LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2001/2/1 吉祥寺 Star-pins Cafe
まぼろしの世界Festival(2/1)
出演:skist、さかな、
鬼怒・勝井アンド・スーパーガールフレンド、岡部洋一ユニット
勝井祐二と鬼怒無月が主宰するレーベル、「まぼろしの世界」のイベント第一夜。
前売りはそれほど、はけていなかったみたい。
とはいえこのイベントが閑散と終わるわけない。
けっきょく100人近く入ってたんじゃなかろうか。
ライブは開演時間をほぼ守り、7時5分過ぎから演奏がスタートした。
Skist
(サム・ベネット:electronics、いとうはるな:vo,electronics)
ステージ奥から静かに登場し、何の前触れもなくパフォーマンスが始まった。
二人の前には、それぞれ卓が置いてある。
サンプラーか、エフェクターかなぁ。
特にサムの前に置かれた機械は、コードがびっしりつなぎ合わされていた。
まずはサムがマイクに袋を近づける。スナックの空き袋かな。
それをくしゃくしゃに丸める音をマイクで増幅。
そして袋のノイズが鳴る空間に、そっと電子音が滑り込んできた。
サムが袋をこする音の裏で、ピィーン、ピィーンとゆっくりした周期で電子音が聴こえる。
さまざまなエレクトロ・ノイズはしだいに重なり合って、じりじりもりあがっていった。
いとうはマイクを手に持ち、かぼそい声で英語(かな?)の歌詞を歌う。
アンビエント・テクノのような雰囲気。
音像は静かに膨らんでいった。
とつぜん、音が切り替わる。
身体にずしんと響く低音で、エレクトロ・ビートが刻みだした。
サンプラーをつかってるのかな。
サムはかろやかに身体をリズムにあわせつつ、機械を操作する。
ひっきりなしに様々なコードやツマミをいじくっていた。
壊れ物でも触るかのように、そっとサムが機材に触る。
そのたびに、音が微妙に変化。
電子ノイズはライブハウス全体にふくらんでいった。
総演奏時間は30分くらい。
曲はさまざまに変化していたけど、基本はメドレー方式で展開していた。
耳ざわりな電子音ばかりのはずなのに、全体的なイメージはリラックス。
僕は夢見ごこちで聴いていた。
さかな
(ポコペン:Vo,G、西脇一弘:G、POP鈴木:ds、勝井祐二:e-vln)
セットチェンジは比較的すぐ終了。10分くらいかな。
ステージでメンバーの準備が終わると、楽屋に引っ込みもせずいきなり演奏が始まった。
<セットリスト>(*)
1.ロンリーメロディ
2.トテリングウェイ
3.ロコモーション
4.ジョニ−ムーン
5.アディオス
6.サムバディ
*セットリストは惑星さんのサイトを参照させて頂きました。
ありがとうございます。
西脇と勝井が音を出した瞬間、僕の体はふわっとした感覚に包まれた。
ベースがいないユニットだから、低音がたりないかと不安だった。
で、たしかに低音をつとめるのはPOPのバスドラくらい。
ところが予想以上に、上物の演奏がかもしだす感触は最高だった。
ポコペンはほぼずっと、コードをギターでかき鳴らしながら歌う。
そこへ西脇がエレキギターで、やさしくフレーズをのせていく。
派手さはない、着実な音作り。
さらに勝井がエレクトリック・ヴァイオリンのふくよかな音色をのせて・・・とびきりの音空間が出来上がった。
もっとも、あくまで主役はポコペンのボーカル。
ちょっと喉を詰まらせた歌い方で、癖のあるメロディを紡いでいく。
前かがみに唇をマイクに近づけて、すっと歌声が噴き出てくる。
PAのせいか、歌詞がいまいち聞き取りにくかった。
そのせいもあって、僕は器楽的に彼女の歌を聴いていた。
MCでの澄んだ声とはちがった、迫力のあるボーカルは存在感でいっぱい。
そして曲間では、ポコペンはすっと身体を引く。
勝井と西脇による、みごとなツイン・ソロの出番だ。
二人は時にユニゾンで、時にてんでにメロディアスなソロをとっていた。
西脇が比較的、とつとつとしたプレイ。
勝井は早弾きを控え、つつみこむようなサウンドを響きわたらせる。
いっぽうドラムは、着実にビートを刻む。あまりフィルを叩いてなかった。
だからこそ、勝井と西脇の演奏が際立って聴こえる。
アイコンタクトをかわさず、音も姿勢もまっすぐな西脇に対して、自由自在に音を遊ばせる勝井。
二人の対比がおもしろかった。もっとソロの時間を取って欲しかったなぁ。
ちなみに、今夜は30分程度の演奏で、全6曲。
三曲目(「ロコモーション」って曲かな)では、イントロから歌が始まったとたんに、「ごめん!」ってポコペンが中断するアクシデントあり。
理由はよくわからないけど・・・。
気を取り直して頭から再度始めたこの曲は、オーラが漂うほどパワフルに喉を震わせていた。
この曲が今夜のベスト・トラックじゃないかな。
鬼怒無月、勝井祐二・アンド・スーパー・ガールフレンド
(鬼怒無月:G,electronics、勝井祐二:e-vln、
YOSHIMI(from Boredoms:vo,electronics)
鬼怒はアコギを抱えて出て来た。目の前にはシンセのような卓をセッティング。
YOSHIMIは中央に座り、マイクを二本使い分ける。
一本はデッドなエコーのマイクで、もう一本はかなりリバーブがかかっている。
どうやらYOSHIMIの手元の機材で、マイクが拾った声を変調させることができるようだ。
YOSHIMIがいるから、てっきりノイジーでギャリギャリに盛り上がるのかと思いきや。
小気味よいメロディをYOSHIMIがアカペラで歌いだした。
このユニットも、MCなしで30分くらいの一本勝負。
曲調は5分おきくらいにかわっていた。
途中でYOSHIMIが沖縄風の曲を、ろうろうと歌い上げてかっこよかったな。
YOSHIMIの喉から溢れる声は、みずみずしい。
マイクを通して、澄んだ歌声が広がった。
ときどき勝井が譜面を置き換えていたので、まったく即興ではなさそう。
だけど緩急を効かせて、サウンドは自由奔放に変化する。
幻想的なステージだった。
鬼怒はアコギを黙々と弾く。目の前に置かれた卓は、ちょっといじっただけだった。
ネックを指がせわしなく動き、素早いフレーズや切れ味鋭いカッティング。
アイディアいっぱいの刺激的なギターだった。
勝井だってもちろん負けていない。
鬼怒の演奏と見事に絡み合い、バックアップの単音弾きからメロディまで、めちゃくちゃ気持ちいいバイオリンを弾いていた。
進行が押してたせいか、ステージが終わった瞬間にYOSHIMIはあっさりと袖に引っ込んでしまう。
鬼怒と勝井は、いつもの脱力漫才MCを始めかけたが、やはり撤収と準備の邪魔になるためか、早々に切り上げてしまった。
ふたりのMCも楽しみにしてたので、ちょっと残念。
岡部洋一ユニット
(岡部洋一:ds,他、関島岳朗,tuba,他、竹中俊二:G,他)
3月に初ソロアルバムを公式リリースする、岡部のユニットがトリをつとめる。
かなりセットチェンジに時間がかかり(40分くらいかかってたんじゃないかな)、間延びして辛かった。
なんでも今回のメンバーは、今夜が初対面だそうだ。
しかもステージの一時間くらい前に、初めて会ったとか。
ってことは、リハなしかぁ?おいおい・・・。
まずは切れのいいドラムのソロでスタート。
そこにドローン的にチューバを重ねていく。
ステージ最初の竹中はギターを弾くより、横に置いたサンプラーをいじっていることが多かった。
てっきりリズミカルな演奏になると予想したら、とんでもない。
竹中だけでなく、関島もチューバのほかに、小さな発振機のようなもので電子ノイズを出す。
岡部も横に置いたエレドラらしきものをいじるので、音像はかなり混沌としていた。
ビートは機械に任せることもしばしば。
三人でノイズを出しているときは、誰がどの音を操作してるのかわかりゃしない。
岡部も前半はほとんどドラムを叩かず、機械操作が多かったなあ。
関島はひとしきり電子音を出したあとは、リコーダーに持ち替える。
尺八のようなフレージングでメロディを奏でだし、いっきに音世界が和風になった。
その次に関島が持ち替えたのは、口琴。
岡部も立ち上がって同じ楽器を取り出した。
竹中の電子ビートにのって、大の男二人が立ち上がり口琴を持つ。
その二人が真剣な顔で口琴デュオをしてる光景は、なんとも奇妙で噴出しそうなだった。
もっとも、びよ〜ん、びよびよ〜んとリズミカルに響く口琴演奏は、退屈しなかった。
このユニットのリーダーである岡部は、じつにせわしない演奏スタイルだった。
パワフルにドラムを叩いたと思えば、客席に背を向けてなにやら機械を操作し、電子音を引き出す。
さらに次の瞬間にはジャンベをタイトに叩いてみせる。
二種類のヘッドフォンを使い分け、場面によってあわただしく耳に引っ掛けたり外したりしていたのが印象的だった。
後半戦では、とことん岡部のドラミングが堪能できた。
ビートがうねりながら盛り上がっていき、エンディングを迎える。
メインアクトだけあって、45分ほどのライブ。
MCはなにもなしで、切れ目なく演奏していた。
全てインプロかな、と思っていたけど。
物販していた岡部のCDを聴いてみると、ライブとかなり音が似ている。
こうしたフリーなリズムで転がる複雑な音が、岡部の趣味なのかな。
終了したのは10時半くらい。セットチェンジの時間があったとはいえ、2時間弱の充実したライブだった。
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