Guided by Voices

Suitcase failed experiments and Trashed aircraft(2000:Luna)
(Disk 4)

Producer:Robert Pollard,Matt Davis,& Kevin Poindexter
Recording engineered and Produced:
John Croslin,Dave Doughman,Gary King,Steve Wilber,John Shough

<ミュージシャン名略:凡例>
 RP:Robert Pollad,DG:Doug Gillard,DT:Don Thrasher,GD:Greg Demos, JP:Jim Pollad,KF:Kevin Fennel,MM:Mitch Michell,TS:Tobin Sprout,

<曲目紹介>→曲名:ユニット名

76. TRYING TO MAKE IT WORK AGAIN
: PETE EASTWOOD
(RP- g,vo):1981年


 GbV極初期の音源。
 とつとつと爪弾きが繰り返されるリフにのって、優しく歌っていく。
 心なしか、声が若く聴こえるのは気のせいか。
 メロディそのものは、あまり展開がない。
 
 ギター演奏が次第に盛り上がっていくとき、ところどころで指がろれってるのがご愛嬌。
 エンディングで、カセットの停止音まで入ってる。
 つい大滝詠一の「いかすぜ!この恋」を連想してしまった。ロバートが知ってるわけないけど。

77. TURBO BOY: PANZEE
(RP- g,vo,hums,MM- b,hums, JP- g,hums,KF-ds,hums, GD- Mid section vo):1989年


 幻に終わったアルバム、"Learning to hunt"の収録予定曲だったとか。
 どっかで聞き覚えのあるメロディとアレンジだなあ。どの曲だっけ。
 高速ハイハットが曲全体をぎゅっと締める。
 シャープな切れ味と、パワーをぎゅっと溜めた力強さが心地よい。

 曲の中盤で歌うグレッグは、喉を絞ってけっこうパンキッシュ。
 エンディング間近で、静かにハミングする。
 きれいな声の響きだから、もっとフィーチャーして欲しかったなぁ。

78. CHAIN WALLET BITCH: THE UNFRIENDLY
(RP- g,vo, MM- vo, TS- g, JP- ds):1993年


 縦の線がそろわぬ、えらくとっちらかった演奏。
 吐き捨てるように数度メロディを二人して歌い、唐突に曲が終了。
 30秒かそこらの、アイディア一発な小品だ。

79. LITTLE HEAD: KING OF CINCINNATI
(RP- g,vo):1987年


 ここまで「スーツケース」を聴いてきて感じたけど。
 ロバートはギター一本の弾き語りでも、かなり多彩に歌えるようだ。
 コステロみたいにギターソロの弾き語りで、アルバム一枚くらい作ってくれないかな。

 「スーツケース」に収録されたなかには、弾き語り前提で録音したものばかりじゃないはず。
 デモテープ代わりに作って、そのままってテイクだってあるだろう。
 だけど「ギター弾き語りで発表」を意識してレコーディングしたら、面白いものができると思うけどなぁ。

 余談が長くなった。
 そんな空想をしてしまうほど、この曲のアレンジはギターだけで見事に完結してる。
 2本のギターが聞こえるけど、オーバーダビングしてるのかな。
 
 ハイトーンで気持ちよさげに歌いながら、ギターが荒っぽくかき鳴らされる。
 でも、たんなるジャカ弾きでなくバッキングを意識したリフ。
 ぼくはこの曲、とても好き。

80. WHY DID YOU LAND?: MATTED PELT
(RP- g,vo, JP= g, MM- b,drum machine, TS- Lead on end):1993年


 "Bee thousand"のアウトテイク。マタドールからのクレジット許可が載ってるところを見ると、ほんとに土壇場でアルバムからはずされた曲かもしれない。
 リズムボックスにのって、ミッチが重たくベースを弾く。

 音質はかなりこもっているものの、ロマンティックにきっちりアレンジされた曲。
 なぜオミットされたか謎だ・・・。あの傑作アルバムに収録されても、ぜんぜんおかしくない。
 
 ロバートは歯軋りするようにメロディを喉から搾り出す。
 縦の線がばんらばらな演奏は、いかにも荒っぽい。このおおざっぱさもGbVらしい。
 もしかしてバッキングのプレイがぼろくそだから、お蔵入りにしたのか?
 まさかねぇ。いくら初回テイク一発取りにこだわるロバートでも、「も一度録り直す」って発想くらいあるだろうし。 

81. TIME MACHINES: BEN ZING
(RP- g,vo):1988年


 歯切れのいいギターリフがかっこいい。
 さりげなくコードを押さえてるだけなのに。

 リバーブをたっぷり効かせたダブルトラックのボーカルは、さわやかなポップスまっしぐら。
 今回聴けるデモテープ並みの音質でなく、きっちりプロデュースして作り上げたら、素晴らしい名曲になるのはまちがいない。
 でも、こうして公式に聴けるだけで感謝しなきゃ。

 ロバートの才能は、本当に底なしだ。
 本テイクみたいないい曲を、10年以上ボツにして平気なんだから。

82. A FAREWELL TO ARMS: HAZZARD HOTRODS
(RP- vo, TS- g, MM- b, Larry Keller- ds):1990年


 作曲クレジットは録音に参加したメンバー全員。
 全員のセッションでバックトラックを作り上げたあと、ロバートがボーカルラインを作曲したってパターンかな。
 
 録音自体は一発取りっぽい。凄くラフな録音だ。ま、この曲に限ったことじゃないか。
 上下にゆったりうねるメロディが、淡々と続いていく作品。
 いまいち単調かな。そして叩き切るような唐突さで終わってしまう。 

83. BEST THINGS GOIN’ ROUND: JUMPED OR PUSHED?
(RP- g,vo):1983年


 アコギをかき鳴らしながら、わずかに調子っぱずれに歌う。
 妙に声が若い。今から18年前の録音だから、無理もないけど。
 いったん中断して、また歌いつづけるラフさが面白い。

 作品としての録音するより、単なる「記録」として取っておいただけ、って気軽さを感じた。
 曲そのものはわずか50秒ちょい。あっというまだ。

84. SICKLY SWEET: GOOD PARTS ONLY CORPORATION
(RP- g,vo, TS- g,b, JP- ds) :1993年


 メンバー3人による共作曲。
 あいかわらずジムのドラミングは、リズムボックスのように正確だ。
 ラフな録音の陰に隠れ、細かいニュアンスは聞き取りづらい。
 勢い一発で突っ走る、パンキッシュな一分半の小品。

85. UNITED: BEN ZING
(RP- g,vo):1988年


 エレキギターの爪弾きながら、作品としてきちんと成立している。
 甘いメロディと多重ボーカルが特徴的な、サイケ・フォーク。
 やはり「BEN ZING」とクレジットされた曲にハズレがない。

 畳込むメロディの流れがいかしてる。
 3分半に渡って、ロバートが作るポップ・マジックを堪能できる。
 かすれ気味に歌い上げる声が魅力的。
 
 展開が単調気味で惜しい。あともう一つ大サビがあったら、大名曲になってたと思う。

86. UNSHAVEN BIRD: JOHN THE CROC
(RP- g,vo):1993年


 さて、前曲から5年後のロバートによる弾き語り。
 ぐっと抑えた雰囲気で、しっとりメロディをなぞっていく。
 
 ほんのり不安定なメロディは、終盤でパワフルに変化する。
 ラフな録音が曲へ、薄もやみたいな効果を自然に加えてしまった。
 全般的に奇妙なコード感の歌だ。

87. BLACK GHOST PIE: GO BACK SNOWBALL
(RP- g,vo, Jonny Strange- b, KF- ds):1995年


 小気味よいメロディで刻んでいくアップテンポの曲。
 ミックスバランスがいまいちで、ギターばかりが目立つ。
 ドラムはまるで隣の部屋で叩いてるみたい。

 録音のラフさに注文をつけたくなるほど、演奏は生き生きしている。
 メロディがちょっと弱いのが玉に傷。
 でも、しっかりしたミックスで聴けば楽しめるロックンロールだと思う。
 もっともこれ、一発取りのモノラルミックスしか残ってないんだろうなぁ。

88. GO FOR THE ANSWERS: BROWN STAR JAM
(RP- g,vo):1988年


 (85)のBEN ZINGとまったく同じ時期の録音なのに。
 曲の雰囲気は微妙に違う。ロバートの引出しの多さはたいしたもんだ。

 こちらではデモテープの雰囲気で、鼻歌風にあっさり歌われている。
 ハイトーン中心の歌唱で、さわやかな雰囲気。
 途中でろれっても、かまわず行く姿勢がロックンロールだ(笑)

 途中でいきなりブツッと切れ(テープ編集?)、ほんのり曲調が変化する。

89. ROCKING NOW: FACTORY RAT
(RP- g,vo):1998年


 80年代〜90年代前半の録音が続くdisc4のなかで、ぐっと新しいトラックの登場。
 "Do the collapse"収録の"Wrecking now"のデモバージョンだそう。
 
 ざくっとしたエレキギターのリフにのって、ダブルボーカルで歌う。
 デモといいつつ、このままリリースされてもおかしくないクオリティ。
 (つまり、他の曲と並んでもあまり違和感がないんだよね)

90. EXCELLENT THINGS
: GOD’S BROTHER
(RP- g,vo,cowbell):1988年


 またしても録音はぐっと古くなる。
 甘酸っぱい音色のアコギやエレキを複数重ね、カウベルをフィル風に叩き込む。

 メロディがとびきり優しく響く名曲。
 ロバートの歌声は足元を固めず、ギターから溢れでる波に漂っていく。
 視線はあくまで上のほうに。全てを飲み込んで、ゆっくりと舞い上がる。

91. STATIC AIRPLANE JIVE: ANTLER
(RP- vo, JP- g,television):1989年


 "Same placed the fly got smashed"のアウトテイク。
 ジムが演奏している「テレビ」ってのは、後ろでえんえん鳴ってるホワイトノイズのことかな。

 ロバートはパンキッシュなメロディを、吐き出すように叫んでいく。
 ギターはビートを意識的にはずすすかのように、二音だけのリフを繰り返すのみ。
 1分少々の小品。ホワイトノイズがのっかり、奇妙な味わいを持った曲になった。

92. WHERE I COME FROM: FAKE ORGANISMS
(RP- g,vo, TS- g, MM- b, KF- ds):1987年


 初期GbVの黄金カルテットによる佳曲。
 アンサンブルはきっちり固まり、安心して聞ける。
 ハーモニーは・・・トビンかな?
 バンド名と曲のイメージがちっとも合わないぞ〜。

 これこそ、いかにもデモテープな音質で録音されているのがもったいない。
 構成もしっかりした、甘くキュートなポップス。
 作曲はロバート。思えばグランジ前夜の当時に、こんないかしたポップスを演奏するセンスもすごいなぁ。

 まず印象に残るのは、なめらかなロバートのボーカル。それと弾むメロディ。
 ああ、このバンドのライブを目の前で見てみたかった。

93. TRY TO FIND YOU
: FAT CHANCE
(RP- vo, Mitch Swann- g, MM- b, KF- ds):1984年


 これまた聴きやすいポップス。
 録音の荒さのせいで、ほんのりパンク風になっている。
 
 複数の子供らが会話するように叫ぶ声が、曲全体に挿入されている。
 ”Gilly”というクラブ(?)で録音されたテイクらしい。
 観客のバカ騒ぎを同録したのかな?ぼくの英語力では、何を言ってるかわからないのが辛い。
 
 まったくあとから、会話をかぶせたようにも聴こえる。
 ロバートが授業をしてる時にがやがや騒ぐ生徒らの会話を録音してて、ここでダビングしてみた・・・ってオチだと面白いのにな。

94. DEAF EARS: ANTLER
(RP- g,vo, JP- g):1989年

 
 これまた"Same placed the fly got smashed"のアウトテイク。
 ほんとに、一枚のアルバム用に何曲準備してるのやら。すごいなぁ。
 録音はポラード兄弟のみだが、作曲クレジットにはミッチの名前も入っている。

 91曲目"STATIC AIRPLANE JIVE"と同様、重たくノイジーな雰囲気が漂う。
 ただ、この曲では具体的な騒音原はない。
 ギターの単音をエフェクターで揺らせて、重厚さを作っている。

 メロディ自体は単調気味。ずしりとしたトーンの魅力だけで聴かせる曲かな。 
 エンディング間際で歌う旋律が印象的。あのフレーズを膨らませて作曲したら、面白くなったのでは。

95. GOOD FOR A FEW LAUGHS
:ACADEMY OF CROWSFEET
(RP- vo,cymbal, TS- g, JP- kick) :1993年


 トビンとの共作曲。
 イントロはシンバルだけ。40秒くらい執拗に叩き、じっくり盛り上げていく。
 ロバートのボーカルは吹き気味。妙に生々しいタッチで録音されている。

 妙にまとまりなくメロディが流れていき、2分少々であっけなく終わる。
 曲として出来上がる前の、デッサン見たいな感じ。
 「シンバルを前面に出すぞ!」ってアイディア一発で作ったんだろうか。

 ジムのバスドラは、イントロでちょっと出てきただけ。
 最後までどかっと踏んでたら、いいアクセントだったろうに。

96. RAPHAEL: NELLY AND THE DIRTFLOOR
(RP- g,vo):2000年


 2000年のレコーディング。未発表曲というより、新曲かな。
 宅録なのかは不明だけど、他の曲に比べて粒立ちがいい音で取られている。

 驚くほど他の曲と違和感がない。
 ロバートの才能は多様性があるけれど、根本的に一貫性がしっかりあるようだ。
 聴きたい(作りたい)音楽に対する視線がぶれない、といえばいいかな。

 メロディの切れはいいし、ギターの演奏もメリハリ効いて飽きない。
 ボーカルの線がちと細いのが惜しいところか。
 ここまで弾きこなせるんだから、アコギ一本でライブってぜひやってよ。おねがい。

97. MY FEET’S TRUSTWORTHY EXISTENCE: MAXWELL GREENFIELD
(RP- g,vo):1992年


 エコーをかけて、上下をブーストしたような音。
 アコギが妙にきんきんとメタリックに響いている。
 ノーエコーの飾りっけない歌声で、しっとりとメロディを歌い綴る。
 
 この曲の旋律はあまり展開がないけど、やさしさが伝わってきた。
 強烈なインパクトこそないものの、そばにおいて繰り返し聴きたくなるシンプルな佳曲。

98. EGGS: BRAVERY UMPIRE
(RP- g,vo,MM- b, JP- ds):1989年


 ドラムの録音がしょぼくて、妙にコミカルな雰囲気。
 イントロは似たようなフレーズやリズムパターンを積み重ねて、人力テクノ風に盛り上がっていく。
 作曲クレジットは3人の共作。ジャム・セッションの中で生まれたフレーズを膨らましていった曲かも。
 メロディらしきものは希薄で、3人のアンサンブルの面白さで聴かせる曲。

 クレジットにこそロバートが「vo」とあるが、実際には歌っていない。
 ひたすらインストで突き進んでいく。こういう淡々と流れる曲もいいなぁ。

99. WONDERING BOY POET: CLINTON KILLINGSWORTH
(RP- g,vo, TS- p):1993年


 トビンのピアノにのって、切なくロバートが歌い上げる。
 メロディはトビンとの共作。しっとりとした美しい曲。
 一分足らずで終わってしまうのが本当にもったいない。
 
 デモっぽい音質が、かえって演奏に神秘性を感じさせる。
 甘い旋律はサビらしき形に展開せず、あっさり消え去ってしまう。

100. OH, BLINKY: STYLES WE PAID FOR
(RP- vo,g, GD- b, DT- ds):1989年


 膨大な未発表曲を詰め込んだ「スーツケース」最後の曲は (1)と同じバンド名。
 ただし録音は(1)の数年前にさかのぼっている。
 ここからまた、最初に戻るって意味かな?

 曲自体はいまいち盛り上がりに欠けるのがつらい。
 ギターをかき鳴らして進むバンドのセンスは、そこそこかっこいいけど。
 最後の最後へこの曲を持ってきたのは、どんなロバートのメッセージがあるんだろう。
 
 深読みすれば意味がありそうだし。ただ単純にずらっと並べてるだけかもしれない。
 
 100曲にわたるGbVのおもちゃ箱はここでいったんカラになる。
 さあ、ディスク1にもどって・・・もう一度、ずぶずぶ深みにはまっていこう。

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