LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

01/3/24  新宿 ピットイン

出演:A.P.J〜Acoustic Progressive Jazz
 (難波弘之(P) 水野正敏(B) 池長一美(Ds) )

 どちらかといえば六本木ピットインが似合うメンバー。
 まさか新ピで聴けるとは。

 本バンドのアルバムは、おとなしめであまりぴんと来なかった。
 とはいえ難波弘之のファンのはしくれならば、間近で彼の生ピアノを聴ける機会を逃すわけに行かない。
 込むことも予想して、いそいそと時間早めにピットインへ行ってみた。
 
 7時前頃に到着すると、並んでいたのは10人程度。
 店内から「薔薇と科学」のリハが聞こえる。
 思ったより、さびしい入りだった。

 もっとも開場前までに観客が増えてくる。
 やはり予約している客がかなり多い。
 最終的には100人弱くらいかな。満席までは及ばなかった。
 ぼくはうまいこと前から4列目くらいをキープ。
 しかも思い切り難波より。じっくり彼の指さばきを見られた。ラッキー♪

 今回のメンバーは、ドラムが山木秀夫から交代している。
 池長はアメリカの大学でジャズの教鞭を取ったり、ヨーロッパ中心に活動していたフリージャズ屋らしい。

 開演は7時50分くらい。ぞろぞろとメンバーが楽屋から登場して、おもむろにチューニング。
 そのままいきなり演奏を始めた。
 難波のMCも楽しみにしてたので、とっつきにくいんじゃないかと、不安にかられた。

 ピアノのアルペジオが、軽やかにピットインへ広がる。
 複雑な構成のテーマへ、一糸乱れずなだれ込んでいった。
 音量はかなり控えめ。生音にちょっとふくらみをつけたくらい。
 
 ピアノはかなり、クラシックを連想させる優しいタッチ。
 水野が軽々と、6弦エレベの上で複雑に指を滑らす。 
 池長のドラミングはそうとう繊細だ。
 3人とも荒っぽさが微塵もなく、かなり違和感あった。
 ドラムにがつんとした熱気がないから、ボトムのパワー不足を感じてしまう。

 かろやかに一曲目が終了。
 難波がピアノの横に置いたタオルで、丁寧に指をぬぐう。
 水野はおもむろにMCマイクに手を伸ばした。
 のんびりした大阪弁で喋りだす。

 MCを始めたとたん、緊張感が急に薄れてしまった。
 とにかく、喋りが長い・・・(笑)
 イニシアティブを取るのは、水野(バンドのイニシアティブも水野が取ってる感じだった)だが、大阪弁ののんきな喋りは、まるで落語を聞いてるようだ。
 そこに難波が合いの手を入れていく。

 ちなみにMCを聴いている限り、新ピを「ジャズの殿堂」と呼び、かなり意識してるようだった。
 こんなことを話してたかな。

・MC用マイクが、一人一本分ある。これは新ピではめずらしいらしい。
・難波はキーボード持ち込み無のライブツアーは初めて。気楽さに味をしめた。
 (翌日からザバダックのリハで、またキーボード多段積みだとか)
・北海道へツアーしてみたい。ただ、海を越えると経費がかさむ・・・。
 (これを言ったのは難波。う〜む、身もふたもない・・・)
・今夜の演奏みたいに、譜面にびっしりベースを指定してるのはめずらしい。
 そもそもジャズ屋はいいかげんで、サックス吹きはコード譜すらなく、スケールしか指定してない(おいおい・・・)

 そのほか、向井実のおしゃべり振りを冗談にしたり、水野と難波が共演したときのエピソードに触れたり。
 いきなり10分くらい喋ってたんじゃなかろうか。

 いいかげんリラックスしたところで、二曲メドレーで演奏を再開した。

<セットリスト>
1.薔薇と科学
2.Fairly tale
3.スリップ・ウッド
4.Jellyfish Garden
<休憩>
5. (新曲?)(作曲:難波弘之)
6.Progroove
7.Diametra
8.Ameba in Maze
9.百家争鳴

(アンコール)
10.オーニソプター

 2、3曲目はアルバム未収録。
 2曲目はポンタ・ボックスで演奏していた水野の曲。
 3曲目の詳細は不明です。すみません。

 演奏はいまいち食い足りないまま続く。 
 ピアノとドラムに、ジャズっぽさが欠けてるせいかな。
 ノリが上滑りしていて、どうものめりこめない。
 難波が曲の合間にタオルで、まめに指や顔を拭いてるのが印象的だった。

 さて、4曲目「Jellyfish Garden」は水野の曲。
 しばしのMCのあとにやっと始まったが、いきなりその場で曲順を変えたため、池長がおもいっきり曲を間違える。
 水野は池長を中断させて再度マイクを持ち、またもやMCを始めた・・・。

 一部は4曲であっさりと終了。50分くらいかな。
 ソロ回しで多少演奏は長引いていたが、MCにそうとう時間を取ったセットだった(笑)
 
 休憩時間に、メンバーはちょろちょろ客席をうろつく。
 難波がトイレに行ったのを見て一瞬、「つれションしようかな〜」と馬鹿なことを考えていた(爆)・・・実行しませんでしたが。
 
 後半セットが始まったのは9時10分頃。
 再度ピアノの音にあわせ、ベースがチューニングする。

 一曲目はいきなりジャズっぽい曲。
 難波の指が、激しく鍵盤の上を踊った。
 ベースがぶんぶん唸り、ドラムがクールにリズムを刻む。
 かっこいいリズムの曲で、がぜん演奏が面白くなった。
 難波は決して乱暴にならず、確実なタッチで高速フレーズを叩き出していた。

 一曲目が終わったところでMC。
「今の曲は難波さん初のジャズの作曲だそう。
 でも、4/4で終わらずに、変拍子を入れないと納得しないのが難波さんらしい」
 と、水野がおもむろに喋り始める。
(お恥ずかしながら、聴いてて変拍子だとぜんぜんわからなかった)

 ひとしきりドラムの池長にまつわるネタで、もりあがったあとに曲紹介。
 水野が「次も難波さんの曲で、7/8,6/8,5/8と減っていく難曲」とぼやく。
 「いつもベーシストには言われるんだよね。今まで文句言わずに弾いたのはバカボン鈴木だけ。鳴瀬善博なんかはボロクソだった」って難波は笑ってた。

 ダイナミックな曲展開だが、3人とも平然と弾きこなす。
 ソロ回しも自然に聴けてきた。
 ピアノソロのときは、ベースががんがんカウンターメロディを入れてきて楽しい。
 あとは難波や池長がもうちょっと、ソロのときにからんでくれるといいのになあ。

 特に池長は「リズムを刻む」ってことには文句ないが、「グルーヴを作り出す」って観点で叩いていない気がする・・・。
 そんな池長のソロを徹底的にフィーチャーしたのが、「Ameba in Maze」。

 10分以上、ドラムソロをしていたのでは。
 難波も水野もステージを降りてしまい、池長が淡々とドラムを叩きつづける。
 これが、正直ぼくの好みと大違い。
 繊細さを前面に出し、ピアニシモを多用するテクニカルなドラミングだけど、「ドラムで音楽を聞かせる」って感じのソロじゃないんだもん。
 まるで「ドラムマシンの性能を披露する」ソロのようだった。

 ともあれ、しばらくすると二人が演奏に加わり、きっちりと締めた。
 難波は広げていた楽譜を片付けて、譜面台まで降ろしてしまう。
 水野もベースを肩から下ろしてしまった。

 「あれ?「Ameba in Maze」で終わりかな?そんなぁ」と思ってると、おもむろに水野が譜面台に楽譜を広げる。
 後ろに立てかけてあった、アップライト・エレベースを構えた。

 「最後はまた、難波さんの曲です。
  これもひねくれてますね〜。4/4が絶対に続かない(笑)」
 弾きなれた曲だから、難波は譜面を仕舞っちゃったわけか。

 ということで、なつかしの「百家争鳴」。
 難波が印象的なリフを弾き始める。
 右手でリフをキープして、なんども手をクロスさせながらおかずを入れていた。

 この曲は昔聴いたときはクラシカルな曲だと思ったけど、かなりジャジーに演奏されていた。
 たっぷりソロ回しをして、ステージを終えたのは確か10時20分くらいだったはず。

 すでに実質ニ時間弱の演奏だったが、アンコールの拍手を送っているとあっさりと再登場してくれた。
 それにしても、前に座ってた男性の大半が拍手をしてない。けしから〜ん。

 アンコールは、またもや難波の曲で「オーニソプター」。
 水野は再びアップライトを弾く。
 演奏前に曲の由来を、水野が難波へ質問した。

 「オリジナルは歌詞があって、曲のイメージから曲名がついたんです」
 「あ、そういやデモテープでも、歌詞が入ってましたね〜」
 「あれ、デモテープじゃないんですけど・・・」
 と、難波に返されて、水野が素で焦る瞬間もあったっけ(笑)

 アンコールもきっちりした演奏。
 最後だし、がしゃめしゃになるかと思いきや。ロマンティックなプレイで決めた。
 いっそのことセンス・オブ・ワンダーでは定番になってるはずの「ナットロッカー」で締めたら面白かったのに。ピアノじゃムリかな。

 終わってみると、進行は水野が主導権を握り、演奏ではかなり難波を立てたステージだった。
 本人らは新ピを気に入ったらしいし、またぜひライブをして欲しい。
 (難波は富樫雅彦のライブなどで、観客としてもたまに新ピへ来てるとか)

 終演は10時半を軽くまわっていた。
 総演奏時間が2時間半を越える(そのうち30分以上MCだったけど)、充実したライブだった。

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