LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/3/17 西荻窪 BINSPARK
出演:MUMU、Noesis、Sleeping
Beauty
この日は裏で、大友良英ニュー・ジャズ・クインテットのレコーディング・ライブあり。どっちへ行くか迷った。
けっきょく比較的のんびり聴けると推測したのと、MUMUの新曲が楽しみでBINSPARKを選ぶ。
予想通り(?)ハコのなかは、多少空席が残るくらいなほどほどの入り。
Sleeping Beauty(19:15〜19:40)
(小出亮:g,Vo、アンソニー八百谷:手製楽器、バグパイプ等、エガワリサ:Vo,音源録音担当)
聴くの初めて。かなりパフォーマンスを意識したステージングは、予想外に楽しめた。
演奏前にアンソニー八百谷が腰へベルトを巻く。鈴がいくつもつけられており、腰を振るとジャラジャラ鳴るしくみだ。
小脇へ土管みたいにデカい金属管を抱え込み、パーカッションとして打ち鳴らした。
小出亮はシャープにギターをかきむしる。
背中を向けてMTRらしきものをいじっていたエガワリサが、バックトラックを呼び出した。
超高速テクノがステージ上へ溢れ出す。
エガワは背筋を伸ばしてすっくと立つ。
マイクへむかい、ハイトーンでシャウトをはじめた。
PAバランスなのか、そもそも音楽性なのか。喚きたてるボーカルは、ほとんど何を歌っているか聞き取れない。
混沌としたアヴァンギャルド・パンクみたいな感じだが、コミカルなアンソニーの演奏風景と、エガワリサの存在感に惹きつけられる。
バックトラックとかぶり気味ながら、小出のギターも小気味よかったな。
アンソニーの楽器が面白い。2曲目では、めちゃくちゃながいオーボエみたいな楽器を持ち出した。
単音だけでなく、メロディを吹き分けてたのがすごい。
かなり肺活量を必要とするのか、小出がMCする間、アンソニーは息も絶え絶えになっていた。
その他にバグパイプまでアンソニーは持ち出す。生でバグパイプ見たのは初めてだ。
もっともマイク位置が合わないのか、どの楽器もいまひとつ音が聴こえにくかったぞ。
コンタクトマイクを体か楽器につければいいのに。
短めな曲ばかり、7〜8曲やったのかな。バックトラックがめまぐるしく変化する。
ブレイクを巧みに挟み込む構成が良い。もうちょいメロディがくっきりしてるといいのにな。
ただ、打ち込みをベースにしてるからステージの流れが固定されてしまうのが残念。
即興で盛り上がっても、小節数が固定されてしまう。
何箇所かでせわしなく曲が始まり、余裕なく感じてしまう瞬間もいくつかあった。
荒削りながら、パフォーマンスとして充分楽しめたライブだった。
あっという間に駆け抜けて、すぐさまライブが終了。
Noesis(19:50〜20:35)
(内田典文:b、ピエール川口:syn、三浦陽子:key,syn)
短いセットチェンジをはさみ、ライブの開始。
他のメンバーの準備ができる前、BGMのテクノに合わせてピエール川口がシンセを遊び弾きしてたのが面白かった。
まずは三浦陽子がエレピを静かに撫ぜる。
音数の少ないきれいなフレーズが、小さなボリュームで繰り返される。
しばし後、ピエールがシンセで単音を乗っけた。
ドローン風な演奏ながら、時折ピッチや音色を変える。
ここまでベースはなにも演奏しない。ふたりの淡々とした演奏が続く。
おもむろにベースを構え、軽く弦を弾いた。ディレイでほわほわに加工された低音が舞う。
最初から延々とアンビエント・テクノ風な演奏。変化はほとんどない。
3人はうつむき加減で、ひたすら演奏に集中する。
とはいえ鍵盤を抑えたり、つまみを捻ったり。地味な作業が多いので、視覚的に華がない。
途中でハードに盛り上がるかな、と期待してたが。
とうとう最後までおとなしいサウンドのままで終った。
曲調自体は音響系を前面に出してて楽しめるけど。
ライブハウスの硬い椅子で聴くには、ちょっと辛いかなぁ。CDでじっくり聞きたいな。
MUMU(20:50〜21:30)
(植村昌弘:ds、中根信博:tb、坂本一孝:key)
さあて、お待ちかねのMUMU。二ヶ月ぶりのライブになる。
前回はリハ不足で断片の紹介にとどまった、新曲の披露が楽しみだ。
あっというまにセットチェンジ終了。今日はどのバンドもセットチェンジに時間かけなかったのが嬉しい。
演奏前にモニタスピーカーから打ち込み音を坂本が出し、植村が鳴りを確認する。
打ち込んだフレーズを演奏に重ねるのかな、と思ったが。どうやらメトロノームだったらしい。
<セットリスト>
1.役人#7
2.MC#1(新曲)
3.役人#9(新曲:フルサイズ)
4.役人#6
5.98/3/10 #2
6.99/5/23 #3
セットリストはMUMUのHPから引用しました。
まずは開放的なメロディが楽しい「役人#7」から。
トロンボーンの音色は冒頭こそ詰まってたが、ライブが進むにつれどんどんくっきりしてきた。
全般的に溌剌とした快演ばかり。ここ最近のMUMUのライブの中でも、出色の演奏だったと思う。
特に今夜はどの曲も長めのサイズだと感じた。トロンボーンを前面に出す熱演のアレンジだ。
もしかしてトロンボーンはソロを取ってたかもしれない。
MUMUのことだから、全部書き譜の可能性もあるが。
特に「役人#7」はいつもより引き伸ばした構成に聴こえた。かっこいいいな。
一曲終わったところで中根が曲紹介。曲名を言った時、観客から笑いが漏れるのは、もはや恒例か。
ちなみに植村が「すみません」と謝っていたが、演奏間違えてたのかな。
複雑な曲だから、どこがどう違うのかさっぱりわからない・・・。
続いては新曲2連発。
まず初演された「MC#1」は超高速の決めが多い曲。ルインズのMUMU版みたい。
ああっというまに終ってしまった。1分くらいかな。
PONのライブでアンコールに披露していたという、伝説の「倍速バージョン」を聴いてるみたいで楽しかった。
今後の新曲は「MC」シリーズが始まるんだろうか。
そしていよいよ「役人#9」。前回はサワリのみで終わってしまった曲。
今夜はもちろんフルサイズだ。
すさまじい曲展開に圧倒された。
ごろんごろんリズムが変わり、複雑怪奇に進行する。
MUMUのコンパクトなアレンジで聴くと、そのすごさがよくわかる。
坂本や中根が譜面見ながらの熱演にくらべ、涼しい顔で叩き切る植村のテクニックがほんとにすごい。
大充実な演奏だった。難曲なのに一糸乱れずリフを叩き込むのが爽快だ。
前回サワリで演奏したのはイントロとエンディングのみだったらしい。
中間部も難フレーズの連発だったな。
後半は最近のステージで耳なじみな曲ばかり。
多少はメロディを覚えてるが、変拍子の連発なのかまったく拍子の頭がわからない。
坂本が足でリズムを取っていたが、手はほとんどリンクせず。
リズムの頭で鍵盤を弾いたり、裏で鳴らしたり。
あれは「98/3/10 #2」でかな?イントロにユニゾンで断片的に単音を鳴らすとこなんか、どうやってあわせてるんだろう。
いままで植村のリズムに耳が行きがちだったが。今夜は坂本の弾く和音も心地よかった。
つくづくこのバンド、早くCD出して欲しい。家でじっくり聴きたい。
ちなみに今夜は「99/5/23 #3」でMIDIを使っていたかも。キーボードを弾いてない時も、単音が鳴って聴こえた。
ステージ進行がサクサク進み、MUMUの持ち時間は一時間くらいと期待したが。
40分くらいであっさりと演奏が終わってしまった。
観客の拍手のなか、さっとそでに引っ込みライブ終了。アンコールはなしだった。
変拍子ときれいなメロディが混在したトリッキーな音楽が生き生きした演奏に支えられ、充実したライブだった。MUMUはワンマンライブで、とことん聴いて見たいもの。