LIVE レビュー(裏)
重箱の隅をつついた、達郎LIVEの感想です。
02/3/2 厚木市文化会館
出演:山下達郎〜Performance 2002 RCA/AIR Years Special〜
(山下達郎:vo,g,key、青山純:ds、伊藤広規:b、佐橋佳幸:g,cho、
難波弘之:key、重実徹:key、土岐英史:as,ss、国分友里恵:cho、
佐々木久美:cho、三谷泰弘:cho)
⇒短めにまとめた、普通のライブ感想はこちらです。
(注)この感想は、達郎ファンとして趣味に走った小文です。
かなりマニアックかと思いますが、ご了承くださいませ。
今回のライブツアー32本の内、実に1/3が東京圏。
ツアーというより、こじんまりとまとめたかった達郎の意思がなされるものだろう。
もしかしたら「チケットがはけないのでは?」との危惧があったのかも。
そんなもん、まぁったくの杞憂なんだけどね。
達郎のライブを聴くのは・・・今回で5度目かな。
91年のツアー、93年のTBSラジオ公開録音、94年の「〜sings
Sugar Babe」、そして98年のツアー。
じっくりとキャリアを重ねてるからしかたないが、前回から実に3年も待たされたとは。
開場は時間より少し早めに行われた。物販コーナーは長蛇の列。
開演まで30分程度しかなく、「いまから物販コーナーへ並ぶ方は、開場までにグッズを買えないかもしれません。ご了承ください」のアナウンスが飛ぶしまつ。
だけど、これは当初から予想されていたことだろう。
CDやノベルティの販売はまだしも、達郎のファンなら大半はパンフレットくらい購入することは予想できるんだから。
せめてもうちょい物販コーナーの人員を充実させて早くさばくか、開場前に屋台を出して混乱を緩和するか出来たはず。
この点は、あえてスタッフに厳しく言いたい。
公演前に鳴るのは、各種のドゥ・ワップ。
たしか91年のツアーではフォー・フレッシュメンのベスト盤だった。
ドゥ・ワップのBGMは達郎が選曲したのかな。
さて、そうこうするうちに響く1ベル。期待がぐいぐい高まってきた。
<セットリスト>
1.Sparkle
2.Love Space
3.Windy Lady
4.甘く危険な香り
5.Rainy Day
6.Paper Doll
7.Candy
8.Solid Slider
9.Music Book
10.言えなかった言葉を
11.2000tの雨
12.You Belong To Me
13.Angel
14.いつか
15.夏の日
16.Monday Blue
17.Touch Me Lightly
18.(メドレー)Love Talkin'〜Bomber〜Silent Screamer
19.Let's Dance Baby
20.Circus Town
(アンコール)
21.Loveland Island
22.Ride On Time
23.Let's Kiss The Sun
24.Your Eyes
25.おやすみ
達郎のハミングにのってそれぞれが楽器を構えると、いきなり達郎のギブソンのカッティングが始まる。
まずは「Sparkle」。この時代を総括する、王道の始まりだ。
もう少し捻った始まりかと期待しており、ちょいと拍子抜け。
テーマを歌い終わったあとフェイクへなだれ込み、達郎の「wonderin`♪」の掛け声でコーダへ続く、「JOY」と同じアレンジを採用してた。
「けっこう手馴れた流れで行くのかな」
少々がっくりきたけど。気を落とすのは、いくらなんでも早すぎた。
二曲めは「Love
Space」なんだから。
ヘッドホンをかぶった青山純が、かろやかにタムを回す。
この夜はあまり分離のいいPAでないせいもあり、彼のドラミングが印象に残る、数すくない曲だった。
青山はリズムキープこそタイトだが、フィルを入れまくるタイプでもないし。
そういや、この曲でいきなり達郎は弦を切った模様。
途中でギターをスタッフに持ってこさせ、交換して弾いていた。
エンディングで達郎が「今晩は、厚木!今夜は初日だよ」。
一声かけたが、いまいちこなれておらず、台本読んでるみたい。妙に面白かった。
つづく「Windy
Lady」で、コーラス隊はそでへ下がってしまう。
ハーモニーのサポート無しで、淡々と達郎はメロディを吐き出していく。
より切なさが強調されたアレンジだった。
ここで土岐による長めのサックスソロが挿入される。
もっともソロによる即興が中心で、バンド全員がインプロへ雪崩れ込むわけではない。
ステージ随所で挿入される各人のソロでも同様だったけれど。
"達郎のバック"を意識しすぎなのか、はたまたスタジオ・ミュージシャンとしてのキャリアを積んだ顔ぶれが多いせいか。
ソロのフレーズで個性を滲ませるプレイはほとんどなくて残念。
耳をそばだてたのは、佐橋佳幸と難波弘之のソロかな。
コーラス無しの独唱はまだまだ続く。
鼻歌の「ひなまつり」をイントロに、「甘く危険な香り」「Rainy Day」。
この曲順って好きなんだなぁ。「JOY」と一緒だ・・・。
「Rainy Day」ではハンドマイクで、切々と達郎が歌う。
ステージ前へ歩み寄り、舞台の左右端まで行き来して歌い上げた。
ファルセットのなめらかさもたいしたもの。安心して聴ける。
難波によるロマンティックなピアノの伴奏もよかったな。
フェイクの部分で「Yes,yes,It`s rainy〜♪」と刻む歌詞も、「JOY」のライブテイクどおりだった。
歌い終わったところでコーラス隊が戻ってくる。
長めのMCは、まだ構成を整理しきれていないみたい。
アンプの上に置いたメモを覗いて、喋るネタを思い出していた。
「ここから即興を前面に出します」と宣言された「Paper Doll」では、佐橋佳幸と重実徹がまずソロを取る。
あれは重実のほうだったかな。
ひとしきりソロを取ったあとで、バンドメンバーへ腕を振って合図、ソロの終了を宣言する。
もしかして何小節ソロをとるか、決めてないんだろうか。
演奏が盛り上がってたら、果てしなく突っ走るんだろうな〜。
そうそう。あまり目立たないながらも、曲間に一節奏でられる達郎の単音ソロもブルージーでいい味を出していた。
「Candy」でもイントロは達郎のギターだ。もっと彼のバッキング・ギターを聴きたかったな。
「Paper Doll」の時だったろうか。ソロを取ってる人のバックで、激しく達郎がギターをかき鳴らしてるのに。さっぱりその音が聴こえないんだもん。たのむよ、ほんと・・・。
ちなみに今夜のバックバンドは、98年のツアーで結集したメンバーが引き続き起用されている。
かなり結束が強いらしく"Nelson Super Project"なるバンドまで結成。
このツアーにひっかけて、全国数箇所でライブツアーをやるみたいだ。
(パンフによれば「小判鮫ツアー」とか・・・(笑))
バンド紹介の際に、達郎自らジャケット片手にネルソンも紹介してたっけ。
音に色気が出てきたのが、このあたり。
「Candy」や続く「Solid Slider」はとびきりの名演だった。
多分本ツアーが終った後「JOY2」がリリースされるだろう。
その時には、今夜の演奏も収録して欲しいな。
「Solid Slider」は22年ぶりにライブ演奏されたという。
抜き出されたのは、土岐と難波のソロ。
ステージ下手に高々と掲げられた、「Spacy」のモニュメントだけがライトアップされる、効果的な照明だった。
土岐はほとんどの曲でソロを取る。
MCで達郎が「ぜんぶ美味しいところを持っていかれる」と笑っていた。
ライブの進行はなめらかだ。とくに曲順表が置いてあるように見えなかったが・・・。
エンディングではたいがい、達郎がメンバーへ視線を投げる。
ギターを振り降ろし、コーダをきめるしぐさがキマってた。いかにもバンドマン的な風情だ。
時にMCをはさむが「次はXXXです」って紹介は決してしない。
するするっと、自然にバンドから音が溢れていた。
前半最後のバンド・サウンドは「Music Book」。
「Music Bo!」って歌い方が、大好きだ。
曲の後半部分では、小さなタンバリンを振ってリズムを取る。
そして次のキーボードの弾き語りで、むちゃくちゃ驚いた。
ステージが暗くなり、メンバーはそでへ消える。
「へえ。弾き語りで『潮騒』でもやるのかな」と予想してたら、いきなり渋い選曲。
「言えなかった言葉を」か・・・。
パーソナルな雰囲気漂うこの曲を、さらに簡素化して歌うなんて。
この弾き語り部分が、今回のツアーで「日替わり選曲」になるようだ。
お次の「2000tの雨」では、涙がこぼれそうになった。
歌を支えるのはキーボードの和音だけ。
シンプルな刻みにのって、達郎の喉がぐいぐい高く震えた。
フェルマータの部分で、そっと腕を組んで目を閉じる。
さりげない洒落たしぐさが、かっこよかったな〜。
つづくアカペラ・コーナーは「You Belong To Me」と「Angel」。
「Angel」を歌ったのはたまたまらしい。
本当は「alone」をやる予定が、CD−Rを忘れてしまったとか。
「ひとりだけで歌ってるとさみしいので、拍手お願いします」なんて、「Angel」の前で言ってたっけ。
拍手が鳴る中、「朝のような夕暮れ」で使われたアカペラ部分が流される。
これはオリジナルのテイクかな。微妙に声が若い。
バンドメンバーが配置につき、伊藤広規によるイントロが始まる。
「いつか」だ。やっとベースの音がくっきり聴こえた。
この曲はフェイドアウト後のコーラスのフレーズがかっこよかったはず。
だけどそれほど引き伸ばさず、あっさり終ってしまった。
続く「夏の日」では、ベースの低音がとにかく気持ちよかった。
エフェクターを切り替えてたのかな。フレーズの音並びではなく、ずうんと低音が身体に響いてきた。
達郎はさわりだけ、「愛の金色」のフレーズを歌いこむ。
難波によるきれいなピアノソロから「Monday Blue」へ。
この曲もコーラスなしのアレンジだ。
結局みっちり盛り上げていたのは「Rainy Day」や「Paper
Doll」などごくわずか。
多彩に展開する『フェイドアウト後のアレンジ』をかたはしから披露したりはしなかった。
3時間に収めるための苦肉の策だろう。
そして、この次の曲。ぼくにとっての本日のクライマックスだった。
かつてHPの日記で「この曲聴きたいな」となにげなく書いた。
もともとはキングトーンズのためにかかれた、「Go
Ahead!」のアウトテイク。
モーメンツやホワットノウツなどのニュー・ジャージー・ソウルを意識した本曲が、とても好きだったから。
メドレー形式で一節歌ってくれるだけでも嬉しかったのに。
なんとステージのキモとなるアレンジで、たんまりと演奏してくれたよ「Touch Me Lightly」。うおぉ〜♪
なにしろ『フェイドアウト後のアレンジ』がしこたまかっこいい。
達郎のハンドサインで、コーラスがヴァンプ風に一節。
そこから重実のソロへと切り替わる。
達郎がバンドへむかって指二本を突き出す。
すかさずバンドが八分音符2連発。今度は難波のソロだ。
まだまだ演奏は続くぞ。達郎が指三本・・・バンド8分音符を3連打。
佐橋佳幸のソロへと展開した。
ソロを支えるバックの演奏も、グルーヴィでいかす。
最後は達郎の指4本でブレイクを決めた後、土岐のソロでしめる。
ハイトーンで鋭く歌うコーラス隊をはさむアレンジが、効果的だ。
ここまでしっかりと演奏してくれるなんて。大感激した。
演奏でひとつのクライマックスを越えた達郎は、ここで長いMCをはじめた。
昔懐かしい「マイ・ガール」のギャグを、またも披露する。
(テンプテーションズの名曲が、日本で作曲されたらどうなるか、というネタ。
コードは単調になり、アクセントが野暮ったくなる。さらに達郎が日本語英語でクダを巻きながら歌う。けっこう長めに演奏してたなぁ)
「怒れる若者」ぶりも、健在な喋りだった。
あとはひたすらエンディングまで駆け抜けるだけ。
露払いに「もう歳なので、フル・バージョンは出来ませんが・・・」と前置きして、RCA/AIRのアップテンポ曲を3連発。
これってライブで演奏したことあったっけ?の「Love Talkin'」。
「Bomber」へは、達郎のシャープなカッティングでつなぐ。
リズムがロレって、バックの演奏はフェイドアウト気味につないだ。
達郎にしてはめずらしいアレンジだな。
「Bomber」では伊藤と青山のコンビネーションによるソロが挿入される。
伊藤はずっしりと重たいファンクを弾く。なんかの曲から引用してたのかな。
他のメンバーや、そでに下がって伊藤のソロを眺めていた達郎は、身体を捩って大ウケ。思い切り、伊藤のソロを楽しんでいた。
こんどは「Silent
Screamer」。うーん、それぞれの曲をたっぷり楽しみたいよ。
「Silent Screamer」は、当時30分くらいかけて延々と演奏してたらしいし・・・。
そして「Let's
Dance Baby」。達郎のライブでは、最長不倒記録を持つ曲だとか。
「心臓に〜指でっぽう♪」部分で恒例となった観客によるクラッカーも、しっかり炸裂。
今回は観客の年齢層高いし、常連ばかりで本イベントもちゃんと知ってるんだろう。
ただ、リズムがばらばらだったなぁ。どうせやるなら、きっちりタイミング合わせましょうよ。
中盤で達郎が織り込むカバー曲は、何の曲かはわかりませんでした。
なぜか「瞳の中のレインボウ」も一節歌う。
さらに、ボソボソと「ハイティーン・ブギ」もギターの弾き語りで何フレーズかプレイ。
「マッチ〜!」の声が飛び、苦笑していた。
最後は最近シングルカットされた「Loveland
Island」かな。
ここまできたら大体先の展開が読める・・・と思ったのに。
驚きましたよ、「Circus
Town」ですか。ひえ〜。
ここまで盛り上げて「Circus Town」。お好きな人にはたまらない展開です。
二十代前半の海外レコーディングで、当時は若さに任せて歌を押し込んだ。 ところが25年経ってある高みに到達している。
歳をいささかも感じさせない伸びやかな喉で、堂々と歌いきった。
まっちがいなく、アルバムバージョンよりいい出来です。
「Joy2」が出る暁には、ぜったいに今回のツアーでの「Circus
Town」を入れてください。お願いします。>達郎さん
ファンキーに吼えたシャウトがいかしてたな〜。
たっぷりなボリュームと、意外な味付けでおなか一杯になったライブ本編だった。
だけど、まだまだこんなもんじゃ終んない。なにせ達郎のライブだもん。
やけに待たせたアンコールで登場すると、軽快に「Loveland Island」を演奏し始めた。
中間部での鉄板ギターソロも、ちゃんとある。
シャープなカッティングでザクザク刻んだ。
うろうろステージをうろつきながら、ギターを弾きまくり。
観客の拍手がふりそそぐ中、すぐさま達郎が「Ride On Time」のイントロを弾く。
青山が合間に叩くフロアタムが、えらくメロディアスに響いたのを覚えている。
「Ride On Time」での見せ場は、達郎の声量披露。
「おれはJBか?」とおどけながら、ステージ最後方へむかっていく。
おかしかったのが、セットがすでにこのイベントを想定して作られていたこと。
椰子の木をかたどったセットがくるりと横を向き、上手からスタッフが台を持ってきた。
80年代は脚立でやってたらしいが、今回はしっかりとセット仕立ての台になっている。
階段を上がり、すっくと立った達郎が「Ride On
Time!」とシャウト。
マイクは何にもなし。キャパ1400人のホールの観客全員の耳へ、達郎の声がじかに届いた。
で、またしても。予定調和をするりとぶち壊す。
「Let's Kiss
The Sun」だぁ〜。嬉しいな。
「Funky Flushin`」をやめて、こうきましたか。
メンバー全員が演奏する中、土岐の姿だけ見えない。
なるほど、アンコールはあの曲でシメるわけね。ふむふむ。
アンコールに入ったあたりで、観客は総立ち。
「ギリギリまで座って聴いて欲しい」って達郎の昔の発言を、みんな知ってるのかな。
ハッピーな雰囲気に浸った「Let's Kiss The Sun」が終わり、ステージの明かりが暗くなる。
バンドのメンバーは去り、ステージの上は達郎ただひとり。
さあ、「Your
Eyes」だ。
キーボードはむかわず、無伴奏で歌いだす。
ワン・コーラス歌ったところで、多重録音による達郎自身のハミングがそっとかぶさってきた。
そう、今夜はアカペラ・アレンジの「「Your
Eyes」だった。
いつのまにか登場した土岐が、サックスのソロで見事な味付けをほどこした。
ふう〜。いいライブだった。次のライブは何年先かな・・・あれれ?
拍手してると、達郎はまだステージを降りない。
どっかりとキーボードの前に座り込む。うひょ〜!!
しかも「おやすみ」だよ。竹内まりやと付き合ってた頃に作った歌じゃないかな。
バックは星空を模したライティングで、最高にムーディな雰囲気だった。
「おやすみ」
歌い終わったあとに一声告げて、今度こそ達郎はステージを降りる。
バックに流れるのは、恒例のクロージング・テーマ"That`s
my desire"。
最初から最後まで、達郎の喉は不安要素がない。むしろ、ライブが進行するにつれて声の調子が天井知らずにあがっていった。
今夜を皮切りに、達郎はツアーを始める。
とてもかなわぬ夢だけど。全部のライブを追っかけたいなぁ。
千秋楽には、どれほど盛り上がることやら。