ノイズを聴きつづけただけに、灰野の音楽がことさら染みた。
 後ろの方へ避難して聞いてたから、音量もちょうどよかったし。
 
 灰野はとうとうドラム演奏なし。たぶん対バンや客層の配慮だろう。
 TPOで音楽を使い分けつつ、常に自分らしさを提示できる灰野のバランス感覚がすごい。
 インパクト的にも、音楽的にも。不失者が一番面白かった。

 ただ立ち尽くめでしんどかった。灰野ファンらしき黒ずくめな女性も、途中でしんどそうに座ってたのが印象的だったな。
 「不失者のライブは長い」と噂を聞いてたが、今夜は約1時間とシンプルなもの。今度は座って、じっくり聴きたい。

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