Guided by Voices
Suitcase failed experiments and Trashed aircraft(2000:Luna)

(Disk 2)

Producer:Robert Pollard,Matt Davis,& Kevin Poindexter
Recording engineered and Produced:
John Croslin,Dave Doughman,Gary King,Steve Wilber,John Shough

<ミュージシャン名略:凡例>

 RP:Robert Pollad, DG:Doug Gillard,  DT:Don Thrasher, GD:Greg Demos,
 JP:Jim Pollad, KF:Kevin Fennel, MM:Mitch Michell, TS:Tobin Sprout,

<曲目紹介>
→曲名:ユニット名

26. SUPERMARKET THE MOON: CLINTON KILLINGSWORTH
(RP- vo,g, TS- p):1993年

 「Bee Thousand」のアウトテイク。
 やさしいピアノのつまびきをバックに、アコギをそっとかき鳴らしながら歌い上げる。
 ハイトーンのロバートの喉が美しい。

 多重録音のハーモニーをかぶせ、おごそかに盛り上げていく。
 ロマンティックな曲なのにラフな録音のおかげで、へんにセンチメンタルに流れるのを回避している。
 そこらへんのバランス感覚はさすが。・・・意識的にじゃないだろうけど。

 こういうタイプのGbVは珍しいだけに、当時ボツらせたのは惜しい。

27. HOLD ON TO YESTERDAY: STINGY QUEENS
(MM- vo, RP- g,backing vo) :1983年

 ミッチとの共作クレジット。
 しゃがれ声でうなるミッチを立て、ロバートは裏方に回る。
 印象的なメロディラインを繰り返し、だんだん曲を盛り上げていく。
 いかにもデモテープって感じかな。

28. HA HA MAN: THE JUDY PLUS NINE

(RP- vo,g, Jonny Strange- b, KF- ds, TS- backing vo)1993年

 「TONICS AND TWISTED CHASERS」に所収のものとは別テイク。
 これも「カバー」っていうんだろうか。
 かなりしっかりしたアレンジと録音で、充実した演奏を楽しめる。。
 なのに一分ちょいで、中途半端なフェイドアウトしてしまう。
 そんなあっけなさが悲しい。

29. OUR VALUE OF LUXURY: NICOTINE CRANES

(RP- g,vo, JP- g, MM- b, KF- ds, TS- g):1992年

 (17)や(21)と同様に、ボツアルバム「Back to Saturn X」に収録予定だった曲。
 メンバーがほんの少しだけ違うせいか、当然のように違うバンド名でクレジットされている。・・・あんまり深く考えないほうがいいのかな、このアルバムのバンド名は(笑)
 でででででっと地を這うようなギターのリフにのり、単調なメロディで始まる。
 そしてサビでぱあっと駆け上る。
 そんな爽快感が魅力的な曲。

30. BUG HOUSE (2 VERSIONS): ARTHUR PSYCHO AND THE TRIPPY WARTS
(RP- vo,g, TS- b, MM- g, KF- ds, Jim O`rourke -Treated g):1995年

 (13)と同じく、未発表に終わったアルバム「Power of suck」の中の一曲。
 2バージョン収録されているけど、違いは音質とギター。
 ゲストとして、ジム・オルークが参加している。
 最初のバージョンは、エレキによるロバートの弾き語り。
 シンプルなギターリフがかっこいい。
 
 後半のバージョンはバンド・サウンド。
 音が全般的にこもっており、さらにぐしゃぐしゃのギターがノイズ風にからむ。
 このノイジーなギターがオルークかな。
 最初のバージョンと、曲の印象はほとんどかわらない。
 ギターノイズで飾りをつけたって感じかな。
 
 曲としての出来は後半のテイクが上だと思う。
 とはいえ、すっきりヌケのいい弾き語りバージョンも捨てがたい。

31. RAINBOW BILLY: GROOVY LUCIFER
(RP- g,vo):1992年

 「Bee Thousand」のアウトテイクとなったこの曲は、アコギによる弾き語り。
 ロバートはめずらしく、センチメンタルに歌ってる。
 ファルセットを強引に挿入したメロディは、かなりすっとんきょう。
 すすり泣いてるようにも、酔っぱらってとっちらかってるようにも聴こえる。
 さて、真実はどっちだ。  

32. SHRINE TO THE DYNAMIC YEARS (ATHENS TIME CHANGE RIOTS): APPROVAL OF MICE
(RP- g,vo, DG- Lead g,backing vo, GD- b, Jim Macerson- ds):1998年

 最近の録音だけあって、アレンジがそうとう練られている。
 音のヌケがいまいち。「Do The Collapse」用のデモテープかな。
 そつなく出来ているけど、ぴんとこない小粒の曲。
 サビのパワーがいまいち弱いせいかな。

33. ON SHORT WAVE: ERIC PRETTY
(RP- g,vo):1991年

 (9)と同じく「Concert for Todd」の曲。ERIC PRETTY名義だ。
 このバンド名は、めずらしく本アルバムで複数曲が収録されている。

 冒頭にぼそぼそっとロバートがつぶやくシーン以外は、ライブ録音とは聴こえない。
 アコギを弾きながら淡々と歌う。
 この曲には、断片的なメロディを寄せ集めたような混沌さがある。

34. I CAN SEE IT IN YOUR EYES: ARTROCK UNICORNS
(RP- g,vo, MM- b,backing vo, KF- ds):1989年

 ポップなコーラスフレーズをひっさげたイントロで幕を開ける。
 オクラ入りになったアルバム、「Learning to hunt」用の曲。
 ぐしゃぐしゃな音色で演奏されるのがもったいない、キャッチーなメロディだ。
 かっちり作り上げたら、シングルにぴったり。
 エンディング間近で歌い上げる、ボブのボーカルはすがすがしい。
 
35. TOBACCO’S LAST STAND: KUDA LABRANCH
(RP- g,vo):1992年

 ディスク1にも、同年92年頃の弾き語りが3曲あり。
 本ディスクも、ここから3曲92年の弾き語り曲が続く。
 ロバートは本当に、いったい休んでるんだろう。

 前触れなく、いきなりアコギで歌いだす。
 なにかの曲の中間部を切り取ったように、唐突にメロディが展開する。
 ちなみに、「Bee thousand」のアウトテイク。

36. SHIFTING SWIFT IS A LIFT: ELVIS CALIGULA
(RP- g,vo):1992年

 ダブルボーカル仕立ての曲。
 語りっぽく唸る歌い方は、ディランを思い出した。
 字余りな歌詞にブルージーな演奏。GbVにしては珍しいタッチだ。
 多重録音したコーラスは、メロディを補完するでもなく、せっかちに後ろからリードボーカルを追いかけてくる。
 なんてことない作品だけど、妙に惹きつけられる。

37. SING IT OUT: TABATHA’S FLASHPOT

(RP- g,vo):1992年

 アップテンポなカッティングがここちよい。
 ロバートの歌声はキーを思い切り上げて、かろやかに響く。
 草原を駆け抜ける映像が似合いそうだなあ。
 きっちり作りこんで欲しいぞ。
 デモテープ風な作りだから、ちょっと気を抜くと聴き流してしまう。

38. MESSENGER: RICKED WICKY
(RP- g,vo, Paul Comstock- g,backing vo, MM- b, KF- ds):1985年

 ギターのポール・コムストックとの共作。
 サビでタイトルを連呼する、シンプルなギターポップ。
 いまひとつありきたりな曲で、つまらない。どこかでガーンとはじけて欲しかったな。
 演奏の途中で、テープが思い切りよれる。
 なのにあっけらかんと発表するロバートのおおざっぱさがいいぞ。

39. THE FOOL TICKET: K.C. TURNER
(RP- g,vo):1992年
 
 またしても92年の弾き語りテイク。ロバートはこのころ、弾き語りにこってたんだろうか。
 もっとも数本ギターは重ねられている。コード弾きが中心で、個性は感じられない。
 ちぐはぐなメロディに、不安定なボーカル。
 サイケ風味のポップスって所かな。
 執拗にざくざく刻むギターが、妙に耳に残る。

40. MALLARD SMOKE: BROWN SMOOTHIES
(RP- g,vo, TS- g, Dan Toohey- b, Larry Keller- ds):1990年

 こもりまくった音質で、バックは完全にダンゴになっている。
 その雲をかき分けて、ボーカルがかすかに頭を出した。
 シンプルなリズム隊にのって、ギターが荒れ狂う。
 ところどころドタバタとリズムが揺れるのが気色悪いけど(苦笑)

 ライブで聴いたら魅力たっぷりだろうな。
 中盤でブレイクして、雰囲気を変える小技がすばらしい。
 クレジットはないけれど、ライブ録音らしい。曲が終わった瞬間に歓声が上がる。
 ヌケのいい録音で、じっくり聴いても楽しめそう。

41. MR. McCASLIN WILL SELL NO MORE FLOWERS: EDISON SHELL
(RP- g,vo):1979年

 これもぼろぼろの録音。
 時代から言って、カセットテープでむりやり録音したんじゃなかろうか。
 まったく意識はしていないだろうけど、クラフトワークのようなクールさを不思議なことに感じる。
 ひしゃげたボーカルが、ボコーダーをかけたような効果を出してるせいだろう。

 このぶわぶわした声で歌うメロディに、いやにきれいな音で録音された声でハーモニーをつける。
 リズムボックスみたいな音も小さく聴こえるけど、これはギターかなぁ。
 叙事詩を聴いているような、「メロディの継続性」をしみじみ感じた。

42. SHIT MIDAS: CERAMIC COCK EINSTEIN
(RP- g,vo):1992年

 またもや92年の弾き語りトラックです。そしてまたしても「Bee thousand」のボツテイク。
 不安定なピッチで、そおっと歌っていく。
 あきらかにデモテープ風の手触り。これがそのまま作品として成立するかな。
 すごく微妙だ。

43. BLUE GIL: MOONCHIEF
(RP- g,vo, JP- g, MM- b, KF- ds):1989年

 こんどは幻のアルバム「Learning to hunt」用の曲。
 「スーツケース」には本アルバム向ようとして録られたテイクが、数曲収録されている。
 まとめて編集したら、あんがい「Learning to hunt」がどんなアルバムだったか偲べるかな。

 なんてことないサイケポップだけど、サビでぐわっと展開する部分が魅力的。
 一筆書きの録音しっぱなしでなく、ちゃんと繰り返しも残してある。
 なぜボツらせたんだろう。サビの部分は、かなりいい曲です。 

44. INVEST IN BRITISH STEEL: RICKED WICKY
(RP- g,vo, Paul Comstock- g,backing vo, MM- b, Peyton Eric- ds):1985年

 (38)と同じバンド名ながら、ドラマーが違っている。
 メンバーも時期も同一なのに名義を異ならせたバンド名のほうが、本「スーツケース」では多いのに。
 なぜこの曲は、おなじRICKED WICKY名義なんだろう。
 ロバートのそこらへんのセンスが、よくわからない。

 さて、曲そのものはメンバー全員による共作とクレジットされている。
 いかにもセッション風のシンプルな曲。
 ザクッザクッと刻むビートにのって、二本のギターがてんでにフレーズをばらまく。

 とはいえアイディア一発で力任せに走るのではなく、中盤にちょっとしたブレイクをはさむ小技を見せているところがにくい。
 4分弱のインストだ。

45. SPINNING AROUND: PEARLY GATES SMOKE MACHINE
(RP- g,vo):1983年

 ヒスノイズの奥で、ロバートが朴訥に歌う。
 ギターはリバーブを効かせて、コード進行を確かめるかのように弾くだけ。
 メロディは途中で語りとも歌ともつかないものに変化する。
 夢の中で浮かんだメロディを、そのまま録音したみたいだ。

 中盤で思い切りテープの傷があり。にもかかわらずリリースするほどの思い入れはなんだろう・・・。
 曲としての出来は、それほど特別じゃないと思うけどなあ。

46. LET’S GO! (TO WAR): 1st JOINT
(RP- g,ds,vo, TS- g,b) :1992年

 リズムマシン風に連打されるドラムにのって、パンキッシュに駆け抜ける。
 途中でちょっとドラムがヘタるのは愛嬌。
 音質はぐしゃぐしゃにひしゃげていて、ボーカルは上下の周波数帯をブーストされた感がする。
 パワフルなデモテープって感じか。
 トビンとロバートの共作曲だけど、思いつき一発の瞬発力がすごい。 

47. GRASSHOPPER RAP: ANTLER
(RP- vo, JP- g):1989年

 しょっぱなから、ジムのノイジーなギターが響いた。
 タイトルどおり、メロディらしきものはほとんどない。
 ひたすら歌詞を叫ぶのみ。

 こんな曲なのに、クレジットはジムと共作。
 ロバートのマメさがすがすがしい。
 90年のアルバム、「Some Place the Fly Got Smashed」のアウトテイク。

48. I’M COLD: KING OF CINCINNATI
(RP- g,vo):1987年

 多少音はこもっているが、充分及第点がある。
 なんで同じような時代でも、ここまで音質が異なるんだろう。
 時代が新しくなるにつれて、音質が上がる・・・とかなら、理解しやすいのに。

 エレキギターをかき鳴らしながら歌うメロディは、後年のメロディメイカーぶりを髣髴とさせる瑞々しいもの。
 サビでコードが変化する瞬間が心地よい。

 あっさりして、とてもいい曲だ。

49. DAMN GOOD MR. JAM: GHOST FART
(RP- g,vo, TS- g, MM- b KF- ds, JP- g):1992年

 (17)、(21)と同様に、ボツアルバム「Back to Saturn X」のアウトテイク。
 多少ボーカルにエフェクトを加えて、声質をこもらせている。
 ギターのアルペジオをドローン的に使い、なんどもアレンジがひっくり返る。
 アイディアに満ちた曲で、メロディも魅力がある。
 ボツらせたのが惜しい。・・・だからこそ、今回の発表が嬉しい。

 ごそごそっと身をもたげる、エンディングでのギターソロが刺激的。もっと聴きたかったな。

50. IN WALKED THE MOON: BEN ZING
(RP- g,vo):1988年

 BEN ZING は(5)でも収録された、ロバートのソロユニット。
 ギターもボーカルも数回重ねられ、丁寧なつくりのアレンジだ。
 イントロ無しにいきなり始まるメロディは、ふくらみがあって素晴らしい。
 サイケ風味のエバリー・ブラザーズといった感じかな。

 これほどの才能を当時もっていながら、デビューしなかったとは。
 なんともったいない・・・。すっごくいとおしい曲だ。
 サビに展開する寸前のメロディが、ぐっとくる。

 アレンジも練られ、巧みに展開する。
 何度も繰り返し聴いてしまう名曲だ。

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