telのCD購入紀行 2006-2010


2010年12月

2010/12/31   最近買ったCDをまとめて。

   Bunb Recordsがクラブ・イベントで集めた日本人ラッパーのコンピ。06年リリース。
402・V.A.:Shout of the underground Vol.1:
   アレンジがバラエティに富む。パーティやポップな曲調が中心かな。
   どのラップもずいぶん若々しく、ライムも青春めいた言葉が多い。20代のある意味
   脂ののった年代な作品集としては、少々意外だ。
   素朴で訥々としたラップが多い。楽しめる瞬間も確かにあるが、全体にはちょっと乗り切れず。
   ぼくの好みだと(9),(11)、あたりが良かった。

   m-flo脱退後、Lisaの1stソロ。03年発のCCCD。
401・Lisa:Juicy Music:☆★
   ヒップホップにとどまらず、つるつる滑る歌ものポップまで、幅広いアレンジ。
   シンセのきらきらな表面輝くミックスは、いかにもJ-Pop風で個人的には
   馴染めないけれど。これだけバラエティ富んだ構成をすべて自作でまとめたセンスは素直にすごい。
   自らの歌を前面に出した、華やかなボーカル・アルバム。

   詳細不明、イギリスのレーベルかな。レゲエのコンピ。何となく聞きたくて購入。
   94年のコンピで、有名どころでチャート上位に食い込んだ曲をまとめ。23曲入。
400・V.A.:Soft Reggae:☆☆★
   レゲエのコンピって似たようなリズムが延々続き、飽きることがしばしば。
   でも本盤はアレンジやテンポがバラエティあり、楽しめた。
   キャッチーな楽曲が並び、BGMにもいい。積極的に買う盤では無いと思うが、
   予想以上に楽しめたコンピだった。

2010/12/21  最近買ったCDをまとめて。

   メルツバウの新譜は12枚組、未発表音源集。比較的静かめの録音集らしい。SMの緊縛研用BGMかも。
399・Merzbow:Merzbient:

   吉田達也が復帰したゼニゲバの新譜で、ライブ盤。録音等も吉田達也が担当した。
398・Zeni Geva:Alive and rising:☆☆★
   歪みながらくっきり聞こえるギター、ベースはひずみ、ドラムは激しく突っ走る。
   吉田達也のミックスは生々しい凄みを残しつつ、明確に聴ける素晴らしさ。
   音質のセンスが何よりうれしい。ゼニゲバはあまり聞いたことないが、
   パンクとアヴァンギャルドがポップに融合した、興味深い個性のサウンドだ。
   ぴゅんぴゅんとスペイシーな音加工は、後処理かな?あまり変拍子的なダイナミズムはないが、
   吉田らしい手数の多さも嬉しい。

   バカボン鈴木時代のトリオ。黒田京子がピアノ。
397・坂田明:おむすび:☆☆☆☆
   あったかいジャズ。フリーク・トーンやフリーな展開は控え、
   坂田は滑らかで柔らかい響きのサックスを聴かす。黒田がスケール大きなピアノで
   がっしりと世界を広げ、のびのびしたグルーヴを漂わす。
   影をまとったサックスがかっこよく、切ない。

   加古隆、77年の録音。ベースが翠川敬基、ドラムが富樫雅彦。
396・加古隆:"海の伝説ー私":☆★
   むせび泣くフリージャズ。ビートは縦に断裂する。グルーヴやユーモアは控え
   美しく築く世界を狙ったか。緊迫を聴き手へ求める。息苦しいほどではないが。
   録音のせいか、ちょっとこもった感じがする。

   東海岸のビバップ集。当時の音楽評論家のプロデュースした有名盤で、ジャケットが気になり聴いてみたかった。57年の録音。
395・Leonard Feather:Presents "BOP":☆☆★
   ビバップ全盛期から10年経過の段階で、ホットな演奏を聴かせる回顧的な企画。
   どれもスカンと明るくスイングする。ドラムとベースが絶え間なくビートを提示し、
   アドリブが次々に回された。もともと革新性を狙った企画じゃないため、
   気軽に聞ける。その一方で、本盤に詰まった演奏はどれも洒脱だ。
   スピーディさが洗練されてるな。ジャケットのユーモラスなさまも眺めてて楽しい。

   NYのルーレットでのライブ音源集、92年発売。ジョン・ゾーンらが参加。
394・V.A.:A confederacy of dances vol.1:☆☆☆
   ほとんどの曲で散発的なフレーズをタイム感や小節を意識させず
   淡々と弾く即興だ。これが当時のNYの流行か。どの曲も刺激的で、時代を切り開く
   奏者らの溌剌としたパフォーマンスが聴ける。貴重な一枚。

   フレッド・フリス、97年のリーダー作。
393・Fred Frith:The previous evening:☆☆
   実験的な手法が、ある意味わかりやすく表現された一枚。
   ジョン・ケージ、モートン・フェルドマン、アール・ブラウン、三人へのオマージュをそれぞれ1曲にした
   コンセプトの現代音楽。3曲とも元はダンス音楽とクレジットあり。
   構成はチャンス・オペレーションによるらしい。
   (1)はコラージュの印象が強く、そこへ無造作にクラリネットのフレーズが入った。
   フレッド・フリスのサウンド・イメージは希薄だ。むしろテープ操作を含む、構成そのものがフリスの作品か。
   ただし次々変わる音像を、フリスがどう操作していたかは単純に興味あり。それともテープ編集?
   メリハリ無く進むため、個々の瞬間にスリルを感じるかドローン的に楽しもう。
   (2)は隙間の多いピアノ作品。残響がそこかしこで漂い、ゆったりした風圧を産む。20分強の長尺。
   (3)はテープ操作がメインか。ポリリズムがわかりやすく提示され、空気を震わせた。

   07年リリース、彼の6thソロ。
392・Redman:Red gone wild:☆☆☆★
   ビルボード13位のヒット。めっちゃ豪華なゲストやプロデューサー陣と、ソウルを中心の
   サンプリングに、野太いビート。のっそりしつつも声の調子は高めなレッドマンの
   しぶといラップが合い、聴きごたえあるアルバムに仕上がった。
   ボリュームたっぷりの大作で、聴きこむには集中力が必要。
   レッドマンの好調ぶりをたっぷりアピールした。スピードや凄みではなく、したたかなファンクネスが魅力。

   Avantから98年のリリースで、中国の弦楽器ソロみたい。
391・Min Xiao-Fen:Wht six composers:☆☆★
   一曲の即興を除き、別の作曲家の作品を演奏している。中国琵琶の音色は甲高く、
   それほど厚みはないが、奏者の弦をひっかく力配分やダイナミズムで
   きらびやかな響きを作り出した。どの曲も高技巧で疾走するイメージあり。ほぼすべて90年代の作曲集だ。
   エキゾティックなムードは音色のみ、全体に緊迫感が漂う。
   時代なのか、ちょっと録音レベルが抑え目。もっとガツンと聴きたい気も。ボリューム上げたら、空気がきしむ味わいがした。
   一曲の即興は数分の短いもの。しかし大胆な撥使いだから、もっと長尺で聴いてみたい。

   ウルマー率いるユニットのDIWリリース盤、97年発売。
   ゲストでジョン・ゾーンとファラオ・サンダーズが参加した。
390・Music Revelation Ensemble:Cross fire: ☆☆★
   きらびやかと切なさが交錯するアレンジだ。中にはうっとり美しいテーマもあるが
   即興のとたんファラオ・サンダーズがわめき始めるのには閉口した。
   スリリングな即興を中盤で楽しみ、テーマ部分はしとやかなアンサンブルが味わえる作品。

   アフリカのラップを集めたコンピで、英語の細かなライナーつき。
389・V.A.:Africa Rap:☆☆☆☆
   非常に興味深いコンピ。フランス語のラップが中心かな。のどの奥を震わす独特の発音が新鮮なスリルだった。
   サウンドはシンプルなトラック。サンプリングよりシンセによる
   打ち込み中心か。ライムはギャングスタよりもっと切実、意味は不明だが政治的な
   アピールや真摯なスタンスを感じる。解説はフランス語が中心、英語の抄訳つき。大ボリュームで(読めていないが)
   丁寧な曲目解説もあり。アフリカでのひりひりするヒップホップを概観できる、貴重な盤。
   現地ではカセット中心のリリースかな。発表年度はいまひとつわからず。

   コンゴ共和国のラップ・グループ,09年の3rd。
388・Bisso NA Bisso:Africa:☆☆☆★
   シンプルなアレンジで歌とラップを滑らかに混在させた秀作。
   聴きやすくしなやかなグルーヴは、ジャストなノリを中心に華やかなムードを醸し出す。
   ギャングスタ的な凄みは無い。リンガラ風のダンサブルさに西洋音楽の要素を
   どっぷり混ぜた。ある意味、英米音楽の影響を多分に受けた一枚。

   日本人ラップ・グループ、05年のアルバム。
387・Nobodyknows+:5MC & 1DJ:☆★
   独特の涼やかで軽いトラックのつくりがまず、心地よい。ラップは5人編成で
   バラエティを持たせた。高音の爽快さからどすを利かせたシャウトまで。
   パーティ・ラップなスムーズさ、でも一歩前へ踏み出す個性を感じた。

   カニエ・ウェストの07年、3rd。ジャケットが村上隆だ。ボートラ2曲入の日本盤を入手。
386・Kanye West:Graduation:☆★
   金かかった録音と思うし、サウンドも薄く響きつつも凝ったビートで
   サンプリングも派手だと思う。しかし、胸に響かない。セレブ臭漂う着飾ったつくりで
   洒落たパーティ・フロアに似合いそうだが、ぼくはもっとストリートっぽい泥臭いのが好み。

   さまざまな日本人ラッパーが参加し、政治的なライムをコミカルに展開する07年の盤。
385・BRASH BALL CREW:PATRIOTS PEARL HARBOR: ☆★
   野太いシンセの音色が印象的なトラック。政治的な反発を描いたテーマが
   逆に気になり、ビートへ集中できぬ時も。やはりぼくは、ラップの意味に無関心なんだな、と時間。
   どすの利いた声と、舌足らずな声の印象があいまった盤。

   横浜/川崎が拠点のラッパーのアルバム。04年発売。
384・Nora:JUNK FOOD:☆☆☆☆
   めっちゃカッコいい。軽やかなトラックの上で、変に声をつぶさず滑らかな
   ラップが滑っていく。洒落のめした気取りとタフネスを同時に表現するスタンスは新鮮だった。
   ベイ・ファンクのグループによるアルバムであり、このソロ活動など
   さらに広がっていそう。小気味よいグルーヴが良い。

   ハリウッドのローカル・ラッパーを集めたコンピのようだ。01年の盤。
383・V.A.:Independents Finest Vol.2:☆☆
   クールで硬質な打ち込みビートのラップが詰まった。派手さはないが、結構惹かれる
   作品が多い。チャートに出てこずとも、ラッパー層の厚さをしみじみ。

   日本人ラップのオムニバス。クラブで知り合ったメンバーによる、自然発生の
   コラボによる作品で、00年発売。
382・V.A.:DIGGABLE002:☆☆☆★
   さまざまなMCがコラボしたアルバム。とにかくトラックの密度、スピード感がすごい。
   (2)のけだるげな甘さは、飛び切りかっこいい。この楽曲に限らず、ラップとトラックの親和度が素晴らしい。百花繚乱の個性が見事に結実した。
   99年当時の日本ヒップホップが到達してた、あまりの高みに驚いた。
   ギャングスタの凄みじゃなく、ひりひりとザラついた不安な空気が一面に広がる。

   アメリカのヒップホップ・オムニバスらしい。ジャケ買い、00年の盤。
381・V.A.:Ropeladder 12:
   ヒップホップを基調としつつ、どこかアンビエントな雰囲気のコンピ。
   アンソロジー形式だが、どういう脈絡の選曲かは調べていないが。
   リズミカルさはもちろんあるが、どこかけだるげな曲調をはさみ、
   ダンサブルさやくつろぎとは別次元、どこか酩酊気分が漂う。チルとも違う。

   Nasの99年発、3rd盤。全米一位のヒットとなった。
380・Nas:I am...:☆☆☆
   予想以上にポップな仕上がり。軽妙なムードが不穏さを上回る。
   小気味よいラップの絡みと、グルーヴィなトラックの合体が気持ちいい。

   アメリカの黒人ソロ、ソウル。5thソロで05年の発売。当時、ビルボードで
   アルバム・チャート12位まで上がったヒット。
379・Ginuwine:Back II da Basics:☆★
   とっつきにくいアルバム。軽快なファルセット、せわしないほど小気味いいビートに
   耳を惹かれるが、メロディや歌声がすっと胸に落ちない。
   小粋にまとまってるとは思うが。

   Black Eyed Peaseにも参加したトラック・メイカーらしい。06年の盤。
378・Venus Brown:Tar baby:☆☆☆★
   もとはブラック・アイド・ピーズのプロデューサーなどスタッフ業務が本来ながら、
   自分の愉しみに作った盤が本作という。ところが余技をはるかに超えた
   素晴らしいドライブ感にやられた。クールで爽やかなアコギの響きがまず特徴。
   作曲やプロデュースはもちろん、ミックスも自らこなす。演奏もほとんどを自分で。
   さまざまな音楽的才能を存分にアピールした一作。
   ネットでは"オーガニック・ソウル"のカテゴリーだが、キザイア・ジョーンズにつながる
   アフリカンな要素も感じた。音数少ないサウンドと、切れ味鋭いビートが産み出すファンクネスの魅力。
   そしてリズムはヒップホップの文脈を使い、打ち込みで淡々と刻む。

   この6thは全米で60万枚を売り上げた。04年のヒップホップ。
377・Ja Rule:R.U.L.E.:☆☆
   嗄れ声で畳むドスの利いたラップ。歯切れ良い言葉づかいが、シンプルなトラックに乗って
   ぐいぐい迫った。さらに彼の声は常に歌うよう。たんなる口癖じゃなく
   メロディを意識したラップが、親しみやすい。

   トラックメイカーかな、とジャケ買いした。06年のヒップホップ。
376・Rhymefest:Blue Collar:☆☆☆★
   厚みあるソフトでファンキーな打ち込み中心のトラックが心地よい。
   サンプリングは抑え、フレーズも改めて演奏してる。小気味よいラップが
   トラックと絡んだ。歌ものもうまく馴染んでる。プリンス風の"Devile's pie"が特に好き。

   トリニダード・トバゴ出身の黒人女性シンガー。プロデュースにジャム&ルイスや
   ダラス・オースティンらが参加した、03年のアルバム。
375・Heather Headley:This is who i am:☆☆
   アレンジはきれいだし歌もうまいが、曲調が少々平板か。耳触りは良いアルバム。
   今一つ胸に落ちてこない。

   サウス・キャロライナ州出身の女性黒人シンガー。04年の3rdでビルボード14位のヒット。
374・Angie Stone:Stone love:☆☆☆☆
   04年のアルバムと思えぬ落ち着き。70~80年代の明るい雰囲気をきれいに取り入れてる。
   特に(6)が秀逸。打ち込みやラップを混ぜつつも、温かいソウルの魅力を
   きっちり取り入れた演奏がまず、素晴らしい。アンジーの歌声も華やかだ。
   味わい深い歌もの、素敵な一枚。

   オクラホマ州の黒人女性シンガー。02年の3rdアルバムがこれ。
373・Lutricia McNeal:Metroplex:
   ケバいアレンジのガール・ソウル。ただしゴスペル要素なども取り入れ、バラエティさを目指してる。
   野太くたくましい歌声でパンチ利かせた。つるっとした雰囲気が物足りないが。
   メロディがピンとこず。(2)や(7)のほんのりレゲエ風味が耳障りいい。
   ミドルテンポの(8)も耳をひいた。しかし後半が
   類型的なダンサブル・アップの連発で退屈。

   黒人ボーカル・グループが02年リリースの3rdで全米21位の盤。1stは聞いたことある。
372・Dru Hill:Dru World Order:☆☆
   アップの曲は中途半端な印象が否めない。フレーズがいたずらにループし、
   ヒップホップを狙いきれず。ダンサブルさにも到達せぬファンクネス・・・。
   中盤のミドルからようやく、メロディアスさの強調で聴きごたえが産まれた。
   ボーカルに絡みつくコーラスも、アップでは無味乾燥だが、例えば(9)では、ダイナミックなロマンティシズムに変わった。
   アップではじめてミドルで緩め、バラードでしめる。そんな類型的なソウル・アルバムの
   方法論をなぞったイメージが抜けない。もっとのびのびと尖った個性出してほしい。
   個人的にはバラードでゆったり迫ってほしいかな。スロー気味の曲は、ぐっと耳を惹いた。

   ジャズ。スペインのベーシストで、2管、ピアノレスのクインテット。09年の盤。
371・J.P. BALCAZAR QUINTET:INVOCATION:☆☆☆★
   切なげなメロディラインと、ねっとりなグルーヴが独特の美しさを持つ(2)が抜群。
   たどたどしいロマンティシズムの(4)にも惹かれる。
   ぬるぬるとスケール大きくソロが広がる(5)もいい。(7)では管が互い違いに
   重なっては踊る。滑らかに。(8)でも粘っこく平行するアドリブの味は濃い。
   全体に尖らぬサウンドながら、何点化でとても愛おしいジャズを奏でる。

   ストレート・アヘッドなジャズらしい。白人テナー奏者のリーダー作で、99年の盤。
370・George Garzone:Moodiology:☆★
   コルトレーン風の吹きかただが、スピードは抑えてる。じっくりとメロディを
   つむぐテナーのアドリブが、タイトなリズムに映えた。
   穏やかでごつい落ち着きを見せたジャズ。前衛さはないが、
   アドリブの骨っぽさは楽しい。

2010/12/05  最近買ったCDをまとめて。

   明田川荘之の新譜が二枚同時に出た。昨年の5月、スガダイローを
   ゲストに向かえたセッションを、各セット毎に別タイトルで発表。
369・明田川荘之:Akedairo Orchestra Blue:☆☆☆★
   ベテランぞろいのソロ回しを堪能できる一枚。ダイローをピアノに置き
   明田川がキーボードを担当が本盤のミソ。ダイローのバッキングは丁寧で、ときおりグッと耳を惹きつけた。
   ちなみに(2)では妙にスタンダード集なピアノ・ソロを聴かせる。
   穏やかでセンチメンタルなジャズがいっぱい。

   これがその、もう一タイトル。
368・明田川荘之:Akedairo Orchestra Black:☆☆☆★
   スガダイローが入ることで、剛腕一直線テンションかと思いきや。
   ブルージーにゆったりしたムードも。明田川の弾くシンセの響きが、コミカルなムードを加えた。
   アンサンブルのサウンドはどっぷりと、アケタガワ色。
   ダイローのピアノは、(3)でのロマンティックさが秀逸だ。
   本盤でのハイテンションは(4)が特徴的。ぐいぐいと雪崩れる。

   ザッパの発掘シリーズ近作をまとめて。
   これは"ルーベン"の再発で、リズム隊がオリジナル。さらに別テイクも収録した。
367・Frank Zappa:Greasy love songs:

   76年のライブ。ビアンカ・オディン(vo,key)参加が珍しい編成で、2枚組。
366・Frank Zappa:Philly '76:

   78年の英ハマースミス・オデオン公演の数日間テイクを、曲ごとに混ぜて
   ひとつながりなライブ風に編集した3枚組。
365・Frank Zappa:Hammersmith Odeon:

   ペルシャとインドの即興を合わせた、NY録音盤。ミュージシャンは現地の優れものらしい。97年発売。
364・Ghazal:Lost songs of the silk road:☆☆☆☆
   これは素晴らしい。
   イランのケマンチェとインドのシタールの組合せを基調とした即興に、時折タブラが絡む。
   切なくむせび泣くケマンチェの響きがたまらない。全体的に繰り返しを含む
   ふくよかな耳ざわり。温かくしっとり滴るアンサンブルだ。

   日系アメリカ女性シンガーのデビュー作。97年発表。
363・Mia Doi Todd:The ewe and the eye:☆☆
   ぱあんと突き抜ける声の響きが気持ち良い。ギターの弾き語りでフォークや
   ブルーズ的な要素もほんのわずか感じるが、それよりも落ち着いた緊迫感による
   張りつめた寛ぎ、そんな二律背反のイメージが浮かぶ。ゆったりミドルテンポの曲が詰まった。
   華やかさなアレンジとは無縁だが、不思議な浮遊感が膨らんだ。

   93年、確かヒットしたヒップホップのアルバム。
362・L.L.Cool J:14 shots to the dome:☆☆☆
   カラっとミニマル。ハードコアまで行かず、音像はあくまでクール。繰り返しが執拗に
   行われ、彼流のかっこいいフレーズのみを取り出した。
   かといって、JB風のファンクにはいかない。やはり、ミニマルな感じがある。
   ダンスビートとして、テクノに通じる。

   数年前に大ヒットした盤だそう。ヒップホップ。
361・Flo Rida:Mail on Sunday:☆☆
   マッチョなムードだが内容はメロウ。歌詞は不明だがなんとなく
   ハッピーで重たく時にスローなテンポでじわじわ聴かす方向性か。
   いたずらなダンサブルさでハイにさせるよりビーチあたりで
   気楽に流すイメージが浮かんだ。楽曲は深いシンセを基調の、チープだが丁寧な作り。 

   何となく購入のヒップホップ。02年発売。
360・Xzibit:Man vs Machine:
   ほとんどの曲でゲストが入る豪華さ。エミネムやDr.ドレら、そうそうたる顔ぶれの
   サポートを受けて、全米3位とヒット盤だった。ヒップホップのリズムは軽快で
   闇や凄みを出してもスッキリな空気。リズムもアレンジも空間生かした見晴らしいいサウンドだ。
   全体的には、毒要素の薄さが物足りないながらも聴きやすいアルバム。
   それにしても、全体にテンポがゆったりめ。スピード感より安定性か。
   (10)の荒っぽさが、好み。

   G線上のアリアをループにしてヒットした曲のシングル。別ミックスが色々。
359・Sweetbox:Everything gonna be alright(single):☆★
    バージョン違いを7曲。バラエティを持たせてるが、クラシック・バージョンや
   インスト、エクステンディッドなどそのまんまなテイクも。もっと
   遊び倒したテイクを入れてもおもしろかったのでは。


2010年11月

2010/11/27   最近買ったCDをまとめて。

   米Charnel House Productionが93年発表のジャパノイズのコンピ。
   メルツバウほか、非常階段やC.C.C.C.、Aube等が参加。灰野敬二も一曲。何となく珍しい。
358・V.A.:Land of the rising noise~雑なる音出づる処の国:☆☆☆★
   当時の代表的なノイジシャンを概観できる、的確な選定のコンピ。全体的に
   抑え目の印象で、時にアンビエントな場面も。しかしメルツバウの小気味よい
   ノイズを筆頭に、収録された音楽はダイナミックだ。ちなみに喧しさは
   非常階段がトップ。ハーシュを思うさまぶちまける。

   昔、達郎のサウンド・ストリートで一曲取り上げてた、黒人作曲チームのアルバム。78年発表。
357・Grey & Hanks:You fooled me:☆☆☆
   ディスコ・サウンドだがきっちり生演奏ならではのグルーヴが心地よい。
   特に数曲でのチャック・レイニー(b)とゲイリー・ファーガソン(ds)のアンサンブルが
   ぐいぐいうねってる。ホーン隊の華やかさも魅力。

   ウータン一派の07年作。ゲストでGZA,キラー・プリーストが参加した。
   エグゼクティヴ・プロデューサーがドレディ・クルーガー。
356・Wisemen:Wisemen approaching:☆☆☆
   ウータン独特のきな臭さが漂うものの、基本は明るめなタッチ。テンポも
   ミドルで、のんびり気味。ゲストも豪華だし、聴くのは悪くない。
   ループはちょっと温いし、メインメンバーのラップも少々舌足らずな感じも。

   片山広明が77~78年セッションの発掘音源、09年発表。
   1曲で明田川荘之が参加も、個人的に嬉しい。
355・片山広明:いそしぎ:☆☆☆☆
   30年以上前の空気感が伝わる、貴重な音源。音質もそれほど悪くない。
   片山のサックス、明田川のピアノの色合いは変わらず、若さゆえのパワフルな
   炸裂が伝わった。空気が破裂する緊迫ぶりがどっさり。それでいて、うっすらと
   親しみやすさがたゆたう。早川のベースは幾分、硬い。真面目な印象だ。
   いわゆる中央線ジャズのしたたかさを、当時のムードを堪能できる盤。 

   古澤良治郎の77年録音作がリイシューされた。
354・古澤良治郎:ラッコ:☆☆☆☆
   好みでいうと、なんといってもB面のサウンドが馴染む。
   A面のふわふわ動くキーボードのフュージョンっぽさに、時代を感じた。
   A面のドラムは軽やかに刻み、うねる。グルーヴはさほど強調せず。しかしえぐるような
   低音の突っ込みがかっこいい。ベースとの浮遊するアンサンブルが魅力。
   ほのぼの名曲なタイトル曲は、キーボードがいなたく響き、ソプラノ・サックスも穏やかなムードでよい。
   さて、B面。(4)はぐっと骨っぽいジャズに変わる。(5)もがっつりファンク。(7)もスピーディなビートに
   サックスがのびのびソロを取る対比が素敵だ。

   吉田達也率いる、豪華メンバーの即興ユニットがDVD+CD形式で発表。
353・The World Heritage:世界遺産への誘い:☆☆☆☆
   CDの音源はスタジオ2曲と二か所のライブ音源から抜粋した。曲順はバラバラ、
   ライブの追体験は意識させず、楽曲として聴かせる構成を取る。
   ライブ音源は幾分、音が団子。より勢いを感じる疾走だ。
   特にライブのほうが並行アンサンブルの即興性が楽しめる。中心軸を取払いうねりつつも、
   誰かの音をきっかけにテンポが変わるさまがかっこいい。
   (4)で勝井のバイオリンに誘われて舞い上がるようなさまも良いなあ。
   DVDも複数カメラをきれいに切り替え楽しめた。ライブの様子を伺えつつ、観客として
   絶対に不可能なアングルやアップで味わえるのも嬉しい。

   大友良英がゲストに加わった09年の盤。
352・Sim + Otomo:Monte Alto Estate:☆☆☆☆
   音圧を味わうため、でかいボリュームで聴きたい。鋭利なギターのカッティングへ
   もっとタイトなドラムがひねったパターンで刻む。
   電子音は大谷と大友、どちらが何を出してるか不明だが、メロディでなく
   コラージュ感覚の展開。
   9曲入で個々の楽曲にわかれてはいる。しかし、ひとつながりの作品として聴いてしまった。
   今までのSim作品で、もっともポップな気がする。

   99年にグラウンド・ゼロやNOVOTONOなどのミュージシャンを集めたソロ。
351・大友良英:山下毅雄を斬る:☆☆☆★
   大友が子供時代の楽曲を、伊集を筆頭に当時の香りを残しつつ再構築した。
   改めて今の耳で聞くと、くっきりしたジャズの色合いを残しつつ
   大友流の色合いを巧みに混ぜていると実感する。郷愁と前衛の混載。

   朗読とインプロの混交。96年発表で、デレク・ベイリーが参加。
350・島田雅彦/大友良英:ミイラになるまで:☆☆☆★
   スタジオ音源を大友が再編集した作品。涼しげなノイズのたなびきが、
   低く訥々とした朗読に絡む。メロディや明確なストーリー性をつかみづらい音楽が、
   しっとりとまとわりつくスリルがすごい。朗読はぐっと前にミックスされ、
   音楽が二歩ほど下がった印象だ。ブックレットの大友の文章によると、本作は
   ほかに2種類、同テーマでリリースしたいとある。実際に発表されたか知らないが、そちらも聴いてみたい。
   実験的な風景だが、のちの大友が発表する音響系へつながる淑やかな空気感は既に本作で聴ける。

   グラウンド・ゼロのカバー集、97年発表。
349・Ground Zero:Plays Standards:☆☆☆☆
   すごいアルバムだ。選曲、演奏、録音、すべてが素晴らしい。
   ノイジーなイメージ合ったGZだが、ここではなじみ深い曲を様々なジャンルから
   引き出した。それをノイズと構築さが同居する絶妙のアレンジで演奏。録音はきれいな
   印象を受ける。個々の音が滑らかにはまった。もっと乱雑さが欲しいくらい。
   今でも第一線で活躍を続ける凄腕らによる、時を駆け抜けた傑作。
   当時、リアルタイムで聴きそびれてたのが悔しい。

   女性ミュージシャンにスポットをあてたフェスのライブ音源集、98年発売の2枚組。
348・V.A.:Lilith Fair:A celevration of women in music:
   イベントの音楽性を概観できるコンピ。逆に、どの楽曲も同じように聞こえてしまう。
   フォーク・ロックを基本線にちょっと雄大、少々ナイーブ。
   サイケ要素は薄く、どことなく健全もしくは真摯。
   バラエティに富んだ顔ぶれなだけに、この手の楽曲が好きな人にはお手軽なコンピと思う。

   日本人のアンビエント、繭の2nd。00年発表。
347・Maju:Maju-2:☆☆☆
   エレクトロ・ドローンが静かに。柔らかな雰囲気でありつつ、細部は妙な
   圧迫感につながるスリルあり。安楽よりも酩酊を追求したかのようなアンビエント。

   ニュー・ジャージーのヒップホップDJ、06年デビュー作
346・Lushlife:Order Of Operations:☆☆☆★
   ジャズ要素たっぷり、揺れるグルーヴのトラックが気持ちいいヒップホップ。
   音は調子よく濁り、かすみながら震える。どちらかといえば、パーティ寄り。
   しかし、むやみに軽くない。音楽マニアっぷりがたっぷり詰まった、極上なアルバムだ。

   スウェーデン生まれの黒人ラッパー、09年のアルバム。
345・Lazee:Setting Standards:☆★
   ヒット曲の(1)は分厚いシンセの音が印象深い、ポップな仕上がり。吐き出すようなラップも、どこか軽やか。
   それは続くシングル(3)でも同じ。波打つ電子音のリフは華やかで、悩みやギャングスタな
   凄みと違うベクトル。あくまでも売れ線を狙ったキャッチーさだ。
   ディスコ的に深いことを考えず、ダンサブルさを楽しく聞くアルバム。

   黒人女性シンガーで04年に200万枚以上売れた1st。
344・Ciara:Goodies:
   売れ線ののっぺりまとわりつくコーラスと歌声。好みと違い、なぜ売れるかよくわからず。
   からっと抜けたアレンジはすっきりする。歌声がさほど突き抜けた
   うまさあるわけじゃないので、ラップの入ったアップテンポのほうが
   楽曲として一気に聴ける。

   Boys II MenやAs Yetに関係したシンガーの1st、99年盤。
343・Marc Nelson:Chocolate Mood:
   くねくねと線の細い歌声を聴かせる。さほど技巧をださず、素直に歌う感じ。
   ぱっと聴くにはいいかも。インタリュードを数か所入れ、アルバムの構成で
   飽きぬよう工夫も。プロデュースはマーク本人。
   後半でバラード攻勢だが、ミディアムな浮遊感が全体イメージで印象に残る。
   元エスケイプのKandi Burrussが作曲品の、ぐんと張りつめたパワーが心地よい。

   デヴィッド・バーンの97年、5thソロ。ラテン音楽へ傾倒した作品か。
342・David Byrne:Feelings:☆☆☆★
   ラテンやカリブ風味を下敷きに、バーンの個性をかました作品。予想以上に
   尖ってて楽しく聴けた。明るく突き抜けず、どこか影をまとったひねくれっぷりが、逆に興味深い。
   NYスタイルが抜けぬ、バーンのこだわりっぷりがそこかしこに洩れる。
   バーンの特徴的なボーカルも、本盤では素直に聴けた。予想以上に快盤。

   ジャケ買いで詳細不明、イギリスの女性トラッド、95年盤。
341・Kate Price:Deep heart's core:☆☆☆
   エレクトロ・ドローンが静かに。柔らかな雰囲気でありつつ、細部は妙な
   圧迫感につながるスリルあり。安楽よりも酩酊を追求したかのようなアンビエント。

   ヒップホップ、らしい。ジャケ買いで詳細不明。06年の盤。
340・Quantre:...An announcement to answer:☆★
   Quanticはイギリス人ウィル・ホランドのソロプロジェクト。ライブの際は
    The Quantic Soul Orchestra名義を使いわけた。Tru Thoughtsレーベルからのリリース。本盤リリース後に
   ホランドは南米へ渡り新たな音楽へ向かう。
   本盤は妙にアジアやラテンのエキゾティズムなムードが漂う。ヒップホップなビートもあるが、
   控えめで穏やかなグルーヴが味わえた。打ち込み一辺倒でなく生演奏もきれいに混ぜた。
   毒がない分、きれいすぎか。

2010/11/21   最近買ったCDをまとめて。

   英Ash Internationalから96年にリリースの2枚組コンピ。エクスペリメンタル系か。
   メルツバウが一曲提供してる。
339・V.A.:A Fault in the Nothing:☆☆
   ブラック/ホワイト・ホールと2種類にカテゴライズされた曲が交互に並んだ構成。
   カードを重ねたジャケットも凝っている。
   消音系の長尺(1)で油断した直後、メルツバウの(2)に驚く演出だ。
   アプローチは異なるが、ノイズが続く。それに音響系や消音追求ノイズも多数。
   ダイナミズムを味わえるコンピに仕上がった。
   選者のポリシーをつかむには、もう少し聞きこむ必要あるが。

   深水郁のウタモノ新作。嬉しい。
338・深水郁:なしのつぶて:☆☆☆★
   彼女の持ち味を真っ直ぐに提示した一枚。歌ものへ軸足を置き、昔からのレパートリーと新曲を混ぜた構成だ。
   前衛性や衒いとは別次元。素直に自らを表現する、まさにソロ・アルバムな印象だ。
   凛と筋を通しつつ、根本は温かい。独特な彼女の味わいを、みずみずしく噛みしめられる一枚。

   オフサイトでの音源を集めたコンピ、02年発表。
337・中村としまる、他:Meeting At Off Site Vol. 1:☆☆☆★
   うなり、きしみ、震える。弱音即興だった現場の貴重な記録。
   生演奏のダイナミズムと、電子音の連続性が共存する。
   ボリュームを上げて聴くことが、逆説的な本盤の楽しみ方。
   空気が震え、ノイズが溶けてゆく味わいが素晴らしい。
   小池寿浩と杉本拓らによる楽曲のスリルにぐっと来た。
   音楽とは関係ないが、録音日のクレジットもせっかくだから整備してほしかったな。

   今まで聴きそびれてた。オリジナルは85年、これは00年にTZADIK発表のボートラ付15周年盤。
336・John Zorn:The Big Gundown:☆☆☆☆★
   めちゃくちゃかっこいい。ゾーン独特のエキゾティズム、混淆性、雑駁さとスピード感、
   コラージュな勢いと凝縮されたタイムとバラエティ豊かな音楽性、
   そしてユダヤ的なしたたかさ。あらゆる要素が詰まってる。若さゆえのパワーか。
   時間を揺らし詰め込む録音のせわしなさは、とにかく刺激的だ。
   今に至る一貫性を、すでに本作で存在してる。

   アート・リンゼイらのトリオ編成。95年発表。
335・Art Lindsay trio:aggregates 1-26:☆★
   アート・リンゼイのパンキッシュ節を好きな人なら、はまるのでは。
   短い断片のような曲が、立て続けに噛まされる。スピード一発だけじゃなく
   むしろスローなムードが全編漂った。もっと痙攣ビートを期待したが、ちょっと拍子抜け。

   リーダーはベーシストかな。ビリー・バング参加、09年のアルバム。
334・Fab Trio:Live In Amsterdam:☆☆
   楽曲をやってるが、ほぼ即興に聴こえる。スピーディな緊迫感の合間に
   各自のソロ回しが入る格好。アンサンブルの妙味よりも
   各自のアドリブへ軸足置いた、意外とオーソドックスな印象受けた。

   JOJOのソロ4作目、03年リリース。
333・Jojo広重:怒鳴り散らすぼくの声はあまりにも小さい:☆☆☆
   1~2コードでノイジーに突っ走る。ワン・アイディアの魂をわしづかみ
   曲に仕上げた作品が、8曲詰まった。JOJOの振り絞るシャウトは、例えば灰野敬二や
   三上寛とは違う切迫感あり。予想よりもギターは整然と弾いている。
   ディストーションで歪んでるが。唸るベースは楽しいが、ドラムが少々単調。
   ときに混沌な即興へ雪崩れてもよかったのでは。歌ものでは(1)の鮮烈さがベスト。
   ちなみに伴奏メンバーは田沼芳恵(b:元・デイジー)、尾谷直子(ds:エンジェリン・ヘヴィ・シロップ)。
   女性に囲まれたと思えぬ重たい暗さだが。
   アルバムは構成がバラエティに富んで、決してハード一色じゃない。インスト曲は
   波打つ美しさにやられる場面も。

   91年のハード・バップ、2管編成。
332・Black/Note:43rd & Degnan:
   一曲目のタッチすら荒っぽいハード・バップに腰が引けた。威勢こそ良いが
   あえて91年に録音する必然性に欠ける。アルバム全体を聴いて、ハード・バップの
   マナーには従ってるが、アドリブのみずみずしさを含めて突き抜けるものに欠ける。
   クラブでのBGMバンドっぽいなあ。
   アルバムの構成はアップを中心に、バラードも挿入と丁寧だとは思う。
   2管のバップ好きには楽しめると思うが、これなら50年代のブルーノートを聴いたほうが良いような気も。

   01年発表、今のところCDでは唯一のライブ音源。
331・M-flo:tour 2001 Expo Expo: ☆☆☆★
   MCもふんだんに挿入し、ライブ感覚を生かした編集が生々しい。
   ドラムを中心に素晴らしいスピーディな展開と、バンドっぽいアレンジも聴きもの。
   リサのはじけたパフォーマンスもいい。音のヌケが物足りないが、
   それ以上に活き活きした演奏に惹かれる。二枚組のボリュームも嬉しい。

2010/11/13   最近買ったCDをまとめて。

   旺盛な創作意欲が衰えぬロバートが、BSの最新作をリリース。
330・Boston Spaceships:Our Cubehouse Still Rocks: ☆☆★
   ゲストを幾人も呼んで、バンド+αの音作りを狙ったかと思いきや。
   聴いてる感じはいつもの一直線ロック。曲調はいくぶん、おおらかなのが多いかな。
   ロバートのメロディはちょっとキレが物足りない。   

   スキ・ビーツが日本のラッパーを集めてプロデュースしたヒップホップ、新譜。
329・V.A.:24 HOUR KARATE SCHOOL JAPAN:☆☆☆☆
   日本人ラップへ強烈に興味引きつけた一枚。スキ・ビーツの生演奏生かしたトラックへ
   次々にギャングスタ系のラッパーが声をかぶせた。
   このジャンルを知るほどに、選ばれた顔ぶれの豪華さを知る。
   単にラップ載せて終わりじゃなく、ライムに合わせた効果やダブル・トラックなど
   作りこんだ様子も味わえる。曲調もバラエティに富み楽しめる一枚。

   コステロの新譜はアコースティック作らしい。
328・Elvis Costello:National Ransom:☆☆★
   カントリー・ロックをみっちり。パンキッシュな色合い残るのがコステロ流?
   それともピート・トーマス(ds)の手柄か。がっつり重たくざらついたサウンドだ。
   カントリーながら、どこか霧のような影を持つ。メロディはのびやか。円熟した。
   
   07年作のカルテット作。最近新譜の話題を聞いてない・・・
327・藤井郷子Quartet:Bacchus:☆☆☆★
   楽曲はもちろん悪くない。吉田達也のドラムを筆頭に、刺激もある。
   が、根本のところで安定感が先に立ち、1stを聴いたときのわくわくする
   乱暴さが無くなった。エコーを利かせて整ったサウンドに仕上げた
   もはやベテランの頼もしさが先に立つ。このバンドは荒削りなほうが良い。
   今にもはじけそうな、スリルがほしい。
   ちなみに吉田達也は本盤で演奏のみ。録音やミックスにはかかわっていない。

   最近復刻のハワイ音楽。レア盤だそう。78年発。
326・Lui:Lui:☆☆☆★
   録音がいまいちで惜しい。ボトムが薄く、軽やかな上物が安っぽい印象を醸してしまう。
   甘く柔らかなサウンドは、いかにもリゾートに似合いそう。
   テンポが上がっても、どこまでもふわり包み込む。さりげないギターのカッティングと
   メロディアスなベースが印象深い。心地よいアメリカン・ソフト・ポップ。捨て曲無し。

   08年発か。中国の音響系をまとめた4枚組アンソロジー。
325・V.A.:An Anthology Of Chinese Experimental Music 1992-2008:☆☆☆☆
   国単位でサウンドの傾向を語るのは無意味だと、日本のシーンを一瞥すれば明確だ。
   しかし本盤で編まれた統一性ある音像と、しばしば感じるエキゾティズムに共通性を感じてしまった。
   本盤ではダーク・アンビエントや無機質な電子音が、次々と登場する。さらに、ときおり滲む
   拡がりと捻った中国的なメロディ感覚。これこそが、本盤の特異性であり、貴重な響きだ。
   全編通して地味。マッチョさやハーシュ要素は低く、淡々と単調なアプローチが多い。
   重たくて暗い。それを越え、しみじみと沁みる強靭さこそが、本盤の魅力。
   なお、キュレーターは香港のジャクソン・ディー。
   収録作品の録音時期は、古くが92年だが、ほとんどが05~07年と最近の作品を集めた。

   キザイア・ジョーンズが08年にリリースしたソロ6th作。
324・Keziah Jones:Nigerian Wood:☆☆
   落ち着いたな、って印象。ひりひりする独特のタイム感やコードの響きは変わらぬが、
   歌声やテンポはどこか抑え目。ぬるぬると切り込むベースの絡みが
   アンサンブルを引き締めた。内省的な作品に仕上がってる。

   08年発表、ほぼジャケ買いの女性シンガー。
323・Natalie Walker:With You:☆☆
   ふわふわと漂うボーカルが心地よく、メロディーもキャッチーだ。生き生きしたサウンドながら
   むやみに押し付けがましくない。ただし生ドラムの曲は、ちょっとバタバタ
   喧しい音色と感じた。(3)みたいに畳み掛けるアレンジは心地よいが。
   シンセまみれの音色へはまれるかがカギ。

   リーダーは渋谷、かな。08年のp+tbデュオ。
322・渋谷毅,松本治:帰る方法 3:☆☆☆☆★
   簡素なアンサンブルが、極上のひとときを与える。ピアノはタッチが強め、
   ちょっと凛として。トロンボーンは温かく、ふっくらと空気を震わす。
   録音はアケタの店、エンジニアは店のスタッフ。もしかしてライブ録音かな?
   ジャズの美しさを存分に味わえる傑作。

   02年初、ヒップホップ。ジャケがジャズっぽい。
321・The Roots:Phrenology:☆☆☆★
   とっつき悪かったが、波長が合うと実にクール。ギャングスタでもパーティでもない。
   涼やかでスタイリッシュなノリを作り出すトラックだ。
   ラップも軽やか、ダンサブルだが洗練さを保つ。それでいてアルバム全体は
   さまざまな要素を織り込む。多彩さを味わえる、キュートな盤だ。

   エレクトロのユニットかな?ジャケ買い。97年作。
320・The Crystal method:Vegas:☆★
   淡々としたダンサブル・テクノ。丁寧に作られてると思うが、あまりアグレッシブに感じず、
   ついさらっと聞き流してしまう。中にはボーカル入りもあり、アルバムのバリエーションへ気を使ってるようだ。

2010/11/6    最近買ったCDをまとめて。

   イギリスのジャズポップシンガーの03年作。
319・Jamie Cullum:Twentysomething:☆☆☆★
   スタンダード・ジャズからジミヘン、ジェフ・バックリーまで、カバー集的な選曲だ。
   オリジナルも曲調へ滑らかに馴染んだ。生演奏はイタリアンなジャズで、ビリー・ジョエルの
   影響もぷんぷんする。アレンジはあえて統一させず、バラエティに富ませた。
   曲によりストリングスも入り、スタジオ・コンボの熱気は薄い。
   かつっと硬いサウンドづくりが今風かな。
   ほんのりひしゃげた、のびやかな声はすがすがしい。老成っぽさを漂わせつつ、
   根本は若いパワーをぶちまけた。今後の活動が楽しみになる、成長性を秘めた一作。

   99年発売、エリック・ベネイのアルバム。
318・Eric Benet:A day in the life:☆☆
   小刻みなビートの打ち込みが、涼やかなグルーヴを表現した。
   本作ではプリンス的な要素は控え、研ぎ澄まされたソウルを歌う。切ないメロディ多し。

   05年発売、さまざまなLoves作品を集めたアルバム。
317・m-flo:Beat spce nine:☆☆☆
   トータル性は押さえ、片端から曲を並べた。プラスティックに並べたサウンド作りと
   キャッチーなリフは健在。隙がない作り。細かくアレンジの妙味を聴くもよし。
   ただ、隙間が無い分聴くのに体力いる。

   ソトシゴトの第三弾コンピ、2枚組。09年のリリース。
316・m-flo:Inside-works Best III: ☆☆
   Disc1はオムニバスでも統一感ある仕上がり。特にストーリーあるトラック無いがひとつながりな印象。
   アレンジの音楽性はかなり幅広いのに。ただし楽曲は妙に完成度高く
   仕上がってしまい、以前の刺激は減じている。きれいなJ-POPとして聴くにはいいけれど。
   (10)が気に入った。ザップみたいな声加工がはまってる。
   むしろDisc2のクラブ・ミックスのほうが好み。短い時間で次々
   曲をつなぎ、スピーディな世界を作ってる。

   マサチューセッツ州のスカパンク・バンドの93年3rd。
315・The mighty mighty bosstones:don't know how to party:☆★
   デスメタル風のアプローチが目立つ。デス声ボーカルとホーン隊のアンマッチは
   面白いが、いっそクリーンなボーカルだと、さらに興味深くなったのでは。
   タイトなアンサンブルは痛快、ホーン隊もきれい。しかしデス声で好み分かれる音楽となった。
   (6)みたくホーンとデス、双方が美味く混ざった曲が良い。

   NYアシッド・ジャズ・バンドのデビュー作、94年盤。
314・The Jazzhole:The Jazzhole:☆★
   生演奏ヒップホップ、か。タイトだけど上手すぎるゆえにグルーヴが上滑りな感も。
   デビュー盤にしては、えらく整ったアルバムだ。
   ライブで猛然と突き進むさまは、かっこよさそう。
   全体的に上品な印象で、隙がない。ラップ曲より、ファンキーな歌もの(11)がかっこいい。本作で一番素敵。

   同じバンド、95年の2nd。ファンク要素もありそう。
313・The Jazzhole:...and the feeling goes round:☆★
   ファンキーでヒップホップとジャズを混ぜ合わせた音楽性と思うが、
   今一つ盛り上がらない。ラジオ番組仕立ての構成がむしろ、複数のミュージシャンを集めた
   コンピ盤に聞えてしまう瞬間も。器用だが、強烈な個性を求めてしまうのはぜいたくか。

   NYジャムバンドの00年2nd。聴きそびれてた。
312・Sex mob:Spolid sender:☆☆
   どこかスイングやディキシーの響きを感じた作品。ヒップホップなダブと回顧調が
   いい具合に混ざってる。ストーンズの"ルビー・チューズデイ"やJBの
   "Please,Please,Please"nカバーは、なんか唐突だ。
   しかしどの曲も、生々しいサウンドが単純に気持ちいいのも確か。ライブっぽいなあ。

   ジャズ・テクノと期待したら、ディープハウスのコンピ。米NITE GROOVES、98年作。
311・V.A.:Abstract jazz lounge II:☆☆
   ウワモノは生演奏ジャズ、リズムが打ち込みってトラックを集めた。
   正直、聴いてて単調なリズムに飽きる・・・。アドリブがかっこいい場面でも、
   ひたすら淡々と刻むのが味気ない。ジャストなリズムでも、こうもBGMっぽくなるとは。
   フュージョンとは違った、堅苦しさを感じた。

2010/11/3    日本のヒップホップ中心に色々とCDを漁ってきた。

   これのみ、即興もの。前から探してた。IMJレーベルが800セット限定でリリースした10枚組コンピ。
   即興好きにはこたえられない面子が、ずらり。
310・V.A.:Improvised music from Japan:

   00年に東雲Recordsが編んだ日本語ラップのコンピ。餓鬼レンジャーらが参加した。
309・V.A.:Rap warz donpachi:☆☆
   ループでぐいぐい押してくアレンジが多い。ラップの符割やリズムを
   さほど揺らさず、シンプルに。ハードなムードをかもし出しつつも、ラップの声で
   どうにも若さがにじむ。もっと低音で凄むのが好み。素朴な感じ。

   SOUL SCREAMのトラックメイカー、DJセロリの04年発売なソロ。
308・DJ Celory aka Mr.Beats:Beats Japan:☆★
   サッカー放送を意識したトータル性、野太さを匂わすトラックの小気味よさが本盤のポイント。
   全般はパーティ的なヒップホップ。一方でラップは線の細さが目立つ。メッセージ性も、正直もの足りぬ。
   本盤に参加した4WDやEarle2sみたいな凄み魅せた濁声ラップが好みだから。
   なので"Get it on"を楽しんで聴けた。
   コンセプトへ徹底的に拘り、一貫性追求だったらさらにかっこいい
   アルバムになったと思う。例えばサッカーを題材のラップ集でも、いいじゃない。
   サンプリングは余り使わず、実際の打ち込み中心なトラックは、素直に前のめりな勢いあるだけに。

   NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDのDABO、01年のメジャー・デビュー作。
307・DABO:Platinum Tongue:☆☆★
   重たい凄みのギャングスタ。はき捨てるラップは低く、暗い。
   逆にトラックのほうが浮遊感あり、ギャップが興味深い。
   ダンサブルとは別次元のヒップホップ。ボーカルのミックスが埋もれ気味が
   少々物足りないが、不思議な涼やかさあり。

   トラックメイカーのJazztronikのメジャー・デビュー盤、03年のミニ・アルバム。
306・Jazztronik:Horizon:☆★
   軽快なラテンのトラックは気持ちいい。グルーヴを抜いて機械的な
   ビートの揺れだけが残る。ボーカル曲はかなりポップ寄り。

   元ジュラシック5のカット・ケミスト、06年の1stソロ。これは日本盤で、ボートラ1曲つき。
305・CUT CHEMIST:Audiences Listening:☆☆☆★
   一曲目のシンプルなビートから、ぐいぐい引き込まれる。ヒップホップはあくまで素地、
   多彩なトラックメイカーぶりにやられた。ソウルフルさを基調に、淡々と刻みつつ
   さりげないサンプリングの交歓やスクラッチ。ふっと楽にも聞き流せるが、
   聴きこむと奥が深い一枚。収録時間を短め、凝縮した。

   ジュラシック5DJ NU-MARKと、当時の新人DJ POMによるユニット。04年発売。
304・DJ NU-MARK & POMO:Blend Crafters:☆☆☆★
   ヒップホップだが、ラップじゃなくトラック中心。クレジットが曖昧だが
   サンプリングだけじゃなく、生演奏もけっこう入ってそう。
   "イマジン"のクール・ジャズ風アレンジを筆頭に、軽やかでほんのりダンディなサウンドが詰まった。

   DJ Nu-Markが04年リリースのミックスCD。
303・DJ NU-MARK:Hands On: ☆☆☆★
   いきなり日本語のサンプリングが出てびっくり。軽快で見通し良くミックスしつつ、
   どこか影の残る音像が心地よい。ラテン的なのどかさをそこかしこに漂わせ、
   すいすいと音楽が流れてく。ここちよいヒップホップ・トラック。
   レコード・マニアの棚をさらけ出す、とっちらかったDJぶりがスリリングだ。
   じっくりのんびり聞きたい。グルーヴに心躍らせつつ。

   DPGとGET LOW、二つのレーベル共同によるコンピ。02年発売でスヌープ・ドッグらが参加。
302・V.A.:Corporate Thuggin:☆☆
   パーティ・ラップな陽気さを持つ。ぶわっと膨らむシンセのフレーズと、
   てれっと垂れるラップが楽しく耳に残った。
   リズムはゆんわり揺れる。サンプリングより打ち込み中心っぽい。(6)の畳み掛けがかっこいいな。

   DJ UPPERCUT&YAMAROによる05年、2nd mix CD。まわしてるのは、ソウルかな。
301・ILL FUNK FREAKER(DJ UPPERCUT&YAMARO):CITI BEAT:☆☆
   涼しげなクールネスでつながったmix。途中に入るスクラッチも効果的だ。かっこいいなー。
   何曲か、オリジナルを聴きたくなった。

   半沢武志のユニット、Free TempoによるミックスCD。04年発売。

300・V.A.:New Side selected and live mixed by Free Tempo:
☆☆☆
   (4)のさわやかさ、弾むリズムが本盤を象徴した。ハウスやブラジル音楽などのmixCD。
   BGMに最適な穏やかなムードだが、むしろボリューム大きめに聴いて欲しい。
   曲のパワーが強調され、次々現れる楽曲の魅力がよくわかる。
   本盤で初めて聴ける曲や、初CD化などファンにも気配りした選曲のようだ。

   米Freestyle Recordsのユニット100X Posseの音源をDJ Nicky Buttersがmixした
   公式盤らしい。09年の発売。アンダーグラウンド・ヒップホップ。
299・100X:RARE & UNRELEASED 1992-1995 - PHILADELPHIA'S 100X POSSE MIXED BY NICKY BUTTERS:☆☆★
   ごつんと骨太、荒っぽくワイルド。細かいこと言わず突き進む汗臭さが
   本盤の魅力。全般的にトラックはシンプルで、かすかに汚れた感じがクールな味わいだ。
   25曲、立て続けにまくし立てるベクトル感が楽しい。

   07年の2ndアルバム、米ベイエリアの黒人3人組ヒップホップ。
298・Federation:It's Whateva:☆☆☆★
   これは傑作だ。
   骨太でざらついた感触が、めっちゃかっこいいラップ。
   ギャングスタの凄みにコミカルさをほんのり混ぜ、
   勇ましく吼えたてる。どの曲もきっちり練り上げ、ときおり挿入される太いシンセの音色も良し。

   09年リリース、ルイジアナ州のラッパー。本盤が2nd。
297・Hurricane Chris:Unleashed:☆☆
   シンセのぷわぷわ漂うシンプルなトラックに、妙にラテン的な陽気さを感じる。
   凄みは控えめ、明るいパーティ・ラップだが。一ひねりした癖もあり。
   セカンドラインの温さが、ルイジアナ風ってことか。

   02年のコンピ。西海岸アップのコンピ。アングラHIPHOPか。レーベルは40 Ounce。
296・V.A.:Northwest Hustlin 4:☆☆★
   弾力あるシンセと歯切れ良いラップが生む、躍動するグルーヴが本盤の聴きもの。
   ほんのり不穏で、うっすらハッピー。独特の風合いがぐいぐい前に進む。

   英2人組のドラムン・ベースで、98年発表の3rdアルバム。
295・4 Hero:Two pages:☆★
   アシッドジャズ+エレクトロ。滑らかにうっすら漂う弦の響きと、
   タイトに駆け続けるドラムの爽快さが本盤の味わい。淡々とテンポを変えず、叩き続ける
   ドラムにまず惹かれた。影や闇、混沌とは別次元。しかし、どこか突き抜けている。
   そこに加わった女性ボーカルは、鮮やかにポップスへ音像を変えた。
   例えば、(11)。とてもキュートだ。相変わらずマシンみたいなドラムが
   クールな味わいを醸し出す。

   詳細調査できず。EUのレーベルによる02年の2枚組。ジャズ・ヒップホップだといいな、とジャケ買い。
   実際はクラブ・ジャズのコンピみたい。ロンドンのFM番組による企画盤。

294・V.A.:Music &Movements two Complied by Mike Chadwick:
☆★
   いかにもFM番組のコンピ。ほんのり刺激的だが、びみょうにBGM。聞いてて悪くないが
   改めてほかの盤を買いたくなるほどじゃない。
   サウンドは基調がボサノヴァとジャズをミックスした軽快なサウンド。打ち込み要素も軽やかにある。

2011/11/2   最近買ったCDをまとめて。

   日本アンダーグラウンド・ラップに興味でて、最近リリース盤を何枚か買った。
   これは19歳、09年にYou tubeで作品を発表し始めた神奈川のラッパー集団Simi LAb。
   中心人物のQMがソロをリリースした。ゲストやトラックもSimi LAbのメンバーがほとんどかな。
293・QN from the Simi Lab:The Shell:☆☆☆★
   ある意味等身大の世界観をラップした。中途半端にいきがらず、
   10代のもやもや感がかっこよくまとまってる。その傑作が"知らない先輩"。
   クールなトラックづくりと合わさり、今後の活躍がすごく楽しみな一枚。

   09年発売、2ndソロらしい。日本人ラッパー。
292・Meteor:Diamond:☆☆
   ビートはパーティ・ラップ風か。フランジャーがかかったようなラップの
   声の響きが特徴あって楽しめた。(5)を筆頭に、キャッチーなリフに耳が引き寄せられる。

   神奈川のラッパー集団の1st。今年8月の発売。
291・Dinary Delta Force:SOUNDTRACK TO THE BED TOWN:☆☆☆
   まず着実ながら、かっこいいトラックが耳を惹く。サンプリング、打ち込み、スクラッチが
   滑らかにつながり、スリリングな世界をつむいだ。
   マイクリレー形式のラップも悪くはないが・・・個人的には声質と世界観があっていない。
   ギャングスタ的な暗い闇を匂わせつつ、どうにも声が若く明るい。
   これから年を経るにつれ、声に凄みが出ていくのだろうか。
   (15)が本盤の中で、最もしっくりきた。

   これは素敵なテクノ&ヒップホップのトラックを聴かせるポッドキャストから
   発表されたコンピレーションの新譜。シリーズ化されるといいな。
290・V.A.:Cosmopolyphonic:☆☆☆☆
   バラエティに富んだキュートなトラックがてんこ盛り。基本はクラブ向だが、
   むやみにビートを利かせた曲の羅列じゃなく、ほんとにさまざまなアプローチの
   アレンジや楽曲が楽しい。最新の流行なビートはこんななんだ。
   10年経ってもじっくり聴けそうな、好盤。

   ドローン・アンビエントな米デュオのスタジオ7作目、2枚組。
   07年発売で現時点の最新作。
289・Stars of the lid:And their refinement of the decline:☆☆☆
   揺蕩う心地よいアンビエント。繰り返さず、じわじわと世界が変わっていく。
   ぼんやりと聴き、ふと気づくと世界は次の風景へ。それが、楽しい。
   二枚組のボリュームは、聴きとおすのに時間がかかる。ふと、時間がたっているほうがいい。

   イギリスのジャズ歌手、なカテゴライズらしい。ピアノ中心なポップスのイメージあった。
   彼が05年にリリースした4作目ソロ。
288・Jamie Cullum:Catching tales:☆☆☆★
   のびのびポップな曲を歌って、親しみやすい盤。ほんのり切なげな雰囲気が良し。
   にぎやかな明るいクラブで聴いたら、さぞかし気持ちいいだろう。
   "I only have eyes for you"は
   ハーモニーをあえて捨て、ギターのリフで代用が妙にストレンジだ。
   兄弟のBenと共作の(6)が特に好き。


2010年10月

2010/10/11   最近買ったCDをまとめて。

   ブラジルの電子音楽作曲家で、61~70年の音源を集めた。02年発売。
287・Jorge Antunes:Savage Songs:☆☆☆
   音数少なく、ふわふわと。野太い音だが繊細に。電子音がゆっくりとうごめく。
   シンプルで穏やかなムードが、個性か。あまりアカデミックな堅苦しさはない。
   エンターテイメントを目的ではなさそうだが、ダーク・アンビエントとして楽しめる。

   73年発売の2nd。カリブ系のソウルかな。
286・Jon Lucien:Rashida:☆☆☆
   流麗なカリビアン・ソウル。アレンジがかっこよく、例えば(2)で歌声とホーンが同じ譜割で進む
   瞬間には、ぞくっときた。歌声は低い渋みが魅力的。弦が鳴り温かい雰囲気で盛り上げる。
   ちなみにアレンジはジョン・ルシアン本人。すごい。
   全体のシビアな雰囲気は、シカゴ・ソウルに通じるものを感じた。

   米電子音楽家の作品集で、92年発売。
285・Tod Dockstader:Qutermass:☆☆★
   3つの作品を収録。"Water Music"(1963)は6つの断片で完成し、台所のシンクで
   さまざまなボウルと水が生み出す音を変調した。アンビエントながら、緊迫感あり。
   ときおり無造作なリズムが空中を舞う。
   "Two moons of quatermass"(1964)は"Quatermass"(1964)の派生で、電子音や鐘の音源へ編集を施した。
   2つの断片からなり、ランダムな響きがじわじわと進む。
   そして続く"Quatermass"は、5種類の断片。それぞれの曲は長めの尺だ。
   重たい響きが電子音と実音で奏でられた。
   後半の伸びやかなシンセの響きがいいなあ。

    電子音楽と人声の現代音楽を収録した。88年にアメリカのレーベルから。
284・佐藤聰明:Mantra Stabat mater:☆★
   淡々と声が生まれ、消えていく。小節感覚は希薄。個々のブロックは
   荘厳できれいだが、全体の流れがいまいち馴染めない。
   ある種、宗教的な透明感はびんびん漂った。
   (1)はどこが電子音楽だろう、というほど人声がゆらゆら揺れた。
   この楽曲を味わうには、作曲コンセプトなどの学習が必要そう。
   (2)だと、まず電子音の涼やかな響き。人の声と絡んでいくダーク・アンビエントな作品。
   どちらも強烈な緊迫感に溢れてる。

   良質の電子音楽コンピ、第三弾。89年発売。
283・V.A.:CDCM Computer Music series Vo.l 3:☆☆
   打ち込みチェンバー・オーケストラ。どの曲も、耳を惹く場面こそあれ、
   全体的には散漫な印象を受けた。コンセプトを詳しく知らないと、楽しめないかも。
   ただし電子音がせわしない羽音のように飛び交う、(5)は圧倒的に面白い。

   59年発売、インド音楽を学んだヘンリー・ヤコブがサンフランシスコで行った
   イベントでの電子音楽らしい。
282・Henry Jacobs's Voryex:Electric Kabuki Mambo:☆★
   アカデミックな作曲集、だろうか。リズムやポップ性は希薄で、重たく
   実験的な電子音楽が並ぶ。ぼおっと聞いてると、さまざまな音色の妙味が楽しい。
   音響系が好きな人に、ぜひ聞いてほしい。古さを別の意味で、感じない。

   Wergoから95年発売の電子音楽集。分厚いブックレット付。
281・V.A.:Computer Music Currents 13:☆☆☆
   クラシックよりもテクノ的に聴ける一枚。
   分厚いブックレットを読まねば、本盤を楽しめないのは明らか。作曲コンセプトを緻密に
   記述してるようだ。読んでないけど。
   音の響きよりも、プログラミングや組み立てに着目した楽曲集な印象あり。
   曲によっては素朴なメロディをコンピュータへ演奏そのものに軸足置いたか。
   古い響きに時代を感じるが、不思議な温かみも同時に味わった。
   ゲーム音楽に聞こえる箇所もあるが、これらすべて60年代の楽曲。さらに先駆者たち。

   黒人トリオでドラムレス、tp+p+bの変則編成ジャズ。95年発表。
280・The Roy Hargrouve/Christian Mcbride/Sthphen Scott trio:Parker's Mood:☆☆
   耳ざわりのいいジャズ。リズム楽器が無い分、軽快かつ着実な演奏だ。
   アップテンポでもスリルにイマイチ欠ける。とはいえ短めの尺で
   さくさくと16曲並べたてた構成は、すんなり聴けた。クリスチャン・マクブライドの
   しっかりしたベースが、一番印象残った。

   8人編成の黒人コンボ。インスト・ジャズか。86年の作品。
279・8 bold souls:8 bold souls:☆★
   マスタリングがイマイチで、どうにも音が遠い。プレイヤーのイコライザで中域を持ち上げたら、
   がぜんかっこいい音になった。妙な華を作らず、一体で突き進むトラディッショナルなファンク。
   ベース奏者に加え、トロンボーンとチューバも参加、低音はたっぷり。
   個々のアドリブもさりながら、テーマでの歯切れいいリフがいいなあ。
   華が無い分、尖った魅力がもの足りぬ。

   m-floのVERBAL参加のヒップホップ。05年発売。
278・Teriyaki Boys:Beef or Chicken:☆☆☆★
   やたら豪華な内外のプロデューサーをずらり並べた。m-floより幾分、ファンキーな色合いだ。
   練ったアレンジ、濃密なマイクリレーと聴きどころは一杯。
   コミカルななかに、親しみやすさを混ぜた。よくできたラップアルバム。

   ミックスでカニエ・ウェストらが参加、3曲入り。07年発表シングル。
277・Terikaki Boys:A still in love H.E.R.(single):☆☆
   収録曲はカニエがプロデュースした曲と、そのインスト版。さらにダフト・パンクが
   プロデュース"Heart Breaker"を"Full phatt"remixの3曲を収録した。
   ホーン隊のサンプラーを強調したカニエのミックスは、キャッチーだが繰り返されると
   けっこうしつこい・・・。カップリングは別の曲のリミックス。
   軽快なビートが、こっちは気持ちいい。でもあえてこのシングル買う必然性は低い。

   01年発売の4曲入りシングル。
276・M-flo:come again(single):☆☆☆
   キャッチーなサビのフレーズが頭に残る。m-floはほんとうにメロディづくりがうまい。
   Lisaのさわやかな歌声が素敵だ。ブレスのタイミングをあえて増やしたサビは、畳み掛けるスピーディさを強調した。
   しかしVerbalのだみ声が本曲では耳につく。同曲のリミックスが2曲とカラオケを併収。
   (2)のリミックスはリズム・パターンを強調し、そっとテクノなムードを高めた。
   サビをひたすら繰り返し、乾いた雰囲気。よりBGMに適してる。
   (3)はメロディすらも解体し、シンセがぶわっと鳴る強烈なアレンジ。
   リミックスとしては、この曲が楽しかった。

   87年発売、男性ソロ。レア盤の再発で、特に(1)のバラードが高評価。
275・Giorge Pettus:Giorge Pettus:☆☆☆★
   玉石混交なアレンジだが、ボーカルのハイトーンばりばりな存在感が心地よい。
   特にアップはプリンスの影響がどっぷり。ちなみにプロデューサーにデヴィッド・Zが参加。
   ちなみに録音はミネアポリス、本丸での収録。
   分厚いシンセがなんとも80年代風。ヌケが悪いのも、当時のマスタリングのせいか。
   ちょっと否定的なことを書いてるが、滑らかにぐいぐい歌い上げるボーカルは、ばっちり。
   歌声に着目したら、アップも含めて利き所がいっぱいだ。レア盤評価も頷ける。
   何より聴きものは、バラード。生演奏の要素増やしたら、今でも古臭さはまったく無かったろう。

   オールディーズのクリスマス・ソング集100曲入り、6枚組コンピ。05年盤。
274・V.A.:Best Christmas 100:☆☆☆
   次々にクリスマスのスタンダード曲が流れる。個々の演奏良し悪しもさることながら、
   とにかくクリスマス・ソングの連発が産み出すハッピーな空気にやられた。
   手軽に聴くには、良いコンピだろう。マスタリングは甘め。

   内橋、岡部、芳垣、高良らがアルゼンチンのミュージシャンとセッション。07年。
273・Anima Mundi:Primer Encuentro 第一章:☆☆☆★
   静かなパーカッションの交歓。内橋がいるがメロディらしきものはほとんどなく
   淡々と打音が飛び交う。柔らかく、時にミニマルに。抽象的で
   アジアやアフリカを連想する、スケール大きな世界観を出して。
   あえてトラックを分けたことで、楽想が単調にならず濃密さを演出した。
   心地よく、刺激的なひと時。

   曲者ぞろいのメンバーによるセッション。00年録音、カナダのVictoから。
272・Fred Frith/Jean-Pierre Drouet/Louis Sclavis:I dream of you jumping:
   48分の長尺と、7分の比較的短め、即興2曲入り。
   ソロ回しやフレーズ展開よりも、抽象的な短い音の断片が行き交う世界で幕開け
   長尺のほうは途中でスクラヴィスが吹きまくるものの、全般的にストイックな仕上がり。
   ライブを聴いてるならまだしも、音源だけだと散漫さも残る。

   ユッスー・ンドゥールの07年作スタジオ盤。
271・Youssou N'dour:Rokku mi rokka(Give and take):☆☆☆☆
   いたずらに世界マーケットを意識しすぎぬアレンジ。セネガル・ビートに
   まっこうから取り組み、アコースティックなグルーヴがたまらない傑作。
   フレーズがいつまでも繰り返され、身体を揺さぶり続ける。
   キャッチーさは薄いが、ユッスーの高らかな歌声とリズム隊のからみ、
   特にパーカッションの生々しい響きが抜群に心地いい。

   バカラックの楽曲を取り上げた、95年のシングル。
270・飯島真理:愛を探して(single):☆☆
   西海岸のあったかいポップス。タイトル曲はバカラックのヘンテコさは
   抑えられ、甘くまとまった。ふわふわと漂う感触が素敵。
   (2)のオリジナルはゲスト・ギタリストでマイケル・ランドゥが参加した。

   74年リリースのインスト・アルバム。弦中心のイージー・リスニングみたいだが、
   収録の"Jagar"はサンプリング・ネタでずいぶん使われたらしい。
269・John Gregory and his orchestra:A man For all seasons:☆☆★
   ゴージャスで精妙なムード・ミュージック。BGMにとどまらぬ突き抜けた
      美しさが、耳を安らげつつひきつける。オーケストラと合唱、大編成を
   たやすく操った。スケール大きなOSTのようにも聞こえる。

2010/10/6   最近買ったCDをまとめて。

   ブライアンの新譜はガーシュウィンのカバー集。ルーツ帰りか。
268・Brian Wilson:Reimagines Garshwin:☆★
   ファン向の盤。ブライアンはおそらくアレンジへほとんどかかわってないだろう。
   彼特有の和音感はごくわずか、ストレートにカバーしている。したがって
   今のブライアンの歌唱力ではどうしても、もどかしさが残る。
   そこかしこにビーチ・ボーイズを連想する響きが飛び出し、
   ブライアンのルーツが滑らかにガーシュインと馴染むさまを楽しむ盤か。

   実は聴くの初めて。スティーヴィー・ワンダーが全面作成の1st、72年発。
267・Syreeta:Syreeta:☆☆☆☆
   しっとりしたサウンドのムードと、ちょっと気の強いシリータのボーカルが
   絶妙なグルーヴを産んだ傑作。ふくよかなノリは当時のスティーヴィーならでは。
   ほんわりと空気をかき回す。シリータののびやかな歌声もいい。
   "She's leaving home"でのロングトーンにやられた。

   きっちりカルトーラを聴いたことなかった。99年発表のベスト盤。
266・Cartola:Divino Samba:☆☆☆☆★
   ジャケットでイメージするコワモテとは違う、滑らかな歌声。
   寛ぎと整った美しさが饗宴を表現する。何度も聴きこみたい。スムーズにメロディが
   踊り、柔らかく歌声が被った。

   エリカ・バドゥの03年作3rdアルバム。ボートラ2曲入りの日本盤を入手。
265・Erykah Badu:Worldwide underground:☆☆☆★
   12インチ集のような、漂う軽やかなグルーヴが心地よい一枚。
   それぞれ一曲をすっきりアレンジしつつ、単なるキャッチーさに仕上げない。
   聴きこむほどに、味わいでるいっぽうで、爽やかな盤。
   ボートラの1曲はサントラに提供した"ハリウッド"。抜群の名曲だけに収録がうれしい。

   カークの盤は聴くの久しぶり。ゴスペルで大ヒットしたそう。06年発。
264・Kirk Franklin:Hero:☆☆★
   ソロ・ボーカルな構成ながら、コーラスの組み立てがクワイア風。アンサンブルの
   フュージョン的なキメがゴスペルの色に合うことを、本盤で気づいた。
   スケールの大きさとタイトさを合致させたサウンドは、毒や灰汁がないけど気持ちいい。
   TFF"Shout"のメロディ使いやシーラE、スティーヴィー・ワンダーらのゲストなど
   ポピュラー分野に目配りしつつ、根底のゴスペルは抜かない。
   濃密な仕上がりのアルバムだ。僕の好みではきれいすぎるが、すごさはよくわかる。

   シングル。バージョン違いが4曲入りのUK盤で94年に発表。
263・Carleen Anderson:Nervous breakdown(single):☆☆☆★
   楽曲のアレンジならオリジナルの深みと低音が素敵だけれど。
   本シングルに収録なダンス・アレンジの2曲にも強烈に惹かれた。
   滑らかなクールネスが、これはこれでかっこいい。
   アルバム・テイクは7分の長尺だから、ラジオ・エディットの妙味も楽しめる。
   味わいいっぱいな楽しいシングル。

   キャスパーのコンボ盤で、ピアノに南博が参加。05年。
262・Kasper Transberg:Social aid and pleasure club of Copenhagen:

   M-floのシングルでCCCD。03年発表。voがクリスタル・ケイ。
261・M-flo:Reeewind!(Single):☆☆
   タイトル曲はイントロのキャッチーさが格別。ほんとうの
   ライブで初めて発表されたのかな?フェイクな気もするけれど。
   (2)はタイトル曲のリミックス。歌詞を変え、クールでコミカルさを出した。
   (3)は畳み掛けるイントロのフレーズがすべてを巻き込むスピード感。

   これもシングル。時代を感じるジャケットだ・・・。00年の作。
260・M-flo:How you like me now(single):☆☆☆
   きらきらした明るさを、硬質なラップが埋めるタイトル曲。華やかな二人体制のラップが効果的だ。
   併収はラジオ用編集とインスト、シンプルな楽曲を2曲。
   ぼくの好みはカップリング曲。タイトなビートへ埋もれるかの、変調されたVerbalのラップがかっこいい。
   しかしベストはライブ・テイクの"Been so long"。00年4/21 Zep東京でのライブ。
   盛り上げるさまと、妙にちぐはぐなLisaとVerbalの掛け合いが楽しい。
   ファンキーな演奏もいいな。のちに発表されたライブ盤を聴き、かなり手なりの盛り上げ演出と
   わかったが、最初に本テイクへ触れたときのみずみずしさは格別。繰り返し、この曲だけを聴いた。

   シングル。5曲入った01年の盤。
259・M-flo:Orbit-3(single):☆☆☆
   m-flo独特の爽やかなサンプリング・ボーカルが炸裂した一曲。
   Jazztronikがmixは、さらにテンポを上げた軽快さが心地よい。

   M-floのVERVALが参加したユニット。ゲストがカニエ・ウェストや
   ネプチューンズなど、豪華だ。09年の作品。
258・Teriyaki Boys:Serious Japanese:☆☆☆★
   m-floほどメロディを強調せず、乾いたトラックづくり。テクノを中心にバラエティに
   富んだアレンジは、結構聞きごたえあり。短く次々とアイディアを並べ立てた。
   どこかコミカルなムードを頻繁に漂わす。


2010年9月

2010/9/27   最近買ったCDをまとめて。

   ライス・レコードがコンパイルした2枚組で、08年のリリース。
   スペインのアンダルシーア地方で8~15世紀にわたり続いたイスラム支配による
   独特の音楽を、20世紀の音源を元に綴ったオムニバス。
257・V.A.:マグレヴ音楽紀行 第一集 アラブ・アンダルース音楽歴史物語: ☆☆☆☆
   アルジェリアからチュニジア、そしてアルジェリア。数十年の歴史を2枚組で
   手早くまとめ、解説で緻密に書き記した編集盤。ライナーはとても読みごたえあり。
   ぱっと一読で頭に入りきらない。
   SP音源も使い、音質はそれなりだが音楽は芳醇。こぶしがゆらゆら揺れる。
   シンプルなバッキングは歌部分で無伴奏になることも。
   粘っこいが、どこか洗練された歌声の魅力へたっぷり浸れる快編集だ。
   伝統音楽を現代解釈した多面性としぶとさを味わえる。

   カーリーン・アンダーソンのシングルで93年発。
   ケニー・ドープのリミックス3バージョンも収録した。
256・Carleen Anderson:Mama said (single):☆★
   クールなグルーヴが魅力だが、ちょっと単調。ドラムの響きやコーラスの
   和音感はかっこいいけれど。同時収録の別ミックスもダブ風処理にひねり少なく、いまいち。

   坂本龍一のシングル。"エナジー・フロウ"ほか2曲を収めたピアノ曲集。99年作。
255・坂本龍一:ウラBTTB(single):☆☆☆
   当時の坂本の代表曲を手軽に聴ける盤。ロマンティックな(1)や静かな(3)より、
   坂本には珍しい切ないメロディの(2)がむしろ、印象に残った。

   いわゆる廉価盤CDかな?グレゴリアン・チャント集で、発売は94年とある。
   指揮はドム・フリオ・フェルナンデスやアルベール・ルーラントだそう。
   とはいえ自分が知識無いため、どういう演奏家かは、さっぱり。
254・V.A.:グレゴリアン・チャント:☆☆☆
   会場によるものか、やたらエコー成分が多いけれど。朗々と歌い上げる
   聖歌の連続は、ひたすら荘厳で美しい。本盤では鐘やオルガンもアクセントで入り、
   楽曲を盛り上げる。根本的に異教徒が聴いて楽しめるか、は別として。
   少なくとも男性コーラスの力強さは、確かに感じられる。

   ジュラシック5が06年リリースのアルバム。ボートラ入りの日本盤を入手した。
253・Jurassic-5:Feedback:☆☆☆★
   軽快なリズム・トラックが気持ちいい。"Radio"のサンプリングで大ネタ使いが
   オリジナルも聴きたくなった。
   畳み掛ける薄めのアレンジと打ち込みが
   きれいに馴染んでいる。

   m-floが06年リリースのシングル。リミックス1曲とインストを収録した。
252・m-flo loves 日之内絵美 & Ryohei:Summer time love(single):☆☆☆
   妙にエコーの多いボーカルが特徴。(2)のボサノヴァ風ミックスに寛ぐ。
   原曲は最初のっぺりなイメージだったが、何度か聴いたらサビの和音感が切迫して興味深い。
   しかし全部英語でラップして欲しかった気も。中途半端な日本語が耳をひっぱってしまう。

   14カラットソウルのコンピで、達郎らの日本人楽曲カバー集。02年作。
   本盤で達郎の"Loveland,island"を新録カバーした。
251・14 Karat Soul:Love you all:
   ハーモニーは上手いが、驚くほど黒っぽさが希薄。こんなスマートだったとは。
   達郎のカバーはオリジナルの濃密さを希釈し物足りなさが。気軽なBGMってとこか。
   しかしずいぶん、高音強調のハーモニーだな。

2010/9/20   最近買ったCDをまとめて。

   デレク・ジャーマンへのトリビュート盤で、メルツバウや大友良英、C.C.C.C、Aubeなど
   日本のノイジシャン作品集。94年の発売。
250・V.A.:Eternal Blue Extreme:☆☆☆
   英の映画監督デレク・ジャーマンへ捧げたノイズ・コンピ。実際どの程度、デレクにリンクしてるかは知識不足で不明だ。
   4~8分でクルクル曲が変わり、飽きずに楽しめた。当時の亜ノイズ界を代表するメンツが揃ってる。
   参加ミュージシャンのうち、I.666はIlluminated 6.6.6.のことか。ならば、香港のDickson Deeの別名ユニット。
   PNFもDickson Deeの別名。Junoは中国、Z.S.L.O.(Zero & Sound Liberation Organization)は台湾のノイズ・グループ。
   冒頭の野太いメルツバウで幕を開け、空虚ながら微細に変化するC.C.C.C.のドローンにつながる。
   Junoはコラージュと電子ノイズを混ぜた。続く大友良英はシンセの白玉にAYA(OOIOO)の朗読を重ねる端正な響きを。
   メタリックなI.666から水っぽい響きのAUBEへ。彼は次第に音を激しくする。
   次も大友。本盤へもう一曲を提供した。エレキ・ギターを中心のコラージュ作品だ。
   叩き付けるカットアップなノイズのPNFから、ノイズ・ドラマなZ.S.L.O.で幕を下ろした。

   コロムビアから99年にリイシューの、75年発表のアルバム。
   高橋悠治が弾くピアノ作品3曲と、NHK電子音楽スタジオや万博でのテープ作品を集めた。
249・湯浅譲二:湯浅譲二作品集成-3:☆☆☆★
   とっつきにくい楽曲が並ぶけれど、かっちりコンセプトを組上げた作品集。
   ピアノ曲の3作は、12音を始めにしたアプローチを高橋が大胆かつ繊細に奏でる。 
   本盤の聴きものは、後半のミュージック・コンクレート。実音が
   電子音のノイズに変わっていくスリル、そして最終曲の奔放な電子音の炸裂。
   特に後半の3曲を楽しんだ。

   アフリカのSSW的アルバム、かな。ユッスー・ンドゥールが共同プロデュースした。99年作。
248・Cheikh Lô:Bambay Gueej:☆☆☆
   ホーン・アレンジはJB'sのピー・ウィー・エリス。バックのメンバーはユッスー人脈も
   参加してる。楽曲は強靭なダンサブルさを聴かせる。トーキング・ドラムを入れ
   セネガル流を出しつつも、ユッスー直伝のミクスチャー感覚もしっかり。
   しぶといグルーヴの上で、のびのびとシェイクのボーカルが跳ねた。ファルセットも沁みた。
   アメリカンで滑らかなサックスも音像にしっとり馴染む。
   繰り返しの多い洗練された曲調は、長く楽しい時間を味わえた。

   予備知識無し。カリブのシンガーのベスト盤集。政治家から転身と異色のキャリアを持つ。本盤は02年発表。
247・Oswin Chin Behilia:Bendishon Disfrasá:☆☆
   スローで弾き語りなカリプソ風味が心地よい。基本的にメロディは柔らかく耳なじみ良い。
   シンプルな繰り返しはブルースに通じる。伴奏も薄く、すっきり奥行きなサウンドだ。

   ブリッジとビッグ・アップルで03年にライブ録音のエレキギター即興作。
246・内橋和久:FLECT:☆☆☆★
   電子音のさえずりがループされ、ミニマルに展開する。ギター演奏だとしても、
   聞こえる音はダクソフォンを彷彿とさせた。フレーズの味や勢いの凄みじゃなく、煌めく音像を楽します。
   コケティッシュで混沌なムードが刺激的。高音を多用し明るいムードが漂う。
   エレキギターとループで産み出したエレクトロな楽園。ハッピー一辺倒じゃないが、
   音に明るい躍動感あり。

   ノーインプット・ミキシングボードとパーカッションの共演。98~99年の作品集。
245・中村としまる,Jason Kahn:Repeat/Temporary Contemporary:☆☆☆★
   本作が2ndにあたる。波打つ響きが酩酊感をさそった。迫るミニマルな勢いがすごい。
   鈍いドローンがじんわりと空気を埋め、虫の音めいた電子音と金属打音が行き交う。
   低音から高音まで響き渡る音像は、なんとなくガムランを連想した。
   ビートではなく。ただ、打音。連続した響きも、グルーヴとは逆ベクトル。
   なるべく大きい音で聴きたい。スピーカーから溢れる帯域が震わす皮膚感覚にやられた。

   詳細不明。サイケ・フォークらしい。03年の録音。
244・Travelling Bell:Scatter Ways:☆★
   シカゴの女性フォークバンドspires that in the sunset riseのメンバーによるソロ。
   ぼおっと聴いてたら、男性に間違える声だ。かすれ気味の高音は、
   しゃがれてるわけじゃないのに。暗く鈍く、ひそやかなフォーク。
   メロディは滑らかに、ムードは影をまとった。あまりリバーブを利かさず、スッキリした音だ。

   いわゆる、ジャジューカのアルバムか。
   モロッコのミュージシャン、バシール・アタール。"The Master Musicians of Jajouka"のリーダー。
   この前の1stソロではエリオット・シャープと共演した。
   ちなみにブライアン・ジョーンズがプロデュースしたバンドの、リーダーの息子らしい。
   メイシオ・パーカーがゲスト参加、プロデュースがビル・ラズウェルでNY録音と、
   コンセプトと言いだしっぺがいまいち良くわからないアルバム。92年録音。
243・Bachir Attar:The Next Dream:☆☆
   彼がメロディ楽器を弾き、アフリカのアイーブ・ディエンによるパーカッションとのデュオが基本。ビルのプロデュースで
   妙なアメリカナイズドかと気になったが、パッと聴きはさほど加工していない。
   メイシオが加わったテイクも、サックスの音色やフレーズはひとひねりしてる。
   ジャジューカを基本に、濃艶でどっぷりした空気を詰め込んだ。個々の曲は別個でありつつ
   ボンヤリ聴いてたら、全体を通したシャーマニックな流れにからめ取られた。

   ザキール・フセインのリーダー作。91年にアメリカのレーベルから発売。
242・Zakir Hussain:Zakir Hussain and the Rhythm Experience:☆☆☆☆★
   素晴らしい!強烈なリズムの奔流が、ぎっしり詰まった。
   どこまでも隙が無く、サウンドはさまざまな世界を駆け巡る。基調はインド音楽か。
   惜しむらくはそれぞれの楽曲が、比較的短めに終わってしまうこと。
   それぞれ1曲1分くらいで、怒涛のグルーヴをどっぷり味わいたかった。
   一曲目冒頭から、気持ちがぐいぐい盛り上がる。最高。

2010/9/5   最近買ったCDをまとめて。

   メルツバウの最近発表アルバムを入手。
   今年の1月録音で、イタリアのレーベルから。ベネツィアのマーブルがテーマらしい。
241・Merzbow:Marmo:☆☆☆☆
   煌めく電子音とフィードバックの邂逅。時折ふいっと、メロディ断片の風景が飛び込むのも刺激的だ。
   ループを感じさす場面もあるが、むしろアナログ的なハーシュの奔流が本流。
   豪快なノイズのうねりが心地よい。スペイシーな高まりに満ちている。

   ジャケットの凝ったデザインが楽しい。アメリカのレーベルより発売。
240・Merzbow:Ouroboros:☆☆☆
   うねりが細かいタイミングで切れ、絡むことで大きな振動を表現する。
   小刻みなハーシュノイズが続くようで、構成はとても細かい。約1時間の長尺
   一本勝負で、じっくり描いた。コラージュ感覚が強く、断片のレイヤーで一つのストーリーに。
   39分あたりの響きは妙な浮遊感を感じた。
   終盤では生ドラムの演奏を変調した音も加わっている。

   今回、一番の成果。後期フォー・シーズンズのメンバーによるソロ。しかも日本盤。01年作。
   アレンジにはジェリー・コルベッタの名前も。
239・Don Ciccone:Forever Begins Today:☆☆☆★
   ヌルっぽい音色のキーボードと、リバーブかかったシンセ風のドラムに
   時代を感じるけれど。メロディやアレンジは上質のAOR。カーブ時代のフォー・シーズンズを
   髣髴とさせるムードの中、ハイトーンながらか細げな歌声が
   柔らかく流れた。特にギターのカッティングと、ドラムのリズムが気持ちいい。
   ドラマーは二人参加してるが、ぼくの好みは(5)で叩いてるような小刻みなビート。

   オルガンのジミー・マクグリフを中心としたセッションらしい。73年のライブ盤。
238・Jimmy McGriff / Groove Holmes:Giants Of The Organ In Concert:☆☆☆★
   オルガン二人がゆえに左右にきっちり分離のミックス。
   ギター3人はさらに中央へ一人を定位した。
   でも、そんなのすぐに気にならなくなる。
   似たような音色が溶け、ファンキーに盛り上がるカッコよさにしびれた。
   熱い勢いが抜群。粘っこくも暖かい響き。ギターやドラムは歯切れ良く、
   オルガンの響きと対照的な世界を作った。
   作曲は全てオルガン二人の共作。
   ただアルバムとしては冗長な点も。もっと編集入れたほうがメリハリついたかも。
   演奏を実際にライブ会場で聴くなら、ばっちり盛り上がったと思うが。

   アルゼンチン音響系ミュージシャンの作品かな。98年作。
237・Mono Fontana:Ciruelo:☆☆☆
   SANTIAGO VAZQUEZ(per),MARTIN IANNACCONE(Vc),MONO FONTANA(synth)のトリオ。
   キーボードの音使いや音色に80年代後半の坂本龍一を連想した。
   即興でなく構築要素が強い。ミュージック・コンクレートのように実音をミックスし
   幻想世界を産み出した。エキゾティックな風景。
   複雑なビートではないのに、凝ったリズムを感じた。
   ただ、中盤は雄大さがむしろ大味な場面も。
   全般では耳馴染み良く心和む電子音楽だ。

   ドイツのWergoから出た、クラシック曲のコンピ。電子音楽を期待し購入。
   本盤は89年作。シリーズ1作目で3人の作曲家作品を収録した。
236・V.A.:Computer Music Currents 1:☆☆☆
   テープ・コラージュ色が強い。人の声も多用したフレーズが小刻みに飛び交う
   フランスのアラン・サヴォーレ作"A Long Speaking Melodrama"(1980-81)。
   時代からみて、まさにテープを操作して作成か。空気が手前で細密化した。
   英文ライナーに丁寧な解説が載っており、よく読めば詳しくわかるはず。
   スウェーデン生まれのクリステル・リンドヴァルによる"points"(1986)は、EMSシンセの作品。
   静かで抽象的な音の風が微細に振れる。
   残る収録曲、イスラエル出身ダニエル・オペンヘイムの"Round the corners of purgatory"は
   "響き"に着目した。打楽器を一つ一つ、丁寧に鳴らすような音像が、電子音でじっくり紡がれた。

   同シリーズ2作目。6人の作曲家を集め、89年に発表。
235・V.A.:Computer Music Currents 2:☆☆☆
   パーカッシブな残響を電子音で再構成、が盤全体のコンセプトのように感じた。
   バイオリンと電子音がスリリングかつクラシカルに交錯する(1)は、張り詰めた
   ムードと、つかみどころ無い音像が魅力。
   (2)~(4)の楽曲だと、オケの要素が強くなる。パーカッションめいた音が、電子音か。
   (5)はさまざまなパーカッションの鳴るさまを、電子再構成のようなイメージ。重たい。
   ユニークだけど、ちょっと単調。
   続く(6)もリバーブ効いたパーカッションの響きが電子的に響く。この曲はミニマルさに納まらぬ
   玄妙な響きが面白かった。(7)は(6)と似たコンセプトだが、よりスペイシー。
   最初に聴こえる、高い倍音の響きにまずやられた。本曲が、本盤でのベスト。
   強烈なアンビエントっぽさが素晴らしい。メロディでなく、響きを優先させた。
   最期の(8)は野太いシンセのソロ。ピアノと同調のようだ。
   録音は73年、MIDIがない。その点、新鮮な発想と斬新な手法だったのかも。

   5作目は90年の発表。5人の作曲家を収録した。
234・V.A.:Computer Music Currents 5:☆☆☆☆
   それぞれの曲で、浮遊とエキゾティックを追求したコンピレーション。異世界=電子音楽が編纂のコンセプトか。
   全体に酩酊する寛ぎを味わえる。
   エキゾチックなガムランめいた展開が水音みたいな音色で紡がれる(1)が、まず心地よい。15分間のチル。
   途中で展開はスペイシーに。ボリュームを上げると、音の細かさを実感した。
   (2)は細切れな音列が交錯する。電子音だけでなく、パーカッションにチェロと共演。
   シンプルな編成のわりに音像が奥行き深く聴こえた。
   いわゆる音程を越えた、頭にぐらぐらくる高周波なども使用。ライブで聴いたら迫力ありそう。
   全体的に抽象的な展開。
   (3)はさらに透徹な静けさを強調した一曲。ぼんやりしてたら、曲が終わってしまう。
   機関車の走行音を洗練させたかのような感じ。これはこれで、きれいだ。
   (4)もパーカッシブな電子音。これもガムラン的な異世界感と
   エキゾティックなサウンドを強調した。ふわふわと音が飛び交う。良い再生装置で聴きたい。
   ゴングとピアノの融合に人の声を混ぜた(5)も、奇妙な世界感を示した。

   これも電子音楽系のクラシック系コンピか。89年発売。
233・V.A.:CDCM Computer Music Series Vol.7:☆☆★
   ミニマル志向に留まらず、電子楽器を使ったキュートな作品集。ポップな感触だ。
   アカデミズムな重苦しさを突き抜けた。曲によってはブルーズを素材にしたものも。
   どの曲も録音のヌケがいまいち。なんでだろう。ちなみに録音は87~89年の作品。

     同シリーズの2作目。88年発表。
232・V.A.:CDCM Computer Music Series Vol.2:☆☆☆☆
   どの曲も比較的長尺、じっくり音世界を楽しめる。電子音の楽しさが伝わってきた。
   キュートなシンセのパーカッシブ・フレーズに陶然となる(1)。低音がみじかく、ぬぼっと顔を見せるさまが
   見事なアクセントで鳴った。熱に犯された頭の中みたい。
   続く(2)はハープシコードめいた音色でバロック風のフレーズを静かに奏でる。しかし弾ける音色は
   明らかにシンセだとはっきりわかった。やがて電子音が増え、サウンドは環境音楽っぽい展開に。
   (3)では震える電子音がキュートに、かつ覚束なげに震えた。スペイシーだが広がりはこじんまり。
   (4)は(3)とアプローチが似てるけれど、もっとミニマルでもっと明るい。ダンサブルを確かに意識してる。
   (5)は小刻みなフレーズが、静かに飛び交う。キュートでドリーミー。

     同シリーズの10作目。91年発表。
231・V.A.:CDCM Computer Music Series Vol.10:☆☆☆
   実楽器とコンピュータのアンサンブルをまとめた。1曲目の弦カルとシンセがピッチを合わせ
   混ざった瞬間の快感が、本盤を象徴してる。
   どの曲もくっきりしたメロディは控え、ときおり電子音と実音を美しく混ぜた。
   ちなみに(8)はフリー・ジャズのアンソニー・ブラクストン自らによる、
   サックスとピアノ、コンピュータ等を混ぜた82年の作品。
   ライナーのクレジットにはジャズでの実績は、全く触れられてないけれど。

   アメリカの前衛系ミュージシャンのコンピかな。これもシリーズ物か。
   リース・チャタムの名に惹かれた。94年作。
230・V.A.:Century XXI Electric/Acoustic USA2:☆☆☆☆
   前衛とクラシックの要素が見事に調和した一枚。
   シンプル、しなやかに美しく。91年から94年の録音で、ライブ音源もあり。
   チャタムは豪快かつストレートに、エレキギターの分厚い集団を操る。
   弦の美しいエヴァン・ジポリンの曲から、デイブ・ソルディアのサックス・ソロへ。
   彼のサックスは音色がきれいな一方で、どこか軋む瞬間あり。
   続くマイケル・ゴードンのギター曲は、うわずる高音の連続が不安感を煽った。
   鋭いエレキギターを中心にシンセや弦がじわじわとからんでゆく。マイケルがキーボードを担当。
   グレン・ブランカの作品は、ストリングスが押し寄せる。
   ふっくらした音像は、録音状態もあいまって奥ゆかしい暖かさが滲んだ。
   最期のルイス・バイアークの作品はねじれて歪むギターの感じがかっこいい。
   収録されたどの曲も尖った要素を保ちつつ、しっくり耳へ馴染む。
   穏やかな風格がある。

   シンセとギターと肉声。ラウンジ・ミュージックか。92年のCD。
219・Latitude:40 Degrees North:☆★
   クレイグ・ペイトン自らが経営するビデオ会社の作品で流す、BGM的位置づけかな。
   基本はペイトンの操るフェアライトのトロピカルで穏やかなサウンド。
   そこへギターをそっとダビングした。前衛やダンサブルとは無縁の、
   静かで心地よい雰囲気。まさにBGM向け。
   かといって白玉ストリングスがぶわぶわ、の安易なサウンドスケープじゃない。フュージョン、かな。
   曲によっては小刻みなフレーズの打ち込みが、聞いてて楽しい。

   ロイ・オービスンの最終スタジオ盤。聴きそびれてた89年の盤。
218・Roy Orbison:Mystery Girl:☆☆☆☆
   ゲスト一杯、ミュージシャンどっさり。そんな五目味なアルバムだが、
   ロイの滑らかなボーカルが一本、芯を通した。驚異的に甘い声を存分に聴かす。
   ジェフ・リンを筆頭にイギリスのそうそうたるメンツが"ロイ"のブランド・イメージへ
   がっぷり取り組む。その間を、セルフ・プロデュースの楽曲が締めた。
   ジム・ケルトナーの乾いたドラムが、どんなに華美なアレンジでも爽やかにまとめる。
   このカントリーをスマートに描いた世界が、当時のロイの狙いか。
   話題性や時代の産む奥行深いエコーに惑わされるが、よく聴くとボーカリストの
   ロイが、自らを的確にアピールした充実策と分かった。
   もし簡素なアレンジだったら、時代を超越した普遍性でたろうに。

   大物ゲストいっぱい、チーフタンズの95年作。
217・The Chieftans:The long black Veil:☆☆☆
   豪華なゲストながら、それに負けぬ骨太なトラッドのリズムが楽しい。
   どんな歌声が乗ろうとも、チーフタンズのサウンドはびくともしない。
   華やかで切ないグルーヴが心地よい。渋みを突き抜けた明るさあり。
   ミック・ジャガーやヴァン・モリスン、トム・ジョーンズのゲスト曲が、特に気持ちいい。

   トラッド歌手ジューン・テイバーの01年ソロ。アコースティックのシンプルなアレンジ。
216・June Tabor:Rosa Mundi:☆☆☆★
   穏やかな歌もの作品。ピアノとバイオリンのシンプルなセットながら、
   リバーブと音使いの巧みさで、びっくりするほどスケール大きな世界を描いた。
   曲によっては弦のダビングもあり。
   しっかりと歌うテイバーの迫力と相まって、重厚で聴きごたえあるボーカル・アルバムに
   仕上がった。トラッド特有の張りつめた雰囲気は、むやみな寛ぎを許さない。
   そして、凛と張った滑らかなスリルが、耳を楽しませる。

   詳細不明、アメリカのSSWらしい。08年発表、日本限定発売とある。
215・Andrew Morgan:Andrew Morgan:
   アコースティック・ポップを豪華なオケで録音、メロディもきれいだ。
   しかしリズム感がなくのっぺりしており、どうもするすると音楽が流れてしまう。
   むしろガツンとボリュームあげて音圧だすのが、本盤の魅力を感じた。
   甘いSSW好きなら、評価が変わるかも。

   ヤング・ディサイプルズのボーカルがリリースした1stソロ。94年作。
214・Carleen Anderson:True Spirit:☆☆☆☆★
   素晴らしいアルバム。英国のクールなムードを下敷きに、超ハイトーンを
   巧みに使い分けたカーリーンの歌声が、何より素晴らしい。
   打ち込み中心ながら生演奏の雰囲気を残したバックトラックが、クールに支える。
   ちなみに彼女、JBファミリー、ヴィキ・アンダースンの娘だそう。むべなるかな。
   どの曲も味わい深い。じわじわ迫る、穏やかでしぶといファンクネスが最高。

   86年にマーキューリーからセルジュ・ゲンズブールのベスト盤。58~64年の作品集。
213・Serge Gainsbourg:Du Jazz dans le ravin:☆☆☆★
   デビュー作から数年後までの作品に、サントラ作のインストを混ぜて編まれたコンピ。
   レア曲の収録有無は、フランス語のみなライナーで良くわからない。
   ジャズのムードが素晴らしいクールさとダンディネスを演出した。
   なまめかしく迫りくる低音の魅力は、歌の美味さとは別次元でフェロモンを振りまく。
   こういうカッコよさがゲンズブールだったのか。これはいい。
   ジャズはあくまで要素ながら、したたかな存在感がしっかり。
   サックスやオルガンの音色がいいな。

   ドクター・ドレとのデュオ・ヒップホップ。94年盤。
212・Doctor Dre & ED Lover:Back up off me:☆★
   MTV Rapsが発端で、ラッパーのDr.Dreとは別人だった。
   全米チャート91位までは上がる小ヒットを記録。
   気楽に聴けるパーティ・ラップなサウンドで、ウタモノもはさみ耳馴染み良い。

   M-floの旧譜を何枚か買った。
   00年の、1stスタジオ作。8inchボーナスCD付の初回版を入手。
211・M-flo:Planet Shining:☆☆☆★
   予想以上にかっこいい。トータル・アルバムの形式をとりつつ、細かく
   声が飛び交う。Lisaがいるおかげで歌とラップの対比が際立った。
   むしろVERVALのラップのキメ台詞の方が陳腐に感じる瞬間も。
   華やかでくっきりしたミックスで耳へぐいぐい飛び込んできた。
   演奏メンバーもある程度固定し、バンド的な感触あり。

   00年発売、1stアルバムのリミックス作品。
210・M-flo:THE REPLACEMENT PERCUSSIONISTS:☆☆★
   リズムを強調しダンサブルにまとめた。これもストーリー性あるジングルを途中に混ぜ、
   MCのレベルは埋め気味に、揺れを前面に出した。無闇なギミックは控えめ。
   軽やかに、あっさり聴ける。豪快にテンポを急がせたテイクもあり。

   01年2ndスタジオ作。
209・M-flo:EXPO EXPO:☆☆☆
   惑星移動のストーリー仕立てな構成は、けっこう新鮮。最近、こういうトータル・アルバムを
   あまり聴いてなかった。もっともあくまで味付け程度、ストーリーに楽曲を縛らない。
   男女ラップのからみを期待したが、あっさりめ。
   Vervalのラップお約束フレーズの連発が少々耳に付くこともあるが、
   基本は聴きやすいポップス。トラックは明るいシンセが耳に残る軽快なアレンジを多用した。

   02年発表、他のミュージシャンとコラボの楽曲を集めた2枚組コンピ。
208・M-flo:ソトシゴト:☆☆
   比較的ボーカルやラップで参加した作品が多い。それでもどこかに
   m-floらしい華やかさが漂うのが面白かった。
   バラエティに富みつつ、散漫なコンピなところも、さすがにあるけれど。

   04年のシングルCCCD。この曲が、めちゃ気に入った。
207・M-flo loves BoA:the Love Bug(single)☆☆☆☆
   タイトル曲はm-floの魅力が凝縮された、素晴らしい傑作。プラスティックな
   歌声は、同じフレーズすべてサンプリングしてるようだ。だからこそ、
   数か所で聞けるBoaのシャウトが生々しい魅力を増す。
   併収のうち、(2)はリズム以外はほぼそぎ落とし、パーティ・ラップなアレンジに。
   ボーカル・トラックは変わらないのに、アレンジ違いで変わったムードを出す、という
   アレンジの妙味を楽しめる楽曲。(3)は生っぽさを強調、歌声も差し替えソウル風に盛り上げるが、
   いまひとつメロディのフェイクぶりが荒っぽすぎ。
   最後に"Reeewind!"のイントロだけ聴かせ、期待をあおる。楽しい編成のシングルだ。
   これ、リアルタイムで聴いてたら楽しかったろうな。

   これは3rdアルバム。派手な感じ。04年のCCCD。
206・M-flo:ASTROMANTIC:☆☆☆☆
   瑞々しいアルバム。シングルも自然にアルバムのストーリーに織り込んだ。
   英語を多用し"日本語ラップ"をさほど意識してなさそうだが、全体のクールさは
   聴いてて楽しかった。クレジットみると"Loves"シリーズは、相手がミュージシャンの場合
   トラック作りもかなり任せてそうだ。そう考えると、坂本龍一の音源は、よけい興味深い。
   しかし日本語でラップ用語を軽快に織り込む語りは、ちょっと違和感あり。

   ジャケ買いした日本のテクノ・デュオ。08年作。
205・Neon:Panorama Eyes:☆☆★
   大阪のテクノを下敷きにしたロック・ユニットだそう。
   1stアルバムに続くEP盤がこれ。シンセの音色はほんのり8bit感覚の野太いもの。
   軽快なリズムをキープしつつ、ときおり顔を出す生演奏っぽさが魅力。
   舌足らずながら、まくし立てるMCも耳を惹いた。
   (2)でMCのあと、グッとテンポアップするさまがカッコいい。


2010年8月

2010/8/22   最近買ったCDをまとめて。

   アメリカの現代音楽協会が、年に1回まとめてるクラシック系電子音楽のコンピ盤らしい。
   これは97年発表、9曲入り。
204・V.A.:Sonic Circuits V:☆☆☆☆
   バラエティに富んだ電子音楽が聴けるコンピ。
   コミカルな声と電子音のコラージュ作品な(1)で幕を開けた。
   音色は歪んでるが、スペイシーで迫りくるビートはテクノに通じる、(2)がまず楽しい。
   静かな虫の声みたいな場面で、静寂な終わり方。
   (3)は一転、重たいアンビエントなシンセの拡がりだ。
   (4)は別の曲ながら、冒頭のタッチが似ておりスムーズに繋がった。
   だがこのコンピで一番気に入ったのが(5)。ザッパの影響を感じるシンクラヴィアの響きが、すごくキュート。
   (6)で再び会話をDJ風に細切れに重ねた音像に変わる。CD-J加工してる気分。
   (7)との共通点は言葉。鈍く歪んだ男の語りが、僅かに東洋的なサウンドと溶けてゆく。
   曲はふうわりと重力を振り回し、浮き上がるシンセが飛び交う(8)へ。響きに時代を感じた。
   実際音がときおり挟まり、音像に奥行きを与える。
   最期の曲も人声と電子音のコラージュ。全てが違う作曲家を集めながら、ストーリー性を
   作ったアルバムの構成が見事。

   同じシリーズ、2000年に発表盤で00年発表。9曲入り。
203・V.A.:Sonic Circuits VIII:☆☆★
   クラシック一辺倒でなく、サブカルチャーのしぶとさでもない。いわゆる前衛芸術家、の
   電子音楽を集めた作品か。アメリカに限らず、アジアやヨーロッパの作曲家も取り込んだ。
   どの曲もビートはほとんど意識させず、エレクトリック・ドローンや
   ミュージック・コンクレートをひとひねりしてる。
   いわゆる聴いてカタルシスを感じるベクトルじゃないが、どよんと漂い
   まとわりつく、鈍い響きの音楽は、ちょっとした酩酊感を味わえて楽しい。
   新しい、と感じるわけではないが・・・。

   彼の音楽は初めて聴く。インプロを集めた。ピアノ、バスクラ、
   サックス等を演奏した94年の録音。
202・Charles Gayle:Unto I am:☆★
   チャールズ・ゲイルは39年生まれのフリージャズメン。本盤吹き込み時は56歳か。
   もっともCDデビューは88年とwikiにあった。楽曲によってテナー、バスクラ、ピアノと弾き分けるが、
   もっとも情感を込めるのがテナーかな。きしむ音が無伴奏でばらまかれる。
   メロディはフリーク・トーンに溶け、激しい叫びのみが抽出された。
   テクニックでなく思い一発で吹き鳴らすかのよう。展開もストーリーも意識せず、ただ音に触れた。
   とにかく突き進むフリー・ジャズ。このエネルギーに馴染めるか。

   買いそびれてた。羽野昌二と深水郁のデュオ。07年の録音。
   ほとんどが深水のオリジナル曲を演奏してる。
201・羽野昌二/深水郁:Fish Heart/Water Heart:☆☆★
   ちょっと音がこもり気味。ほとんどが深水の曲ながら、羽野の色合いが強い作品に仕上がった。
   深水の持ち味である、コミカルさやほのぼのさは控えめ、
   ぱりんと緊迫さを漂わす。歯切れ良い羽野のシンバル・ワークが引き締め、
   メロディと寄り添うようなドラムが前のめりな音を作った。

   黒人の男女デュオかな?予備知識無し。米コロムビア91年の発売。
200・State of Art:Community:☆☆
   軽やかなディスコのムードを残した、打ち込みソウル。作成に二年半をかけたという。
   ゲストにブーツィ・コリンズやレディスミス・ブラック・マンバーゾが参加し、
   ほんのりファンクへの色気も見せた。調べた限りでは、本盤が唯一のアルバム。
   なまめかしいストリングスが印象的な(2)がシングル・カットされた。
   今聴くとリズムの硬質な音色に時代を感じるが、洗練されたムードは悪くない。
   ジャズよりのファンクネスがか細く流れる(8)が耳に残る。
   80年代プリンスの影響も受けていそう。
   ストリングスと生リズムがしなやかに絡む(11)がベスト。白人的なアプローチだ。

   06年のインディ・ソウル。男性ソロだ。
199・Jae:Come close:☆☆
   インディアナポリス出身。ゴスペル・ルーツだが、無闇に歌い上げず。
   本人は歌志向だが、友人らはヒップホップどっぷりとかで、双方の要素を混ぜた
   音楽性のようだ。本盤は打ち込みのせわしなく薄いトラックを素地に、滑らかな歌を聴かす。
   ちなみに地元の有名プロデューサーな二人、Clarence BrownとJohnnie Croomに数曲の
   製作を任せたのが、本盤の売りらしい。確かにその曲が並んだ後半は、しっとりソウルだ。

   92年アトランティックより。黒人ソウル・グループみたい。初めて見た盤。
198・Truth Inc.:Truth Inc.:☆★
   前半は大味なロック風味のアレンジ。歪んだエレキギターが吼え、野太い
   シンセが分厚く空間を埋める。わずかなファンク風味が気持ちいいが、それだけかも。
   (11)以降のバラードやミディアムのソウルが、彼らの本質だろうか。

   ソウル寄りのジャズ、かな。木管奏者のリーダー作で02年の盤。
197・Karl Denson's Tiny Universe:The Bridge:☆☆★
   レニー・クラヴィッツのツアーやフレッド・ウェズリー・バンドのキャリアがある
   サックス奏者のリーダー・アルバム。ジャム・バンド寄りの音楽に親近感あるようで、
   ゲストにスケーリックやロバート・ウォルターらの名も。
   スピーディな刻みはあくまで鋭く、ムーディなテンポはどこか穏やか。
   ドラムとベースのタイトなからみが、本盤をきりっと引き締めた。
   サックスは無闇に前へ出ず、アンサンブルを意識したプレイ。
   それぞれのアドリブがかっこいいな。ほとんどの曲で歌も入り、R&B要素もごった煮に。
   好みはアップ・テンポ。キメがびしばし決まるのが爽快だ。
   (1)でのリフが、素晴らしくクールだ。

   テディ・ライリーがプロデュースの黒人ボーカルグループ。99年邦盤でボートラ2曲つき。
196・Men of Vision:MOV:☆☆
   曲調が似通った感あるが、ミドル・テンポの硬質なのりが心地よい。
   ぎゅっと詰まったコーラスの耳触りが、いかにも最近風。ヒップホップの要素も
   ふんだんに取り入れ、くつろいで聴くには似合わぬ時もある。
   けれども、しゃっきりしたムードと時折顔をのぞかす滑らかなメロディの絡みは心地よい。

   予備知識無し。男性ソロの歌モノ・トラッドかな。09年作。
195・Asher Quinn:Serpent in paradise:
   弾き語り+αなアレンジで、素朴なフォークの歌もの。声の線は柔らかく細い。
   ふわふわと漂う感じが気持ちいい。Asha名義でニュー・エイジの作曲家でも
   あるそう。いかにもな、穏やかさだ。

   能天気な男の写真が、ジャケット。
   93年ソロのリマスター再発に当たり、アコースティック・アレンジを1曲ボートラ収録。
194・Achim Reichel:Wahre Liebe:
   キャリアとしては、過去にプログレ寄りのサイケな即興アルバムもリリースしてたよう。
   しかし本盤ではおくびにも出さず、ひたすらのんきなサーフ・ミュージックを聴かせる。
   分厚いシンセを筆頭に安っぽいアレンジで、のんきに歌った。
   メロディはきれいで楽しい。しかしどうにも中途半端な気も。
   しかしオフィシャルサイトもドイツ語のみ。国内のみで活動を想定か。
   前衛要素は特に無く、ポップス・ファン向け。しかしこの低音ボーカルも癖がある。声の感じはザッパみたい。

   これも予備知識無し。イタリアのレーベルから出てる、09年盤。プログレかな?    ニューウェーブのカバー集、らしい。
193・Airportman & Jommase Cerasuolo:Weeds:☆★
   ニューウェーブの曲などを、アコースティックのアレンジにした。
   スピード感は狙わずゆったりした展開だが、ときどきグッと広がる開放感に惹かれた。

   フィドル&歌手な英女性のトラッド。08年の作品で2ndにあたる。
192・Jackie Oates:The Violet Hour:☆☆☆☆
   ざくっと生々しく力強いフィドルの音色がまず良い。ぎざぎざしたサウンドが素朴さを強調しつつ
   全体のサウンドは洗練されている。
   ペンギンカフェをループさせた風の"Goodbye~"は大傑作。この一曲のためだけでも聴く価値あり。

2010/8/15   昨日買ったCD。

   06年のアルバムで、弦楽四重奏が加わったNYのライブ。ディランとレフト・バンクのカバーも収録。
191・Eels:Live at Town Hall:☆☆
   i-tunesはボートラ3曲入り、ファンならこっち買ったほうがいいか。
   ストリングスとピアノで隙間の多いアレンジだが、曲によってはバンド的なアプローチも。
   穏やかなムードの中、低く引きずるような歌声がじっくり絡む。
   彼らの音楽にまつわる影が、ストリングスのアレンジでドリーミーに飾られた。

   ポリネシアのラパ島のコーラス・グループらしい。94年のアルバム。
190・The Tihitian Choir:Rapa Iti vol.2:☆★
   この音楽のバックボーンや立ち位置を理解できておらず、いきおい音楽だけの
   印象になってしまう。つまりクラシカルな時間継続性と、妙にピッチの緩いハーモニー。
   なんらかの民衆儀式性に関連と推測するが、音楽単体だと
   酩酊するサイケデリックな奇妙さを先に考えてしまう。
   緩やかなハーモニーはミニマルな流れも。演劇めいた雰囲気もある。
   この和音感が不安定なのは、タヒチ独特の文化か。
   もっと文化を勉強しないと、この音楽を楽しめない。

   スカタライツなど、初期スカのコンピ盤。英アイランド1980年のコンピ。
189・V.A.:More Intensified vol.2 1963-67:☆☆★
   録音は盤起しか。ちょっとかすれ気味。しかしふんわりと奏でるグルーヴが
   どうにも心地いい。特にインストの暖かさがいいなあ。ドラムとベースのからみがばっちり。

   アラン・トゥーサンがプロデュース、ラベルの74年作な5thアルバム。
   メンバーはパティ・ラベル、サラ・ダッシュ、ノナ・ヘンドリックス。
   "Lady Marmalade"(ビルボード1位)や"What Can I Do For You"が収録された。
188・Labelle:Nightbirds:☆☆★
   ファンキーでゆったりしたグルーヴが心地よい。ヒット曲もさりながら、
   (4)みたいにふくよかなムードに惹かれた。骨太なベースがかっこいいが、
   誰が奏者だろう。アラン・トゥーサンのアレンジはゴージャスで暖かい仕上がり。

2010/8/12   今日買ったCD

   細野晴臣が監修、HASYMOらの音源が入った、07年のアニメのサントラ。
187・OST:EX Machina:☆☆☆☆
   サントラといえども、バラエティに富んだ構成でCDとして十二分に楽しめる。
   ノイジーさとポップさが絶妙のバランスで絡んだ。細野のジェントルで
   洗練されたテクノを基調に、クールに楽しめる一枚。m-floの楽曲がいいアクセント。

   モロッコでの生トランス音楽フェスティバル、グナワのコンピレーションらしい。
   2003年の録音か。CD-Rで曲目クレジットも無く、詳細は不明。
186・V.A.:Festival D'essaouira Gnaoua Musiques du monde vol.2 2003 Juin 26-29:☆☆☆☆
   豪快で粘っこいファンクが詰まった快演。エレキギターやバイオリンの
   アンサンブルは、ヴィンセント・アトミクス好きな人なら、素直に馴染めるかも。
   こぶしを効かせつつストレートなボーカルに、ポリリズム。きっちり整った抜群の演奏が駆け抜ける。
   ライブ音源じゃなく、スタジオ録音っぽいクリアな分離の音像だ。
   フェス出演者のショーケース音源かな。それにしては、余り違うバンドが入ってる気がしない。
   繰り返すグルーヴが酩酊を誘う。かっこいい音楽がいっぱい。
   楽曲それぞれでムードが違う。長尺でもひたすら盛り上がりそうだが、あえてバラエティ狙いか。

   詳細不明。バリの音楽を下敷きにポップスへ仕上げたようだ。
185・Igor Tamerlan:Bari Ethno-Fantasy vol.2:☆★
   宅録多重作品、らしい。本盤のほかに2枚、作品を発表している。
   バリの音楽へ愛情を示しつつ西洋音楽要素を足し、独特のラウンジ・ミュージックに仕上げた。
   独特の個性を滲ませた作品で、テクノとして面白く聴ける瞬間も。
   エキゾティックな美しさを意識しながら、妙なポップ性も。素朴でとっちらかった個性が楽しい一枚。

2010/8/11  最近買ったCDをまとめて。

   ジョン・ゾーンが作った室内楽曲をまとめた2枚組。00年発表。
184・John Zorn:Cartoon/S&M:☆☆☆
   ジョン・ゾーンの室内楽曲を手軽に味わえる。コラージュとスピード、
   切り替えとロマンティックさ。拡散する興味主張をひとところに
   豪快に収める、独特な世界感がつまった。
   クラシカルな世界で、ノイジーさは控えめ。ハイテクニックで突き進む爽快感あり。
   "Kol Nidre"は違う楽器編成で、2 ver.入り。異なる耳ざわりを味わえるのも楽しい。

   3種類の二重奏に、それぞれ中韓越のボイスを乗せた作品らしい。97年作。
183・John Zorn:New Traditions in East Asia bar bands:☆☆☆☆
   エキゾティズムが炸裂した傑作。ここで言葉が何を言ってるかは、わからない。
   しかし混沌とした即興の上で語られる言葉は、幻想的なストーリーを
   嫌でも強調する。ゾーンはアジアの世界を夢幻と仮定し、即興の産むパワーを
   言葉のリアリズムと結びつけた。意味が瞬間の音像と合致し、意味合いは遊離する。
   溶暗する現実と異世界の多様な価値観を表現した。
   さらにゾーンは自らの立ち位置をプロデュースにとどめ、楽想は別のミュージシャンに任せる。
   一歩引いた立場を、神の視点に重ねるのは深読みしすぎか。

   峰厚介クインテットが95年に収録した2nd。ピアノが大口純一郎、ドラムが古澤良治郎にひかれた。
182・峰厚介クインテット:In a Mase:☆☆★
   がっつりゆったりハード・バップ。特に奇をてらわず丁寧なセッションだ。
   録音は2chダイレクトで、ライブ感覚を生かしたとある。
   ドラムの細かな刻みが効果的だった。
   奏者の顔が見えるとも、見えないともいいづらいジャズ。

   菊地雅章と渋谷毅のデュオ。エリントンのナンバーを演奏してる。00年作。
181・菊地雅章&渋谷毅:TANDEM:☆☆☆★
   強烈にデュオを意識しない。ひとつの楽器で成り立ってるかのよう。
   ロマンティックでありつつ、時にタッチはくっきりと。柔らかな渋谷の演奏と、
   打楽器的な菊地の演奏、互いが滑らかに溶け合った。
   烈しい前衛性は無いけれど、単なる耳ざわりの良さだけでは、もちろん終わらない。

   ジャッキー・マクリーンが60年収録のブルーノート音源。93年の邦盤CDで入手。
180・Jackie McLean:Capuchin Swing:☆☆☆★
   がつんとファンキー。スイングしっぱなし。マクリーンの青白く軋む
   サックスを筆頭に、リズム隊が強烈に煽る。個々の瞬間云々よりも、全体の聴いてて楽しい
   雰囲気が、なによりもポイント。けっこうバラエティに富んだアルバムだ。

2010/8/9   最近買ったCDをまとめて。

   元GbVのボブが、また新譜を出した。自主レーベルより。
179・Robert Pollard:Moses on a snail:☆☆☆★
   ロバートにしては珍しい、大味さを狙ったロック。もっともこのアレンジの
   選択は、トバイアスのほうか。作曲そのものは相変わらず、とびっぱなし。
   甘いメロディで押すより、どこか気だるげなムードが漂う。
   無造作に変拍子が現れるのも、ユニークだ。
   (8)みたいにアップテンポの爽快な曲や、独特の一筆書きな(9)みたいなバラードも、いっぱい聴きたくなった。
   アルバム構成は、前半が大きな箱で映えそうな結ったリ気味、後半でバラエティさを出した。
   いわゆる、ロックにこだわった盤な気がした。

   プリンスの新譜。なんだかキャッチーな作品だ。
178・Prince:20ten:☆☆☆☆★
   かざりっけないジャケットだが、内容は凄い。明るく密室なアルバム。
   管とコーラス以外はプリンスが一人で作り上げた。ポップでも奥が深いアルバム。
   コンパクトなアレンジでシンプルに傾きがちな音像を女性ハーモニーで
   色づけるアレンジセンスがさすが。
   今後の重要曲な"Sticky Like Glue"を収めた。

   新譜。スティーヴ・クロッパーとフェリックス・キャヴァリエのデュオ、2作目。
177・Steve Cropper & Felix Cavaliere:Midnight Flyer:☆☆☆★
   アンサンブルに味が出てきた。甲高い歌声が、タイトなリズムに支えられ
   心地よくグルーヴする。シンセの音はいまいちだが、生演奏のリズムがかっこい。
   アリソン・ペレスウッドのベースがぐいぐい迫る。

   ジョン・ゾーンの本作は聴いたこと無かったことに気づく。93年録音の
   TZADIK盤を入手した。
176・John Zorn:Kristallnacht:☆☆☆☆
   厳しく、切なく、烈しい。断片が飛び交う。ノイズが吼える。
   シビアなテーマを真正面から描き出し、ドラマティックさをゾーン特有の
   カットアップをふんだんに折込み作り出した。
   濃密な緊迫感と、メロディのほとんど無い吹き荒ぶ音の行き交いが、素晴らしくスリリングだ。
   冒頭のドイツ語は何を言ってるんだろう・・・。全ての瞬間を、細かく分析したくなる。

   中国で買ったCD。裏ジャケの四人組が、白人っぽいなと思って買ったら、
   アメリカのバンドだった・・・。良く見ろよ。05年のアルバム。
175・The Fray:How to save a life:
   一本調子で、どうにも馴染めず。メロディもアレンジも凝ってるの分かるが、
   どの曲ものぺっと聴こえてしまった。ヒットアルバムだというのに。

   中国で買ったCD。人気の男性アイドルらしい。民族楽器を持ったジャケットに
   惹かれて買ったが、どうやらポップスみたい。ベスト盤かな。3枚組金属ケース入り。
174・王力宏:Music-man:


2010年7月

2010/7/18     最近買ったCDをまとめて。

   北九州のキュレーターが選曲した、ノイズ系コンピのようだ。
   東京で当時行われた、展示の副産物かな?
   メルツバウが一曲、参加した。02年の作品。
173・V.A.:The Void:☆★
   どれも数分と短い、7曲入りのミニアルバム。参加は高橋左門、リアム・ギリック、マティアス・グマッハル、スコット・オルソン
   岡田俊一郎、カール・マイケル・フォン・ハウスヴォルフ、そしてメルツバウ。
   2002年3/18~4/26,CCA北九州で"ヴォイド・アーカイヴ"を展示時のCDとなる。
   インスタレーション的なコンセプトか。電子音の持続がトラックごとに表現される。
   淡々と、ひそやかに。くつろぎでなく緊迫を狙うあたりがアートっぽい。
   メルツバウはサバスの3rd"Master of Reality"(1971)所収の曲を"In To The Void"と解体な作品を提供した。

   太田惠資が自らの名前を冠した1stリーダー作、だそう。ストレートなジャズを
   テーマに演奏したが、"フィレンゲンの想い出"や"オブリヴィオン"など、
   太田らしい選曲も入っている。ピアノとのデュオ。10年作の新譜。
172・太田惠資 & Bill Mays:Blue Rondo a la Turk:☆☆☆☆★
   09年12月17日、ほとんど打ち合わせも無しに、さっくりと録音されたとライナーに記述ある。
   太田惠資が初リーダー作は、ピアノとスタンダードのデュオだった。
   ロマンティックに、オーソドックスに、美しく音楽への愛情を表現した。
   しかし選曲から、太田らしさがにじみ出る。"フィリンゲンの思い出"やピアソラの"忘却"など。
   バイオリンのソロを"タクスィーム"と表現するあたりも、多彩な音楽バックグラウンドを持つ太田っぽい。
   ビル・メイズとの出会いのきっかけは津村和彦のソロへ、太田の参加がきっかけか。
   しかしビルの作品も一曲収録するバランス感覚も、いかにも素敵だ。
   柔らかく軋み、情熱的にあふれるバイオリンの切ない響きは、とても愛らしい。
   スタイリッシュな太田の魅力に着目したアルバム。
   ちなみにタイトル曲の選曲も、太田だろうか。黒田京子トリオのリハで弾いてるのを聴いたことあるが、ちょっと意外。

   76年の翠川敬基を軸にしたデュオ・ライブ音源へ、新たに富樫雅彦のテイクを加え、 
   09年に再発。この盤を聴きたかった。当時の鋭いジャズが聴ける予感。
171・翠川敬基:完全版「緑色革命」:☆☆☆☆★
   高音を軋ます、翠川のボウイングが印象深い。参加者全てが若く、溌剌としている。
   当時のベテラン勢に真っ向から立ち向かい、まったく力負けせぬ翠川の躍動感が詰まった傑作。
   緊迫したフリーを三者三様に聴かせた。スピードあるが、溜めや旋律への執着もしっかり。
   抜群の即興音楽がここにある。
   歴史を切り取り、記録した音源の再発/発掘が、とっても嬉しい。

   山下達郎の曲を弦カルにアレンジした企画盤。もちろん、達郎は関知せず。
   アレンジャーは赤野立夫、前田憲男、兼崎順一(元スペクトラム)。検索すると皆、ベテランばかり。
170・フェスタ・クラシコ他:悲しみのJody~弦楽カルテットで聴く山下達郎メロディ:☆☆☆★
   予想以上に楽しめた。いわゆるBGMなアレンジだが、オリジナルからテンポや構成を変え、
   ひとひねりした響きを楽しめる。基本はしずしずとストリングスが近寄る、切なげな響き。
   けれどもたっぷりした余裕なアレンジが頼もしい。達郎ファンなら、聴いて楽しめる。
   もっと低音弦を生かしたら、どっしり重みでたと思うが・・・むしろ軽やかさを狙ったか。

   登敬三らによるトリオ。09年録音の2ndアルバム
169・犬楽:あやしい人達:☆☆☆★
   クレツマーっぽいと最初は思ったが、それにもちろん留まらない。
   切なげなメロディが噴出し、サックスとバイオリンが力強くからみながら
   音楽をたくましく膨らませていく。ウェットな世界感へどっぷり浸ると美しい。

   フィラメントが00年に行ったライブ音源。
168・Filament:29092000:☆☆☆★
   透き通る強いSachiko Mの音と、鈍く唸り続ける大友の音。
   二つの音が怜悧に絡み、空気をきつく振動させる。中盤からサイン波が
   耳を強く貫き、低音があたりに漂った。
   夜の虫の音と、妙に親和性が高い音楽だ。この、サイン波があっても。
   30分弱の無常なひととき。音量を絞っても、超高音は耳へ容易に届く。

   ジョン・ゾーンのサントラ集20作目、08年発表かな。マーク・フェルドマンら
   5人編成のアンサンブル。録音は08年。
167・John Zorn:Film Works XX Sholem Aleichem:☆☆☆★
   ハープとアコーディオン、さらに弦楽三重奏。きれいで耳馴染み良い
   キュートなアルバム。メロディはクレツマー主体で、いかにもマサダで聴けそうなフレーズが頻出、
   好きな人にはたまらない一枚。中間のアドリブは別として、
   ジョン・ゾーンらしく隅々まで端正にアレンジされている。破綻よりも構築された一枚。

   南アフリカ共和国の音楽。名盤と讃えられる87年の作品。聴くの初めて。
166・Mahlathini:The lion of Soweto:☆☆☆★
   録音がいまひとつコモって、物足りない。演奏、歌はばっちり。
   マハラティーニがだみ声で、がしがしぶん回す。演奏は鋭いギターのリフを中心に
   降り注ぐような楽器の交錯が、べらぼうにスリリング。
   女性コーラスが懐深く包み込み、暖かさを演出した。
   正直、アレンジ・パターンは似通っており、まだ耳に馴染んでない。これを聴きわけられたころ、
   豊潤さにもう一度気づけるだろう。そんな楽しみを秘めたサウンド。でかい音で聴きたい。

   クリスチャン・マークレイがさまざまな音源をコラージュした88年の録音。
   取り上げたミュージシャンはシュトラウスやマリア・カラスといったクラシック勢から
   ジョン・ゾーン、フレッド・フリスら仲間、さらにジミヘンやサッチモと多岐にわたる。
165・Christian Marclay:More Encores:☆☆☆
   複数ターンテーブルによる音源コラージュ。グルーヴや展開とは別ベクトル、
   奏者の特徴を寸秒で掴み、並べ立てる。リズミカルな流れも時として
   オリジナルの音楽が持つスピード感とは異ならせた。
   ごちゃまぜな世界像が刺激的な一枚。
   最期の曲はマークレー自身をタイトルにつけた。ミニマルな電子ノイズが膨らむ。
   どの曲も数分と短めなため、さっくり楽しめるのも嬉しい。

   エグベルト・ジスモンチがクラシックのオケと共演した97年のECM盤。
164・Egberto Gismonti:Meeting Point:☆☆☆★
   風のごとく疾走するオーケストラ。同じ譜割を基調に、ときに懐深い和音を響かせ、
   ときにシンプルなモチーフを提示する。鋭いフレーズはどこまでも
   滑らかで、オケがやみくもな前衛性に走ることは無い。といっても、安楽な
   ムードミュージックの要素はかけらもないが。
   パーカッシブとメロディアスが混淆するジスモンチの音楽がオケと溶け合った傑作。

   リューネ・グラモフォンの旧譜を二種類。これは06年発表、ノイズ的な音楽かな。
163・Thomas Stonen:pohlitz:☆☆☆★
   小物パーカッションとエレクトロが混在するリズム・ソロ。
   ダビングや事前ループ作りは無く、即興的に録音したとある。
   キュートな音像が楽しい。ミニマルな展開だが、連続性が目的でなく
   ガムランみたいな響きを出しても、民族的な荘厳さは薄い。どこかコミカルで
   コケティッシュなムードが漂う、楽しいアルバムだ。
   テクニカルに叩きまくらず、さまざまな響きを味わうつくりで仕上げてる。

   本盤は01年発表、エレキギター・ソロ。
162・Tore Elgaroy:The sound of the sun:☆☆★
   前半のエレキギターは雲のよう。エフェクターで鈍く鋭く煌めく音色は、
   フィードバックのような豪音一辺倒には行かない。どこか躊躇いがちに、たゆたう。
   メロディ追求のソロではなく、アンビエントな味わいが主流か。
   小刻みに呟く電子音のリズムが、曖昧に空気をもやかせた。
   多重ループのように盛り上がる(7)から、悲鳴のように吹き上げる(8)と、
   後半に向かって、ぐいぐいテンションが上がる。強烈なドローン。それでも、上品さをどこか残して。
   最期の曲はディレイを巧みに使った、ドラマティックで透明な世界。

   ブレイキーがショーターやモーガンを引き連れた、61年の東京ライブ音源。
   ジムコが90年に発表したCDを入手。
161・Art Blakey & The Jazz Messengers:1961 Live in Japan Best:☆☆
   全体的には大味なブレイキー・スタイル。饒舌なショーターのサックスと、
   ボビー・ティモンズの痛快なピアノが聴きもの。
   演奏でいうと、(2)がスピーディーでよかった。

   詳細不明。フランスのポップスかな?07年作。
160・Yael Naim & David Donatien:Yael Naim & David Donatien:☆☆☆★
   上品で少々舌足らずなムードが楽しいポップス。アコースティックな
   ギターがメインの中で、さりげなく打ち込みが刻む。アレンジのセンスが良い。
   呟くようなメロディを飾るバック・トラックは、基本的にホームレコーディングとある。
   ふくよかで小粋なサウンドは、曲によってダビングを重ね聴いてて飽きない。
   これは思わぬ当りのアルバム。

   詳細不明で買った2枚組。NYクラブ系ジャズコンピ。レーベルはInstinct
159・V.A.:The Future Sound of Jazz 2:
   楽器のソロがあり、和音感や雰囲気が何となくジャジー、ぐらいが共通点。
   粘っこいグルーヴ追求もさほどでなし。BGM似合いな作品集。テクノな
   フレーズはところどころ、耳を惹く。

   CDで買いそびれてた。ジョー・ジャクソンのアルバムでは、これが一番好き。
   今はデモテイクつきの音源も出てるが、これは普通の一枚もの。82年作。
158・Joe Jackson:Night and Day:☆☆☆☆★
   軽快なパーカッションで彩られた、ダンディなポップス。
   それでいてボーカルはどことなく、やけっぱち感も漂う。洗練と自堕落が絶妙の
   バランスでつりあった、大傑作。広がりある世界が素晴らしい。
   ほんのりなシンセは、今でも色あせない。

   エリカ・バドゥの97年作。聴きそびれてた。
157・Erykah Badu:Baduizm:☆☆☆☆★
   軽やかな打ち込みビートがたゆたい、バドゥの小気味良い歌声が跳ねる。
   とてつもなくグルーヴィ。親しみやすい。メロディのキャッチーさの前に、サウンド全体の
   暖かく包み込む感触が快感だ。ミニマルなループに酩酊する、密やかなファンク。
   "Cerainly"で長く声を伸ばすさまのキュートさも捨てがたい。

   ルーサー・ヴァンドロスのアルバムをちゃんと聞くのは初めてだ。96年の盤。
156・Luther Vandross:Your Secret Love:☆☆☆★
   丁寧なバラード・アルバム。打ち込み基調ながら生演奏のダイナミズムを
   意識し続けており、薄っぺらさは無い。鼻にかけダンディに歌い上げるルーサーの
   スタンスに好き嫌いは別れそうだが、キャッチーなメロディとあわせ隙が無いのも確か。
   静かなゴージャスを詰め込んだ作品。


2010年6月

2010/6/26   最近買ったCDをまとめて。

   ナイジェリアのハイライフ大御所。聴くの初めて。03年ベスト盤、かな?
   70年から85年の作品を収録したようだ。
155・Chief Stephen Osita Osadebe:Sound time:☆☆☆★
   ほんのりリンガラ風。だけどどこか、鋭さあり。ハイライフの漂う
   ミニマルなグルーヴが心地よい。ときおりつっこむフレーズがアクセント。
   録音は70~85年の作品集は、中期から後期らしい。一曲が十分に長く存分にノリを楽しめる。

   オールド・スタイルのヒップホップが聴きたくなって、これを。91年作。
154・Kool Moe Dee:Funke Funke wisdom:☆☆☆
   シンプルなサンプリングに乗って、タイトなラップが鋭く刻む。
   時代性か単純な作りだが、切れ味だけは今でもスリリング。
   歯切れ良い畳み掛けるスピード感が本盤のなにより魅力。
   ネタの使いはさりげなく凝ってる場面も。フレーズの最後にちょっぴりリフを付け加える(7)が良かった。

   スティングが聴きたくなって、色々買う。どれも初めて聴く。
   2ndソロで87年発売。クラプトンやルベーン・ブラデスなどゲストも豪華。
   "Englishmen in New York"を収録した。
153・Sting:...Nothing like the sun:☆☆★
   つるっと上品な印象。どの曲もジャジーなムードをかもしつつ、根本で
   自由じゃない。かっちり構築なアレンジ。スティングの歌声も穏やかさを保つ。
   コントロールされた美学、の観点ではよく出来たアルバム。
   マスタリングのせいか、やたら透明感にじむサウンド。

   これは91年の3rdソロ。ヒット曲は無いが、評価が高いらしい。
152・Sting:Soul Cages:☆☆☆★
   ざくざく尖った感触ながら、柔らかさも全体に。ユニークなヒュー・パジャムの
   音作りが楽しい。全体にちょっと音数は多いけれど、素直に滑らかなメロディを
   操る、スティングにしては地味なアルバム。もっと少ない編成でこの曲聴いたら気持ちよさそう。

   5thソロで96年の発売。ドラムがヴィニー・カリウタだ。
151・Sting:Mercury Falling:☆☆★
   穏やかなムードが続く。楽曲によりアレンジのアプローチを変えて。
   バンド的なサウンドが基本だが、パジャムによる軽い音像の仕上がりが、ちょっとものたりぬ。
   リズムの尖がり具合でいくと、(2)での4拍め裏で鳴るスネアの響きが
   もたらす揺らぎや、(11)の引っかかるビートが気持ちよかった。
   アルバム全体では、親しみやすい仕上がり。大人なイメージだ。

   99年、6thソロ。グラミー賞受賞だそう。ゲストにスティーヴィー・ワンダー他。
150・Sting:Brand New Day:☆☆☆☆
   全体は簡素なイメージ。シンセが流れるグルーヴを巧みに作り出し、タイトなドラミングが
   かっちり空気を固める。時にアラビックなムードを連想するアレンジは、
   じわじわと華やかさを眩く輝かす。(4)の力強さがかっこいい。
   スティングの喉を張る勢いは、流麗なバックときれいに溶けた。
   パジャムが抜けて、アレンジにより統一感が出たと思う。傑作。

2010/6/14   昨日買ったCDはこんな感じ。

   ジョン・ゾーンの電子音楽を集めた盤らしい。TZADIKより01年盤。
149・John Zorn:Songs from the Hermetic Theater:☆☆★
   (1)、(3)がゾーンの電子音楽、(2)と(4)はミュージック・コンクレート。
   電子音楽はどちらもゾーンのサックス・ソロに通低する鋭さと
   断片ぶり。幾つかの発信音が断続的に痙攣し、寸断し弾ける。音の展開はさほど
   無く、ひとつのアイディアが淡々と続くが、細かな粒の弾け方が楽しくて、そのまま聴いてしまう。
   (2)は日用雑貨のノイズへベース音などを足した音楽で、静かなドローンをイメージした。
   (4)は膨大な楽器や道具がクレジットされている。バイオリンのソロを
   背後で静かに響かせた。ミニマルな鳴りはサンプリング?その他のコラージュを、
   ゾーンが録音だろうか。本盤収録は全て、01年にジェイミー・サフトによるNY録音/mix。
   かなり聴く人を選ぶ音楽と思う。一方で、これまで電子音楽をやらなかったゾーンが
   手を染めたコラージュは、過去の活動と一貫してると楽しむ見方もあり。

   87年にノンサッチから出したゾーンの代表盤。実は聴くの初めて。
148・John Zorn:Spillane:☆☆☆★
   "Spillane"は少々違う合計タイムだが、アルバム"Goddard/Spillane"収録と同テイクかな?
   カード式にコラージュを積上げるジョン・ゾーンの作風をカッチリまとめた。
   初期作だからか、とてもわかりやすい構図だ。2曲目、3曲目はアルバート・コリンズを迎えたブルージーなジャズ。
   ブロック要素の各場面は長め、じっくりソロを楽しめる。
   ちなみに(3)は断片のようにあっさり。
   (4)は日本映画へのオマージュ。クロノス・カルテットの弦演奏を土台に
   ヴォーカリーズが乗る。後にエキゾティックでラウンジなアンサンブルへも
   向かっていく、ゾーンの原点的な一曲。

   TZADIK04年の盤。ゾーン作曲、弦楽四重奏とバスクラ・デュオ曲を収録した。
147・John Zorn:Magick:☆☆
   全て譜面と思うが、聴こえる音は無闇に飛び交う鋭い音。テクニックが
   異様に高く、テンション上げっぱなしで疾走する。寛ぎとは無縁、烈しい弦楽四重奏。
   バスクラの二重奏も、烈しい勢い。タンギングを効果的に鳴らすあたり、ゾーンらしい。

   ジョーイ・バロンのリーダー作。初めて聴く92年の盤。
   共演がトロンボーンとテナー、ちょっとユニークな編成。
146・Joey Baron:Tongue in Groove:☆☆★
   ソロ回しよりも、ユニゾンやリピートでテーマやパターンを執拗に追い込む印象あり。
   フリーキーなアドリブも、もちろんあるけれど。グルーヴィーながら
   ダンサブルとは違う方向性。大胆に野生的なムードをかもしても、
   比較的に短尺の作品たちはさくさく進んでしまう。
   リズムと旋律をひとつのものにすべく試みた、バロン流のアプローチか。

   NYのレーベルから白人テナーの3ピース・ジャズ。オーソドックス・タイプかな?
   98年、Amosaya Musicレーベルから。
145・Ned Goold:Cooold: ☆☆
   モンクの影響を感じさせる音作り。クールなアドリブを聴かせる。
   突き抜ける個性はないが、黒っぽいグルーヴを廃したスタイルを、爽やかと感じられたら楽しめるのでは。
   ベン・オルテのベースが勇ましくカッコよかった。

   イギリスのインディ・レーベル発売、テナーの3ピース・ジャズ。
   08年発表でCD-Rによる手作り感覚。
144・The Tomorrow Band:2 to get set:☆★
   オーソドックスなジャズ。クールなムードをかもしだすが、突出する
   個性まで聴き取れなかった。BGMや丁寧なジャズを聴きたいなら、いいかも。
   スリルが無く、どうも物足りない。

   古楽の声楽かな?詳細不明。94年の録音。
143・Tempi di Sumente:Canti Musica di Corsica:☆☆★
   コルシカ島の民族音楽を集めたコンピ盤らしい。一方で器楽演奏の即興もあるようだ。
   イタリア語のブックレットで、いまひとつ内容がわからない。
   独特の無伴奏男性コーラスにまず惹かれる。ブルガリアン・ヴォイスとはまた違う。
   肉声でバグパイプを模すような、鈍い響きのロングトーンが気持ちいい。
   器楽曲は滑らかで、しっとり情感が滴るイメージ。
   詳しいことは不明だが、気持ちいい音楽が詰まった。

   ドイツのドナウエッシンゲン音楽祭の00年版、現代音楽のコンピ。
   4枚組のボリューム。電子音楽もあるようす。面白そうだから購入。
142・V.A.:Donaueschinger Musiktage 2000:☆☆★
   現代音楽を集めた4枚組ボリュームは、聴きとおすのにも一苦労。
   楽曲はメロディが断片で飛び交うミニマルさの印象が強い。
   まったく背景がわからずだが、それぞれ論理性を追求した音楽だろうか。
   緊迫感がどの曲も漂い、真剣に楽曲へ向かうことが必要。
   そんななか、Martin Smolkaの声楽曲などでは、ちょっとホッとする。
   しかしこれ、資料性の点でも貴重で有益なコンピだ。

2010/6/12   最近買ったCDをまとめて。

   山下達郎のシングルがまた発売された。今度はミディアム。
   カップリングは前回のライブ音源。
141・山下達郎:街物語(single):☆☆☆☆★
   デジタル技術の限界を突き抜けた、達郎の傑作。シカゴ・ソウルの陰あるサウンドを、
   バンド・サウンドで組んだ。本盤ではバンドのダイナミズムを
   アナログのふくよかさできれいに表現した。切ないグルーヴをバンドは産み出し、
   しっかりと録音が掴み取る。70~80年代の盤と聴きならべても違和感ない
   サウンドの確かさにしびれた。
   楽曲のしぶとい魅力もばっちり。00年代の達郎を代表する一曲だと思う。
   カップリングのライブ音源もばっちり。早く"JOY"の2作目をリリースしてほしい。

   大友良英のサウンド・トラック集。これをきっかけにどんどん発売してほしい。
   なんだかジョン・ゾーンのOST集を連想した。
140・大友良英:サウンドトラックス vol.0:☆☆☆
   暖かく素朴なメロディラインが、大友による映画音楽での魅力。
   ときにシューゲーザーっぽく雪崩れるときも。
   ふうわりと空気が弾む。"歩く"のロマンティックさが好き。"Dust in the wind"のしなやかな勝井のバイオリンもいい。
   そこへノイジーなギターが、静かに絡む美しさ。

   ジュリエッタ・マシーンの09年作。ようやく入手した。
139・Giulietta Machine:Cinema Giulietta:☆☆☆☆
   ふうわりとときめく、柔らかで幻想的な音楽が詰まった。
   揺らぎの魅力はますます増し、初期の打ち込みっぽさが少なくなった。
   つかみどころ無く、しかしどこまでも美しい。たまらなく甘酸っぱいサウンド。

   加藤英樹が大友良英、植村昌弘と演奏した音源。08年作。
138・加藤英樹's Green zone:Bayt:☆☆☆
   クレジットによると、3種類のライブ音源に加藤が楽器をオーバーダブみたい。
   ただし、曲は2曲。変に加工せず、ライブの勢いをそのまま生かした感じ。
   長尺曲と、短めの曲でメリハリをつけた。
   でも一曲目の終盤で、ダビングされた水音の涼しげな凄みは、カッコよかった。
   怒涛で音が突き進む。しゃにむなベクトル感覚をベースの低音が、勇ましく支えた。
   展開よりも一気に雪崩れる勢いの快感がすごい。
   植村のタイトなドラムも効果的だ。大友のギターが、吼える。
   2曲目は清涼なドローン。

   電子音楽作品。その業界では高評価の盤らしい。73年作。
137・David Tudor:Microphone:☆☆★
   ライナー解説がイタリア語のみでさっぱりだが、検索によると1970年の
   大阪万博で委嘱作品を再録したという。軋み音がゆったりと蠢く。発信音と
   フィードバック。巨大な生物がかすかに吐息をつくように。電子音が密やかで
   存在感あるノイズを作った。展開はほとんど無く、隙間も多い。
   今ならば、エクスペリメンタル・アンビエント、とでもカテゴライズすればいいんだろうか。
   静かな電子音の連なりは、BGMとしても気持ち良い。決して音色が優しいわけでもないのに。
   繰り返し聴きたくなる音楽とはちょっと違うので、星の数は少なめ。

   クラシック系のテープ音楽集、だろうか。91年の盤で録音は52年から71年の製作。
136・V.A.:Pionieers of Electric music:☆☆☆
   淡々と舞う電子音。曲によってはフルートやパーカッションとの
   共演も。当時は難解だったとしても、今では静かで素朴なアンビエントとしても味わえる。
   ぐるりと価値観の転換を味わえる一枚。沈鬱なところもあるが、聴いてて穏やかな音像に癒される。

   ウータンのゴーストフェースとトライフ・ダ・ゴッドの盤。ライブDVD付05年作。
135・Ghostface Killah and Trife Da God:Put it on the line:☆☆
   レイクォンやRZAなどウータン軍団、Slick RickやKool G Rapがゲスト参加。
   抑えたスピードが全編に漂い、ギャングスタながら凄みは軽め。
   鈍く輝くグルーヴが魅力。気軽に聴ける一方で、細かなサウンド作りでもある。

   ウータンが若手白人トラック・メイカーとのコラボ作を集めたコンピ盤らしい。
   一軍メンバーもラッパーで参加の2枚組、09年作。
134・V.A.:Wu-tang meets the indie culture vol.2 Enter the Dubstep:☆☆
   ライナーの解説によるとダブステップとは、イギリス発祥ガレージの一ジャンルだそう。
   なぜウータンの一軍レベルがこのオムニバスへ全面参加か、いまいち理由がわからない。
   リズムは打ち込み、全体にテンポは重たい。音数少なめ、じわっと迫る。
   ウータンのラップを楽しむには、ちょっと物足りないかも。
   全体的に単調な仕上がり。2枚組のボリュームだが、何曲か削って1枚に
   まとめても、すっきりしたのでは。

    これもウータン関連で、ゴーストフェースのソロ。04年作。
133・Ghostface Killah:Pretty Tony Collection vol.1:☆☆★
   良く素性がわからないリリース形式の盤だ。
   プロデュースはウータン一派のドレディ・クルーガー。
   からっとわかりやすいラップ。キャッチーなトラックがすいすい引き込んだ。
   シンプルで鮮やか、短めのサンプリング・ループが軽やかに回る。
   ギャングスタな凄みは緩め、スポーティで親しみやすさを増した気がする。
   いずれにせよ、クールなバック・トラックが楽しい。

   アフリカのパーカッション・ソロ。多重録音ありかな?95年にデュッセルドルフで録音。
132・Aja Addy:The Medicine Man:☆☆★
   ガーナの儀礼太鼓奏者で、本盤が2ndにあたるようだ。
   儀式向のドラミングが本来の活動だという。本盤はエンターテイメント性を
   意識してると思うが、基本はパーカッションのみ。ときおりポリリズミックに
   複数の太鼓が鳴り渡る。鋭いビート感とグルーヴが本盤の魅力。ただし
   どこまでも太鼓の音だけなため、万人には薦めがたい。
   トーキング・ドラムの絶妙な響きや、軽快に畳み掛けるリズムはかっこいい。
   ふとしたひととき、ボンヤリとこのリズムへ耳を任せるのは、すごく心地よいけれど。


2010年5月

2010/5/30   最近買ったCDをまとめて。

   先日買ったライブ盤が面白かったので。シリアの歌手。
   本盤は99年から08年に現地で発表したカセット音源からのコンピ。
131・Omar Souleyman:Dabke 2020:☆☆☆
   8曲で40分と短めなアルバム。ジャケットに写る様々なカセットからのコンピだが、ディスコグラフィー的な記述が無く、
   マニア心がもどかしい。せっかくなら、いろいろ書いて欲しかった。
   ちなみに彼のオフィシャルWebでは1996–present:Over 600 live and studio albumsと、そっけない自慢のコメントのみ。
   あまり時系の整理に興味ないのかな。
   サウンドは野太いシンセがやたら強調されたトラックに、しぶといボーカルが乗る、オマー一流のスタイル。
   安っぽい作りなのに、シンセの凄みがすさまじく、サイケな迫力が醸し出された。

   これもコンピ。97年から00年の音源を集めたようだ。
130・Omar Souleyman:Highway to Hassake:☆☆☆★
   とにかく強烈なグルーヴに圧倒される。本盤でも安っぽいシンセが飛び交うなか、
   ひたすらまくし立てるボーカルの凄みよ。個々の楽曲をどうこう言うほど、聴きこめてないが・・・

   詳細不明の3人組黒人ソウル。1981年のアルバムでボートラにシングルテイクを2曲。
129・Imagination:Body talk:
   イギリスのグループで、本盤が1stだった。タイトル曲が英4位のヒット。
   プロデュースはJolley & Swain。後にスパンダー・バレエ"トゥルー"を製作と知り、なんとなく納得。
   イントロがやたら長く、テンポがゆったりめアップなのはディスコ向ってこと?
   軽めの打ち込みバックは時代を感じさせるスマートさ。
   耳ざわりはいいけれど、さらっと聞き流してしまう。

   菊地成孔のラジオで聴いて、気持ちいいブルー・アイド・ソウルだな、と。
   基本は多重録音のようだ。09年の1stアルバム。
128・Mayer Hawthorne:A strange arrangement:☆☆☆☆
   70年代ソウルやモータウンなど、黒人音楽への愛情どっぷり。
   ソフト・ロック的な要素もある。アレンジはシンプルに、スネアを効かせてる。
   あとはハーモニーで分厚さとドリーミーさを出した。
   肝心の歌がさほど強烈じゃない弱さはあるけれど。サウンド作りは格別。
   今後が楽しみなミュージシャンだ。

   ラップ。詳細不明だが、なんとなくファンキーそうで買った。
   もともとプロデューサー・チームの一員で、本作が1stソロだ。
127・Shafiq:En'a*free*ka:☆☆☆☆★
   つかみどころ無いスペース・アフロ・ファンク。まだ、ぼくはこの音楽へ馴染めていない。
   しかし、かっこいい。ふわふわと漂うグルーヴ。打ち込みはきめ細かく、微細なビートが
   フレーズと絡み合う。単なるウタモノでも、ヒップホップでもない。
   二つが融合し、穏やかだがスリリングな音像を作った。
   たとえば70年代マーヴィン・ゲイの世界を今の技術で、より複雑に再構成したような。
   過去の文化とクールさをごちゃ混ぜにした。アイディアたっぷり。聴くほどに、じわじわと良さがしみこんでくる。

   小泉今日子の96年アルバム。菊地成孔がスタジオ・ミュージシャンとして参加。
126・小泉今日子:男の子女の子:☆☆
   サウンド・プロデュースは菅野洋子。親しみ安いチャイルド・ポップの線が狙いだろうか。
   単なるアイドル・ポップから一歩踏み込む、凝ったアレンジ。その一方で
   奇をてらった世界でもない。バランス感覚がきれいだ。小泉の歌は喉声でもどかしくも。
   ウィスパー・ボイス的なアプローチのメロディやアレンジじゃないため。
   この点が惜しい。作詞は全て小泉自身が担当し、キュートな世界観を提示した。
   全体的には、軽やかな仕上がりながら、あと一歩切れが欲しくもあり。
   歌詞カードのポートレートをピンボケにしたあたり、音楽を聴いて欲しかった小泉の主張かも。

2010/5/16    最近買ったCDをまとめて。

   レイクォンがソロ・デビュー盤の続編を出した。プロデューサーいっぱい、ゲストもいっぱい。09年盤。
125・Raekwon:Only built 4 Cuban Linx..PT II:☆☆☆★
   多数プロデューサーを入れた多彩さが、単なる豪華のみに終わってる。
   1stのヒリヒリ感はさすがに薄れ、余裕がちらつく。RZAのトラックはいまだに
   耳を惹くから、いっそプロデューサーを統一したらどうだろう。
   めまぐるしい展開だが、あまり切迫さを感じさせぬ一枚。

   マサダのBook2盤。これは今年発表、13作目。女性アカペラの4人編成。
124・John Zorn:Book Of Angels vol.13:Uzziel:☆☆
   歌声はユーモアを控えめ、即興も多分無し。カッチリ整ったハーモニー。
   全体的に穏やかなテンポで、クラシカルやクレツマー、童歌や賛美歌みたいに
   色んな要素を連想した。アカペラのアレンジはユニゾンからハーモニー、
   掛け合いと多彩。(7)は高円寺百景を思い出した。

   同じシリーズの14作目。DreamersとO'o編成の録音だそう。2010年発表。
123・Book Of Angels vol.14:Ipos:☆☆☆★
   ラウンジ的にうっとり漂うムードのなか、リボーのギターが力強く鳴る。
   ウールセンのバイブとの対比がきれいだ。バロンのドラムは静かに刻んだ。
   妙なる緩やかなゆらぎの美学。バプティスタのシェイカーが空気をふるわせた。

   ジスモンチが93年に発表のカルテット盤。
122・Egbert Gismonti Group:Musica de Sobrevivencia:☆☆☆★
   細かなフレーズの積み上げがすごい。どこまでも譜面化されていそうだ。
   アンサンブルのスリリングをどっぷり楽しめた。
   最期の30分越えのダイナミックな組曲も聴き応えいっぱい。
   シンセのさりげない響きが、音像に拡がりを出した。チェロはジャキス・モレレンバウムだ。

   ジョン・ゾーン関係のムック(?)を購入。イタリアで98年に発売された。
   ユージン・チャドボーンとのコンピがついている。
121・John Zorn & Eugene Chadbourne:1997-1981:☆☆☆
   予想以上に楽しめた。オマケで終わらすには惜しい音源だ。
   単音が無造作に続く即興。オフサイト的音響な即興アプローチにも通じるものがあって
   興味深かった。もちろん吹き鳴らす場面も多いが、むしろ静寂を志向の要素が強いサウンドが新鮮。
   互いの即興は寄り添わぬようで、さりげなく対話を続ける。
   ブルージーでノイジーな(3)もかっこいい。最後の曲はカットアップ。ある意味、
   ジョン・ゾーンらしい展開だな。

   シリアのミュージシャンで、向こうではヒット歌手らしい。
   95年から09年の録音をまとめたコンピ。
120・Omar Souleyman:Jazeera Nights:☆☆☆★
   ダンサブルさと奇妙なハイテンションが交錯する音楽。
   錐揉みする安っぽいシンセのリフに、まくし立てる男のラップともつかぬ語り。
   不思議な求心力があるサウンドだ。だんだん酩酊気分になってくる。
   ライブ音源集らしいが、あまり臨場感無くスタジオ録音な感じ。
   ちなみにボーカルのオマー・スレイマンはボーカルのみ。基本のサウンドは全て
   リジャン・サイードが譚tの牛輝。歌詞もムハンマド・ハービ、らのクレジットが。
   オマー・スレイマンのカリスマ性をバックが支える、の格好かな。

   Nullが98年にアメリカでリリースした500枚限定のアルバム。
119・Null:Inorganic Orgasm:☆☆
   鈍く緩やかなエレクトリック・ドローン。煌びやかなノイズを取り混ぜ、 
   決して低音ハーシュ一辺倒に陥らないのがNullの個性か。
   展開は比較的緩やか。でも、刺激は残る。

   ピーター・ブロッツマンほかが68年に吹き込んだフリー、かな。
   他のメンバーはエヴァン・パーカー、ペ-ター・コワルド、ハン・ベニンクら。
118・The Peter Brotzmann Octet:Machine Gun:☆★
   分離悪い録音で強烈なフリーをぶちかます。テンション一発、豪快な炸裂が
   幾度も発生した。これはライブで聴きたい音楽。
   それぞれのテイクを無造作に収録してる。ツイン・ドラム、ツイン・ベース編成の
   リズムはざくざく尖って突き刺さる。サックスの咆哮が絡み合った。
   ときおりテーマめいた部分が繰り返される点からも、まったくのフリーではない。
   ソロ回しや展開は、それなりに構築されてそう。
   かっちりと分離いい音で聴いたら、また印象が変わりそうだ。

   ゾーン、ベイリー、ジョージ・ルイスが92年に収録盤。今まで聴きそびれてた。
117・Derek Bailey,George Lewis,John Zorn:Yankees:☆☆★
   瞬発的な即興が詰まった。ジョン・ゾーンはマウスピース奏法なのか
   細切れな響きも多用。ずりずりと盛り上がりは平坦に、即興が漂う。
   ときおり現れる金属質な音像が心地よい。

   スクラッチ系のヒップホップ?日本のユニット。08年作。
116・DJ Takuro:Arcoiris:☆☆☆★
   軽快なテクノでありヒップホップ。前のめりのビートは繰り返しを基調と
   しつつも、常にバラエティを持っている。ポップでほんのりユニークな
   ダンス・ミュージック。これは楽しい。

   イギリスのテクノだろうか。詳細不明。02年の盤。
115・Capitol K:Island Row:☆☆
   キャピトル・Kはクリスチャン・ロビンソンのソロ・プロジェクト。
   99年にデビューし、本作が2ndにあたる。この盤は内容を一部買え、XLレーベルから
   リイシューした盤のようだ。エレクトロニカが中心だが、ウタモノもあり。
   ダンサブルでありつつリズムに巻かれず、ときおりノイジーな色も混ぜる。
   つかみどころないリズムと展開が楽しい。

2010/5/2   ネットで注文してたCDが到着。

   過去、メルツバウがさまざまなコンピに提供していた音源をまとめた
   3枚組。ようやく入手した。これらのコンピはあんがい手に入りづらく嬉しい。
114・Merzbow:Another Merzbow records:

2010/05/01   最近買ったCDをまとめて。

   持ってたけど、手放しちゃって買いなおし。
   植村率いるバンドのCDでは唯一のフルアルバム、95年作。
113・P.O.N.:P.O.N.:

   初めて聴く。バンド・メンバーで今堀が、ゲストで3曲、菊地成孔が参加。88年の録音。
112・橋本一子:High Excentrique:☆☆☆
   クール!ジャズを基調に、凛と張り詰めたサウンドの美学を次々にたたきつけた。
   80年代的な硬いリズムと、アグレッシブな打ち込みは単純にかっこいい。
   アルバム全体はこじんまりまとまった印象ある一方で、個々の楽曲は素晴らしい。
   ディストーション・ギター一発で引っ張るところ、懐かしいな。

   良く知らない。黒人ヒップホップ。ゲストがどっさりで、ラッパーが色々参加。06年作。
   P.Diddyの改名1stで全米1位、70万枚のヒットとwikiにはある。
111・Diddy:Press play:☆☆
   エレクトロ色が強いヒップホップ。ラップは小気味良い一方で、
   ピコピコすかすかなトラックのアレンジにもどかしさも。好みの問題だが。
   パーティ・ラップほど軽くは無い。その点、聴き応えはある。

   前に聴いたことあったかな。4人組のハードコア・ラッパーの93年デビュー作。
110・Onyx:Bacdafucup:

   詳細不明。黒人デュオで99年の作品。ほかにもアルバムをリリースしてるようだ。
109・Organiz':Preview:☆☆★
   ウタものソウル。デュオ形式ながら、さほどコーラスの掛け合いを主眼に
   置いてなさそう。涼しげな打ち込みアレンジで爽やかさを狙いつつ、ギャングスタ的な凄みもあり。
   メロディは悪くないが、どの曲も似たような単調さあり
   どっちかといえば、ベタな旋律。(7)を筆頭に、ときおり野太く歌声が吼える。
   ゴスペル的な盛り上がりもけっこう楽しい。速弾エレキギターが流れるのも珍しいアレンジ。
   ストーンズの"Miss you"を加工曲やラップにも行き、最期はバラードでしめた。
   最もキャッチーなのは(2)。バラードなら(13)かな。

   彼らの1st、83年のリリース。全英1位獲得だそう。
108・Tears for fears:The hurting:☆☆☆★
   TFFのイメージが変わった。爽快さを持ったアルバム。どこか沈鬱な
   ムードはあるものの、メロディやアレンジの端々に明るさを感じた。
   キャッチーな旋律を、撫ぜるように歌うさまは単純に気持ちいい。
   どたばたするドラムは時代を感じるが、やむをえない。ミックスも
   のぺっとした印象なのは、聴いてるステレオ環境のせいか。
   
   ダイアナ妃のトリビュート盤で、有名ミュージシャンがずらり。なぜか
   エルトン・ジョンは不参加。この盤のための音源も幾つかある。
107・V.A.:Diana Tribute:☆★
   大味だが、米英豪のベテラン・ミュージシャン集として聴けばいいか。
   一枚に英豪米が混ざり、今一つ選曲ポリシーが見えない。でもまあ、個々の楽曲は
   練られたプロダクションだし、本盤で初出の音源もいろいろある。機会あれば聴いてみてもいいのでは。


2010年4月

2010/4/25   最近買ったCDをまとめて。

    ロバートとトバイアス兄弟のバンド、サーカス・デヴィルズの新譜。
106・Circus Devils:Mother Skinny:☆☆☆☆
   本作でも、とても練られたアレンジでサイケな小品が詰め込まれた。
   ボブのソロとは違った、つかみどころ無いとっちらかりぶりが楽しい。
   エコーで厚みを出しつつ、かなり多重録音してそう。
   楽曲によっては超高音の音域も巧みにアレンジへ使ってる気がした。

   ソウル+カリプソ=ソカで有名な、アロウのアルバム。89年にアイランドから発売。
   彼の音楽、久しぶりに聴くな。
105・ARROW::O'LA SOCA:☆☆☆
   "ヘイ、ポッキーウェイ"のカバーあり。どの曲もすこーんと明るい
   ノリで楽しめる。首をかしげるのは、ドラムだけ打ち込みなこと。せっかくなら
   ドラムも生演奏なら、よりリズムに厚みが増したのでは。ほかが全て、パーカッションも
   含めて生演奏なだけに。軽快で熱いホーンを筆頭に、のめりこむグルーヴ。

   Charaのシングルで持ってなかったのを、まとめて数枚購入。これは20枚目の
   シングルで、00年発売。タイトル曲はTVドラマ『リミット もしもわが子が…』主題歌。
104・Chara:月と甘い涙(single):☆☆
   ずしんと重たいバラード気味の曲。ダイナミックに音像が動く。サビの
   空気感がCharaの良さでてる。アコースティック版の併収は、フォークな軽やかさが楽しい。

   00年発売、21枚目のシングル。タイトル曲は午後の紅茶のCM曲。
103・Chara:大切をきずくもの(single):☆☆☆
   タイトル曲はしなやかなcharaらしいバラード。演奏も音数が少なくてきれいだ。
   カップリング曲のリミックスは、やけに高音域を強調した。ふらふらと揺れる。ちょっと単調かな。

   01年、23枚目のシングル。タイトル曲はポカリのCM曲。併収"あいしたいの"は
   当時のアルバムに未収録・・・かな?
102・Chara:スカート(single):☆☆
   Ivyのアンディ・チェイスとスマパンのジェイムズ・イハが録音へ全面参加、が売りか。
   タイトル曲はちょっと押しが強めのミディアム・ロック。個人的にアレンジが重たすぎる。
   むしろカップリング曲のグネグネうねる節回しが、デビュー当時のcharaを連想して楽しい。
   キーボードがぬめるようにまとわりつく、カップリング曲のアレンジも好みだ。

   99年、テイ・トウワのシングル。リミックスやカラオケも収録。
101・Towa Tei feat.Chara:Let me know:☆☆
   トラックのアレンジを次々替え、耳触りの良いムードを作った。ギミックたっぷりな
   CHARAの歌は魅力的だが、逆にサウンドのスムーズさに引っ張られてる。
   ボーカル・トラックは単一だけ?いっそ、アレンジごとに歌いかえるくらい
   アプローチを試みたら、面白いサウンドになったのでは。

   00年にBrilliantから発売の10枚組ボックス。さまざまなピアニストで収録した
   ハイドンのピアノソナタ全集。番号順の収録じゃないのがポイントか。
100・V.A.:Haydn piano sonats complete:

2010/4/18   最近買ったCDをまとめて。

   元GbVのロバート率いる、ボストン・スペースシップ新作EP。
99・Boston Spaceships:Camera found the ray gan:☆☆☆
   がっつりサイケな曲が詰まった。ボーカルにも深いエコーをかけ、ごろごろと転がす。
   ロバートのソロとは違った一体感あり。ロバートのワンマンバンドと思っていたが。
   途中で大胆にテンポを変える、投げっぱなしジャーマンな作曲ぶりも健在。

   メルツバウが参加したコンピで、日本とアメリカのノイジシャンを集めた
   2枚組。95年にアメリカのRelapse Recordsから発売。
98・V.A.:The Japanese /American Boise Treaty:☆☆
   ハーシュ・ドローンを中心のコンピ。まとめて聴いてると、頭がぼおっと
   して、けっこう楽しめた。ハーシュのさまざまなバリエーションが聴ける。

   相対性理論の新作、2ndアルバムが出た。
97・相対性理論:シンクロニシティーン:☆☆☆★
   一曲目から妙にズレたリズム感につんのめる。ぐっとアレンジは洗練され、きらびやかで穏やかなエレキギターを軸に
   すかっと抜けたムードを出した。酩酊するミニマリズムを漂わすボーカルが主体な
   不安定でさみしく焦燥と無謀さが同居する、からっと無神経。つまり、ごちゃまぜ。
   独特の世界観を、きゅっときれいに磨き上げた一枚。

   山下達郎の新作シングル。おまけに達郎宝くじがついていた。何があたるんだ。
96・山下達郎:希望という名の光(single):☆☆☆☆
   打ち込みビートがストリングスと淑やかに馴染んだ傑作。ベースのふくよかさ、
   バスドラの温かさが驚異的だ。生演奏と見まがう精妙さ。
   角が取れ、にじんだアナログ的な響きが美しい。バラードの穏やかな世界観を
   遂に達郎は、打ち込みで産み出した。カップリングのミドルテンポは、幾分デジタル的な
   鋭さを残してる。ぱあっと華やかな広がりは、しかしここでも健在。
   ここ最近の達郎のシングルは、デジタルを見事に操る手管でも聴きごたえたっぷり。

   大滝詠一の80~90年の提供曲や未LP収録曲を集めたコンピを、
   さらに曲を加えてリイシューされた。解説も追加。
95・大滝詠一:Eiichi Otaki Song Book I:☆☆☆★
   91年の提供曲コンピ集に数曲のボートラを足した本盤は、さらに充実の一方で
   アルバム一枚を聴きとおすには、少々大きすぎるような。演奏はともかく、
   歌は全員が上手いわけではないため。聴いてて少々めげてしまう。
   とはいえ大滝が歌わぬ楽曲で概観する、ロンバケ以降のナイアガラ史を概観には
   適したコンピなことは間違いない。今回はブックレット式の解説で読みやすいのもありがたい。
   しかしラッツ&スター"夢で逢えたら"は有難い反面、大滝プロダクションでなく少々浮いてしまう気も。

   弦楽四重奏の即興って編成が面白そうで購入。カリフォルニアで01年に録音。
94・Emergency String Quartet:Hill Music:☆☆
   メロディよりもピチカートや特殊演奏の比率が高い。即興で軋み音が絡み合う。
   音だけだと、ちょっとムードがわかりづらいか。硬質な印象を受けた。

   リック・ウェイクマンのソロで91年リリース。ボーカル入りのロック寄り作品。
93・Rick Wakeman:African Bach:☆☆
   基本はロック。だがプログレ・スタイルなのか、おそろしくリズム性が希薄。
   べたっと音楽が流れる。大仰さを楽しめるかが、本盤の評価の鍵。(5)みたいに朗々たる展開の
   ほうが、素直に聴けるかな。キーボードはあくまで伴奏のひとつ。
   さほどキーボードが前面に出ない。リックのソロの必然性はあるのかな。
   公式サイトの解題によると、本人は気に入った盤らしいが。

   こちらは92年のリックのソロ。ジム子からの日本盤を購入。アンビエントかな?
92・Rick Wakeman:The Classical Connection:☆☆☆★
   楽しめた。ころころと回るリックの演奏と、何曲かではいるベースとの
   きれいなアンサンブル。ただ、これはmidiピアノかな?音数を減らしてもかまわない、
   生ピアノでじっくり聴いてみたかった。どうも響きが中途半端。
   なまじ楽しめそうな音楽だけに残念。それにしても1stの曲をこの時代でも丁寧にカバーしてるな。
   アンビエントじゃなく、ときおりホンキートンク的なピアノ演奏主体の作品。

   坂本龍一の映画音楽。05年に発売された。
91・坂本龍一:星になった少年:☆☆☆★
   しっとりと滴るメロディがストリングス、打ち込み、ピアノと楽器を変えて
   変奏される。ひとつのモチーフをさまざまに表現した、正に映画音楽的な一枚。
   しなやかな旋律は時にエキゾティックに鳴る。切なく柔らかなムードが心地よい。

   泉谷しげるらのバンド。楽器クレジットを無理やり漢字にして、読みづらい・・・。91年作。
90・下郎:下郎参上:☆☆
   曲タイトルほど歌詞では、江戸時代に固執してない。録音がちょっと軽く、もの足りず。
   がつんと低音を効かせてほしかった。曲調はカントリーからラウンジな味付けまで
   アコースティックを生かしたアレンジ。からっと聴くにはいいな。

   アルバムを通して聴いてなかった。キースのソロ。88年作。
89・Keith Richards:Talk is cheap:☆☆☆★
   バラエティ豊かで寛いだ展開。それでいてゴージャス。かといって
   ストーンズほどけれんみは無い。寛いで好きなように作ったような気がする。
   一方でミュージシャンは豪華、演奏がっちりだから隙が無い。
   ドラムのやたら硬い音色が時代だな・・・。
   あらためて、キースのボーカリストとしての振り幅に気がついた。
   決して声が出るタイプではないが、かすれ声から細い声まで使い分けている。

   92年作のキースのソロ。初めて聴く。
88・Keith Richards:Main Offender:☆☆☆
   ワディ・ワクテルを軸にバンドらしさを前面に出した。骨太でブルージーな
   楽曲だが、キース独特のか細い歌声で不安定な魅力を作った。
   作品として統一感あり。しかし参加メンバーがドラムやベースを
   弾き分ける多彩さが意外。あえて別ミュージシャンを呼ばず、
   限られたメンバーで楽器交換したのも、バンドっぽさを狙ったか。

   リストのピアノ独奏曲「巡礼の年」を二枚組で収めた。03年の発売で、
   録音は62年と70年のようだ。演奏はイタリアのチッコリーニ。
87・Aldo Ciccolini:Liszt:Années de Pèlerinage:☆☆☆
   62年の録音に"ヴェネツィアとナポリ(巡礼の年第2年補遺)"を追加で70年に吹き込み。
   "巡礼の年"完全版の二枚組に仕立てた。冒頭のキャッチーで饒舌な作品から、
   音数が落ち着いて、しっとりと老成さへ向かうリストの作風推移を
   たっぷり聴ける。音のタッチは意外に尖って感じた。ふっくらとしつつ、どこか硬い。
   へんに甘く無い分、美しさを凝縮してるかも。
   録音レベルが低めなため、ガツンとボリュームを上げて聴きたい。

   良くわからないコンピだが、面白そうなので購入。めったに演奏されない
   ピアノ曲を集めたって盤かな?02年の録音。プロコフィエフ、ヴィラ=ロボス、
   サン=サーンスあたりは名前を知ってる。さまざまなピアニストが参加「フーズム城音楽祭」でのライブ。
86・V.A.:Rarities of Piano Music 2002:☆☆☆
   ロマンティックな曲が多く、前衛的な感じはさほど無い。メロディよりも
   抽象的さを狙った感がなんとなくするけれど。でも、なぜほとんど演奏されない
   楽曲か、わからないきれいな曲も色々。クラシックの奥深さに触れられる
   良質のコンピだと思う。どうせ、有名曲もぼくは知らないから、無名でもあまり関係ない。

   武満徹の"ノヴェンバー・ステップス"を2種。これは若杉弘が東京都交響楽団と
   91年に録音した。盤は02年の再発。同時収録は武満の"ヴィジョンズ"。
85・若杉弘:武満徹作品集:ノヴェンバー・ステップス、他:☆☆☆
   空気がブワっと膨らむ「弦楽のためのレクイエム」が素晴らしい。
   「ノヴェンバー・ステップス」は録音のせいか、渋い響きが印象に残った。
   どの曲も奥行きと深さがいっぱいの、静謐な美学に包まれている。
   穏やかな落ち着きが音楽全体から、漂う。

   この"ノヴェンバー・ステップス"は小澤征爾が91年に吹き込んだ盤。
   本音源は持ってたなあ。96年録音の"エア"とかを同時収録した97年の再発盤。
84・小澤征爾:武満徹:レクイエム:☆☆★
   細密でパーカッシブなイメージ。オケの怒涛の奔流が、勇ましく濃密に迫ってくる。
   録音がなんだか凝縮とこじんまりの間の感じ。いいセットで、轟音で聴いたらまた印象変わりそう。
   その一方で、静かな場面で空気がそおっと広がる響きは、とてもきれいだ。  

   詳細不明の黒人女性シンガー。なんとなく買った。04年作。
83・Malia:Echoes of dreams:
   ほんのりハスキーな歌い声。味わいありそうで、ちょっと大味。
   基本は生演奏だが、ドラムだけ打ち込みなのはなぜだ。生っぽいアレンジの
   ドラミングだから、いっそ全て生のほうがよかった。
   歌詞を全て自作、作曲はプロデューサーに任せてる。
   (3)がけっこう耳ざわりのいい曲。どの曲もただ、いまひとつツメが甘い。

   これもジャケ買いの白人女性シンガー。02年作。
82・Rebecca Lynn Howard:Forgive:
   ロックなアレンジの曲もあるが、フィドルの入ったモロにカントリーな
   アレンジのほうが馴染めた。ほんのりと活発な影の無いC/Wが楽しめる。
   舌を曲げた威勢のいい歌い方。カントリーはほとんど聴いたこと無いので、
   牧歌的な世界感が妙に新鮮だった。根本的に深みや苦悩とは違うベクトルか。
   あっさりしたヘヴィメタ、と感じてしまった。

   詳細不明の二人組黒人ラッパー98年作。
81・M.O.P:First family 4 life:☆☆★
   テンション高く押し寄せるパワフルさが聴きもののギャングスタ・ラップ。
   "アイ・オブ・ザ・タイガー"のフレーズを執拗に繰り返す(3)の凄みがかっこいいな。
   ほかの曲も、サンプリングのネタ使いが派手。聴きやすく、痛快な汗まみれのラップ。

   これもラップかな?黒人少年デュオ。89年作。
80・Twin Hype:Twin Hype:☆★
   NYのキッズ・ラップだがあどけなさよりハードなムードを漂わす。
   リズム・ボックスの弾ける軽快なビートが特徴か。トラックの作りが
   クールで鮮やか。隙間多いテクノ・アレンジでリズムを楽しめるラップ。

2010/4/6   最近買ったCDをまとめて。

   ウータンのメスとゴーストフェースに、レイクォンによるユニットの1st。
   新譜。プロデュースはRZAが一曲、あとはマセマティクスやウータンゆかりの顔ぶれかな。
79・Meth,Ghost and RAE:Wu Massacre:☆☆☆★
   30分強と、ミニアルバムくらいのボリューム。
   アメコミ風ジャケットとあいまり、不穏さがデフォルメされコミカルなムードも。
   キャッチーなリフを豊富に組み込み、しなやかなグルーヴは聴いてて楽しい。
   ラッパーもくるくる変わり、プロデュースも多彩。録音場所がむしろ、36チェンバーズ・スタジオを多用した。
   本作の録音時期やきっかけが不明だが、ウーの多彩な人脈を強調しつつ、若手へ
   機会を与えたオムニバス的な位置づけな気がする。単純に聴く上での統一性は整えられ、
   聴いてて妙な違和感は無い。一連のウー軍団作品を俯瞰したときに、代表作とは言いがたい。
   けれどもできばえはけっこう楽しい一枚。

   待望の新譜で4th。ライブへ行ってないので、全てが初めて聴く曲だが、
   おそらくライブで練り上げたレパートリーではなかろうか。
78・ERA:忘れられた舟:☆☆☆☆
   壷井が5曲、鬼怒が5曲とフラットな構成。安定感ある仕上がりで、滑らかで
   ほんのりトラッドやカントリーの香りを漂わせつつ、疾走する。
   一発録音に収まらぬ丁寧な仕事も嬉しい。充実した傑作。

   BECKが製作に全面協力した新譜。聴いてみたかった。
77・Charlotte Gainsbourg:IRM:☆☆☆
   コケティッシュなウィスパーの魅力を、ベックのとっ散らかったアレンジが
   ユニークに支えた。個々の楽曲に個性あり、アルバム通した印象より
   コンピ的な聴き方をしてしまう。ぱっと聞き流す中に、細かなアレンジの技あり。

   後にチェスナット・ブラザーズとして再出発する彼らが、93年にNYの
   インディ・レーベルから発表した一枚。
76・Brotherly Love:Brotherly Love:☆★
   耳ざわりはいいけれど、いまひとつ煮え切らない。聴き覚えある別の曲を
   コラージュのように混ぜてる。ちょっとピントがボケた作品。バラードは
   ゆったり気持ちいいのに。アップは打ち込みのリズムの音色が古めかしく上滑りする。

   ヒュー・パジャムがプロデュースしたポールの86年作。CDで持ってなく、購入。
75・Paul MaCartney:Press to play:☆☆☆
   個々の楽曲クレジットが無く残念。フィル・コリンズやピート・タウンゼントも参加。
   サックスはレニー・ピケッツだ。(5)の弦アレンジはトニー・ヴィスコンティ。
   どんちゃかなドラムながら、感触は甘め。ロックンロールもポップの皮で包み、
   聴きやすく仕上げた。ほとんどの曲をエリック・スチュワートと協作。
   その関係で、こんな仕上がりなのかな。しかしヒュー・パジャムのミックスは
   今聴くと、妙に軽い。アルバムは最初にか細く始まり、だんだん野太さを増す。
   ポップなアルバムにもかかわらず、1stシングルがちょっと奇妙な"Press"ってのが面白い。

   クーリオが97年にリリースしたアルバム。
74・Coolio:My soul:☆☆★
   聴きやすいパーティ・ラップ。淡々と音程が一定で、ちょっと単調だけど
   リズミカルなトラックは、シンプルに楽しめた。(4)のコーラスで
   ドラマティクスのクレジットがあって、意外。
   基本はどの曲もラップだが、ウタモノ的な要素を漂わす。

   カリフォルニアのロックバンド、カウンティング・クロウズの3rdで99年作。
   なんとなく、買ってみた。当時、全米8位のプラチナ・アルバムだそう。
73・Counting Crows:This Desert Life:☆☆
   ジャム・バンドなスケール感のアメリカン・ロック。実際にWebでは彼らの
   ライブ音源も公式に色々と売っている。ほんのり塩辛く、埃っぽいムード。
   メロディは開放的で、アンサンブルも多層的。気楽に聴けて、味わい深い。
   ほんのりとカントリー・タッチで、伸びやかなムードが良い。

   復活したホール&オーツが97年に発売のアルバム。エグゼクティブ・プロデューサーは
   ダリル・ホール本人だったとは。
72・Hall & Oats:Marigold sky:☆☆
   思ったよりホール&オーツ節のきれいなメロディの曲が詰まった盤。
   無念なのはアレンジ・センス。どすどす鳴るリズムがどうにも馴染めない。
   妙に分厚くシンセで埋め尽くすところも。だから(7)みたいな曲のほうが
   まだ素直に聴けた。伸びやかなボーカルも含めて、ダリル・ホールがきれいにまとめた。
   (8)がとても良い曲。(9)もいいな。

   デイヴィッド・リー・ロスの91年ソロ3rd。スティーヴ・ヴァイが抜けて
   あまり興味なく、聴きそびれてた。全米18位まで上がったとある。
71・David Lee Roth:A little ain't enough:
   スピード感がもの足りず。親しみやすいハード・ロック狙いか。ロスのシャウトは
   がっつりだし、アンサンブルもこじんまりまとまってるが、最初のバンドみたいな
   破天荒さやつきぬけっぷりが無い分、地味。あんまり頭使わず、楽しむのか。
   ブルージーさを狙ったのかも。ある意味、アメリカンな展開。
   キーボードを含め、アンサンブルは厚みを増した。ドラムの派手な響きは、時代だなあ。

   黒人女性4人組のユニット。詳細不明。95年のリリースだ。
70・Vybe:Vybe:
   曲が妙に野暮ったい・・・。全体的に重たい印象だ。静かなBGM向けかな。
   スティーヴィー・ワンダーの"Knocks Me Off My Feet"も、シンプルなカバー。
   コーラスを入れず独唱で意味不明。せっかく4人組なのに。


2010年3月

2010/3/27    最近買ったCDをまとめて。

   新譜。渋さ知らズの最新作は、スタジオ録音で新曲ずらり。最近のライブは行きそびれており、
   どれもこれも新鮮。初回DVDつき。
69・渋さ知らズ:渋谷旅:

   ケラがポニーキャニオン時代にリリースしたソロ名義作。作曲が井上大輔、作詞が秋元康。
   どっぷり歌謡曲の世界で、なんで作ったか良くわからない盤だった。初めて聴く。88年作。
68・ケラ:原色:
   なんというか、スナックでカラオケを聴いてる気分になった。ケラが真正面から
   歌謡曲にアタックした、って挑戦性とは違うベクトルだ。
   歌い節のそこかしこに現れるケラ節が、かすかな個性となって残った。
   あえて一曲選ぶなら、「テレビのボリュームを下げてくれ」かなあ。この曲だけは
   シャウトや歌の符割を聴いてて、ちょっと個性を感じた。

   買いなおし。有頂天解散後、ケラが作ったユニットの1stフル・アルバムで92年初。
67・Long Vacation:Long Vacations Pop:☆☆
   有頂天の破天荒さを和らげ、よりポップに軸足を置いた一枚。今聴いても軽い。
   古きよきヨーロピアン・ポップスの色合いが漂う。でもマニアックにのめりこまない。
   ドラム、特にシンバルのシャキシャキした響きがきれいだ。
   オリジナル曲では、(10)が好き。

   94年リリースの3rd。これは初めて聴く。
66・Long Vacation:Sunshine note:☆☆☆★
   優雅なトロピカル風味。フランス録音だがミュージシャンは日本人ばかり。弦音色は全てシンセかな?
   ゆったり滑らかな抒情は、情緒を抑え乾いたポップさを出した。ホーン隊はせっかくなら
   フランス人を起用してほしかった。雰囲気はわずかに欧州の多国籍さが漂うものの
   どこかペタッと粘る湿気も漂う。
   改めてロング・バケーションを聴くと、パンキッシュな青臭さを抜いて真正面から
   ポップスに向かい合ったユニットなんだな、と思う。ケラの捻った歌詞も、おそらくは抽象や
   不条理でなく、親しみの表出かも。なにせひときわポップな(4)がケラの自作だ。
   あわよくばケラのボーカルにもっとエコーを足してれば。このドライな音使いが狙いか。
   相当に不安定なピッチの歌声が、寂しげな危うさを演出した。

   これから意識的に、"November Steps"のさまざまな演奏を聴いてみようか、と
   ふと思った。たまたまCD屋においてあったのがこの盤。
   小澤征爾が89年にサイトウ・キネン・オーケストラと改めて吹き込んだ。
   同時収録は"エクリプス"と"ア・ストリング・アラウンド・オータム"で、94年のフィリップス/邦盤を購入。
65・小澤征爾:武満徹/November Steps:☆☆★
   曲をまだ覚えておらず、きちんと聴き込めないのが正直なところ。
   玄妙な響きへ耳を任せているうちに曲が進む。特に続く"エクリプス"も同様の
   琵琶と尺八が参加してるだけに。"ア・ストリング・アラウンド・オータム"は
   ビオラのコンチェルト。もやのかかった不可思議な世界感がきれいだ。

   モーツァルトのディヴェルティメントを聴きたくなった。一枚買う。
   82年の独グラモフォン盤で、有名曲のKV.287とKV.525を収録した。
   ベルリンフィルをカラヤンが指揮。
64・Karajan:Mozart/Eine Kleine Nachtmusik:☆☆★
   もちろん、曲はきれい。耳馴染みある曲だけに、すんなりメロディが耳へ入ってくる。
   しかし演奏がきれい過ぎる。破綻無く淡々と進むかのよう。
   多少毒があっても、癖のあるほうが好みだ、とちょっと考える。

   モーツァルトのピアノ曲を聴きたいな、と買う。
   エッシェンバッハとフランツのピアノ・デュオによる72年~75年の録音を収めた、
   2枚組の独グラモフォン盤。K.9d,K.381(123a),K.358(186c),K.501,K.448(375a),
      K.497,K.594,K.521,K.608が入ってる。
63・Eschenbach/Frantz:Mozart/Music for piano duet:☆☆★
   あまりに滑らかに耳へ滑り込む音色。ときおり、ぽおんと強く凛々しく鳴るピアノが心地よい。
   丁寧でふっくらとエコーがかかった録音は、ゆったりと音楽を楽しめる。
   楽曲の珍しさは良くわからない。ピアノ二重奏の絡み合う膨らみが楽しい。

   聴きそびれてました。細野と高橋のユニット、02年作。
62・Sketch Show:Audio Sponge:☆☆☆★
   YMOの"BGM"あたりの味わいを巧みにミニマルでアンビエントなテクノへ混ぜ込んだ印象。
   細かな音使いを立体的に配置する、ミキシングのセンスにまずやられた。
   ボーカルのミックスが、ちょっと奥まってるかな。せっかくだから
   "ごきげんいかが"のカバーは、思い切りギャグに走ってほしかった。
   どことなく、気軽で軽やかな印象を感じた作品。

   "Auto & Cherokee"(1992)の片割れ、黒人女性歌手が99年に出した1stソロ。ジャケ買い。
61・Cherokee:I Love you...me:☆☆
   打ち込みと生演奏を混ぜたクールなソウル。ささやき系を基調に、薄暗く
   滑らかな色気を漂わす。ほんのりレゲエに通じる響きを感じた。
   強烈な個性を出さぬためBGMに似合うが、けっこう楽しめた。

2010/3/12   注文してたCDが到着。

   ロバート・ポラードの新譜が出た。17曲入り、40分程度。
   プロデュースはいつものトッド・トバイアス。
60・Robert Pollard:We all got out of the army:☆☆☆
   基本はバンド・スタイルのパワー・ポップ。どたばたしたドラミングが妙なグルーヴを作ってる。
   ベースが的確でかっこいいリフを入れる場面がいくつもあった。
   シンプルなアレンジながら、ベースががっちり締めている。
   全体的にか細い、ドンシャリなマスタリングと感じた。
   ロバートのメロディは、比較的洗練された曲が多い。(3)の切ない感じがいいな。

2010/3/11   今日買ったCD。なんとなくヘビメタを聴きたい気分。
       このジャンルは無知なので、ジャケットで適当に選んでみた。

   北欧のハード・ポップ、らしい。声とギターのデュオ・アルバム。92年作。
   バッハやヘンデルのメロディも取り入れてるようだ。
59・XT:XT:
   元気よくハイトーンを響かすパワー・ポップ。ギターが歪んでいまいち大味。
   丁寧なポップスにアレンジしたら、気持ちよさそうなメロディもあるのに。
   聴いてて、正直くたびれてくる。

   イタリアのシンフォニック・ヘビメタかな。本盤は2ndで02年作。
58・Shadows of steel:Second floor:☆☆
   ツインギターのせわしない刻み。ドラムはツーバスながら、むしろ軽やかだ。
   オペラティックなハーモニーとの絡みで、妙にポップ。華やかなキーボードの
   せいかも。メロディが大味だけど、けっこう楽しめた。

   これもイタリアのシンフォニック・メタル。00年作の4th。
57・Rhapsody:Dawn of victory:
   単なる力押しじゃなく、バイオリン風の音色を混ぜたりスケール大きな
   クラシカルのムードも。滑らかなボーカルとあいまって、聴きやすいヘビメタ。
   ジャケット写真のアニメ的な雰囲気と、けっこう合ってるかも。
   メロディもえらく滑らか。オペラ的な志向もありそう。

   ドイツのバンドで1st、92年録音。
56・Embargo:Panem et circenses:
   煌めくギターリフの畳みかけがトレードマークか。メロディはポップだが、
   色合いがいまひとつ物足りない。妙に軽やかなところあり。

   北欧のバンドで、98年のセカンド。
55・Midnight Sun:Above & Beyond:
   時に大味なポップさを見せる。ガシガシにハードに押すか、もっとゆったり
   滑らかな路線を目指すか。アルバム全体としては、中途半端な仕上がりな印象。

   今日買ったバンドで、唯一名前は知ってる。00年のベスト盤。
54・White Snake:The best of...20th Century masters the millenium collection:☆☆
   "SLIDE IT IN"(1984),"WHITESNAKE"(1987),"SLIP OF THE TONGUE"(1989)の3枚から収録した。
   予想以上にポップだった。シングルヒット曲を筆頭に、隠し味のようなキーボードが
   アレンジに味を加える。基本は派手なエレキギターのリフ。爽快で音圧が
   熱いロックは、ブルージーさが無くストレートにつっこむ。
   キャッチーな(1)、前のめりな(7)あたりが気に入った。

2010/3/6   最近買ったCDをまとめて。良く知らないまま買った盤ばかり。

   セネガルのユッスー・ンドゥール、00年の盤。ぼくは聴き漏らしてたはず。
   ゲストにスティングやピーター・ガブリエル、ワイクリフ・ジーンらが参加。
53・Youssou N'dour:JOKO from village to town:☆☆☆★
   ポップさとトーキング・ドラムのグルーヴを上手く組み合わせたアルバム。
   派手さは無いが、しっとりした流れを心地よく聴けた。

   微弱音響系、かな。Bject名義で大蔵雅彦, 秋山徹次, ユタカワサキが
   04年にアメリカのレーベルから発売した。
52・Bject:Object 4:☆☆★
   うねりが静かに続く。断続的な電子音は無造作に、小さなノイズと絡んだ。
   緊迫感は保ちつつ、どこかリラックスした響きも。ボリュームを上げると、
   音の厚みが増す。メロディは無い。ノービートの単発即興がじくじくと続く。
   無音は避けつつ、繰り返しも避けた。しとやかなハーシュ。音楽が進むにつれ
   鋭い金属音も存在感を増した。そして最期は静かに、じわんと余韻が響いた。

   女性ゴスペル・コーラスのグループで、91年のP-Vine盤。1950年代に
   米スペシャリティから出た2枚のLP音源を2 in 1にしたようだ。
51・Dorothy Love Coates:The best of Dorothy Love Coates and the original gospel harmonettes:☆☆
   とにかくパワフルで枠をはずそうとするボーカルの力が印象に残る。
   曲がちょっと単調。本CD後半の曲だと、いくぶんソウル色が強まって素直に聴けた。

   Steve Piccoloはラウンジ・リザーズのメンバーだそう。リミキサーのGak Satoらと
   04年に作ったアルバム。どんな音楽だろう。
50・Steve Piccolo, Gak Sato, Luca Gemma:Expedition:☆☆★
   渋い。ビートルズの"A day in the life"のカバーあり。低音とベース演奏+SEや楽器で
   組み立てるサウンドスケープ的なウタモノ。ロックほど烈しくないが、
   ジャズ的な要素も薄い。かといって音響系に加速もしない。
   微妙な立ち位置だ。アレンジが多彩で、けっこう楽しめる。

   黒人シンガー、エリック・ベネイの1st。初めて聴く。96年発売。デビュー前のデュオ盤、前に持ってたな。
   ピンとこず、手放しちゃったけど。あの歌手が、エリック・ベネイだったとは。
49・Eric Benet:True To Myself:☆☆☆★
   ザップのロジャーがプロデュースで参加。しっとり滴る密室ソウルを 
   丁寧に築き上げた。ファルセットが艶かしい。一人多重コーラスもねっとりと。
   それでいてフリークスさは無く、聴きやすいポップスに仕上げてる。
   ゆるやかなグルーヴが心地よい。リズムの弾ける音色も、きれいだな。

   詳細不明。実験音楽のコンピらしい。アフリカから南米へ、ってタイトルに
   惹かれて買った。シリーズもので、本盤が10枚目。
48・V.A. : Southern Cones - Music Out of Africa and South America:
   いまひとつコンセプトがピンとこないコンピ。静かなノイズから、生演奏まで。
   一曲目のパーカッションが面白かったが、あとはちょっと聴いてて切なくなる。

   ボンバから98年に発売の盤を買った。オリジナルは97年の録音。
   クラシックからカンツォーネまで、実際にベネツィアの街並みで流れる音楽を
   フィールド・ワーク的に表現した楽曲集のようだ。
47・V.A.:新ヴェネツィア・ラ・フェスタ:☆☆☆★
   コンセプトが面白くて★をひとつ追加。ライブ演奏の臨場感が楽しい。
   店や街の生活ノイズをあえて混ぜ、カフェで実際に聴いてるようなムードを作り出す。
   これはむしろ、ヘッドホンとかで音楽世界に没入して聴きたい。その場にいる
   疑似体験を、よりくっきりと味わうために。
   演奏は耳馴染み多い曲が並ぶ。クラシックからポピュラーまで。
   即興やアレンジの妙味を聴かせるより、すんなりと音楽そのものを強調した。
   とはいえスピード感ある演奏は、聴いてて楽しい。聞き込む盤とは
   ちょっと性格違うが、ときおり耳にしたいアルバムだ。

   フリー・ジャズかな。ヨーロッパ出身女流ピアニストのトリオ。
   トニー・レヴィンの名があったが、ドラム担当で同姓同名の別人。95年の作品。
46・Sophia Domancich Trio:L'annee des treize lunes:☆★
   波打つようなグルーヴのピアノ・トリオ。はたくようにリズムが流れ、ピアノは
   淡々とメロディを紡ぐ。アップテンポでもクールさを保ったヨーロッパ・ジャズ。
   毒は無いがかすかに重たく引きずるさまに、魅力を感じた。

   ベテラン二人によるバイオリンとドラムのデュオ。1曲、ゲストで琴奏者も。09年盤。
45・Billy Bang/羽野昌二:Four Seasons: East Meets West:☆☆★
   軋みながら切り込むバイオリン、休み無く叩き続けるドラム。
   二人の即興が寄り添うでもなく、逆ベクトルでもなく。よじれつつ流れる。
   琴の入った3曲目をアクセントとして、緊迫感を常にまとった音楽。
   どこか余裕を感じるのは、バイオリンの飄々とした音色のせいか。

   フランスのヘビメタ・バンドらしい。本盤が3rdで04年発売。
44・Scarve:Irraodiant:☆☆★
   デス・ボイスに整然としたブラスト・ビートのデスメタル。4拍目の裏で
   きゅっとひねるリフが耳に残って面白かった。メカニカルなドラミングは
   ライブ感覚が皆無。あまり繰り返し聴きたいと思わないが、リフの工夫が楽しめた。
   ツイン・ボーカルの対比と歯切れのいいリフで突き進む(5)が爽快。


2010年2月

2010/2/28   最近買ったCDをまとめて。

   メルツバウの月刊日本の鳥シリーズ、最終CDまでを購入。
43・Merzbow:13 Japanese Birds vo.11:Shirasagi:☆☆☆★
   吼える電子音のループへドラムが突進む。ループが先の録音かな。
   もこもこの分離悪い中、シンバルが鋭く抜けた。うねる嵐の黒煙が吹きすさぶ。
   この盤でも曲によっては、バンド的なダイナミズムを感じた。

   12枚目はツバメがテーマ。ジャケットのデザインが象徴的できれい。
42・Merzbow:13 Japanese Birds vo.12:Tsubame:☆☆☆☆
   一曲目は轟音ドローンがうねりまくる。ドラムのメカニカルなソロを中央に
   置いた2曲目は、次第にアナログなノイズの海へ進んでゆく。
   最期の曲はアナログ的なノイズが濃密に散らばり続ける。終わった瞬間の空虚感がすごい。
   充実したハーシュ・ノイズな一枚。

   最終の13枚目は50分強1曲の大作を詰め込んだ。
41・Merzbow:13 Japanese Birds vo.13:Chabo: ☆☆☆☆★
   轟音ハーシュが吹き荒れる。メルツバウ独特の多層ノイズの噴出を
   たっぷり味わえる一枚。本シリーズの特徴である、生ドラム要素はさりげない。
   パワー・ノイズはさまざまに表情を変える。立ち止まることなく。
   うねりと暴風と炸裂を、ぎっしり詰め込んだ。

   メルツバウの09年発表作。録音は08年。ロシアのレーベルから発売。
40・Merzbow:Don't Steal My Coat:☆☆☆
   本作でもドラムと電子ハーシュの嵐を表現した。軋む鋭い鉄の音が痛快。
   強烈に加工されたボイス風の音色がスリリングだった。全体的にのっぺりした沈鬱さあり。

   メルツバウが参加したコンピ盤の2枚組。オランダのギャラリーLokaal 01が
   主催した。2007年と2008年の作品で、限定250部で2010年リリースらしい。
39・V.A.:Geluidpost:☆☆
   アート目線の電子音楽やコラージュで、いわゆるノイズとは違うベクトルの作品を集めた。
   意外と退屈なものが多い。インスタレーションとして聴くべきものか。
   メルツバウはラップトップの波形編集と思しきハーシュを、力いっぱいぶちかます。
   剛腕まっしぐらでストレートなノイズ。アナログシンセが高らかに鳴った。
   コンピだが2枚組で各人10分程度の収録時間。だがメルツバウは短めで9分弱の尺だ。

   ジャケ買い。ハウス系のソウルかな?詳細不明。95年の盤。
38・Earthling:Radar:
   アースリングはトリップ・ホップに分類される、イギリスのバンド。
   気だるく暗いテクノとラップが合わさった感じ。本盤が1stでwikiによると
   66位までチャートを上がった、とある。数曲でポーティスヘッドのジェフ・バーロウが参加。
   上っ面ですいすい流れていくようだ。薄暗いクラブでゆったり身体を動かしつつ
   聴くにはいいが、明るい部屋ではいまひとつ、のめり込めない。

   アカペラユニットのアルバム。けっこうカッチリしてそう。95年の盤。
37・Acappella:Beyond a doubt:☆☆
   上手い。ばっちり音程合い、べたっと張り付くようなハーモニーが楽しめる。
   もっと荒っぽさを求めてしまうのは、贅沢か・・・。
   バスのリズムはあまり強調しないが、ユニゾンや白玉を
   的確に使ったアレンジで、スピーディーに流れた。和音の使い方が
   爽快でかっこいい。4人でゴスペル・クワイアを表現してるように感じる部分も。
   でも、突出する勢いや破綻さが無くて、どうものめりこめない・・・。
   BGM用ほど、無個性なわけじゃないけれど。ドゥワップ風の(9)が個人的には好み。

2010/2/20   今度はクラシックを買ってきた。

   テレマン"食卓の音楽"の全曲集、4枚組。03年録音のブリリアント廉価盤。
36・Pieter-Jan Belder/Musica Amphion:Telemann: Tafelmusik Music de table(complete):☆☆☆★
   しゃっきりとメリハリ効いた演奏で、涼やかに奏でる。ときおりピッチが新鮮に響いた。
   手軽に味わうのに向いたボックス。はきはきした音楽が心地よい。

   マイケル・ナイマンが1944年に作曲した作品集、かな。ピアノ協奏曲や
   "On the fiddle","Prospero's book"を収録したオーケストラ作品。05年の盤。
35・Jonathan Carney/Royal Philharmonic Orchestra:Nyman:☆☆☆☆
   これは素晴らしい。
   雄大にして壮大。ミニマルな要素を織り込みつつ、滑らかで凛とした
   ムードが冒頭からいっぱいに広がった。どんどんボリュームを上げよう。
   大きな音の炸裂が、とにかく気持ちいい。降り注ぐピアノ、包み込むオーケストラ。
   視点は高く、奥深く広がった。極端な盛り上がりがなくても、のめりこむ。それがこのピアノ協奏曲。
   "On the fiddle"は滑らかなバイオリンの独奏がゆったり広がった。オケは密やかに
   煌めく風景を想像する。ふくよかな風景は時に、ドラマティックにはじけた。
   "Prospero's books"はオケ全体で畳み掛ける。ミニマルな要素がある一方で
   むせび泣くメロディの美しさにはまる。いつまでも幸せが続くかのように。

   武満徹の"ノヴェンバー・ステップス"他の作品集。67年~69年の録音で、それぞれ
   初演直後の吹き込み。小澤征爾が指揮のトロント交響楽団にて。ピアノで高橋悠二が
   1曲、参加した。1990年のRCA日本盤を購入。
34・武満徹:Takemitsu:Novemver Steps/OZAWA:☆☆☆☆★
   本盤にはさまざまな緊迫感と美学が封じ込められた。マスタリングが弱いので、
   思い切りボリュームを上げて聴きたい。
   玄妙なスリルがいっぱいの"ノヴェンバー・ステップス"。中間部でのっぺりと広がる
   和音の美しさにも惹かれた。寄り添いつつ、ピアノとオケが漂う"アステリズム"。
   弛緩を許さぬ音列が、ピアノとオケから溢れた。
   "グリーン"は立ち上る旋律が、大きくうねった。
   "弦楽のレクイエム"は、淡々と流れる薄暗き広い河のよう。
   最期に収められた"地平線のドーリア"は、不穏な軋みが滲み出す。
   弦の鋭い響きが、どの曲からも強烈に立ち上った。

   日本で活動する聖歌隊のグレゴリア聖歌のアルバム。94年の作品。
33・カペラ・グレゴリアーナ:Gregorian Chants & Motets:☆☆☆★
   グレゴリオ聖歌はモノフォニーと思い込んでいたが、荘厳なハーモニーが響く美しい調べだった。
   残響をたっぷり含み、のびのびと歌うようすが、耳へゆっくりと滑り込んでゆく。
   宗教的な思い入れを一切無しで聴いてるが、それでもこの音楽は厳粛で美しい。
   本盤の評価で言うと、もう少し各楽曲の解説や録音クレジットがあると嬉しかった。
   個々の楽曲よりも、全体を流れのように、のんびり聴いている。

2010/2/19   今日買ったCDをまとめて。全部、ジャケ買い。

   黒人ファンク・ジャズ集団、デファンクトのライブ盤で、90年の録音。
   あんまりデファンクトは聴いたこと無い。ファンキーだといいな。
32・Defankt:Live at the Knitting Factory:☆☆☆★
   個々のソロ回しより、全体の勢い爽快なファンクネスが魅力。
   エレキギターとドラム、ベースが生み出す歯切れいいビートが楽しい。
   あまり深いこと考えず、疾走する。こんなにボーカル要素多いとは思わなかった。

   ラップ・デュオ。98年リリースで、全米チャート38位のプラチナ・セールス、とある。
31・Lord Tariq & Peter Gunz:Make It Reign☆☆
   音数少なめにポップな展開で押す。凄みは一要素程度。曲によっては
   ノリが軽やかで楽しい。スティーリー・ダン"ペグ"をサンプリングしたシングル(8)が
   やはり、一番耳に残る。気楽にBGMで聴くにはいいアルバム。

   06年発売のラップ。NY出身で本盤が2nd。ゲストにバスタ・ライムズ、
   プロデュース陣にネプチューンズの名前があった。
30・Rampage:Have you seen?:☆☆
   フリップモード・スクワッドのメンバーで、バスタ・ライムズの従弟だそう。
   一人群唱みたいな声の厚みが耳に残った。ダブル・トラック?不穏なギャングスタ・ラップ。
   引きずる凄みを出しつつ、影は控えめ。どっか明るい。
   ラテンやウタモノっぽい要素も感じる。突き抜ける個性までは聴き取れず。
   リズミカルだし、サンプリングも多彩だけども。

   スウェーデンの女性歌手で91年発売の9thアルバム。彼女のキャリアで
   特にヒットした盤らしい。
29・Eva Dahlgren:En Blekt Blondins Hjarta:☆★
   べたっと広がるアレンジに馴染めるかで本盤の評価は変わる。
   歌声はしとやかでアダルティ、スロー気味のメロディ・ラインもきれいだ。
   アコースティックなアレンジを前面に出したほうが、個人的には好み。

   カナダのポップ歌手。95年の1stで、カナダで4位まで上がったヒット盤。
28・Amanda Marshall:Amanda Marshall:
   生演奏でのスケール大きめポップス。熱唱するほんのりかすれたボーカルは
   たしかにキャッチー。ドライブのBGMに似合いそう。ミニマルな感じの
   バッキングな(2)が気に入った。全般的にメロディは大げさで大味。
   ほとんどが職業作家の作品みたいだが。

     ジャケ買い。セント・エティエンヌのボーカルだったんだ。97年の初ソロアルバム。
27・Sarah Cracknell:Lipslide:
   一曲目のアコースティックなポップ感覚は気持ちよいものの、ほかの楽曲は
   基本的に打ち込み。軽~いディスコ調に仕上げた。
   複数プロデューサーを立てたことが、バラエティさととっちらかりの狭間を動く。
   1曲目の路線で行ったら、好みだったのに。
   最期も1曲目と同じプロデュース、しっとりポップ。なぜ本盤はこのタイプの楽曲で
   サンドイッチさせたか、いまいちわからない。この路線を強調なら、全て突き抜ければいいのに。

   ジャケから女性SSWと思ったら、男のトリオ編成なアメリカ人の
   ロックみたい。98年の吹き込みで、録音スタッフには日本人の名前が並ぶ。
26・Jackdrag:Unisex Headwave:☆☆
   シンプルな3ピース・ロックかと思いきや。サイケな味わいもどっぷり。
   けっこう凝った、ごった煮なつくりで予想より楽しめた。粘っこい空気が鈍くひらめく。

2010/2/7   買ったCDをまとめて

   95年に出た歌モノのヒップホップ。3rdアルバム。ジャケットは見てたが、聴くの初めて。
25・P.M. Dawn:Jesus Wept:☆☆☆
   打ち込み中心のビートは歌心もあり、リズムも単なるループの垂れ流し
   じゃない。メリハリ効いたおかずがかっこいい。例えば、(4)。フィルにグッと来た。
   当時ヒットはしなかったが、さりげないグルーヴがぎゅっと詰まった
   甘く軽やかなアルバム。(10)の甘い浮遊感も楽しい。

   前に聴いたことあったっけなあ?同じく95年にヒップホップ。本盤が2nd。
   ビルボード9位まで上がったヒット盤。
24・Coolio:Gangsta's Paradise:☆☆☆★
   予想以上にポップな仕上がり。サンプリングを重ねたトラックが、グルーヴィに響く。
   ギャングスタ的な凄みやどす黒さもほとんど無い。歌詞の内容は知らないが。
   サウンド的には、うっすらファンキーで心地よいラップ。

   93年の5th。前に聴いたかもしれないが、覚えてないや。
23・Ice-T:Home Invasion:☆☆
   いがいに全体像が明るく爽快。もっと重たいと思ってた。畳み込む感触がいい。
   小気味良く切り刻む。今だと古めかしいところもあるけれど。
   淡々とした流れで、一枚続けて聴くには集中力が入る。

   ジャケ買いしたウタモノ。UK的なアプローチだがネブラスカ州の出身の黒人女性歌手。本盤が2nd、99年の作品。
22・Laurnea:II:☆★
   いきなりサム&デイヴの"I thank you"をレイドバックしたカバーで始まる。
   気だるさとちゃきちゃき軽いハイハットのサンプリングが、全編を通して流れた。
   バラエティに富んだアレンジで、個々の音色も練られてる。アップもスローも、
   ふうわりと涼やかなムードで統一された。夜のBGMによさそう。

   有名どころのゴスペルを、アカペラで歌ったコンピらしい。00年の盤。
21・The Acappella Company:Acappella /Classics Long Play:☆☆☆★
   クレジット無いのが惜しいが、かなり聴かせる。オーソドックスなハーモニーから、
   ボイパのタイトに迫る現代風まで、アレンジは多彩。和音の処理も楽曲ごとに
   色合いを変えた。毒や破綻はきれいに抜き、ほんのりグルーヴィさを残した。
   純粋培養的なニュアンスに違和感無い人や、トッドの"アカペラ"が好きな人には、お薦め。

2010/2/1   最近買ったCDをまとめて。

   96年にアメリカのレーベルからリリースしたコンピ。
   日本からはメルツバウやK2、ペインジャークらが参加した。
20・V.A.:Music Should Hurt:☆☆★
   重量級のハーシュ・ノイズ作品がどっしり。どの楽曲も隙間無く強烈な
   ノイズが埋め尽くす。スペイシーな拡がりを感じる楽曲もあるが、基本はどれも
   問答無用。ひたすら電子音が押し寄せ、空気を圧迫する。最期の隠しトラック含め、
   なんらかのメッセージ性を感じたコンピ。

   灰野敬二がエレクトリック・ハーディー・ガーディを操ったソロ。
   聴きそびれた。95年の発売。
19・灰野敬二:手風琴/The 21st century hard-y-guide-y man:☆☆☆★
   (1)はハーディガーディの強烈なドローンを下敷きに、無造作なリコーダーか
   フルートの即興が乗っかる。緊迫感が切れない。ボリュームを上げると濃密な空気に圧倒される。
   (2)は微妙に電子音な感触。入り乱れた細密画のよう。心地よい混沌だ。絡む灰野の声。この楽曲が好み。
   (3)はフルートみたいなか細い音が、やがて野太いハーディガーディに代わる。
   静かなドローン。複数の長い紐が野太く膨らんだ。
   やがて世界がみるみる軋みで満たされた。空気自身が揺れる。
   最終曲(4)は約30分の長尺。エレクトリック・ハーディーガーディの強烈なノイズが
   全体を支配した。ハーシュのようで、鳴る音は微妙に優しい。
   これも不思議な魅力がある。聴いてて酩酊感を感じた。灰野のシャウト入り。


2010年1月

2010/1/23   今日買ったCD。

   アルバムのサントラ。劇伴のほとんどを大友良英が作曲した。03年の盤。
   聴いてみたかった、これ。
18・OST:アイデン&ティティ:☆☆
   短い曲がずらり。ウタモノも多いが、基本的に挿入歌か。
   映画を見てから聴いたほうが、楽しめそうな一枚。

   予備知識無し。デュオのラッパーらしい。本盤は96年の3rd盤。
   USチャートで103位まであがった、とwikiにあった。
17・Wreckx-N-Effect:Raps New Generation:☆☆
   一人のプロデューサとは思えぬとっちらかった作り。よく言えば、バラエティ豊か。
   基本はギャングスタ。ダンサブルでクールだ。ラップのまくし立てとファンクネスがちらつく。
   ともすれば耳をすうっと抜けそうな仕上がりだが、個々の曲はそれなりに
   練られてる。"Criminal minded"が好み。プロデュースはメンバーでもある、Aqil Davidson。
   ニュー・ジャック・スイングでテディ・ライリーらと作曲をしてた彼。
   淡々とした繰り返しのループに、時代を感じた。

2010/1/18   最近買ったCDをまとめて。

   04年発売の黒人女性シンガー。NYのレーベルから発売した。
16・Teedra Moses:JComplex Simplicity:
   ハイトーンの女性ボーカル。かちかち硬い耳ざわり。それほど耳へぐっとこない。

   93年のゴスペル・クワイア作品みたい。演奏にスティーブ・クロッパー、
   ソロボーカルでメイヴィス・ステイプルの名も。
15・Soul Mission:Soul Mission:☆☆☆
   クワイア形式だが、ソロのほうが目立つ。サザン・ソウル風味な一方で
   上手い演奏と確実な歌でカッチリまとまり、危なげない。ある種、端正なしあがり。
   ラフな熱狂と逆ベクトルだが、ギターやオルガンのさりげないフレーズがかっこいい。
   とはいえ貫禄をあまり感じさせぬ、身軽さが漂う気がしたのはなぜだろう。

   女性黒人シンガー。ジャケ買いした。97年の作品。
14・Tasha Holiday:Just The Way You Like It:
   耳ざわりのいい打ち込みソウル。ゆったりしたノリで静かに歌っていく。
   ハイトーンでシャウトしても、軽やかに聴こえるミックス。
   メロディがするすると流れて、いいBGMになりそう。

   70年代のディスコ・オケらしい。不勉強で、詳細不明。
13・Rice & Beans Orchestra:Rice & Beans Orchestra:
   まあ、ディスコ。生演奏なのが救いか。打ち込みでこれだったら、放り出してる。
   BGMで聴く盤かな。インストが中心。

   91年にスペシャルティが復刻した、四人組ゴスペル・クァルテットの編集盤。
12・The Pilgrim Travelers:The Best of The Pilgrim Travelers:☆☆☆
   全曲じゃないが静かなタップの響きがグルーヴに彩りを添えている。じわじわくる高揚感がたまらない。
   リードとバスのパートが途中でメンバー交代したが、双方の時代を収録した。
   無伴奏カルテットだけでなく、リズム演奏が入るテイクも。
   涼やかに一糸乱れず歌い継ぐさまがかっこいい。時にリードはだみ声で
   シャウトするが、基本的にハーモニーはジェントルなムードが漂う。

2010/1/3  注文してたCDが到着。

   出てたの知らなかった。元メン・アット・ワークのコリン・ヘイが新譜を。
11・Colin Hay:American sunshine:☆☆☆★
   アコースティック回帰に、どっぷりカントリー・フレイバーを振りかけた一枚。
   後半はエレキのアレンジへ向かい、力強い味わいに。最終曲のインストは
   穏やかだがきれいで強靭な一曲。
   コリン・ヘイ節は健在で"No time"はMAW時代を強烈に思い出しす。
   ちなみにドラムで全面参加のチャーリー・パクソンの経歴をネットで検索したら、氷室京介のバックで
   演奏、と出てきた。へえ。
   
   09年の月刊メルツバウ・シリーズの未入手分をまとめて購入。

   7作目のテーマは孔雀鳩。ジャケットはずいぶんデフォルメされ、記号的な鳩が
   写真にコラージュされた。
10・Merzbow:13 Japanese Birds vo.7:kujakubato:☆☆☆☆
   規則的なビートにアナログ・ノイズのメタリカルな綱の響き。ある種、
   ヘヴィメタ的な要素が非常に強い。リズムの感触はどこか軽やかさを残す重さだが。
   どの楽曲も音色やビートのアプローチこそ違え、コンセプトは豪快な荒れ狂いっぷり。
   ある意味、とても、とっつきやすいメルツバウ作品かもしれない。

   黒っぽいジャケットの左下に黒鳥。涼やかなジャケットだ。
9・Merzbow:13 Japanese Birds vo.8:kokucho:
☆☆☆★
   ドローンと生ドラム。ハーシュとビートの対話。さまざまなアプローチを
   一枚の中に押し込んだ。本シリーズはアナログ・ノイズと生ビートに
   ループのドローンが絡まる。そのコンセプトを、凄みをこめて表現した一枚。

8・Merzbow:13 Japanese Birds vo.9:hiyodori:☆☆☆★
   リフとドラムソロ、混沌の電子音。ハーシュノイズの形態をとってはいても、
   サイケ・ロックのアプローチに酷似した展開を見せる。
   メルツバウのロックぶりを堪能できる一枚。

   09年8月の録音。ジャケットのイラスト鶏が妙にキュート。
7・Merzbow:13 Japanese Birds vo.10:niwatori:☆☆☆★
   3種類の組曲編成で、ノイズとドラムの饗宴を繰り広げる。
   ハーシュはアナログ的な音使いで、生々しく響く。野太い突き抜け。途中でぐっと
   音圧を下げる感じしたのは、気のせいかな?ノイズの分厚い音圧が快感。

2010/1/2   初買い。今年も色々な盤へめぐり合えますように。


   予備知識無し。ジャズ・ボーカルかな?さまざまなミュージシャンとデュオ、とある。
6・J.J.Jackson:Paired down,Volume 1:☆☆
   聴きやすいロマンティックなジャズ。5人のミュージシャンを招き、デュを集めた。
   フリーな要素もたまに見受けられるが、基調はオーソドックス。
   滑らかなメロディを、手数多くピアノが駆け抜ける。尖ったところはあまり無い。

   映画のサントラの一種かな。エミネムらが参加した、02年の盤。
5・V.A.:Music from and inspired by the motion picture 8 mile:☆☆★
   タイトでクールなギャングスタ・ラップが詰まった。ひりひりと空気を引き締める。
   淡々と続く曲調にスリルを吹かせつつ、根本的に聴きやすいポップさを兼ね備えた。

   なんとなく聴きたくて購入。87年の盤。マイク・パットンの歌声を聴きたかったが、
   この時は参加前だった・・・。
4・Faith no more:Introduce yourself:
   ヘビーなロック。個人的には好みと違う。それほど濃密な個性も見つけられなかったが、
   曲やアレンジは音色を変えたらニュー・ウェーブになりそう。妙に硬いところある。
   それが、個性か。面白いな。

   聴きそびれてた。50セントの05年アルバム。
3・50 Cent:The massacre:☆☆
   屈強さを強調したギャングスタ・ラップ。不穏な空気がぷんぷん漂い、親しみやすさは無い。
   銃声が飛び交い、血腥いムードがいっぱい。
   ハードに威圧する世界感を強調した。肝心のラップは、妙にうわずるホンワカさもあるけれど。
   サウンドはべたっと密に埋め尽くした印象。すいすいと過ぎてゆく。
   後半のゲスト入り曲がキャッチーだな。

   これも聴いてなかった。91年の盤。ジョージ・クリントンが参加した。
2・Digital Underground:Sons of the P:☆☆
   Pファンク色が強い群唱ラップ。好みだしファンキーながら、ちょっと
   単調な箇所も。ダンサブルなグルーヴは楽しめる。
   こもった感じの胡散臭さをほんのり漂わせた。生演奏も混ぜた演奏も、なかなか楽しい。

   ブロドスキー・クァルテットがポピュラー系歌手と吹き込んだ、05年の盤。
1・Brodsky Quartet:Moodswings:☆☆
   ジェントル、しかしあっさりと端正なアルバムに仕上がってしまった。
   アレンジは全てブロドスキー・カルテット。むしろ複数のアレンジャーを
   入れたほうが、サウンドに多彩さが出たかも。硬質で滑らかなブロドスキー・カルテットの
   演奏は、確かに楽しめる。一方でつるつるときれい過ぎる気も。
   メレディス・モンクがほんのりトリッキーなスキャットを入れる(8)が良かった。


2009年12月

2009/12/12   最近買ったCDをまとめて。

   オランダ在住のピアニストによる、ライブ音源集。
   メルツバウが一曲、テープ音源で参加した。00年のリリース。
320・向井山朋子:Amsterdam x Tokyo:☆☆☆☆
   透徹に空気を貫くピアノがまず、すごい。即興ではなく、さまざまな楽曲を演奏した
   現代音楽のアルバム。ピアノ独奏ではなく、テープとの合奏も。
   メルツバウとの共演も、その一環だ。突き抜けた前衛の素早さが、魅力的な一枚。
   涼やかなピアノの音色にぐいぐい惹かれた。

   Bozoの3rdで07年のライブ音源。07年の発売。
319・Bozo:Red Context:☆☆☆★
   涼しくも滑らかなノリが前面に広がる。トリッキーなドラムの
   ビート感覚をベースとピアノががっちり支えた。どこまでも自由で、柔らかい。
   繊細に震える独特のロマンティシズムがサックスから溢れた。特に"Mars rush"のしとやかなグルーヴが格別だ。

   菊地成孔ダブ・セクステットが08年に座りとスタンディング、両方の設定で
   行ったライブをアルバムにまとめた1枚。
318・菊地成孔 Dub Sextet:In Tokyo:☆☆★
   スタジオ盤と同様のダビング・ポリリズムを、ライブでも易々と構築する。
   酩酊する熱狂を味わえた。しかしやはり、生で見たいな。
   吹きまくる2管の乱流を体感するために。

   原田依幸と松風鉱一のデュオで03年の作品。
317・原田依幸+松風鉱一:無明:☆★
   冒頭のフルートが尺八のようだ。めまぐるしい原田のピアノに、松風のサックスが静かに寄り添う。
   音がころころと流れてゆく。ノービートのフリージャズ。切りあいはあるが、
   しゃにむさが目的じゃない。3曲目の後半、ピアノのソロからそっとサックスが入る
   場面あたりがきれいだ。全体的にストイック。

   斉藤徹がピアソラのタンゴを取り上げた00年の作品。
   "タンゴ・グルーヴ・コレクティヴ"がユニット名かな?
316・斉藤徹:アウセンシャス:不在:☆☆☆☆
   ずしんと響く低音と跳ね回るピアノやバンドネオンのアンサンブルが心地よい。
   隙が無く、美しく鋭く音楽が花開いていく。タンゴの饒舌な美学を冷徹に
   磨き上げた、素晴らしい音楽が詰まった。

   ジョン・ゾーンが07年に発表した作品。コンボ編成にコーラスが入ってる。
315・John Zorn:Six Lilanies for Heliogabalus:☆☆☆★
   ハードコア一辺倒でなく、ミニマルな展開も。馴染み深いメンバーをずらり並べ
   刺激的な音像を作った。バンド的なアプローチでなく、アルバム全体に
   さまざまな要素をちりばめた感じ。かなり楽しめた。

   上の盤に繋がるコンセプトかな。1曲でマーク・リボーが入った以外は、
   カルテット編成で録音。08年作。
314・John Zorn:The Crucible:☆☆
   ジョン・ゾーン流の高速ミクスチャー。マイク・パットンのボーカルを全面に出した。
   個々の曲は聴いてて楽しめるけれど、いまひとつ刺激に欠ける。
   ありもののジョン・ゾーン作品を越える箇所を、聴いてて見つけられていないせいだ。
   マーク・リボーのエレキギターが入る曲は、ブルージーに響いた。

2009/12/8   最近買ったCDをまとめて。

   90年にコロムビアが1300円のクラシック廉価盤シリーズでリリースしたうちの一枚。
   サティの作品集で、録音は76年と79年。
313・高橋悠治:Satie Best selection:☆☆☆★
   冷徹なピアノ。叙情に流れず淡々と、しかしくっきりと美しいタッチで演奏した。
   素朴な響きながら、奥行きが深い。力強い響きに惹かれた。
   前のめりな符割の表現も楽しい。

   ジャケットは見覚えあるヒップホップ。当時聴いたことなく、なんとなく興味あり。
   彼らの5thで最後のアルバム。ビルボードで64位まであがったという。93年の作品。
312・DJ Jazzy Jeff & the Fresh Prince:Code Red:☆☆☆
   複数のプロデューサーをたて、とっちらかったバラエティさ。耳ざわりは良い。
   ラップの入門役になりそう。ピート・ロックがプロデュースした曲が好みだが
   ほかの曲も軽やかで楽しい。スピードや不穏さより、どこかおっとりと
   作られた印象を受けた。


2009年11月

2009/11/29   最近買ったCDをまとめて。

   新譜。福岡を拠点に活躍するピアニスト&シンガーの、メジャーから初ソロ。
311・深水郁:いがいがピアノ:☆☆☆☆
   全7曲、こじんまりミニアルバム、な印象ある。彼女の代表曲をインストで
   並べた。アドリブ要素はあるけれど、常にテーマの雰囲気を保ちつつ、リフレインが
   愛おしく響く。タッチはあくまで柔らかい。丁寧に世界感を描いた。
   彼女の魅力のひとつである歌声をあえてはずし、ピアノと真正面から向かい合った
   ストイックさと優しさが滲む作品。おっとりと整った音楽。

   菊地成孔&ぺぺの新譜はクラシックへも目配りした。
310・菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール:New York hell sonic ballet:☆☆☆★
   前作での実験即興要素は身を潜め、よりロマンティックなラウンジ・スタイルを強調した。
   ドリーミーな音像がいっぱいに広がる。ラテン風味で。
   ポリリズムは上手く聴き取れていない。ソプラノ歌手を投入し、エキゾティックさを
   高めた一方で、エコー成分少ない菊地自身の歌もあり。バランス感覚か。
   サックスを含め、アドリブは控えてアンサンブルそのものを聴かせた。

   サイケ寄りって印象あるロック・バンド、コーマスが07年に出した作品。未聴だった。
309・The Comas:Spells: ☆☆☆
   こなれつつも統一感を外した一枚。バンドの方向性を期待させる、過程の盤か。
   シューゲイザーともサイケともくくれぬ不安定な浮遊さが魅力か。
   (5)のオルガンが演出する古めかしいプログレ臭が、逆に良い。

   ジャケ買い。黒人二人組のコーラス・グループかな?08年の盤。
308・The Chestnut Brothers:Retrosoul:☆☆☆★
   男性デュオのアルバム。デュオよりも、それぞれの歌声を強調した印象。
   良く言えばバラエティに富んでいる。とっちらかったアレンジが一枚に
   無理やり収められた感じ。しかし何曲かは掛け値なしに素晴らしい。
   たとえば(7)の躍動感。これが特に好き。

   トニー・リッチの08年盤。3rdかな?このリリース、知らなかった。
307・The Tony rich Project:Exist:☆☆☆★
   作曲演奏のみならず、録音やミックスも自分自身とは知らなかった。
   ある意味ワンパターンなミドル・テンポのしっとりした世界をふくよかに広げるソウル。
   強烈なフックが無いのは残念だが、とことん気持ちよく聴ける。
   密室ソウルが上手く仕上がった一枚。独自の世界感を追求してる。

2009/11/5   最近買ったCDをまとめて。

   精力的なリリースを続ける、元GbV、ロバート・ポラードのバンドの新譜。
306・Boston Spaceships:Zero to 99:☆☆☆★
   弦まで投入、アレンジに幅を持たせた。ライブ再現性よりスタジオでの構築度を高めてる。
   歌以外の録音はほぼ全て、サルサレンコ。モーエンがドラムを足してる。
   演奏は全てオレゴン州でサルサレンコらにより録音され、ボーカルをトバイアスがオハイオでダビング。
   さらにポートランドで楽器のダビングを重ねた。けっこう凝ってる。
   ちなみに曲クレジットは番号が途中で飛び、1曲から99曲まで示された16曲入り。
   妙に凝ってるな。楽曲はロバート節が甲高く跳ねる。
   キャッチーだが一筆書きメロディっぽい作品が多い。良き時代のGbVを彷彿とさせた。
   ただ、ちょっと大味感も漂うな。

   解散してもマテリアルはどっさり。GbVの蔵出し5枚組ボックスの第三弾が出た。
305・Guided by Voices:Suitcase 3:


2009年10月

2009/10/25   最近買ったCD。

   アメリカの女性新人SSWの1st。やたら評判いいので買ってみた。
304・Diane Birch:Bible Belt:☆☆☆★
   冒頭の曲想はキャロル・キングあたりより、初期の吉田美奈子やナイアガラを連想してしまう。
   つまりガレージっぽさと洗練が共存する音世界。とはいえアレンジは弦や管も加わる分厚い仕上がり。
   ドラマーはスタントン・ムーア(元Galactic)とシンディ・ブラックマン(サンタナやレニー・クラヴィッツと共演)のふたりが
   曲によって叩き分けた。どちらもドタバタしたリズムで
   音像にキュートさと素朴さを現してる。丁寧で昔懐かしいNYのSSWマナーで作られた一枚。

   シューゲーザー的なイメージあるアメリカのバンドが04年に出したアルバム。聴きそびれてた。
303・The Comas:Conductor:☆☆☆
   コケティッシュなウィスパーの魅力を、ベックのとっ散らかったアレンジが
   ユニークに支えた。個々の楽曲に個性あり、アルバム通した印象より
   コンピ的な聴き方をしてしまう。ぱっと聞き流す中に、細かなアレンジの技あり。

2009/10/24   最近買ったCD。

   メルツバウが04年に米のPlan-DX17からリリース。350枚限定で、当時買いそびれてた。
   音源だけなら、i-tunesで聴けるけれども、盤を探してたところ。今回、中古で入手。
302・Merzbow:tamago:

2009/10/21    最近買ったCDをまとめて。

   獏のボーカル、エリーニョの初ソロのフル・アルバム。発売を楽しみにしてた。
301・エリーニョ:ヒヨコと猫の鳴いた、ココにある日常的。:☆☆☆★
   バンドサウンドで、切なげな世界感をまっすぐに表現した。
   アップよりもバラード的な楽曲のほうが印象に残る。瑞々しいソロ。
   なんだかふんわりと暖かい毛布みたいなメロディだ。

   バッハの廉価盤155枚組ボックスセット。さすがにどかんと重い。じっくり聴きます。
300・Bach:Bach Edition Complete Works:

2009/10/3   最近買ったCDをまとめて。

   シカゴで田中が参加した盤を購入。これはJason Ajemianの作曲で、07年作。
   録音が田中。ビッグバンドみたいにいっぱいミュージシャンがクレジットされてる。
299・Who cares how long you sink:Folk forms evaporate big city:☆☆☆★
   サイケなオーケストラ・ジャズ。個々のソロ回しや展開よりも、音像そのものの
   もやけた空気に惹かれる。アンサンブルの夢見心地さが肝。ほとんど展開を
   感じさせぬ構成だが、どのへんまでが譜面だろう。

   05年作。田中はドラムで参加。これも編成が大きいな。バイオリニストのリーダー作。
   ジャケットが妙にアイドルっぽい。
298・Zack Brock and the coffee achievers:Chmistry:☆☆☆
   とっちらかった仕上がりが、面白い。
   ディストーションのどっちゃりかかったバイオリンが粘っこく響く。
   プログレともファンクともつかぬ世界で。リズムもジャズにとらわれぬ。
   不思議な世界感だ。あえて枠付けするならプログレかな。
   一曲目の切ない歪みから、いきなり惹かれた。ギターと違ってフレーズの
   流れにぬめりあり、独特な魅力を産んだ。
   数曲ではスムーズな女性ボーカルが入る。トラッド的な方向性までは行かないが。
   サム・バーシュのメロディかが入ると、とたんに世界は切なくなるのもユニーク。
   幅広い音楽性を行き来するバイオリニストだ。

   03年のアルバム。聴きそびれてた。
297・The Black Eyed Peas:Elephank:☆☆☆★
   少なめな音数、キャッチーな1小節リフ、ドスを効かせぬ親しみ安さ。
   線の太いダンサブルな曲が詰まった楽しいアルバム。パーティ・ラップの
   能天気なハッピーさに陥らぬクールさが、サウンドをキュッと締めた。

   91年にキングから再発の民族音楽シリーズから何枚か。
   これはイランの器楽アンサンブルかな。録音は89年、東京のスタジオで、
   現地のミュージシャンを招いて吹き込んだ。
296・V.A.:ペルシャ逍遥~イランの音楽2:☆☆☆★
   即興演奏をふんだんに盛り込んだ構成。曲により楽器構成を変え、単調に陥らず
   聴ける工夫を施している。ちょっぴり性急で力強くうねるグルーヴがたまらない。
   歌声のこぶしがもっとも良くわかるが、(4)のパーカッション独奏も強力。
   小刻みにひねりながらバラ撒かれるビートの精妙で着実なノリはシンプルにかっこいい。
   楽器独奏のフレーズ使いもアラブの文脈を当然踏まえつつ、素直に漂う。
   落ち着いたムードは古典音楽な故か。トレモロが流れ、浮き立ち弾むムードが美しい。

   ウードのソロでタクシームを3曲と、歌入りで4曲。81年に東京で録音。
295・V.A.:琥珀色の夜~バグダッドのウード:☆☆☆★
   小刻みでグルーヴィ。前半3曲がウードのタクスィームで、まずこれにやられた。
   淡々と奏でるウードは、さりげなくダイナミクスが凄まじい。フレーズの
   揺れと同期して、アタックがときおりパシンと強く鳴る。演奏のメリハリもばっちり。
   間の生かし方も含めて、とても勇ましいタクスィームだ。
   後半4曲のウタモノも、のびのびコブシを廻すさまは聴き応えある。
   ぱあんと張り詰めた緊迫感あり、単なる伝承歌と違う芸術性を意識か。
   器楽曲が好きなぼくは、つい前半3曲のタクスィームに惹かれてしまう。

   インドのアンサンブルで88年に東京で録音、ザキール・フセインほかの演奏。
294・V.A.:超絶のリズム~インド古典パーカッション:☆☆☆
   タブラのボウル用にマイク立っておらぬのか、声がオフ気味で惜しい。
   猛烈にスピーディーなボウルなだけに。どの楽曲も長尺で、たっぷりしたリズムの
   奔流をいっぱい味わえる。最期のタブラ講習もユニークだ。

   89年の東京録音、アフリカのパーカッション・アンサンブル。
293・V.A.:疾走のナイジェリアン・ビート~ツインズ・セブン・セブン:☆☆☆☆
   パーカッション・アンサンブル。女性の甲高いコーラスがアクセントになっている。
   伝承音楽ののんびりしたサウンドかと予想したら、大違い。べらぼうに
   タイトなアンサンブルを聴かせる。一糸乱れぬキメが爽快だ。繰り返しの
   フレーズやリズムでじわじわと盛り上げ、決めるべきところはがっちりと。
   アフリカ音楽特有のシンプルさに馴染める人なら、たっぷり楽しめる一枚。

   これは88年のビクター盤。トルコの舞踏音楽らしい。88年にイスタンブールで録音。
292・V.A.:スーフィの神秘の笛:☆☆☆
   緩やかなうねりと、しとやかな高まり。ネイの響きは高音の鋭さが上手くマスクされ
   滑らかに耳をくすぐる。楽曲と即興部分が一曲の中に混ぜられた構成で、
   ゆったりしたグルーヴが心地よい。小さめの音で聴くとロマンティックなムードが溢れた。
   幻想的な世界が、かすれるネイの響きからかもし出される。静かなタンボリンのビートに乗って。

   アート・ガーファンクルの1stソロ。聴きそびれてた。73年作。
291・Art Garfunkel:Angel Clare:☆☆☆★
   伸びやかなハイトーンで存分に歌う。曲調はバラエティにあふれてるが、丁寧な
   演奏で統一感をもたせた。ミュージシャンは当時の凄腕たち。ベースを
   ジョー・オズボーンが全編で弾き、グルーヴをあわせた。ギターのジェリー・ガルシアは
   デッドのガルシア?ポール・サイモンもギターでクレジットあり。意外なとこでは
   ブズーキでトミー・テデスコの名もあった。
   華やかなポップスを素直に広げ、尖ったとこは無い。
   甘やかな世界を淡々と広げた。商業臭くならないとこが、アートのセンスか。
   ジミー・ウェッブ作の"All I know"、シングル・カットされた曲が、やはり良い。

   これも未聴だった、佐野元春の99年作品。
290・佐野元春:Stones and Eggs:☆★
   線の細い印象を受けた。ファルセットのダビング多用とラップ風の歌声は
   気弱げな風景がほんのり漂う。アップテンポのメロディもシャウトを控え、穏やかな
   ムード。録音もサウンドが軽いような。佐野元春のブランド・イメージを
   縮小再生産したかのよう。個々のメロディはきれいでも、踏み込みを躊躇う
   感触にもどかしさを覚えてしまう。
   佐野自身の強靭な復活は、のちの"The Sun"まで待つことになる。


2009年9月

2009/9/26   最近買ったCDをまとめて。

   キング・サニー・アデが全世界へ打って出た、82年の盤。
289・King Sunny Ade:Juju Music:☆☆☆★
   無闇にエレクトリックを強調せず、ゆったりふわふわなグルーヴを楽しめる一枚。
   淡々と続く心地よい高揚を詰め込んだ。細かなリズムの折り重なりへ
   ときおりギターのリフが緩やかに跳ねる。

   オスマン帝国(後のトルコ)に生まれたマルチ楽器奏者による録音集。
   タクスィームと曲を、各種弦楽器で独演の模様。古い録音でノイズある。
   1910~14年の吹き込みらしい。94年の米Traditional Crossroads盤を購入。
288・Tunburi Cemil Bey:Tunburi Cemil Bey:☆☆☆☆
   ヒスノイズがいっぱいな音質を補って
   余りある、グルーヴィなタクシームが山ほど聴けるアルバム。曲によって
   楽器を持ちかえ、さまざまな音色も楽しめる。特にタンブールでのダイナミズムが
   凄まじい。メロディをくるくると操りながら、ときにぎゅっと緊迫感あるフレーズをぶつける。

   長大かつ複雑な作曲で一部には有名らしい、イギリスの現代クラシック作曲家のソラブジが
   書いたピアノの超絶技巧練習曲集。100曲あるうち、25曲を1枚のCDにまとめた。05年の盤。
287・Fredrik Ullen:Sorabji 100 transcendental studies Nos.1-25:☆☆☆
   超絶技巧でも、聴いてて猛烈な音の奔流へすんなり耳を傾けてしまった。
   トリッキーな場面も無論あるが、ほとんどは聴きやすい流れ。キュートな7番が特に好き。
   高速細密な音楽が基本、かな。

   コスチューム・ハードロックのバンドのデビュー盤。もとはシミーから88年に
   クレイマーのプロデュースで発表された。これは後のリマスター盤。
   たぶん、リマスターにはクレイマー絡んでない。
286・Gwar:Hell-O!:☆☆
   スケーターズ・スラッシュ。ヘヴィなギターが一面を覆うも、ボーカルは
   ちょっと力抜けている。サイケな要素もあり、メロディもきっちり。
   ゴングっぽい香り漂う瞬間あったり、音楽性はかなりごった煮。
   カタルシスを求めるハードさとは、ちょっと方向性が違うユニークさ。

   ジャズ・オルガン奏者の95年作。ジョン・ゾーンが全面参加してる。
   フリーキーさは押さえ、グルーヴィなジャズのはず。
285・Big John Patton:Blue Planet Man:☆☆★
   フリーキーやファンキーさを期待すると、当てが外れる。オルガンもさほど
   目着々目立たず、アンサンブルを意識したコンボ。特にギターが上品に響いた。
   のんびり聴くにはいいかも。しかしこのジャケ、カラーコピーみたいだなあ。

2009/9/22    今日買ったCDをまとめて。

   最初の2枚は新譜で購入。前からなんとなく気になってた相対性理論を。
   これは自主制作の音源で、5曲入EP。08年作。その後のプレス盤で購入。
284・相対性理論:シフォン主義:☆☆☆
   革新性を音で表しつつ、荒っぽい録音が目立つ。ボーカルのどすの利いた凄みは
   本作でこそ聴けるが。次作と同時に聴いたため、本作はまだ過程に聞えてしまった。
   しかしスピーディな勢いと舌足らずさが同居する魅力は、本作でこそ
   しっかり味わえる。歌詞のセンスにぶっとぶ一枚。アイドル・ロックの究極になりえた一枚。
   しかも制作や資本のにおいを一切感じさせずに。
  
   09年発売の1stアルバム。9曲入り。スパンク・ハッピーとどうもイメージが被る。
   相対性理論のライブは未体験だから、なんともいえないけれど。
283・相対性理論:ハイファイ新書:☆☆☆☆
   バンド・アレンジがぐっとこなれた傑作。ギターの音色に甘さが生まれ、歌声と溶ける甘さを
   サウンド全体ににじませた。サイケな魅力が危うく不確かな歌と世界観を、強烈キュートにまとめた。
   本作で相対性理論は、一段上の特別なステージを作った。

   今まで買いそびれてた。カップリングのロン・エクスミス作曲"On a whim"はアルバムに
   収録されており、音源はレアじゃないけれど。98年のシングル。
282・Eddi Reader:Prayer wheel(single):
   曲の評価とは別。特に珍しいジャケ写もなかったし、後追いで
   買うなら、完全にアイテムとしての価値のみ。曲そのものはしゃっきりシャープな
   味わいだった。ミックスがこんなに左右にくっきり分かれてたとは。

   エディ・リーダーとの交流で知った、英SSWのソロ。92年作。
281・Boo Hewerdine:Ignorance:☆☆☆
   ギター、キーボード、打ち込み。さまざまな楽器による刻みが本アルバムに
   一貫して流れる。鼓動のように着実なテンポで。決して早すぎも遅すぎもせず。
   しっかりと歩いていくかのよう。メロディは高らかに、歌い上げた。
   打ち込み曲とアコースティックがごく自然に馴染んだ、透明感あるアルバム。

   ノルウェーのギタリストのデビュー盤、98年作。サイドメンにペッター・モルヴェル(tp)や
   インゲブライト・フラテン(b)、ブッゲ・ヴェッセルトフト(key)らが参加。
280・Eivind Aarset:electronique noire:☆★
   打ち込みリズムにギターが載る。全体的に重たいイメージで、からっと突き抜けない。
   色々と音が凝っているが、アップテンポでもグルーヴ感がいまひとつ。
   頭で考えつつ組み立てたアンサンブル、って印象。ちょっとやりたいことが、わかりづらい。

   Sex Mobのメンバー、ブリガン・クラウスの名前に惹かれて買った。ベースは
   マーク・ドレッサー。ジャケットはなんとなく見覚えある。03年録音。
279・Andrew Druay:A momentary lapse:☆★
   淡々と無造作に進むフリー・ジャズ。メリハリが薄く、途中で退屈に。特に
   サックスが一本調子だな。ドラマーの作品にしては、淡々とした曲構成。
   バイオリンとサックスが絡む(3)はちょっと刺激あり。

   この盤は知らなかった。アリゲーターより。録音年度が書いてないな。
   ハーモニカのブルーズメン4人を集めたセッション盤で、ジェイムズ・コットンと
   ジュニア・ウェルズの名前に惹かれた。あと二人は、Carey BellとBilly Branch。
278・Cotton/Wells/Bell/Branch:Harp Attack!:☆☆
   ジャム・セッション的にわいわいハープが飛び交うわけじゃなく、楽曲ごとに
   共演やソロがカッチリ管理された企画盤。オールスター的なメドレーやオムニバスの
   豪華さを楽しむ一枚。まとめて4人の魅力を味わうのが目的なら、いいかも。
   全員に火の出るような現役感を求めるのは酷ながら。全体的にほのぼのなブルーズ。
   一曲でいいから、どしゃめしゃなジャム・セッションも聴きたかった。
   中では(6)が力強くてかっこいい。

   デイヴィッド・フォスターのソロ。何となく聴きたくて。やっぱりキーボード
   べったりのAORかな?86年作。ゲスト・ボーカルにオリビア・ニュートン・ジョンの名前が。
   ホーン隊はシカゴのメンバーが参加してる。
277・David Foster:David Foster:
   映画に提供した自作のセルフ・カバーも数曲収録した。
   甘ったるいアレンジが続く。安手のシンフォニック・プログレみたい。シンセの音色に時代を感じた。
   歌ものはそこそこ聴けるが、インストは大仰なシンセのメロディに馴染めず。
   ある意味予想通りだが、ポップス的な甘さでなくムードBGM的な方向性とは思わなかった。
   (6)は当時のダンス・ミックス的な長尺演出。3分の曲だけど。ホーン隊入りでも、オブラートに包まれた
   整然さがちょっと惜しい。最期の曲はピアノ・ソロ。この路線で一枚ならいいのに。

   ホッピーのソロ。本盤はクリントンらPファンク勢が参加した。91年作。
276・ホッピー神山:音楽王:☆☆☆
   P-Funkの色合いをどっぷりふりかけ、万華鏡みたいにハッピーなファンクを構築した。
   中盤ではメロウな一面も魅せた。さまざまなタイプの骨太な曲が並ぶ。
   複雑な響きとキャッチーなリフを両立させる、ホッピーの才能に圧倒される一枚。
   マスタリングのせいか、ちょっと音が軽くてスピード感がゆったりに
   感じてしまう場所もあり。全体的には、弾けるホーンの響きに引っ張られ、ぐいぐい来るけれど。
   しかしこの盤はジャケ写真が生々しく、とってもきれいだ。

   上記に続くソロ。ジョン・ゾーンやマーク・リボーらが参加。92年作。
275・ホッピー神山:音楽王2:☆☆☆
   東海岸ファンクネスを基礎に、アヴァンギャルド風味をぱらり。
   ぐしゃっと分厚く重ねたかっこよさが詰まったアルバム。でかい音で聴こう。
   ごたまぜの要素が、見事にスピーディにまとまった。

   ジョン・リー・フッカーのベスト、かな。今まで彼をろくに聴いたことなくて買った。
   膨大な録音を残してる彼だが、本盤は英Zirconからの24曲入り。収録年度が書いてないな。
274・John Lee Hooker:Boogie chillen:☆☆☆★
   完全に調べ切れてはいないが、49年頃に吹き込んだ、ごく初期の音源を集めた盤のようだ。
   弾き語りが基本。どすどす言う音は足踏みかな?おっそろしくタイトなグルーヴで
   つぎつぎとブギをぶちかます。アルバム24曲入りをまとめて聴くと
   濃密な勢いに圧倒された。ある意味、ファンクの元祖じゃないか。
   歌声より、ギターのテクニックより、グルーヴのうねりに惹かれた。
   曲によってはスクラッチ・ノイズも聴こえるが、演奏の迫力はばっちり。

   キッド・クレオールの90年作品で、プリンスが1曲提供。日本盤を入手したら、
   カールスモーキー石井が、短いながら文章を寄せていた。
273・Kid Creole and the Coconuts:Private Waters in the great divide:
   ハッピーばアレンジと演奏だと思うが、改めて聞くと胸に来るのが少ない・・・。
   トロピカルさをニューウェーブ風味にしたセンスはすごいが。

   コルトレーンへの追悼盤で88年の録音。ファラオ、マクビー、マッコイ、ヘインズらの録音。
   数曲でマレイも参加した。インパルスより。
272・V.A.:A tribute to John Coltrane~Blues for Coltrane:☆☆☆★
   熱っぽいジャズ。マッコイ・タイナーとロイ・ヘインズが熱演、特にピアノが前のめり。
   クールにマクビーが低音を重ね、サックスが乗せていく。
   ここでのマレイはセンチメンタルな響きを丁寧に奏でた。
   破天荒な破綻は無い。あくまでコルトレーンを偲んで節度は守る。
   とはいえ、枠組み内での跳ねっぷりは爽快だ。特に、繰り返すけど、ピアノが。

   ブレイキーの90年作品で若手を集めた3管編成。どんな演奏かな。録音は88年、
   スタジオ録音盤。そのわりに9分にもわたるドラム・ソロがあるみたい。
271・Art Blakey and the Jazz Messengers:I get a kick out of Bu:☆☆
   ブレイキー晩年の作品。そつなくモダン・ジャズを演奏する。それ以上の何かは、特に無い。
   ドラミングはちょっとトロいか。にもかかわらず、9分ものソロを取る油っけがすごい。
   フロントの若手に切れ味無いのが、一番問題かも。トロンボーンのロビン・ユーバンクスが
   いちばん聴いてて楽しい。ジェイボン・ジャクソンのテナーは、指を廻してるだけって感じだなあ。
   ピアノやペットは及第点をそこそこ、こなしてる印象のみ。

   フェアポート75年のアルバム。未聴だった。本盤を最期にサンディ・デニーはバンドを離れた。
270・Fairport Convention:Rising for the moon:☆☆★
   ポップな色合いを意識し録音したアルバムらしい。すこーんと突き抜けた明るさあり。
   全てメンバーのオリジナルだが、トラッドを踏まえた曲が並んだ。
   うわずるような特有の味わいが一本調子なアルバム、と感じてしまった。
   トラッドに、もっと馴染んでから聴いたら印象は変わると思う。
   アンサンブルはすっきり、分離が良いミックス。
   アルバムを通して、一定の穏やかな流れを保った。極端にメリハリをつけない。
   普遍的な曲調、の観点だと"After Halloween"が気持ちいい。

   名前は何となく聴いたことあるが、音楽は聴いたこと無し。なんとなく興味で買った。89年作。
269・Randy Crawford:Rich and poor:☆★
   冒頭からディラン"天国への階段"のカバー。クラプトンやデヴィッド・サンボーンがゲストで
   目玉なのかもしれないが、楽曲的にはいまいち馴染めず。
   他の歌のほうが素晴らしい。伸びやかな歌声が、軽いシンセで飾られたサウンドに
   載って花開く。ゲイリー・ワレスの着実なドラミングがいいな。
   本盤は"天国への階段"(R&B 4位)も含め(3),(10),(8)の4曲がシングルカット。
   キャリア的にはヒットアルバムの位置にあるようだ。
   深みとは無縁の爽やかさがアルバムに溢れた。
   ミドル・テンポで声を高らかに張り上げる爽快さが味。(3)がいいな。

   彼女の名前も、何となく聞いた事あるような。いなたいジャケットが妙に気になり購入。92年盤。
268・Michelle Shocked:Arkansas Traveler:☆☆★
   最初はピンと来なかったが、なんとなく魅力がわかってきた。ポップス寄りのカントリー。
   フィドルが鳴り響く(4)みたいにアコースティックなアレンジの曲のほうが、
   彼女のほんのりガラッパチな歌声は似合う。いわゆるバンド・サウンドと
   トラッド的なアレンジの曲が混在する1枚。バラエティに富んでるが、ちょっと中途半端かな。
   アレンジの芯を一本通したら、ぐっとアルバムが締まったのでは。(5)みたいに途中から
   ディストーション・ギターが入るような混沌さも面白いけど。彼女はこのミスマッチをあまり意識してなさそう。

   フィル・コリンズのソロを。これは89年盤で、かなりヒットしたんじゃなかったっけ?
267・Phil Collins:...But Seriously:
   大ヒット"No jacket required"の余勢をかって、アレンジを煮詰めた拡大版。完成度は高い。
   だが、あまりにも真面目。もはやここに瑞々しさは無い。パジャムの音作りが
   時代を経て悪いほうに働き、どの曲も同じように聴こえてしまう。
   バラードはチープな打ち込みリズムボックス、アップはフェニックス・ホーンズの飛び交いと、トレードマークが類型的になった。
   前作よりキャッチーに仕上げたのは良くわかる。けれども、メロディを
   あっさり曲に仕上げ、パワフルさや作りこみに欠ける。ここに収録された曲のモチーフを
   合体させ、合計で半分の曲数くらいにまとめたら、もっと強力になったのでは。耳ざわりはいいが・・・。

   ソロ2作目。"恋はあせらず"のカバーがヒットしましたな。82年作。未聴だった。
266・Phil Collins:Hello,I must be going!:☆☆
   アレンジや曲調にバラエティを持たせ、フィル流のプログレやポップスを模索、
   キャッチー路線を探ろうとする過程の盤、と感じた。しかしパジャムの音作りは
   今となっては平板。フィルのドラミングを全面的に味わえる盤なだけにもどかしさも。

   トニー・ウィリアムズがブルーノートへ65年に吹き込んだ盤。
265・Tony Williams:Spring:☆☆★
   アルバム全体のイメージは、静けさ。爆発せず、クールにまとめた。
   小刻みなスティックさばきが聴きもの。シンバルを繊細に刻み、空気を柔らかく埋める。
   (2)では完全ソロだが、テクニックはひけらかさず。リズミカルな細分化グルーヴを味わえた。
   他の曲は凄腕ミュージシャンをずらり並べつつ、冷静に叩く貫禄ドラマーぶりで魅せる。
   フリー要素をうっすら漂わせた、浮遊感が特徴。
   シンバルのパターンは曲によって場面ごとに細かく変えてる。さりげなく、すごい。

   グラミーにノミネートされたインスト・ジャム・バンドらしい。07年作。
264・Modern groove syndicate:Ms.Popular:☆☆
   ジャム部分をなるべく減らし、曲目増やした構成を狙ったらしい。さくさくと
   進む音楽はタイトな部分もあるけれど、ちょっと硬いかな。ライブでの熱狂は想像できる。
   スローよりもアップで突き進む勢いが、味のようだ。

   予備知識無しでドラマーがリーダーのトリオ編成。アイルランドにて録音してる。
   何となく面白そうで買った。オーネットやモンク、コルトレーンの曲も吹き込んだ。
263・Keith Copeland:Round trip:
   ジョージ・ラッセル他、さまざまな盤に参加のキャリアを持つ。本盤はソロ名義で2作目。
   一聴して重たいリズム感のドラミング。つんのめらず、どっしりと鳴る。
   かといってヘヴィではないが。ブライトな響きのギターを含めたトリオ編成。
   収録はベーシストが2曲提供、ほかは既存曲を演奏した。あまりドラマーの顔が見えてこない盤だ。
   シンバルワークは細かい。でも、骨太感が残るのはなぜだろう。
   アルバム全体として耳ざわりはいいが、強烈な個性も欲しかった。

   予備知識無し。トロンボーンとテナー、ベースにドラムの白人ジャズ。08年の
   録音で、カリフォルニアにて録音された。なんとなくジャケが気になって購入。
262・Cosmologic:Eyes in the back of my head:☆☆
   ミドルテンポで構築性の高いジャズをやる。キメがいろいろ決まるあたり、
   けっこう譜面が多そうだ。のんびりくつろぎながら、ほんのりハード。
   ライブで単調かスリリングか、良くわからない。不思議なムードのフリー。
   高速で疾走せず、淡々とアンサンブルを構築が志向か。

2009/9/21   最近買ったCDをまとめて。

   明田川荘之の新譜、彫刻ジャケ4部作の第2弾。今回はボーカル入りもあり。
   コンボ編成、ソロとライブ3音源をコンパクトに一枚にまとめた。
   最近のライブで良く弾いている、タイトル曲のCD化が嬉しい。凄まじく熱い演奏。
261・明田川荘之:メニーナ・モッサ:☆☆☆☆
   アルバム・コンセプトというより、この時期の明田川を切り取った作品。
   良く演奏していた"メニーナ・モッサ"を軸。猛烈に燃え上がる、コンボでのライブ・テイクだ。
   前後に愛娘とのデュオと、ピアノの深夜ソロではさむ構成。
   甘く滴るような明田川の、熟成したピアノを楽しめる一作。

   テナーサックスでバッハのチェロ独奏曲1~3を演奏した一枚。96年作。
   なぜジャケットに清水のフルネームを漢字でクレジットしてないんだろ。
   匿名性を狙ったわけでもなさそうだが。
260・Yasuyuki Shimizu & Saxophonettes:Cello Suites 1.2.3:☆☆☆★
   真摯にバッハへ向き合った作品。すると微妙な音色の雑味が気になってしまう。
   豊富なエコーでマスクされても、ごくわずか強かったり、かすれ震える音色が。
   サックスはもっとふくよかな音が出るはずだ。
   "ギーグ"などでは故意にひしゃげた音を出すが、これはファンキーさを狙ったのか。
   むしろ影で動く低音の響きのほうが効果的だった。
   演奏自体は穏やかで丁寧。スローな曲だとまるで、フレーズ切り貼りかのごとく
   瞬間で鮮やかに表情が変わる場面も。全般的に厳かだ。

   マイケル・ジャクソンのシングルを。ミックス違いを聞き比べてみたかった。
   どちらも5曲入り。本盤はアルバム"BAD"より、タイトル曲。
259・Michael Jackson:BAD:☆☆
   "ゴーストバスターズ"を思い出すイントロだなあ。ハーモニーのプラスティックな
   響きが気持ちいい。ダンス・ミックスはそれほど突飛なものじゃ無し。
   クリックみたいに小刻みなビートがクールに曲を飾る。

   同じアルバムから。傾きポーズの曲。
258・Michael Jackson:Smooth Criminal:☆☆☆
   シングル・テイクを入れずにミックスばかりを並べた構成が潔い。これまた
   突飛なミックスでなく、中間部やイントロにダブを入れた程度だが。
   チューブ・ドラムのコミカルな響きがキュート。"Bad"もそうだが、パーカッションの
   細密なアレンジが丁寧だ、と改めて思った。
   本人のギミックたっぷりなシャウトも含めて。

2009/9/5   バーゲンのCDをあれこれ見繕ってきた。

   07年発売の黒人女性ソロ。イギリスが拠点かな?予備知識無し。
257・Ebony Alleyne:Never look back:☆☆☆★
   軽快な打ち込みで、歌声に滑らかなグルーヴを感じた。
   いかんせんクレジットが小さく文字潰れでまったく読めない・・・。
   メロディはキャッチーで耳ざわり良い。アレンジは練られてる。
   さほど声を張り上げぬボーカルを含めて、上品かつ気軽に聴ける一枚に仕上げた。
   バカラックあたりを連想する、ちょっと古めかしいムードが漂う。07年の盤と思えぬ仕上がり。
   サウンドは良くできてて、惹きこまれた。

   男女混成の6人組グループ。予備知識無し。ソウルっぽいといいな。81年作。
256・Rumple Stilts:Skin:☆☆☆★
   ジャケットのいなたい感じと逆に、洗練されたアレンジ。ちょっと緩いが。
   メロディはきれいで男女ボーカルの掛け合いを踏まえたハーモニー・
   アレンジ。ミディアム~スローが聴き応えあり。ラフな音作りがもったいない。
   後半に続くアップはリズムがちょっとちぐはぐかな。

   ローリン・ヒルの98年作。確か、未聴。本盤はヒットしたはず。
255・Lauryn Hill:The Miseducation of Lauryn Hill:☆☆☆★
   歌を巧みに混ぜたヒップホップ。耳馴染み良い一方で、一筋縄で行かぬ箇所も。
   打ち込みビートだが、生演奏も生かしてる。
   雰囲気はギャングスタでもパーティでもない。歌を混ぜつつ、たんたんとラップする。
   "ハートに火をつけて"のフレーズを織り込んだ(6)の揺れるリズム感が心地よい。
   打ち込みビートだが、生演奏も生かしてる。全編が温かみを残したクールさ。
   乾いたリズムの響きがきれいに響いた。穏やかでも芯はパワフル。歌は語りかけるように。

   インドのラブ・ソングを集めたコンピのようだ。ざっと見た限り、
   録音年とかクレジットがまったく無い。
254・V.A.:Priye(Dearest)-Love Songs:☆☆★
   スクラッチ・ノイズが聴こえる曲もあり、けっこう昔の録音な気もする。詳細は不明。
   伸びやかなこぶしと多層するパーカッションのリズムのからみが肝。
   どの曲もしっとり聞かせるより、前にずんと出てきてアピールするイメージが強いな。
   弾力ある、ときに平板に聴こえるメロディも特徴か。つうっと細長いフレーズが
   こぶしでぐいぐい揺れる。若手だけじゃなく、ベテランもいそう。
   歌いっぷりからの想像ながら。(7)など、スーフィに通じるパワフルさも感じた。

   日本のDJ4人が集まったミックスCD・・・かな?クレジット不明で詳細わからず。
253・V.A.:Flat 4 Vol.1:☆★
   ほとんどがDJの自作トラックで、合間に曲を挟んだ構成かな?名義だけでは
   良くわからず。DJ名義のトラックはリズム・パターンにウワモノをサンプリングした
   作品で、隙間多くゆったりとグルーヴさせる。シャープさをあえて
   おさえたか、妙に寛いだほのぼのな雰囲気が全体を漂う。都会よりものどかな風景が似合いそう。

   ブラック・アイド・ピーズが06年に発表したリミックス集のEP。
252・The Black eyed peas:Renegotiations:☆☆
   オリジナルと聴き比べられて無いが、印象的にはダブ的に曲を引き伸ばし、
   リフを強調していそう。ふわふわしたダンサブルさが心地よい。

   セネガルの男性二人組ユニット、のようだ。詳細不明。95年作。
251・Positive Black Soul:Salaam:☆★
   アフリカ要素をところどころに混ぜたヒップホップ。スリルはぬるめながら楽しめた。
   ギャングスタよりパーティ系のイメージあり。シビアなライムかもしれないけれど。
   根本のところでダンサブルだ。

   ジャケットは当時見てたが、未聴。5人組黒人コーラスの92年作。
250・Troop:Deepa:☆☆
   ときにマイケル・ジャクソン、ときにプリンス。流行りものではあるけれど、
   妙に個性がはっきりしない。売れ線を狙いつつ、中途半端。
   のぺっとしたコーラスはこの時代特有。それでもすっきりまとめてるほうか。
   そつがない。けれども強烈な何か、時代を超えた何かを見出せなかった。
   (9)のバラード風味の曲は良かった。

   これはジャケも見た記憶無い。6人組黒人コーラス、91年作。
249・The Doo-Hop legacy:Rappin is fundamental:☆☆☆★
   ほのかな生演奏ファンクネス、メロディあるサビ。ラップが基調ながら
   ウタモノのグルーヴもいっぱい。基本はパーティ・ラップ、いっぽうで不穏さも
   曲によっては漂わす。聴きやすいヒップホップだ。これはいい。

   ホイットニーの3rd、90年作。スティーヴィー・ワンダーが参加とは知らなんだ。
248・Whitney Houston:I'm your baby tonight:☆★
   時代を考慮しても、打ち込みリズムがどったんばったんとうるさい。特にアップテンポ。
   バラードがまあまあ聴ける。歌は上手いと思うが、突き抜ける極端さを
   つい求めたくなる。ベストが(4)かな。(10)もまずまず。
   ちなみに(9)のスティーヴィー作品はプロデュースとアレンジもスティーヴィー。
   録音場所からして、演奏もスティーヴィーじゃなかろうか。
   最期のウインウッドのカバーはなんじゃこりゃ。どういう脈絡だろう。


2009年8月

2009/8/23   最近買ったCDをまとめて。

   久しぶりの達郎の新曲2曲入りEP。さらに今年のツアー音源を1曲収録した。
247・山下達郎:ぼくらの夏の夢/ミューズ:☆☆☆☆
   ダブルA面扱いだがアップ・テンポの"ミューズ"でなく、スローを前に置く
   構成が、同世代音楽を意識の達郎らしい。滑らかなバラードの良さよりも、
   むしろ瑞々しいピュアさを表現した"ミューズ"の打ち込みサウンドにぐっと来た。
   どちらも弦をかぶせ、ふくよかさを強調が特徴か。
   ツアー音源は"アトムの子"。あえて同世代性を強調する冒頭コメントが産む躍動感が、生々しい。

   元GbV,ロバート・ポラードの新譜は22曲入り。自らのレーベルから、トッド・トバイアスの
     プロデュースで製作された。ゲストでジム・ポラードが参加。
246・Robert Pollard:Elephant Jokes:

   船戸博史(b)のソロCD-R。07/7月録音だが、リリースは最近だった気が。
   大澤香織(p)、芳垣安洋(ds)、小森慶子(as,cl)が演奏に参加。
245・船戸博史:通り抜けご遠慮ください:☆☆☆★
   バラエティに富んだアルバム。短い即興風からドラマティックな大作、
   クールな演奏からアグレッシブなブロウまで。ひとつのテーマを突き詰めず、
   さまざまな要素を曲ごとにアピールが狙いか。芳垣のタイトなビートに乗って、
   船戸のベースはさまざまな表現を魅せる。今までふちふなのイメージが強かったが、
   本作聴いて船戸のジャズっぷりに惹かれた。

   08年リリースの映画音楽集。ボイスを中心の作品らしい。
244・John Zorn:film Works XXII The last supper:☆☆☆
   女性中心の声によるアンサンブル。ミニマルなアプローチもジョンは意識したようだ。
   パーカッションが飾りのように、ときにずしずしと鳴った。
   シンプルなパターンのメロディが波打つように繰り返される。
   即興要素は皆無、きっちり譜面化された、厳かな和音のアカペラを詰めた。
   計算と加工による幻想の野生性。ブックレットの豊富な写真を見ながら聴くと、
   人工的な構築さをひしひし感じた。音楽そのものは聴き応えあり。中世の
   シンプルな宗教音楽を下敷きに、もっと抽象さを増した。
   ジョンの代表作とは言いがたいが、多彩な方向性のひとつを象徴する作品。

   詳細不明、ホーン中心のジャズ・コンボらしい。面白そうなので購入。07年作。
243・The Haggis Horns:Hot Damn!:☆☆
   ファンキー・ジャズながら、ドラムが妙にタイト。機械的なビートで
   グルーヴがロジカルになってしまい、いまいちのめり込めなかった。
   ウタモノだと揺れが気持ち良くなるときもあるが、今度はホーンがのっぺり。
   ライブは知らないが、どうも本盤ではきれいに整えすぎた感あり。

2009/8/12   最近買ったCDをまとめて。

   Pluramonのリミックス集で、メルツバウが1曲参加。他のミュージシャンに
   ハイ・ラマズ、モグワイ、ATOMなども。バラエティに富んだ顔ぶれ。00年作。
242・Pluramon:Bit Sand Riders:☆☆
   バラエティをほんのり感じるコンピ。さみしげな電子音が通奏低音か。
   シューゲイザーな要素も。音楽としてはそうとう淡々。
   明るいけれどどこか内省的な世界。最期にメルツバウが吹き飛ばす。

   ラブジョイが08年に発売したアルバム。
241・Lovejoy:あの場所へ:☆☆☆
   ほんかしたムードだけでなく、通低する寂しげな空気が印象に残った。
   聴いていて、心を締め付けられる。タイトなリズムも雰囲気をせきたてず
   静かに音楽を構築した。穏やかで情緒的なポップス。

   ビリー・ジョエルの文字通りのデビュー盤、ほとんど売れなかったが。71年作。
   今はきっちり再発されるから嬉しい。
240・Billy Joel:Cold spring harbor:☆☆☆★
   のちのアルバムで聞けるポップさとは、ほんのり違ったピアノマンぶり。
   小粋さが滲むメロディが楽しい。甲高いピッチでビリーは歌い続ける。
   ドラマティックな展開をかすかに残した豊かな曲は、聴きものばかり。
   (8)では低音と高音を使い分け、スケール大きく演出した。
   どの曲もピアノのリフが練られてる。このころのライブ音源って、残ってないかな。

   持ってたかな、この盤。でも100円だったので迷わず購入。ダブりでもいいや。
   プロデュースがクレイマーの後期シミー盤、83年の作品。
239・Fly Ashtray:Tone sansations of the wonder-men:☆☆
   やっぱりこの盤、持ってた。
   改めて検索して、フライ・アシュトレイが継続活動と初めて知った。09年にもアルバム出している。
   本作は7枚目の作品。録音はノイズ・ニュージャージーながら、録音はバンド自身。
   プロデュースはクレイマーと連名だが、ほとんどクレイマーがタッチして無いかも。
   ところがアシスタントにテス・クレイマーの名前があったり、良くわからない。
   サウンドはほんのりサイケな空気が漂う。バンドとして勢い一発でなく、混沌さも残す
   奇妙な作品に仕上げた。ふっと耳を引くメロディもときおり現れるが、アルバム
   全体を構築するほど、強烈な個性までは聴き取れず。

   UB40、97年の作品。これも100円だったので、何となく購入。
238・UB40:Guns in the ghetto:☆☆
   全英7位まであがったヒット作で、歌詞はもしかしたらシビアなのかも。
   曲調は軽やか、打ち込み中心でふわふわと進むレゲエ。BGMによさそう。
   (7)は映画"Speed2"のEDに使用された。

   イヤーエイク・レーベルのヘビメタのコンピ集が、安かったので購入。
   カテドラル、カーカス、ナパーム・デスなど参加の94年盤。
237・V.A.:耳栓~Earplugged:
   間違い探しを聴いてるような気が。強固なジャンル・スタイルを持つオムニバスで、その世界へ
   慣れてないから仕方ないけれど。つくづくデスメタルへの親和度が自分に足りないな、と。
   時々出てくるポリなアプローチやリズムの処理に興味を惹くけれど。
   根本的なところで刺激が単調な気がしてしまう。

2009/8/11   最近買ったCDをまとめて。

   N.E.R.Dの04年2ndアルバム。全米チャート6位に到達し40万枚を売り上げた。
236・N.E.R.D:Fly or die:☆☆☆★
   アグレッシブで前のめりなリズム処理が楽しい一枚。ネプチューンズは
   この軽快で浮き立つ雰囲気が楽しい。どの曲も小気味よいが(2)や(5)へ
   特に惹かれる。生演奏要素を残した合成ニュアンスが上手い。実際にはバチバチにループ編集されてるが。
   中盤でのほのぼの路線もユニーク。隙を作らない。(8)の4つ打ちは60年代ポップも
   連想したが、はたして本人らの意思はいずこに。濃密で情報量の多いアルバム。

   スペインのユニット?詳細不明。ジャケットの中世的なムードがなんとなく
   気になって購入した。95年の作品。
235・El ultimo De La Fila:La Rebelion De Los Hombres Rana☆☆
   ブラジル音楽っぽい響きのウタモノ。打ち込みドラムやのっぺりした
   シンセ・ストリングスの音が妙に強いミックスで、曲によっては仰々しさを
   感じてしまった。ジャケットの中世風ヨーロッパとは違うアプローチ。
   詳しいミュージシャンの経歴を知らないが、どういう関連があるんだろう。

   ブラジルのダンス音楽、ズークのジャンルで活躍するSSW。これが1stかな。95年作。
234・Chico Cesar:aos vivos:☆☆☆
   ギターの弾き語り、それもシンプルな爪弾きがメイン。あとはパーカッションが少々。
   サンバ、でいいのかな。ジャンル的には。独特のユーモラスにひねる
   節回しに慣れると楽しい。ところどころ声色みたいに声色変えたり、細工もちょっと。
   ライブ盤なためか、サービス精神を発揮した歌いっぷり。かなり淡々な
   進行だけど、すこーんと真っ白な色のサウンドは楽しい。ほのぼのアグレッシブな感触。
   これが1stなら、すごい実力だ。手馴れた堂々さが溢れてる。

   アイランドからの2ndで、サニー・アデが世界的に打って出た83年のアルバム。
233・King Sunny Ade:Synchro System:☆☆☆☆★
   強靭で柔軟なグルーヴに満ちたアルバム。09年の今、はじめて聴いて本盤の先進性を
   感じるのは難しい。すっかりこのサウンドの真髄は浸透した気がする。
   全世界向の盤と思うが、エレクトリック要素はごくわずか。トーキング・ドラムと
   パーカッションが延々と漂い、ギターのかすかなリフが飛ぶ。ハーモニーと
   演奏が繰り返され、濃密な音楽を作った。音数の多寡にかかわらず、眼前に提示された
   流れは隙が無い。すっきりしたアレンジと思わせ、細部まで目配りが行き届いた。
   一方でノリ一発で作ったと思しき箇所もあるのだが。
   そうか、この生々しい雰囲気を封じ込めた勢いこそ、本盤の賞賛されるべきポイントかもしれない。
   軽快なビートをミニマルに畳みかけ、ビートの霧が降り注ぐ。

   ゴスペル・デュオ、ビービー&シーシー・ワイナンスのベスト盤。96年発売。
232・BeBe & CeCe Winans:Greatest Hits:☆☆★
   楽しめた。きっちりしたプロダクションとアレンジ、世俗曲のカバーも含め
   親しみやすい曲が並ぶ。普通に聴いたらソウルと何ら違いなし。強烈な
   個性をあえて抑え、寛げるアルバムに。それも、ゴスペルか。

2009/8/9    注文してたCDが到着。

   思い切って買っちゃった。100枚組のクラシックの協奏曲を中心の廉価盤ボックス。
   40年~50年代の録音が中心か。当時の有名演奏家がずらり。
   今では簡単にCDで手に入らぬ音源だってあるかもしれない。とりあえずじっくり聴きます。
   収録曲は基本的に、有名曲ばかり。入門にちょうどいいかも。ボリュームを除けば。
231・V.A.:Meister Konzerte:Masters of music:☆☆☆☆★
   2年越しでようやく耳を通せた。盤起こしっぽい音源もあるが、演奏はもちろん粒ぞろい。聴いてて胸震わされる演奏多く、
   貴重で手軽なコンピレーションだ。これを手がかりに、ぐいぐいと
   深みにハマりたくなる。廉価として、ぜひ聴いて欲しいボックス。

2009/8/6    最近買ったCDをまとめて。

   GbV関連の旧譜を2枚。本EPは"ROBERT POLLARD IS OFF TO BUSINESS"のシングルで
   アルバム未収録2曲を含む3曲入り。CD千枚、アナログ500枚のみプレスの08年盤。
230・Robert Pollard:Weatherman and skin goddness (EP):☆☆☆★
   ハイテンションに疾走しつつ、組曲風に盛り上がる。キャッチーな(1)を筆頭に、良い曲が次々現れる小気味よいシングル。
   (2)は(1)とテンポ感は似ているが、もう少しセンチメンタルさを足した。
   滑らかで時折高く跳ねるメロディが耳へ柔らかく馴染む。サビでどたすか鳴るシンプルなフィルもいい。
   よりギター・ロックに軸足置いたのが(3)。ハードさは薄いが、ギターのストロークを
   目立たせた印象あり。このメロディもロバート風の甘酸っぱさ。
   デュオのように歌い継ぐスタイルが新鮮だ。

   00年にLP500枚限定でリリース盤のユニットをCDで05年に再発。
   メンバーは過去のGbVメンバーなトビンやミッチら。
   CD化にあたり、ボーナスが7曲ついた。ちなみにCDも千枚限定。
229・Hazzard Hotrods:Bigger Trouble:☆☆☆
   ロバート流の録りっぱなし一発、が炸裂した。ライブ録音のクレジットながら
   スタジオっぽい音像だ。ほんのりミニマル、リフ一発で即興的に作った印象。
   どの曲も短い。ギターの轟音リフで押さず、メリハリつけた。
   50年代のロックンロール的なアプローチも幾つか。わいわい録音したのを、そのまま作品化っぽい。
   曲はどれも投げっぱなしで、聴き混むタイプの作品とは言いがたい。マニア向け。
   まるでデモテープをそのままCD化みたい。そこがロバート流だけど。
   "Solid Gold"みたいな、シミジミくるミディアムのロバート節な曲は嬉しい。
   ボートラは同時期の録音だろうか。音のヌケはボートラの方が、ちょっと良い。

   実は今まで聴いたこと無かったと、こないだ気づいた。邦題は"青春の軌跡"。
   全曲をシリータと競作したセルフプロデュースの第2作目で71年リリース。
228・Stevie Wonder:Where I'm coming from:☆☆☆☆
   中身は、悪いわけない。確かにちょっと荒削りな箇所もあるけれど。後に花開く寸前、
   破裂しそうなパワーがところどころ洩れてるような、そんな盤。
   アレンジがちょっと大仰かな?ほんの、ちょっと。歌声はばっちり。最期の曲では
   エコーチャンバー使ってるかのような、怒涛のロングトーンも聴かせた。
   スティーヴィー色に塗りつぶされつつ、後年のような独自世界まで完全に到達しない。
   あくまで、過程の一枚。とても華やかな、過程。

   マサダ:ブック2の比較的最新版。これは08年発売、第9弾。
   トレイ・スプランスを中心の8人編成。チェンバーっぽいのかな。
227・Secret Chiefs 3:Masada Book 2 - The Book Of Angels Volume 9: Xaphan:☆☆★
   濃密濃厚なチェンバー・プログレ。時にシンフォニックな展開を見せるときも。
   曲調は確かにマサダだが、中間部は別世界に飛び立つパターン多し。
   本シリーズでは異色な作品かも。アンサンブルは隙間無く、ぎっしり音を詰め込んだ。
   スリリングではあるが、一方ですごく厚い。

   マサダ・クインテット名義でジョン・ゾーンも1曲に参加。09年盤。
   なぜマサダからゾーンが抜け、ユリ・ケインとジョー・ロヴァノを立てた。
226・Masada Quintet Featuring Joe Lovano:Masada Book 2 - The Book Of Angels Volume 12: Stolas:☆☆☆★
   穏やかなアンサンブル。マサダの一人が変わり、ピアノが入っただけで
   ずいぶん雰囲気が変わった。よほどゾーンのフリーキーなサックスを刷り込まれてるのか。
   アップテンポからスローまで、比較的長尺の作品を楽しめる。
   時に優美に、余裕を持って。ふっくらした落ち着いたマサダ。


2009年7月

2009/07/26   最近買ったCDをまとめて。

   エグベルト・ジスモンチの旧譜を。ナナ・ヴァスコンセロスとのデュオで
   84年にECMからリリース。
225・Egberto Gismonti/Nana Vasconcelos:Duas Vozes:☆☆☆★
   ライブ盤みたいなジャケットだが、スタジオ録音。静かにとりとめなさそうな
   音をゆったり交換し合い、穏やかで広がりある世界を作った。ジャンルわけは無意味。
   ただ、くつろいで思うがまま音を出し合ってる感じ。
   細かく聴くもよし、ふっと聴き流すもよし。両方で楽しめる。

   チャーリー・ヘイデンとのデュオで01年、ECMより。
224・Egberto Gismonti/Charlie Haden:In Montreal:☆☆☆☆
   瑞々しいジスモンチの音の立ち上がりを、がっしり支えるヘイデンのベース。
   時に奔放にジスモンチが音を遊ばせる、ふわふわした無造作な立ち回りも楽しい。
   (2)や(4)の甘く華やかなムードが特に印象に残った。
   ロマンティックな(5)もいい。躍動的なギターの(6)にわくわくする。
   これも聴くたびに新しい魅力に気づく。ヘイデンの軽いチューニング音なども入ってるが、
   編集せずにそのままCD化したのかな。

   ブレイキーの85年吹き込み。当時のサイドメンは、テレンス・ブランチャード(tp),
   マルグリュー・ミラー(p)ら。"モーニン"などの旧曲2曲に、新曲(?)を2曲。
223・Art Blakey & Jazz Messengers:Live at Sweet Basil:☆☆★
   安定したハード・バップ。ある水準を落とさず、溌剌と駆ける。
   しかしスリルとは別次元に聴こえた。常に安定感を感じるためか。
   流麗勝つスケールの大きさを匂わす"Moanin'"が顕著。悠々とテーマを
   奏でるが、オリジナル演奏の粘っこい香りはここに無い。
   本盤の聴きものは"Jodi"のテーマ。ソロはつい聴き流すのに、
   テーマの華やかな鮮烈さは常にわくわくした。

   ビリー・バングの旧譜を。97年の作品でピアノ・トリオとの共演。
222・Billy Bang:Bang on!:☆☆☆★
   全般的にインプロではなく、曲を演奏してる。
   サン・ラ作品も1曲取り上げた。ピアノ・トリオと組み、スイング色を残した
   真っ直ぐで熱いオーソドックスなバイオリンを聴かせる。フリー気味に行く場面はあるけれど、
   全体を通して貫かれたのは軽快で馴染み良いアンサンブル。肩の力を抜き
   すいすいと溌剌にバングはフレーズを操った。情感を匂わせて。
   派手なフリーとスイング、双方を味わいたい人にお薦め。コンパクトとバラエティさを両立させた。

   05年の作品。ビッグバンド的な編成との共演か。
221・Billy Bang:Vietn*M:Reflections:☆☆
   アドリブ要素はもちろんあるが、10人程度の編成でアレンジされた組曲を
   演奏、がコンセプト。テーマはベトナム戦争か。数曲でベトナム旋律を取り入れた
   ボーカル入りもある。バイオリンだけが前に出過ぎることも無い。
   トータル・アルバムでかっちりした印象。アルバム全体の緊迫感を保ちつつ
   スケールの大きな寛ぎを楽しむ。
   整ったアンサンブルはベトナム民謡の数曲を除き、全てバングの作曲/アレンジ。

   ターンテーブル奏者と即興演奏の企画盤で、01年から03年にかけ、NYで
   行われたイベントから良テイクを抜粋したもの。メデスキ・マーティン&ウッドや
   イクエ・モリが奏者として参加してる。04年の盤。
220・V.A.:Billy Martin Presents The turntable sessions Vol.1:☆☆★
   前衛インプロから歌伴までさまざまなタイプのセッションを集めた。
   変に実験的アプローチに限定をしないため、バラエティに富んで聴いてて楽しめた。
   ターンテーブル使いもノイズ発振機よりもスクラッチなど正当DJ路線が多いか。
   あえてばらばらな要素を詰め込んだコンピのセンスを一番評価したい。

   詳細不明。何となく面白そうで買った。3人組の即興かな。
219・Homler/Waegeman/Fajt:Homler/Waegeman/Fajt:☆★
   インプロ・ボーカリストのアナ・ホムラーがリーダーのセッション盤。基本はインプロながら
   ダビングで厚みを出してるようにも見える。おそらく彼女にとって3作目にあたる
   初期の作品。ほんのり影をまとうが、デカダニズムとは無縁。ゆったりした
   グルーヴ的な流れを意識した結果、たまたまこんな不安定にたゆたう音像になったのか。
   強烈なベクトル感で引っ張らず、共演者のインプロへ寄り添いつつ、音を積むかのよう。
   したがって、ある場面ですごく魅力的な場合もあるけれど、偶発的で歩留まりは悪い。

2009/7/23   注文してたCDがまとめて到着した。

   シカゴの中堅ジャズを、ヴァイブ奏者のジェイソン・アダシェウィッツをキーワードに
   何枚か購入。これは彼のソロアルバム。ヨッシュ・バーマンがコルネットで参加。08年作。
218・Jason Adasiewicz:Roll Down:☆☆☆★
   淡々としたスリルを追求したジャズ。ドラムが入っても、リフをかっちり決めても、
   ビート感やグルーヴは希薄。空気をぐいっと押し広げたような
   時間の停滞と漂う緊迫を求めた。派手なテクニックやソロの応酬も薄い。
   ヴィブラフォンの奏でる空間をぬったりと埋めてゆく。奇妙な味わいが魅力な盤。

   ベースのジェイソン・エイジェミアン(?)のアルバム。ドラムは田中。
   テナーが入ったトリオ編成のユニット、スモークレス・ヒートを基本単位に
   ゲストでジェイソン(マリンバを演奏)ほかが参加の形態か。08年作。
217・Jason Ajemmian:The Art of dying:☆☆☆★
   ベーシストのリーダー作なためか、特にどの楽器が前面に、は無い。
   まんべんなくソロをとる形で、浮遊感あるジャズを奏でた。ごく短い
  曲を挿入は、トータル性を狙ったか。ジングルみたい。場面ごとにスイング、ビバップ、
   フリーと音楽世界がズルズル変わっていく面白さがある。
   最終曲の長尺ライブは、ぐっと肩の力を抜き淡々と演奏した。

   トランペッターのクインテット編成。シンセやピアノも弾いている。
   ジョン・ハーンドン(ds)のクレジットに、"Tenori-on"までクレジットされて
   面白かった。09年のアルバム。ジェイソンはヴァイブを演奏。
216・Rob Mazurek Quintet:Sound is:☆☆☆
   一曲づつはノービート。パルス状のリズムが漂う。リズムは抽象的でウワモノの
   ソロは、張り詰めたテンションを持つ。ソロ回しはさほど意識せず。
   緊迫さはもっと煮詰められそうだが、演奏にどこかゆとりを感じた。
   聴いてるうち、グルーヴが滲むのを味わえる一枚。
   コラージュや前衛まっしぐらな志向も漂わない。あくまでも自らの美学で固めた。
   物語性も希薄。ときおりミニマルなところも。何曲かはジャム・セッションを元にしてそう。

   月刊メルツバウの鳥シリーズ、第6弾はカモがテーマ。
215・Merzbow:13 Japanese Birds vo.6:Kamo:☆☆☆★
   がっつりロックな味わいのアルバム。怒涛で襲い掛かった。
   ドラミングとハーシュの融合が息をつかせず、まっしぐらに疾走する。
   ツーバスが踏み鳴らされた。デス・ビートには軽い。どこかすっきりしてる。
   ハーシュが歪んだエレキギターに聴こえる場面が幾度も。

   コステロの新譜はカントリーへ再び目配りし、あっという間に録音したそう。
214・Elvis Costello:Secret,Profane & Sugarcane:☆☆☆★
   骨太。アコースティックなアレンジながら、叙情さや繊細とは別物、野太く
   芯の太いサウンドを作った。バラードでもセンチメンタルに流れない。
   既発曲を混ぜたりと、どことなく企画盤的な印象を受けるけれど、通低する
   ロックンロール感覚がかっこいい。"Almost blue"でのカントリーに対する憧れや
   "King of America"での柔らかな雰囲気とも違う。本盤でのコステロは、ごつっとしてる。

   ウータンの新作はメンバーのソロ作をコンピ的に集めた構成かな。RZAはエグゼクティブ・プロデューサに
   一歩下がり、自らの楽曲も含めプロデュースをしてない。複数のプロデューサを立てているが、
   めだつのは"The Revelations,Bob Perry & Noah Rubin"のクレジット。
213・Wu-tang clan:Wu-tang Chamber Music:☆☆★
   ウータンの新譜とはちょっと違うみたい。実際の演奏は"リヴェレイションズ"名義。
   ヒップホップを生演奏で、がコンセプトか。聴いてて違和感無いクールぶり。
   曲によってはラップで、ウータン1軍も参加。RZAはエグゼクティヴ・
   プロデューサーの位置づけで、曲のプロデュースも人に任せてる。
   ウータンらしい不穏さとジャストなサウンドの展開は刺激的。編集もしてるっぽい。
   グルーヴに身を任せる愉しさ。これをライブで実践できるってことか。
   全体のイメージは、ちょっと軽め。爽やか気味に進んでゆく。

   米インディ・レーベルの紹介コンピだろうか。メルツバウが参加で購入した。
   2枚組み、04年作。他の参加ミュージシャンは不勉強で誰も知らない。
212・V.A.:Hydra Head Presents: 2XH Vs. HHR Vol. 1..."Where is my robotic boot?":☆☆
   Disc 1は電子ミニマルなアンビエント。ふっと聞き逃してしまっても、集中力をもどすと
   淡々と同様の世界感が継続する。Merzbowが浮きそうなほど、静かな作品が多い。
   ノイジーな音色を使ってても。Merzbowは静か目の作品を提供してるが、音圧がまったく違ってかっこいい。
   Disk 2はハードコアやヘヴィな作品を集めた。むしろこっちにMerzbowを収録すれば
   メリハリついてよかったのでは。なおDisc2は類型的で、いまひとつピンとこず。
   後半3曲のめまぐるしいビートは耳を惹いたが、吉田達也を聴いたほうが楽しいし。

2009/7/20   今日買ったCDをまとめて。

   初めて見た。ジョン・ゾーン、ラズウェル、中村達也のトリオで02年の12月に東京で
   録音の音源を、東京とNYでそれぞれミックスの2枚組。03年の発売。
211・バック・ジャム・トニック:Buck jam tonic:☆☆★
   サイケに加工された東京ミックスと、長尺でほぼストレートにセッションを
   まとめたNYミックス。ラズウェルのイメージだと、なんとなく逆な気がする。
   ちなみにラズウェルがNYミックス。同じセッションを加工したそうだが、
   二枚がそれぞれ楽しめる。セッションそのものは、ストレートに打ち鳴らすドラムが
   ちょっと真っ向勝負過ぎて、物足りなくはあるけれど。

   仙道さおりと林正樹のユニット、アルカイックの1st。03年発売。
210・アルカイック:Archaic:☆☆☆★
   即興要素もあるが、きっちりアレンジされたアンサンブルの印象が先に立つ。ピアノの溌剌な音色が素晴らしい。
   ともすればパーカッションより弾むくらい。
   もちろんパーカッションの多彩さも聴きもの。次々に楽器を変え、音像へぶわっと拡がりを与えた。
   デュオの対話よりむしろ、二人で構築する幅広い風景が狙いだろうか。
   スケール大きい演奏が心地よい。特にジャンルわけはこだわらぬようだ。

   さがゆきがエリントンを歌った04年の盤。バックは渋谷毅と峰厚介。
209・さがゆき:Day Dream:☆☆☆☆
   軽々かつ飄々、真正面からエリントンをがっぷり咀嚼したボーカル盤。
   スキャットやフェイク、インプロはとりあえず横に置き、切々と滑らかなメロディを
   さがゆきは歌い上げる。これが素晴らしい。喉を張り上げるでもなく、
   ごく自然に、すっと。渋谷のピアノ、数曲で参加の峰の軋むサックスも盛り上げる。
   渋谷のピアノは気負わず柔らかなタッチで、豊かにジャズを今回も提示する。
   ふっくら、スローに。どの瞬間を切り取ってもロマンティックが零れる素敵な盤。

   鬼怒無月と鈴木大介のギター・デュオ。07年のアルバム。
208・The Duo:The Duo:☆☆☆★
   ヒーリング・ミュージック、とまとめそうになって慌てる。即興的な要素もあるが
   基本は一曲を短めにして14曲を突っ込んだ。互いのソロは1曲づつ。あとはメジャーから
   ひねったところまでバラエティ豊かなカバーを詰め込んだ。
   おそらくライブではアドリブを多くして刺激的なソロをいっぱい披露してるんじゃ。
   本盤ではテーマをゆったりひねりつつ、即興よりもアコギ2本のアンサンブルを主眼に置いた。
   寛いで聴けるアルバム。

   スパコネの初期作品に3曲のリミックスを足した05年の盤。
207・Spanish Connection:Early works+:☆☆☆
   吉見征樹の音楽へ既に馴染みあり、独特な編成が産む妙味をすらっと聴いてしまい残念。
   初めてなら、強烈なインパクトあったと思う。MASARAとは違う流麗で洗練されたスピード感あり。
   曲によってはゲストを招き音像に膨らみを出した。フラメンコが基調かもしれないが、
   タブラがぐいぐいグルーヴが心地よく、バイオリンの音は透き通る。BGMでは済まぬ、
   わくわくする存在感だ。ところどころダブ的なタブラの処理も面白かった。
   クラブ・ミックスの3曲も楽しめた。特にアフリカンな側面がよかったな。

   フレッド・フリスのギター・デュオ盤。天鼓が1曲、ボイスで参加。92年録音。
206・Fred Frith-Rene Lussier:Nous Autres:☆☆☆☆★
   素晴らしく刺激的。クキクキひねったフレーズと、前のめりに弾むビート感覚が抜群。
   デュオ盤が本作のみとは、凄く惜しい。86年のライブ音源を中心に
   92年録音のスタジオ作4曲を加えた作品のようだ。
   全編、ザクザク尖ってる。プログレ的なアプローチとインプロを
   全面に出したざらつき感。音像の隙間を絶妙に生かした。一曲を短めにめまぐるしく
   変わる構成もよい。思わぬ快盤。どっちがフリスでどっちがリュシエか不明だが、
   二人の音楽へ、強烈に興味出てきた。

   シカゴのトリオにNYのテナー。それだけのタイトルで購入。01年盤。
205・Jerry Steinhilber trio with George Garzone:Chicago trio New York tenor:☆☆
   耳ざわりのいいバップだが、熱く燃える凄みは無い。洒落たジャズ・クラブで
   ぐいぐい弾き倒すスタイルが身上か。滑らかなテクニックはあるので、すらっと聴ける。
   バラードのつややかなメロディを楽しむほうがいいか。

   黒人トランペッター。ハード・バップだといいな。92年の作品。
204・Graham Haynes:Nocturne Parisian:☆★
   ロイ・ヘインズ(ds)の息子だそう。ハード要素は皆無。突っ込まず上品さを保った。
   各種パーカッションで小刻みなリズムを作る。派手なポリリズムに至らぬまでも。
   シンセで厚い和音をかますのが、ちょっと好みと違うが・・・。リズムはあくまで
   飾りに留まり、あまりファンキーに突っ込みはしない。
   洗練を狙いつつ、アフリカンな精細ビートの味わいを振りかけた。
   アヴァンギャルドとはちょっと別ベクトル。エキゾティックなBGM狙いか。

   黒人テナー奏者。スタンダードっぽいアプローチな予感だが、ファンキーを期待して。00年作。
203・Don Braden:presents the contemporary standards ensemble:☆☆
   根本的に不満足なジャズじゃないんだけど・・・。
   2ホーンのハード・バップ体制ながら、どこかゆとり持った落ち着きでファンキーと少々違う。
   グルーヴは狙ってそうだが。訥々としたベースと、跳ねるドラムのリズムも
   上品さが滲み出る。アップテンポでぐわっと押すのは趣味と違うのか。
   ナイト・クラブでムーディに聴くならいいかもしれないが。
   オリジナルのほかにスティーリー・ダン、ダニー・ハザウェイ、スティーヴィー・ワンダーの曲も
   取り上げてる。この選曲もちょっとなんか、客層が読めない。

   音楽性不明。バイオリンが入った編成が面白そうで購入。フランス録音で09年作。
202・Forgas Band Phenomena:L'Axe du Fou:☆★
   プログレっぽいジャズロック。インストでソロ回しとリフの繰り返し。
   ソロ・パートの演奏聴くと悪くは無いが、根本的に熱気が無い。のっぺりした録音の
   せいかもしれないが。無造作に聴こえてしまう。ひとつの原因はドラムとリズム処理。
   ドラムがかなり単調に刻むのと、裏拍の強調が希薄。波打つリフも、
   バック・ビートをがんがん利かせたら、カッコよくなると思うがなあ。

   バッハの平均律クラヴィーア曲集の全曲版をピアノで演奏。92年の4枚組。
   リヒテルが72年~73年にかけて吹き込んだ音源を収録した。
201・Sviatoslav Richter:J.S.Bach:The well-tempered Clavier:☆☆☆★
   滑らかで、上手。曲よりも演奏へまず興味が行った。どこまで行っても
   流れる音はブレないで歌わせ続ける。ダイナミズムも激しく、唐突にどかんと
   フォルテシモで弾きはじめて驚いたり。全体にうっすらかかったリバーブは
   当時の流行なのか。ナルシズム的な予感は考えすぎか。口当たりよくスイスイスイと
   旋律が流れ、滴りはとめどない。引っ掛かりとかタメとか無しに、とにかく
   きれいに弾き続けられてるよう。この曲、ピアノだと派手すぎるのだろうか。まさか。

   シューベルトのピアノ・トリオを聴きたくて購入。1番と2番を収録した。
   96年の吹き込み。奏者が有名なのかは、不勉強で良く知らず。
200・Van Immerseel/Beths/Bylsma:Schubert Piano trios D 898 & D 929:☆☆☆☆
   瑞々しくもなまめかしい。きれいな旋律が交錯する。もったいぶらず重たくも無い
   すっとスムーズなトリオのかみ合わせが、つくづく心地よかった。
   演奏面ではピアノがちょっとこもり気味。もうちょいくっきり前に出て欲しい。
   だけどむしろ、今のバランスが浮遊感の表現には向いてるのかも。
   鋭いバイオリンがぐっとアンサンブルを前に引っ張る。痛快。

   ピアノ・トリオで何かないかな、と買った一枚。黄金トリオの演奏で
   ラヴェルのピアノ三重奏:イ短調と、チャイコのイ短調:op30を収録。
199・The Arthur Rubinstein Collection:Ravel & Tchaikovsky:Piano trios:☆☆☆★
   全体に重厚。バイオリンがねっとり動き、ピアノは滑らかに高まった。
   チェロはぐっと、ふくよかに鳴る。躍動的で複雑、華やかなラヴェルと
   スケール大きく滑らかで鋭いチャイコフスキー。チャイコのほうが似合ってるかな。
   ラヴェルは第二楽章の鮮烈に弾ける旋律が素晴らしくかっこいい。録音のほんのり
   こもった音色が煙のような味付けを加えた。
   チャイコは古めかしげな雰囲気が、不協和音の部分で玄妙に響く。
   クラシックに詳しくないが・・・録音のせいか、鮮やかさの点でもどかしかった。

   06年のコンピ。静かなヒップホップをまとめたアルバムかな、と買った。
   ネットで見つけた解説はここ
198・V.A.:HueAndLaughAndCry:☆★
   耳ざわりのいいテクノ風味のヒップホップ集。ギャングスタ的な凄みも
   パーティ・ラップな明るさも双方が"要素"として練りこまれた。
   ダンスには・・・どうだろう。低音が軽めな気がする。実際はわからない。
   少なくとも家で、気軽なBGMに聴くにはぴったり。
   するすると音が流れ去ってゆく。

   詳細不明。05年のインスト豪州ヒップホップ盤らしい。2ndにあたる。
197・Hermitude:Tales of the drift:☆☆
   シドニー近郊のブルーマウンテン出身Luke DubsとEl Gustoのヒップホップ・デュオ。
   ラップが入るトラックもあるが、基本はインストっぽい感じ。
   寛いだスローぶりで、基本は打ち込みビート。生楽器やオリエンタルな要素も加え多彩な色合いに仕上げた。
   即興要素は無い。ちょっと暗めの雰囲気で、アレンジに多様性を加えたため
   リラックスしたBGMには向かないか。むしろフロアで静かに身体を揺らすのに似合いそう。
   ダンス・ミュージックだから、そもそもそちらの用途が優先か。

   女性ヒップホップが聴きたくてジャケ買い。もっとも本盤はウタモノだった。07年作。
196・Cheri Dennis:In and out of love:
   つるつるにピッチやテンポをコントロールされた、歌物ソウル。隙間が多い。
   あんまりこの手のサウンドは好みじゃないが、何曲かで聴けるころころ流れる
   細かいリズムの符割は耳を惹いた。繰り返し聴きこむ曲調のタイプとは違いそう。

   これもジャケ買い。06年の発売で、日本でも10万枚以上売れたとネットでみつけた。知らなかった。
195・Ak'Sent:international:
   前のめりに押し寄せるヒップ・ホップ。鼻っ柱強くまくし立てる。"All I need"や
   "If U were my baby"あたりのメロウな要素はまれ。
   隙間多いのが、ポップに聴こえるひけつか。シンプルなビートであびせ倒さんとする
   ムードに馴染めるかが、楽しめる鍵。
   ぼくは家で聴くには、ちょっと暑苦しい。アウトドアにはいいかも。
   数曲で聴けるアフリカンな打ち込みビートは、ちょっと興味でた。トラックメイカーで言うと
   ジャガノウツがプロデュースの作品とか。

2009/7/19   最近買ったCDをまとめて。

   名古屋のサックス奏者、小野良子とユニットを組んだ新譜。
   サックスの多重録音で高音部強調の厚みある音に仕上げた。
   比較的新めのレパートリーが中心、全部が旧曲かな?
   個人的には、大好きな"Pig Black Clack"を取り上げてて嬉しい。
194・Sax Ruins:Yawiquo:☆☆☆★
   新旧レパートリーを取り上げ、多重録音のサックスが分厚く身軽なハーモニーを
   奏でるのは単純に爽快。ベース的な音域が少ない分、飄々とした魅力を産んだ。
   惜しむらくは吉田のヴォイスが無く、即興的なスリルがいまひとつなこと。
   とはいえルインズのファンは聴いて楽しめるアルバム。

   内橋和久と吉田達也のデュオの新作は、CDは一枚だがDVDつき。
193・内橋和久&吉田達也:インプロヴィゼーション3:

   KIKI BANDが07年にポーランドでやったライブ盤。08年の発売。
192・KIKI BAND:Alchemic life:☆☆☆★
   溌剌とした演奏がクリアな録音で楽しめる。破綻が無いゆえ、ライブと思えぬ場面も。
   臨場感よりもクオリティを保ち続けるアンサンブルの爽快さを味わう一枚。
   スピーディに疾走するグルーヴがたまらない。
   最期に"ヴェトナミーズ・ゴスペル"で、しみじみとまとめた。

   沖至が75年に吹き込んだアルバムが再発。サイドメンは藤川義明、翠川敬基、田中穂積。
191・沖至:幻想ノート:☆☆☆★
   沖至と藤川の二管が生むスリルにまず耳をそばだてる。サイドメンは
   沖へストレートにぶつかり、緊迫した音像を生んだ。リズムやグルーヴでなく
   どしゃしゃフリーでもない。テーマはくっきり譜面ながら、アドリブは自由。
   物語性の強いジャズだ。

   マクスウェルの新譜。けっこう歌声がプリンスっぽい。
190・Maxwell:Black summer's night:☆☆☆
   プリンスの影響をひしひしと感じたアルバム。ギタリストとの共同プロデュース
   ながら、さほどギターを前面に出さない。バンド・サウンドの生演奏でファンクネスを描いた。
   といいつつ、密室多重録音的なムードがまず全面にたつ。
   生音ながら個人的なさみしさを前面に出した、入れ子構造の複雑さが魅力の作品。
   メロディはキャッチーだが、がぶっと耳を掴むフックとは違う。密やかに耳へ滑り込むかのよう。

   91年にエクストリームが発表のコンピ盤。メルツバウの参加で買った。
   ジム・オルークも曲提供あり。
189・V.A.:X-X section:☆☆☆
   エレクトリック・ドローンのミニマル的な楽曲が多い。全般的には静かに
   ゆったりと進む。最期にメルツバウが、一気に破壊を魅せるけれど。
   アルバムとしては、レーベル紹介のコンピかな?

   アルタード・ステーツ、95年のアルバムで同年にNYニッティング・ファクトリー
   でのライブ音源を収録。
188・Altered States:4:☆☆☆
   今聴くとシンプル。全て即興、20分以上が2曲と5分が一曲。
   ひとしきり盛り上がり、やがてスローへ。また熱狂へ。それが幾度も繰り返される。
   三人がてんでに疾走せず、かなり対話を意識したアンサンブルだ。フレーズの
   明快さやコール&レスポンス的な場面もちらりと。わかりやすい即興で、後年の
   折り重なった複雑さはさほど無い。ただしもちろん、いきなり場面展開する
   スピード感覚はばっちり聴ける。譜面物が混じっていそうな明確さだ。当時の貴重な記録。

   斉藤徹が96年に発表のアルバム。黒田京子(b)と伊藤啓太(b)を基本ユニットに、
   4人の琴奏者を加えた編成。
187・斉藤徹:Stone out:☆☆☆☆★
   玄妙な響きと荘厳なムード。するすると弦の爪弾きが近づき、たちまち高く舞い上る。
   激しいピアノの炸裂。低音が鈍く蠢き、すぐさま一糸乱れずアンサンブルが唸る。
   鋭い瞬間が連続し、美しいメロディが浮かび上がる。細かく構築されつつ
   スピーディな勢いを崩さない。スリリングな演奏に魅了されっぱなしの一枚。すごい。
   ずどんとボリュームを上げて聴きたい一枚。

   アルヴェ・ヘンリクセンが07年にリューネ・グラモフォンへ発表のソロ。
186・Arve Henriksen:Strjon:☆☆☆★
   混沌アンビエントな世界感を存分に出した。もはや生演奏かどうか良くわからない。
   アイディアを次々に曲にまとめ、長尺をあえて避けたようだ。
   心地よいひとときを過ごせるが、つかみどころ無いのも確か。
   ときおり現れる、尺八のようなトランペットがわずかな道しるべか。

   ノルウェーのスサンナが08年発表、カバー曲中心のソロ。
185・Susanna:Flower of evil:☆☆
   スローな曲調のカバー集。オリジナルをほとんど知らないが、アレンジの必然性に
   首をかしげた。たとえばプリンスの"Dance on"。ファンクをスロー・バラードになぜアレンジ?
   ニルソン等で有名な"Without you"。バラードでなぞる必然性は?
   甘ったるく仕上げず、時にノイジーさや音響的なアプローチも演奏はカマし、
   不安定で奇妙さを演出する。それは、いい。全体にスサンナの色合いへ歌声を
   塗りつぶす。この価値観や世界感に共感できるかで、本盤への印象が変わる。

   米ヒップホップの廉価盤4枚組アンソロ。09年発表で70年代から00年代まで
   けっこう有名ミュージシャンも含めたコンピ。どういう権利関係かな。
184・V.A.:Hip Hop Anthology:☆☆☆
   ギャングスタからパーティ・ラップまで。幅広く収録した。ヒット曲とアンダーグラウンド、
   双方のエッジは避けて比較的中庸が中心か。マイナーな名前に混じり、ぽろぽろと
   有名なラッパーの名前も見かける。どういう基準のコンピか
   不明だが、ここ何十年かのラップを気楽に概観にいいのでは。けっこう聴かせる曲も多い。
   解説や詳細クレジットが皆無なのは、廉価版の常で何も無い。

   NYのインディ・黒人ソロ。09年の新譜。
183・Darien:If these walls could talk:☆☆☆★
   打ち込みベースのゆったりしたソウル。歌声は滑らかで、寛いで聴ける。
   特に"Sail thru"のコード感覚やグルーヴが飛び切り心地よい。
   メロディ感覚がスティーヴィ・ワンダーに通じるものがあり、本人も受けた影響を隠さない。
   ほのぼのとFMで楽しみたい音楽。決して強烈に熱くならず、ひたひたと
   ソウルを振りまいた一枚。

   インディ盤で珍しい再発(?)とpopにあって、興味もって購入。男性ソロ。
182・Trott:Fool to let U go:☆★
   つるっと聞流してしまった。ラップを噛ませたミニアルバムで、
   7曲中4曲が同一曲のバリエーション。不穏さとメロウを中途半端にあわせた感あり。

   トラッドを基調にドローンを操るイギリスのダニエル・パッデンがソロ名義で
   リリースした作品。録音は00~03年。
181・The one ensemble of Daniel Padden:The owl of fives:☆★
   アコースティックなアンビエント・ドローン。音を無闇に伸ばさず、
   空気そのものを切り取った印象も。するすると聞き流してしまう。(6)のアラビックな
   ムードが、なんだか心に残った。

   日中香らのノイズ奏者によるコンピのようだ。97年~98年の作品かな。
180・V.A.:Soundtracks for bride of sevenless:☆☆
   ハーシュなアプローチもあるが、基本は静かめの電子音楽やコラージュ。
   ミニマル的といえば聴こえはいいが、一本調子が多く聞き流してしまった。
   ぱっと耳を弾いたのは、ハーシュっぽい電子音がうねるmagwax"Gracie Jugend"ほか数曲くらい。
   最期の透明で雄大な奥行きがある曲の、Yukiko"Toyama park 3AM"もいいな。

   NYの前衛ミュージシャンかな?詳細不明。04年の作品。
179・Michael J,Schumacher:Stories:
   全て04年の作品ながら、曲によって風景が違う。
   各曲は長め、じっくり披露した。
   すなわちトータル性でなく、シューマッハの作品集な趣き。
   (1)は小さな音が弾けるエレクトロ・ミニマルが基調。ドローン的な要素もうっすら。
   偶発要素を重視してるようだ。生楽器が加わるのも、スポットで音を出すくらい。
   さざなみの電子音に混ざり、ときおり音が鳴る。しずしずと穏やかな風景の味わい。
   (2)だとテープ・コラージュ風の展開と生楽器や声の短い音が迫り来る。
   スリリングな風味。ぷつぷつと電子音の流れも現れる。もともと彼はこの手の音が好きなのかも。
   (3)はダーク・アンビエント。洞窟の中をコソコソうろつくかのごとく。
   やがて世界は電子音できめ細かく塗られてゆく。
   (4)の冒頭で鳴るピアノはMidi制御とある。継続したメロディがある分、この曲が
   素直に聴けるかなあ。しとやかなアンビエント・ノイズに
   きれいなピアノがかぶさるアレンジ。中盤からは電子ミニマルとの交錯も。全体で30分もの長尺。

   ジム・オルークがゲスト参加したWhite outの00年作。
   White outはNYの即興デュオでシンセ/fl+dsが基本構成か。
178・White out:Drunken little mass:
   ランダムなミニマル。抽象的な電子音が飛び交い、ドラムが無造作に鳴る。ファン向けか。
   奏者への思い入れ、もしくは音楽へ物語を読み取るか。いずれかが必要。
   せめぎたてず、どちらかと言えばのんびりな印象。ドラムがせわしないので
   ライブ演奏だと、そこそこ緊張感あると思う。ミニマルな音色がもうちょい
   エッジ立ててシャッキリなら、印象変わったかも。どうもぼんやりだ。

   PC音楽のコンピみたい。イギリスで編纂、ジム・オルークが一曲提供した。
177・V.A.:Or some computer music:☆☆
   ミニマルが詰まったコンピ。連続音が中心だが、鳴り続けず空白を生かす場面も。
   唐突さはあってもノイジー要素は控えめ。淡々と電子音が続く、ある種、寛げる盤。

   詳細不明、ドイツの前衛音楽レーベルからの作品のようだ。03年作。
176・M* P** 3***:Beschutzte jugend:
   シンプルな電子音のミニマルが延々と続く。好みの問題だが、(1)みたいに
   複数の音がゆったり絡む音像はきれいだと思った。単にパルスが続く最終曲だと
   途中で飽きてしまう。

   00年にドイツ録音。基本はg,vo,tuba,dsの編成な前衛作らしい。
   本拠地はニュージーランドかな。
175・Greg Malcom:What is it Keith?:☆★
   ジョン・ゾーンに通じる人力コラージュ要素あり。ただしスピードは遅く
   もっさりと場面が変わってゆく。40年前の音楽なら、新鮮だったかも。
   00年の発表時にやりたいことが掴めない。完全に退屈じゃないから、なおさら。
   鋭角なスピードを乗せるだけでも、だいぶ印象変わると思うが。

2009/7/11   最近買ったCDをまとめて。

   GBV関係の新譜を2種。まずロバートがRichard Daviesと郵便録音で作ったコラボ盤。
174・Cosmos:Jar of jam ton of bricks:☆☆☆
   呟きっぽい旋律がリチャード・デイヴィスの持ち味だろうか。ロックでがんがんに
   突き進まず、穏やかなムードが漂った。起伏豊かなメロディと静かな旋律が
   きれいな比率で混ざり、飄々と面白いアルバムに仕上がった。もっとも大人なムードでなく
   どっかサイケなところが、いかにもロバートらしい。

   トビアス兄弟とボブのユニットが新譜を。息が長く続いてる。来日しないかな。
173・Circus Devils:Gringo:☆☆☆★
   ストレートなポップスに仕上げず、片っ端から曲を奇妙な味わいにまとめた。
   完成度や統一性はまったく無いが、丁寧な録音で散漫さは感じない。
   GbVやソロでの投げっぱなしな一筆書き曲とは違った、サイケな風味が楽しい。
   激しいタッチは控え、どこかねじれたドリーミーさが漂う。

   かなり久しぶりな印象の、津村和彦(g)新譜。全編でアコギを弾いた。
   サイドメンはビル・メイズ、マティアス・スベンソン、ジョー・ラ・バーベラー、太田恵資。
172・津村和彦:Ole:☆☆☆☆
   溌剌な演奏が炸裂した傑作。どこかラテン風味を感じるのはなぜだろう。
   アドリブのやりとりだけでなく、アンサンブルがもたらす温かい
   グルーヴがまず聴きもの。テンションを無闇にあげずとも、じわっと滲む。
   さまざまな要素を、ごく滑らかにひとつの音楽へ収斂した。これはライブを聴いてみたい。

   シカゴの中堅ジャズメンによるアルバムらしい。初めて聴く。
   コルネット奏者がリーダーでas,vib,b,dsの編成。09年発売。
   サイドメンはKeefe Jackson(as),Jason Adasiewicz(vib),Anton Hatwich(b),田中徳崇(ds)
171・Josh Berman:Old Idea:☆☆☆☆★
   サウンドは全般的に隙間を多く、テンポはゆったり。だけど緊張感が途切れない。
   あえてカテゴライズするならば、前衛寄りになるのか。
   コルネットのリーダー作だが、無闇に自分だけ前に出たりしない。
   さりげなく引き締めたのがジェイソンのヴァイブ。フリー一辺倒ではなく、テーマを
   二管で重ねる場面も多し。単なるソロ回しで終わらず。互いの音が噛みあって
   アンサンブルを構築する。和音感覚も具体的に言えないが、不思議な響きあり。ふわふわと
   漂いつつも、強烈な前のめりのベクトル性を常に感じた。

   大友良英がONJO名義のライブをまとめた2枚組ライブの第二弾、07年発売。
170・大友良英ニュー・ジャズ・オーケストラ:LIVE VOL.2 PARALLEL CIRCUIT:☆☆☆☆★
   ONJシリーズの総決算。各地のライブがごく自然にまとまった。
   独特の影をまとった色合いと、高周波が舞う表現。ストイックさが溢れ、
   リズムが勢いよく、ハタくように弾ける。ソロ回しやグルーヴよりも、全体を漂う
   じわじわくる音圧の重たさに惹かれる。ボリュームたっぷり、尺も長く、気軽には
   聴けない。しかし、じっくりと聴きたい。

   佐藤允彦の六本木ピットインでライブ盤。ボーナストラックを1曲つけて
   再発したようだ。サイドメンはスティーヴ・ガッドとエディ・ゴメス。
   録音は88年6月3日に吹き込まれた。
169・佐藤允彦:Double Exposure:☆☆☆★
   てれん、と優雅に垂れる上品な佐藤のピアノを、シンバル多用の精妙ビートが埋め尽くした。
   ゴメスのベースも音色は丸く、決してワイルドに吼えない。
   速いペースでも、基本おしとやかな雰囲気が漂う。繊細に紡ぎあげたグルーヴは
   ガラス細工のよう。おっとりした強固な佐藤のピアノはリズムの着実さに支えられ、
   華やかに盛り上がる。ガッドのシンバル・ワークをくっきり聴ける。かっこいい。

2009年6月

2009/6/27   最近買ったCDをまとめて。

   月刊メルツバウの5月発売盤。今度のテーマはウズラ。
168・Merzbow:13 Japanese Birds Vol. 5: Uzura:☆☆☆
   (1)は鳥の電子音がけたたましくさえずり、ドラム連打がやむことなく続く。
   空気を常に埋め尽くし、ハーシュがさらに塗りつぶした。基本アイディアを
   ベースに置き、さほど変化しない。ミニマルとは異なるアプローチだが、流れはシンプル。
   (2)はリズム・ループを基調にうねりが烈しく。中間のダブ風展開が痛快だ。
   ドリーミーな空気にドラムが絡む(3)で、ふうわりと幕を降ろした。

   結成30周年を記念した、30枚組ボックス。ほとんどが未リリースのライブ音源という。
   ブックレットも充実してるが、音盤ごとの参加メンバー・クレジットが無く残念。
   さまざまなメンバーが参加しており、どのテイクに秋田昌美が参加かも知りたかった。
167・非常階段:The Noise:

   60~70年代にアフリカはギネアで活躍したポップ・グループ、ベンベアの活動を俯瞰した2枚組。07年の発売。
166・Bembeya Jazz National:The Sliphone Years:☆☆☆★
   キャリアを俯瞰できる好コンピ。歳を経るにつれ、次第に演奏がしなやかで
   なめらかに。リンガラ的な要素もあるが、若干重たい。盤起こしのため、
   若干音がこもっているが、それもまたよし。粘っこく引っかかり、スムーズに
   ダンサブルさへ流れないところが特徴か。

   "最速ラッパー"らしい。04年のリリースでヒット曲"Slow jamz"を収録。
165・twista:Kamikaze:☆☆
   ヒット曲以外は高速ラップを強調したミドル・テンポが耳に残る。まくしたてを
   突出させるためか、トラックの構成はかなりシンプル。ときに下世話なほどの
   気だるいメロディが現れる。妙に場末なムードを感じてしまった。

   日本企画、デビュー25周年記念か。2枚組CDとPV収録DVDのセット。
164・Frankie goes to Hollywood:Return to the pleasuredome:

2009/6/20   最近買ったCDをまとめて。

   95年にEvidenceがリリースした2枚組のサックス・セッションを集めた盤。
   ジョン・ゾーン、リー・コニッツ、フィル・ウッズ、スティーヴ・コールマンなど
   さまざまな組合せのセッションやソロを楽しめそう。
163・V.A.:The Colossal Saxophone sessions:☆☆☆★
   豪華な顔ぶれを集めたコンピ。ハードな展開は押さえ、ゆったりと余裕を
   見せたジャズを並べた。ジョン・ゾーンもさほど突出しない。
   過激さや意外性を求めず、さまざまなサックス奏者の組合せを味わう盤か。
   プロデュースも勤めたジョー・チャンバーズのドラムは、シンバル・ワークが絶妙の心地よさ。
   しかし、全体的にヌルいのに・・・なんか惹かれるコンピだ。メロディを全面に出したせいかな。

   シカゴの・チャイ・ライツの全盛期、ブランズウィック時代のアルバムを
   まとめた2枚組。これが第一弾で、下記の盤を収録。
   まず、初期シングルを5曲。さらに1stから順に"Give It Away"(1969),
   "Like Your Lovin' (Do You Like Mine?)"(1970)からは4曲を。
   あとは"(For God's Sake) Give More Power to the People"(1971)、"A Lonely Man"(1972)
   "A Letter to Myself"のA面までを収録。
162・The Chi-lites:The complete the Chi-lites on Volume 1:☆☆☆☆
   Chi-lites名義の初期シングルからまとめて聴ける。最初からユージン・レコードが
   グループの主軸と作曲クレジットからよくわかった。こうなったら
   前身ユニットのChanteursやDesiderosも聴いてみたくなる。贅沢な話だが。
   アルバムを減るにつれ、チャイ・ライツはどんどん甘く整ったサウンドへ
   右肩上がり。アンサンブルもばっちり。特に"(For God's sake)Give more power to th people"(1971)あたりから隙が無い。
   ホーン隊の音色がちょっとヌケてるとこが難点だが。充実したソウルに、しみじみ浸った。

   こちらが第二弾。収録曲は第一弾の続きから。双方とも04年に英エドセルの盤。
   収録は"A Letter to Myself"のB面から始まり、"The Chi-Lites"(1973),"Toby"(1974)、
   ブランズウィック最期の"Half a Love"(1974)に、その後のシングルを4曲と、レーベル全部を俯瞰した。
161・The Chi-lites:The complete the Chi-lites on Volume 2:☆☆☆☆
   完成度バッチリ、円熟した仕上がりの楽曲がつづく。どこかC&W的なほのぼのさを感じる場面も。
   伸びやかなストリングスが、甘くせつなく響いた。
   ちょっと録音がビビッてる音質だが、オリジナルからこの状態だったのかな。
   ゴージャスな中にチープな味わい。

2009/6/13   最近買ったCDをまとめて。

   インドの歌手、ラター・マンゲーシュカルのコンピ盤を二種。微妙に曲がかぶる。
   48年から90年代までを概観したイギリス製のコンピ。解説付日本版を購入。
160・Lata Mangeshkar:Rough Guide to Bollywood Legends:☆☆☆☆
   張り詰めた喉が高らかに歌う。時代によってバックの演奏は微妙に
   アレンジが変わるが、ぐっと声を前に出し、オブリで滑らかに奏でるミックスの
   美学は変わらない。メロディ・ラインの違いも十分に聞き分けられていない。
   これが素敵なのはわかるが、まだぼくは彼女の音楽がどう素晴らしいか、表現できない・・・。
   ハイトーンの滑らかな歌声がきれいで、ふくよかに膨らむのが美しいと思う。

   これもイギリスの編集かな。2枚組で上記と同じ時期をまとめた。
159・Lata Mangeshkar:The Legend:☆☆☆☆
   つややかなハイトーンがたっぷり。当時、生で聴いてたらすさまじかったろう。
   録音はテープ起こしなのか、経年劣化を感じる。しかしそれを超えて
   ラタの歌声はシミジミ味わえる。二枚組のボリュームがうれしい。
   とにかくライナー読みながら、じっくり聴きこみたい。

   9/11をNYで迎えた坂本による、当時のスケッチを集めたEP。02年発表。
158・坂本龍一:Comica:☆☆☆☆★
   ミニアルバムの形式だが、どの曲もじっくり長くアルバム一枚として聴ける。
   メロディが希薄なアンビエント作品で、隙が無くスリリング。合間を縫って
   静かに鳴るピアノの美しいこと。繰り返しだけでなく練られた展開も。
   即興要素と構築性が入り混じる奥行きの深さあり。弛緩せず響く音の世界が素晴らしい。
   坂本のソロ作品でも、屈指の完成度だと思う。

   坂本のサントラ2本目。上野耕路らの作品も加え、オムニバス的な仕上がり。
   「音楽図鑑」から"Self-Portrait"を流用した。86年の作。
157・OST:子猫物語:☆☆★
   キュートな作品。あえて坂本龍一が全曲を担当せぬことが、バラエティに繋がった。
   全般的に小品のイメージが強い。"Self Portrait"は本盤に未収録のほうが
   あとで聴くとアルバム全体の統一性が出たような気がしないでもない。
   坂本ファンなら聴いて損は無いアルバム。もっとも今は廃盤らしい。

   02年にNHKスペシャルの「変革の世紀」に提供したOP/ED曲と、変奏曲を収録した。
156・坂本龍一:変革の世紀:☆☆☆★
   4音の上下だけで切なさを表現する才能に、改めて惹かれた。アルバムは
   楽器編成を変え淡々と同じ曲が演奏される。細部に工夫はあるけれど、即興や
   旋律の変奏が主眼ではない。アンビエントとしてさりげなく聴く盤か。
   とはいえ最終曲で、ストリングスが強力に立ち上る瞬間は素晴らしい。

   大貫妙子が82年に日本とフランスでレコーディングしたソロ6作目。
155・大貫妙子:クリシェ:☆☆☆☆
   訥々としたほのぼのシンセの温かさが心地よい一枚。滑らかな歌声が
   ゆったり響く。(2)、(3)がとても好き。坂本龍一の素朴さを生かした
   アレンジと、フランス勢のロマンチシズムが滑らかにアルバムの中で溶けた。
   速度を感じさせぬおっとりした大貫の歌声は素敵。
 
   泉谷しげるがLoser(ギターがチャボから藤村へ変更)と共演名義では最期のスタジオ盤で、91年作。
154・泉谷しげる:叫ぶひと囁く:☆★
   演奏はまずまず。パワフルなドラムはもちろん、聴きもの。しかし曲が小粒。
   バンドとの一体感が遊離し、泉谷の歌はloserを必要としてなさそう。物語性が歌に増え
   はみ出した。"裸のコワイヤツ"がその典型。バンドの勢いはあるが、むしろアコギ
   一本でも成立する両面性を感じた。泉谷の嗜好が変わったか。
   シンセや打ち込みで空間を広げるアレンジも登場した。
   アレンジから強烈に惹かれる曲は無く、散漫なイメージが先に立ってしまった。

   00年にポリドールからリリースしたソロ。このあと泉谷はインディーズへ向かう。
153・泉谷しげる:IRA:☆☆☆
   よくメジャーで出せたな。さまざまなアイディアをぶち込んだアルバム。
   カルテット編成にこだわる一方、泉谷はベースなども重ねてる。
   言葉と音がちぐはぐで、消化不良な印象あり。メロディが耳に残ったり、歌詞が
   すぱんと切れたり。総合的に突き進むまで行かぬ実験作だ。
   アレンジまで含めて、アイディアをそのまま提示した印象。
   ハードエッジを狙いつつ、ツメの甘さが残る。リズム隊の弱さも目立つ。
   吼えるロマンティシズムと畳み掛けるフォーク的なアプローチの混在あり。
   (2)や(10)なんて、いい曲になりそうなのに。
   最期はピッチがユレユレの多重ハーモニーによるバラードで、ねちっこくまとめた。
   なんだかリズムも揺れるけど。この曲のさりげないハイハットの響きは悪くない。
   4分強でいったん(11)は終わり、泉谷による静かなエンディング・クレジットの朗読へ。
   映画の最期のようだ。この演出は新鮮で興味深かった。

2009年5月

2009/5/24    最近買ったCDをまとめて。

   明田川荘之の新譜は08年10/17のライブから1stセット丸ごとを収録した一枚。
   メンバーは楠本卓司(ds)と青木タイセイ(tb,b,fl)のトリオ編成にて。
   タイトル・ソングは早川岳晴の作品を演奏した。
   個人的には"杏林にて"の再録音がとても嬉しい。なお本盤を筆頭に連続4枚の
   アルバム発表予定があるようだ。楽しみ。
152・明田川荘之:Pop UP:☆☆☆★
   1ステージ丸ごと収録はありがたい。MCのボリュームが聴き取りづらく残念。
   楠本の独特なゆったりテンポに、タイセイが切れ味鋭く絡む。フレーズの唸りがいい。
   明田川のピアノは穏やかなグルーヴをたっぷりと。
   大好きな曲"杏林にて"の清々しさ、"Pop up"の躍動感が、特に聴きもの。

   細野晴臣が歌謡曲を中心に提供した作品を6枚のボックスにまとめた。
151・細野晴臣:歌謡曲20世紀ボックス:☆☆☆☆
   企画は素晴らしい。ブックレットも読み応えあった。個々の楽曲も楽しい。
   その点で、細野ファンには自信もって薦められる。
   問題は個々の楽曲コンセプトがまちまちなこと。
   雑多なのと全てに細野がアレンジへかかわってるわけでなく、統一性に欠ける。
   すなわち、まとめて聴いてると疲れる上、飛ばしたくなる。演奏クオリティとか。
   あらためて一気に聴くと、細野のメロディにも、独特の色合いがあると実感した。
   これまではもっとつかみどころ無く、奔放にメロディを炸裂させてるかと思ってた。

   エグベルト・ジスモンチが95年にECMから発表した作品。
150・Egberto Gismonti:Zig Zag:

   チョーン・セックはセネガル出身で、元オーケストラ・バオバブという。
   本盤は05年にインドやアラブの要素も含めて音楽絵巻にまとめた一枚。
   こないだ買ったアフリカ音楽紹介本で気になり購入。
149・Thione Seck:Orientissime:

2005/5/16   最近買ったCDをまとめて。

   月刊メルツバウ・シリーズの第4弾。テーマはカラス。
148・Merzbow:13 Japanese Birds Vol. 4: Karasu:☆☆☆
   生ドラムに電子音。スペイシーな世界が強く、吹き荒れるノイズも
   どこかキュート。大音量での迫力とは別観点で、本作は涼やかな風が気持ち良い。

   栗コーダーと渋さ知らズが互いのレパートリーを演奏しあう競演な企画の新譜。
147・川口義之 with 栗コーダーカルテット&渋さ知らズオーケストラ:渋栗:☆☆☆☆
   栗コーダーの曲を知らないため、渋さのアレンジによるスケール・アップ
   ぶりがピンと来ず残念。逆に渋さのリコーダー版は、寂しげなムードとそれでも
   残る、前のめりな勢いがあって愉快。渋さ演奏版はアドリブ要素をなるべく
   少なめにして、あっさりと短く収録した。栗コーダー版は華麗なフレーズをリコーダーの
   素朴な音色でたっぷり奏でた。曲間をとって余韻を残す。
   レコ初ライブは行きそびれたが、さぞかし盛り上がったろうなあ。

   エディー・リーダー、けっこう久々な気がする新譜。
146・Eddi Reader:Love is the way:☆☆☆☆★
   寛いだアコースティック・サウンド。自作にこだわらず、仲間の曲も気負わず収録した。
   肩の力を抜いて、すっきりしたアルバムを作り上げた。エディの歌声は
   軽やかで、華やかなムードを漂わす。売れ線狙いの派手な仕掛けや、前のめりさは
   一切感じさせぬ。ある昼下がり、気心知れた仲間とさっと録音したかのよう。
   もちろん丁寧に録音され、ラフさは無い。細かくアレンジは練られてる。
   ワルツでしとやかに幕を開けた。隙の無いリラックス。この言葉がごく自然に成り立つ傑作。

   2007年2月ストーミー・マンデーの即興ライブから7曲を収録したCD-R。
145・藤掛正隆+太田惠資:Live album:☆☆☆☆
   ハードコアで骨太の即興。滑らかなメロディから厳しいノイジーな響きまで太田はさまざまに
   バイオリンの音色をばらまく。ループも駆使して。
   ビートを刻むグルーヴィな冒頭から、中盤の混沌に雪崩れるドラム。やがてバイオリンが激しく唸り、再開するドラムのパターンで
   グルーヴを再開させるあたりが特に聴きどころか。フィードバックすら、美しい。
   即興一本勝負でストーリーなしの無手勝流、探り合い蠢くインプロが刻まれた。

   細野晴臣のサントラで当時聴きそびれてた。87年の作品を08年リマスター盤。
144・細野晴臣:源氏物語: ☆☆☆☆☆
   素晴らしく静謐でエキゾティックな音風景が描かれた傑作。時代を超えた普遍性がある。ライナーによると本盤は、
   基本的に音先で作られたそう。映画のイメージを元に。メロディやリズムは基本的に無い。
   細野は雅楽をベースに韓国のイメージを混ぜ、より膨らみを持たせた。
   "銀河鉄道"でのテーマ"揺らぎ"は、本盤にて空気の微細な振動にまで細密化した。
   本作では悠久かつ雄大、気品と奥行きを細かな震えで美しく表現。即興要素が強く、次々と音が漂う。
   シンセを使ったメロディは添え物。むしろアコースティックな音響的アプローチに本作の真髄がある。
   発表は87年。当時、リアルタイムで耳にしなかったのが悔やまれる。
   もっともメロディアスな"藤壺"は製作側の要請で、しぶしぶ付け加えたそう。
   平安時代トロピカルをシンプルに表現で、細野の才能が炸裂した一枚。

   95年の再発盤で78年にNYのラジオ局WKCRへ吹き込んだ音源。
   Polly Bradfield(vln),Andrea Centazzo(per),Eugene Chadbourne(g),
   Tom Cora(vc),近藤等則(tp),John Zorn(reeds)のインプロを収録した。
143・V.A.:Environment for sextet:☆★
   ICTUS主催の伊per奏者、アンドレア・チェンタッツィオが78年のアメリカ・ツアー時に
   録音した音源。隙間の多い抽象的なフリー・ジャズ。時代を考えると、共演者の極初期録音な点でも
   貴重か。初期から方法論は変わらないことがよくわかる。
   ある種内省的な嗜好で、聴くには集中力がいる。ライブだと違うと思うが。
   パーカッション奏者の盤ながら、継続ビートさは希薄。空間を活かした。
   それは2曲収録された、ソロ・パフォーマンスでも同じ。

   詩の朗読へピアノをつけた盤らしい。太田惠資、溝口肇、続木力らがゲスト。02年の盤。
142・谷川俊太郎+谷川賢作:Kiss:☆☆☆★
   無伴奏で谷川俊太郎の自作朗読、5トラックほど毎に演奏が挿入される構成。
   朗読はプロで無い分、生々しく響く。メリハリついて、CD世界に没入するにはいい構成だと思う。

   古楽ユニット、ダンスリーを坂本龍一がプロデュースした82年の盤。
141・坂本龍一+ダンスリー:The end of Asia:☆☆☆★
   坂本龍一はプロデュースと、数曲でパーカッションやオルガンで演奏にも参加。
   坂本の自作曲すらアレンジをディレクターに任せており、どこまで坂本が自分の
   音楽を深くつっこんだかは、良くわからない。演奏そのものはトラッドが
   滑らかに響く気持ちよさあり。坂本の自作曲も、ごくすんなり溶け込んでいる。
   坂本の音楽よりも、トラッドの古めかしくも親しみやすい音楽を楽しむほうがいいかも。
   でも例えば(6)みたいに、テクノ的なアプローチが古楽アンサンブルに
   素直に馴染む場面などは、とてもスリリングだ。

   ドリームキャスト『L.O.L.』の音楽を坂本龍一が担当、00年の発売。
140・坂本龍一:L.O.L.:☆☆☆
   少ない音数で拡がりを出した。ミニマルなアプローチで、親しみやすい。サントラゆえのアプローチか。
   曲調はバラエティに富み、総じてポップ。同じメロディがアレンジや響きを変えて
   登場する。ゲームあっての音楽かもしれないが、ひとつの小宇宙体験としても楽しめた。
   坂本龍一の代表作とは言わないが、才能をすんなりと一枚に封じ込めた作品。

   ムーンライダーズ、05年のスタジオ作。自らのレーベルからリリースされた。
139・The moon riders:P.W Babies Paperback:☆☆☆★
   バラエティ豊か、ソロ作を集めたコンピ盤みたい。テンポは無闇に早くせず、
   ゆったり漂う印象。あれこれアレンジにアイディア詰め込みつつも、隙間が多め。
   インディーズから発売で制約なくなったか。演奏は基本的にバンドで行ってる。

   大貫妙子、97年の作品。坂本龍一とアート・リンゼイがプロデュースした。
138・大貫妙子:Lucy:☆☆☆
   アルバム全体が幾つかの要素にからまり、流れてゆく。前半はテクノできっちり、
   中盤で広がりあるシンセのふくらみでゆったりさせ、ラテン風味を。さらに歌謡曲的なフレーズから
   最期はしっとりと生ピアノとサックスへ。あえてアルバム・イメージを固定させず、
   大貫妙子を素材にオムニバスなアプローチを取ったか。全体をとうとうと流れる
   動きを意識させるところが、ひとつのポイント。
   強烈にはじける曲をあえて置かず、流れのほうがまず印象に残る。
   坂本龍一の"Tango"をカバーで収録。坂本のバージョンよりリズムを希薄に揺らがせた。

   95年発売、ルネッサンスの再結成アルバム・・・らしい。初めて見た。
137・Renaissance:The other woman:
   耳ざわりのよい女性ボーカル盤。シンセの大仰さに若干プログレさを感じるが
   ルネサンスを意識せず聴くほうがよさそう。広がりある音像をシンプルに楽しむ盤か。
   激しさは追求せず、全体にゆったりなイメージを受けた。
   (6)、(10)あたりはプログレっぽいが、ちょっと中途半端。
   全体的にシンセがべっとり。エレキギターも。どうせなら生楽器で攻めて欲しかった。

   ロバート・フリップとデイヴィッド・シルヴィアンの93年盤。初めて聴く。
136・David Silvian & Robert Fripp:The first day:
   基本的に淡々。ギターを軸に楽しめる場面もあるが、ミニマルさがまず耳に残ってしまう。
   えらくストイック。整然さはいらない。ストレートに歪んだギター・ソロと、声の応酬が聴きたい。
   ダブル・トリオなクリムゾンに通じる方向性も感じるけれど。

   詳細不明。98年作でクラフトワークやノイ!に参加というエバーハルト・クラーネマンの作品。
135・Bluepoint underground:in New York city:
   トリオ編成でドスの効いた女性ボーカル、ギターのかきむしりがまず印象に。あと、シンセ。
   無作為の抽象的な即興に語りが載る。どこかインダストリアルでテクノな雰囲気が漂うのは
   なぜだろう。ビート性は薄いのに。正直、堅苦しく重い展開で聴くのはしんどい。
   この音楽もしくは周辺の情報込みなら聴き方の焦点変えられるんだが。

   予備知識なし。ドイツのアンビエント盤らしい。ライナーによると作者のアンドレアス・ルーカスは
   プロデューサーでスピリチュアル・マジシャン、作家などの経歴を持ち、
   本ユニットは聴覚プロジェクト、1stにあたるという。1998年の発売か。
134・Muzak for cages:Slow Glow:
   ほんのり不穏さをまとった、淡々なアンビエント・テクノ。改めて"ブランド力"が必要なジャンルと感じた。
   退屈に聴き流すか、「おお、あの人が作ったのか」と思い入れを無理やり呼び起こすか。
   シンセがパターンをえんえん繰り返すのみ。ミニマル的に追い詰められる
   ことはなく、ただ同じフレーズが続く。60分一曲勝負でなく、6曲に分けた点が救いか。
   しかし"wolf"を筆頭に引き締まった空気感覚は心地よく、まったく無為な垂れ流しじゃない。

2009/5/4   最近買ったCDをまとめて

   大友良英とSachiko Mのユニット、Filament名義で04年に発売した5枚組Box。
   4箇所でのライブ音源(各々20~40分弱)と、1時間あまりのスタジオ録音。
   スタジオ録音は確か、各々の音を一切聴かず録音じゃなかったかな。
133・Filament:Box:☆☆☆☆★
   小さな電子音の佇まいを様々な立ち位置で表現するボックス。願わくば、さらに長尺で
   聴きたかった。当然ながらいい録音ばかり。緊張感とアイディアへ耳をすませて聴く。
   BGMにしても、不思議と成立する。本来、集中力を持って聴くべきか。
   しかしCDゆえに寛ぎをもって味わえるのも確か。
   個々の盤の感想も書いてみた。

Disc 1:☆☆★
   静かなサイン波が淡々と続く。16分ごろから、新しいグリッチ・ノイズが、断続かつかすかに。
   あわせてさらに音量が小さくなり、静寂の奥でかすかな響きが。
   聴こえているのか、自信が無くなる。聴き取れていない、芳醇な高周波があるのかもしれない。
   おそらく、サイン波は20分前後で消えた。わずかな軋み音。
   だが、ボリュームを上げるとわかる。強烈な低周波が出ていることに。
   五月雨のような接触音。やがて消えてゆく。

Disc 2:☆☆☆★
   ヘルシンキ、01年10月11日のライブで22分程度と短めな盤。
   ドローンのサイン波がひたすら続き、極稀に新たな電子音が呟きを炸裂さす。
   ランダムな響きが大友だろう、おそらく。サイン波は頭を動かすだけで響きが変わる。
   落ち着かなく身体を揺すりながら聴けば、ドローンは変貌を続け、
   ときおり加わる新たなノイズは、身をぞくっとさせるスリルあり。

Disc 3 ☆☆☆☆
   静かなサイン波が一本。ずうっと、続く。中盤でもうひとつの電子音が、
   まとわりつくように、かすかな動きを見せる部分が良かった。ミリミリと
   小さなノイズが響く。ボリュームをうんと上げて気づく音、それでも埋もれる音。
   キュートなひとときを封じ込めた。
   02年12月1日、バルセロナでの録音。

Disc 4:☆☆☆☆★
   00年11月6日、ブリュッセルでの録音。冒頭から強度を持ったサイン波が鳴る。
   ときおり歪み、震えつつも真っ直ぐに。新しい電子音が寄り添って
   周辺の空気を震わせる。それも中央のサイン波へ呑み込まれてくかのよう。
   表面をざらつかせ太くなったサイン波は、すぐさま身をスリム化する。
   純度を高めた貪欲さ。ひよひよと肌を振るわせつつ、冒頭から一本やりなところは変わらない。
   たとえばDisc3とはうってかわり、凄みある肉太なフィラメント。ある意味、とっつきやすい。

Disc 5:☆☆☆☆
   本ボックス最長、約1時間に渡る作品。ホーム・レコーディングで
   互いの音をまったく聴かず録音したらしい。呟くサイン波と電子音。
   左右双方に二人の音をミックス、ひとつの世界を作った。
   じわじわ瞬く音が、小さく弾ける。構築性は無い、はず。しかし意味合いをノイズに
   もとめてしまう。解釈の要求をくすぐる音楽。
   耳を澄ます。日常のノイズと溶け合う、スピーカーからの音楽へ。
   ごそごそ言う接触音は、意図的だろうか。どこまでコントロールし、どこまでが偶発の音楽か。
   変化を求め、ボリュームを上げて驚いた。唸る低音が小さく震え続けていた。
   ボリュームを変えなければ、気づかなかった。奥が深い。
   じっくり続く音楽は、ストイックながらさまざまに変化した。

   日本の良質な即興音楽をサポートし続けるImprovised Music from Japanが
   04年に発表した作品。サイン波のみ、60分一本勝負の作品らしい。
132・Sachiko M:Bar さちこ:☆☆☆
   ストイックな作品。冒頭はただ一本のサイン波が鳴り続ける。
   おそらく、音の変化は無い。聴いてるときの身じろぎや耳の位置で
   変化した気がするだけ。身体を動かさず、ただ聴き続けるべきか。
   それともあえて変化を求めるか。この音楽を、どう解釈すればいいのか。頭の中で考えがめぐる。
   30分で二本目のサイン波がようやく登場。1時間一本勝負の
   アイディアを突き詰めた一枚。ここには発想の表出と問題提起がある。
  
   02年に仏のレーベルから。代々木の"オフ・サイト"で発表された作曲集。
   大友良英、中村としまる、杉本拓、大蔵雅彦、Sachiko M、千野秀一らが演奏した。
131・V.A.:Off Site Composed Music Series in 2001:☆☆☆★
   持続でなく断続。ミニマルで無造作。電子音でノイズ。
   独特の世界感がアルバム2枚にわたって続く・・・と、まとめたくなる。
   奏者への思い入れや物語性、音楽世界への執着もしくは空想。
   様々な付加価値を持って聴くほどに豊潤さが増しそう。
   音楽そのものと対峙するには集中力がいる。ライブでなく、CDで聴くには。
   日常の雑音と音楽が混ざっていく。特に横でモーターやPCの
   ファンが唸るだけでも、本音楽の意味合いは変わる・・・いや変わらない?
   オフサイト独特な音楽の記録性では非常に貴重な盤。2枚組を一気に聴き通さず、
   じわじわと味わいたい。収録された強烈なミニマリズムは魅力だから。

   トゥヴァの歌手、サインホ・ナムチュルクのベスト盤。未発表曲もあり。07年発売。
130・Sainkho Namchylak:Nomad: ☆☆☆
   声帯の実力を表現する、超前衛な小品の合間にポップに声を響かす曲を混ぜ
   聴きやすいコンピに仕上げた。入門編にちょうどいいと思うが、
   同一人物の作品と思えぬのも確か。超低音で唸り続けるサインホは
   録音しながらなにを考えていたんだろう。
   本盤で発掘音源はLiveテイクで、時期や場所はいまいち不明。
   Daniel Klenner,Karl Seyer,Uli Soykaとの競演らしい。パーカッションへ小刻みな
   喉歌をサインホがぶつける即興セッション。ちょっと声がオフ気味か。

2009年4月

2009/4/25   最近買ったCDをまとめて。

   ようやく購入。待ちに待ったCD。今までライブで聴くたび、CD化して欲しかった。
   菊地成孔と南博のデュオ・ジャズ盤。選曲はライブで馴染みの曲が多い。
129・菊地成孔/南博:花と水:☆☆☆☆☆
   伝家の宝刀、だったはず。ところが菊地はさらにひねってきた。
   クレジットにはサックスだけじゃなく、マウスピースやリードまで明記する丁寧さ。
   本来、菊地がテナーを持って、がっつり男っぽくブルージーなジャズを想定してた。ライブのイメージから。
   ところが本盤はソプラノが主体。ぐっと洗練さを増し、スタイリッシュに決めた。
   ブルーズのアブラをそぎ落とし磨き上げる。純度を突き詰めた美しさの影に、ほんのりと
   決して消せぬ黒っぽさを残した。菊地のサックスは滑らかにメロディを紡ぎ続ける。
   南のピアノは、もちろん静かに輝く。近年のライブを踏まえ、半分が即興。
   さらに弦カルを入れる荒技で、菊地は聴きやすさの敷居をもっと下げた。
   アルバム全体はひとつながりでスムーズに流れよう構成された。
   BGMに似合いそうな丸く弾む音の響きは、東京ミッドタウンとコラボのためか。
   しかし、菊地・南デュオの音楽だ。手に馴染んだレパートリーをずらり並べ、極上のジャズを
   がっつり聴かせた。ロマンティックな菊地のサックスは抜群。確かにテナーやバリトンの比率を
   上げてほしかった。それは別の機会を待とう。ようやく、二人の音楽を聴きたい時に
   好きなだけ聴けるんだから。
   (9)でのテナーに、しみじみ。このデュオはもっと録音物を発表してほしい、ほんと。

   MM誌最新号で紹介されてたラップの新譜。なんとなく面白そう。
   ソマリア出身でエチオピア音楽をサンプリングしてるらしい。
128・K'Naan:Troubadour:☆☆☆★
   うわずるように足元が震えるビート、浴びせかけるグルーヴ、平板にすいすい滑るラップ。
   さまざまな要素が合わさり作る、不穏な色合いに個性を感じた。これが彼の
   独自性なのか、ソマリア・ラップのノリかはわからないが。
   詰め込みすぎず、すかすかでもなく。奥行きを見せつつリズムとウワモノを
   整然と積み、もやっと曖昧にエッジ加工したトラックの作り方もかっこいい。
   スピーディながら、ちょっと足踏み。ひょうひょうとしたムードな盤だ。
   あっけらかんな(7)はポップ。押し寄せるイメージの(12)も耳にひっかかった。

   なんとなくジャケ買い。ソウルの棚にあったが白人。クラブ歌手みたいなジャケ。
   熱いR&Bを歌うのかな。おそらくインディ・レーベルなカリフォルニアのZionから出た。
127・Justin Grennan:Things I should have said...:
   スティーヴィー・ワンダーのイメージがいっぱい漂うサウンドは、プロデューサーや
   作曲、演奏で全面協力した、ダラス・クルーズの影響もあるようだ。
   歌声はまあまあ。ちょっと青白い線の細さあり。ファンクネスも薄く、黒人音楽ファンが
   夢見がちに背伸びしてる感じ。憧れに近づくよりも上澄みすくって満足してそう。
   南部風のアプローチですら、上品にまとまってる。BGM向き。
   むしろダラス・クルーズのアレンジ・センスこそが本盤の価値かもしれない。

   タワレコ限定のクラシック廉価盤より。20世紀後半の現代作曲家、ルチアーノ・ベリオの
   協奏曲を本人の指揮で吹き込んだ作品集。04年にタワレコで再発。
126・シュマンⅣ:ベリオ作品集:☆☆☆★
   ベリオは20世紀後半に活躍のイタリア前衛作曲家。しかし本盤では実に
   素直に音楽世界へのめりこめた。不協和音があったとしても、まず鮮烈な
   スピード感に惹かれた。メロディが常に存在し、色彩豊かな風景がオーケストラで
   描かれる。浮遊感を内包したムードもあり。解説を読むと実験要素もあるが
   普通にすいすいと聴いてしまった。最期はミニマル要素も。ストイックな美学が楽しい。

   同じくタワ・クラ廉の盤。チャールズ・アイヴスの作品集で、シカゴ交響楽団を
   モートン・グールドが指揮した。交響曲ほかを収録。06年の再発。
125・アイヴズ:オーケストラ作品集:☆☆
   学生時代の作品な交響曲1番(1896-98)、オーケストラ用の小品「答えのない質問」(1906)、
   断続的に作曲のオーケストラ・セット第二番(1909-1915)、オーケストラ用小品
   「ロバート・ブラウニング序曲」(1908-1912)の4作品を収録。ほぼ年代順に
   16年間をまとめたアルバム。親しみやすい旋律が続き、パッチワーク風に
   ブロックごとで音像の表情が変わる、親しみやすい交響曲1番、一転して流れるようなフレーズが漂い
   テンポ感が希薄な「答えのない質問」や複雑な響きが気持ちよい「ロバート・ブラウニング序曲」。
   彼の両側面な作品を併収し、アイヴスの多面性をまとめた一枚。

2009/4/21   最近買ったCDをまとめて。

   今年の月刊メルツバウ、鳥類新譜シリーズの第二弾と第三弾。
   第二弾はフクロウ。08年12月の録音。
124・Merzbow:13 Japanese Birds Vol. 2: Fukurou:☆☆
   ドラム・ソロに野太いアナログ・シンセが絡まる。スピーディなノイズが4曲。
   メルツバウにしては音数が少なめ、シンプルに突き進んだ。

   第三弾はユリカモメ。これは09年1月の録音で、ほんとに最近の作品。
123・Merzbow:13 Japanese Birds Vol. 3: Yurikamome:☆☆☆★
   バンド・サウンドのような一枚。ドラムが先、ハーシュが後だろうか。
   荒れ狂うドラムと電子ノイズ。荒涼な風景は、時にミニマルな輝きを見せる。
   長尺の世界でも、一気に描ききる意志力がさすが。

   トゥヴァの歌手、サインホ・ナムチュルクの旧譜を。これは
   バンド編成で、93年の作品。名前知ってるミュージシャンは、バリサクの
   マッツ・グスタフソンくらいか。
122・Sainkho Namuchelak:Letters:☆☆☆
   ロシアにいる娘とトゥヴァの父親による。、7通の往復書簡がテーマのアルバム。
   もっとも演奏は即興かな。4曲がチューリッヒ、3曲がストックホルムの2箇所にて
   計3箇所、92年のライブ音源をまとめたCD。
   サインホはポップな側面から、広域な歌やホーメイを生かす前衛まで
   幅広い音楽性を存分に披露する。比較的音数が少なめな印象。

   これは06年の盤。エレクトロニクスのロイ・キャロルと競演。
121・Sainkho Namuchelak:Tuva-Irish Live Music Project:☆☆★
   抽象的でミニマル、時にパーカッシブな音の少ない電子音を
   バックに従え、サインホが声を連ねる。曲的なアプローチは無し。即興で声を操っていそう。
   前栄要素が強い。全体の構成もサインホの意向がはいっていそう。そのわりにここまで
   掴みづらい音像の構築は意外だった。多重録音で厚みを出す方向はあまり狙わない。
   むしろ声と音のぶつかり合いが志向か。かなり重たいアルバム。

   ウータン関連の旧譜。07年発売で、レアトラックを集めたコンピらしい。
120・Wu-tang clan & Friends:Unreleased:☆☆
   マセマティクスのプロデュース、アレンジ作品に着目したコンピのようだ。
   不穏さは少なくポップなイメージが強い。すなわち、聴きやすい。
   ネタをくっきり大きく使ったり、リズミカルさを強調したり。
   アルバム全体はするすると聞き流してしまった。
   ウーの一軍曲も多いけど、ポップでキュートだな。

   こっちは一軍参加曲を中心のコンピ、第二弾。01年の発売。
119・Wu-Chronicles:Chapter II:☆☆☆
   ゲスト参加を集めたのか、一軍ソロ的な作品の集大成か。
   古いものは95年くらいの録音から集められている。個々の曲が最初に
   どうリリースされたかわからず、コンピの価値がぴんとこない。無念。
   ばらばらなコンセプトながら、それなりにウータンらしい不穏性の統一感はあり。
   ラップを何となく聴くにはいいと思うが、マニア的にそれぞれの曲の成り立ちを
   探りながら聴いたほうが楽しそう。

2009/4/19   最近買ったCDをまとめて。

   メルツバウの新譜の一枚。ギリシャのレーベルから。
118・Merzbow:Somei...:☆☆☆
   最初はハーシュ控えめ。淡々としたドラムソロが、次第に喧しさを増してゆく。
   明確かつダンサブルなビートが主眼ではないけれど、メルツバウのドラムを
   全面に出し、かなりクリアでヌケのいいサウンドがテーマな気がする。

   プリンスの新譜!3枚組で発表。折りたたみ式の紙ジャケにCD三枚詰めたシンプルさ。
117・Prince:Lotusflow3r:☆☆☆☆★
   曲調は80年代の未発表曲集って感じ。ポップな独特のファンク。
   パーカッションは打ち込みで、ベースは比較的肉体を感じさす。クレジットが
   ろくに無いが、プリンスの多重録音だろうか。
   しかし。アレンジが抜群。どこにも隙を作らず、プリンスの作り出した
   軽やかなファンクネスを美しく高らかにまとめた。この完成度が、本盤で一番の魅力。
   耳ざわりよく、バラエティに富んでいる。とっつきやすく聞き込むほどに
   惹かれて行くであろう、一枚。三枚のボリュームは、単純に嬉しい。

   ロシアの超絶ホルン奏者、シルクロペルが05年に発売のアルバム。さまざまな場所で
   録音作品をあつめたようだ。
116・Arkady Shilkloper:Presente para Moscou:☆☆☆★
   ホルンでの超絶技巧を無邪気に披露する方向性のため、基本は聞きやすい。
   無闇な前衛性は無い。本盤はアンサンブル志向を強め、全体にハイテクニックな
   ユニゾンやインタープレイが頻出した。とはいえフュージョンのようにグルーヴィさへ
   向かわず、素朴な色合いを残したのが個性か。
   シルクロペルの曲よりも、共演者の作曲クレジットが多く、あくまで奏者として
   一歩引いたかの印象を受けた。アルバムの統一性は無く、民族音楽風セッションから
   ポップスまで幅広い。とっちらかってるが、どの曲もほんわかした性急さあり。
   細かく連ねるホルンを筆頭に、テクニカルなフレーズで聴かす。

   常見裕司のウード・ソロ。06年の作品。
115・常見裕司:光り輝く街:☆☆☆★
   05年に市谷の教会で録音が中心、(9)のみ同場所で04年10月のソロライブ音源から。
   タクスィームをはさみつつ、アラブ伝統曲の演奏かな?知識不足でよくわからず。
   曲ごとでマカームをわけ、ほとんどかぶらぬ。こういうものなのか、
   あえてバラエティを出したのか。アラブ音楽への興味を増す一枚にもなる。
   ブルージィかつ滑らかに演奏が紡がれる。いったんアラブ音楽を咀嚼し、
   常見自身の間や拡がりを出していると感じた。音の粒がくっきり立ち上がる。

   ウータンのマスタ・キラが04年発表のソロ。
114・Masta Killa:No said date:☆★
   不穏さはあるけれど、どこか甘く子供っぽいところあり。1軍ソロだけあり、16曲中
   RZAが3曲でプロデュース。マセマティクスやトゥルー・マスターなども手伝い、
   他の1軍もゲストで加わってるのに、緩さが残る。ある意味、どっぷりな
   スリルに浸かる前、軽く雰囲気を味わうには良い盤かも。

   ブラジル音楽のDj-Mixらしい。ネットの紹介文で興味持って購入。
113・DJ Nuts:Embalo Joem:☆☆☆
   さまざまな繋ぎっぷりで面白い。針音する曲もあるけど、それもまたよし。
   スクラッチなども入るが、へんにダンサブル系を狙わず曲を聴かせるスタンス。
   収録曲のクレジットがあったらいいのにな。あと、1時間強をトラック1つだけってのも
   聴き返したい時に辛い。適当でいいから、10トラックくらいに分けて欲しい。

   エグベルト・ジスモンチを聴きたくて購入。79年作でECMでは3rdソロにあたる。
   独自の8弦ギターと、ピアノを曲によって演奏し分けた。ギターはダビングなし、と
   クレジットをあえて残すほど、極速で音数多いギターの響きが凄まじい。
112・Egberto Gismonti:Solo:☆☆☆☆
   精妙で巧緻な音楽。ギターとピアノのインストが収められた。どこまで即興で
   どこまで譜面か知らない。ジスモンチは寛いだ面持ちで音楽を提示する。
   猛烈なスピード感と空白の双方を混ぜ合わせて。
   おっとりした響きの音楽は苦手だったはずなのに。本盤はすごく素直に楽しめた。

   イクエ・モリのTZADIK盤で95年作。ジョン・ゾーン、加藤英樹、ジーナ・パーキンスらが参加。
111・Ikue Mori:Hex Kitchen:☆☆
   ドラムマシーンなどの演奏を主体にゲストが音を重ねる構成。ブックレットの
   クレジットが幅あわせでレイアウトされてて見づらい・・・。
   基本は前衛インプロ。ちょっとコミカルな響きで、寛いだムードが漂う。
   とりとめなくつかみどころなく、ほのぼのとって印象だ。

   バリトン・ジャズを聴きたく購入。ジャケは見たことあるブルーノート作品。
   05年の再発で、ボートラ2曲つきの盤を買った。
110・Leo Parker:Let me tell you 'bout it:☆☆☆☆
   ビリー・エクスタインのバンドに参加し"Unholy Four"の一員として、Dexter Gordon, Sonny Stitt, Gene Ammonsと
   名前を並べたとwikiにあった。44年~46年頃の話。その後ドラッグで体調を崩し50年代は活動せず、
   60年代にカムバック盤を2枚リリース。その一枚が本盤らしい。
   3管編成で前向きにのめるハード・バップをぶちかます。やたらブリバリ鳴らす
   だけじゃなく、メロディもしっかり。スインギーに駆け抜けるあたり、センスの良さが滲み出た。
   ちなみにアルバム全体は構成を意識し、バラエティに富んだ曲調。全体にずどんと
   骨太で、ビッグバンド的なカタルシスも味わえる。
   アレンジもレオ自信かな。ならば、とっても洗練された小粋さを感じた。
   前衛的なジャズの開拓には興味なさそうだが、グルーヴィなジャズの魅力が詰まった一枚。

   詳細不明。1918-54年の世界各地のSP盤を集めたコンピらしい。アメリカ版オーディブック
   みたいなものか。解説はきっちりある。かっちりノイズは除去され、高音強調の硬い音。
109・V.A.:Black mirror:reflections in global musics(1918-1954):☆☆☆☆
   バルチモアのレコード店主Ian Nagoskiが監修の戦前SPから選曲した世界各国の音楽集。
   ただしコレクターのひけらかしでなく「購入総額$125ドル、手近で集まった盤から選んだ」との記述あり。
   もちろん韜晦で、実際は背後で山のように聴いているとは思うが。
   コンピのテーマ有無は不明だが、どの曲も活き活きした演奏で、さすがの耳を持っている。
   ある程度、さまざまな宗教的なサウンドを意識して集めてる印象あり。
   滑らかでエキゾティック、そして独特のグルーヴ。滲む揺れ感覚が楽しい。
   けっこう詳しいライナーつき。発売元レーベルの"Dust-to-digital"って面白いな。

   詳細不明。トラッドを基調のインプロらしい。
108・The One Ensemble Orchestra:The One Ensemble Orchestra:☆☆☆☆
   ドローンや連綿と続くエスニックなパターンにこだわりを見せつつ、
   アプローチは前衛。緊迫を連続する音列の酩酊で表現した。オーケストラ名義だが
   ソロ活動の拡大、と解釈すべきか。参加ミュージシャンとの即興やからみでなく、
   リーダーのダニエル・パデンのアイディアを忠実に拡大化した感触あり。
   生楽器主体で柔らかい響きながら、コントロールされミニマルかつ淡々と継続する音の凄みは
   スリルが零れて楽しい。めちゃくちゃな長尺に向かわず、数分にまとめた構成の
   バランス感覚がありがたい。単調に陥らず、なおかつ様々な繰り返し美学の表現を楽しめる。

   なんとなく惹かれジャケ買い。ポーランドのジャズ・クインテット。06年の作品。
107・Contemporary Noise Quintet:Pig inside the gentleman:☆☆☆
   バンド名とサウンドは、ちとちがう。ノイジーさは欠片も無く、前向きに骨太なメロディの
   ストレートなジャズを聴かせた。演奏の節々から熱っぽさが、にじむ。
   ピアノとタイトなドラム、次にトランペットが印象に残った。
   新鮮味は薄いが、強度あるジャズ。ハードバップ寄りかな。泥臭さや粘っこい
   グルーヴは無い。あくまで真正面から刻んでスピード感を表現した。
   大味ながら緻密さを感じる。生真面目にジャズと向かい合った。演奏もしっかり。
   バンドが行き着く不穏さは、どこか上品さを保つ。"ノイズ"にはなり得ない。

2009/4/9   最近買ったCDをまとめて。

   ネットでなんとなく興味持ち購入。トルコのミュージシャン3人による
   タクスィーム・トリオらしい。編成はクラリネット、サズ、カーヌーン。
   発表は07年。日本盤を入手した。
106・Taksim Trio:Taksim Trio:☆☆☆☆
   良質のアラブ器楽。ほぼ全曲が1テイク、売れっ子奏者の3人が集まり、
   心の趣くままに作り上げたと言う。3曲のソロ演奏以外は全て合奏。完全インプロではなく、
   ユニゾンのテーマから曲が膨らんでゆく。タクシームへ完全にこだわったわけではなく、
   曲演奏を踏まえた自由度の拡大がコンセプトか。
   奇妙にエコー成分の多い奥行き深い録音。もっとデッドでもよかった。
   演奏は滑らか。しとやかに音が絡み、旋律が微妙に崩されつつ膨らんでゆく。
   とても心地よい、一枚。どこか洗練された香りが漂う。

   ザッパの新譜というか発掘音源。これは"ジョー"シリーズで、75年のライブ音源。
   CD1枚モノだから、抜粋かな。14分にも及ぶ"チャンガの復讐"がクライマックスか。
105・Frank Zappa:Joe's Manage:☆☆☆
   ファン向け。日本公演の直後かな。どっかリラックスした演奏だ。
   カッティング主体なザッパのギター・ソロを聴ける場面も。やはり「チャンガの復讐」が
   盛り上がるところ。コンパクトなライブ盤だ。

   これはゲイルの発掘音源。過去のミックス違いと、レア音源を集めたようだ。
   元は"ランピー"と"マネー"。3枚組。
104・Frank Zappa:The Lumpy Money:☆☆☆☆
   "ランピー"の別テイクや未発表な"マネー"のモノラル・ミックスを聴いてて、
   ザッパにとって両作品が表裏一体だったのか、をうっすら伺おうと努力する。
   確かに"マネー"はもっと混沌で編集に満ちた作品が想定、のようだし、
   "ランピー"はオーケストラ編成で過去作品の集大成を狙ったものか、って気がしてきた。
   マニア向けなのは変わらない。しかしDisc1の"ランピー"の未発表テイクや、Disc1の"マネー"モノ・ミックス、
   Disc2の"ランピー"別ミックスにDisc3のアウトテイク集は聴き応えある。
   特にDisc3はコラージュ的な構成が楽しかった。

   フランキー・ヴァリの旧譜2on1の未購入分を入手。
   本盤はヒット曲"グリース"を収録。昨年の再発。
103・Fankie Valli:Fankie Valli is the world / Heaven above me:☆☆☆
   "Is the world"はディスコの色合いがほんのり漂うものの、ミドルや
   スローの心地よい曲が詰まった、良質なAORに仕上げた。アレンジが今聴くと
   ちょっとボヤケてる。リズムの隙間が多いせい?
   "Heaven about me"は、どっぷりとディスコ。メロディがきれいな曲もあるだけに、
   時代を経て風化したサウンドで聴くのは、少々辛い。バラードも
   チーク・タイム向きなロマンティシズムを漂わせた。
   ヴァリの歌声はきれいだ。もちろん。

   本盤は"Lady~"のバックでスタッフが演奏ってのが興味あるところ。
102・Fankie Valli:Our day will come / Lady put the light out:☆☆☆★
   前半の盤はディスコ調子を取り入れた。リズム隊はアラン・シュワルツバーグ(ds)と、60年代後半にモータウンなどで活躍の
   ボブ・バビットのベースで滑らかに演奏してるのが面白いとこ。流麗過ぎるアレンジは
   毒が無いが、与えられた曲をきちんと歌うフランキーの歌唱力に支えられた。A面は曲が小粒な感触。
   "Carrie"はアレンジが過剰に甘いが、良い曲。これを筆頭に丸いポップスなB面の方が楽しい。
   ちなみにミュージシャンはA/B面とも一緒。アレンジも両面をデイブ・アペルが主につとめた。
   A面が製作側、B面がミュージシャン側の意向が前面か?
   後半の盤はスタッフ参加だが、あからさまにフュージョン風のカチカチにタイトさを強調せず。
   さりげなくミドル・テンポのふくよかポップスな爽快盤に仕上げた。
   リズムは流れるよう。前半の盤とアプローチは確かに違う。

2009年3月

2009/3/29   最近買ったCD。

   08年に仏のTextileから。ザヴィエ・シャルル(cl)と大友良英(g)のデュオで、
   05年4月のキッド・アイラック・ホールでのライブ1曲とスタジオ3曲を収録。
101・Xavier Charles / 大友良英:Difference between the Two Clocks:☆☆☆
   細い糸のような音楽。単音の小音フィードバックとクラリネットの軋み音が交錯する。
   展開はボリュームと音色の響きが主体の緊迫さが魅力。メロディじゃない。したがって
   その場にいたほうが魅力はより、伝わる。静けさを切り裂かず、静寂を強調のごとく。
   小さな音が響き、幽かなドローンとなる。耳を、澄ます。
   持続中が鍵なのか、空白に意味があるのか。安直かつ精神的すぎて
   あんまり使いたくない言葉だが、"禅"って単語が頭に浮かんだ。

   08年に韓国のレーベルから。大友とSachiko Mの06年ソウル・ツアー時に、現地で録音した盤。
100・Choi Joonyong,Hong Chulki,Sachiko M,大友良英:Sweet Cuts, Distant Curves:☆☆☆
   小音のランダムなエレクトロ・ノイズが断続的に流れる。大友らが作ってきた音楽を
   踏まえての展開なため、どこに新鮮さを見出せるかがポイント。
   持続を意識せず、断片を無造作に重ねるのが個性か。盛り上がりも展開も
   手堅くまとめず、奔放にサウンドを作っていそう。リズミカルな場面も途中で腰砕けになるユニークさ。

   03年イギリスでのフェスにてライブ録音の音源。全員がさまざまな組合せで
   演奏した5曲を収録。09年に英での発売。
99・Derek Bailey,Tony Bevan,Paul Hession,大友良英:Good Cop Bad Cop:☆☆★
   音符の数は少なめ。白玉とフリークトーン、フィードバックとノイズ。抽象的な音列が
   ストイックに折り重なってゆく。ライブならまだしも、CDだと空白の緊張に
   集中力を高める努力がいる。最期の全員セッションが一番面白かった。

   ブート。ビーチ・ボーイズのマイク・ラブのソロを2枚組で出した。
   5曲のアウトテイクつき。Darkside Productionから。オフィシャル再発は今無いはず。    
98・Mike Love:First love/Country love:☆☆
   音楽は悩みの無いドリーミーなポップス。バラードも嫌味なくきれいだ。
   ただ、本盤は音質がかなり悪い。ジェネレーションの低いテープを使ってるようで、
   バックの演奏も妙なエコー感あり。せめて盤起こしと思ったのに。
   きちんとオフィシャル復刻されるまでは、これで我慢だ。

   オーストラリアのレーベルかな。Music Worldから95年に発売された
   南ア音楽のコンピ盤。ざっと見て、知ってるミュージシャンは一人もおらず。
97・V.A.:Soweto:☆☆☆
   緩いグルーヴの曲が多い。アフリカのどのへんの音楽だろう。寛げて楽しめる。
   (3)のPhillip Encobo"Lady Smith Jive"はポール・サイモンが"グレイスランド"で
   使用したリフの元ネタか。同じタッチで聴ける。

   ユリ・ケインがデイブ・ダグラス他を率い、95年にNYで吹き込んだ盤。
96・Uri Caine:Toys:☆★
   本作ではハンコックの4曲を軸に、自作曲をちりばめた。
   ユリ・ケインの才能を聴きやすくまとめた一枚。
   曲によって編成を変えた。ハイテクニックだしアレンジは洗練されて危うさは無い。
   尖ったアイディアも上品にまとめた。

   カルチャー・クラブの1st。93年の日本盤CDを入手。だからボートラもリマスターも無し。
95・Culture Club:Kissing to be clever:☆☆☆☆
   艶かしくホモセクシャルの匂いがぷんぷん漂う。10代前半、リアルタイムで
   聴いてたときは気づかなかったが、ここまであからさまだったとは。
   ギターのカッティングに煌めくリズムを筆頭に、演奏はシャープで煌びやか。
   シンプルなアレンジながらねっとりグルーヴを持つ。ボーイ・ジョージの
   ときおり揺れる細い歌声は、切なく訴えかける。ヒット曲のパワー、爆発前の
   おぼつかなさのみが持つはかなさ。双方をがっちり注ぎ込んだ青白い一枚。

2009/3/22   最近買ったCDをまとめて。

   中村としまる、大友良英、Sachiko Mのトリオ編成。03年の作品で2枚組。
94・Sachiko M/中村としまる/大友良英:Good morning,Good night:☆☆☆☆
   CD2枚にわたって小音ノイズが漂う。無作為に、おそらく即興的に。
   さまざまなキーワードが頭をめぐる。強烈に刺激的な盤。
   音楽への価値観、ストーリー性、意味とドラマの有無、起承転結。
   そもそも自分は全てを聴けているか。周波数全てを感知可能か。発音ノイズ全てが
   意図的か、偶発の"ノイズ"は存在しないのか。発振する音色の快楽に耳を委ね、
   空気のささくれ立ちに点描を連想する。逆説的に細密画と見てもいい。
   連続性が寸断され、編集の有無へ推測をめぐらす。加速せず、高まりも無く滑らかにエンディングへ。
   さまざまな考えやアイディアが、ぐるぐると頭をめぐる。さりげないパンニングの効果に、どきっとした。

   中村としまるとキース・ロウのデュオ。01年のフランス録音。スタジオ音源かな?
93・Keith Rowe & 中村としまる:Weather sky:☆☆☆
   中村としまるの"ノー・インプット・ミキシング卓"の発信音を基調に、
   キース・ロウがときおりノイズを重ねる。単音の持続音ながら、中村はときどき
   小刻みに出音を刻んでパルスを作る。どこまで構築性を意識かは不明。
   小音ノイズ作品で、甲高い発信音の酩酊さに、ロウの出すざくっとした異物感の
   非調和を楽しむ音楽か。長尺曲で始まり、3曲目も30分弱。時間の流れを
   音楽は密やかに色づけた。聴き終わって耳鳴りの幻聴が空間へ残る。

   86年のイベント(?)イントナルモーリで作られた発音物のレプリカを元に
   伊東篤広/サチコM/秋山徹次/中村としまる/大友良英/杉本拓の6人が
   おそらく書き下ろしの自作曲を演奏した。必ずしも全曲に全員が参加せず
   作曲者の個性を前面に出した作品集のライブ盤。02年作成。
92・Intonarumori Orchestra:Intonarumori Orchestra:☆☆☆
   楽器の定位を明確にした録音。メロディ無しの騒音楽器アンサンブルだが、
   各曲でバラエティ豊かな方向性を志向し、単調さは皆無。各作曲者の色合いはいかにも、で
   本コンセプトを使用した自己表現を行った。当時の再現は意識してなさそう。
   淡々と発音する楽器群は、どこまでニュアンスをこめられるのだろう。
   金属質のミニマルが無造作かつ饒舌に響く。サチコMや杉本拓、中村としまるの曲はストイックに静かで、
   他の曲は静寂と騒音がきれいにアンサンブルへ昇華した。

   当時のレオン・ラッセルのパートナーだった女性のソロ。79年の作品。
   ギターやキーボードでレオン・ラッセルが参加してる。
91・Mary Russell:Heart of fire:☆☆
   タイトなサザン・ポップを聴かせる。アップの比率が高い。あまり深いこと考えず
   歌い上げて粘っこさ控えめ。どこかイミテーションっぽい。作曲にレオン・ラッセルが
   関与してないのは何故だろう。アレンジの心地よさを楽しむ一枚。
   メロディも悪くないが、メアリーの歌声がちょっと、重心が軽いかなあ。
   キーボードで甘く盛り上げるバラード(10)は、切なくまとまった。
   この曲だけ、メアリーの単独作曲ってのが妙に象徴的。

   不失者、91年の作品。2枚組のライブ盤らしい。不失者はクレジットがもう少し細かいと嬉しいのに。
90・不失者:不失者:☆☆☆★
   ノイジーだが歪みを踏まえたトーンを追求し、ノイズとは別ベクトルの重たいサイケ。
   どの瞬間を切り取っても、一貫したスタンスで突き進む。ロマンティックで抽象的、かつ
   凄みのある灰野の歌。それがずっしり重たいロックに包まれ、降り注ぐ。
   ボーカルが入る場面は、全体の中では少ない。ときおり挿入される鋭さが熱い。
   できる限り、でかい音で聴きたい。ドラムはナタのように低音を響かせ振り下ろし、
   歪みまくって野太く吼えるベースが進む。灰野のギターも歪み、音の流れを読みづらい。
   強烈なグルーヴが詰まった。濃密に混沌をまとって音楽は続く。
   アップテンポで疾走よりも、スローかつ着実に音楽を積み重ねるのが好みか。
   2枚組、どっぷりのボリューム。ライブに比べりゃ、これでも短いが。
   この音楽性に共感できる人には、たまらない時間が続く。ライブで聴き取れぬ細かなうねりを味わえるのが嬉しい。
   アルバムの構成や完成度を意識せず、ライブの音を無造作に突っ込んだ感あり。
   即興アンサンブルながら、根本は灰野の美意識に貫かれた。

   これは94年の作品で一枚もの。
89・不失者:悲愴:☆☆☆☆
   全体的にポップな印象。もちろん混沌さの不失者も最期にじっくり味わえる。
   ロックのごつさと、アヴァンギャルドな奔出の双方を一枚へ的確にまとめた。
   1曲目はベースとギターがユニゾンで進んだ。ギターが音を歪ませても、がっつり着実なベースが頼もしい。
   2曲目はギター・リフが自由。ツッコミ気味のドラミングがうねった。
   フェイド・インで始まる3曲目は灰野のリフを軸にグルーヴが揺れる。
   途中で噛合いがずれそうになるが、豪快にリフへ戻る瞬間がスリリング。曲の後半では、
   ひずんだ音色で突き刺さるギター・ソロを堪能できる。
   最期の4曲目が、44分にもわたる長尺作品で、灰野ならではのボリューム。
   エレキギターかもしれないが、ハーディガーディのような持続音が震え続けた。
   ドラムがランダムに、ときおり連続して打ち鳴らす。全体にどんよりモヤのかかった
   景色で、ベースはさほど目立たない。サイケな感触に耳の奥がじわんと膨らむ。

   サンフランシスコの打ち込みユニットかな?詳細不明。98年の作品。
88・MCM and the monster:Monster:☆★
   ヒップホップとロックを混ぜ合わせたスケボー・ホワイト・ファンク。
   スラッシュほどスピードやグランジ性を志向せず、ほどよくポップな耳ざわりだ。
   スクラッチが軽快に響く。30分くらいの短い収録時間であっさりまとめた。
   しゃくりあげるグルーヴ感は単純に気持ち良い。

   なんとなくジャケ買い。ジャケに見覚えあるな。
   ベイエリアのバンドで、全員が非"ブロンド"のため、本バンド名に。92年の作品。
   スタジオ作は本盤のみで解散、ボーカルのリンダ・ペリーはソロに
   転向し、3枚のアルバムを発表。作曲やプロデュース業へも進出した。
   (3)の"What's up"は英2位、米14位のヒット曲。
87・4 non blondes:Bigger,Bigger,Faster,More!:☆☆☆
   けれんみ溢れシャウトするボーカルと、ちょい派手なグランジ寄りの硬い響きに
   最初はへきえきしたが、(3)でなんとなくコンセプトのピントを想像できた。
   メロディや曲はカントリーやR&Bを踏まえ、素直なもの。マイノリティ強調の
   メッセージ性ゆえに、こんなトゲトゲしくなったのか。毒ゆえの魅力で固めたバンド。
   棘を抜いたら魅力は減ずるだろう・・・。とはいえ耳ざわりのいいアコースティックなアレンジの曲へ
   耳が行ってしまう。本作以降はさまざまな活動にメンバーは向かった。

   ジャケットが見覚えあった。安かったので購入。97年の日本盤でボートラ2曲つき。
86・Meredith Brooks:Blurring the edges:☆☆
   平歌のドラムをループ化でヒップホップへ通じる硬いグルーヴを強調し、
   サビでは生ドラムも足し彩をつけたアイディアがユニーク。アルバムを通じて
   このアレンジ手法をとっている。ハスキーではすっぱ、ナイーブなキャラクターは
   ちょっと好みと違う。本人が弾くディストーション効いたギターが逆に
   類型性を誘い、聴いてて覚めてしまうが・・・。節々で聞けるメロディ・メイカーぶりは
   たしかに光る。デビュー作ゆえの荒っぽさ、な印象を受けた。

   本作が2ndにあたる。99年の作品で、日本盤へはボートラ1曲収録。
85・Meredith Brooks:Disconstruction:☆★
   プロデュースを前作と変え、打ち込みビートを解釈したアイディアは雲散霧消。
   生ドラマーを呼び、生演奏にこだわってる印象を受けた。バンド志向はなさそうだが。
   さほどメレディス本人がこだわり無かったのか、単にツアーで考えが変わったか。
   本作はいきなりライブ志向。キャッチーなフックが飛び交う、ある種凡百なロックの
   アルバムになってしまった。聴きやすくまとまってるのは、まず本作ながら。
   ここでの個性らしきものはヒップホップに通じる、ひりひりした緊迫感と
   ガジェットのような打ちこみの飾り。本作でも全てのギターを弾いてるが、
   ディストーション効かせてガシャガシャと弾きまくり、って志向はさほどなさそう。
   ライブ栄えしそうな曲が並び、BGMには似合う。ほんのり影や引っ掛かりがあるけれど。
   ともあれもう一皮、向けて欲しい。なるべく鋭い方向に。

2009/3/15    最近買ったCDをまとめて。

   ロバート・ポラード率いる新バンドが、早くも2ndアルバムを発表した。
84・Boston Spaceships:The planets are blasted:☆☆☆★
   大人になったなあ、って印象。ゆとりを持ってメロウさをほんのり振りかける。
   きれいなメロディはきっちり。やりっぱなしの無鉄砲さは控え、キャッチーさを意識。
   けれどもアレンジで無闇な冒険はしない。バンド・サウンドを踏まえた。
   一方でゲストも入れ、アンサンブルに膨らみも持たせる。
   たとえばパンキッシュさを強調しないで、きっちりロック。
   相反する要素、尖った要素を上手く柔軟に取り込みつつ、凡庸さに陥らない。
   その点では、スリルをきっちり見据える鋭さがある。
   その一方で"トータル・アルバム!"と持ち上げたくなるほど、強靭な完成度も無い。
   ある種、掴みようがないのかも。

   08年のライブ音源が音金レーベルから発表された。旧譜も聴いてみたい・・・。
83・Jazico:Live and then:☆☆☆☆
   インド音楽を下敷きに、しかしそれだけに終わらぬ豊潤さ。
   オリジナルの音楽、影響を受けた音楽、いろいろ聴き進めたくなる。
   シタールを前面に出しつつ、凄腕ミュージシャンのアンサンブルが
   がっちりしたたかに固めた。ほぼ全て、井上のオリジナル曲を演奏。
   ビートルズ"In my life"のカバーも違和感無くアルバムに納まった。
   聴くほどに興味が増す、素敵なアルバム。サウンドは深く、ごっつい。

   オーストラリアのポップ・バンド。以前に"シュガーベイブのよう"と書かれたレコ評を見て、
   一度聴いてみたかった。本盤が1stで76年に発表された。
82・Stylus:Where in the world:☆☆☆
   爽やかで甘いポップス。刻みが溌剌なのはライブで鍛えたオーストラリアゆえの
   特徴か。とろっと甘いバラードは志向せず、あくまでステージ映えを狙った感じがした。
   よく出来てるが、いなたさが惜しい。もっと鋭いアレンジなら
   魅力が増したと思う。(1)などのアップもいいが、(8)のバラードも詰めて欲しかった。

   スティーブ・ガッドが聴きたくて衝動買い。オリジナルは76年。今まで聴いたことなかった。
   説明要りませんよね、たぶん。NYの凄腕セッションメンが集まったスーパー・グループの1st。
81・Staff:Staff:☆☆☆☆
   抜群の演奏。粘っこいけどフュージョン風に清涼方向なのは、時代か奏者の音楽性か。
   好みで言うならファンクネスは泥臭いほうが好きだが演奏には惹かれた。
   ふわっと浮かぶリズムでぐいぐい押す、例えば(6)みたいなのがいい。
   NHK-FMで昔「軽音楽をあなたに」のテーマ曲が、本盤(2)だったとは
   今回初めて知った。シンバル・ワークが粒立ちきれいでしゃっきりしてるなあ。
   だから本盤の持ち味は、(2)や(7)みたいなスローにあるのかも。滑らかなグルーヴはとろけそう。
   ツイン・ドラムと今回初めて知った。聞きわけはできていない。

   T-Neck時代を中心に、アイズリーの旧譜をまとめてあれこれ購入した。

   全部自分らで演奏と歌を、ってタイトルにこめた一枚。73年発表。
   03年の再発盤で、ボートラに"That lady"のライブ音源を収録。
80・The Isley Brothers:3+3:☆☆☆★
   一曲づつの出来はいい。ファンク色は薄く滑らかな印象が先に立つ。メロディアスさを
   前面に出した。ソフトなムードで統一感を出す。後年の色気まで行き着かなくとも、
   最終曲の雰囲気に片鱗あり。身内だけのコンパクトな世界感をまとめた。
   どこかラフな印象が残るのはなぜだろう。ボートラのライブは、まあ、オマケ。

   ディスコ時代まっさかりにアイズリー流をアピールした一枚。76年作品。
   本盤はボートラで"Summer Breeze"のライブ音源付。
79・The Isley Brothers:Harvest for the world:☆☆☆☆
   アコースティックで素朴なアレンジもうまく取り込んだ。ファンク一辺倒
   でなくバラードもきっちり。バラエティに富みつつ散漫さ無し、上り調子ゆえの
   濃密な緊張が保たれた傑作。アップテンポのノリもさりながら、(5)の
   甘くふんわりしたバラードにやられた。
   ボーナスは80年のスタジオ・ライブ。"Summer Breeze"だから本盤に収録曲でもない。
   なぜ本盤に収録したか、必然性を感じにくいオマケだな。ちょっと蛇足。

   上記の盤に次ぐ77年の盤。アルバムチャートで6位まであがったとある。   
78・The Isley Brothers:Go for your guns:☆☆☆★
   隙無く粘っこいアイズリー節を封じ込めた一枚。"Footsteps in the dark"が大好きだが
   他の濃厚な曲も魅力あり。(4)での「はっ!」って一声すら、かっこいい。
   同様のトーンで曲が変わっても一気に突き進む。

   69年の前者と、80年の後者。えらく時代飛んだ2枚を2on1でBGOが再発した盤。
77・The Isley Brothers:It's our thing/Go all the way:☆☆☆☆
   "It's our thing"はファンキーな一方で、ブルージーな味わいも。独自のサウンドを
   固めつつあるパワフルさを感じた。一転、"Go all the way"はアイズリー節が完成住み。
   カッティングとギターのソロ、上ずるボーカルとグルーヴするサウンド。
   もはや隙はなく、怒涛の勢いで疾走する傑作。アップからスローまで
   シンセとギターで力技の開放感を示す。
   双方の時代を代表する盤をまとめた、ってコンセプトか。何も考えてないように思えるのが怖い。

    分裂後、ロナルドとルドルフにアンジェラ・ウィンブッシュが全面協力したという87年の盤。
76・The Isley Brothers:Smooth Sailin':☆☆★
   ちっちこドスンと鳴るリズム・ボックスやハポッと響くシンセの音に時代を
   感じるな。ミディアムやバラードのほうが、今でも聴ける。打ち込みだけに
   頼らず、ギターなどの生楽器も足してるのがアイズリーの意地か。
   甘めに作った出来。あまりとやかく言わず、気楽に楽しむべきか。
   (5)の弾む感じがいいなぁ。

2009/3/8   買ったCDをまとめて。

   メルツバウ関連。オランダのレーベルで、88年にカセット販売した作品を
   98年に再発したようだ。各国のノイズ音楽を集めたコンピみたい。
   日本からはメルツバウとゲロゲリゲゲゲの名がある。
   メルツバウは88年のライブを収録。CD-R。
75・V.A.:Voices in a dark room:☆☆☆☆
   カセット版では2本組21曲。CDでは17曲に減らしリイシューのようだ。
   コンピのテーマは、静かなテープ・コラージュかな。ノイジー要素はむしろ控え、
   静かな音の加工を楽しめる。
   ローファイで味わい深い。Nostalgie Eternelleの曲は後期YMOみたいで良かった。
   そのほかの作品も、奥深いスケールをうかがわせる作りこみで、実に楽しい。
   エレクトロ・ノイズが好きな人なら、ぜひ聴いて欲しい。

   メルツバウがマゾンナ、Zev-Asherと組んだユニットで、現時点で音源は
   本作だけ、のはず。ようやく見つけた。93年に米のレーベルから発売。1000枚限定。
   ミックスとプロデュースは秋田昌美。ZSFスタジオ名義での録音だ。
74・Flying Testicle:Space Desia:☆☆☆
   ライブ録音はあくまで素材、のようだ。オーバーダブ云々よりも、コラージュ要素が
   強く、パンで左右に音を振ったりも含めて、ポスト・プロダクションが入念に施された。
   ノイズを基調に置きつつも、かなり聴きやすい。ハードなサイケやスペース・ロックとしても聴ける。
   メロディやビート、構成は非常に希薄。三者三様の出音をごちゃっとまとめた感じ。

   ブラジル音楽を何枚か買った。
   女性のアコギ弾き語りライブかな、と思ったらスタジオ録音のアンサンブル編成みたい。
   05年発表。詳細は不明。
73・Patricia Elena Vlieg:Origen:☆★
   パナマの歌手で本盤が2nd。基盤はラテンでジャズやオリエンタルな風味もさりげなく混ぜ、
   ひとひねりしたボーカル・アルバムに仕上げた。ユニオンの本盤紹介ページによると、
   バックは彼女がバークリー時代からの縁らしい。
   オスカル・スタグナロ(b)はペルー、アロン・ジャヴナイ(p)はイスラエル、そして
   アキレス・バエス(g)はベネズエラ。多彩な音楽バックボーンが反映されていそう。
   とっちらかった印象は無く、上品にアレンジや演奏はまとめた。どちらかといえば
   線の細い歌声は滑らか。タブラっぽいリズムがユニークな(1)、きゅっと締まったジャジーな(3)、
   滑らかな弦の(4)などが耳に残る。
   歌声は丁寧だが、微妙にはかなげ。気軽に聴きつつ、ときおり演奏の一音に耳をそばだてる。

   女性歌手。08年の作品で、デビュー作のようだ。詳細不明。
72・Paula Nunes:Paula Nunes:☆☆
   喉歌だがウィスパー声でもない。素人っぽい歌が魅力か。無難にまとまった。
   自作は2曲。あとは提供曲かな?ピシンギーニャやエドゥ・ロボの作品もあり、
   新旧のカバーを取り混ぜてるのかも。軽快なグルーヴやジャズ風のバラードなど
   バラエティあるアルバム作り。基本は穏やかな色気かな。ベースのうにょっと
   野太い響きが耳を引いた。奏者はハミルトン・ピンヘイロ。アルバム全般に関与してる。
   ソロも出し、さまざまなアルバムに参加のミュージシャンみたい。
   サイトもあったが言葉がわからず。残念。
   (5)ではハイトーンのエレベのみで歌を聴かすアレンジもあり。

   女性歌手。03年頃の盤だが、本作が1st?"O QUE E QUE HA"(00年)と同一人物か、うまく経歴を辿れず。
71・Mylene:_mylene:☆★
   ほんのりエレクトロニカな要素を踏まえ、影をまとって呟くように歌う。
   1曲目と、(10)の"エリナー・リグビー"カバー以外は、自作曲。数曲では共作者に
   演奏でも全面参加なフェルナンド・ヌネス(b)の名あり。彼のベースは
   しぶといファンキーさがかっこいい。ミレーネの夫とライナーにあり。
   アレンジに工夫してるが、少々単調な印象を受けてしまった。
   "エリナー・リグビー"のカバーはスローにひしゃげた。何を表現したかったんだろ。

   女性歌手。07年盤でソロだと"Marina 6 horas da tarde"(2002),"Baile das Pulgas"(1999)に続く3rd。
   本盤はミルトン・ナシメントがプロデュースした。他に彼女は別ユニット名義で、さらに3作をリリースしてる模様。
70・Marina Machado:tempo quente:☆☆☆★
   全体的にミドル・テンポの上品なアレンジで、心地よく聴ける。
   しかしさりげない低音のクラブ・ビート的な魅力が、本盤の隠し味。
   派手に炸裂せぬしたたかな味わいの盤だ。歌声は決して張り上げず
   丁寧にメロディを綴る。自作曲はなさそう。カバー集かな?全てポルトガル語のクレジットで
   歯が立たず。英語圏マーケットは意識してないか。
   ボサノヴァ色を生かしたブラジリアン・ポップスと言えばいいか。知識不足で定義できぬ。

   大貫妙子の旧譜を2種。
   本盤はRCA"ディアハート"レーベルから発売の一枚で、83年の作品。
69・大貫妙子:Signifie -シニフィエ-:☆☆☆☆
   坂本龍一と清水信之のアレンジがほぼ半々。1曲だけ鈴木慶一がアレンジ。
   スケール大きく見据える坂本のアレンジが魅力的。清水のアレンジはポップスを踏まえつつ
   ギリギリと内面に沈むかのようだ。大貫の歌は研ぎ澄まされ
   ますます象徴的になった。妖精性が増した気がする。優雅さを強調した一枚。
   アップテンポ曲でのひそやかなスピード感も良い。

   小林武史をプロデューサーに迎え、93年発表。
68・大貫妙子:Shooting star in the bleu sky:☆☆★
   ロンドンと東京録音。ポップな側面を強調し、おっとりした雰囲気をそのままに
   キャッチーなメロディをしとやかに歌う。ふわりと5センチくらい宙に浮いた
   余裕を常に漂わすところが大貫の持ち味。アレンジは押し付けがましくなく
   ポップスをあっさり追及した。大味なAORに感じるほど。大貫の歌一発で
   ムードをぎゅっとドライに引き締める。

   三上寛関係も何枚か。本盤は友川かずきとの競演ライブ盤みたい。
   演奏に吉沢元治、明田川荘之、梅津和時、石塚俊明、永畑雅人が参加。
   94年5月7日に日本青年館でのライブ。
67・三上寛/友川かずき:御縁:☆☆☆★
   ライブのハイライトをピックアップした構成か。二人の"デュオ"盤ではない。
   コワモテ切ないブルージーな三上の弾き語りが2曲続く。直後、いきなり
   ドラムが噛み付く(3)のアレンジにぞくっときた。
   演奏編成は三上が(1)~(2):弾き語り、(3)~(4)+石塚俊明、
   (5)~(6)+石塚、梅津和時、明田川荘之。三上節で歌ってるが、(5)はカバーかな?
   圧巻は(8)。怒涛の勢いに圧倒されてしまう。
   (6)~(8)が友川かずき。彼はろくに聴いたことなく、バック演奏の詳細は不明。
   クラリネットは梅津だろうか。アコギのほかにドラムやピアノが聴こえるが、トシや明田川の
   演奏とはちょっと違う気もする。(8)のノイジーなエレクトリック・ベースが吉沢元治か。
   友川の歌は滴るような東北性を感じた。端正さをかなぐり捨て、ずぶずぶと
   北国の情念をほとばしらす。
   (9)がハイライト。友川から始まり三上にメドレーで繋がる。三上の迫力を再確認した一枚。

   現在もライブを続けるデュオが01年に発表した盤。
66・三上寛/石塚俊明:紳士の憂鬱:☆☆☆★
   トシとのコンビで粘っこいグルーヴが強調された一枚。刻みだけでない
   ドラミングが三上の歌を揺らす。一方で"リズム"みたいな規則正しいパルスも
   歌に似合うから興味深い。幅広いアプローチを6曲、30分のミニアルバムな
   ボリュームに詰め込んだ。唯一7分にもわたる"リズム"がポイントだが、
   言葉を骨太に操る、ほかの曲ももちろん聴きもの。ライブよりも端正なイメージあり。

   04年に発表した盤で、フランスでのライブ音源を収録。
65・三上寛:Bachi - from Oak Village:☆☆☆
   1曲が1分足らず、もしくは数分。あっというまに一枚が終わる、しめて
   21分のミニアルバム形式な盤。アカペラな(7)など、アレンジもひとひねり。
   マイペースで粘っこく歌う。抑揚が強く、スピード感ある節回しが聴きもの。
   フランスのライブで大胆さの強調を意識したか。基本的にエレアコの弾き語りだが、
   (9)のみフィードバック・ギターでFabrice Eglinが参加。
   やはりこの曲が本盤での聴きもの。静かなハウリングが揺れ、三上が呟く。
   歌声の伴奏でなく、音響的なアプローチ。三上の言葉も途中で消えた。
   フィードバックは淡々と漂う。

2009/3/5   最近買ったCDをまとめて。

   メルツバウの新譜を数種。1枚は旧譜かな。

   ブラジルのレーベルから。09年のリリース。録音は07年9~10月。
   これは通常版。800枚限定らしい。ちなみに149個限定のハードケース・ボックスセットも存在。
   持ってないが5.1verのremix CD-Rやポストカード、オブジェなど入りという。日本にも幾つか入荷した模様。
   ジャケット・デザインも秋田昌美。CG処理の動物をコラージュ、背景は住宅集合体の航空写真だろうか?
64・Merzbow:Camouflage:☆☆☆☆
   ハーシュ・ノイズよりスペイシーでアナログなシンセの音色がまず耳に残る。
   繰り返しのようでもミニマルでなく、奥行き持った広がりと変化をつけた響き。
   ビート無し。ハードコアな音ながら、ぬったりまとわりつく。倦怠もしくは諦念さを漂わす。
   爽快感とは少々違った方向性を狙った?重厚さを持った作品。
   (2)の17分08秒あたり。右チャンネルで唐突に、ぶつっと切れるノイズの瞬間が
   べらぼうにスリリングで、とても好き。

   イギリスのレーベルから。08年リリースで、録音は08年の春から初夏。
   1曲はイギリスのスタジオ録音。ジャケットの写真がきれいだな。
63・Merzbow:Anicca:☆☆☆★
   1曲目は痛快一本槍。ドラム演奏と手作りノイズマシンにこだわり、ザックリ作り上げた。
   心なしか音の解像度もラフに仕上げた気がする。パルス状のドラムが飛び交い、ハーシュ・ノイズが
   シンプルに鳴る。瞬間的な原点回帰かと思いきや、メルツバウはこのあと
   同様の肉体+PCを意識した編成へ変わっていく。
   残る2曲はドローン的なノイズが中心。PCではなくノイズ・マシンでアナログ的に
   鳴らしていそう。1曲目に比べたら地味だが、渋い。

   07年の作品みたい。ギターの3ピース・バンドとメルツバウが競演。イギリスのレーベルより。
62・Porn-Merzbow:...and the Devil makes three:☆☆☆
   奥行きあるドローンがまず、かっこいい。ハーシュ・ノイズが歪んだエレキギターのように鳴り、
   バンド的なダイナミズムがある。録音はカリフォルニア、ダビングは秋田が自宅スタジオにて。
   曲が進むにつれ、音像は多彩さを増す。メルツバウ流のハーシュが轟く一方で、
   PORNの持ち味と思しきダークなメタルも現れた。
   その点で、バランス取れたアルバム。素直なコラボ盤に仕上がった。

   有頂天関係を何種か。
   07年にデルファイ・サウンドから出たベスト盤が2種類。
61・有頂天:The very worst of 有頂天:☆☆☆☆★
   有頂天のポップ・サイドを集めたアルバムで、入門編にぴったり。
   ライナーにあるケラのぼやき倒すような曲別コメントも楽しい。
   改めて聴き直すとダブのようにしゃくるアレンジも興味深い。
   弾けるメロディを強烈に絞り込む、有頂天の魅力が詰まった盤。
60・有頂天:The very best of 有頂天:☆☆☆★
   冒頭が"大失敗'91"。アヴァンギャルド系の曲を集めた"ベスト"集。
   すこーんと突き抜ける勢い、の魅力をアルバムから感じた。不条理性をポップへうまく
   包み込み、まとめて聴くと奇妙な爽やかさすらも。単体の曲ではとっつきにくい
   場合も、アルバムではある種のスピード感を感じた。
   シングルB面曲の"ソシアル・マネー(ヒトとアブラ)"と"カイカイデー"は初CD化。

   こちらは05年にナゴム名義で発表のベスト盤、2枚組。
59・有頂天:ナゴムコレクション:

   同様に05年ナゴム再発の、ケラ名義作品の2枚組。インディ音源のみかな?
58・ケラ:ナゴムコレクション:

   これも05年、ナゴム再発。ポップス系を集めたコンピのようだ。どれも聴いたことなし。
   カーネーションやクララサーカス、Grandfathersにドレミ合唱団、カヌーズ、Pincky Panicらを収録。
57・V.A.:ナゴム ポップスコレクション:☆☆☆
   素朴でほんのりパンキッシュ、そしてテクノ風味と乾いたノリ。
   ラフな演奏や録音でも、がっちり滲み出る魅力あり。リアルタイムで味わいたかった。
   可能だったのに。当時はパンク一色って思い込みあったが、着実なポップ性を
   追求したバンドたちの記録。歌の節回しにケラと通じるものを感じた。
   例えばドレミ合唱団。同じ匂いするバンドを集めたということか。
   クララサーカス"ぼくらのにっこり"の、きっぱりした清々しさがいいなあ。
   本盤はレア曲こそ無いが6バンドに特化してまとめ、見通しよい一枚。

2009/3/1     最近買ったCDを。

   メルツバウの新作2種を。
   米Important盤で、これから1年かけ毎月1枚づつ発表する新作シリーズの第一弾。
   録音は08年の10-11月にかけて作成された。1000枚限定。
56・Merzbow:13 Japanese Birds Vol.1:☆☆☆
   電子音のシンプルなループにドラミングが重なる曲が多い。ドラムの重たい響きを
   鳥のついばみになぞらえて聴いてしまった。ハーシュではあるが音数は
   少なめで、ボリューム絞ると隙間が多く感じる瞬間もあるほど。
   エレクトロ・ループも無闇に複雑へ向かわぬ。小品のイメージが残った。

   こちらはメルツバウの作品を最近積極的にリリースする、ポーランドのVivoより。08年10月の作品。
55・Merzbow:Hodosan 宝登山:☆☆☆☆
   ハーシュと生ドラムが見事に融合した一枚。両者のバランスが絶妙に並列した。
   特に3曲目はドラムを録音後にノイズをダビングではないか?
   リズムとノイズがユニゾンする。1曲目ではビートとノイズが一体で疾走するさまも。
   ドラムのパルス要素は減り、リズミカルながらハーシュと混在することで
   グルーヴがぐにゃりと曖昧に歪むさまを楽しめる。

   カザルスのバッハ:無伴奏チェロの全曲集2枚組。SP盤の復刻でオーパス蔵が03年に発売した。
   1936~38年の録音で、米ヴィクター(RCA)盤が元とライナーにあり。
54・Pablo Casals:J.S.Bach "Cello Suites No.1-6:☆☆☆
   SPの盤ノイズをムキになって消さず復刻がコンセプト。ほぼずっとノイズが
   沸き立つ。音の太いガッツもきっちり。カザルスのプレイはさくさくと前のめりに
   歌わせながら、せわしなく奏でる。揺らす程度もどこか急ぎ足。
   すがすがしく凛とした演奏な印象だ。

2009年2月

2009/2/21   最近買ったCDをまとめて。

   ジム・オルークやジーナ・パーキンス、近藤等則らが参加したインプロの盤。
   97年10月にベルギーのルーヴェンで行われたフェスで組まれたユニットらしい。
   本盤はさまざまな組合せのセッションを収録したみたい。発表年度はクレジット無し。
   ベルギーのレーベル、Lowlandsからのリリース。
53・V.A.:Fear no fall:☆☆☆★
   電気仕掛けの響きと肉体性、どちらかと言えば電気仕掛けに軸足置いた即興集。
   満遍なく組合せでセッションを聴かすが、デュオであっても電気仕掛けだと
   どっちの音かわかりづらいのが難点。やたらノイジーに響かすわけじゃなく、
   哲学的音響系でもない。良質の静かなインプロを集めた、ユニークな盤だと思う。
   しかしこの手の音楽はライブでも味わいたい。
   ジム・オルーク、近藤等則の音楽が印象残る。他のミュージシャンも面白い音を
   出すときあるが、どれが誰の音かちとわかりづらい。
   幾層も重なってゆく音像はかなり刺激的。

   98年にドイツでのライブより。ビート中心のテクノDJとE#のデュオ音源をまとめた。
52・Elliott Sharp / DJ Soulslinger:Rwong territory:☆☆☆
   あまりE#がギター弾きまくりってわけでもない。ビートの流れへ味わいをつける程度か。
   ふわっと聴き流すか、その場にいたら楽しいだろうなって音楽。集中力を
   持たないと、するする流れていってしまう。けっこうアヴァンギャルドなことをやってるのに。
   7つのトラックに別れており、場面ごとに聴けるのが嬉しい。実際はひとつながりかな。

   シャープの多重録音をベースに、何曲かでゲストを招いた音源みたい。92年の作品。
51・Elliott Sharp:Beneath the valley of the ultra yahoos:☆☆★
   ギター、ベース、サンプラーを多重録音。曲によって、サム・ベネット、
   ユージン・チャドボーンやボーカリスト数人がサポートする。
   打ち込みやジャスト・リズムなアプローチが多く感じた。基本は即興っぽい。
   多重録音ではあるけれど。短い曲を18曲、1枚のCDに詰め込んだ。
   曲によっては面白くスリルあるけれど、全体的にはつかみどころ無い一枚。

   大友良英とSachiko-Mがフィラメントとしてで98年に録音、豪Extremeから発表。
50・大友良英/Sachiko-M:Filament 1:☆☆☆★
   シンプルで素朴な電子音の対話。静寂も音色と捉え、響きはいつしか
   彩り鮮やかさに感じてくる。たとえサイン波やノイズの音色でも。ハーシュとは逆ベクトル。
   ランダム性を意識し、緊張した味わい。短い曲を並べ、どの曲もアイディア
   いっぱい、バラエティに富ませ親しみやすい一枚に仕上げた。素晴らしい。
   ヘッドホンで聴くと、鼓膜がつぷつぷと震えるのがわかって楽しかった。

   よくわからぬCD4枚組。レーベル"Undercover"のリリース。プロモ盤みたいな記述あり。
   ポールが"OOBU JOOBU"で発表した音源をCD3枚にまとめたみたい。
   さらにボーナス盤で、"OFF THE GROUND"時代のシングルのみ音源をまとめた。
49・Paul McCartney:Best Joobus:☆☆☆★
   マニアックなコンセプトなため、ファン向け。もっとも音質はそう悪くなく、
   楽しめるのでは。膨大なボリュームだが。ちょっと高域を強調のマスタリングと感じた。
   Disc4は曲間に一瞬、ぷちっとノイズはいる。
   ラジオ音源からまとめたため、音質は不満無し。DJを抜いたラジオ番組風に
   編集されて楽しい。しかしライブ・リハーサル音源よりはデモや未発表曲に着目してくれたほうが、より嬉しかった。
   ちなみにDisc4の収録曲をまとめる。それぞれシングルごとにまとめられている。
   (1)~(3)が"Hope of Deliverance"、(4)~(6)が"C'mon People"、(7)~(10)が
   "Off the Ground"。そして(11),(12)が"Biker Like an Icon"、(13),(14)が
   "Deliverance"の12インチ・シングルからだと思う。なお(15)"Twice In A Lifetime"は
   85年にポールが同名映画に提供した作品。のちに"Pipes of peace"のボートラで
   CD化されたが、なぜ本盤に入ってるのか不明。

   ものすごい今さらでしょうが。実は今まで、聴いたことなかった。
   4枚目のソロで73年発表。02年発表で、3曲のボートラ付盤を買った。
48・John Lennon:Mind Games:☆☆☆☆
   甘酸っぱく、ロマンティック。歌詞はさておき、聴こえるサウンドは
   60年代を踏まえたソフトでハッピー、ミドルテンポで寛いだポップス。
   さしずめカントリー+スペクター・サウンド。スペクターと別れても聞こえるあたり、
   根本的にジョンの好みなサウンドなのかも。
   声高に歌い上げず、多重ボーカルを駆使して柔らかく優しく歌いかける。
   リラックスしたジョンの姿を想像するのは間違いか。穏やかで前向きな世界感に
   惹かれる盤。ボートラのホーム・デモ3曲も嬉しい。ほんわかたゆたう、タイトル曲が素敵だ。

   ようやく買った。ひさびさな印象だったソロで、カントリーのルーツを素直に出した。
   07年作品。旧作"ボディ・スナッチャーズ"や"スポーツメン"をカントリー調リメイクも楽しい。
47・細野晴臣 & World shyness:Flying Saucer 1947:☆☆☆☆★
   さらっと作ってる一方で、実に丁寧な作品。ブックレットの精密な解説や対談も必読だ。
   C/Wスタイルでほぼ一発録りし、実に以外で斬新なセルフ・カバーを詰め込んだ。
   本人が"彼岸の音楽"と表現し、アメリカナイズでありつつも、現代のアメリカで
   およそ演奏されてなさそうな、シンプルでスマートでハッピーなC/W。
   実際はどうなんだろ。アメリカの田舎では生き残ってるのかな。
   一方で細野の多重録音作品もあり。生演奏とごく自然に馴染ますセンスはきっちり見せ付けた。
   "未知との遭遇"をカントリー・スタイルでアレンジするセンスが素晴らしい。
   ゲストはUAや忌野清志郎、ミッキー・カーチスなど豪華。UA人脈で内橋和久や青木タイセイも参加した。
   ぱっと聴き流せば心地よく、耳を澄ますと細野のアイディアぶりに舌を巻く。
   いかようにでも楽しめる、抜群な一枚。細野のルーツ回帰でありつつ、蓄積した
   匠のワザをさらり表現した。もし楽しく録音できたなら次の作品もぜひ近いうちにリリースを!

   大貫妙子を聴きたくなって旧譜を買う。
   これは97年発表の2in1な廉価盤で、パナム時代のソロ1stと2ndが合体。
46・大貫妙子:Grey Skies/Sunshower: ☆☆☆
   "Grey Skies"はシュガー・ベイブの面影を残した達郎のアレンジ曲を中心に、細野や坂本が
   アレンジが数曲。坂本アレンジの曲もドラムとベースは後期シュガーベイブ。
   ソロへ脱皮する寸前、つまった音楽を放出したようなアルバムか。
   歌い方も後の独創性はまだ開花前、丁寧にメロディを弾ませる。
   "Sunflower"は全面的に坂本龍一がアレンジし、洗練さを増したスマートなポップスに
   磨き上げられた。ドラマーはスタッフのクリストファー・パーカー。周辺を日本の
   凄腕スタジオ・ミュージシャンが締めた。坂本のアレンジは複雑さを抑えあっさり仕上げた。
   大貫の歌声はのびのびさを強調な気がする。どこか吹っ切れている。

   99年のソロで自らプロデュース。共同プロデューサーにGoh Hotodaを迎えた。
45・大貫妙子:Attraction:☆☆☆★
   打ち込みと生演奏が滑らかに同居する。複数のプロデューサーやセッションを
   まぜたアルバムだが、心地よく浮遊するようなサウンドの共通感が確かにあり。
   曲調も平歌、サビを必要以上に繰り返さず、1回を大事にした。
   曲構成はごくシンプルと、歌詞カード見て実感。
   穏やかなロマンティシズム、でも歯切れ良い。かっつり硬く、整った美しさに満ちたアルバム。
   特に(2)が名曲。

   メルツバウの新譜を2種類。これは08年1月~2月に録音された。アメリカのレーベルより。
44・MERZBOW:Tombo:☆☆☆★
   EMSシンセを主体に使ったとある。スペイシーな音色がそれだろうか。
   初期とは異なり、ラップトップでのループ多用な時代を経て、より構成を
   意識した作品化な気がする。本作ではハーシュ度がいくぶんすっきりで、ウネリが
   さまざまなスケール感で展開する。突き刺しより浸入を図るか。一曲の中でメリハリをつけ、
   全開と拡散が緩やかなペースで交錯した。たとえパーカッシブな素材を使っても
   ループやビート感は存在せず。アナログの不定形な凄みに着目した作品。
   音数は絞った、ボリューム上げると音圧で埋め尽くされるけれど。
   メルツバウの物語性を精緻に綴って見せた、濃密な一枚。

   ドイツのレーベルからは08年1月の作品が発表された。
43・MERZBOW: Dead Leaves: ☆☆☆★
   どろんとした低音ドローンがぬかるむ上を、じわじわとアナログ・ノイズが
   悲鳴を上げる。クライマックスまでじらしまくり。あるいはしょっぱなから
   トップギア。ライブで聴いたら、さぞかし空気が緊張に包まれるだろう。
   吹き荒ぶ寂寞感に惹きつけられる。熱狂する退廃を封じ込めた。

   JazzkamerのLASSE MARHAUG(読み方、いまだにわからず)の関連作品を。
   本盤はTOMMI KERANENとのデュオで、インキャパに影響のハーシュらしい。06年録音。
42・Testicle Hazard: Everything Has Its Price:☆☆☆
   サイトはここ。一過性の企画でなく、ライブは05年から行い、音源も数種類あり。
   本盤は単独名義では2ndにあたる。500枚の限定盤。冒頭から強靭な
   エレクトロ・ハーシュが噴出すが、肉体性は音源上だとさほど強調せず。いつしか
   音のうねりも下向きになった。アナログ的に変調するノイズを、ドローン志向の
   素地へ載せたアレンジ。二人が平行してアドリブを取ってるのか、ドローンが
   どちらかを受け持ってるかは不明。インキャパとの共通性を探したが、まったく別物と感じた。
   確かに耳ざわりやベクトル感は似てるが、インキャパにあるロックっぽさやスピーディを
   本ユニットは求めてなさそう。もっと音響アプローチの硬い響きを感じた。
   本盤は100%ライブ・レコーディングでオーバー・ダブやミディ・シンセは非使用、とクレジットあり。
   一発勝負の複層ハーシュを操る気構えはきっちりあり。もうちょいハジケたほうが好みだ。
   しかし妙にひねらず、ぐっと素朴な印象も。音を無闇に埋め尽くさず、なんとなく途中で音圧が垂れ下がる場面とか。

   初期ソロを集めたCD4枚組ボックス。どういう音楽だろう。07年発表。
41・LASSE MARHAUG:TAPES 1990-1999:☆☆☆
   膨大な作品のエッセンスを概観には適している。アナログなインダストリアル・ハーシュが
   好きなら、楽しめそう。ノイズにストーリー性を求めず、むしろノイズそのものに
   こだわった作風のため、続けて聴くには集中力がいる。
   極北へ向かわず、さまざまなアプローチを点在させるのが、彼の個性か。

Disc 1☆★
   91~95年の作品(おそらく12タイトル)から抜粋。テープ・コラージュ的な
   アプローチから、曲によってわずかなハーシュもしくはミニマルっぽいノイズを出す。
   強烈な個性を感じられず、のめりこみづらい。当時は過激だったのだろうか?
   90年代ならどっぷりと、ノイズ・ミュージックは構築されていたはず。
   ノルウェーのはわからないが。1曲を除き、数分単位の短めな構成は聴きやすい。
   (6)の金属やドラムをやたら叩きまくる多重録音や、深遠なエコー感なハーシュの(9)、野太いノイズが
   強靭にそそり立つ(14)、マゾンナをダブしたような(15)などが面白かった。

Disc 2 ☆☆☆★
   96年に発表作品のうち、5タイトルから抜粋した。メルツバウに影響受けた
   ハーシュ・ノイズがいっぱい。複数のエレクトロ・ノイズを強引に
   多重録音、みたいに溶け合わなさを感じた。そこそこ長尺。
   スピード感あって悪くない。(3)の録音レベルがちょっと低い感じする。テープ・コラージュ感も忘れず、(4)で投入。
   どれもさほどドラマティックさは無いが、音色に寄りかからぬ構成力で聴かせる。

Disc 3 ☆☆
   1997年、7作品のカセットから抜粋した盤。Government Alphaとの競演や
   DiktatやDavid Gildenらとのスプリット作品もこの年はリリースした模様。
   ハーシュ一辺倒から電子音での大味なミニマル路線も作品により加わった。
   轟音モノは音質悪い場合も多く、さらにフィルターがかかってるかのよう。
   インダストリアル的なアプローチもメカニカルさは薄い。どこか人間味あり。
   しかしどのカセットも違うレーベルからリリースに見える。ノルウェーにはこれほど
   多くのレーベルがあるのか、それとも自主レーベル名を毎回変えてるのか。

Disc 4 ☆☆
   98~99年、10作品からの抜粋。ミニマル、ハーシュの双方を進めた。
   ハーシュは波のようにうねる。されど豪腕ノイズで圧迫、の感じは無い。
   むしろ素朴に連続性へ埋もれるかのよう。
   収録曲はコラボ作品が多いけれど、がらり印象は変わらず。もどかしくもあり。

   500枚限定、70年代に録音した800本以上のテープを編集作品のようだ。08年発表。
40・Lasse Marhaug: Ear Era☆☆☆★
   全11曲。でも曲タイトルはクレジット無し。ミニマルで混沌としたテープ・コラージュが
   無造作に並んだ。(3)の前半で淡々と続く電子音が気持ち良い。
   (7)のミニマルでぞわぞわな感じも好み。ピアノ音色をテープ操作で編集してる。
   800本ものテープをどこまでコラージュか不明だが、無闇に短時間でめまぐるしく
   切り替えや、やたら重奏構造は志向せず。前のめりの音像でも、どこかすこんと
   突き抜けた余裕を感じた。

   某所で褒められてるのをきっかけに購入。予備知識無し。60年代後半のスワンプ・ロックか
   バーバンク系みたいなジャケットだが、08年の作品。
39・Starling Electric:Clouded staircase:☆☆☆★
   曲によってさまざまなアレンジを取り入れた。スタジオごもりもライブも
   どっちもいけそう。きれいなメロディとほんのり古臭いサイケ・ポップが彼らの味か。

2009/2/15   最近買ったCDの紹介を。

   ヴァン・モリスンの新譜はライブ盤。過去の作品を見直すコンセプトか。
38・Van Morrison:Astral Weeks Live at the Hollywood Bowl:☆☆☆★
   ライブ録音そのまま、ダビングはしてないそう。弦も加わった大編成バンドはまあカッチリ。
   バンド的な高揚感は無いが、きれいにアンサンブルをまとめた。
   ヴァンの声もきっちり出てる。たんなるノスタルジー盤ではない。かといって新味は無いけれど。
   "Astral Weeks"とは曲順を変えている。(1)や(3)、(6)で後半の曲タイトルはどういう意味だろう。
   あれこれ調べてみたけれど、良くわからない。
   最初に聴くなら、オリジナルの"Astral Weeks"を強烈に薦める。本盤はあくまでファン向け。
   けれども40年の時を経て仕上がった音楽は・・・円熟とは、を実感した。

   細野晴臣が音楽監督をつとめた映画のサントラ。08年作。
37・OST:グーグーだって猫である:☆☆
   ほのぼのふわふわアコースティックな感触あり。メロディを爪弾く
   弦の震えが、ぱっと印象に残った。

   太田朱美(fl)のデビューアルバムで07年発売。プロデュースが水谷浩章で、
   彼のPhonolite Ensembleも演奏に参加している。
36・太田朱美:Risk Factor:☆☆☆★
   鋭角に真っ直ぐ鳴るフルートと、揺れるベースをイントロに、フォノライト・アンサンブルが
   ふうわり優しく包み込む。水谷の編曲センスが炸裂した心地よさ。
   "ウィズ・ストリングス"めいた硬直さは無く、ごく自然に音たちが絡まりあうさまが凄い。
   ジャケットそのまま、微妙に色合いを変えつつ奥行き深く豊潤に響く演奏を軸に
   温かいサウンドが奏でられる。かといってBGMな安直さへ向かわず、どこかひねった
   不安定さを残すところが嬉しい。穏やかなゆらめきを封じ込めた一枚。

   ウンヴェルティポのアルバム。何作目だろう。07年の録音。
   カホンで1曲、大儀見元が参加。
35・Unbeltipo:Pheasantism:☆☆☆★
   キーボード風の音が入るのはエフェクタで同期だろうか。あからさまな
   複雑さは控えめ、あっさりストレートなロックと聴いてしまった。
   だけどがっちり凝っている。編集はあまりしてなさそう。
   ハイテクニックをスマートに披露し、すいすいとギターを操る爽快さ。
   ベースとドラムのアンサンブルもばっちり。聴きこむほどに凄い一枚。

   斉藤徹が90年に録音した弦カルの作品。ゲストで笙ほかさまざまな楽器も。
34・斉藤徹:The String Quartet of Tokio & Orchestra:☆☆☆☆
   こすり、はじき、振動させる。メロディや和音の前に、まず弦楽器としての発音方法に
   着眼し積上げたアンサンブル。なるべく大きな音で聴きたい。すみずみまでスリルを
   感じるには、それなりの音量が必要な音楽だ。最初は単なるノイズや
   無作為の交錯に聴こえた。しかしボリュームを上げたとたん、切りあい重なる弦楽器の
   パーカッシブな響きに圧倒される。叩くとはAからBの地点まで物質を動かし、
   移動過程に存在する物質へエネルギーを与える、と定義するならば。弦楽器とはまさに
   パーカッションの一種であると実感した。
   特に前半の弦楽四重奏の緊迫感と構築性が、素晴らしい。
   後半のオーケストラは和楽器をさらに混ぜ、音響的アプローチとダイナミズムを増した。
   響きへ強烈にこだわった傑作。90年で既にこの地点へ到達した斉藤の視点の先駆性は、凄い。

   杉本拓とアーネット・クレブスのギター・デュオ。02年の発売。
   代々木オフサイトほかでの音源を収録の模様。
33・杉本拓/Annette Krebs:Eine Gitarre ist eine gitarrre ist keine gitarre ist eine gitarre...:☆☆☆★
   ランダム、もしくは空白をたっぷり取って幾つかの音が無造作に飛び交う。
   物語性の解釈を放棄させ響き自身に意味性を持たせる作品、と定義は乱暴すぎるだろうか。
   (1)では楽器が放つ音に加え、ずうぅんとうねる低音が耳を澄ますひとつの要因になった。
   (2)だと、からからと連続したギター(?)の響きがじわじわと前のめりに。ハウリングっぽい鳴りも。
   最期の(3)は断片的なノイズが引きずられ、消える。
   無造作な鐘の音とともに。無音が音楽へ高まる一瞬。
   聴いてて心沸き立つ熱狂は起きない。何が起こるか、の好奇心もいつしか静まる。
   響きへ耳を任す享楽感も薄れ、CDでは演奏を目撃の一体性も無い。
   ただ、音が鳴る。スピーカーへ聴くとも無く耳を向ける。ある種ピュアな
   音楽との向き合い。この解釈も小難しくうがちすぎかも。聴くとは、って行動を
   なんとなく考えながら味わう。実際の音は、派手な刺激こそ薄いが、じわじわと滲む
   スリルがあり。ただし再聴、多聴を求めるかは疑問だが。

   杉本拓のリーダー作。97年に東京で録音され、即興と彼の作曲が入ってるみたい。
32・杉本拓:Fragments of Paradise:☆☆☆★
   抽象的なギターの爪弾きな対話。うっすらとメロディの骨組みが静かに
   語りかける。滑らかさとは無縁ながら、落ち着く響き。ノイジーさは希薄で
   旋律を大切に抱えている。ときおり登場する別の人の曲は、くっきりメロディを
   明確にして、彩をアルバムにつけた。特に(14)。キュートに響く。
   これも繰り返し、聴きたくなる。

   杉本拓、ギュンター・ミラー、キース・ロウとの競演で、99年のパリ録音。
31・Keith Rowe/Gunter Muller/杉本拓:The World Turned Upside Down:☆☆☆☆
   薄い展開できめ細かく泡立つようなドローンの応酬が心地よい音像を作った。
   作曲は3人の協作クレジット。全てが即興だろうか。爪弾く杉本のギターが
   キースやギュンターの出すエレクトロニクスと交錯し、幻想的な世界を作った。
   ときおりコラージュ的な場面もだれかが挿入し、メカニカル・サイケな色合いを
   辺りに充満させる。曲構成は派手に動かず、ノイジーさも無い。
   漂い揺らめく音の重なりが美しい1曲目、ずっしりした低音が印象的な2曲目。
   どちらも素敵だが、好みは1曲目のほうかな。

   フィリップ・ガレル監督の無声映画「孤高」(1974)上映時。同時に大友/杉本/Sachiko Mが
   即興で音楽をつけた02年3月2日のライブ音源。
30・大友良英/杉本拓/Sachiko M:孤高:☆☆★
   冒頭は無音。映写機のカラカラ鳴る音を音楽と捉え、会場のかすかなノイズを記録した。
   やがてのっそりと、演奏が始まる。短いサイン波、電気ノイズ、発信音。
   静かで穏やかに張り詰めた風景へ。トラック数はひとつ、70分ほど。ライブ現場のムードそのままを
   CDへ封じ込めた。ライナーの解説で概略はコンセプトわかったが、
   音だけ聴いてたらたぶん、とんちんかんな思い込みをしてしまいそう。
   つまり、映写機のミニマルな響きを基調のサウンドなんだな、と。
   ちなみに映写機の音は途中で時折、聴こえづらくなる。かなりミックスでバランスを
   意識した"作品"なんだろう、本作は。CDだとつい、聞き流してしまう。
   いかに集中して音楽世界へのめりこめるか。それ次第で、本盤への興味は大きく変わる。
   演奏は持続性ではなく、断片のようなモチーフが、さまざまに変化してゆく。

   大友良英と天鼓のデュオをロンドンのスタジオで98年に録音。さらにオーバーダブを
   加え、TZADIKから99年にリリースされた盤。
29・Microcosmos:Pilgrimage:☆☆☆☆★
   すっごく明確で刺激的な盤。統一感はあれどアプローチは曲でさまざま。
   デュオであり、かつ個々の個性をくっきり打ち出した。比較的大友色が強いか。
   どの曲もアルバム一枚成立するコンセプト。それを贅沢に各1曲へ封じ込め、アルバムにまとめた。ミックスも大友。
   天鼓の多重録音なアカペラ(1)から、荘厳に始まる。
   (2)で大友はディストーション・ギター以外に、リズム・ボックスを投入。異色だ。
   ちゃかぽこと軽いリズムが強く自己主張。歪んだギターとリバーブをたっぷり
   まとった天鼓の歌は等質にやんわりとミックス。リズムがやけにかるく明るく響いた。
   (3)は重厚なリズム・パターンを大友が提示、ブルージーに天鼓が歌う。ときおり
   ぐわっとシンセがうねる大友のインダストリアル・テクノ的なアプローチが興味深い。不安げなスリルにぞくぞくきた。
   (4)はサイン波的な電子音が数音、よじられてゆく。今に繋がる大友のアプローチ。大友ソロか。
   (5)は再びリズム・ボックス。(2)と(3)を足したように、明るく重たくループする。
   天鼓は奔放に喉を震わせた。統一感あり、この曲が本盤を象徴しそう。
   (6)は大友のエレキギターによるハーシュ・ノイズ。スピード感覚と、高周波、低周波を高らかに明示が大友流か。
   一歩ひいた感のミックスな(7)。ループが折り重なり、軽やかに天鼓が弾む。
   左右を駆ける電子音をイントロに、ハーシュのカットイン。天鼓は背後で静かに歌う(8)。ほんのりミニマル。
   (9)は祭囃子がコンセプトか。ループする金属リズム、こぶしを効かす天鼓。
   日本人ならぴんとくる、独特のグルーヴだ。天鼓はフリーな歌だけど。
   最期の(10)は大友の重厚なハーシュで攻めた。天鼓がしずしずと存在感を出す。
   仏像写真でデザインしたイクエ・モリのセンスも素晴らしい。音楽にぴったり。

   過去にコンピ盤などへ発表の音源と、未発表ライブをまとめたミニアルバムかな?
28・太陽肛門スパパーン:哀愁グッドバイ:

2009/2/13   最近買ったCDを。

   マーヴィン・ゲイとダイアナ・ロスが73年に吹き込んだデュオ盤。
   シングルしか聴いたことなかったので購入。01年盤で3曲の未発表を含む、
   全4曲のボーナス・トラックつき。あと一曲はコンピ盤で79年に発表された
   "I'll keep my light im my window"。   
27・Diana Ross & Marvin Gaye:Diana & Marvin:☆☆☆
   確かにマーヴィンの濃厚なセクシーっぷりを期待なら、物足りない。上品できれいにまとまった。
   でも、気持ちいいじゃないか。選曲はあえてモータウンっぽい、熱気ある若々しさをはずし
   洗練性を追及したようだ。マーヴィンは抑えたファルセットをきれいに響かす。
   大スター二人の横綱相撲で貫禄を見せ付けた。たとえ別録でも
   二人が声をそろえ歌い上げる瞬間は、単純に素敵。
   アルバム全体はハル・デイヴィッドのプロデュースだが、曲ごとは別にそれぞれ
   プロデューサーのクレジットあり。プロデュースにはアシュフォード&シンプスンや
   ベリー・ゴーディ、アレンジャーにはボブ・ゴーディオやジーン・ペイジの名も。
   それぞれの録音セッションにどんな思惑がめぐらされたか、想像しながら
   聴くのも楽しい。マーヴィンとダイアナ、二人の絹みたいにすべすべの歌声に耳を傾けつつ。

   雑誌で高評価だったため、ためしに購入。予備知識無し。08年のヒップホップ。
26・Lil Wayne III:The carter:☆☆☆☆
   メロディアスなトラックが多く、ラップとファンクが滑らかに合致した。
   スピード感より旋律や雰囲気を楽しむ盤か。不穏さは控えめで、ほんのり
   危険な香り程度。夜が似合う。じっくり聴きこめるサウンドで、丁寧に
   作られたバック・トラックが楽しい。

2009/02/01    ちょっと買ったCD。

   テクノ系で昨年リリース。ラヴェルやムソルグスキーの曲をテクノ仕立てにした。
25・Carl Craig & Moritz von Oswald:Recomposed by:☆☆☆
   特に金管がうまく電子音とマッチした。"ボレロ"を単調なミニマル・アンビエントへ
   仕立てたセンスが良かった。アップテンポでもくもくとビートとフレーズが重ねられる。
   音像が軽やかだがせわしなく、チルには不向きか。むしろ繰り返しが酩酊感を誘う。

   岡村靖幸と石野卓球のコラボ・ユニットのシングル盤。
   ミックス違い2曲を含む、3曲入り。2002年の盤。
24・岡村靖幸と石野卓球:Come baby:
   野太い4つ打ちテクノに岡村のボーカルスタイルは、ちょっと似合わない。
   単調なきらいある。もっと華やかな二人のコラボかと思った。いまいち楽しめず。

   高橋幸宏の86年発表のソロ。95年リリースのQ盤で購入。
23・高橋幸宏:Only when I laugh:☆☆★
   コンマ半拍遅れるような幸宏節が華やかなポップスとなった。影を拭き去り
   ふっきれた感触。たとえ辛い歌詞でも。賑やかなドラム・サウンドだが
   サウンドは人力風味が強い。打ち込みの曲ですら。あっさり作った印象を受けた。
   きれいなメロディが幸宏節でひとひねりされて聴こえる。

   ベナン共和国出身の女性歌手、アンジェリック・キジョの4th。
   名前は知ってたが、聴くの初めて。
22・Angelique Kidjo:Aye:☆☆
   キジョの魅力をうまく引き出せてない。なまじ打ち込みの太さやアレンジの
   けれんみが、押し付けがましくなった気がする。
   楽曲の半分は元レヴォリューションズのデヴィッドZ、録音もペイズリー・パークにて。
   もう半分はロンドンで、ウィル・モーワットが手がけた。
   癖のあるキジョの魅力や、キャッチーなメロディは素敵なのに。必要以上に
   ごてごてとデコレーションされてしまった。もっとアコースティックかつ
   自然なアレンジだと、ぐっと良くなったのでは。

2009年1月

2009/1/31    最近買ったCDを。今月は組みモノが多いのでけっこうな枚数いっちゃってる。

   96年にソニーから出た邦盤。ヘア・スタイリスティクスを筆頭に、アヴァンギャルド系の
   メンバーを集めたクリスマス盤という、凄まじい企画。メルツバウが参加のため購入。
21・V.A.:The Christmas Album:☆☆
   企画盤だなあ。あくまで素材としてクリスマス・ソングを選び、ほんのり
   敬虔なサウンドに仕上げる。壊すにせよ、飾るにせよ。もともとポップとは別ベクトルの
   志向なミュージシャンなため、根本的な違和感が残り続ける。それこそが狙いか。
   アンビエントなガスター・デル・ソルの仕上がりが気持ちよかった。
   メルツバウについては、項を改めて感想を書きます。

   ロバート・ポラードの創作パワーもまったく衰えず。09年第一発の新作は
   ソロ名義。これまで同様、トッド・トビアスが音楽面を支えた。
   Guided by Voicesレーベルからの発売。
20・Robert Pollard:The Crawling Distance:☆☆☆☆★
   バンド・アレンジでかっちり切なくまとめたロック・アルバム。メロディを丁寧に紡ぎ
   ミドル・テンポで歌い上げる。派手な実験精神は控え、ポップに聴かせる構成で煮詰めた。
   一般受けしそうな快盤。しみじみバラードを歌うロバートって、
   なんだか新鮮。"スーツケース2"からリメイクを2曲収録。
   全体的に暗めのムード漂う。これがロバートの円熟さ?そんな感じしないけど。
   最期はライブ風にまとめる演出が愉快。

2009/1/24   ライブ物販で買ったCDを。

   インキャパシタンツが90年代にカセットで出した音源をCD10枚組で再発。
   ライナーは日本語訳つき。インキャパ自らのライナーがとても興味深い。
   美川のライナーは英語と日本語で、微妙に違うようだ。
19・Incapacitants:Box is Stupid:☆☆☆☆
   廃盤だった過去作品をまとめて聴ける良企画。音もくっきり、インキャパの
   強みであるスタミナとスピード、パワーを細かく味わえた。
Disc1 "Stupid is stupid":☆☆☆:
   93年のスタジオ作。2本カセット作品で、Disc2がその2本目にあたる。
   ストレートなタイトルは仕事先でのボヤキだろうか。
   細部までくっきりなハーシュが疾走する。2曲目で強靭に盛り上がる瞬間がクライマックス。

Disc2 "Stupid is stupid"☆☆★
   スタジオ作に比べ、若干音質がこもってるのは否めず。しかし対照的な二つのライブを
   楽しめる盤。双方が高円寺20000Vでの音源で、91年11月3日と
   92年2月27日のライブを収録した。おそらく完全収録。
   前者は音数をぐっと減らし、金属質の轟きがひたすら炸裂するストイックなイメージ。
   後者は複数のノイズが飛び交う重層構造で、ときおり変調された肉声も挿入する
   ワイルドな肌触り。どちらもノイズまっしぐらで、勢いが途切れず疾走し続ける。だから例えば後者の
   終盤で、いきなり音が減って擬似的な静けさに収斂する流れに物語性を感じた。
   実際はダイブでがしゃめしゃな終わりなのかもしれないが。
   インキャパはライブならでは、と再確認できる盤ながら、音だけでも楽しめる。
   個人的には92年2月27日のほうが好みのノイズ。

Disc 3 "Extreme Gospel Nights"☆☆☆☆:
   千川ゴスペルでのライブ。発表は93年に京都のVanillaレーベルから。
   一本筋が通ったシンプルなノイズから幕を開け、次第に空間を埋め尽くす。
   スピードを止めずにひたすら生一本の豪風雨が吹き荒れた。
   ノイズの快楽原理まっしぐらで、しゃにむに疾走する爽快感を味わえる。
   2曲編成で途中に拍手あり。二日間にわたるライブを収録かな?
   インキャパシタンツの魅力をシンプルに詰め込んだ一枚。細部までくっきり聴ける。

Disc 4"Ad Nauseam [Edition Mikawa]"☆☆★:
   Disc6を美川が編集したテイク。恥ずかしながらどのように編集したかは理解できていない。
   なんとなくだけど、エッジが立ってトゲトゲした鋭さが増した気がする。
   元のライブはずたずたに再編集せず、スムーズにまとめた印象あり。全2曲のライブを
   3曲へ構成した。ドローンのように続く音像は一緒。3曲目のごちゃ混ぜ感が、
   本盤の中でもっとも好み。

Disc 5"Ad Nauseam [Edition Kosakai]" ☆☆☆☆★
   冒頭の軽快なドラム・ビートがインキャパシタンツのイメージと合わず、一瞬戸惑う。
   しだいに周辺がリズムに絡みつく。このポップさがコサカイの嗜好か。
   抽象的なサウンドながら耳を劈くハーシュさと明確なビートがあるだけで印象は相当に違う。
   ハーシュめいた響きも耳に優しい。ノイズとは、を考えた一枚。インキャパの
   轟音の元は、こういうサウンドなのだろうか。そして音楽は(2)、ハーシュへ姿を変える。
   さらに(3)がノイジーを予感させつつ、具体的な会話の雰囲気から幕開け。
   なにを喋ってるかはわからないが。ベース音が不穏に高まり、音像は崩れてゆく。
   3曲全体でドラマティックな世界を構築し、具象と抽象を巧みに混ぜた。
   インキャパの音楽観とは若干違うが、別世界を刺激的に表現した傑作。

Disc 6"Ad Nauseam [Edition Live]"☆★:
   ライブでは瞬発力で楽しめたと思うが、音盤ではちょっと単調か。
   1曲目はむしろ淡々と感じるほどにハーシュが持続し、きらめき続ける。
   2曲目はむしろドローンのよう。複数の音がよじれ、高まる。後半になって動きあり。

Disc 7"D.D.D.D." ☆★:
   1曲目はドローンの拡がりに変調された咆哮めいたノイズが乗っかる。スピード感は
   素地のハーシュがぐっと抑えるかのよう。電子のシャウトは悲鳴のように混ざり合い、
   混沌へ溶ける。変化は極わずか、第一印象がそのまま突き進んだ。
   揺らぎが沸きたっては消え、また奔出。ライブでは面白かったと思うが、CDだとこじんまりさも。
   2曲目は若干スペイシーさを増した。アレンジの構成や変調声と
   ノイズを混ぜる手法は同一。むしろこの曲はハーシュ・ノイズを控え、奥行きあるうねりで
   凄みを演出した。轟音で濃密な雲海を飛行するイメージが浮かぶ。
   音像の変化は少ない、パワー・アンビエント。
   後半は少々金属質のイメージが高まった。

Disc 8"Toungue"☆☆:
   オリジナルは英"Chocolate Monk"より96年にリリースのカセットから。
   録音クレジットなどは無く、詳細はわからない。A面は隙間無く
   パワー・ノイズが埋め尽くす中、くっきりな音色の軋み音が混じる。
   音列の変化はあるけれど、音像の色調は豪腕一本で貫いた。B面も基本的にアレンジの
   構成は変わらない。塗りつぶされたノイズの中、幾つかのマニュアルな
   軋みが暴れていく。小音量ならパワー・アンビエント、轟音ならハーシュ。

Disc 9"Cosmic Incapacitants"☆☆☆★
   タイトルどおり、スペイシーな世界を幻出させた。
   しゅわしゅわっとした効果をどっぷり効かせ、あとはエコーか。
   奥行き深い音像の上で、もがき続けるノイズを表現した。
   スピード感は抑え気味、ねっとり動く。A面最期で明確なシンセの音へ
   着地するアレンジが、インキャパにしては新鮮だった。
   B面では音数を多くせず、鋭く貫く。ピュアな響きが冷徹で心地よい。
   効果一発でがらりハーシュの印象が変わるな、と新鮮。ハードコア・サイケか。
   泥酔気分の酩酊感を味わうかのよう。不安定さがせまりくる。音像が面白かった。
   英"Betley Welcomes Careful Drivers"より。本ボックスのジャケットは、アルミ缶パッケージを
   開けた状態。中へ、本物の飴が幾つか入ってるのが見える。実際の
   リリース時も、飴が内包って記述もネットで見かけた。

Disc 10 "I, Residuum":☆☆☆
   悲鳴のようなハーシュの交錯。途切れがちになりそうな瞬間も、スピード感は
   切れない。インキャパの疾走が詰まった作品。テンポ性は希薄だが
   冒頭から最期まで、テンションが落ちない。スタミナとパワーがすごい。

2009/1/12   最近買ったCDをまとめて

   吉野裕司プロデュースの古楽ユニット、1st。95年の発売。
   トラッドのほかビートルズ、ペンギン・カフェ・オーケストラなどもカバー。
   ゲスト・ミュージシャンが豪華で、巻上公一、菊地成孔、上野洋子、小川美潮、
   福岡ユタカ、高良久美子など。
18・Vita Nova:Ancient Flowers:☆☆★
   日本人による、主に欧州のトラッド集。数曲以外は捻らず、ストレートに
   音楽へ向き合った。新奇さでなくスマートに磨き上げた印象。選曲並びに
   アレンジのセンスを楽しめた。テクニシャンぞろいの奏者は古楽器でなくとも
   スムーズに音楽へはまる。トラッドの魅力へ触れるきっかけにいいかも。

   黒人シンガー、ラウル・ミドンの2nd。邦盤でボートラが1曲。07年の盤。
17・Raul Midon:A world within a world:☆☆☆★
   ほんのりヒップホップ調子でストレートなソウル。まっすぐ自信をもって突き進む
   意志の強さが伝わる。アレンジもよく練られた。
   かちかちに硬い音色のマスタリングの一方でアコースティック
   感覚を表現。すかっと隙間を置いてクールさを強調した。若さと安定の
   双方を狙ったか。前作から明確な一歩を踏み出し、構築性を高めた作品。
   多重アカペラの(4)がまず耳に残った。他の曲も、きれいなメロディ。あまり喉を張り上げず、
   軽やかにラウルは歌ってゆく。

   ビリー・ジョエルの旧譜を数枚。安かったので。
   2ndのイメージが強い盤。75年の発売。
16・Billy Joel:Streetlife Serenader:☆☆★
   プロデューサーと共同アレンジのマイケル・スチュワートは、ウィ・ファイヴのリーダーとある。
   スタジオ・ミュージシャンを集め、AORに仕上げた。ビリーの
   ピアノ・マンぶりは生かしても、味わいは妙にそっけない。
   リズム隊のロン・タット(ds)とエモリー・ゴーディ(b)はプレスリーと競演歴あるようだ。
   他のベーシストに、ラリー・ネクテルの名も。
   もっともビリーは彼のプロデュースに満足と、コメントをネットで見かけた
   スターダムへのし上がる過程で、ロックンロールのスピードより洗練さを狙ったか。
   ホーンを抜き、コンガやペダル・スティールでラテンやカントリー風味のアレンジ。
   シンセの滑らかな音色はギリギリ、時代を超えた普遍性あり。
   各種賞を取り評価はされたが、収録曲は正直、強烈な魅力まで到らず努力賞ってとこ。
   "Riberta"の甘さ、"Souvenir"のしっとりぶり。さらに"The Entretainer"の溌剌っぷりが、好み。
   弾むインスト"The Mexican Connection"も中学の頃、好きだった。なんだ、結構気に入ってるな。

   "James"と"I've loved thses days"のセンチメンタリズム、"Angry young man"の
   スピード感がとても好き。派手さはないが、ピアノ・マンっぷりとバンド・サウンドが
   うまく甘く融合した、いいアルバムだと思う。76年作。
15・Billy Joel:Turnstiles:☆☆☆☆★
   確かに地味な仕上がりだが、メロディ・メイカーぶりが炸裂した傑作。
   スタンダードとなりうる"New York state of mind"を筆頭に、ジャジーな
   ピアノ・マンとロックンローラーな要素が見事に融合した。ロマンティックさを
   曲へ封じ込めるとともに、後年のバンドに繋がるアンサンブルのきっかけも本盤から始まる。
   ビリーのキャリア上、決して削れない重要な一枚。

   ゲスト豪華、コンピ盤のようにまとめた。"Running on ice"の疾走感が好きで、
   よく脳内に駆け巡る。LPを持ってたが、CDで買直し。聴き返すの久しぶりだ。86年作。
14・Billy Joel:The Bridge:☆☆☆★
   リアルタイム、10代で聴いたときは上品にまとまった気がして、ピンとこなかった。
   今聴くと、予算に余裕もって一曲づつ丁寧に仕上げたとわかる。売れ線を意識しつつ、
   目線をちと上げ、世代感に歳を取らせたような。路線が成功したかは別にして。
   "イノセント・マン"で10代をくすぐり、AORに脱皮したかったのかも。
   ただし溌剌さは残る。発売時、ビリーは37歳。枯れるには早い。
   いわゆるベテラン・ゲストを招き、やりたいようにやったアルバム。

   ハイドンと同時代、ルイ16世時代にヴェルサイユ宮殿でサロン・コンサートが
   行われたと仮定で編まれたアルバムのようだ。録音は64年。ゴセック、サン=ジョルジュ、
   ショーベルトの協奏曲を3曲収めた。97年の邦盤。
13・バイヤール室内管弦楽団:ヴェルサイユ宮、小トリアノンにおけるマリー・アントワネット王妃のための音楽会:☆☆☆★
   18世紀。モーツァルトらが活躍する時代のフランス宮殿で奏でられたであろう、
   室内管弦楽を3曲。ゴセック"2台のハープと管弦楽のための協奏交響曲:ニ長調"、
   サン=ジョルジュ"2つのヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲:ト長調"、
   ショーベルト"チェンバロ協奏曲第4番:ハ長調 作品15"を収録した。
   解説によると当時のフランスでは協奏曲がさまざまに作曲されたという。
   溌剌、かつロマンティックなハープが滑らかに膨らむゴセックの曲、
   透き通る旋律が勢いよく疾走する、2楽章のみなサン=ジョルジュの曲。そしてショーベルトの曲は
   凛とダイナミック。ゆったりテンポの場面でも。チェンバロが清冽に鳴って、
   弦との勇ましい絡みが心地よい。
   1枚のCDでコンパクトに当時の三者三様を楽しめる1枚。

   クイケン四重奏団による、ハイドン弦楽四重奏。78番、79番、80番を。
   録音は95年~96年、発売は03年の邦盤にて。
12・クイケン四重奏団:Haydn:3"Erdody"Quartets,Op.76 No.4"Sunrise",No.5&No.6:☆☆☆★
   清々しく、隙が無い。叙情や粘っこさをすぱっと取り去り、一糸乱れずするすると
   音楽を紡ぐ。中域の伸びやかな響きがつくづく心地よい。きびきびした演奏は
   そっけなさでなく、潔さと取った。ハイドン末期の本3作(実際は6曲からなる
   エルデーディ四重曲集の後半3曲)は、どれも第三楽章のメヌエットが
   速いテンポで駆け抜ける点が特徴と解説にあった。
   クイケン四重奏団の演奏は
   まさに風のごとく涼やかに表現した。スピーディな美。

   彼らにとって3回目の録音だそう。録音は76年、02年の邦盤にて。
11・スメタナ四重奏団:スメタナ弦楽四重奏1番&2番:☆☆☆★
   タイトで緊密な弦カル。特に高音の響きがスリリングで良い。
   楽曲はセンチメンタルなメロディがふんだんに溢れ、格調高さを漂わす。
   あっさり、かつ鋭く解釈した演奏が、ぴりっと張った滑らかさを持ってまとめた。
   第一番は隙無くドラマティックに作曲され、第二番は
   混沌と複雑さが充満した。第一番2楽章の高らかな旋律が大好き。

   71年に録音された全曲集。08年の邦盤で入手。
10・和波孝禧:イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ(全曲):☆☆☆☆
   存分に歌わせた演奏。隙無く凛と老成した印象ながら、演奏は奔放だ。
   大胆に音世界へ飛び込んで、ロマンティックかつ荘厳に無伴奏ソナタを仕上げた。
   自信に満ち溢れた印象を受けた。重音が飛び交い、無造作に聞き流したら
   バイオリン・デュオと誤解しそう。複雑なのに歌心ある譜面をバイオリン一挺で朗々と描いた。
   聴き応えある一枚。

2009/1/7   最近買ったCDをまとめて。

   60枚組、バロックの作品集。作曲家でなく、時代でまとめた
   コンピ盤のようだ。バッハ、ヘンデルから知らない作曲家までずらり。
9・V.A.:Baroque Masterpieces:☆☆☆☆★
   録音クレジットや曲紹介など解説面で物足りなさはあるけれど。この値段とボリュームで
   バロック音楽を概観できる魅力は単純に嬉しい。一通り聴きとおすだけでも一苦労。
   さらに玉石混交とはいえ素晴らしい演奏がいくつも。バラエティに富みすぎ、
   選曲のピントはバロック音楽のみ。このボックスを手がかりにさらなる深みへ
   はいるには最適な入門盤。外箱はもう一回り小さくてよかった。

   タワレコ限定商品。高橋悠治の作品集が4タイトル、昨年にリリースされた。
   これはVol.1の2枚組。1枚がオリジナルのオケ作品と、室内楽。
   もう1枚がコンピュータ音楽。コンピュータを高橋が演奏で、全て92年の録音になる。
8・高橋悠治:1:☆☆☆
   Disc1は器楽作品。曲によって即興性をかなりとりいれてるようだ。
   複雑な技巧を踏まえた演奏は、時にミニマルで無軌道な浮遊感を漂わす。
   抽象的で流れに乗りづらいが、瞬間の美しさは抜群。精妙なガラス細工を連想した。
   Disc2はコンピュータ仕掛けの即興性ミニマル作品。発音そのものも
   ランダムなため再現性や流れそのものを語るのは無意味かもしれない。
   あくまで鳴った音のままに。退屈と切り捨てず
   意味性を見出さぬBGMとせず、聴きながら考えをめぐらせても良い。と、書くあたり・・・
   この音楽をどう咀嚼すべきか迷ってるのも事実。アンビエント・テクノや
   音響系ミニマルと聴くのが、もっとも手っ取り早いか。
   音楽のストイシズムな美しさもさりながら、手法への美学が先行した作品。

   同シリーズ、Vo.2。1枚が高橋のコンピュータと和楽器の合奏。
   もう一枚が和楽器や弦の大編成室内楽のようだ。録音は94~5年。
7・高橋悠治:2:☆☆☆
   Disc1は密やかな熱狂と陰影深い影で練った、静かな音楽。特に(1)で
   灰野敬二にも通じる凄みが興味深かった。全てが書き符なのだろうか。
   Disc2は厳しく、重い。日本要素の古めかしく重厚さが、西洋現代音楽的な弦の
   響きと不思議なほど微妙に絡む。厳かな組曲は、語りや声とアンサンブルが折り重なり
   聴き応えは確かにあり。しかしこの厳しさに、つい聴くのを躊躇ってしまう。
   この音楽は今まで、どれほど再演されどれほど聴き継がれてきたのだろう。
   そして、今後、どのように聞かれるのだろう。目線高く広々した音楽に、
   つい埒も無い考えが宙を泳ぐ。
  
   ローマ・カトリック教会の現役神父、40代男性3人が歌う。08年の作品。
   賛美歌だけじゃなく、いろいろクラシック系の曲を歌ってるようだ。
6・The Priests:The Priests:☆★
   聴きやすいクラシック・男性ハーモニーとは思う。曲も有名どころを並べてるし。
   でも、彼らならでは・・・の特徴を上手く聴き取れなかった。
   もっと聞き込めば、わかるのかも。

2009/1/3   新春購入の第一弾。

   G・ラブがジャック・ジョンソンのレーベルからリリースした盤。出てるの知らなかった。
   ゲストをいっぱい招き、ごちゃ混ぜ要素で組上げたか。邦盤、ボートラ3曲つき。
5・G Love:Kemonade:

   大友良英のロックン・ロールバンドの1st。08年の発売。
4・Joy Heights:Country Kill:☆☆☆
   即興要素をロックの文脈やリフを踏まえ抽出した。先入観無しで聴いたら、大友良英の
   名前はまず浮かばない。ジャケットもふくめて。ジャム・ロックとも違うし、
   今までに無いスタイルの音楽ではないか。しかし、ロックの文脈を残した点を足かせと
   感じてしまい、素直にのめりこめない。面白さはわかるし、ライブだと楽しめるはず。
   もっとぐしゃぐしゃな即興が好み。ドラムやベースがリフで動くたびもどかしい。
   ジャズのリズム・キープは気にならないのに、なぜロックだともどかしいのか。
   この点は自分でうまく分析できていない。
   音楽は興味深い。これはもう一度強調しておく。

   96年のヒップホップ。なんとなくふらふらと購入。ジャケはみたことある。
3・Dr.Octagon:Dr.Octagonecologyst:☆☆☆☆
   今でも新鮮なトラックだ。アレンジは影とねじれたふらつきを持っている。
   ラップは淡々と前のめりに。12年前にリアルタイムで聴いたら、ショック受けてたろうな。
   ふわふわと漂い、クールに音を混ぜ合わせた。交錯するリズムは生っぽい。

   不失者はジャケットが似てて、持ってるのか聴いたのか自信なくなってくる。
   2枚組で歌詞カード付きだが、録音などのクレジットが見当たらず。89年発表の1stらしい。
2・不失者:わたしと 今 どっちがどっちに にじんでいる:☆☆☆
   灰野敬二のスタイルがわかりやすくポップにまとまったって印象をまず受けた。
   轟音やエフェクター、拍や拍子を崩し混沌を演出するパワーが本盤では
   素朴と言えるほど素直に、ロックの枠組みを踏まえている。細部の音使いもくっきり聴こえる気が。

   ジョー・ジャクソンがジャイブにのめりこんだ一枚。81年のリリース。
1・Joe Jackson:Jumpin' Jive:☆☆★
   ピアノも他のミュージシャンに任せ、ジョーはヴァイブと歌のみ。とことん趣味に
   走った一枚。確かに真面目な取組みで楽しい録音だが、ジョーならではの個性に欠ける。
   発表当時はこれらの音楽が手に入りづらく珍しさもあって、ルーツ回帰面での評価も
   できた。しかし過去の音源もたやすく手に入りつつある今、あえてカバー集の
   本盤を聴く必然性は?オリジナルのキャブやレスター、ルイ・ジョーダンを
   聴けば、と思ってしまう。


2008年12月

2008/12/31   最近買ったCDをまとめて。

   ROVOがカブサッキらとの06年ライブ音源。07年リリースなるも未聴だった。
294・ROVO with Alejandro Franov+Fernando Kabusacki+Santiago Vazquez:Live at 東京キネマ倶楽部 7/7 2006:☆☆☆
   アンコールも含めておそらくライブを完全収録した。ミニマルなグルーヴで
   疾走するROVOの側面は控えめ、静謐なアンビエント要素も多分に織り込んだ。
   メロディ要素もなんだか少なめ。淡々と盛り上がる。ライナーの言葉が的を射てた。
   音だけで楽しむなら、むしろボリュームをうんと上げたほうがいいかも。
   楽しいけれど、やはり生で聴きたかったなあと、つい思ってしまう。
   CDだと集中力の持続が厳しく、この音楽がもたらす魅力を聴き流してる気がしてしかたない。

   ジャケは昔から良く見かけてた。女性シンガーのジャズ。74年にブルーノートから。
293・Marlena Shaw:Who is this bitch,Anyway:☆☆☆☆★
   極上のソウル・アルバムとして聴いた。トータル・アルバムっぽい作り、凄腕ミュージシャンによる
   滑らかでグルーヴィな演奏。Dennis Budimirの呟くギターが素敵だ。
   そしてマリーナのしなやかな歌声。隙無くしっとり穏やかで
   華やかさはきっちり。なんと素晴らしい盤。

   ムーズヴィルの第一番。ロックジョウがレッド・ガーランドのトリオと。59年吹き込み。
292・The Red Garland trio + Eddie "Lockjaw"Davis:Moodsville vol.1:☆☆☆
   たっぷりのバラードとミドル集。ムード・ジャズながら、聴き応えあるのが本シリーズの特徴か。
   本盤の基本はピアノ・トリオで、数曲にエディのかすれたテナーが入る。
   アーサー・テイラーは塗りつぶすようなブラシ使いで、バラードながら
   せわしなさを感じるときも。だから"Stella by Starlight"のアレンジに潔さを感じた。
   ガーランドもテイラーも音数を減らし、そっと紡ぐ魅力。ちなみにこの曲、後半はブラシをいっぱい使う
   二段構えなところも、なお良し。ただ、こんな演奏は本盤では例外。ほとんどは
   ブラシが空間を埋め、ガーランドのピアノはリバーブをほんのりまとって静かに鳴った。
   サム・ジョーンズはさりげなく存在感を示すのみ。

   ロックジョウのソロ名義で、シャーリー・スコットがゲスト。58年録音。
291・The Eddie "Lockjaw"Davis:Cookbook vol.1:☆☆☆
   ちょっとフカッとかすれるテナーの音色が優しく響く。アップでも甘くブルージーさが
   全面に出て寛げた。シャーリー・スコットのオルガンが音像の柔らかさに
   大きな役割を果たしてる。ジェローム・リチャードソンのフルートも素朴でいいな。
   手なりにメロディを崩し、ぶいぶいと鳴らす快感。ドラムがツッコミ気味に叩いた。

   習志野のレーベルから98年に発売で詳細不明。スタンダードを演奏してるようだ。
   なぜ買ったかと言うと、林栄一参加、とあったから。さがゆきも参加してる。
290・小針寛史&His Jazz Friend:Just Friends - あの頃のジャズ:☆☆
   破綻なくきれいにまとめた。ソロ奏者の個性がちょっと見えづらい。
   さらり聴けるが、毒や滲みも欲しいと望むのは贅沢か。

   レオン・ラッセル79年の盤。未聴だった。鍵盤はクレジット無いがレオン自身かな?
   サックスはマーティ・グレップ。レオンの"Americana"にも参加してた。
   リズムはロジャー・リン。ベースも打ち込みかな。
289・Leon Russell:Life and love:☆☆☆★
   ドンカマのスカスカなリズムに生ピアノ。じわっとギターに多重録音ホーンズ。シンプルなアレンジは
   今では違和感少ない。無機質なグルーヴはテクノとは別次元のクールさで迫った。
   すごいセンスだ。派手なキャッチーさは無いが、メロディも悪くないし、歌声も出てる。
   時代を越えた普遍性で再評価できる。例えば"Life and love"は、しみじみキュートな曲。

   ポールが06年に出したクラシックの盤。オケ編成だったかな。これまた未聴だった。
288・Paul McCartney:Ecce Cor Men:
   きれいだし、荘厳だ。が、ポールの作品としては聴けない。
   クラシックに詳しくなったとき、聴き返してみよう。
   しずしずと淡々なコーラス付オーケストラ曲。宗教楽の面持ちを感じた。贖罪じゃあるまいし。

   E#が03年に吹き込んだ、アコギのソロ。ミックスや録音も全て自らが担当した。
287・Eliott Sharp:The Velocity of Hue:☆☆☆☆
   オーバーダブありかな?時に複層のギターが伸びやかに鳴る。インド音楽を
   連想する場面も。メロディを意識した即興で、歪んだ音色がたゆたうさまは
   めちゃくちゃにかっこいい。訥々と音が産まれ、捻くれた夢心地で彷徨った。
   妙に強烈な倍音が響く曲は、プリペアードか。アコギのソロと銘打たれながら、
   金属的な音色が続いた。ともあれ、刺激的な即興が詰まった傑作。

   ユージン・チャドボーンとヘンリー・カイザーのギター・デュオ。
   突拍子も無い即興だといいな。99年の盤。
286・Chadbourne/Kaiser:The Guitar Lesson:☆☆☆
   ボディ叩きやアコギのびよーんとした響きも活用する。
   抽象的な即興の交錯。メロディアス路線をあえて避け、パーカッシブに弦を操る場面多し。
   確かに突拍子なく、対話性を控えてうねうねと音が漂った。
   無造作で偶発、しかし手癖を巧妙に回避のようだ。ノリも拍子も除去し
   テンションもあえて抑え、インプロの可能性を探った。パッと聴き流せば
   退屈だが、地を這う如くの音たちを追ってゆくと、がぜん面白さが浮かんできた。
   (10)では語りながら即興の交錯を。デレク・ベイリーへのメッセージか?
   何を言ってるか、聴き取れたらいいのにな。

   93年にニッティング・ファクトリーから出た、クレツマーのコンピ。マサダが
   1曲提供している。ほかはちょっと聴いたこと無い。
285・V.A.:Klezmer 1993 New York City:☆☆
   MASADAの曲は、"masada3"とは別テイク。本盤のみで聴けるようだ。
   その他もバラエティあふれる編成のクレツマー。伝統から一歩踏み外したユニットを
   集めた。スピーディな展開が多く、楽しい。

   ソニー・シャーロックがラズウェルのプロデュースで吹き込んだ91年の盤。
   ファラオ・サンダーズ、エルヴィン・ジョーンズらが参加。
284・Sonny Sharrock:Ask the ages:☆★
   この盤、持ってた・・・。とほほ。悪くは無いが、刺激に乏しく大味。
   どんなに音で埋め尽くしても、隙間っぽいのはなぜだろう。
   しかし音使いが祭りみたく、妙に明るい。今回もドラミングが耳に残った。

   これもビル・ラズウェルのプロデュースで87年の盤。メンバーはドラムに
   フェローン・アクラフとアベ・スペラー(彼は良く知らない)と、
   メルヴィン・ギブスとラズウェルのベース。ダブル・リズム編成ってこと?
283・Sonny Sharrock:Seize The Rainbow:☆☆☆☆
   2ドラム1ベースの編成でセッション。ラズウェルは(7)のみベースで参加だった。
   スケール大きく伸びやかなギター・ソロが素晴らしい。大味なアレンジだが
   一発勝負でバトルでなく、あくまでギターをフィーチュアした。
   きめ細かく二つのドラムが空間を埋め尽くし、ベースは野太く吼える。
   この2ドラムでリズムを滝のように降り注がせたのが、アレンジの工夫であり勝利。
   そしてギターはディストーションを力いっぱい轟かせた。
   (2)のポップなロマンティシズムがまず、印象に残る。(3)も痛快。
   (6)の妙にほのぼのなメロディが楽しい。
   どの曲もほぼインプロを生かした。もっとも、決めはきっちりある構成だ。
   エレキギターをじっくり聴くのにぴったり。ボリュームをどかんと上げよう。

   ビル・フリゼール94年のソロ。ベースがカーミット・ドリスコル、ドラムは
   ジョーイ・バロン。カントリーっぽいのかなあ、これも。
282・Bill Frisell:This land:☆☆☆★
   ほのぼのカントリーでラウンジ的って、のどかな響きなのに。アンサンブルは
   きっちり練られたアレンジ。さらにギターは隙を縫うように奔放ながら
   心地よいメロディを紡ぐ。コンパクトで緻密な楽器の組合せがキモ。
   ジョーイ・バロンのドラムは正確かつ、崩しを入れる。

   実はきちんと聴いたことが無い。本盤が彼のキャリアでどういう位置づけかと
   いうようなことは、もちろん知らずに購入した。76年のアルバムで、コンボ編成みたい。
281・Jean-Luc Ponty:Aurora:☆☆★
   充実した上手い演奏がみっしり。ただし音色やセンスの点で、時の流れで魅力の
   ぼやけた面も残念ながらあり。特にエレピ音色が古臭い。ハイテク・ユニゾン攻撃を超える
   強烈な独自性を見出せず。プログレや高速フュージョンで終わってしまった。
   一方でセッションぽさを生かした(2)が素直に楽しめた。
   全体ではトラッド、ロックへも目を配り、バラエティさを意識した良盤。
   時代の波に乗った一枚、だろうか。
   バックも豪華。パトリース・ラッシェンの流麗なピアノ、ポンティが見出した
   当時は新人のダリル・スチューマー、ザッパ系からトム・ファウラーと。
   dsのノーマン・フェリントンはその後の活躍がよくわからず。
   とにかく整然たる凄まじいテクニックに圧倒される。

   NYはストーンのベネフィット盤。やっと最初の盤を買う。
   ジョン・ゾーンがビル・ラズウェルらとセッションしてる。06年発売。
280・The Stone:Issue One:☆☆☆★
   面白い。メンバーはジョン・ゾーンのほかに、デイブ・ダグラス、マイク・パットン、ロブ・バーガー、
   ビル・ラズウェルにベン・ペロスキー。顔ぶれから、思いっきり凶悪なインプロと想像してた。
   ふた開けたら逆ベクトル。もちろんフリーキーなシーンもあるが
   ほんのりアンビエントでメロディ感覚を残した、静かな空間を作った。ビル・ラズウェルの
   世界感だろうか。穏やかで無作為に音が飛び交う。けれどもたゆたう
   音像が妙なくつろぎをかもしだす、ユニークさをCDへ封じ込めた。
   曲目は構成を匂わすタイトルがついてるが、たぶん全部即興では。

   ここからはインディ・ソウル。全てジャケ買い、詳細不明。
  
   街角でトランペットを構える黒人男性、セピア色の写真。かっこいいといいな、と
   購入した。クレジット見ると、かれはキーボードやベースなども演奏。
   もしかしたら本盤、インストかもしれない。04年の発売。
279・Mo Pleasure:Elements of pleasure:
   ラテンやソウル風味のフュージョンっぽい。耳ざわり良いが、粘っこさ無く
   好みとは違う。小奇麗にまとまったのみ。五目風味でなく八方美人な印象。

   サザン・ソウルっぽい男性デュオ。02年にノースキャロライナのレーベルより。
   曲のタイトル見る限り、ゴスペルみたいだ。
278・The Mayes Brothers:Standing together:
   打ち込みリズムのモダン・ゴスペル。それほど歌がうまくも無く、
   曲もそつなく流れてしまう。これぞって特徴を見つけられず。
   のどかにスローな歌を聴くならいいかも。

   へんてこなジャケに引かれた。白人と黒人の混成バンドみたい。02年にサンフランシスコのレーベルから。
   どっちがバンド名でどっちがタイトルだろ。
277・PC Munz and the amen corner:A good deed in a weary world:☆★
   基本はヒップホップ。生演奏感覚を活かし、耳ざわりよくハッピーに進行するため
   さらりと一枚聴いてしまう。気楽に楽しむにはいいかも。
   ポップなんだけど、語り口調でライムがちょっと暗いが。

   エジプトみたいなジャケットに惹かれた。05年にシカゴのレーベルから。
   クレジットが何も無い。ペら一枚入ってるだけ。
276・Phillip Townsend:Beautiful Black Lady:☆☆☆☆
   70年代ソウル好きなら、ぜひ聴いて欲しい傑作だ。どの曲もがっつり聴き応えあり。
   デトロイト出身で非フルタイムのミュージシャンらしい。キャリアが不明だが
   相当のベテランのようだ。サウンドは70年代シカゴ・ソウル。
   21世紀に発表された盤と思えぬくらい。
   甘くせつなく、時にファンキー。メロディも良い。クレジット無く詳細不明ながら
   アレンジは打ち込みだけでなく、生演奏もいっぱい。ストリングスはシンセ音源が惜しい。
   ちょっと鼻にひっかける、マーヴィン・ゲイあたりに通じる歌唱は、
   声量こそそこそこだが、ぐいぐい迫る魅力あり。
   インディで埋もれるのが惜しい一枚。コーラスの感じはゴスペル的なところも。

   ちょっといなたくて気取った感じな男性ソロ。02年にサウスカロライナのレーベルから。
   本作が1stで、16歳のときレーベルと契約。2年かけて本盤を作った早熟ぶり。
   なお08年に2nd"GET TO KNOW ME"をリリースしている。
275・Marcus Allen:Never Again:☆☆☆★
   18歳と思えぬ出来。打ち込みと生ドラムを使い分け、ぐっとオーソドックスな
   ソウルを作った。歌物の方が好み。確かに歌は振れるし、アレンジも甘い。
   けれども将来が楽しみ。ヒップホップ要素は、どうもうわずり気味。

   こじゃれた男がスーツをきめて立ってるジャケット。02年発表。ゴスペルかな?
274・Raimundo Santos:Love's Calling:☆☆★
   別にゴスペルじゃないみたい。聴き心地がすいすいなソウルの盤。
   曲やアレンジのセンスは良いが、ちょっと底が薄い。形だけ整え、土台があやふやな印象だった。
   歌も伸びやかだし、気のせいかもしれないが。バラードからラテン、レゲエ風まで
   アレンジは多彩さを狙った。キーは高く、滑らかに聴ける。

   ふてぶてしいスキンヘッドのしぶとそうな男のイラストがジャケット。
   ドラマーであり、キーボードも弾いている。95年発表のクレジットあり。
273・Dean Francis:This groove's for you:☆☆★
   オハイオでキャリアをしぶとく積み、ついにリリースした一枚のようだ。
   怒涛のファンクはタイトで前のめり。野太いリズムがいかしてる。
   メロディはシンプルだが、勢い一発かっこよく聴かせるのがキャリアのなせるワザ。
   仲間うちで集めたホーン隊も良い。Pファンクほどズルズル粘らず、
   いさぎよいグルーヴが特徴。流行にこだわらず、一徹のファンクネスを見せ付けた一枚。
   アップでのビートがとにかく良い。

2008/12/28   最近買ったCDをまとめて。

   先日、太田惠資のライブで言及されてて興味持った。さっそく入手。
   これはトルコのミュージシャン、ブルハン・オチャルが中心のユニット。
   何枚もアルバムをリリースしてるみたい。これは06年の発売。
272・Istanbul Oriental Ensemble:Burhan Ocal:Grand Bazaar☆☆☆☆★
   アラブの伝統音楽を踏まえたオリジナルなアンサンブル。クラリネット、
   ウード、カーヌーン、バイオリン、そしてパーカッション2人。独特な
   編成が生み出す幻惑な響きと滑らかで畳み掛ける旋律、そしてポイントでかっちり
   響くパーカッション。このジャンルの知識あれば、さらに楽しめそう。
   ソロ部分は即興だろうか。ジャズ的なソロ回しでなく、あくまでもアンサンブルが主眼。
   弛緩せずぐいぐいウネるさまが素晴らしい。アラブ音楽への親しみと興味が沸く一枚。/p>

   05年リリース、ブルハン・オチャルのソロ。パーカッションのほかにウードなども
   演奏するミュージシャンとある。伝統音楽だけでなくエレクトロな要素もあるみたい。
271・Burhan Ocal:New Dream:☆☆☆☆
   オチャルの書いた収録曲は素人耳だと、どっぷりトルコ音楽に聴こえる。エキゾティックな
   メロディが弦楽器を中心に幾度も奏でられた。その隙間から、ごく控えめに
   刻むエレクトリック・ビート。電子音が滑らかに混ざる刺激的なサウンドだ。
   曲調が持つ繰り返しをループと捉えたか。オチャルはピアノとパーカッションを
   担当とクレジットあるが、さほど自らの音を全面に出さず。ソロはバイオリンやクラリネットが
   まず印象に残った。見事なプロデュース能力を結実した傑作。

   ピート・ナムルックとの共演盤。"Sultan"を吹き込んだミュージシャンだったのか、と
   改めて知った。これは彼とのユニット、3作目。Faxからも当時リリースされてるが、
   これはダブルネオンなるレーベルから発売を、日本のライスが解説付きで発売の盤。
270・Burhan Ocal & Pete Namlook:Sultan Orhan:☆☆☆
   アラブ要素にこだわってるのかもしれないが、ラテン風に盛り上がる場面も
   ピートがポップかつダンサブルに好き勝手なトラックを作り、そこへオチャルが
   乗っけた印象を受けた。曲はバラエティに富んでおり、エキゾティックな魅力もあり。
   かなり楽しめた。

   難波弘之の旧譜がボートラ付きで再発された。
   2ndソロの本作は自作SF短編付き。曲目は海外SFにインスパイアされた
   名曲もあり。81年の作品。ボートラは当時のタイアップ・CMな曲。
   さらにライブ発掘音源が3曲。ライナーは達郎との対談。買いなおしやむなし。
   発掘ライブ音源は、次作でスタジオ録音される"百家争鳴"、ELPで馴染み深い
   "ナットロッカー"、1st収録のジャズ"鋼鉄都市"など。
269・難波弘之:パーティ・トゥナイト:☆☆☆☆
   センス・オブ・ワンダーの萌芽が伺えつつ、達郎や周辺ミュージシャンと作りこんだ
   統一性あるアルバム。2ndにして濃い色合いのまとまった仕上がりだ。このへんが達郎の手腕か。
   今回のボートラなライブ音源が嬉しい。当時の様子が伺える。
   剛腕精鋭でアナログ趣味のアンサンブルがカッコいい。

   82年作、3rdソロ。センス・オブ・ワンダーというバンドを意識した。
   同名のSF短編も執筆。全体にからっと複雑にプログレした印象がある。
   本作も達郎との対談ライナー付き。ボートラはテクノ12inchな"Who done it?"。
   発掘ライブ音源は、ポンタらとの"Early night"、本作収録の"空中の音楽"
268・難波弘之:飛行船の上のシンセサイザー弾き:☆☆☆★
   洗練され打ち込み風にタイトな印象あったが、改めて聴くと人力バリバリな
   プログレだったと今さらながら気づいた。当時は"空中の音楽"や"百家争鳴"に
   惹かれたが、今では"ホスピタル"や"メッセージ"のメロウさにも魅力を覚える。
   発掘ライブの"Early night"はミニマルなテクノ風味。40分ほどの演奏を編集という。
   前半はドラムレスでシンセが漂い続ける。10分ほどでFO、こんどは
   軽やかなシンバル・ワークを加える。アンビエント・テクノ風味。
   音源化された難波の音楽性とは異なってて面白い。
   "空中の音楽"は厚見玲衣がシンセ・ベースで参加。
   アレンジはCD版とさほど変わらず、かっちりと弾む。3分50秒あたりで30秒強、
   厚見のサイレンみたいなミニ・ムーグの咆哮ソロあり。

   クラシック要素を取り入れ、ロマンティックなムードが漂う大傑作。
   彼のソロ作で、ぼくは本作が一番好き。85年の発表。
   ボートラは当時に12インチで発表された"晝の夢"。さらに本盤で初CD化の
   ライブ音源が三曲。1st収録の"都市と星"の演奏が嬉しい。
267・難波弘之:ブルジョアジーの秘かな愉しみ:☆☆☆☆☆
   前回の再発もきれいな音だったため、あまりぼくの耳では今回リマスターの
   違いは聴き取れず。粒立ち良く、低音がずしん響くとは思う。
   ロマンティックに始まり、上品なデカダニズムに満ちたアルバム。隅々までコントロールされ、
   溌剌とした難波の魅力が詰まった。毒を磨き上げシンプルな編成で
   スケール大きい世界を提示した傑作。エコー感がたまらなく良い。
   ボートラも良い。"都市と星"はアコギ感覚を残しつつ、いきなりサビから始まる。
   トラッド色を活かし、透明感を出した。"ボレロ"では電気音と生音を調和さす
   本盤のコンセプトに沿った嗜好の、アグレッシブでダイナミックなアレンジ。
   "二つのトランペットのための協奏曲"での難波は、奏者の一人的な位置づけか。
   演奏はストリングスや鍵盤の部分をシンセで受け持ち、テクニック面を強調した。
   曲はあっさりと終了してしまう。

   ベテラン+若手のグルーヴ大会なコンピ"Boycott Rhythm Machine II"をきっかけに
   バンド名義で新譜が生まれた。08年の坂田が、ちっとも知らなかった。
   メンバーはNUMB×SAIDRUM×吉見征樹×井上憲司。
266・Draco:Zero:☆☆☆★
   即興の混沌さはなく整ったオリエンタル・テクノに仕上がった。構成が決まって
   押し引きのメリハリもくっきり。その分スリルは減じたが、聴きやすさは増している。
   エキゾティックなシタールとタブラが一要素に留まりがちで物足りぬが
   トランスとは違った方向性で、アジアの色合いを見事にテクノへ昇華させたセンスは
   さすがの聴き応え。もっとラフな即興の切りあいで聴いてみたい。

   ブライアン・ウィルソンが08年にリリースした新譜。ブートでLive音源を聴いてたので
   ちょっと買いそびれてた。DVD付きの限定版を入手。
265・Brian Willson:That lucky old sun:☆☆☆☆★
   繰り返し聴いてたら、胸にしみた。現実とは別、ブライアンの理想郷を
   滑らかに仕上げた一枚。サウンドはマニュアルな響きで、丁寧かつふくよかにまとめた。
   派手さや時代性は無く、ある意味とりとめもなく。ブライアンのメロディが高まってゆく。
   ショービズのプレッシャーとは無縁に、淡々と紡いだ素敵な一枚。
   ブライアンの喉が完璧な時に、この盤を聴いてみたかった。

   バイブルは名前だけ知ってた。ブー・ヒューワディンの音楽を聴くにつれ、
   ぜひ一度聴いてみたくて。本盤は3rdかな。94年の作品。
264・The Bible:Dodo:☆☆☆★
   冷静で芯の強いポップスとして聴き応えあり。バンドながら、パーソナルな
   感触なのはゆったりシューゲイザー的なサウンドのためか。
   後年にヒューワディンとエディ・リーダーの交流からトラッド要素を
   想定したが、本作では希薄。あくまで真っ直ぐに歌が進む。
   甘さに流れうるきれいなメロディなのに、アレンジは硬質さがしっかり。
   派手さは無いが丁寧に録音されている。サイケへ流れず情感をこめて。

2008/12/21   最近買ったCDをまとめて。

   ポール・マッカートニーの変名プロジェクトの新譜。今回は歌物ぎっしりらしい。
263・The Fireman:electric arguments:☆☆☆★
   全面ポールの歌。ポールの"自由な"新譜と言えるのが嬉しい。
   音楽はばっちり、ポールのアイディア一発勝負な曲がつまった。全て即興的に作曲したという。
   自らのブランドが持つビジネスの重さを意識せず、奔放に発表。そんな本来の
   "自由"をのびのびと"Fireman"のブランドで達成させた。このスペースを今後も有効活用
   してくれたら、いいな。やりたい音楽を好きに出すスペースとして。
   声はかすれたり、一筆書きなメロディもかまわずに。ポールは無造作に曲を並べた。
   エレクトロニクス要素は一歩引き、メリハリつけた。やたら作りこまぬのが素晴らしい。
   ポールの入門作や代表作とは違う。しかし、とても素敵な一枚なのは間違いない。

   エレクトロニカと人力グルーヴを融合、のあおり文句に惹かれて購入。
   本盤が2ndで、日本盤はボーナスで08年9月のライブ(約70分)がついている。
262・Telepath:Contact:☆★
   打ち込みっぽいリズムが単調に聴こえてしまう。レゲエやオリエンタルなビートは
   ライブで聴いたら気持ちいいかな・・・。とはいえ同収のライブ盤はさらに単調。
   なぜだろう。不思議だ。アドリブ箇所などもあるのに。
   低音が緩く、パンチ力を強調ではないせいか。

   吉田隆一率いるトリオの1st。08年のリリース。
261・Blacksheep:Blacksheep:☆☆☆☆
   ミニマルなフレーズの繰り返しは、どこまでも美しい。リズム楽器が無いゆえに
   グルーヴがなまめかしく動く。けっこうピアノのフレーズがぎくぎくと動くのは、変拍子かな?
   積み重なるリフのスリルが、心地よい。トロンボーン、バスクラが
   生み出す、野太い響きの落ち着きも素敵。

   一噌幸弘、壷井彰久、足立宗亮のトリオ編成時代なAUSIAのアルバム。
   01年と02年の録音。今まで聴きそびれてた。
260・AUSIA:かさかさ:☆☆☆★
   爽快に疾走する。ハイテクニックでも優雅さとほのぼのなムードを残す余裕が
   彼らの特徴だろうか。ユニゾンでがつっと行く場面も、アンサンブルが
   絡むアレンジも、どっちも聴き応えあり。カントリーやトラッドの風味を
   持たせつつ、無色の耳ざわりを感じた。

   吉田隆一が全てを自らで製作した1stソロ。02年の作品。
259・吉田隆一:Phone-Phone:☆☆☆★
   暖かなアンビエント・ミニマル・テクノに仕上げた。穏やかなメロディ、
   落ち着いたアレンジ。強烈なブロウはここに無い。シンセの静かな音が優しく響く。
   録音メモ楽曲解説も興味深い。
   こだまのように、寄せては返す音の対話。一人の中でふらふら揺らぐ。そんなイメージが、聴いてて浮かんだ。

   同様コンセプトで製作した2ndアルバム。04年の盤。
258・吉田隆一:Tea pool:☆☆☆☆
   丁寧かつロジカルなアンビエント・テクノをアコースティックで積上げた、
   ヒネりいっぱいのアルバム。打ち込みもあるけれど、聴こえる耳ざわりは生音感覚で柔らかい。
   ハードなブロウは一歩引き、多彩な楽器を多重録音しロマンティックに仕上げた。
   吉田のキュートなメロディ・メイカーぶりを味わえる一作。
   何曲かで聴ける、ビインと響く倍音が快感だ。

   04年発表のライブ盤。グラハム・メイビーのベースに加えて弦2本、さらに
   キーボードとパーカッション、キーボードを加えた変則の編成にて。
   演奏は01年のシアトルとポートランド公演から。
257・Joe Jackson:Two many nights - Live in Seattle & Portland:☆☆☆
   厚めのシンセとストリングスで飾りながらも、全体の印象はシャープ。
   曲間やMCをうまくつまみ、メドレー形式で次々に新旧の曲を滑らかに歌いまくった。
   ジョーの声は出ており、メリハリ効いたアレンジとうまくハマった。
   グラハム・メイビーのベースがぐいぐい押す。キャリアの集大成やアルバムの
   完成度へ無闇に気を配らず、気持ちいいライブをあっさりとまとめた。
   ラテン的なパーカッションが全編を賑やかに飾る。
   実はこの盤、02年に買ってた。棚に見当たらないが、当時は処分しちゃったかな?

   ストーンズの旧譜。聴きそびれてた。これは94年。
256・Rolling Stones:Voodoo Lounge:☆☆☆☆★
   冒頭2曲とアルバム真ん中、B面トップにあたるあたり。これらに配置の曲がかもし出す、
   重戦車っぷりに全体イメージを固定されそうになる。
   しかし基本はカントリー色を身軽に織り込みリラックス、の不思議なアルバムに
   仕上げた。アップテンポは重心低く、ずっしり凄みを出した印象。でもスライド・ギターで
   ブルージーさを混ぜるバランス感覚がストーンズ流か。
   そのあとは"Sparks will fly"の軽快なノリに惹かれ、キースの"The worst"に和み、
   ずぶずぶと気持ちがリラックス。"Moon is up"の骸骨みたいな
   硬質のアンサンブルも楽しい。これはプロデュースしたドン・ウォズのセンス?
   派手じゃない。しかし味わいは奥深い。のびのびと寛いだセンスと余裕がたまらない魅力だ。

   ストーンズ、97年のリリース。プロデュースはドン・ウォズを中心に、曲によってダスト・ブラザーズなど別の人も立てた。
   ワディ・ワクテル、ジム・ケルトナーも多くの曲で起用。ベースは曲によって変えた。
   (13)のソプラノ・サックスはウエイン・ショーター
255・Rolling Stones:Bridges to Babylon:☆☆☆★
   音圧びしばしで押すストーンズ・スタイルは冒頭のみ。あとはざらついた
   したたかさを感じる好盤。カントリーやブルーズ要素を滑らかに取り入れた
   メロディを、肩の力抜いてさっくり作った。一方でサイボーグっぽい構築度と
   硬い響きは、80年代以降なストーンズでもあるけれど。
   地味ながらぎらりと輝くアルバム。

   ギニアのミュージシャン。当時、大ヒットしたアルバム。87年の作品。
254・Mory Kante:Akwaba Beach:☆☆☆★
   リズムも含めてシンセや打ち込みの華やかさが時代を超えてかっこいい。
   音色が古びてないのはなぜだろう。シンプルなビートながらキーボードや
   ベースで複層的なグルーヴを出し、前のめりなダンサブルさを残した。
   きっちりと作りこんだオケを、うわずり気味なボーカルが爽快に疾走する。
   どの曲もとびきりポップに仕上がった快盤。

   プリンスの2枚組ベスト。2枚目で、さまざまな12インチ音源を
   リイシューしたのが本盤の売り。06年の発売。
253・Prince:Ultimate:☆☆★
   Disc1のベスト盤は有名曲ばかりでイマイチ食指動かず。
   シングル・エディットを多数収録し、マニア狙いもしてるみたい。"パレード"や
   "アラウンド・ザ~"を完全無視はDisc2とのダブり避けか。
   そのわりに"アメリカ"のロング・バージョンが無い・・・。
   しかしDisc2は12インチ・テイクがどっさり聴け、単純に嬉しい。
   長尺の演奏は、実際にプリンスが録音してたのか。
   オフィシャルに発表される曲の後ろに控えた、膨大な蓄積を伺わせてスリリングだ。
   もっともっと、当時の音源がオフィシャルでリリースされてほしいな。

   ハイドンのディヴェルティメント集4枚組の廉価盤。作品1~12迄を
   収録かな。録音は95年。ドイツのレーベルみたい。Arte Nova盤。
252・Hamburg Soloists Emil Klein:Haydn Devertimenti Nos.1-12:☆☆☆★
   編成も良くわからぬが、分厚く豊かな響きでゆったりとたゆたうように
   弦がふくよかに流れる。さすがにCD4枚、集中力を維持して聴くのはムリ。
   けれどもふっとときおり耳が吸い寄せられ、きれいなメロディに惹かれた。
   ダイナミズムはさりげなく、メロディの華やかさもひそやかに。そもそも
   喜遊曲とはBGMを踏まえた音楽なのかもしれない。
   書き飛ばしの耳ざわりよい音楽だけかと思ったら。楽器のからみ、メロディの滑らかさに
   ハイドンの力や意思がしっかりある。折に触れ、聴きかえしたい盤。
   解説がいまいちあっさり気味。

   黒人ピアニスト。前半が素朴なゴスペル、後半がコンサートピアニスト的に
   クラシック作品を集めた。クラシック寄りの作品みたい。99年の盤。
251・Anthony Philip Pattin:With a touch of class:
   素朴なゴスペル曲と流麗なクラシックの二部構成。どっちが好みかと言えば、
   やはり前半。とはいえ端正なピアノ演奏では、盛り上がりに欠けるのも事実。
   テクニック的に上手かろうと、ちょっと中途半端かな。

2008年11月

2008/11/29   今日買ったCD。バーゲンだった。

   レゲエは知識が無い・・・。ネット検索によると、デルロイ・トンプソンこそピンチャーズの
   87年盤"Mass out"とフランキー・ポールの87年作"Warning"を2in1した
   アルバムみたい。なぜこれを一枚にまとめてるのかも不明。
   クレジット見たら、リズム隊がスライ&ロビーってのを手がかりに購入。
250・Pinchers & Frankie Paul:DANCE HALL DUO:☆☆☆
   スライ&ロビーの甘くタイトなグルーヴに乗って、ゆったり気味のレゲエがふんわり。
   こりゃ気持ち良い。メロディ・ラインはシンプルで、繰り返しが多く耳へすぐ馴染む。
   すかすかなウワモノを(ギターとピアノの一部もロビーが演奏)がっつりとリズム隊が支え
   寛げつつもスリリングさをまとった仕上がりに。ロビーのベースがなまめかしい。
   2枚のアルバムをあっさり一枚へまとめた、お徳盤。

   スライ&ロビー名義の87年アルバム。
249・Sly & Robbie:Rhythm Killers:☆☆☆
   ブーツィ、バーニーなど豪華ゲストを向かえてファンク大会。シモンズを叩くドラムは
   ともかく、ベースはあまり目立たず。タイトな打ち込みっぽいリズムの全てが
   人力だろうか。クールなPファンク的なグルーヴを感じた。

   ギニアの歌手、モリ・カンテが90年にリリースしたアルバム。当時はしょっちゅう
   レコ屋で見た記憶あるが、未聴だった。
248・Mory Kante:Touma:☆☆☆★
   見事にデジタルとアナログを融合させ、ポップに突き抜ける。キラキラと
   爪弾かれ、歌声は見事にコントロール。溌剌さを演出で構築した。
   隅々まで練られたアレンジは、前作以上に完成度高い。トーキング・ドラムや
   リンガラ風の耳ざわりを打ち込みと爽やかに融合させるセンスがすごい。
   たしかにあまりにもポップでグルーヴは物足りない。しかし別次元の魅力が確かにある。

   こんな盤出てたの知らなかった。オールスターズ名義のEP盤。収録時間は35分にも及ぶ。
   さまざまなミックスとアルバム収録曲で6曲を収録した。"Dope Dogs"からのシングル・カット。
247・Parliament-Funkadelic/ P-Funk All-Stars:Follow The Leader(EP):☆☆
   ヒップホップ、あるはテクノ調に着目なリミックスが特長か。
   シングルやラジオ・エディットも含めて、全6曲。
   ひとつながりの長い組曲を聴いてるかのようだ。

   リアルタイムでははっきり言うと苦手だった彼ら。せっかくだから買って見た。
   85年のアルバムで、"Shout","Everybody wants to rule the world"を収録。
246・Tears for Fears:Songs from the big chair:
   ダークテクノな思い込みあったが、記憶よりアコースティックな要素あり。
   とはいえブリティッシュな感触はちょっと好みと違う。
   "I Believe"がワイアットの"Shipbuilding"を連想させるが、なにか意識
    してるのかな。"Everybody wants to rule the world"はいい曲、と改めて思う。

   XTCのレア・トラックを集めて90年に発売のコンピ。
245・XTC:Rag & Bone Buffet:☆☆☆★
   変名プロジェクト、そしてライブ音源。B面曲も。コンピゆえのとっちらかった愉しさ。
   アンディはすぽんと抜けるドラミングが好きなのかな、と思った一枚。

2008/11/26   最近買ったCDをまとめて。

   アース・ウィンド&ファイアの旧譜を聴きたくなった。
   右肩上がりで時代を駆け抜ける過程の作品。76年発表。本盤は01年の
   再発で、ボートラ5曲を収録した。
244・Earth,Wind & Fire:Spirit:☆☆★
   軽い。きめ細かくタイトなアンサンブルだが、バンドのベクトルを
   強引に収斂へ至らぬ軽やかさを、アレンジに感じた。
   ボーカルのワイドレンジ、ホーン隊の強靭さ。武器を使いこなす直前、のびのびと
   振り回してるかのよう。気軽な聴きかたに良いかも。
   ボーナスも試行錯誤の一環をまとめた印象を受けた。

   時代を掴んだ直後の作品、79年発表。ボートラ3曲収録の04年再発盤。
243・Earth,Wind & Fire:I am:☆☆☆★
   音だけだと、無菌状態のジャストでクールに整った、ゴージャスなソウルに聴こえる。
   ジャケットのスピリチュアルさはアレンジへ無闇に反映させてない。
   今の耳で聴いてもクールと感じる上に、多分全てが生演奏だろう。方向性の
   クリアさが爽快だ。ダンサブルさをいまだに感じるのがすごい。ディスコ的なのに。
   アレンジが隅々まで練られ、隙無く音を詰め込んだ。ギターのカッティングと
   ベースのからみがかっこいいな。アルバム全体を一気に聴かせる。

   オリジナルは2枚組LPをCD一枚にまとめた。80年リリース。廉価盤CDを購入
242・Earth,Wind & Fire:Faces:☆☆☆
   構築されたアレンジとホーンを筆頭に無菌室っぷりに制御されたサウンドは素晴らしい。
   しかし曲が過去作品に比べ弱いか。決して悪くないが、EW&Fには
   もっと鋭い勢いを期待してしまう。アナログ2枚組相当のボリュームが
   大味な感あり。とはいえ演奏の切れはシャープ。これは確か。
   もっと煮詰めて1枚モノにしたら、良かった気がする。
   アナログA,B面最期や、"Sailaway"などメロディアスな曲に惹かれた。
   ラスト曲前で音頭が唐突に出てきて違和感。彼らにはエキゾティックに聴こえるのかな。

   藤井郷子がマーク・ドレッサー&ジム・ブラックに田村夏樹と組んでるコンボで
   04年にエッグファームでのライブを収録した盤。05年発表。
241・藤井郷子Four:Live in Japan 2004:☆☆☆☆
   隙が無い。分厚くてドラマティック。パルスのようなビートをドレッサーとブラックが作り、
   凛とピアノが突き進む。トランペットは無造作に立った。前半の長尺な2曲が
   もっとも聴き応えある。単純なソロ回しでなくスペースを取り合う即興の積上げで、
   きめ細かい音像をスリリングに磨き上げた。潔さと抽象性を追求のさまが素敵だ。
   小粒の響きを大切に刻むドラミングの丁寧さを、ピアノがすべらかに包み込む。

   ガトー・リブレ(藤井、田村、津村和彦、是安則克)の3rd。08年発売。
240・Gato Libre:海を渡るクロ:☆☆☆☆
   切なくゆったりしたメロディが全編を漂うが、アレンジはきっちり設定。
   ストーリー性ある表題をつけているが、おそらく後付けではないか。
   まず曲ありき、で積上げた気がする。07年5月22日、神戸のビッグ・アップルでの
   ライブ音源。もちろんアドリブ要素はあるけれど、テーマ部分の構築性が
   端正なイメージをアルバム全体に漂わす。決して構造硬直はしておらず、即興ぶりも
   とても興味深い。とっつきやすく、奥が深い。独特の世界感をきれいに追求した一枚。

   エディ・ビッグジョウがプレスティッジに吹き込んだビッグバンドの盤。
   1960年の録音で、アレンジはオリバー・ネルソンとアーニー・ウィルキンス。
239・Eddie"Lockjaw"Davis big band:Trane Whistle:☆☆☆★
   ファンキーっぷりがかっこいい。テーマやリフ以外はコンボ編成的に薄い音に替わる。
   アップもバラードも前のめりで力こもってる。
   金管が襲い掛かるアレンジがスリリングで、聴き応えある盤。
   ぶりぶりと唸るロックジョウのソロがいいなあ。

   アート・ブレイキーとメッセンジャーズの60年吹き込み。メンバーは
   リー・モーガン、ウェイン・ショーター、ボビー・ティモンズ、ジェイミー・メリット。
238・Art Blakey and the jazz messengers:Like someone in love:☆☆☆
   ブレイキーの連打ドラムは控えめ。ロマンティックなジャズがいっぱいに詰まった。
   とリわけ1曲目が素晴らしい。
   特にリー・モーガンのトランペットがいかしてる。ショーターは
   端々で魅力的なプレイをするが、ぱっと印象に残るのはモーガン。
   ボビー・ティモンズは着実にピアノを弾き、ジミー・メリットのベースは素朴な感触。
   ときおりブレイキーのリズムがとっちらかって聴こえるのはなぜだろう。

   詳しい経歴は不明。バイオリンとバリサク、ペットにピアノとベースという
   アコースティック感覚のジャズか。06年のイギリス録音。
237・Holywell Session:Live in Oxford:☆☆
   おっとりしたインプロ。バトルやテクニックひけらかしは無い。
   うっすらとソロを受け渡す。シビアでも穏やかさが漂った。
   互いの音を聴いた即興で、アンサンブルの構築性はうっすらあり。
   真面目ながら、ゆとりも感じた。とんがった志向の一方で、ジャズさも残る。

   ルイ・スクラヴィスが舞台や映画へ提供した作品集の2枚組らしい。07年発売。
   舞台が6作品、映画が8本。数分の短い曲が40曲詰め込まれた。
236・Louis Sclavis:La moitre du monde:☆☆★
   映画などへ提供曲をテーマに即興で再構成じゃなく、映画音楽そのものの
   抜粋オムニバスではないか。短い曲が立て続けに並ぶ。いわゆるテーマ的な曲を
   並べたのか、気に入った曲を抽出したかはよくわからず。アコースティックな
   曲が続く一方で、唐突にロック調や打ち込みっぽいアレンジも顔を出し
   目先を変える。アドリブ要素よりもアンサンブルの心地よさに軸足置いた盤。
   ジプシー的なキャッチーさ、流麗なロマンティシズム。スクラヴィスのメロディ力を堪能した。
   あくまで提供曲であり、スマートさが先に立つ。時にもっとじっくり長尺で聴きたい場合も。

   詳細不明。黒人女性シンガー。ネットで褒めてるレビューを見て、なんとなく購入。97年の盤。
235・Sylvia Powell:Revue:☆☆☆★
   打ち込みっぽさを装いつつ、きっちり生演奏で作り上げたUKソウル。
   不安定に揺れる美しさを見事に表現した。膨らみある声だが、熱烈には歌い上げず、
   静かな情感を示した。繊細だが大胆、が持ち味か。
   ぼんやり影を残すような声のダビングで、奥行きと影を描いた。
   昼間や夜よりもむしろ・・・朝焼けや夜明け、変化する時に彼女の音楽は似合いそう。
   本盤の後にアルバム"The script"(2008)をリリース、まだ現役だ。

   ソニー・クリス(as)のプレスティッジ盤。未聴で興味持ったため。67年吹き込み。
234・Sonny Criss:Portrait of Sonny Criss:☆☆
   クールで隙間が多い。整ったうえでスマートな展開はちょっと
   物足りないか。アドリブはきれいなメロディが続くけれど。
   かといってBGMジャズほどの無機質なそっけなさは無い。
   これはもう、スタイルなんだろうな。

2008/11/18   最近買った盤をまとめて。

   渋さ知らズの新譜は2枚組ライブ盤。07年欧州ツアーの最終公演、
   パリでの模様を地底レコードからリリース。
233・渋さ知らズ:巴里渋舞曲:☆☆☆☆
   オーディエンス録音かな?ちょっと分離いまいち。だが、熱くてごっつい
   渋さの欧州ツアーの様子が良くわかる。緩急メリハリ効かせたアレンジで、個々のソロを
   じっくり聴かせる構成だ。当時の新しめな楽曲も混ぜ、混沌さを控えめに
   すっきりしたライブを味わえる一枚。

   藤井郷子が96年にリリースした盤の再発。8曲がポール・ブレイとのピアノデュオ、
   3曲がピアノ・ソロのようだ。
232・藤井郷子:Something about water:☆☆☆
   きれいで抽象的。滑らかな音使いが、どこか尖った響きで
   凛とした雰囲気を漂わす。藤井郷子の特徴がすっと表現された一枚。
   ポール・ブレイとのピアノ・デュオはより複雑な音楽だ。
   むしろ藤井ソロのほうが、彼女のロマンティシズムをたっぷり味わえた。

   藤井郷子とマーク・フェルドマン(vln)とのデュオ。01年にEWEから発売。
231・藤井郷子:April Shower:☆☆★
   凛とした清冽さを感じる即興。ときおり特殊奏法も入るが、二人とも目線を
   高く保ち、淡々としかし鋭くインプロを重ねる。耳ざわりはきれいで、
   自由に動く音楽も滑らかに耳へ滑り込んできた。聴きやすく、味わいは奥深い。

   マーク・フェルドマンのリーダー作。組合せを変えつつストリングス4重奏の編成で奏でる。01年作。
230・Mark Feldman:Book of tells:☆☆☆★
   かなり譜面ありそうなサウンド。せわしなく弦が飛び交い、詰め寄っては広がる。
   メロディアスでありつつ尖がって、緊迫感の奥に生弦のもつ豊かさが。
   細かく耳を澄ますほど、アレンジのからみを楽しめそう。
   ぱっと聞き流してはもったいない一枚。抽象的な展開の合間に、
   どきっとする親しみやすさが。エコーを効かせた響きもきれいだ。

   山下洋輔がEnjaに吹き込んだ番で、録音は77年。アデルハルト・ロイディンガー(b)
   とのデュオ・アルバム。08年にリマスターされた再発を購入。
229・山下洋輔~アデルハルト・ロイディンガー:Inner space:☆☆☆
   全体を通し、清々しく爽快なフリージャズ。
   輪郭くっきりなウッドベースが芯を太く支え、ピアノは涼やかに鳴る。
   フリー合戦ながらハイテンションで斬り合う場合も、上品さを残した。
   山下のピアノは低音部をあまり使わず、クラスター控えめ。緩急を効かせる。
   ロイディンガーのベースは山下の流れとつかず離れず、弾力あるフレーズを
   矢継ぎ早に奏でた。ときおり高まるアフリカンな盛り上がりが好み。
   山下主導の曲はフリー、ロイディンガーが主導ではベースがオスティナートから
   ランニングへ向かい、グルーヴを強調。二人のアプローチの違いも明確だ。

   08年に発売された、ジョン・ゾーンのサントラ・シリーズ、19作目。
228・John Zorn:Filmworks XIX:☆☆☆★
   エリック・フィードランダー(vc)とロブ・バーガー(p)の演奏を存分に聴ける、
   美しくも緊迫感に溢れた三重奏。ギターっぽい響きは、チェロのピチカートかな。
   テーマが幾度も変奏され、さりげないアドリブとともに展開する。
   フリーキーな要素は極控えめ。あくまでもきれいなメロディを前面に出した。
   アンサンブルはグレッグ・コーエンのベースが、クールかつ優しく支える。
   アルバム全体が愛おしい統一感に溢れた。
   20分弱のアニメ用サントラで、老馬が死を迎える寸前の、幻想的な世界感を描いた作品のようだ。
   ジョン・ゾーンのロマンティシズムが強烈に炸裂した傑作。

   エレクトロニクスのソロかな?05年、TZADIKより。予備知識無し。
227・MR.Dorgon:God is greatest:
   わんわんと響く電子音。ほんのりハーシュなコラージュ要素も。
   ジャジューカに通じるドローン要素がポイントか。ちょっと退屈。

   録音は73年。ピアノとベースのデュオかな。Enja盤の90年に邦盤化を購入。
226・Dollar Brand:Good news from Africa:☆☆☆☆
   よけいなサービス精神は不要。ブランドのピアノがまずあって、ベースが静かに鳴ればいい。
   なめらかなアフリカン・ジャズの対話を楽しめる。
   闇雲なフリーやファンクネスに気を使わず、リラックスした音像が詰まった。
   パーカッションやフルート、ボーカルなど若干は目先を変えるが、奇をてらわぬ
   二人のスタンスがリラックスさせる。ブランドのピアノは本盤でも奔放でずぶずぶと揺れた。
   前のめりな二人のグルーヴが気持ちいい。ベースはちょっとフリー寄り。
   経歴を検索したら、ドン・チェリーやスティーブ・レイシーらとも演奏していた。
   ジョニー・ディアニ(b)のディスコグラフィーはこちら

   ホール&オーツ、ダリル・ホールの3rdソロ、93年発売。
225・Daryl Hall:Soul Alone:☆☆★
   マーヴィン・ゲイやフィラデル・フィアあたりの影響を感じつつ、
   打ち込みを強調した硬めの音作り。切なげと強い意志を力技で合致させた。
   アレンジは意外に細かい。強烈にキャッチーなシングルではなく、
   アルバム全体の流れを優先か。

   ダリル・ホールの4thソロ。96年のリリース。
224・Daryl Hall:Can't stop dreaming:☆☆☆★
   ポップなホール&オーツ節が詰まった。弾む感じの雰囲気が良く似てる。 
   売れ線をいやらしくなく狙ってる。打ち込みビートと生演奏もきれいに馴染んだ
   バック・トラックも心地よい。ちょっとドラムやシンセの音色が、今聴くと安っぽいけれど。
   ひりひりくる緊張感をなくし、穏やかな生演奏のくつろぎを丁寧に提出した。
   滑らかなメロディへ惹かれる、楽しい一枚。

   99年に再結成したユーリズミックスのアルバム。
223・Eurythmics:Peace:☆★
   どの曲もきれいなメロディなのに、まさにユーリズミックス的な大仰で
   尖ったアレンジこそが魅力を減じてる気がしてならない。シングル曲なんて
   カーペンターズが歌っても映えそうな・・・。鈍く響くエレキギターやドタバタなドラミングを替えれば普遍的な
   良さが磨かれそう。しかし、それはもはやユーリズミックスではない。
   時代で古びてしまうスタイルの辛さを感じた。

2008/11/8   最近入手したCDをまとめて。

   ボブ関連の新譜群が、ようやく手元に届いた。
 
   元GbVのロバート・ポラードがトビアス兄弟と組んだバンドの新譜。
222・Circus Devils:Ataxia:☆☆☆
   コラージュのようにとっちらかったサウンド。ほんのりパンキッシュで
   メロディは影をまとう。スピーディさはまずまず。分離の良い録音で矢継ぎ早に
   アイディアが奔出する。作曲は三人の共作とクレジットだが、役割配分はどんなだろう。
   ロバートが前面に出すぎず、へんてこロックが詰まった。

   ロバート・ポラードが発動した新バンドの1stで新譜。トリオ編成、メンバーは
   元GbVのクリス・サルサレンコと、オレゴン出身バンドのディセンバリスツなどで
   活躍のジョン・モエンなトリオ編成。録音ではクリスがギターもベースも録音だが、
   ライブだとボブがギターと歌かな?
221・Boston Spaceships:Brown Submarine:☆☆☆★
   ロバートの作曲センスが炸裂した一枚。アコギを1曲で弾いてる以外は、
   クレジット上だとロバートは歌のみ。バンドサウンドを追求かと予想したが、
   内省的な曲も含まれている。いつになっても枯れる隙がまったく無し。
   GbV初期の実験要素は本バンドへさほど投入せず。シンプルなアレンジでちょっとひねった
   ロックを満載した。ソロとの区分けが今後の楽しみ。

   ロバート・ポラードの覆面バンドと思しき盤。リリースは今年かな。
   クレジット上は3人編成、79年に録音されたとある。4曲入りシングル。
220・Carbon Whales:South:☆☆★
   音質は高音しゃっきり低音くっきりで、しっかり録音されている。ホーンまで加わる
   丁寧なアレンジはロバートっぽくないが・・・やはり覆面バンドって印象だ。
   各楽曲2~3分と、ロバートにしては逆に長め。ほんのりサイケ風味のアイディア一発なロック。

   これはロバート・ポラードのソロ・アルバムで、今年の発売。トッド・トバイアスに
   演奏やプロデュースを任せた、おなじみの体制。
219・Robert Pollard:Is off to business:☆☆☆☆
   一件、とてもキャッチーなロック。細かく聴いてくと、ロバートの一筆書き
   メロディを上手くトバイアスがポップにまとめてるのがわかる。ボーカルに
   ラフなところもあるけれど。ロバートのスピード感覚を活かしつつ、きれいにアレンジした傑作。
   瑞々しいメロディが溢れてる。アップテンポの勢いもいい。

   菊地成孔&ぺぺの新譜。メンバーを一新、今回は1枚盤でリリースされた。
   帯に記されたテーマは「映画に呪われた非映画音楽」。オリジナルのほかに
   サントラのカバーも数曲、収録した。
218・菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール:記憶喪失学:☆☆☆☆
   エレガンスとデカダニズムがバンドメンバーの一新をきっかけに
   より輪郭鮮やかに洗練された。実験要素が滴るメロディと混在する。溌剌とサックスが流れる
   場面も、ストリングスが滑らかにブレーキをかけるかのよう。
   酩酊感は1stよりも穏やかになり、見通しよくなった印象。
   ここではサックスがアンサンブルのひとつとなり、決して突出はしない。
   それがきれいでもあり、もどかしくもあり。菊地のサックスをたっぷり聴きたい。
   "バイレ・エクゾシズモ"や"大天使のように"を筆頭にリズムへこだわった曲も痛快。
   最期はライブで聴きなれた菊地の歌声で、たおやかに締めた。

   板橋文夫が10人の凄腕を加えたオーケストラのアルバムがついにリリース。
217・板橋文夫オーケストラ:We 11:☆☆☆☆★
   生々しくごっつい板橋ジャズを詰め込んだ。響きが熱っぽい。スタジオ作にありがちな
   分離の良さゆえな寒々しさは無く、ぎゅっと音が近い。混じってる。
   ライブで聴いた曲、初めて聴く曲。12曲ぎっしりつまった。実質10曲、てんこもり。
   メリハリをつけて長尺で味わえるのも数曲あるのが嬉しい。
   板橋のピアノは燃え立つ。そしてオケのメンバーが温かく包み込み、はじけた。
   それぞれのメンバーにきちんと見せ場あるのも嬉しい。   

   shezooの1stソロにあたるらしい。07年の発売。霧島留美子の絵画をモチーフに
   ピアノ・ソロで紡いだ作品集。
216・shezoo:nature circle:☆☆☆☆★
   即興要素あるのかもしれない。でも本盤の魅力はそこじゃない。
   丁寧に作曲され膨らんでいく世界の美しさを、ピアノ一台で厳かにリリカルに表現した。
   いわば"展覧会の絵"。一曲の中ですら、しとやかな変化が産まれる。
   一音を大切に作り、奏でる。親しみやすい旋律が、じわじわと身体へしみこむ快感を味わえた。

   カメラータ・レーベルの盤を聴きたくて購入。本盤は邦人現代音楽のアーカイヴから
   再構成した廉価盤のシリーズから、1枚を入手。
   "響紋~童声合唱とオーケストラのための"の初演と再演の2テイクを軸に
   バイオリン・ソナタや室内楽曲数曲を収録した。それでも60分足らずの収録時間。
215・三善晃:作品集:☆★
   "響紋"は童声合唱が好みと違うため、せめぎあう音の奔流に惹かれながらも
   のめり込めない。ベストは"ヴァイオリン・ソナタ"。シンプルなバイオリンと
   弾むピアノのコントラストが美しい。室内楽作品は理が強い雰囲気が漂う。
   アルバムとしたら、オケ作品と室内楽が混在した盛りだくさんの仕上がりな良盤。

   松風鉱一のメジャー・レーベルの実質デビュー作、と帯にはある。
   録音は81年、サイドメンは初山博(vib),望月英明(b),森山威男(ds)。08年リイシュー。
214・松風鉱一:Good Nature:☆☆☆★
   森山+望月のかっちりしたビートにもかかわらず、松風のソロが乗ったとたん
   ふわっと浮遊する。これが持ち味か。アドリブを自在に操るセンスもさすが。
   初山のヴァイブがサウンドに膨らみを与え、松風の世界を強調した。
   隙がありそうで、みっしり詰まってる。独特のジャズ。

2008/11/02   最近入手したCDをまとめて。

   泉谷しげるの新譜。"春夏秋冬"の再録と、先日のシングル曲両面を収録した。
   初回限定盤は、本盤の新曲も演奏した今年5/11のライブ全曲(!)のDVD付き。
   それに惹かれて、初回限定盤を買っちゃった。
213・泉谷しげる:すべて時代のせいにして:☆☆☆
   芝居的な要素を感じる曲が多い。歌の滑らかさや整合性よりも、生々しい
   語り口を前面に出したか。バンドはコンパクトにまとまり、肩の力が抜けている。
   60歳を向かえ、尖りつつも鷹揚な余裕が漂うロック。日本語を巧みに操る。

   ヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツの6枚組ボックス。欧EMIより08年の
   発売。英語などの簡単なライナーあり。ほぼ全て1930年台の吹き込みのようだ。
   バッハ、モーツァルト、シベリウスなどの交響曲とピアノとデュオが中心みたい。
   19世紀から20世紀の作曲家の作曲も、CD2枚分くらい本盤へ収録した。
   本盤へ収録されたバッハの"無伴奏ソナタ&パルティータ"は1935年の録音
   (ロンドン、アビー・ロードにて)で、こないだ買ったのと別音源で嬉しい。
   ちなみに本盤ではソナタ2番とパルティータ1番(BMV1003&02)は吹き込み無し。
212・Jascha Heifetz:The masters Violinist:☆☆☆☆
   するすると滑るように音が流れ、力強いビブラートが芯をふるわせる。
   滑らかで涼しげ。軽やかなハイフェッツのバイオリンを、小編成から協奏曲まで
   バラエティ豊かに楽しめる。小品もどっさりなのが嬉しい。ふるい音源だが
   丁寧なマスタリングで聴きづらさはほとんど無い。気軽にまとめてハイフェッツ入門に、
   いいボックスだと思う。もっともっと聴き込みたい。

   アイリッシュのフィドラー、ケヴィン・バーク。聴くのは初めて。
   ちょっと気になって入手した。本盤は30周年盤として今年再発、オリジナルの
   1/4inchテープをリマスターした。未発表写真を所収ながら、音源の追加は無し。
211・Kevin Bureke:In the cap fits...:☆☆☆☆
   ぼくは本盤を解説できる知識を持ち合わせていない。いずれトラッドを
   聴き連ねたとき、違う感想を持つと思う。今はただ、バイオリンの鋭く滑らかな響きに
   圧倒される。特に最終曲、16分にもわたるバイオリンの奔流がすばらしい。
   ところどころは多重録音かな。ほとんど他の楽器は存在せず。たまに
   現れると、むしろホッとした。ジグやリールを弾き続けたアルバムだろうか。
   飾り気無く、ただ自らのバイオリンを素直に見せつけた一枚。

   黛敏郎の作品2曲を、岩城宏之の指揮でN響が吹き込み。
   バレエ音楽"舞楽"(1962/1967)、曼荼羅交響曲(1960/1965)の2曲で、
   ( )内左が作曲、右が本盤収録時期。よってどちらも初演ではない。
   03年にDENONが20bitマスタリングで発売した廉価盤を入手した。
210・黛敏郎:曼荼羅交響曲/舞楽:☆☆★
   スケール大きなダイナミズムと美しい旋律、日本情緒が共存した。
   特に"舞楽"のスリルが素晴らしい。じっくり細部へ耳を傾けたい。
   大友良英ファンがこれを聞いたら、どんな感想持つだろうな。
   シンプルな装丁ながら、ずっしり重たく凄みあるオケ作品が詰まった一枚。

   チャーリー・ヘイデン率いるユニットの3rdでDIWの仕切り。90年のアルバム。
209・Charlie Haden Liveration music prchestra:Dreem keeper:☆☆★
   端正で厳かなジャズ。きれいで丁寧なアレンジにそって、粛々とアドリブが
   続き、全体像が構築される。ビッグバンド形式ながらパワーで押さず、
   アンサンブルの緩急を効かせた。良い音楽とは思う。荒さや鋭さとは別ベクトル。

2008年10月

2008/10/25   最近買ったCDをまとめて。

   満を持して発表された2nd。黒田京子、翠川敬基、太田惠資による即興音楽が
   めくるめく展開する。3人のオリジナルを収録。タイトルは近年、黒田の代表曲ともいえる。
208・黒田京子トリオ:ホルトノキ:☆☆☆☆☆
   05年の1stからライブを重ね、08年リリースの2ndは本メンバーでは最後のアルバムとなった。
   後に太田惠資が抜け喜多直毅に変わる。しかし喜多の体調不良で本トリオは10年2月に活動停止する。
   黒田が6曲、翠川も3曲を投入。08年5月7日に深谷エッグファームで観客を入れライブ録音された本作は、
   生演奏と即興にこだわった本トリオらしい一作だ。鮮烈で厳格な翠川の曲と
   伸びやかなリリシズムとダイナミックな世界観を提示する黒田の曲を、完全即興の(2)も含め、三人は全て即興で積み上げた。
   太田の人懐っこい奔放さとロマンティシズム、翠川の激烈な前衛さとメロディアスな二面性、黒田の懐深い構築性と悪戯っぽい実験性。
   それぞれの個性がぶつかりあい、見事なアンサンブルを産んだ。
   世界に誇れ、即興の歴史上でも燦然と輝く素晴らしい盤。インディで終わったのが残念でならない。

   喜多直毅が黒田京子をパートナーに吹き込んだスタジオ作。ライブでの共演は
   数あれど、本盤はじっくりとセンチメンタルな世界を追求した。
207・喜多直毅+黒田京子:空に吸はれし心:☆☆☆☆★
   ロマンティシズムが交錯する。激しい音に滴る情感がこもり、柔らかい響きが
   胸をそっと撫ぜる。喜多の突き抜けるバイオリンを、黒田のピアノは
   懐深く受け入れる。黒田の奔放な演奏を、喜多の野太い音色ががっしり支える。
   耳馴染みのよいメロディを、二人の即興者が自由に解釈し広げた傑作。

   コーデッツのケイデンス時代のアルバムがボートラいっぱいで再発。
   一部音源は盤おこしのようだ。最新マスタリングとうたっているが。

   55年の作品。アカペラで"ロリポップ"などを収録。
206・The Chordetts:Close Harmony:☆☆☆☆
   一曲目にアルバム未収"Lollipop"を置くあたり、オリジナル盤コンセプトよりCDのキャッチーさを
   意識したリイシュー。基本はケイデンスより1955年発売のEP(2-11曲)に、その他EPやシングル発表曲を加えた。
   盤起こしらしく、スクラッチ・ノイズ聴こえる箇所も。
   ラスト2曲が本盤で発掘かな?解説が不明瞭で良くわからない。
   しかし、楽曲と歌唱はバッチリ。どこにも隙が無い。甘く切なく上品なハーモニーを堪能できる。

   57年作。伴奏もシンプルに入る。"ミスター・サンドマン"などを収録。
   当時のEP収録曲、未発表など13曲がボーナス。
205・The Chordetts:The Chordetts:☆☆☆☆★
   洗練され上品で穏やかで。でも、スリリング。最後の言葉が大事。
   コーデッツには、そんな不思議な魅力あり。本盤は見事に味わいを昇華させた。
   シンプルなバッキングに整ったボーカル。ハーモニーが隙の無いスリルを
   産み、滑らかにドライブする。冒頭から素敵な曲が連発する。
   ボートラは時に盤起こしなコンディションながら、歌声は同時期の溌剌さで良い。
   未発表曲もオクラが不思議になる、きれいなアカペラ曲。

   62年の作品。スタンダードを中心に歌った作品かな?
   ボートラでは"逢ったとたんに一目ぼれ"のカバーなどを。
204・The Chordetts:Never on Sunday: ☆☆☆★
   おっとり上品でスタンダード曲をまとめたLP。良さは保ちつつ、ロックンロール
   時代へ訴求するにはコンサバという、彼女たちの立ち位置を如実に表した。
   ボートラは本LP発売の前に発表してきたEP。ロックンロールやフォークなど、
   さまざまなアレンジを試行が良くわかる。これらの実験を全て捨て去り、
   LPのコンセプトへ煮詰めた経緯にも興味あり。無論、LPにも良い曲はいっぱい。
   ゴージャスなバッキングとがっちり対峙する曲も、すっきりしたアレンジでも、双方にて。
   毒も危険も無い。しかし流行への立ち位置はとても微妙だった彼女たちの
   さまざまなアプローチを楽しめる興味深い盤。

   本作のみ07年リイシュー版。コロムビアからケイデンスのヒット余勢を狙い
   57年に発売されたらしい。ボートラは無し。
203・The Chordetts:Listen:☆☆☆☆
   51年のデビュー盤"Harmony time"や"Harmony encores"(1952),"Your requests"(1954)からの
   編集盤が、本盤という。57年リリース。
   完全アカペラで上品に、緻密に響くコーラスがたまらなく美しくすてき。
   なめらかに寄り添う声はバラードでも強烈な存在感が噴出す。本当に稀有な魅力だ。
   収録曲はスタンダード集。当時でも懐メロばかりだったのでは。
   方法論はシンプル、でも効果は鮮烈。演奏曲はノスタルジア。
   尖った音楽の響きだけはいつまでも残り、今でも新鮮なのがすごい。
   聴いてて「古き良き~」って言葉が常に浮かぶ。憧れの理想郷をしとやかにコーデッツは歌う。
   末筆ながら、長門芳郎の緻密な解説も嬉しい盤。

2008/10/10   最近買ったCDをまとめて。

   メルツバウの新譜がまた色々と発表された。まずこれは、
   木製特殊ケース入り、06年~07年の録音を収録した。限定1千セット。
   コンピュータとアナログ楽器の混成サウンドのようだ。英国レーベルより。
202・Merzbow:Eucalypse:

   イルカ愛護を前面に出す、HP掲載イラストをジャケットに使用。
   録音は07/12~08/1月。コンスタントにメルツバウの盤をリリースする
   米Important Recordsからの発売。
201・Merzbow:Dolphin Sonar:☆☆☆★
   多彩な要素を一気に押し込めつつ、すっきり感を漂わす。
   素地をループさせ、ウワモノで鋭くきらめかすのがテーマだろうか。
   曲によってはスマートな4つ打ちで煽る一方、ゆったりとハーシュを蠢かす。
   数年前の"Bloddy sea"に通じるコンセプトながら、音楽はぐっと洗練された。
   メルツバウの構成バランスと物語性がうまく収斂した作品。

   灰野敬二とメルツバウ。ライブでは共演してきたが、ついに初CD。カナダのレーベルより。
200・kikuri:Pulverized Purple:☆☆☆★
   ミックスを灰野/秋田が関与していないためか、驚くほどくっきりな仕上がり。
   明確なリフを紡ぐ、ポップな感触すらも。ハーシュ一辺倒の混沌ではなく、
   曲や場面で主役を譲り合い、見通しよい音楽を作った。
   灰野と秋田の音楽性は違う。セッション以上の何かを求めたが、
   本盤では個性を提示しあう立ち位置にとどまったか。いかにも1stアルバムらしい、かも。
   ループやダブ処理もしているようだ。むしろ彼らのライブ音源のほうが
   興味深いのだろうか。次のアルバムが楽しみ。

   ポーランドのレーベルから。クレジットは"Noise and drums"と珍しい表記だ。
199・MERZBOW:ARIJIGOKU:☆☆☆☆
   混沌ストレートてんこ盛りのパワー・ハーシュが帰ってきた。
   奔放なドラミングも含めた生々しいノイズがぎっしりつまってる。
   ドラムは乱打と、ブラスト・ビートの混交みたいな志向だろうか。
   ラップトップ使用かは定かでないが、伸びやかな持続するノイズと、音色の加工に
   機材の香りを感じた。細部に満ち満ちる濃密さはメルツバウの独壇場ながら、
   あまりアイディアを発散させず、いっきに貫く意思を感じた。

   フランスのアヴァン界重鎮ギター奏者とメルツバウの共演盤。07年に録音された2枚組CD。
198・Richard Pinhas and Merzbow:Keio Line:☆☆☆
   仏エルドンのリーダー、リシャール・ピナスとメルツバウの共演は、ピナスの主張が前面に出た。
   メルツバウ特有のハーシュは要素でしかなく、きらびやかなシンセが煌めくノイズで仕上がった。
   電子音楽としては、聴きごたえある。しかしハードコアを期待したら、ちょっと拍子抜け。

   ジム・オルークがアコースティック楽器と共演した作品の模様。
   クレジットだとジムはチェロ、オーボエなどを演奏してる。90年頃の作品。
197・Jim O'Rourke:tamper:☆★
   生楽器とは思えぬ。じわっと電子音っぽいドローンが漂い、じんわり響き続ける。
   特に前半2曲はどうやって音を作ってるのかもよくわからず。
   演奏手法とかあまり考えず、単純なドローン・作品としてみると、
   とにかくシンプルな響きのみを抽出した感触。

   ろくにクレジットなし、90年録音の2枚組ドローンの作品らしい。
196・Jim O'Rourke:long night:☆☆☆
   変化の少ないドローンがじっくり1時間続いた頃から、各盤とも
   じわじわとうわもののシンセが蠢く。違いを探すのが目的ではない。
   持続し続けるのも目的ではないだろう。長尺の必然性とは、ドローンとは。
   ジムが本盤で何を主張したかったのか、うっすらと考えながら
   BGMのように本盤を聴いた。相対して聞き続けるのに、2枚組約160分の
   ほぼ変化の無い電子音像は単調で、集中力が持たない。
   しかし終焉の頃にはカタルシスを探し、ある程度までは、叶う。
   シビアに考えるべきではないのかも。ともあれ、不思議な魅力を感じた。

2008/10/5   注文したCDが到着。

   新譜。YMCKがフォークやポップをカバーする企画のEP盤。
   収録はシュガーベイブ"ダウンタウン"(2種)やはっぴぃえんど"風をあつめて"、
   ユーミン"ルージュの伝言"、ゴダイゴ"Beautiful Name"、大貫妙子"メトロポリタン美術館"。
195・YMCK & DE DE Mouse:Down town (EP):
   コンセプトが非常に微妙。打ち込みリズムが安っぽいカラオケに聴こえてしまう。
   アレンジもさほど極端に崩してないだけに、センスで印象がだいぶ変わる。
   アコースティックな曲をわざわざチップチューンズに変える必然性はどこに。
   歌声にエフェクトをかけた感なYMCKがまだ素直に聴けた。
   しかし懐メロをチップチューンズって、いまち共感できず。
   なぜ"Down town"を2回も収録したんだろ。別の曲のほうが、まだバラエティでたのでは。

   ROVOの酸欠京都ライブ、04年7月18日の音源をオフィシャル・ブートレグ
   として06年にリリース。聴きそびれてた。
194・ROVO:京大西部講堂2004.07.18:☆☆☆☆
   すさまじいテンションとスピード感。分離がきれいで生々しくライブの
   勢いと熱狂が伝わる、爽快なライブ盤。特に1曲目のスリルが抜群だ。
   朦朧とした環境でもビートはがっしり強固に疾走し、緻密なアンサンブルが燃え上がる。
   素晴らしいライブをばっちり味わえる、激烈な一枚。

   クラシックを何枚か。2枚組でさまざまな演奏を集めたCDシリーズが
   05年にユニバーサルから出てた。これはリスト編。
   交響詩、ハンガリー狂詩曲、ピアノソナタロ短調などを収録。
   ピアニストはアルゲリッチやアシュケナージ、リヒテル、チェルカスキー。
   オケ曲の指揮はカラヤンやアバド。58年潤オ75年のグラモフォン音源より。
193・リスト:ハンガリー狂詩曲第2・4・6盤、他:☆☆★
   明るく派手な曲調を、くっきりした録音で詰め込んだ。Disc1のオケ演奏、
   Disc2にピアノ曲と分け、両方の要素を完結に味わえる盤。
   どれも隙を見せず華やかに盛り上がる曲だなあ。

   同じシリーズのラフマニノフ版。ピアノ協奏2番、"鐘"、交響曲2番など。
   演奏者はリヒテル、アシュケナージ、指揮はマゼール、アシュケナージ、プレヴィンなど。
192・ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第二番、交響曲第二番、他:☆☆☆
   ロマンティックで大胆な展開がなんだか意外だった。ピアノが駆け巡り、
   くっきりとオケに混ざって、華やかに決める鮮やかさに弾かれる。

   バッハの"無伴奏バイオリン・ソナタ&パルティータ:BWV1001-1006"を聴きたく購入。
   ハイフェッツが52年に録音を邦BMGが24bitリマスターで01年再発盤。
191・バッハ:無伴奏バイオリン・ソナタ&パルティータ(全曲):☆☆☆☆☆
   隙の無い演奏、歌い揺らぐ表現。ハイフェッツは技巧は満点、しかし
   華やかさや精神性に欠けると表されたらしい。なぜだ。もっと名演が
   存在するというのか。軋みつつふくよかに広がる音色は十二分に美しい。
   正直まだ、この盤を聴きこめたとは思えない。まだまだ奥がある。
   でも、スピーカーから流れる音に、ぞくっと来た。穏やかにたゆたう
   旋律が、粒立って緩やかに上下するダイナミズムのさまに。

2008年9月

2008/9/27   最近買ったアルバムをまとめて。ちょっと買いすぎた。

   日本人のジャズ系アルバムを、あれこれ購入。

   まず新譜から。水谷浩章が率いるフォノライトの3rd。今度はイーストワークスから
   発売された。女性ボーカル3名を招いたのが新機軸か。ピアノのゲストで
   キャスパー・トランスバーグもゲスト参加。
190・Phonolite:Still Crazy:☆☆☆☆★
   独特の浮遊感溢れるロマンティックな音像は今作でも健在。
   詰まった音像がしたたかに輝く。ギターのソロが特に魅力的。
   複数の女性ボーカルを配し、あえてバラエティさを狙ったか。
   演奏曲もオリジナルは1曲のみ、残りはカバーという大胆さ。
   凝ったひらめきに満ちたアイディア群を、幻想さも漂わす個性へ昇華させた。

   芳垣安洋と山本精一による即興デュオの1st。ライブ録音をメインの即興一発録音。
   スタジオ作品も数曲あるが、どれもオーバーダブ無し。アルタードとは一味違う緊密さが味。
189・ナンバジャズ:鉄炮:☆☆☆★
   力いっぱい即興の応酬。フレーズやグルーヴ、構成をあえて追求せず、
   ストレートに音を奏であう。ストイックに絡み合うさまが興味深い。
   ライブで見たら、空気感が伝わって魅力倍増だと思う。やたら長尺でなく10曲に
   絞ったことで、集中して聴けた。

   大友良英と山本精一のギター・デュオ作で、轟音と静音、双方のフィードバック作品と、
   アコギデュオを2曲。計4曲収録だそう。さらに3枚組のライブ集、曲集など企画が
   控えてるという。すごい活動ポテンシャルだ。
188・大友良英山本精一:ギターデュオ:☆☆☆★
   ギター・デュオを電化と生、二つの側面で表現した。エレキ版が長尺でじっくりと。
   異なるアプローチでフレーズじゃなく、音色の対話が心地よい。
   (1)は轟音フィードバック大会。フレーズは皆無、ノイジーな
   塗りつぶす響きがビートなしで立ち向かう。ボリュームを絞っても成立する揺らぐ音の色気が肝。
   最期はハウリングみたいな高音だけが静かに伸び、消えてゆく。
   (2)はアコギ。一転して間の多いフレーズが幻想的に。フレーズでなく音響アプローチ。
   しまいに歩き回る音すらも音楽のひとつに混ぜた。
   (3)はエレキ。モジュレーションと呼ばれる効果かな?うにょにょとうねる
   震えにうっすら凄みあり。鼓膜が微妙に震える。これはCDじゃなく生で聴きたい。
   (4)は(2)よりさらに素朴なギターの対話。

   ナスノミツルのソロ盤。参加ミュージシャンも素晴らしく豪華。鬼怒、大友、
   益子、芳垣ら。08年の発売。"Improvised Music from Japan"10枚組へ
   提供した曲の再録なども。
187・ナスノミツル:前編 1998年10月ー1999年3月+1:☆☆☆☆
   グルーヴ大会でなく、全体コーディネイトなソロ作品。ベースの力強さは
   あくまで一要素。無国籍で実験的なアンサンブルがこれでもかと詰まった。
   ノイジーさの要素も意識しつつ、メロディアスな感触が強い。
   したたかなアレンジの多彩さにやられた。ほぼ全てが約10年前の録音。
   聴きやすくも硬質な即興な彼の嗜好が興味深い。

   大友良英と沖至のデュオで07年の発売。
186・沖至&大友良英:邂逅 Encounter:☆☆☆★
   緊張が淡々と続く即興一本勝負60分。互いが並列で音を出し合い、
   さりげなく寄り添っては立ち尽くす。沖はトランペットを気ままに吹き、
   大友はターンテーブルかなにかでループを出しつつ、ギターを奏でるようなサウンド。
   盛り上がりや突っ込みは回避し、同じテンポをゆったりと。ノービートながら
   一定のタイム感は常にキープした。単色の奥に、微妙な色合いを漂わす

   藤井郷子らの6人編成で99年の作品。ドラムが特に惹かれた。メンバーは
   田村、永田利樹(b)、藤井信雄(ds)、早坂紗知(sax)、青木泰成(tb)。
185・藤井郷子sextet:Past life:☆☆☆☆
   全員がコンセプトを理解し、美しく紡ぎあげた一枚。
   グルーヴやソロ回しを注意深く排除しつつ、アンサンブルを意識して即興で
   積上げたジャズ。刻みが無い場合でも、ジャズ。全編即興でなく、曲を演奏しつつ
   極端に長尺を狙わぬのもセンスだろう。スペース密集を避けtpとsaxは立ち位置を
   意識のようだが、ほかはサウンドを聴きつつ音が浮かんでは消える。つかみどころ無い緊迫感と、
   ほのぼのした無常さが無造作に漂った。音のイメージを掴みかけた瞬間、別の側面や魅力に気づく。
   とっつきにくいが、親しみ安さはある。強靭なリーダーシップを音へ明白に
   滲ませない藤井のピアノは、滑らかに響き続ける。
   アドリブはメロディアスと前衛を自由に行き来した。

   アメリカのマイナーなファンクを地方別にまとめたコンピが何種類かリイシュー
   されてたことを知り、目に付いたのをまとめて購入。本盤は04年発売で、Midwest
   地方の音源を集めた。
184・V.A.:Midwest Funk:☆☆☆★
   楽しめた。確かにJBの影響色濃く、オリジナリティには欠ける。
   しかし泥臭くしたたかにファンクネスをぶちかますパワフルな曲が続き、層の厚さを実感。
   低音がっつりなミックスとあいまって、リズム系、特にベースの上手さが聴き応えあり。
   ドラムはちょっとガタつくか。インスト系に聴きもの多し。
   例えば(9)や(12)のかっこよさ。シングル一枚の活動が惜しい。
   素朴な肌触り、結局はラフな出来。でも、ぎらぎらするパワーの魅力が確かにある。

   05年の同様シリーズ。テキサスのファンクを集めた。
183・V.A.:Texas Funk =Black gold from the lone star state 1968-1975:☆☆☆
   うわー、いなたい。JBの影響をどっぷり受け、縮小再生産しつつ個性で
   僅かに拡大。小粒ながらときおり耳をそばだてる、シンプルなファンクが
   ぎっしり21曲。何よりも本盤、編集が素晴らしい。一曲一曲の解説どころか、
   可能な限りのミュージシャンをクレジット、シングルのレーベル写真まで
   カラーで掲載し、概覧までつけた。未発表曲の掘り起しまで。すごく丁寧。
   盤起こしと思われるが、音質もまずまずパンチあり。
   500枚から2千枚程度、手売りのみで捌けた盤ばかりを集めた。
   ローカル・ヒットどころか、バンドの記念にプレスしたってケースもありそうだ。
   しかし山師っぽさは希薄。素朴にJBへ憧れ、かっこよさを求めて
   吹き込んだファンクばかり。数曲ではミーターズへ通じるグルーヴも混ぜ合わせ
   独特の魅力を産んだ曲も。侮れない。
   とはいえ玉石混交で石の比率高いコンピを一枚聴き通すのはちとしんどい。

   同様シリーズ、07年の発売。フロリダのファンク。音が想像付かない・・・。
182・V.A.:Florida Funk 1968-1975:☆☆★
   JBから、サザン・ソウル、ラテン風味まで。幅広いスタンスのサウンドを
   まとめた。どこかしらヌルいB級っぽい営業バンド路線が漂う。
   多彩なスタイルは観光地ゆえか、たまたま選者の趣味なのか。
   レア度の評価はわからぬが、サウンドそのものは気楽に聴き流す方向で。
   のめり込むまでの濃密な個性を見つけるのは、残念ながら難しい。

   08年発表の同様シリーズ。今度は南部のカロライナへ。
181・V.A.:Carolina Funk =First in Funk 1968-1977=:☆☆☆★
   思ったより楽しめた。演奏はほんのりヌルく、音質もショボめなローカル盤ばかり。
   しかし演奏はぐいぐい来るスリルを持ったバンドが多い。JBの影響を素直に受け、
   妙な色気は無い。素直にファンクネスを追求する。というより、無骨なのかも。

   検索で見つけた。菊地成孔が数曲で作詞や作曲、サックスを提供した、女性
   シンガーの作品。96年のリリース。『DA.YO.NE』を歌ったEAST END×YURIの
   元メンバーで、その後に本作でソロデビューした。現在は活動無しかな?
180・市川由理:JOYHOLIC
   歌が圧倒的につたない・・・。語り口調でときおり、びくっとする生々しさが魅力か。
   アイドル路線な曲ではリバーブ薄いミックスで、物足りなさが先に立つ。
   アルバムは3種類のセッションをまとめたようだ。まずAsa-Changのセッション。
   菊地目当てだとこれ。次のセッションへ橋渡しがMUTE BEATの朝本浩文。彼も数曲をプロデュース
   さらにヒックスヴィルが数曲をまとめて、一枚へ押し込んだ。
   サウンドのタッチはマスタリングで甘く統一したが、曲調のバラバラさは
   否めない。スペイシーで陰のあるAsa-Changセッションは、菊地の歌詞と
   あいまって空虚さを強調。歌詞そのものは毒が無い。
   バンドっぽいヒックスヴィルのアレンジもアルバム全体の空気までは変えぬ。
   甘くまとめたが混迷が残る。"Then he kissed me"の日本語歌詞カバーもあり。
   ヒックスヴィルのアレンジで音圧が薄く、さほどな出来だが。

   先日、ボートラ付きでリイシューされた第一次スパンクスのアルバム。
   本盤は04年のデビュー盤。"走り泣く乙女"シングルver.他、4曲がボーナス。
179・スパンク・ハッピー:My name is:☆☆☆★
   "走り泣く乙女"のポップさとリズムの奔流、分厚いホーンにまずやられる。
   "オー!神様"の濃密なポリリズムもすごい。丁寧なアレンジを今堀と外山のリズム観で
   音楽をさらに細密化させた。
   ボートラでは"森へ続く道の途中で"のハイトーン歌声の濃密なニュアンスが素敵。
   "僕は楽器"の混沌さもいい。サックス多重の厚みも。

   95年発売盤の再発でボートラは3曲。演奏に大友良英、芳垣安洋らも参加した。
178・スパンク・ハッピー:Freak Smile:☆☆☆☆★
   リアルタイムで聴かなかったことが悔やまれる。当時、こんな音楽があったのか。知らなかった。
   伸びやかなボーカル、華やかなメロディ、煌びやかなシンセと
   今でも錚々たる顔ぶれのバッキング。外山明のドラミングが素直でひねくれる。
   そして菊地のサックス。さらにシニカルで絶望と希望が相反する歌詞。
   どの曲もぐいっと耳を揺さぶられる。しかし"スパンクスのテーマ"が、"ルーザー"みたいでびっくり。
   当時はこういうアレンジだったのか。
   瑞々しいアレンジはそこかしこに捻りが入る。ボートラも含み、飛び切りな一枚。ぜひお耳に。

   05年リリースのアニメ"奥様は魔法少女"のOST。音楽は"ワンダーランド室内管弦楽団"
   名義で、実態は栗コーダーカルテットのメンバー他。太田惠資らも録音に加わった。
177・OST:魔法じかけの音楽帳潤オ奥様は魔法少女:☆☆☆
   メロディは素朴な関島と爽やかな近藤。二人の作曲家が持ち味を活かし
   音楽世界に一貫性を持たせつつ、バラエティを産んだ。リコーダーの訥々な
   響きが全体を覆う。栗コーダーってこういう音楽だったのか。
   個人的には上の帯域でかすれるリコーダーの音色がどうも苦手・・。

   坂本龍一が担当した映画"LOVE IS THE DEVIL(愛の悪魔)"のサントラ。99年発売。
176・坂本龍一:OST"LOVE IS THE DEVIL":☆☆☆
   監督からほとんど注文は無く、ソロ・アルバム的な意識という。
   断片と空白を活かし、彼一流の上品で複雑な響きを堪能できる。
   ストイックで小品が多いけれど、涼しげなたたずまいが素敵。

   森高千里、98年のアルバム。書下ろしも含め、作曲は細野晴臣が全面協力。
   演奏も細野やコシミハルが担当した。
175・森高千里:今年の夏はモア☆ベター:☆☆★
   細野のソロ・アルバムの延長というにはアイドル・ポップ
   すぎるけれど。それでも十分楽しめた。カバーでは"東京ラッシュ"、
   森高の歌とアレンジの一体化では、コシミハルの作品"ア・ビアント"が好み。
   インストだと(9)がほのぼのテクノな作品。あと一歩、スリルがほしいけれど。

   先日の菊地トークショーで言及あったジャズの盤。61年の録音で、92年に
   発売された邦盤にて。ドルフィーやドン・エリスらが参加、6人コンボ。
174・George Russell sextet:Ezz-thetics:☆☆★
   ロジカルな熱狂が詰まった。するするとソロが流れる一方で、アンサンブルは
   かっちりさが残る。オリジナルもカバーも、同じテイスト。薄いおどろおどろしさが
   構築されたアレンジと並列する。/p>

   バイオリンとピアノのデュオ。マーク・フェルドマン(vln)に惹かれ購入。
   98年のNY録音で、日本のAVANから発売。このレーベル、全貌をぜひ知りたい。
173・Mark Feldman & Sylvie CourvoiSier:Music for violin and piano:☆☆☆★
   互いのオリジナル曲を、時にメドレーで鮮烈なデュオを奏でた。
   凛と緊張の一方、豊潤な旋律感を常に保つ。どちらが主役と定義せず、
   バイオリンのふくよかさをピアノが壮大に受け止める。アドリブとテーマが
   滑らかに混在し、瞬時に世界感が変わるスピーディさがスリリング。傑作。

   ちょっと前のマイナー・ソウルをいろいろ購入してきた。予備知識無し、ジャケ買い。
   いいのあるといいな。

   05年作品で演奏や作曲も自演。マサチューセッツの男性歌手かな。
172・Peven Everett:Latest Craze (part 1):☆☆☆★
   プリンスに通じる密室性とささやきのソウル。ごくシンプルなバックトラックで
   音楽性を作り上げた。さりげなく、かっこいい。メロディが希薄な
   ファンクネスが特徴か。

   05年の発売。渋そうなアーバン・ソウルを期待な男性ソロ。
171・Deland:Chapters:☆☆☆
   ちょっとツメが甘い感じするけれど。キーボードを主体のソウル。
   バラードは素直に聴ける。(7)の弾き語りなアレンジがいいな。あまり飾らずとも
   素直に歌声は流れる。ほんのりフラットする印象なのはなぜだろう。
   渋くは無いが、落ち着いて聴けた。

   ほんのりセクシーな女性ソロ。04年の発売、CD-R。ステイシービーと読むの?
170・Stacyb:Feel me:
   カナダの歌手らしい。ちょっと気だるげな歌声。口元だけでメロディが漂う。
   歌は小粒な印象。アレンジは打ち込み一辺倒でなく、工夫してるのに。おしいなー。

   サザン・ソウルっぽいが、洗練を期待。ゴスペルのようだ。02年。
169・Lance Bryant:Testify!:☆★
   むしろ、ジャズ。サックスが本業らしい。耳ざわりのよい
   サックスが滑らかに響き、流麗なピアノのソロへ続く。
   ファンキーな(4)で聴かす歌声も穏やか。歌劇には走らない。おっとり、と。
   ランスはサイトによるとシカゴ近郊で生まれ、80年代後半から
   活動開始。本作がソロ名義では1stのようだ。現在まで"Psalm"(2002), "Count It All Joy"(2006)を発表済。
   毒は廃し、ほんのりくすんだ音色のサックスは穏やかかつ明るく盛り上げる。
   明るい日差しが似合いそう。夢中にはならないが、BGMを越えた魅力は感じた。
   ぴかっと光る、妙な明るさあり。

   弾き語り風サザン・ソウルか。アフリカンな要素あるといいな。05年。
168・Timothy Strong:Love is for always:☆☆☆★
   味わい深いゴスペル。刺々しさやスリルとは別次元の仕上がり。
   本人のキャリアとしては、教会ミュージシャンやコーラス監督もしてる。
   打ち込みサザン・ソウル。安っぽい電製リズムとシンセの響きでクールさを
   漂わせ、好みのサウンドへ仕上がった。ゆったりなテンポの曲が多く、
   寛いで聴ける快調な盤。シンプルなアレンジでもふくよかさを出せる好例。
   作曲、演奏ともに本人。多重ボーカルの妙味も女性ゲストvoの絡みも
   両方見せ、低予算で幅広さをうまく表現した。レーベルのサイトはこちら。彼が唯一のタレントみたい。
   アフリカ要素は無かったが、聴いてよかった。

   雰囲気ある女性ソロ。白人かな、彼女は。98年の発表。
167・Amy fox:Public offering:☆☆☆★
   本盤がデビューで、今までに4作をリリース。ケイト・ブッシュの影響な
   粘っこく思わせぶりな節回し。しかしアレンジはピアノ中心のアコースティックなサウンド。
   とっつきやすく、しみじみ。メロディは溌剌とし、もっとゴージャスなアレンジでも耐えうる。
   すなわちデモテープめいた素朴さもあるが、歌の説得力できっちり聴かせた。モノトーンな
   サウンドは否めないが、魅力に溢れる。バラードも、溌剌なアップも。

   ヒップホップ要素ありそう。男性ソロで01年の発売。
166・Jay Gee(Jerome Wright):Breaker Breaker 1-9:☆★
   ヒップホップ要素はまるで無し、歌物ソウル。
   片田舎の歌手が記念に吹き込んだって感じ。歌のピッチがけっこう怪しく、
   それがアップテンポだと顕著になる。不思議なことにバラードのほうがまだ聴ける。
   メロディは悪くないのが、逆に惜しい。安っぽいアレンジながら、いなたい
   感触が、微妙な魅力を作った。積極的に薦めないが、全天候タイプの
   さまざまなアレンジを取り入れたアルバムは、とっちらかりそうでギリギリまとまった。
   ゴージャスなステージではなく、場末感が漂ってしまう。

   気だるげなソウルだと期待。05年のリリース。すごく安っぽい作り。
165・Isaac Johnson:IJ:
   打ち込みのビートは工夫もあるが、根本で歌声やコーラスの調子ハズレな
   感触に馴染めない。聴き込んだら中毒になるのか。上滑りに声が進む。
   妙に甲高く、芯の無いソウルに仕上げた。(4)なんて、夢幻の違和感だ。
   続く(5)はそこそこまとまったバラードへ仕上げもするのだが。

2008/9/15   最近買ったCDについて。

   メルツバウが英コールド・スプリングのサンプル盤へ曲提供した。
164・V.A.:MERZBOW・SUTCLIFFE JUGEND・SATORI:☆☆☆★
   痛快なインダストリアル・ノイズが3連発。30分強のミニアルバムで、コンパクトに楽しめた。
   エコー成分たっぷり、打ち鳴らしが充満するサトリ。
   鈍く唸るノイズに妙にブルージーな乾いた語りがかぶさり、やがてメカニカルな
   咆哮へ溶けてゆくサトクリフ・ジューゲン(でいいのかな?)。
   対照的なアプローチを、メルツバウが包含するように決める。ループと猛烈な
   ハーシュのきらめきでスケール大きく埋め尽くす。

   サンが02年にリリースした3rd。2曲で秋田昌美がミックスを担当した。
   07年リイシューにあたり、同年にメルツバウと共演のライブ音源を
   ボーナス盤で追加。こちらのミックスもメルツバウが担当した。
163・Sunn O))):Flight of the Behemoth :☆☆☆☆
   ノイズ好きにも初心者にも薦めたい傑作。
   ハードコアな低音がぶちまけられる。小さな音量でも、音圧は凄まじい。
   フレーズは大人しめ、繰り返しもたびたび。しかしインダストリアル要素は薄く、
   禍々しい生き物の香りをひしひしと感じた。しかも肉食の。
   (2)の低音が吹きすさぶ勢いに圧倒された。かっこいい。
   曲によりハーシュや電子加工っぽい要素も加え、生演奏のみにこだわらず。
   つまりアルバム1枚で飽きさせぬ工夫、音色より構成に重きを置いた。
   楽曲そのものがシンプルなだけに、この多層的なセンスは興味深い。
   ボートラのライブ音源の音圧がDisc1ほどじゃないあたり、録音の丁寧さが良くわかる。
   このライブは長尺を2曲。冒頭からメルツバウと思しきハーシュが炸裂し、
   ちょっとこもった音質ながら、怒涛の低音をばらまくさまが良くわかる。

   単一コードをエレキギターで弾き続けるリース・チャタムのプロジェクト、
   "Guitar trio"(1977年)の新録音盤、か。3枚組で07年の吹き込み。
   各地でライブ録音された。ゲストが豪華で、ソニック・ユース、トータス、
   スワンズ、ハスカー・デュ、ゴッドスピード・ユー! ブラック・エンペラー、
   シー・アンド・ケイク、タウン・アンド・カントリーの面々が参加した。
162・Rhys Chatham:Guitar trio is my life:☆☆☆★
   ワン・コード一本やり、ひたすらギターがストロークを繰り返し、
   ドラムが微妙に違いを出すだけ。ミニマルなアレンジながらロックンロール原初の
   躍動感はきっちり感じる。展開が無いのに期待が高まり、わくわく聴ける。
   豪華なメンバーが売りだが、個々の演奏で悪目立ちはしない。きっちりと
   コンセプトを踏まえ、淡々と弾く。一曲聴けば全て同じともいえるし、
   違いを探したくて違うテイクも聴きたい。相反する思いが聴いてて脳裏をめぐる。
   シンプルで痛快で淡々としたアグレッシブなロック。

   ラスカルズのフェリックス・キャヴァリエがスタックスのギタリスト、
   スティーヴ・クロッパーと唐突に共演アルバムを吹き込んだ。新譜。
161・Steve Cropper & Felix Cavaliere:Nudge it up a notch:☆☆☆☆
   いやー、気持ちいいっ。ベテランが持ち味を無造作に出して、のびのびと演奏してる。
   メロディーもキャッチーで素直に楽しめた。チェスターの妙にタイトな
   ドラミングが必要以上にアンサンブルを締めてる気がするけれど。
   甘く捻って伸びるギターと、暖かいキャヴァリエの歌声。そして隙間をきれいに
   埋め尽くすシンセやベースの響き。新しさとは別ベクトル。寛いで楽しめる素敵な一枚。

   フルート奏者の2nd。山下洋輔や今堀恒雄ら豪華ゲストを向かえた07年作。
   プロデュースは水谷浩章がつとめ、リズム隊は水谷と外山明。
160・Miya:Miya's book;Music for sevendays:☆☆☆★
   ロマンティックな水谷の世界が、ぐっと花開いた。フルートの涼やかな響きは
   もちろんだが、水谷+外山の世界観へ、つい耳が行ってしまう。

   立花秀輝が率いるジャズ・カルテットのアルバムで08年盤。
159・AAS:レーベンスラウフ:☆☆☆☆☆
   勇ましく鋭く、滑らかでロマンティック。硬軟の落差がすごい。そこらのジャズとまったく違う。
   粘っこいファンキーさとはベクトルが異なり、スマートなグルーヴで包んだ。
   アンサンブルの構築度は強靭で、隙無い音の応酬が素晴らしくスリリング。
   バラードでは情感を滴らせつつ、過度にムード垂れ流さない。
   ハード・バップを基調に、フリーへの目配りもばっちり。ちなみに曲によっては
   ユーモラスな要素も。すなわち、さまざまな要素を凝縮しつつ、実に洗練した
   ジャズに仕上げた。耳を惹くテーマを4人が自在に操る、見事な一枚。
   ストイックに仕上げた録音も、すごく良い。

   林栄一がソロと多重録音アンサンブルを駆使し吹き込んだ一枚。
   外山明とデュオの音源も。07年に発表された。
158・林栄一:Birds and bees:☆☆☆☆★
   硬派のジャズ。林のフレーズで特徴的な、鳥がさえずるアルトをたっぷり聴ける。
   インプロもメロディだけにとどまらぬ幅広さでイマジネーションを
   膨らませ、外山とのデュオは一筋縄では行かぬ即興世界へ。
   作曲の多重録音ではメロディメイカーぶりを存分に。
   軽やかでしたたかで素早くがっちりと。一曲を短めに収録し
   眩いアルトをたっぷりと突っ込んだ。

   廉価盤10枚組のボックス。これは20-30年代の音源かな。
   ブルース・ブギ・ピアノを集めた盤。解説が皆無で残念。07年のリリースだろうか。
157・V.A.:Boogie,Woogie:☆☆☆
   テーマ不明でずらずらと10枚が並ぶ。後半はブルーズ集、ジャズ集と
   ある程度コンセプトがありそう。特定ミュージシャンの羅列でなく、楽器別でもなく。
   それぞれの盤を流せて聴けるよう、ピアノ・ソロからオケまでバランスよく
   聴ける。解説はこれを手がかりに、情報を集めて自分で探せばいいか。
   代表的なミュージシャンをバランスよく並べていそうな気がする。
   個々の曲や盤の感想はとても書けない。ばあっと聴いてて、ときおりぐっと
   耳を捕まえる曲がある。その瞬間が楽しい。200曲、味わうのは気軽だが難しい。
   でも退屈せずに聴き続けられたのは確か。

   幸宏の92年リリースなソロ。森雪之丞らの日本語歌詞を取り入れた。今回始めて聴く。
156・高橋幸宏:Lifetime,Happy time:☆☆☆★
   後半でテクノが出てくるが、基調はほのぼのカントリーでゆったりムード。
   ジャストなビートでも、暖かい。カバーはレンブランツの1stから。
   曲をいくつもの場面へ分解し、ノリを分散させつつ全体を揺らす
   アレンジや構成の手法が独特でユニークだった。幸宏が多用する多重録音の
   歌声とあいまって、不思議な浮遊感を醸しだす。
   肩の力を抜いたアルバムで、寛ぎが漂う。じわじわ聴き応えが。

2008年8月

2008/8/31  最近買ったCD。買うばっかじゃなく、聴かなくちゃ。

   メルツバウが参加のコンピ盤を見つけた。レーベルRRRからの
   コンピで、音源は50枚組"Merzbox"にも収録された。
   95年の発売。他には暴力温泉芸者、Emi Beauleauなどの名前も。
   スロッビング・グリッスルのトリビュート盤らしい。
155・V.A.:Entertainment Through Pain:
   怠惰なムードが一面に漂うハーシュが多い。打ち込みビートを採用した
   曲もちらほら。全体に停滞な勢いで、いまひとつのめりこめず。
   PAUL LEMOS、Xper Xrなどは耳を惹いた。メルツバウはさすがのスピード感。

   アンビエント・ハーシュって宣伝に魅かれた。テキサスのノイズ・デュオらしい。
   08年4月の録音で、日本のハーシュ専門レーベルCHI OMEGA INSTITUTEより。CD-R。150枚限定
154・Femme under plastic:Masked Solution:☆☆★
   ぶっ通しのハーシュ・ノイズ。ホワイト系でときおり音の厚みが変わる。
   しゃにむに疾走しつつ、起伏をあえて控えた強烈なノイズの壁。
   これもドローンと言えるか、確かに。音量しだいでがらりと表情が変わる。
   霧の中を掻き分けるかのよう。

   同じくCHI OMEGA INSTITUTEから。初めて聴く。300枚限定。
   東京を拠点の沫山数汎が主催する、ハーシュ・ノイズ・ユニットのようだ。
153・Cracksteel:Bitch Jap run:☆☆☆
   電子音の霧が荒れ狂い、基本は同じテンションで続く。土台の上でゆらゆらっと
   細部が変貌。ドローンの要素が強く、酩酊を誘う。
   曲によってアレンジの志向が変わる。根本は同様の発想だが。
   曲間は思い切りカットアウト。音世界へのめりこみ、いきなり中途で振り落とされるかのように。
   ハーシュを求めつつ、爽快より立ち尽くす強靭さを強調したノイズ。

   やっと購入。先日出た新譜。numbと三沢泉が正式メンバーで、
   ヨスヴァニ・テリー(sax)がゲスト参加した。
152・東京ザヴィヌルバッハ:Sweet Metallic:☆☆☆☆
   クールなグルーヴとつんのめるビート。コラージュ感覚も高い。
   曲によりサックス奏者を分け、より坪口のリーダーシップを前面に出した。
   スタイリッシュで混沌ながらリズムがくっきり。相反さをいっしょくたに
   瞬時に纏め上げる決断ぶりを見せつけた。
   明確なメロディと一筋縄で行かぬ構成があいまって、聴き応えを産む。

   バイオリン奏者でも実績を残す彼女の、歌物盤で新譜。
   基本はトニ・シェールの多重録音だが、ゲストでビル・フリゼールらが参加した。
151・Jenny Scheinman:Jenny Scheinman:☆☆
   洗練された歌物とは別ベクトル。ほとんどがカバー曲で、ブルーズやカントリーを素朴に歌う。
   さほど声量はないが、軽やかさが歌にあり。彼女なりのルーツ探索盤か。
   録音はギターでも参加のトニー・シェール。彼の自宅で録音された。
   ずぶずぶのブルーズも滑らかに歌い、いなたい魅力を漂わす。
   バイオリンはほとんど弾かず、歌を前面に出した。
   ディランやトム・ウェイツはまだしも、ジミー・リードを選曲するセンスが意外。

   ハイ・ラマズ07年の作品をようやく入手した。
150・High Llamas:Can cladders:☆★
   歌詞は同じフレーズを繰り返し、しずしずと怠惰な酩酊を誘う。
   ブライアンに通低するモヤけたサウンド感は本盤でも健在だが、
   細かなアレンジの隅をつつく楽しみ以外は、淡々とした盤だ。
   (4)や(10)あたりがまあ良かった。ハイ・ラマズにびんびんそびえる躍動は求めないが
   もう少し、活き活きした生命力あったほうが好み。

   シカゴのレーベル、ブランズウィックから75年に発売された黒人コーラス・
   グループのアルバム。02年の日本再発盤を買った。
149・The Directions:The Directions:☆☆☆☆★
   とても良く出来たシカゴ・ボーカル・グループ。B級であることは間違いないが
   アップとスロー双方を兼ね備え、ファンク・スタイルまで。さらにインストも。
   テナーからファルセットまで、歌のスタイルまでバラエティいっぱい。
   まるでショーケースのようだ。それでいて、どの曲もクオリティ高し。
   さまざまな要素をバランスよく備え、演奏も聴き応えあり。支離滅裂な
   光景をシンプルかつスマートにまとめた。ギターの爽やかさが肝。
   全員には薦めないが、ボーカル・ソウルが好きな人には自信もってお薦め。
   こんな盤すらマイナーで終わるとは。アメリカの層の厚さをしみじみ。
   カラオケ2曲が無く、バラードかミディアムの秀作が入ったら、とんでもない傑作になったはず。

   ウェイン・ホーヴィッツ(key)が94年にAVANから発売したカルテット。
   帯にはグランジ・ジャズ・バンドとあり。
148・Pigpen:Vas in Victim:☆☆☆
   コラージュ色はごくわずか。オルガンとときおりひずんだエレキベース。サックスが
   ひしゃげて鳴り、ドラムは淡々と刻む。ジャズへほんのりラウンジ色をふりかけ、
   ぎゅっと絞って開いたゆがみを楽しみながら奏でているような印象を受けた。
   スピーディさをあえて抑えたか、ほんのり空虚さが漂う。
   華やかな盛り上がりもいけそうだが、どうも影を感じてしまった。

   大友良英がスイスの音響ユニットVoice Crackと共演のスタジオ盤。00年発売。
147・大友良英/Voice Crack:Bit,bots and signs:☆★
   静かな人力っぽい電子ノイズがたゆたう。うっすら聴くのに適してる。
   メリハリ無いため、ふと気づくと時間が立っていた。アンビエントなアプローチ。
   その場で聞いていたら、空気の揺らぎが心地よかったかもしれない。

   アブドゥール・イブラヒム(p)が南アフリカで録音な音源のコンピ。今まで幾度か
   異なるレーベルでリイシューされており、自分が音源の全貌を聴いてるのか
   いまいち自信なし。これは93年に英EMIの盤で、74年から79年の音源を。
   デュオを中心に6人編成までの小コンボでの吹き込みをまとめた。
146・Abdullah Ibrahim:Blues for a hip king:☆☆☆☆
   弾むグルーヴがとても気持ち良い一枚。ゆとりとくつろぎが演奏に幅を出している。
   複数年度の録音を並べたが、テンションや耳ざわりに違和感は無い。
   さまざまな編成でバラエティに富んだアルバムに仕上がった。
   10分近い長尺曲が2曲のみで残念。ゆったりと一曲へ浸りたいのに。
   大好きな"Blues For A Hip King"が、この長尺曲なのが嬉しい。
   エレピでふわふわとイブラヒムがリフを繰り返す中、テナーが、エレピがアドリブを存分に取る。
   このアレンジが、とってもかっこよかった。

   ソウルのDJ mix音源が聴きたくなり、ユニオンで宣伝してた2枚組を買った。
   サイトのコピーによれば、113曲を2枚組でつなぎ、ダンサブルさから
   メロウな曲までつなげてるそうだ。本DJによる8作目、最新作。
145・DJ Tsuru:Hot and sexy 8☆★
   歌物も多く取り入れ、軽快なパーティBGM風にまとめた。
   面白そうな音楽のサンプラーとしてもいいが、好みとちょっと違うかな。
   つなぎはクロスフェイドよりも、くっきり切り替える潔さ。

2008/8/23   最近買ったCDをまとめて。

   Zev Asherのプロジェクトによるコンセプト・アルバムか。
   92年のアルバム。日本をテーマに、メルツバウやNullらとセッションをした
   短い曲を並べて、ひとつの流れを作っているようだ。
     Zev Asherは秋田昌美/山崎マゾとユニット、FLYING TESTICLEもあり。
   CDも出している(SPACE DESIA:93年:未聴)。
144・Roughage:Yen for noise:☆★
   テープ・コラージュがぽんぽん進むのに、なんだか沈鬱で単調な
   ムードが漂うのは何故か。平板な感触で聴くのが億劫になる。
   短い場面の切り替わりが続く一方で、スピード感は希薄。
   各種セッションも興味深い割に、あまりにも淡々と過ぎてしまった。

   今までちゃんと聴いたことなかった。03年にリリースされた
   2枚組ベストで40曲収録。デジタル・リマスター盤。
143・南佳孝:"30th Street south":☆☆☆
   さまざまなミュージシャンが参加しても、歌声一発で統一感ある
   世界へ誘う。ねっとりと滴るような歌。穏やかに空気が漂い、たゆたう。
   独特の音空間に馴染めれば、はまると思う。

   ネプチューンズ関連バンドの3rdで最新作。全米7位のヒット盤だそう。
   油絵みたいなジャケット・デザインもきれいだ。
142・N.E.R.D:Seeing Sounds:☆☆☆★
   歌の上手さでなく、トラックの鋭く洗練された輝きを味わう。メロディも
   ときおり耳を惹くが、主役とはちょっといいがたい。
   すっきり見通しよく、かっこよさを素直に感じる。なにが特徴だろう。
   まだ聞き分けられていない。音数の絶妙な選択で空白を感じさせるところか。
   やりすぎず、簡素すぎもしない。

   ワールド・スタンダード、99年の作品。30~40年代のアメリカを意識した盤らしい。
141・World Standard:Mountain Ballad:☆☆☆☆
   古き良きアメリカン・ミュージックの形態を隠れ蓑に、日本的な情緒も
   そこかしこへ滲ませるインスト。非常に丁寧なアンサンブルを、あっさり隙間多い
   アレンジで聴かせる。メロディはむしろ耳を通り抜けるように滑らかで
   派手なフックで盛り上げと逆ベクトルだ。穏やかに、しみじみと。
   なぜか曲間を多く取った場面あり。18曲中、7曲がカバー。ランディ・ニューマンの
   作品を3曲取り上げ、ヴァン・ダイク・パークス的な要素を狙ったか。
   じっくり、しかしさらりとBGM的に聴きたい。相反する嗜好をしたたかに感じた。
   自己主張をソフトにくるみつつ、美学を強烈に突きつける快やかな音楽だ。

   立花ハジメの96年ソロ。オリジナル・アルバムながら、近藤達郎のキーボード・ソロと
   大胆なアレンジを採用した。20分強の小品らしい。
140・立花ハジメ:ロウ・パワー:☆★
   電子ピアノ音色で即興性も無く、切ないメロディが淡々と続いてゆく。
   デモテープのよう。BGMで聴き流すならともかく、もう少し変化がほしくなる。
   音楽が悪くないだけに、なおさら。なんらかのアンチテーゼ性をこめたか。
   単純に聴き流すならば、情感豊富で心地よい。アルバムの全尺が短いけれど。

   90年リリースの5人組黒人グループ。初めて見た盤。打ち込みファンクかな。
   プロデューサーはジェシー・ジョンソン。タイムの彼。
139・Kool school:Kool school:☆☆★
   "Da Krash"が前身、本名義でもこの盤のみで今へ到ってるようだ。
   小刻みなシンセ・ビートやめまぐるしくせわしないギターが特徴か。
   そこかしこにTimeらしき香りが漂い、プロデューサ色が全面に出た。
   ファンクは軽めでハッピーな要素を狙ったか。一曲は聴きやすいが
   全体にメリハリ無く聴いて飽きる。BGMで流すには良いかも。
   アップもメロウな色を曲によって足したり、工夫はしてるんだが。

   ジャケットの気だるげさを頼りにジャケ買い。女性ソロ歌手で、本作が1st。
   97年の発売。現在までにもう一枚、リリースしてる。
   本盤収録の"Kiss the Rain"が英4位、"Tell Me"が28位を獲得らしい。
138・Billie Myers:Growing, Pains:☆☆
   ざらつきを残した伸びやかな喉で、ぶっとく歌い上げる。ソウルからちょっと
   油を抜いたような感じ。悪くは無いけど、もうちょい滑らかが好みではある。
   バッキングもアコースティック中心で、ぎっしり音を埋めるアレンジ。
   まず(8)が耳に残った。大仰ながら(11)も。聴き重ねる内に興味が増しそう。

   ドイツの廉価盤レーベル、クアドロマニアより。4枚組のパッケージで千円ちょっと。
   中世の器楽と歌曲集かな。解説は割愛しており詳細不明。
137・Alba:Music of the middle ages:☆☆
   【Disc 1】☆★:穏やかな笛の音とパーカッション。多重録音だろうか。のんびりと
        躍動感をわずかに香らす、ほのぼのな世界感に和む。
   【Disc 2】★:Disc 1と雰囲気は似て、さらに歌曲が入った感じ。ちょっと好みと違う。
   【Disc 3】☆☆:インストや無伴奏歌唱へぐっと惹かれる曲がいくつか。全体を通したテイストは一緒なのに。
   【Disc 4】☆★:音楽の質感は好み。歌がきちんとクラシック・スタイルで上手すぎ馴染めなかったのかな。

2008/8/13   ここ最近買ったCDをまとめて。

   ソニック・ユースがマッツ・グスタフソンやメルツバウを招いた05年の
   ライブを収録した新譜CD。自主制作盤かな。
136・Sonic Youth Med Mats Gustafsson og Merzbow:Andre sider af Sonic Youth:☆☆
   じわじわとゲストが増えてゆき、混沌が高まる。ノイジーで不透明な音像だが
   平板なほど分離良い、きれいなミックスとマスタリングであっさりまとめた。
   メルツバウが素材の一つで、ちょっと物足りず。ライブで見てたら違ったろうな。

   ジョー・ジャクソンが盟友グラハム・メイビーらとドイツで吹き込んだ新作。
   ブートで何曲かライブ音源を聴いたが、締まってた印象あり。枯れても元気。
135・Joe Jackson:Rain:☆☆☆☆
   トリオ編成のみ、気心知れたメンバーとじっくりベルリンで録音した。
   詰まったサウンドはライブを意識したか、ギミックまるでなし。ボーカルに
   若干のエコー効果以外は、まったく素の響きであっけらかんと音楽を提示した。
   ジョーの歌声は落ち着いたが、伸ばすべきとこではきっちり歌う。
   テンションあげあげの曲がほとんど無く、逆にバラードも前面に出さぬ。あくまでも
   自分の心地いいミドル・テンポをしっかり理解したアルバムとなった。
   メロディが地味なため、最初は円熟を感じた。繰り返し聴くほどに、じわじわと
   良さがわかる。肩の力を抜いて、クラブでさりげなく聴き手をリラックスさせる、
   そんな感じ。80年代のジョーが持っていた、鈍く光る瑞々しさはかなりドライに。
   でも、まだ要素はきっちり残ってる。
   付属のDVDはライブ3曲にジョーやグラハムとデイヴのインタビュー、レコーディング風景に
   ジョーによるベルリンのポイント紹介と盛りだくさん。せめて
   英語の字幕をつけて欲しかった・・・英語力が欲しい。

   ロジャー・ニコルス&スモール・サークル・オブ・フレンズの40年ぶりに2ndを
   リリースという、信じられない状況が起こってる。日本盤を購入。
   全部が新曲ではない。当時のデモへかぶせたテイクもあるんだろうか。
134・Roger Nichols & the small circle of friends:Full circle:☆☆☆
   少人数でのシンプルなコンボ編成だが、響きはゴージャス感あり。
   サウンドの感触のみならず、声質までさほど違和感無いのがすごい。
   40年経ってもこの声を出せるのか。演奏はストリングスをシンセで代用のため、
   ちょっとショボげ。惜しい。メロディは甘くふくよか、ロジャー・ニコルスの作品を集めた。
   最初に聴くなら1stを断然薦めるが、本盤も楽しめる一枚なのは確か。

   ドーナル・ラニーらが参加したバンドのスタジオ録音盤。08年の発売らしい。
133・Mozaik:Changing trains:☆☆☆☆
   トラッドは詳しくなく、どのくらい大御所が本盤へ参加してるか不明。
   でも、ほんとにのびのび楽しく演奏してるのがつたわる。大雑把さやおごったところはなく、
   大らかな貫禄を漂わせつつ、演奏は溌剌。すっきりしたアレンジで
   それぞれの楽器を丁寧に聴かせた。1曲のトラッドを除きオリジナル曲。
   塩っ辛いボーカルのバックで、鋭く滑らかなアコースティック楽器が飛び跳ねた。
   聴きこむほどに魅力がありそう。対位的な楽器のからみでなく、ユニゾンを
   活かしつつ、総勢で突っ込むような勢いが痛快。

   林正樹のピアノ・ソロによる新譜。ソロ名義では初。くるりの曲をカバーしている。
132・林正樹:Fight for the 21st:☆☆☆☆
   おっとりと美しく端正でスピード感あるピアノ・ソロがいっぱい。
   過去の影響を感じさせぬ、スマートで拡がった世界感を大らかに提示した。
   ピアノは丁寧で豊かに録音され、ぴしりとエッジを立てた。
   寛いで聴くも良し、アドリブの展開へ耳を澄ますも良し。変拍子でもスムーズに聴ける。
   林正樹の特長を、見事に封じ込めたアルバム。

   01年にDIW発売。トニックのライブ録音で、サックス奏者リーダーのトリオ・ジャズ。
   コルトレーン・スタイルで吹きまくってるらしい。
131・Ali Belogenis Morris:Live at Tonic:☆★
   ちょっと平板なフリージャズ。ライブ演奏のためか、後半につれノリは加速するが・・・。
   グルーヴせず硬質にサックスが埋め尽くし、ぎしぎしフリーキーに軋ませる。メロディよりも悲鳴のよう。
   ラシッド・アリのドラミングもあっけないビート。ウィルバー・モリスのベースが明確な前のめり志向か。
   長尺のわりにメリハリなく、ちょっと辛い。オリジナルでは(4)が良かった。
   狙いはわかるが、もう少し歌心あったほうが好み。
   フリージャズの形式や影響を超えた、個性を求めてしまう。

   TZADIKで04年発表。バイオリン奏者のリーダーがコンボ編成で吹き込んだ。
130・Jenny Scheinman:Shalagaster:☆☆☆☆★
   端正なサウンドがぎっしり詰まった。タンゴの要素をほんのりはらみつつ、
   とろけるようなメロディがそこかしこに詰まってる。(2)や(10)の
   響きがとにかく素晴らしい。バイオリンだけが前面に出ず、アンサンブルの
   構築度を凛と意識し、完成度高い。涼しげな耳ざわりの奥に熱さが漂う。
   あからさまな激しさでなく、鋭さで緊張感をあおった。

   TZADIKより98年に発売。ロヴァ・サックス・カルテットの演奏も1曲であり。
   リーダー奏者はサンプリング・キーボードを担当。
129・Annie Gosfield:Burnt Ivory and Loose Wires:☆☆★
   意識的に調律を狂わせた鍵盤を弾く奏者のリーダー作。94年~98年の作曲を
   97年にニューヨークで録音した音源が主体。ROVAの演奏作(7)のみ、サンフランシスコで
   98年に録音。即興的に弾いてるような箇所もあるが、全てが書き譜だろうか。
   気色悪くなるほど明確に音程をいじっており、聴いてて不安定な酩酊感に襲われる。
   安定を拒否し、猛然と混沌へ突入するスリルを味わう音盤か。
   聞いてると頭ぐらぐらしてくるけれど。ハマりそうな切ない異物感の魅力あり。
   なまじメロディがきれいなだけに、しまつにおえない。
   (4)や(6)はハードコア・テクノ的なアプローチが楽しい。生演奏ではあるが。

   TZADIK。03年のリリースで、ピアノや小編成の現代音楽かな?
128・Mark Applebaum:Catfish:☆☆★
   現代クラシック作曲家によるさまざまな編成の室内楽の作品集。
   最大で10人編成だが、むしろデュオや独奏に軸足か。3人のピアノ連弾もあり。
   最期にジョン・ゾーンへ捧げたコラージュ加工のテープ作品も。いかにもジョンっぽい。
   音列の断片漂うスタンスが基調か。冷徹ながらゆったり漂う
   ピアノ独奏やメロディアスなパーカッション作品へより魅かれた。
   
   70年代に活躍したシカゴのテナー奏者らしい。97年の邦盤再発を購入。
127・Von Freeman:Have no fear:☆☆☆☆★
   素晴らしくスマートなグルーヴに満ちた、爽快なバップの盤。
   洗練されつつも熱気が粘っこく滲む。シャープなリズム隊がぐいぐいあおり、
   ピアノがクールに決める上で、テナーが野太く軋みながら吼えた。
   タイトながら揺れる全体のサウンドはたまらなくかっこいい。
   ライブをぜひ聴きたかった。ヴォンのサックスは歌い心たっぷりで、
   なおかつやけっぱちにぶいぶいと捻らす。常に前のめりながら上手いリズム隊との
   相性もばっちり。とても気持ちいいジャズだ。
   ほとんどがアップで勢いよく疾走。だからこそ、バラードのしみじみさが引き立つ。

   91年のライブ録音(一曲を除く)。サックス4人編成の豪快な黒っぽい 
   ジャズを期待して購入。ピアノがドン・プーレン。ドイツのレーベルから発売。
126・Roots:Salutes the saxophone:☆☆★
   ベテランのサム・リヴァースを迎え4管サックスでモダンで黒っぽいジャズを
   あっさりな粘っこさのジャズ。91年に録音のころは中堅どころな
   ミュージシャンが、揃ってドイツで移動し演奏した。当日の雰囲気は不明だが
   ジャズクラブっぽい雰囲気が似合いそう。コルトレーンの曲を1曲やってるが、
   あとはスイングからスタンダードな選曲。初期ビバップを踏まえつつ、
   過激に走らず、ぶいぶいとサックスのブロウが飛び交う。こういうジャズも好き。
   ただ、ちょっと手馴れすぎでスリルに欠けるのも事実。

   "ワルキューレの騎行"が聴きたくて、その他のハイライト版を探す。
   指揮はヤノフスキで、80~83年に録音。02年に再発の邦盤を購入。
125・Janowski conducting Staatskapelle Dresden:Wargner:Der ring des Nibelungen(Highlights):☆☆
   こじんまりした録音に聴こえてしまう。緻密で流麗なスコアだなあ。
   煌びやかで瑞々しいオーケストラの響きがすごい。
   そのうちじっくり腰をすえてワーグナーと向き合いたくなった。

2008年7月

2008/7/27   最近買ったCDをまとめて。久しぶりにソウルを何枚か買った。

   菊地成孔ダブ・セクステットの2ndが早いペースで吹き込まれた。今回は特別サイトもあり
   大々的なプロモーションを組んでいる。サウンドは前作を踏まえたのかな。
124・菊地成孔Dub Sextet:Dub Orbits:☆☆☆☆
   前作の張り詰めた重たい緊張感が拭われ、タイトなグルーヴさが強調された。
   初めて聴くなら、こっちを薦める。とっつきやすい。ダブ処理も滑らかさを増し、浮遊感漂う
   コンボ・ジャズに仕上げた。コード的な解釈は不明だが、演奏スタイルは
   強靭だがオーソドックスなハード・バップ。ポリリズミックな解釈を混ぜ
   聴き手に到着地点を迷わせる。スタイリッシュでハードコアなジャズ。
   特設サイトの本人解説によれば、曲によってはまったく別クリックで各楽器を
   録音したり、数小節の素材だけを編集処理で曲に仕上げたという。
   異なるタイム感が、この雪崩みたいな勢いを産んだのか。

   デニス・ウィルソンのソロ作が久しぶりに再発された。しかも"レガシー・エディション"と
   題され、未発表で終わった"バンブー"音源や他のレア曲も詰め込んで2枚組で。快挙。
   この調子で、次はカールやマイク・ラブのソロもお願い。
123・Dennis Wilson:Pacific Ocean Blue:☆☆☆☆★
   ラフな歌と妙にゴージャスなサウンドに騙されてはいけない。
   ブライアンのアヴァンギャルドさを素直に受け継いだ、デニスの才能が溢れた一枚。
   ビーチ・ボーイズのキャリアを下敷きにした時間とカネが無ければ、このサウンドは
   間違いなく作れなかった。だが、突出した才能そのものが本盤には無造作に溢れてる。
   奔放なアイディアのまとめは、敢えて職業ミュージシャンに委ね、
   あくまでデニスは愛し合の身を提示した。
   溢れるメロディ、ヘンテコな構成とアレンジ、飛翔する和音。ブライアンと違った夢見心地の
   ポップスが詰まった。本盤は未発表音源も多数収録し、デニスの才能を概観できる素晴らしい一枚に仕上げた。

   クレイマーが参加してたプログレ・バンド、Brainvillがイギリスでやった
   いくつかのライブからまとめた様子。年代が書いてない。オリジナルのトリオ編成で
   クレイマーだけが不参加。そのわりに選曲は、クレイマーとアレンのデュオ盤で
   演奏のレパートリーもやってて嬉しい。ミックスはホッパーが担当。
   本盤はゴング系のレア音源をリリースするインディ盤で、1000枚限定。
122・Brainville:Live in the UK:☆☆☆
   音質の分離はまあまあ。あくまでファン向けの音源。ところどころ、濃密なサイケが吹き荒れる。
   "Bullshit & Be"のグルーヴが良かった。パイルの適当なハイハットが妙な味わい。
   全体的にアレンのギターが脱力疾走する。ホッパーのベースはちょっとこもってる。

   詳細はキャリアは不明だが、イスラエルでは大人気なウードとバイオリン奏者で
   古典を踏まえた現代音楽をやってるのだろうか。98年の録音らしい。Magda盤。
121・Yair Dalal:La Route Des Parfums:☆☆☆☆★
   アラビック楽器によるアンサンブルは隙間が多いアレンジながらスリルいっぱい。
   メロディを丁寧に操り、全編にグルーヴが溢れる。特に(3)が好み。
   ゆったりとたゆたうサウンドは、どこか影をまとって重厚にせまる。
   全てオリジナル曲。伝統を踏まえつつ、ポップにも走り過ぎない。聴き応えあり。

   ベックの新譜。シンプルな構成で多重録音したみたい。
120・Beck:Modern Guilt:☆☆☆★
   ビートはすっきりシャッキリ、メロディは滑らか。でも歌はへにゃへにゃ軽やかサイケ調。
   風通しの良いアレンジに感じた。凝りと一気につくる勢いの双方が交錯する。
   力をこめつつ気楽に。聴いてて2面性の印象が浮かんでは消える。
   とても興味深い。10曲、40分足らず。LP時代を彷彿とさせる、一筋縄で行かぬ一枚。

   コステロの新譜はインポスターズと。2週間であっという間に録音されたらしい。
   タイトルは日本人のカップラーメン創始者に捧げられた。なぜ。
119・Elvis Costello and The Imposters:Momofuku:☆☆☆☆★
   コンセプトに流れず、あっさりと録音を仕上げた。荒っぽいミックスだが
   バラエティに富んだシンプルなアレンジのアルバムとしてきれいに仕上げても
   はまったろう。初期から中期に通じるパワフルさと瑞々しさが滲む楽曲ばかり。
   いっぽうでアレンジはさまざまな組合せで練られてる。バンドらしさもちらり。
   大傑作じゃないかも。しかし、しみじみ楽しめる一枚。
   コステロ旋律がいっぱい。自らの世界観が固定した。

   仏ジャズ・オケが05年リリース。ツェッペリンへ捧げた盤のようだ。05年作。
118・Orchestre national de jazz:Close to Heaven:☆☆☆
   ZEPを良く知らないため、細かなオマージュがあったとしても気づけていない。
   あえてエレキギターを廃し、丁寧なアレンジでジャズながら上品な
   ロックのアンサンブルを作った。興味深いが鋭さに物足りなさを感じた。

   詳細不明のジャケ買い。男性ソウル・シンガーで、もしかしたらゴスペルかも。08年作。
117・Roi Anthony:True soul lifestyle:☆☆★
   出来は、良い。東海岸の都会的なソウルが基調か。ヒップホップから
   スマートなバラードまで違和感無く繋ぎ、フィリー・ソウルなどの引用も滑らか。
   擬似(?)ライブや女性シンガーとのデュオまで入れる凝りよう。
   ある意味ケチのつけよう無い、スマートな仕上がり。アレンジも丁寧だ。
   その小器用さがなぜか、馴染めない。百花繚乱ゆえの空虚さ、というか。
   この音でなきゃ、というこだわりを、うまく聞き取れていないのかも。
   繰り返し聴くうちに、本盤への評価は変わりそうだ。

   店頭ポップに惹かれて。男性ソウル・シンガー。60年代のカバーを基調か。07年作。
   ジャケットだけ見ると、とても新譜とは思えない。
116・Ryan Shaw:This is Ryan Shaw:☆☆☆
   昔のソウル風に聴かせる一方で、強烈なアレンジのセンスを見せ付けた一枚。
   ゴスペルがルーツで、昔のソウルが肌に合ったらしい。
   聴感は昔のソウルだが、ホーンはキーボード。このファンキーさを
   ギターとドラム、キーボードの打ち込みで仕上げた。硬く仕上げず
   柔らかさを残すサウンドが心地よい。基本はわずか3人の録音。
   ライアン・ショーは主にプログラムと歌、ジョニー・ゲイルがギターとベース、鍵盤にコーラス。
   コーラス・アレンジのほとんどはゲイル、とある。最期のドラムや打ち込み中心が
   ジミー・ブラロウワー。プロ・トゥールズの編集もつとめてる。
   この3人が作り上げた、擬似的な50年代南部のR&Bマナーを新譜として堪能する。
   09年の作品として。なぜ、新しくこの手の音楽を作り、聴く必然性があるんだろう。
   当時の音が好き、それを素直に表現した盤。
   そんな、ある種いびつな快感が、本盤の魅力。
   肝心なショーの歌声は、きっちり張ってきれいに聴かす。

   ジャケ買い。ピアノへ向かう男性ソウル・シンガーの絵面に惹かれた。07年作。
115・Brautlley Du' Augela:I did it for love:☆☆☆★
   ミディアム/スロー中心に穏やかなソウルを聴かせる。バスドラのアクセントで、
   奇妙で軽やかな打ち込みパターンを提示するのがユニーク。顕著なのが
   (3)でのぴょこんって音。空間を埋め尽くす打ち込みアレンジは上品で
   寛いで聴ける。惜しむらくはボーカルの線が余りに細いこと。もう一歩、アクが
   あると好みにぴたりだが。とはいえファルセットも操り、気弱げにスタイリッシュな音像は
   なかなかに心地よい。ライブを聴いてみたいミュージシャンだ。
   (3)、(4)、(6)、(9)など気持ちいい。

   ジャケ買い。さまざまな国のルーツを持つ女性らしい。07年作。SSWより
   ソウル的な要素を期待して購入。盤もソウルのコーナーにおいてあった。
114・Emily King:East side story:☆☆☆★
   打ち込みと多重コーラスで、とても好みな曲が数曲。したたかさを漂わせつつ
   ロマンチックな要素も残す。幅広い可能性がメロディ・ラインから現れる。
   ソウル的な回しは控えめ、歌い上げも避ける。中から情感を滲ませる。
   (2)、(4)、(11)、(12)あたりが良い。
   ビル・ウィザーズのカバー(6)は、なんだか仰々しい。あえて今、この曲を選ぶわりに
   他のオリジナルでは共通点を見出しづらかった。
   オリジナルはもっとしゃがれて粘っこいファンクネスを感じる。

2008/7/6    最近買ったCDをまとめて。

   8bit音色ポップス、YMCKの2年ぶり最新版の3rdはRPGがテーマ。
113・YMCK:Familiy Genesis:☆☆☆★
   8bitサウンドを制約事項の武器として、ドリーミーでプラスティックな
   ポップスを構築。濃密で統一感あるアルバムへ仕上げた。
   豪華なアレンジが欲しくなる一方で、たしかに8bitアレンジでこその魅力を詰め込んでる。
   アレンジは独自の路線を保ちつつ、普遍性ある魅力を作り上げた一枚。

   昨年リリースのようだ。8bit音源で各種クリスマス・ポップ・ソングをカバー。
   達郎、ワム、ユーミン、坂本龍一、などなど。
112・V.A.:Holy 8bit Night:☆☆★
   ギャグめいたコンセプトに選曲、アレンジながらまっとうな骨太テクノへ
   仕上げた。微妙なダンサブルさが共通要素か。テクノロジ的には制限無いが
   あえて枷をはめるように、細切れビートで厚みを出すスタンスへ共感を覚え、
   (12)のように音色素材としてのみ使った曲は、いまひとつ物足りない。
   聴いててノスタルジーも感じる。ある世代のみに限定された感想かもしれないが。

   チャーリー・ヘイデンが1970年に吹き込んだアルバム。ちゃんと聴くのは初めて。
   ドン・チェリー、ガトー・バルビエリ、カーラ・ブレイらが参加。
111・Charlie Haden:Liveration music orchestra:☆☆☆★
   大人数編成で参加のわりに、すっきりしたアレンジ。相当に練られてる。
   テーマである自由の賛歌を踏まえ、陰りをまとったスパニッシュ要素を
   基調に、粘っこい演奏が魅力。リズムはむしろ控えめ、グルーヴより
   全体的な構築性を狙ったか。アドリブよりもサウンド全体の響きに惹かれた。
   録音は少々こもって、ぐしゃっとコンパクトな音像を作ってる。

   小松亮太が& タンギスツ名義で99年発表のミニ・アルバム。タンゴの名曲を
   演奏してるのかな。4曲収録。タンギスツのメンバーだった鬼怒無月も参加。
110・小松亮太&ザ・タンギスツ:アグア・ベルデ:☆☆★
   12分4曲とシンプルな構成で、ソロ回しでなくすっきりとアンサンブルの魅力を
   封じ込めた。バンドネオンを中心に、さまざまな楽器が寄り添うようにメロディを
   構築するアレンジが心地よい。当時のライブを聴いてみたかった。

   フランキー・ヴァリのソロ旧譜が2in1で再発された。
   本盤は1967/68年リリース。"Can't take eyes off you"を収録。
109・Frankie Valli:Solo/Timeless:☆☆
   古めかしいアレンジでジャズ寄りのスタンダード歌唱路線を狙ったか。
   カバーも多く、クリュー/ゴーディオ作のオリジナル曲は影が薄い。特に"Timeless"のほう。
   もともとのフォー・シーズンズ・スタイルから、ロックンロール要素を
   抜いて、フランキーの声へスポットをあてた。パーカッションがやたら
   前へ出たり、アレンジの極端さはあるけれど。シンプルに歌を楽しむ盤。

   こちらは75年と76年のソロ。前者はアルバム・チャート51位まで
   あがったとある。後者はテディ・ランダッツォの曲を歌った。
   前者は全アレンジをチャーリー・カレロが担当。半分をクリューがNYで、
   もう半分をゴーディオがハリウッドで。両ボブがプロデュースをつとめた。
   後者は当時のフォー・シーズンズのリズム隊やアレンジャー中心に
   手堅く甘くまとめたAORの盤。他にボズ・スキャッグスの"We're all alone"をカバー。
108・Frankie Valli:Close up/Valli:☆☆☆☆
   洗練されたカレロのアレンジ、上品にまとめた"Valli"のアレンジ。異なる才能の仕上げを
   楽しめる2on1になった。あくまで滑らかにボーカルを中心で磨いたサウンドは、
   単純に心地よい。ミュージシャンの名前を鍵でマニアックに聴くも良し、
   スマートで粘っこいヴァリの歌声へ浸るもよし。特に"Valli"は、確かに強烈なヒットへ繋がる個性に欠ける。
   とはいえ突き抜けた透明感で磨かれたアレンジは素晴らしい。
   すっと聴き流せる盤だが、細かなとこまで神経が行き届いた。

   タイトルどおり、94年のツアーからのライブアルバム。未聴だった。
   古い曲は"戦メリ"と"M.A.Y.くらいか"。現実のライブはともかく、
   本盤では直近のアルバム曲を並べたライブ盤に仕上げた。95年発売。
107・坂本龍一:"Sweet Revenge"tour 1994:
   武道館公演を収録。前半は"Sweet revenge"からほぼ曲順、後半は"戦メリ"などを
   はさみつつ、"Heartbeat"収録曲など。"Sweet revenge"のゲスト・ボーカルは
   サンプリングし、さほどライブでの必然性は薄い。こじんまりした
   アンサンブルで整然と演奏するさまは、ヌケが悪い分楽しみづらい。
   修正を多数含むタイプ打ちで表現したクレジットや、無造作なコラージュの写真などが
   におわすように、暫定的な記録表現を狙ったか。聴き所は旧作の新アレンジくらい。
   とはいえ、さほど突飛さは無い。バイオリンを取り入れた"戦メリ"が
   のちのアコースティック盤へ繋がるのかも。
   ロマンティックな"Sheltering Sky"が良かった。

   未聴なので、今さらだが買ってきた。14枚目のオリジナル・アルバムで
   05年の発売。今のところ、最新盤。2枚組でどっさり詰め込んだ。
   "アビー・ロード"を彷彿とさせるジャケット・デザインだ。
106・サザン・オール・スターズ:キラーストリート:☆☆☆★
   シングル曲をふんだんに詰め込み、奔放に遊んだ充実なアルバム。
   詳細な桑田のライナーはバンドでの録音を強調するけれど、隅々まで桑田の美意識が
   目配り効いた。なぜかアルバム全体に寂しさと諦念を感じた。ライナー最終ページのハレーション
   効いた写真は、街が爆発したようだ。"桑田節"ともいえる
   独特のキャッチーなメロディが飛び交う。桑田の声は曲によって、えらくざらついた。
   エコー成分を薄めて、無造作に声を提示する。歌謡風味、ロックへの無邪気な愛情もいっぱい。
   サザンの代表アルバムとは言いがたいが、キャリアを総括はできる傑作。

   85年の同じく2枚組。当時は何曲かを繰り返し聴いた。スタジオにこもって
   さまざまなタイプの曲を作りこんだ。ここまででもっともバリエーションに凝った
   曲を詰めた傑作だと思う。
105・サザン・オール・スターズ:KAMAKURA:☆☆☆☆★
   発売当時に聴き慣れた曲ばかり、なんども聴いてしまう。桑田の才能が炸裂した
   強烈な傑作。さまざまなアイディアをこれでもかとつっこんだ。
   統一性のバンド要素は控えめながら、"怪物君の空"を筆頭にバンド的なアプローチは
   そこかしこに。魅力的なメロディがあふれる。消化不良な要素もあるけれど、
   補って余りある躍動する楽曲群が詰まった。皮肉な言い方だが、もし
   一枚にまとめ切れたら、とも夢想する。

   85年にリリースされた12インチ・シングル。アルバムとは別テイクだったと思う。
   ほのぼのなレゲエ調のクリスマス・ソングなロング・バージョンが好きだった。
104・佐野元春:Christmas time in blue (single):☆☆☆★
   ほんとの意味でブレイクする予兆の、ワクワクする時期に発売の12インチ。リアルタイムで聴いただけに
   当時の甘酸っぱさが思い出されるが。CDリイシューならばA/B面をひっくり返し、
   ダブ・ミックスを最後に持ってきてほしかった。当時は12インチの先鋭性も含め
   ロング・ミックス強調だったが、再発で後追いならまず、オリジナル・テイクを聴きたい。
   楽曲はレゲエを甘やかにビートルズ風味で味付けしたミドルの佳曲。
   バブルの前夜、華やかな雰囲気を飾るにぴったりの楽曲だ。アルバム・テイクより、こっちが好き。

2008年6月

2008/6/30   最近買ったCDをまとめて。

   07年5月、今堀恒雄と壷井彰久をゲストで迎え、バンドにはホッピー神山と
   石橋英子、久保田安紀に坂元健吾、小森慶子に、吉田達也で編成な高円寺百景のライブ。
   それがDVDでリリースされた。前半のインプロ部分の映像もあるようだ。
103・高円寺百景:070531 (DVD):

   マグマのトリビュート盤2枚組。高円寺百景が参加。ヤニック・トップも曲提供した。
102・V.A.:Hamtai! Hommage a la musique de Christian Vande:☆★
   きちんとマグマを聴いてから楽しむ作品だろう。ばらけた感触と
   ぬるめな印象あり。たぶん、マグマを知った後なら楽しめるはず。

   吉田達也"お薦め"コーナーにあったCD。ヘンリー・カウ系のミュージシャンが
   結成したユニットの1st(1984)と2nd(1986)を2in1した盤みたい。
101・News from Babel:Sirens and Silences/Work Resumed on the Tower News:☆☆
   淡々と短い曲を積み重ねた。何曲かは欧州デカダニズムなうねりと、リズミカルな押しは
   心地よいけれど、全体的には個人的な好みと、ちと違うかな。
   朗々とたゆたうメロディやロマンティックさが吉田達也へ影響与えていそう。
   テクニックではなく、ダグマー・クラウゼを筆頭に、穏やかな美学を捻って提示した。
   ミックスがこもっており、でかい音で聴くと迫力増した。

   自主リリース・レーベルの第一弾。タイトルの時期に行われたライブ音源より。
   クレジットは07年だが発売は08年らしい。ミックスは内橋和久が担当。
100・林栄一/内橋和久/外山明/古澤良治郎:2006.08.26:☆☆★
   無作為に盛り上がってはうねる即興が2曲。特に2曲目は47分にもわたる
   長尺の一本勝負を丸ごと収録した。ミュージシャンの顔と音楽を知っている人へ
   勧めたい盤。即興音楽ファンなら楽しめると思うが、あくまでライブを切り取った
   瞬間の芸術なため、とても聴き手を選びそう。あらためて即興音楽の記録とは
   なんぞや、と考えてしまった。
   林の鋭さ、内橋の構築性、外山の奔放さ、古澤の豊かさ。それぞれの音楽へ
   触れたことがある人なら、本盤は隅々まで耳を澄ませるだろう。
   しかし初めて聴いたら、取りとめの無さに戸惑いそう。
   発表を前提とせず、あくまで興の乗るまま展開する即興の醍醐味を詰めた盤。

   01年横濱ジャズプロのライブ音源。ゲストに林栄一を迎えた、Shezooの作品集。
99・Quipu:天上の夢~The Dream above the Heavens:☆☆☆
   穏やかでドラマティックな世界が広がる。青木タイセイがベースとトロンボーンを
   持ち替え、アンサンブルに幅が出た。shezooのピアノが紡ぐ曲は厳かに
   ロマンティックさを持つ。林栄一のサックスが鋭い異物ぶりで音楽へ複雑な魅力を与えた。
   2曲のテーマを複数回、挿入することで物語性を高めた快盤に仕上がった。

   デイブ・ダグラス(tp)が98年に録音したクインテット編成。マーク・フェルドマン(vln)、
   エリック・フェルドマン(vc)にドラムとベースという、変則なアンサンブル。
98・Dave Douglas:Convergence:☆☆★
   バイオリンを全面に出し、クレツマー的な要素も。アレンジはかなり
   練られ、端正に落ち着きシャープなアンサンブルを詰めた。
   爽快なスピード感もほんのり。デイヴ流のマサダへの回答、とは言いすぎか。
   トランペットよりも全体を優先させた感あり。
   さまざまな衝動に駆られ作曲した作品も収め、コンセプチュアルではないが
   デイヴの内的衝動を一括してまとめたかのよう。72分ぎっしりの音模様。

   00年録音のデイブ・ダグラスによる4人編成盤。グレッグ・コーエン(b)に
   フェルドマン、ガイ・クルーセヴェク(accrd)という、これまた変わった組合せが面白そう。
97・Dave Douglas:A thousand evenings:☆☆☆★
   98年録音の"CHARMS OF THE NIGHT SKY"名義と同メンバーによる第二弾。
   タイトル曲はデイブのサイトで譜面を見ることも出来る。
   元はタンゴのアンサンブルを意識したようだが、本作ではよりストイックに
   抽象的な音像へ向かった。デイブのライナーを読むと演奏を繰り返すうちに、このような志向へ
   変わったみたい。脱ジャンルに即興と作曲の混交を意識したようだ。
   カバーは2曲。"ゴールド・フィンガーのテーマ"とキャノンボールの"The little boy with the sad eyes"。ある種、脈絡なし。
   丁寧に組上げられるサウンドは、作曲と即興のバランスが絶妙。隙間が多く
   間を活かしつつ、誰に主導権を委ねず全員でふっくらと音楽をまとめた。
   ソロやアドリブのスペースを、デイブは無造作に他のメンバーへ与えてる。
   噛み締めるほどに即興の噛合いが楽しい一枚。静かなムードが全体を覆う。

   TZADIKから05年発売のクレツマー・バンドの作品。
96・The Cracow Klezmer Band:A tribute to Bruno Schulz:☆☆☆
   情感的なクレツマーが奔出。滑るようにメロディを紡ぐバイオリンが
   特に聴きもの。曲は全てジョン・ゾーンだが、マサダほど鋭くなく柔らかい印象。

   98年のAVANT盤。ジョン・ゾーンやマイク・パットンらが参加した
   バンドによる、物語とのコラボ盤のようだ。
95・Weird little boy:Weird little boy:
   アンサンブルめいたところはあるが、沈鬱な即興やノイズが漂う印象が強い。
   かなりジョン・ゾーンの趣味性を追求した前衛盤。楽しむよりも方向性の
   勉強として聴いてしまいたくなる。

2008/6/25   最近買ったCDをまとめて。

   明田川荘之の新譜は昨年6月のライブ音源。西川勲(b)をフィーチュアした
   セッションで、古澤良治郎の"エミ"のカバーや、オリジナル"世界の恵まれ
   ない子供たちへ"などを収録した。
94・AKETA~西川沖縄ユニット:さよなら室蘭長瀬氏~そしてエミ:☆☆☆★
   スピーディでセンチメンタルな快演が詰まった。明田川歩の歌が初CD化の点でも貴重な一枚。
   石渡の丸っこい音色なギターが滑るように疾走する場面が、とりわけかっこいい。
   明田川のピアノは本作でも啼き続けた。初CD化の三曲も嬉しい。
   本盤も噛み締めるほどに、よさが滲み出る。

   鬼怒無月率いるサルガヴォの2ndがリリースされた
93・Salle Gaveau:Strange Device:☆☆☆☆
   緻密でスピーディでドラマティック。ダンサブルさは勢いに置き換えられ、激しく情熱的に
   音楽が疾走する。やり取りもきっちりアレンジされたテーマが猛烈に演奏され、ソロでも
   アンサンブルは強固に成立した。脂の乗った奏者ががっつり噛合い生み出した
   インストの傑作盤。濃密な完成度が素晴らしい。

   クレイマーが抜け、ドラムがクリス・カトラーへ変わったブレインヴィルの
   ライブ音源が昨年リリースされた。06~07年の英、独、そしてテルアビブでの
   演奏から何曲か収録。
92・Brainville 3:Trial by headline:☆☆
   うにょうにょと、しかしあっさり。即興要素は混沌で煙り、なんだか掴みどころ無い
   サウンドが漂う。じっくり聞き込まないと良さがわからなさそう。

   シカゴが06年にライノからリリースした、30作目とクレジットのオリジナル作。
91・Chicago:XXX:☆☆
   野太くアレンジされたAORに仕上げてるが、ところどころで
   ホーンをきっちり活かしたシカゴ・サウンドも聞けるのが救いか。
   全体的に大味な感触だが、独特の詰まったコーラスを生かしたポップスに仕上げた。
   甘さを受け入れられるかで評価が変わる。BGM向なほど緩くも無いが。
   ホーンがきっちり前面に出た数曲は良いと思う。

   TZADIKからリリースされたジョン・ゾーンの映像系音源を集めた選集から
   未聴盤を何枚か購入した。確認したら、けっこう聞き漏らしてる。これは97年の3作目。
90・John Zorn:Film workes III;:☆☆☆☆
   4種類のプロジェクトを収めた。
   "Thieves Quartet":1993年、映画用に録音。メンバーはマサダとなる
    4人で、本セッションが結成のきっかけという。1曲でロバート・クイン(g)が参加。
   あくまでサントラを意識し、断片や雰囲気を作ってる。
   音楽性も渋くスローなモダン・ジャズ。しかしスリルはきっちりあり。
   "Music for Tsunta":玖保キリコのテスト用アニメ・フィルムのために録音された。88年録音。
    ゾーンは参加せず、ビル・フリゼールら7人の編成。断片が次々紡がれる。
   ゾーンも存在をすっかり忘れて、本盤4番目のプロジェクト音源を整理の際
   見つけたらしい。権利を二本のレーベルから買い戻したいと交渉試みたが、
   返事すら来なかった、と怒りをライナーでぶちまけた。
   ほんのりキュートなムードで次々と音像が変わる。ときどき、ターンテーブル
   などのノイジーな要素を平然とぶち込むのが、いかにも。
   "Hollywood hotel":台湾出身の監督による映画のサントラ、94年の作品。
    ゾーンとマーク・リボーのデュオで、ほとんどが1分強。譜面物と混沌なフリー、両方あり。
   重心軽く、二人は音を合わす。
   "Music for Weiden and Kennedy":広告代理店Weiden and Kennedyの要請で90~94年に録音した
    さまざまな小品を31曲収録した。鼻っ柱強いゾーンの録音スタイルが
   読めるライナーが面白い。CM音楽とはいえ自由を保障され、とても楽しんだ録音のようだ。
   音楽の面白さは、本プロジェクトが本盤でピカイチ。メロディでなく
   シチュエーションを、即興ではなくアンサンブルで作る。瞬間芸かつさりげなく
   耳をひきつけるクールなアイディアが次々飛び出してくる。素晴らしい。
 
   97年リリースの4作目。
89・John Zorn:S/M+more film workes IV:☆☆☆★
   93年か95年にかけて、低予算映像への音楽を中心にまとめた。
   静謐や酩酊を意識した、長尺曲で統一感漂う快盤に仕上がっている。
   白眉は黒田京子のソロ(3)。僅かにひしゃげた音色が陰のある美学を表現した。
   ライナーで自賛する(1)の漂う穏やかさも心地よい。
   浮遊する(2)や、即興的なコラージュながら流れも感じる(3)(5)も
   振り幅大きいノイズの隙間からほのかなユーモアがねじれ、空気を振動させる。

   01年発売、10作目。詳しいクレジットは聴いた後に。どうも読みづらい。
88・John Zorn:Film workes X:☆☆☆☆
   "In the Mirror of Maya Deren"(2001)のサントラをアルバム一枚使って
   収録した。本シリーズでは珍しい構成。エリック(vc)、ジェイミー(key)、
   シロ(per)の気心知れたトリオ編成で、ロマンティックでゆったりした音楽を
   丁寧に紡ぎあげた。即興要素よりも、構築美へ耳が行く。ジョンのスモール・
   コンボによるエキゾティック路線も、ごくかすかに香った。
   隅々まで隙が無い。ちなみに訥々としたジョンのピアノ演奏も数曲で聴ける。
   本映画はダンスや踊りも含めた前衛芸術家、マヤ・デレンのドキュメンタリーだそう。

2008/6/12  最近買ったCDをまとめて。

   立て続けに2作リリースされた、灰野敬二と吉田達也のデュオ作品。
   これが4作目かな。TZADIKから。編集をどう施し、かつ下の盤とどう変えているのか
   聴きこむのがとても楽しみ。で、タイトルはなんと発音するんだろう。   
87・灰野敬二/吉田達也:UHRFASUDHASDD:☆☆☆☆
   斬新。灰野敬二とのセッションを切り刻んでループさせ、さらにダビングも
   してるようだ。ハードエッジな即興がひとひねりしたポップ性を持つとは。
   奥底がなかなか見えない。聴き応えあるアルバムだ。
   ダブ処理、ループ編集、コラージュ、カットアップ、ダビング。録音過程のインタビューをじっくり読みたい。

   灰野敬二と吉田達也のデュオの新譜が出た。初めて音源へハサミを入れ、
   再構成したのが本作の特徴。ジャケットは灰野の絵を吉田がデザインしたようだ。
86・灰野敬二/吉田達也:Hauenfiomiume:☆☆☆☆★
   プロダクション・ノートを読みたい。どういう編集とセッションで本盤を構築したのか。
   ブロック編集ではなさそう。もちろん好演奏をつまんだだけじゃない。
   フレーズをループさせつつダビングしたのか、それともテイクそのものを
   ループさせ、DJ的に作ったのか。さまざまな素材が多層的かつ寸断/多重され、
   創造の過程を幾重にも想像させる。ループはかなり執拗に繰り返され、
   ときに鈍重さも感じた。しかし音素材はインプロの強靭さを明確に持つ。
   本手法を吉田達也がどんどん拡大、追及して欲しい。さらに刺激的な
   側面を持つ音楽が生まれそう。ちなみに本盤の素材のみを垂れ流した音源を
   聴きたいというのはわがままか。両方聴いて楽しめると思うが。

   前から欲しかった、フランスのジャズ。偶然店頭で、新品を見つけた。
   アンリ・テキシェが95年にリリースした。
85・Henri Texier:"Mad Nomad(s)":☆☆☆☆
   強烈な美学に貫かれたジャズ。当時の才能をあつめ、アンリがまとめあげたそう。
   ファンキーさは形式をとりこみ、ロマンティックさを強調したジャズ。
   隅々まで目配り効き、鋭さと即興性が丁寧にまとめられた。オーネット・コールマンの
   曲も、ごく滑らかにアルバムの中へ位置する。
   激しいアンサンブルもどこか一線を引いた冷静さあり。
   そのクールネスがたまらなくストレートな魅力となっている。
   特に楽器を強調させず、それぞれの奏者を場面ごとに前へ出した。

   ウェイン・ホーヴィッツの新譜はアコースティック・カルテット。
   p,vc,cornet,bassoonという変則的な編成で吹き込まれた。
84・Wayne Horvitz Gravitas Quartet:One dance alone:☆☆☆★
   アコースティックでふくよかな即興。前作より肩の力がさらに抜け
   のびのびさが増した。牧歌的なスリリングを達成した一枚。ライブをぜひ聴きたい。
   ぞくっとくる美しさがそこかしこから漏れ出る。
   リズムに拘泥せず、淡々と音楽は紡がれた。"Waltz From Woman Of Tokyo"が素晴らしい。

   クリスティ・ムーアの87年作品で、ドーナル・ラニーのプロデュース。
83・Christy Moore:Unfinished Revolution: ☆☆☆★
   カバーがほとんどのようだ。アコースティックなアンサンブルが軽やかに弾み、
   ムーアの曲がゆったり響く。ミドルテンポが多い。"The other side"での
   ハーモニーが心地よい。ここでハモるのはムーアの家族だろうか。
   滑らかに積み重ねアイリッシュ風味のポップスに仕上げた。上品なアレンジが良い。
   しかしムーアは甘きに流れず、ひりつきを残す。
   なんだかアルバムはさくさく進む印象あり。

2008/6/8   最近購入したCD。

   クレイマーがカンタベリー系ミュージシャンを集めて組んだバンド、ブレインズヴィル。
   アルバム一枚残して解散してたが、じわじわと活動をデヴィッド・アレン主導で
   進めてたとは知らなかった。本盤はクレイマー在籍時。ピップ・パイル(ds)、
   ヒュー・ホッパー(b)、クレイマー(b)、アレン(g,vo)の黄金メンバーによる
   98年のNYライブ音源。こんなの残ってたんだ。嬉しい!
   ヴォイスプリントから唐突にリリースされた。クレジット関係ははっきりしないが
   どうやらヒュー・ホッパーが主導権を持ったリリースみたい。
82・Brainville:01:Live in NYC '98:☆☆☆★
   ずぶずぶのサイケデリック。リズムやノリも全てあいまいにし、
   もやけたままにサウンドが突き進む。個々のフレーズよりも全体の流れ、
   一貫性よりも細部の輝きに耳が行く。ライブでこそありえる音像で
   かつ、よくライブでここまでどしゃめしゃに、と思う。相反する想いが
   聴いてるうちに頭の中をめぐってゆく。たとえ曲でも、かなりインプロ要素ありそう。

   マサダ"Book 2"シリーズの第8弾。チェロの独奏でまとめた。
   ジャケットが光るような色合いで、クレジットが読みづらい・・・。
81・Erik Friedlander:Volac:☆☆☆☆★
   情感的なチェロが存分に聴ける。うっすらとリバーブのかかった環境で、
   伸びやかな旋律が止むことなく降り注いだ。即興要素もあると思うが、
   ほとんどが滑らかな旋律を志向し、センチメンタルなマサダのメロディラインと
   的確に融合した雄大な音楽になっている。寛ぐにもよし、聴いて胸騒がすもよし。
   ジョンの作曲ぶりと、エリックのテクニックと魅力を、的確に封じ込めた傑作。

   クラシックのチェロ奏者、ジャクリーヌ・デュ・プレがEMIへ残した
   録音をまとめて17枚組に仕立てた。ちょっと装丁はしょぼげ。07年リイシュー。
   彼女はほとんどの録音がEMIなので、実質は彼女の録音全体像に近い。
80・Jacqueline Du Pre:The Complite EMI Recordings:☆☆☆☆☆
   デュ・プレの主だった録音をまとめて聴け、豊潤で触れ幅大きい
   彼女の演奏へどっぷり浸れるボックス。一枚一枚をどうこう言えるほど、まだ聞き込めていない。
   ただ、間違いなくこれからじっくりと味わい続けられる。
   廉価版を買ったため、解説が物足りない。しかしそれは、音楽と何も関係ない。
   買ってよかった。

2008年5月

2008/5/25   ジャズとクラシックの旧譜を中心にあれこれ。新譜は買いそびれた。
               聴きたいのはいっぱいある。

   以前"The Unknown"(1994)を聴き、面白かったので購入。これはその盤の次に
   リリースの作品らしい。96年のBlack Saint盤。8人編成で録音された。
79・Phillip Johnston's Big Trouble:Flood at the ant farm:☆☆☆★
   ほのぼのコラージュなジャズ。前衛的な要素は控え、オーソドックスな
   アプローチを前面に出しつつ、さまざまな場面を強引かつ玄妙にまとめた。
   細部までアレンジを施し、アドリブはあれども即興要素は少なめ。
   寛いだ響きでさりげなく聴かすが、気を配ってることにふと気づく。
   黒っぽいドライブでなく、アンサンブルのもつユーモラスなスピード感を創った。
   フィリップ・ジョンソンの才能が炸裂した、快演盤。

   07年発売の比較的、新譜。高橋知己(ts) がコルトレーンへ捧げた一枚。
   06~07年にアケタの店で録音したライブ音源より。リーダー作は3年ぶりか。
   過去も共演の津村和彦(g)を軸に、リズム隊を工藤 精(b) 斉藤 良(ds)に変えた。
78・高橋知己:Nothin' but Coltrane:☆☆★
   ピアノレス、ギターのコンボが疾走感を強調した。重心軽くテナーは
   アドリブを紡ぐ。熱気一辺倒でなく、どこか肩の力が抜けている。
   寂しく、切なげにサックスが軋む。コンボ編成ながら前面に出るのはテナー。

   高田みどりと佐藤允彦の共演盤で、90年のリリース。
   数曲で細野晴臣(b)、梅津和時(ss,b-cl)が参加した。初めて聴く。
77・高田みどり・佐藤允彦:Lunar Cruise:☆☆★
   デュオ名義だが高田みどりへぐっとスポットをあてたパーカッション・アルバム。ちととっつきにくい。
   佐藤はプロデューサーとして本盤にかかわった。音作りはまじめ、背筋伸びたユーモアだ。
   高田はおそらく多重録音を駆使し、さまざまなリズムを提示。ジャストなビートを基調に
   ストイックにビートがあふれ、うねった。佐藤はシンセで音像の味わいを膨らます。
   シンセの音色もパーカッシブで、アフリカンや邦楽的な香りもじわり。
   セッションでなく、きっちり構築した音楽。細野と梅津はニュアンスの一種として参加。
   アドリブぶいぶいを期待せずに聴くべし。素直に耳を傾けたら、おっそろしくタイトな
   リズムさばきに圧倒された。(9)の10分にもわたる、猛烈なパーカッション・ソロが凄まじい。
   全体に地味なため、しっかり集中力こめて聴こう。

   ウェイン・ホーヴィッツ(key)がリーダーでカナダのSonglineレーベルへ
   05年に吹き込んだ盤。カルテット編成で、他はvc,tp,bassoonとアコースティック
   かつ個性的な組合せ。穏やかなアンサンブルを自由に展開か。
76・Wayne Horvitz Garvitas Quartet:Way out east:☆☆☆
   変拍子を含むきっちりした譜面を手がかりに即興を繰り広げる。
   イメージは沈鬱ながら整然と自由に。トリッキーな要素を控え、滑らかな
   旋律の印象が残る。変則的な編成だが、ある程度クラシカルなアンサンブルを
   ホーヴィッツは狙っているようだ。トランペットが効果的。
   ともすれば停滞しそうなサウンドを、軽やかに引っ張っていく。
   リズム要素は薄く、符割の流れで音楽を流れさせた。

   ジャッキー・マクリーンのリーダー作、6人編成。オリジナルはジュビリーより
   ウエブスター・ヤング(tp)らが参加した。
   ハードなビバップを演奏してるといいな。57年にNYで録音。
75・Jackie Mclean:plays Fat Jazz:☆☆
   メロディアスで寛いだセッション。チューニングから始まるような"Tune-up"(マイルスの
   カバー)は面白かった。ジェットマシーンをかけたようなドラムの
   シンバルの音色が印象深い。モダンを貴重に、さらっと吹き込んだ印象をうけた。

   クラシックの棚で見つけた、ブラジルのパーカッション音楽集らしい。
   解説がしょぼい上に仏語(?)で、詳細がさっぱりわからず。95年のKardum盤。
74・Padre Miguel & Drum Society:Brazil Percussions:
   短めのパーカッション主体な演奏があまりに淡々と続く。
   グルーヴが非常に希薄。アカデミックな視点でリズム・パターンのカタログを
   聴いてるみたい。作ってて楽しかったんだろうか、こういうの。

   ヴィラ=ロボスの作品集。英Meridian盤で97年の発売。
   Tania Lisboa(Violoncello)とMiriam Braga(p)で、いくつかの作品を吹き込んだ。
73・Hetor Villa-Lobos:Complete works for Violoncello and piano,Vol.1:☆☆☆★
   ポスト印象主義の志向も組んだ作品群をあつめた、のかな。凛としたメロディを
   隙の無い演奏で紡ぐ。抽象的な場面や軋み音があっても、基調は
   旋律な印象あり。ロマンティシズムが強固に漂う。

   バッハによるヴィオラ=ダ=ガンバとハープシコードのソナタを収めた。
   (BWV:894,1027,1028,1029)英Meridian盤で91年の録音。
   奏者はJohn Drnenburg(Viola da gamba)、Malcolm Proud(Harpsichord)
72・J.S.Bach:Sonata for Viola da gamba and Harpsichord:☆☆☆
   情感的なメロディも構築された構成も、あまりエコー成分の無い双方の
   楽器で均一化され、まとまった感あり。電子楽器のように中域がぶわっと膨れる
   ヴィオラ・ダ・ガンバの音色が心地よかった。きらきらときらめくハープシコードと
   合間って、夾雑物を取り除いた耳ざわり。その隙間から生々しくヴィオラ・ダ・ガンバが歌う。
   噛み締めるほど、メロディの美しさがわかる。特にBGM1029、Gマイナーのソナタがじんわり。

   英Meridian盤で録音時期はクレジット見当たらず。イギリスの学校の講堂で録音か。
   ブラームスのクラリネットとピアノのソナタ他を収録した。(op.119,120:no1,& no.2)
   奏者はElli Eban(cl),Melinda Coffey(p)
71・Eban/Coffey:Brahms:Clarinet Sonatas:☆☆★
   穏やかな演奏で吹き込まれた。ダイナミクスはおっとりと、
   メロディの歌わせ方も上品だ。抑えた表現が曲の魅力をすっきりとした。
   特にピアノがさりげなく音を鳴らす。

   97年発売の英Meridian盤。ブラームスのピアノ作品(op.116,117,118)を収録。
   奏者はPaul Berkowitz(p)。彼は本レーベルにシューベルトのピアノソナタ全曲集も録音してるようだ。
70・Paul Berkowitz:Brahms:Piano Music Vol.1-Opp.116,117,118:☆☆★
   強めの残響を効かせ、幻想的にゆったりとピアノを奏でる。
   重厚で丁寧なタッチが、曲を厳かに響かせた。
   華やかで流麗な旋律が噴出する曲は小品ばかりなのに
   存在感が強い。ブラームスの作品として、あまり語られぬ曲らしいが。

2008/5/18   最近入手したCDを。

   久しぶりに発売したシングルで、直販やライブ会場限定発売らしい。
   4曲入りで2曲が新曲。あとは"春夏秋冬"と"黒いカバン"の08年再録版を収録した。
69・泉谷しげる:すべて時代のせいにして (single):☆☆☆
   若干、シャウトに力が弱まった。語り口で説得さを出す。
   新しいバンド・メンバーで初期の代表曲を再録し、新旧の風景を作った。
   淡々とぼやくタイトル曲よりも、鮮烈なサビのメロディの
   最終曲のほうが、個人的には好み。再録曲は特に新しい要素が無く、新バンドの紹介と受け止めた。

   ジョン・ゾーンのマサダ第二弾プロジェクト、"Book of Angels"で
   未入手盤をまとめて購入した。

   05年6月リリースの第一弾。ジェイミー・サフト(p)がリーダーのトリオ
   編成で、ジャズっぽくまとめてるのかな。ベースはオリジナル・マサダの
   グレッグ・コーエンが参加。
68・Jamie Saft Trio:Astaroth: Book of Angels, Vol.1:☆☆
   ピアノの左手パートは、思い切ってリズム隊に任せた印象あり。
   叙情さも残しつつ、大半はフリーに疾走する。
   深みを兼ね備えた、3人のシンプルなアンサンブル。MASADAの持つソロの
   応酬ではなく、互いの個性でねじ伏せあうかのよう。
   MASADAに通じるスリリングさもあり。ベン・ペロウスキーの性急なドラミングによる部分が多い。
   つばぜり合いながら、互いを尊重する。3人の距離感覚も見事。
   良質な一回限りのセッションをうまくまとめた。

   06年1月の第三弾。バイオリンとピアノのデュオ編成。
67・Mark Feldman and Sylvie Courvoisier:Malphas: Book of Angels, Vol.3 :☆☆☆☆
   べらぼうに流麗で刺激的なアンサンブル。どの曲もおそらく中盤は即興と思うが、実に滑らかな
   絡み合いと端正な旋律がふんだんに溢れた。エキゾチックなメロディを
   十二分に咀嚼し清廉なデュオを構築する、二人の凄まじさを実感した一枚。
   バイオリンの鋭い高音部の響きが痛快だ。傑作。どの曲もぐいぐい引き込まれた。
   立て続けの3曲でさらりと盛り上げて、(4)で音像はいったん抽象性を増す。
   (8)あたりからメロディが力を増し、峻烈に震えた。
   最期はジョン・ゾーンらしいコラージュ的な作品。クラシックなどの断片がめまぐるしく
   入れ替わり、唐突に幕を下ろす。本作の締めにしては、あまりにあっけない。
   ポリリズミカルなバイオリンのフレーズが印象深い、(1)がベストか。

   06年5月発売、第四弾。ドラム他のマルチ・ミュージシャンなコービー・
   イスラエリテ(でいいのかな)がリーダーで、他にはtp,b,cl奏者が参加。
   多重録音なコンボ編成だろうか。
66・Koby Israelite:Orobas: Book of Angels, Vol.4:☆☆☆
   時にコミカルなほど、コラージュめいたアレンジが立て続けに現れる。
   にもかかわらず、一発勝負な疾走感が特徴。クレツマー的な響きから
   ハードロックまで多彩な要素を一気に詰め込んだ。コンパクトな爽快さが肝。

   06年6月、立て続けな第五弾。ハッピーなクレツマー・スタイルで演奏か。
   なお、本盤へは弦カルやコンピュータ奏者らがゲスト参加してる。
   このバンドはTZADIKから5枚もリリースしてるが、全て未聴。
   "Masada Anniversary Edition"の第二弾、"Voices in the Wilderness"へも参加歴あり。
65・The Cracow Klezmer Band:Balan: Book of Angels, Vol. 5:☆☆☆★
   バヤンとはロシアの弦楽器だそう。アコーディオンみたいに聞こえるのがそれかな。
   クレツマーを基調に、裏でサンプリングとおぼしきボイスを挿入したり、
   ひねりがそこかしこへ。バイオリンの切ない響きや弦カルのバッキングなど、
   ラウンジ・ミュージック的なアプローチもある。どこか、いかがわしげ。
   サウンド自身はきっちりアレンジされ、濃密な音像がてんこ盛り。
   つい聴き流したが、細かく耳配りすると凄く緻密だ。
   ちなみにこのバンド、07年に解散したらしい。TZADIKからアルバムを
   数枚リリース済。知らなかった。今はBESTER QUARTETと名前を変えたそう。
   メンバーは全て同じ。どういう理由かよくわからない。

   第七弾は07年7月の発表。マーク・リボーのギターをメインに、ベースとドラムが
   加わった、トリオ編成で録音された。
64・Marc Ribot:Asmodeus:Book of Angels vo.7:☆☆☆
   ディストーションの効いたエレキ・ギターを前面に出す、ヘヴィなフリー・ロック。
   ポリリズム要素もそこかしこに。マサダのスピード感をもっとも強調した
   セッション。リード楽器をマーク・リボーに絞り、楽器同士のカラミがシンプルな提示となった。
   メロディの組立て云々より、力技一発の疾走な印象。シンプルにカッコいいと思えば良い盤か。
   (2)でアームを振り絞るような、ぐいぐいくる早弾きへ単純にぐっと来た。
   全40分弱。LP一枚のボリュームで、コンパクトにまとめた。
   なのに10曲もあり。むしろ曲を減らし、長尺でじっくり聴きたかったぞ。

2008/5/4   ヴァーチュオーソの観点で何枚かクラシックを購入。

   パガニーニなどの作品をバイオリンで独奏。86年録音の西独ポリドール盤。
63・Gidon Kremer:A Paganini:Virtuose music fur violine:☆☆
   今は、のめりこめず。何故だろう。演奏が猛烈に進行する一方で、
   ギクシャクと寸断される印象がとても強い。アクセントが強いせいか。

   あらためてホロヴィッツを買う日が来るとは思わなかった。
   スクリャーヴィンのエチュードなどを弾いた作品集。1曲を除き72年のスタジオ録音。
   92年にリリースされた、日本のソニー盤。
62・Horowitz:Scriabin Recital:☆☆☆☆
   雄大かつ降り注ぐ鍵盤の響きが心地よい。録音かマスタリングか、
   少々音のエッジがボケ気味な気が。スクリャービンの楽曲は、
   先鋭的な立ち上がりを踏まえつつ、滑らかで親しみやすい
   美しいメロディをも持ち続ける。"アルバム・リーフ"の冒頭など、
   ジャズ的な響きすら感じた。複雑怪奇な構成なのに涼やかな
   鮮烈さを備え持つ、素敵な作品ばかり。これはいい。

   ムソルグスキー"展覧会の絵"、チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番を収録。
   後者はトスカニーニ指揮でNBC交響楽団。さらにムソルグスキー"水辺にて"も。
   こちらはわざわざ"アレンジ:ホロウィッツ"とある。
   録音は41年~51年。90年の米BMG盤にて。
61・Horowitz/Toscanini:Mussorgsky"Pictures at an exhibition",Tchaikovsky"Concerto No.1":☆☆☆☆
   録音は少々こもってる。後半はスクラッチ・ノイズもあり。盤起こしか?
   しかし凛とした響きはよくわかる。強い鳴りと優雅な歌わせっぷり。峻烈な速さのテクニック。
   りりしいピアノだ。転げ落ちる勢いのムソルグスキー、
   スケール大きなチャイコフスキー。すごい。

   シフラがリストを弾きまくった一枚。56年から78年迄の録音から抜粋して
   日本EMIが96年にリリースした廉価盤にて。
60・Cziffra:The best of Liszt:☆☆☆
   ハイテクニックをごくたやすく披露し、しごく簡単に聴こえてしまうのが恐ろしい。
   録音自体はちょっとこじんまりな気がして、ダイナミックさがあっさり。
   後半は盤おこしかもしれない。ちょっとスクラッチ・ノイズが。
   ころころと弾む高音、振れる揺らぎ。ロマンティックさを廃し、冷徹なタッチで
   強烈な強さを魅せる。躊躇わず、まっすぐに。すみずみまでくっきりと。

2008年4月

2008/4/29   いろんな音楽をあれこれ購入。

   ヴァン・モリスンの新作はがっちりとオリジナル曲集。
   ほんのりカントリー風味なのかな?オーソドックスなバンド編成で録音したようだ。
   旧作はリマスター+未発表音源でリイシューが始まってるし、ヴァンはまだ、しぶとく頑張ってる。
59・Van Morrison:Keep it simple:☆☆☆☆
   新しさではない。内容ぎっしりな金太郎飴。底光りする。ジャズやブルーズ、フォークなど
   さまざまなジャンルもヴァンの歌声で一気通貫、強烈な一体感あり。
   ライブ感覚を狙ったか、小編成のコンボできっちり作りこみ、スライドやパーカッションの
   味わいはきっちり練られたアンサンブル。隙間はあえて埋めつくした。
   歳相応の落ち着きで華がないゆえに、聴き手はかなり選びそう。
   しかし腰をすえたらきっと、味わいが滲んでくる。いまだにヴァンの歌声は衰えないな。

   メルツバウが95年に米のレーベルで発表の作品で、ZSF Produkt録音名義のころ。
   CDと5inchアナログを収録した特殊パッケージ入り。探してた一枚。
58・Merzbow:Green Wheels:

   日野皓正と菊地雅章の双頭クインテットで07年にリリースされた。後のメンバーは
   マイケル・アティアス(as)、トーマス・モーガン(b)、ポール・モチアン(ds)。
   どんなジャズに仕上がってるか楽しみ。
57・日野=菊地クインテット:カウンターカレント:☆☆☆
   冷徹なフリー・ジャズ。聴き手に緊張を強いるそっけなさはない。
   定型ビートはない。身勝手なアドリブで、個々がばらばらな演奏でもない。
   ないない尽くしの感想が思い浮かんだあとに残る、フリー・アンサンブルの成立を軸に
   ソロをさりげなく回すフリー・ジャズが残った。とっつきにくいのは確か。
   しかし聴いてるうちに、じわじわと良さを掴み取れそう。もんやりとグルーヴが漂う。
   アンサンブルの厚みを出すためかもしれないが、サックスの必然性が薄い。
   いっそ1管ベースレス、菊地と日野にポール・モチアンの編成へ絞りこんだら
   焦点が明確化したかも。トーマス・モーガンのbは決して悪くない。訥々とシビアに
   低音を響かせる。モチアンのクールなシンバル・ワークもさすが。

   聴きそびれていた。二人の初共演という03年3月20日、六本木スーデラでの
   ライブを収録した一枚。プロデュースは共同、マスタリングは竹村が担当した。
   03年、HEADSからの発売。
56・大友良英+竹村ノブカズ:turntables and computers:☆☆☆★
   素晴らしくスリリングで寛げるアンビエント。ライブでの緊張感はさておき、
   CDとなった今はBGMで聴いた時に真価を発揮する。リズムはほとんど無い。
   フレーズらしきものもなく、サンプリングやターンテーブルの断片のみ。
   さまざまな周波数が飛び交うけれど、ノイジーでも無い。淡々と音が紡がれ、
   交錯しつつも興奮も無い。単独のアイディアで40分ほどを歩み去らず、
   かなり短いスパンで音像は変わっていく。さまざまな発想を詰め込みつつも、
   凝縮や構造計算の冷徹さも無い。あらゆる構成要素を注意深く避けつつ、
   穏やかかつ新鮮な音が次々に現れた。耳を澄まし続けず、ふとほかの事に注意を向ける。
   音へ耳を戻すと、先ほどとは違う世界を鮮やかに産んでいるのがわかる。

   邦盤を購入。ウェイン・ホーウィッツが96年に吹き込んだクインテットで、
   Keyx2、comp、vn、tbと変則編成。他のメンバーは不勉強で良く知らない。
55・Wayne Horvitz:4+1 Ensemble:☆☆☆
   リズム隊無きダブルデュオ・アンサンブルはおっとりと整合性を
   取りながらスリルを増す。即興要素もきれいに取り込まれた。
   アルバムが進むにつれコンセプトが深化し、洗練される気がした。

   ジャケ買いのジャズで詳細不明。04年発売。イタリアのユニットかな?
   g,as,org,dsというベースレスのカルテットみたい。
54・Dynamic4:My fabourite beats:
   上品なラウンジ系のジャズか。ラテンやポップスなどを丁寧に勉強の上で、
   かっちりポップにまとめるセンスはある。しかし演奏が訥々で、隙を感じた。
   洒落めいたBGMではあるが、対峙するともどかしさも。
   ライブでは小粋に踊れるのかもしれないが。
   数曲で女性ボーカルあり。ますます渋谷系を連想した。
   クールに魅せつつ、ほんのりオルガンの粘っこさも。しかし毒が足りない。
   気軽に聴くには、いい盤かも知れない。
   粘っこいギター・ソロが聴ける(10)は、まあまあ気に入った。

   リーダーはミンガス。ドルフィーやジャキ・バイアードらと64年に吹き込んだ盤。
   応酬のライブ音源みたい。長尺を2曲収録した。
53・Charles Mingus:Town hall concert:☆☆☆★
   大胆にして緻密。自由な展開と最初は思ったが、よく聴いたら
   場面ごとにアンサンブルはきっちり締まり、全員一直線でなく丁寧にメリハリを
   つけている。ドルフィーが奔放に吹き鳴らしても音楽は崩れない。
   ミンガスの美学が持つ強靭な凄みが滲み出た。そこかしこに猛烈なスリリングを秘めたジャズ。

   後期リストのピアノ曲が聴きたく探したが、手ごろな盤が無い。
   "巡礼の年、第3年"から「エステ荘の噴水」を弾いている本盤を購入。
   リストの作品集を集めた盤のようだ。奏者などの予備知識は皆無です。すいません。
   録音は85年、91年に東芝EMIから発売の邦盤にて。奏者はアンドレ・ワッツ(p)。
52・Andre Watts:Lacampanella(List/Piano works):☆☆★
   超高速な音の粒で爽やかに疾走する演奏がすごい。録音のせいか、
   せっかくのダイナミズムがのっぺりとして聴こえてしまうが。
   ロマンチックだが情感に溺れぬ。クールで素早い、カタログのような一枚。

   ついでに4枚組、リストのオルガン作品全曲集を。手ごろな値段だったので。
   奏者はStefan Johannes Bleicher。98年録音で、02年にArte Novaから
   (おそらく)再発された盤。ドイツ製かな?
51・Stefan Johannes Bleicher:Franz Liszt:Complete organ works:☆☆★
   正直、4枚組のボリュームはハードル高い。全集、ゆえの難点か。
   音色の違いはもちろん有っても、基本的に足し算のダイナミズムなため、続けて聴くと集中力が続かない。
   楽器の特徴か録音なのか、音が膨らむと細部が曖昧になってしまう。このモコった
   音像が物足りない。パイプオルガンはふくよかかつ、もっとくっきりと聴き別けられたはず。
   少なくとも生演奏を聴くならば。
   リストの作品はテクニック一辺倒でなく、音数少なくしっとり流す場面も多数。
   シンフォニックかつ幻想的、シンセに通じる使い方を想定してる気がした。
   白玉を慎重かつ丁寧にしっとり膨らます曲でのロマンにわくわくする。
   英独仏の解説付きで読めていない。したがって本盤が作曲順に
   並べられてるのかも知らず聴いている。詳しい解説書を
   横において聴き進めるのも一興だろう。轟音でぶわっと行く曲と、
   小音ささやかな構造の曲。両者が交錯し、楽しめた。
   特に印象深かったのは、Disc-2,(3)、Disc-3,(2)や(3)、Disc-4,(2)。
   要するに小さく少ない音で、しっとり奏でる音使いと響きに惹かれた。

   イングリッシュ・ピアノ・トリオが演奏する、アーノルドの作品集。
   97年録音のナクソス版を購入。ピアノ・トリオ、バイオリン・ソナタなどなど
   5種類の作品を収録した。アーノルドはイギリスの作曲家で代表作は"ボギー大佐"。
50・Arnold:Chamber Music~アーノルド:室内楽曲集:☆☆★
   メロディがくっきり、見通し良く骨太な印象を受けた。だが微かにクレツマーっぽさと
   幻想性を織り込む多層性が魅力。TZADIKからリリースされたらハマりそう。
   (13)での密やかなロマンティシズムが良かったな。

   ブラジルの作曲家、ヴィラ=ロボスの弦楽四重奏曲の作品集。
   91年にベスレール=レイス四重奏団が吹き込んだ、テイクオフからの邦盤を購入。
   本盤は作品四重奏曲の1~3番を収録した。
49・Villa-Lobos:String Quartets 1,2,3:☆☆☆★
   多彩なヴィラ=ロボスの弦楽四重奏が詰まった、魅力的な一枚。
   奏者はさほどひねくらず、真っ直ぐかつスマートに奏でた。
   日本語ライナーは印象論に終わる文も多いが、丁寧かつボリューム多し。
   全体的に好感持てる製作な盤だ。
   奔放に旋律が展開する第一番、ロマンティックさが奔出の第二番、そしてトリッキーで
   エキゾチックな要素も詰まった第三番。それぞれが個性的だ。
   好みで言うと、2番にしびれた。音がくしゃっと重なり(いわゆる不協和音らしい)
   改めてりスケール大きく展開する構成がたまらない。

   同上シリーズより。本盤は四重奏曲の12~14番が収録されている。
48・Villa-Lobos:String Quartets 12,13,14:☆☆☆★
   不穏で影をまとったNo.12、緊張感をはらみつつ雪崩れるNo.14、
   そして切なく身をよじる旋律がふんだんに踊るNo.13。シンプルな構造でまず迫り、
   みっちりと弦が震えながら空間を埋めてゆく。穏やかな完結ではなく
   どこか不安定さを残し、ゆらゆらと漂う独特のサウンドが刺激的だ。
   奏者の音色は軋むように弦を鳴らし、がっちりとヴィラ・ロボスの音楽を
   情熱的に彩った。地味で古めかしいジャケットのまま、青白い響きの
   弦楽四重奏を味わえる、快演が詰まった。

   DENONの邦盤、04年リリース。オリジナル楽器での演奏らしい。モーツァルトの弦楽四重奏、
   14番と17番"狩"を収録。クイケン四重奏団がイギリスで91年に録音した。
47・Kuijken Quartet:Mozart;'Haydn Quartets vol.1 K.458"Hunt" & K.387:☆☆☆★
   甲高いピッチの古楽器でおっとりと奏でた。特にチェロが素早く動く場面の
   滑らかな音色が心地よい。跳ねる音符、活き活きとしたフォルテピアノの表現が
   耳へすっと流れ込む。楽曲は14番のほうに、今は親しみを感じる。
   まだモーツァルトの弦楽四重奏をろくに聴いておらず、楽曲面へ
   どうこう言える知識が足りない。
   全般的に、しゃきしゃきとすっきりな演奏に聴こえた。

2008/4/20   最近買ったCDをまとめて。

   メルツバウの新作群を購入した。
   これはメルツバウとHatersのコンピ盤で、87年の音源をリイシュー。
   Hatersの曲は06年にリミックスされたもの。
46・Merzbow & The Haters:Merzbow & The Haters:
   隙間多いハーシュ。ちょっと刺激が薄い。轟音一直線よりも
   はじけるエッジの複雑さに軸足を置いたか。

   07年5月、NYの"楽しくない音楽会"でメルツバウが行ったライブ音源。
   6月にメルツバウがリミックスを施した。
45・Merzbow:Live destruction at no fun 2007:☆☆☆★
   猛スピードで奔出するハーシュで幕を開け、中盤では音を絞ってくっきりと
   輪郭を明確に。前へ突き進むベクトルを常に提示しながら、バリエーション
   豊かなアレンジで飽きさせない。ループが中心かな?生々しいノイズの
   蠢きもそこかしこで。多彩なアイディアを自在に操るメルツバウのいいところが
   きっちり聴けるライブアルバム。

   07年8月の自宅録音盤。限定500枚。ドイツのレーベルから。
44・Merzbow:Here:☆☆☆
   前半はすっきりした展開。アナログ的なノイズが細密に噴霧される。
   上下左右でなく、正面へ。コラージュ的な手法も随所に感じた。複数のノイズを
   重ねる手法を用いつつ、見通しよく仕上げた印象あり。淡々と進む。
   最終曲の強烈なハーシュで、すらも。

   07年10月の自宅録音盤。ポーランドのレーベルからリリースされた。
43・Merzbow:Higanbana:☆☆☆
   アナログなシンセの唸りが全編に渡り冴えわたり、どっぷり音圧と重厚なノイズが溢れた。
   移動はせずその場で座り込み、燃え立たせるような立ち位置で。
   (1)の中盤、リバーブどっさりで轟く音像のスリルは
   インダストリアルに変化した。(2)と(3)は、ほぼワン・アイディアのハーシュ。
   全体的にメカニカルでも生々しく、壮絶でかっこいい。

   ジョン・ゾーンのBar Kokhbaを聴いて、マーク・フェルドマンがリーダーの盤を
   聴いてみたくなった。本作は95年にTZADIKからリリースの、無伴奏ソロみたい。
42・Mark Feldman:Music for violin alone:☆☆★
   硬質なテンションを保ったソロアルバム。ハイテクニックを駆使し、
   メロディも安住よりは展開の一手段とした。寛ぐために聴くには
   向かないが、フェルドマンのストイックでまじめな志向へ
   触れるには的確な盤かもしれない。思い切り肩に力が入ってる。
   複弦奏法も駆使し、即興性を持ちつつ豊かな響きもそこかしこで。

   ECMへ06年に吹き込んだカルテット編成。他はピアノ・トリオの形式。
   サイドメンはふだん聞かない人たちで、音楽のタイプが想像できてない。
41・Mark Feldman:What exit:☆☆☆★
   とっつきにくい印象だが、即興とアンサンブル双方へ曲によって軸足を変え、
   バラエティに富んだアルバムへ仕上げた。感触は静謐で理知的。混沌も
   軽やかな優美さをまとっている。バイオリンはサウンドの一要素に控え、
   他のミュージシャンも見せ場いっぱい。グルーヴとは違う穏やかさを楽しむ一枚。
   
   買いそびれてた。早坂紗知率いるmingaが、ソロ名義で吹き込んだ03年のTZADIK盤。
40・早坂紗知:minga:☆☆★
   ラテンやアフリカ、そしてジャズ。b,g,perのシンプルなアンサンブルを機軸に
   清々しい音世界をサックスが紡ぐ。例外が(4)か。早坂の作品だが、怒涛のプログレな印象。
   華やかな明るさもあるが、ストイックなムードが漂うためかモノトーンの風景を感じた。

   ビル・フリゼールが02年にトリオ編成で吹き込んだ。カントリー系かな?
39・Bill Frisell:The Willies:☆☆☆
   おっとりとしたバンジョーとベースのくつろぎとカントリーさを基調に
   しつつ、聴いてるうちに緊張がそこかしこに姿を潜めてると感じた。
   たとえスロー・テンポでもビルのギターは安楽さと逆ベクトル。
   ぴいんと張った伸びやかさを常に含ませる。
   あからさまなバトルは控え、耳ざわりは優しい。
   けれども手癖でのんびりセッションでは終わらぬ、清々しさがある。
   派手なテンションが無い分、するっと聞き流してしまいそう。
   曲も小品ばかり。BGMでも成立するが、聴き応えを潜めた。
   つまり間口広いマーケッティングを装い、繰り返し聴ける再密度もある。
   そんな二面性をビルは狙ったのかもしれない。いわば、ゆるやかなハードコア。

   ホットなジャズと期待して購入。ペットのハル・シンジャーが59年に
   プレスティッジへ吹き込んだ。クインテットで、レイ・ブライアントらが参加。
38・Hal Singer with Charlie Shavers:Blue Stompin':☆☆☆
   スイングをベースにムーディかつブルージーに。過激さは控えめ。
   クラブ・ギグを繰り重ねたキャリアを感じさせる、耳馴染みの良いジャズ。
   音楽の新しさでなく、ある夜のクラブ演奏を切り取ったような音楽だ。
   酒とタバコが似合う。丁寧にアドリブを重ねた。まさに(5)でステージが終わり、
   (6)がアンコールみたい。ギグの疑似体験がコンセプトなら、とても良く出来たアルバム。

2008/4/8   ネット注文したCDが到着した。

   GbV関連盤。ボブのユニットTakeoversの新作シングル。4曲入り。
   "Bad football"からのタイトル曲に、未発表が3曲の構成かな?
37・The Takeovers:Little Green Onion Man:☆☆★
   あっという間に聴き終わる。未発表曲はアウト・テイクっぽいものから
   デモテープまでさまざま。録音場所もあちこち。録音時期は記載無く不明だが、
   膨大な蔵出し音源から無造作に抽出した感じ。サウンドはローファイ。
   (2)はきっちりリリースされてても良い、スローなロック。ちょっと暗いが。
   むしろひょこひょこなデモテープ風な(3)、歌までひっくり返り気味な(4)が
   いかにもロバートらしくて、好みではある。

   GbV関連盤。ボブとトッドのユニットの新作。07年のリリース。
36・Psycho and the birds:We've moved:☆☆☆
   爽快なメロディが立て続け。いくぶんアヴァンギャルド寄りなアレンジか。
   のびのびロバートは歌うが、ボーカルにエフェクト効果も。
   全体に軽やかな印象あり。統一性は気にせず、片端から曲を詰め込んだかのよう。
   もちろん美メロな曲もしっかりあり。

   クレイマーが初めて日本人バンドをプロデュースした。EP盤で06年発売。
35・コーカス:空と時間軸:☆☆☆★
   シミー流の青白く煙ったサイケ・サウンドが本家クレイマーの手で瑞々しく仕上がった。
   軽めのビートで爽やかさをまとったロックは、シューゲイザーとオルタナの間を行き来する。
   シミー好きにはぜひ聴いて欲しい一枚。クレイマーは1曲でオルガンを演奏してる。

   アイルランドのフォーク歌手、クリスティー・ムーアの旧譜を入手。
   本盤は14枚目のソロで89年の作品。
34・Christy Moore:Voyage:☆☆☆★
   作曲家ジミー・マッカーシーの作品を5曲収録した。コステロも1曲提供だが
   コーラスで録音は別のトラック。コステロの曲はクリスティがしごくあっさりと
   歌いこなした。シンニード・オコナーが2曲、メアリー・ブラックが1曲でコーラスを。
   どちらも清浄で幻想的な雰囲気を醸した。シンニードのほうが存在感あり。
   曲はどれも素朴な持ち味を残しつつ、キーボードを大胆にあしらったアレンジ。
   ともすれば大味になりかねないところを、丁寧に仕上げた。アレンジャーの
   クレジットはないが、誰のセンスだろう。ドーナルかな? 
   伸びやかで癖を少なめに、すっきりと喉を震わすクリスティの歌声は、
   どんなアレンジでもくっきりと存在感を出した。アイリッシュ・トラッドの血を
   滑らかにポップスへ昇華した。アップテンポはあえて控え、じっくり聴かせる。
   地味ながら渋い良さが滲む一枚。
   
   本作は9作目のソロ。83年の発売。ドーナル・ラニーと
   ほぼデュオ状態で吹き込んだ。プロデュースも二人が共同にて。
33・Christy Moore:The time has come:☆☆☆★
   基本はクリスティの弾き語り。ごくわずかな色をドーナル・ラニーがつけるアレンジを採用した。
   溌剌と喉を震わす歌声が気持ち良い。手持ち盤には作曲者名が無いが、オリジナルだろうか。
   英国風のほの暗く角ばった旋律が目白押し。素朴だが聴き応えある一枚。
   コーラス参加のマンディ・マーフィーって誰だろ。検索したがうまく見つけられず。

2008年3月

2008/3/30   最近買ったCDをまとめて紹介。

   ロバート・ポラードの新譜は、80年代から今までに、往年のGbV時代に
   録音の音源へ、ボーカルを重ねたようだ。クレジットには黄金メンバーがずらり。
32・Robert Pollard:Superman was a rocker:☆☆☆
   ファン向。GbVを未聴、ボブを初体験な人へは薦めない。ラジオ仕立てか。
   やけにくっきりなボーカルとローファイな初期GbVのサウンド・サンドイッチは
   ちょっと奇妙で面白い。近年の構築を意識した展開を投げ捨て、
   アイディア一発のとっちらかったGbV路線を味わえる一枚。全部で30分強と
   コンパクトな仕上がり。今、これを出す必然性は不明だし
   かなり実験(というか、手遊び)な志向だが楽しめた。
   中にはケヴィン・マーチが全て演奏を行った(3)などもあり。
   この曲はおしゃべりを詰めた録音遊びみたいで、ある種本盤を象徴する作品だが。

   福岡を拠点に活躍する深水郁の新ライブ音源CD-R。6曲入りで
   07年11月7日の横浜ドルフィーでの録音を5曲。ボーナス的に、06年11月12日、
   福岡は唐人町、甘棠館Show劇場にての音源を1曲収録した。
   それぞれのライブでは、前者は羽野昌二(ds)、後者はRYOSAI(尺八)、スウェイン
   佳子(ダンス)とコラボした。
31・深水郁:- タイトルなし -:

   高円寺百景の1st(1994)のリイシュー。同じゴッド・マウンテンより。
   吉田達也がドラムを再録音し、自らリミックスを施したのが売りか。
30・高円寺百景:Hundred Sights of Koenji:☆☆☆☆
   オーバーダブを施し、派手に過剰に磨かれた1st。この時点の高円寺百景はマグマ直系の
   剛腕アンサンブルがテーマだった。数多くのメンバーチェンジを繰り返し
   仰々しさとコンパクトさを行き来した百景の変遷を経た鋭さを、敢えて1stに改めて封じた。
   もちろん吉田達也のマスタリング技術向上や、デジタル初期録音ゆえのダイナミズム不足の改善もあったと思うが。
   高音の強調はシンバル系に代表される。ひりひりする1stの百景を、ダビングで塗りなおした。
   オリジナルと聴き比べると、曲によって強調の濃淡違いが分かる。"Molavena"や"Yagonahh"など
   埋もれ気味だった楽曲が、ひときわ鮮やかに鳴った。
   むしろ"Sunna Zarioki"あたりは角を削っておとなしくした印象すらも。

   フランスで活動する沖至の新譜は330枚限定、05年11月のピットイン音源。
   共演は藤井郷子、田村夏樹、登敬三、太田惠資、立花泰彦、小山彰太。
29・沖至スペシャル・グループ:ソウル・アイズ:☆☆☆
   暖かでクールで整いつつフリーなジャズがいっぱい。フリーからスイング、ビバップ。
   さまざまな要素をごく自然に並列処理した。したたかなメンバーゆえの
   懐深い自由度をもとに、長尺のジャズののんびりと聴けた。
   ありきたりのスピーディなスリルでなく、巧みな構築度で張り詰めた視点が聴きもの。

   1stがキュートだった、アメリカの女性SSWの2nd。リリースされてるのを
   ちっとも知らなかった。1曲ボートラ入りの邦盤を購入。06年の発売。
28・Toby Lightman:Burd on a wire:☆☆☆
   1stの路線を保ちつつ、ほんのり年齢を上げた。リズムをゆったり幅広く、
   ゆとりを感じさせる。喋るようなメロディや地面から5センチ浮かび上がるような
   重心の軽さも健在。ドラムのエッジをくっきり立たす音像は今風なのか。伴奏は冒険せず
   サザン・フォークなSSWロック、と一言でくくれそう。
   録音や演奏も含め丁寧な貫禄ある2nd。改革や新鮮さを求めず、
   ライブなどに揉まれて第二弾、と受け止める作品か。

   ジョン・ゾーンのMasada 2ndシーズンも10作目。Bar Kokhba名義での発売となった。
27・John Zorn:Juciter - Bar Kokhba plays Masada book two:☆☆☆☆★
   変わらぬ高いクオリティを平然と提示するアンサンブル。今回も
   譜面の上品でエキゾティックな音像の合間を、ふわふわと無造作な
   ソロが乗っていく。聞き流しても気持ちよく、聞き込むほどに良く練られてる。
   素晴らしく聴き応えある盤。陰のあるメロディだが、開放感もあり。
   マーク・リボーのスマートなギターと、濡れたマーク・フェルドマンのバイオリンにやられた。
   ジョン・ゾーンの才能とセンスに圧倒された一枚。

   元ザッパ・バンド、ヴィニーのソロ。未聴だった。94年のリリース。
   基本はバンド編成のインストのようだ。
   ゲストでスティング、チック・コリア、ハービー・ハンコックらが参加した。
26・Vinnie Colaiuta:Vinnie Colaiuta:☆☆
   ハイテクニックで深みあるリズムなのはわかる。でもちょっと大味で
   スマートすぎ。好みの問題だが、ぼくはもう少しワイルドや即興性が欲しい。
   ヴィニーのドラミングを丁寧に聴くには適したアルバムとは思う。

   現在進行形の小編成ハード・バップを聴きたくて、適当にジャケ買い。
   どのミュージシャンも詳細は知りません。実際はどれもはずれかな?

   エンヤから1995年にリリース。アルトのワンホーン編成。
   2トラックでライブ録音とある。
25・Abraham Burton:The Magician:☆☆☆
   滑らかにメロディを操るまっとうなモダン・ジャズ。時に軋む
   アルトが、なかなか聴き物だった。ピアノが上品過ぎるのと、ちょっとリズムが
   拮抗に欠けるが・・・数曲のアップではサックスを筆頭に粘っこくグルーヴする。
   スローでは丁寧なアドリブに好感持てた。BGMより一歩踏み出したジャズ。 

   02年、伊ソウル・ノート盤。ピアノ・トリオ。全曲がピアニストのオリジナル。
24・Greg Burk Trio:Checking in:☆☆★
   耳ざわりはきれいなタッチのピアノだが、リズムはフリージャズの要素も。
   シンプルな4ビートにとらわれず、奔放なアンサンブルを構成した。
   それでいて、あくまでもサウンドは優しく軽やかに弾む。
   実験的な要素を感じさせぬまま、自由に展開するアプローチが興味深い。

   97年、デンマークのSteeple Chase盤。ケニー・ドーハムの曲も取り上げた。
   リーダーであるトランペット奏者にアルトを入れたクインテット。
   リーダーは70年代後半から今まで、7枚のアルバムを本レーベルに吹き込み済み。
23・Louis Smith Quintet:There goes my heart:☆★
   爽快でオーソドックスなモダン・ジャズ。尖ったところはないけれど
   そつなくソロ回しを重ねる。リズムはクリアでノリはいいけど
   ごつっと骨太さは無し。クラブなどで食事しながら聴くのに似合いそう。
   滑らかなトランペットがまず耳に残る。

   葉巻をくわえて気取ったドラマーのリーダー作。96年にNYのミューズより。
   ニュージャージーにもって、週に一度は演奏してるみたい。
   3管編成。93年にニュージャージーのクラブで収録したライブ音源。
   セシルの店とは別の場所で。
22・Caceil Brooks III:Smokin' Jazz:
   気軽なオーソドックス・ジャズ。飯を食べながらのんびり賑やかに
   聴く感じか。そこそこハッピーで、そこそこクール。目新しい
   要素は特に無いが、単なるBGM+α程度の刺激は有り。
   BGM用より、ライブを見た客がお土産に買うとぴったりな盤かも。
   耳ざわりは良い。客へ媚びないが、滑らかにまとまってる。

2008/3/16  レコ屋へ行ってシングル一枚買って帰る。このパターンは珍しい。

   山下達郎、約2年半ぶりのシングルCD。新曲2曲と、カバー1曲。
   すべてタイアップつき。さらにカラオケが2曲のボリューム。
21・山下達郎:ずっと一緒さ (single):☆☆☆☆★
   "ずっと一緒さ"にまずしみる。のびのびと切ない旋律を歌い上げる。
   弦以外は達郎の多重録音だが、しみじみとバンドっぽいアレンジが素晴らしい。
   濃密ながら、小粋な"ラ・ヴィアン・ローズ"で寛がせ、切々たる"Angel of the light"を重ねる構成が嬉しい。この曲は打ち込みシンバルの響きも好き。
   2曲+ライブ+カラオケでなく、あえて3曲をコンバインしたEP盤っぽい構成が良い。
   ビニールを取ると、なんのタイアップだか分からなくなるデザインもさりげない気配り。

2008/3/9   ひさびさにジャズをあれこれ物色した。

   アグレッシブなピアノ・トリオ、なポップのあおりを見て購入。ベテランの
   白人トリオか。フランスのジャズみたい。03年の録音。
20・Andy Emler:Tee time:
   グルーヴとは逆ベクトル、3ピース編成でアンサンブルの妙味を志向する欧州ジャズ。
   アップテンポ一辺倒でなく、重厚に音を絡み合わすスローな展開も。
   時に大仰なほど、暗くまじめな展開を狙う。甘いメロディも
   豊かな心の象徴へとどまるかのごとく、くつろぎを許さない。
   時にアバンギャルドな行きかたは練られてると思うが、遊び心も欲しくなる。

   06年にリスボンで吹き込まれた。サックスにバイオリン、チェロ、コントラバスの
   編成でフリーをやってるらしい。音像が興味深く購入。
19・AMADO/Zingaro/Ulrich/Filiano:Surface:☆☆
   スティーブン・ショアーに捧げられた。おそらく70~80年代にアメリカの
   原風景などの撮影で活躍の写真家だろう。アルバムにも数点の、日常写真が
   使われている。実際にジャケへ使用の写真はサックスで本作のリーダーを務め、
   写真家でもあるロドリゴ・アマド自身が撮影した。
   無作為な即興が淡々と続く、ストイックな仕上がり。ビートはほとんど強調せず
   時にメロディすら曖昧な音が無造作に絡み合う。
   かなり譜面のようにも聴こえるし、完全即興らしき場面も。
   まじめにインプロと対峙したい時に似合いそう。聴き手へ緊張を迫る。
   アンサンブルの醍醐味ではなく、硬質の平行線が志向か。

   01年のベルリン録音。歌入りアフリカ音楽系の黒人バンドだろうか。
   ゲストでジャン・ポール・ブレリーが加わった。
18・Ayibobo:Stone Voudou:☆☆
   全曲がブレリーの作曲(共作も数曲あり)なためか、どっぷりアフリカンな
   ムードではない。ブレリーはブルーズ的なアプローチも盛り込んだため
   グリオとも違う独特の中途半端なアフリカ的グルーヴが生まれた。
   それを楽しめるかで本盤の価値が変わる。手慣らしセッション的な
   立ち位置の不安定さを感じてしまった。ギター弾きまくりでも
   アフリカン・ビートとがっぷり組み合いでもない。互いのバックボーンを元に
   ミクスチャーを試みた程度で、足踏みしてるような。

   ギターとドラムのデュオ。フリー寄りを期待して購入。
   06年の録音。NYのレーベルから発売された。
17・Rob Price & David Grollman:Get lost:☆☆
   全体の印象は静謐さと滲む混沌。
   無造作なドラムとギターのインプロ。対話より流れを互いにつかみ合い、
   いっきに雪崩れる傾向か。個々の瞬間より一連のノリへ身を任せる楽しさ。
   エレキギターはほんのり歪んでるが、ノイジー一辺倒ではない。
   ドラムは連打場面でも喧しくない程度の音量で聴いている。
   もっとボリューム上げて聴いたら、印象変わるかも。
   ノリ一発と思うが、いたずらに長尺は志向せず、ほどほどにまとめるバランス感覚有り。

   58年に録音されたプレスティッジ盤。ドラムがリーダーのトリオ。
16・Roy Hanes with Phineas Newborn,Paul Chanbers:We three:☆☆
   遅めのテンポで淡々とジャズ。過激さは無く、あっけらかんと聴けてしまう。
   粘っこくポップなニューボーンのピアノがおとなしい。
   ドラムのリーダー作とはいえ、さほどリズムは前面に出さず。
   ときおり鋭く揺らす、ポール・チェンバーズのベースが一番の聴きものか。

   男性ツイン・ボーカルを取り入れたジャズ。リーダーはピアニストで、ワンホーン編成。
   94年のNY録音を96年にリリースした。
15・James Williams & ICU:Truth,Justice & the blues:
   上品なジャズ。粘っこい要素を兼ね備えながら、燃えない。
   スキャットをひしゃげた声で歌う二人の男性歌手が捻っても、
   サックスはきれいに鳴ってしまい、ピアノはあくまでも穏やかに支える。
   ドラムはクールに刻むのみ。もっとはじけてたら好み。
   ジャズ・クラブでオーソドックスなハコバンBGMとして聞き流してしまいそう。
   タイトルが象徴するように、まじめで破綻が無い。隔靴掻痒、もどかしい。
   耳なじみはいいので、BGMには最適か。

2008年2月

2008/2/29   アップしそびれた2月に購入盤を。

   ついにリリースされたMUMUの1st。まぼろしの世界から。録音は05年1月23日だが
   発売に至らず、今日まで来た。単に生演奏をスタジオ録音でなく、音の加工や工夫も
   そこかしこで聴こえる。無音の"Intermission"を入れるセンスが良い。
14・MUMU:2005:☆☆☆☆
   なんのてらいも無く、あっさりと柔らかな音色でアルバムをまとめた。
   常に進歩を続けるMUMUの第一段階。メロディをタイトなビートが突き刺し続ける。
   トロンボーンの音色やミックスで定位やパンニングなど、スタジオならではの
   処理も施してはいるが、基本は無造作に音楽を封じ込めた。
   細部まできれいに聴き取れ、3人の音が滑らかに溶け合う。
   ライブ以上に精密ながら、独特のグルーヴはきっちり。聴くたびに発見がある。

   植村昌弘がライブのみで販売する「無印」レーベルの作品。
   パーカッション音源と打ち込み音源をミックスさせた。06年8月の録音。
13・植村昌弘:膜と理由:☆☆☆
   打ち込みより生楽器演奏の印象が残る。メロディアスで正確ながら、断片の
   印象がつよい。深い響きのタム回しに和太鼓へ通じるトーンを感じた。
   全てアドリブだろうか。強固なテンポと構築性は通低する。
   硬く響くドラムの音が気持ちいいな。
   最期はじっくりと幕を下ろす。

   これも「無印」レーベルの盤。06年8月の録音。
   ドラムソロに後から打ち込み音源をかぶせる、というコンセプトらしい。
12・植村昌弘:葉月:☆☆☆★
   複雑だけど、ポップ。シンセのくっきりした音色が、タイトなドラムと絡む。
   変拍子でぐねぐね動く一方で、隙間も含んだすっきりな出来。
   曲調はバラエティに跳んでおり、ビートがきついわりにダンサブルさは無し。
   相反する要素を見事にまとめた、植村のバランス感覚が良く出た好盤だ。

   HEMLENつながりな、植村昌弘と恵良真理のデュオ。CD-Rでおそらく07年発売。
   4曲入り。録音とマスタリングは植村自身がつとめた。
   プロデュースはHEMLEN名義。1st録音のアウト・テイクかな?
11・恵良真理x植村昌弘:恵良的融合:☆☆★
   植村らしいシャープでロジカルなリズムにのって、植村のキーボードが
   粘っこくメロディを紡ぐ。合間を涼やかな恵良のヴァイブが駆けた。
   植村色が強く感じたが、デュオゆえの涼やかなグルーヴも確かにある。
   タイトで高速のユニゾンが連発のアンサンブルながら、中間部はアドリブ・ソロっぽい場面も。

   07年7月8日に渋谷O-nestでのデュオ・セッションをDVDで発売。
   まだきちんと見ておらず感想は控えるが、ファン向けの作品だろう。円盤から。
10・吉田達也+外山明:Drum duo:

   細野晴臣がビル・ラズウェルによるアンビエント作。互いの素材を元に
   録音しあった。1996年の作品。
9・細野晴臣&Bill Laswell:Interpieces Organization:☆☆☆
   じんわり重たいアンビエント・テクノの盤。リミックスも同時収録し、
   コンパクトな印象を受けた。メロディよりもリズムやフレーズの連続性で
   酩酊感を促す。リミックス無しでEP扱いのほうがシンプルだったかもしれない。
   どのへんが細野でどのへんがラズウェルかの区別はいまいちつかず。

   バッハ"G線上のアリア"をサンプリングし、全世界で大ヒットを飛ばしたという
   "Everything's goona be alright"を収録。
   ジャケは見覚えあったが未聴だった。1996年の発売。
8・Sweetbox:Sweetbox:
   耳ざわりは良いが、空虚にダンサブルなヒップホップ。ちょっと興味とは
   違う。クラシック要素を取り入れたのも、当該ヒット曲以外はほぼ無し。
   "No,No"でバイオリンが若干の凄み役をつとめてるくらい。
   アルバム全体を流して聴いてたら、気持ちが萎えてきた。

2008/2/11    ひさびさにレコ屋を物色。買いたいのが色々出てるなあ。

   TZADIKよりジョン・ゾーンの作曲を集めたシリーズの一環として。07年発売。
   バイオリンのソロ、パーカッションのソロ、室内楽と現代音楽を収録。
   ジョン・ゾーンは作品提供のみで、演奏には参加せず。
7・John Zorn:From Silence to Sorcery:☆☆
   ファン向け。複雑系のゾーン。40分足らずの収録時間で、あっけなく終わる。
   現代音楽で味わおうにも、あまりにそっけなく冷徹だ。
   前半8曲はバイオリンのソロ。02年のハロウィンに書かれたとある。
   即興めいた混沌が短い時間に浮かんでは消える。スピードを合えて抑え、
   スローモーションを狙ったか。インナーに1曲の譜面あり。
   かなりハイテクニックを要求されそうな、トリッキーな様相だ。
   9曲目はドラムのソロ。魔術がテーマらしい。きっちりピッチを取った
   ドラムを、淡々とかすかなメロディを匂わせて叩く。即興と判別しがたいが、
   端正な響きの曲なことは間違いない。00年の作品。
   10曲目が五重奏室内楽。97年の作品とある。
   録音は、今回改めて行われたのかな。断片が浮かび上がっては
   次へ溶けゆく、抽象的で冷たさに叙情の断片を押し込んだメロディが
   散発的に漂う。ゾーンの歪んだロマンティシズムとクールな構築性を
   兼ね備えた作品。盛り上がりはなく、細切れを編みこむ曲構造を楽しむには集中力が必要。

   富樫雅彦とスティーブ・レイシーのデュオ。92年の盤で録音は1年の11月に
   フランスでスタジオ録音された。互いの曲を半々づつ演奏している。
   黒田京子トリオの演奏で馴染みの"Haze"を収録した。
6・富樫雅彦/Steve Lacy:Twilight:☆☆★
   軽やかなフリー・ジャズ。メロディアスなパーカッションが、ソプラノ・サックスの
   甲高い音色と、静かに渡り合う。ビート感は控えめ、互いがまとわり
   つきながら高まってゆく。緊張感と形而上性も伺えるが、ひらひらと可憐に
   舞う隙間の多い音たちが、小難しさを薄めている。ふわふわと聴くも良し、
   細かいインタープレイへ熱中するも良し。

   吉増剛造、高柳昌行、翠川敬基が1984年に録音した盤の再発。録音クレジットや
   解説が無いのは痛い。当時を知らぬリスナーのことも考慮して欲しかった。
5・吉増剛造、高柳昌行、翠川敬基:死人:☆☆☆
   ポエトリー・リーディングへフリーで断続的な音が絡まる。スピード意識で
   メロディでなく弦の爪弾き中心な印象あり、音だけだとちょっと集中力がいる。
   リズミックなアプローチながら小音系で全体像が掴みづらいため。緊迫感を楽しむべき一枚。
   ベストは3曲目か。翠川のふくよかなチェロが高柳のエレキギターと絡む上で、吉増がまくし立てる。

2008年1月

2008/1/27   今月はCD買うのを控えてる。今月買ったCDはこの程度。

   MASSAの1stミニCDを購入。06年の発売で、作曲は全て佐藤正治。
   歌入りとインストで5曲を収録した。
4・MASSA:MASSA 1:☆☆☆
   アンサンブル・コンボというより、ボーカルのほうが耳に残る。比率だと
   5曲中2曲なのに。ほのぼのした印象がそこかしこから伝わった。
   ライブとはまた違う、MASSAの音楽を詰め込んだミニ・アルバム。
   難しいことを演奏してても、感触はしごくあっさり提示した。

   ウータンの新作がリリースされた。20分程度の映像入、おまけCD付。
   総合プロデュース、アレンジはRZAだが、トラックによってマセマティクスなど
   別プロデューサーも。数曲でゲストあり。ジョージ・クリントンやジェラルド・アルストン、
   エリカ・バドゥなど歌系のゲストが新鮮だ。
3・Wu-Tang Clan:8 Diagrams:☆☆☆
   角が取れて鷹揚な耳ざわり。ハイハットのタイム感は相変わらずカッコいい。
   テンポもゆったり、ラップも凄みをぐっと抑えた。でも滲むスリルがあるあたり、
   ウーの実力なのだろうか。クリントンが参加した曲は派手でよかった。
   エリカ・バドゥらの曲はあまりに甘すぎる・・・。
   マスタリングでつるつるに磨かれたサウンドは、あまり分厚くなく
   すっきりと響いた。代表作になるとは思わないが、良く練られてる。
   1stで大金持ちになってハングリーさが薄れ、アルバムを重ねるほど余技臭が漂うかのよう。

   一軍ゴーストフェース・キラの新作も。ソロは何周目に入ったのかな。
2・Ghostface Killah:The Big Doe Rehab:☆☆★
   大味ながらウーの一軍からレイクォンやメス、U-Godらも参加してきっちりした
   つくりに仕上げた。ほんのりラテン要素も交え、重心軽くほの明るさも混じる。
   初期のひりひりするスリルは減じたが、バラエティさを意識し
   多彩なアレンジを取り入れ、一応最期まで飽きずに聴ける。

   昨年に買ったはずだが、書き漏らしてたみたい。Avanから98年にNY録音でリリースした。
   ROVAのメンバーで、初(今のところ唯一)のリーダー作。ソプラノ・サックスによるトリオ・ジャズだ。
   バッキングはグレッグ・コーエンとジョーイ・バロン。
1・Bruce Ackley Trio:The Hearing:☆☆
   くきくきと鋭角に上下するフレーズが連発。ソプラノサックスを挑発的に吹く。アンサンブルの
   やりとりよりサックスを引き立てる、おとなしいバッキングに聴こえた。テンポが早く無くとも
   寛ぎや穏やかさを志向しないようだ。中空を漂うテンションが持続する。


2007年12月

2007/12/30   ネット通販で到着。

   フランキー・ヴァリの新作。出てたとは知らなかった。何年ぶりだろう。
   プロデュースはボブ・ゴーディオ、一部の曲ではアレンジがチャーリー・カレロ。
   往年のスタッフとの交流もきっちり続いて嬉しい。曲は60年代ポップスの
   カバー集かな。落ち着いたアレンジで、じっくり歌ってる。
339・Frankie Valli:Romancing the '60s:☆☆☆☆
   予想以上にヴァリの声は活き活きしていた。隅々まで丁寧な大人の
   アレンジを施され、ノスタルジーながら溌剌さは残る演奏。
   過去の財産をそっと優しく歌い上げた一枚。噛み締めると
   暖かな味わいが滲む。寛いで夜中に聴きたい一枚。
   BGMを越えたポップセンスがアレンジから零れる。
   王道ながら選曲も心地よい。基本はゆったりバラード気味に構成された。

2007/12/29   最近買ったCDをまとめて。ちょっと更新を溜めすぎた・・・。

   まずクラシックをあれこれ。ライブで聴いたラヴェルの弦楽四重奏が
   気持ちよかったので買う。他にピアノトリオやバイオリン・ソナタを集めた
   ラベル作品集のCD。96年に独Phillipsからリリース。
338・Ravel:String Quartet-Violin Sonata-Pano Trio:☆☆☆★
   繊細で玄妙な美しさの曲をしごくあっさり、かつ整然と紡ぎあげた。
   アンサンブルがまるで一本の太縄。すっきりと表面をコーティングしつつ
   滑らかに迷い無く伸び上がる。一丸と盛り上がる場面の清々しさが快感だ。
   ラヴェルの複雑できれいな作曲を、すっきりと聴ける演奏だ。

   ラヴェルの管弦楽集。61年にクリュィタンスがパリ音楽院管弦楽団を振った盤で、
   01年に日EMIが再発した音源。"ボレロ""スペイン狂詩曲"を収録。
337・Ravel:L'oeuver pour Orchestre(Vol.1),Cluytens:☆☆☆
   華やかな演奏で流麗な響きを楽しめた。細部まで瑞々しく、滑らか。
   ダイナミクスもぐわっと響く。"ボレロ"は幾度も聴いたが、改めて丁寧な
   作曲ぶりを実感。でもアルバム構成的には、一番最後に置いてほしかった。
   色々とラヴェルを楽しんだ後で、アンコール的に出てくるという。
   一番自分に馴染み深い曲なだけに。

   ショスタコーヴィッチの弦楽四重奏から、7~9番を収録した盤。
   演奏はBrodsky Quartet。コステロがらみで買ったわけでは、もちろん無いが。
   収録は89年かな?英ワーナー盤で、発売はおそらく01年。
336・Shostakovich:String Quartets Nos.7,8 & 9:☆☆☆★
   硬質な響きと歯切れ良い音切れが、重厚で爽快なブロドスキー・サウンドで
   アグレッシブかつ老獪に弦楽四重奏を聴かせる。
   ショスタコーヴィッチの響きは、力のこもったロマンティシズムが特長か。
   滑らかなメロディでも影をまとい、容易に心を開かない。
   張り詰めた緊張が漂い、背筋がぴんと伸びたイメージ。
   涼しげな美学が漂う作品だ。

   セルを聴きたくて購入。やっぱり、クリーブランドのオケでまず聴きたい。
   02年の英Sony盤。詳しい録音クレジットが無いダメ盤だが、(p)表示によると
   1965-67年にCBSへ吹き込んだ音源らしい。
335・George Szell:Cleveland Orchestra/Brahms:Symphony No.4/Academic Festival Overture/Tragic Overture:☆★
   隅々まで分離の良いオケ。マスタリングのせいか、ちょっと平板に感じてしまった。
   ダイナミズムが希薄でメカニカルな感触あり。
   録音時期やスタッフのクレジットも無い廉価盤へ、微妙なニュアンスを求めるのが間違いか。
   むしろ平行して収録した"Tragic Overture,op.31"のほうが活き活きと快演。
   くっきりステレオ感覚なのは確か。セルの指揮は絶妙にタイトと聞いていたが、
   第一楽章で微妙にオケを操って、旋律を歌わせる箇所も耳を惹いた。

   なんとなく面白そうで購入。伊バロック時代の作曲家、ボノンチーニの
   作品集らしい。ヴィオラ・ダ・ガンバ、リコーダー、バスーンなどの楽器を使った
   アンサンブルや、弦の室内楽などを収録みたい。88年と99年の録音を収めた
   2枚組で、オランダのJoan Recordsがリリース元かな。輸入盤で買った。
334・Bononcini:Divertimenti e Cantate da Camera:
   ディヴェルティメントのタイトルにふさわしい軽快な曲が並ぶ。
   ちょっと各楽器の分離悪い気がする。そこに古めかしさを感じてしまった。
   個々の曲分析できる知識は無い。そもそもの趣旨に基づき
   BGMとして聴くべき作品か。ぼおっと聴いてたらメリハリ少なく飽きてきた。正直なところ。
   滑らかにメロディが上下し、ふうわりと漂う。
   バロック風味のくっきりしたリズムを基礎に置き、主旋律はセンチメンタルな
   要素もある。強烈な求心力までは至らないかも。
   CD2は歌入り。ベルカント唱法へまだ馴染めぬため、なおさら敷居高し。
   曲はこっちのほうが滑らかで心地よいけれども。

   吉田達也がグルグルのマニ・ノイマイヤーとデュオした新作アルバム。
   日本盤を買った。録音やミックス、マスタリングももちろん吉田達也。
333・Manitatsu:Reason for travel:☆☆
   ファン向け。リズム・デュオが延々と続く。短尺な即興で退屈へ陥らない工夫はあり。
   しかし双方がグルーヴを意識せず、パルス・ビートを寛いだようすで
   ずうっと続くさまは、かなり聴きとおすのに集中力がいる。
   ライブでは視覚的な楽しみもあったが。本盤では途中にパーカッションのデュオなど
   構成へ気を配ってるのもわかる。しかし即興のみが逆に単調さを招いた気も。
   明確な曲でメリハリをつけるか、音色やビートの対決でもあったらアルバムの完成度は
   異なったと思う。しかしこの無造作さがマニタツかもしれない。
   ライブでもほんとうに自由なデュオだったから。パーカッション・デュオのコミカルさも
   あったが、アルバムではむしろシリアスな雰囲気が強かった。

   映画のサントラ。99年の盤で板橋文夫が音楽監督。鬼怒無月や太田惠資、
   芳垣安洋、片山広明、田村夏樹らが参加した。
332・OST:孔雀(KUJAKU):☆☆☆
   アドリブを期待すべきではない。(6)でちょっとそれっぽいのが聴けるが。
   あくまで板橋文夫が音頭を取った、ロマンティックなアンサンブルを楽しむ盤。
   ほんのりエスニックな妙味を振りかけた、スケール大きな曲調が良い。
   特にテーマ・ソング。ライブで聴いてみたくなった。
   音が硬くちんまりとミックスされてしまったのが残念。

   詳細不明。サックス二管とドラムのトリオで、即興と曲をやってるようだ。
   1992/1/31、東京の"フルハウス"でのライブ音源より。
   参加ミュージシャンのケニー・ミリオンズ(sax)は詳細な経歴が不明。
   梅津和時と豊住芳三郎が迎え撃つ。CD-Rでの発売。
331・Millions-Umezu-Toyozumi:Soul Brothers:☆☆☆
   けっこう奔放なフリー。メロディやリズム・キープにこだわらず、豪快な
   ブロウが隙間大きく広がる。切ったはっただけじゃなく、どこかユーモラスな
   インプロを詰め込んだ。ライブならではの、うねっていく展開が聴きもの。
   音質はちょいとこもり気味かな。

   大友良英がカール・ストーンとDAT音源を交換/編集加工しつつ作った作品集。
   94年にリリース。ライナーは大友とストーンの交換メッセージも収録された。
330・大友良英/Carl Stone:Monogatari:Amino Argot:☆☆★
   コラージュをさらにコラージュし、ミックス・アップでなく
   素材に化粧を施し変貌する妙味。ノー・ビートのコラージュ作品が、
   前のめりのテクノ風へ変わった。スピード感を抑え、スリルよりも
   アイディアの細部を楽しませるのがコンセプトか。

   いわゆる"名盤"だろか。初めて聴く。ケニー・ドリュー(p)が
   ポール・チェンバーズ、フィリー・ジョーと56年にリバーサイドへ
   吹き込んだトリオ編成。92年の米Fantacy盤を購入。
329・Kenny Drew:Kenny Drew Trio:☆☆☆★
   バラードやミドルでのロマンティックさがポイントか。
   じっくりと跳ね、ふくよかに丁寧なアドリブが零れる。
   ブルージーながら泥臭くなく、洗練された感触。
   どこかぎこちないアンサンブルがグルーヴなんだろうな。
   ピアノは明るく甘く響き、ベースは幾分リラックス。そして
   ドラムはの刻みはクールに聴こえた。

   アルジェリアあたりのポップ音楽、ライ。今まで聴いたことなく
   ためしにコンピ盤を買ってみた。97年に出た4枚組(仏盤かな?)を
   メタ・カンパニーが日本語帯付きで発売した。
   詳細が不明だが、代表的なライの歌手は入ってるらしい。
328・V.A.:Maxt Rai:☆★
   安っぽく分厚いシンセのアレンジに腰砕け。こぶしの違和感とピッチは
   馴染み無い文化の価値観だから、もっと親しめば印象変わるはず。
   ときおり収録される生音中心の演奏のほうが、落ち着いて聴けた。
   妙にハイなテンションがアルバム全般を覆う。常に揺らぐグルーヴが独特だ。
   個々の曲は耳をひくサビより、全体的な流れで聴かすみたい。
   解説や発表年度もあやふやで、資料性の低いライナーが残念。
   廉価盤とはいえライへ親しみ持たせる、丁寧な作りも欲しかった。
   同じミュージシャンもバラバラに収録され、マスタリングの音質もまちまち。
   選曲のストーリー性も、いまひとつ理解できず。
   Cheb Kader"Rani Bghit Bladi"がいい曲だった。

   久しぶりにアフリカ音楽を聴きたくて買ったが、良く見たらこれもライのようだ。
   89年に発売された男性シンガーの盤。詳細はもちろん不明。
327・Charef Zerouki:Ghozali/My Gazelle:☆☆☆
   安っぽいシンセによる軽い作りなサウンドではあるが、歌声に張りがあり
   楽しんで聴けた。こぶしがむしろあっさりめなせいか。
   ライの知識がないぼくも、馴染める音楽。

   リーダーはオリバー・レイク。03年にデンマークをツアーした4人編成
   (現地のミュージシャンかな?)と録音したスタジオ盤。各メンバーの曲も
   演奏している。06年のリリース。
326・Lake/Tchicai/Osgood/Westergaard:Lake/Tchicai/Osgood/Westergaard:☆☆
   パルス・ビートと不穏なベース。アフリカンな要素を伺わせつつ、
   根本でダンサブルさを拒否するノリは理知的を狙ったか。
   ビートはタイトでもなくグルーヴィでもなく、中途半端な連続性で漂う。
   アドリブも奇矯さが目立ち、頭でっかちさを否めない。
   オリヴァー・レイクがどこまでコンセプトをメンバーへ提示したか
   不明だが、少なくともかなりクールさが空回りした。
   構築度ではオリヴァーのオリジナルの(2)、唯一唐突に
   明るく軋んだハード・バピッシュなファンキーさを聴かせる(8)が聴きもの。

   ユーゴスラビアのジャズかな。ジャケ買いした。サックスのトリオに
   スクラッチのDJが入るユニークな編成。Sextet名義だが、実際はカルテット。
      00年の発売。音源は98年、ユーゴでの2箇所のライブ音源から収録した。
325・Menson Benson Sextet:Sharpenin' the Milestone:☆☆★
   熱気が無いのは物足りないが、スクラッチのビートとあわせ、すいすいと
   グルーヴが流れてゆく。大音量のライブを体験したら、おそらく印象は好意的に変わる。
   コルトレーン・スタイルでずるずるとテナーが流れ、リズム隊と豪快な
   インタープレイは少ない。アイディア一発のコンボだが、スピーディさで楽しく聴けた。
   (9)の不穏なジャムがもっとも好み。テンポは別にしても、この色で染めたら名盤となったはず。
   
   NYニッティング・ファクトリーでのライブ音源を収録した。
   声とパーカッションの即興が交錯するのかな。02年の発売。
324・Dalachinsky/Ughi:I thought it was the end of the world then...:
   抑揚のある朗読に、無造作で抽象的なパーカッションが淡々と鳴るだけ。
   かなり退屈な展開だ。その場にいたら感想違うかもしれないが。

   スウェーデンの6人編成ジャズ・コンボかな。詳細不明。07年の発売。
323・Klabbes Bank:Kalsater:☆☆☆☆
   ミニ・アルバム。端正なアンサンブルが心地よい。ソロよりもアレンジの
   優美で端正な響きにまず惹かれた。がむしゃらに音を重ねたりせず、
   丁寧に木管を選び、ピアノを挿入する。クレジットは読み取れないが
   編曲や作曲のテクニックが素晴らしい。誰の作品だろう。
   例えば(7)の開放的な進展、(4)の整った構造、
   (8)のロマンティックさなど聴き所多い。
   突出した個性ではなく、テクニックで裏打ちした全体像で組上げた作品。

2007/12/22   最近購入したCDをまとめて。

   78年発売の作品が、ついに初CD化。待ち望んでいたので、強烈に嬉しい。
   ホーン隊や弦を交え、ゴージャスに作られた。トロンボーンでシカゴの
   ジェイムズ・パンコウが参加。
322・Leon Russell:Americana:☆☆☆☆
   さほど音のヌケがいいとは思わないが、なによりCD化が嬉しい。
   大味なアレンジなところも確かにある。しかし瑞々しい
   音楽がつまっている、快盤だと今でも思う。分厚いアレンジの
   ポップスが好きな人にはぜひ。
   南部っぽさを洗練でなく、華やかな志向でまとめた一枚。
   冗長な曲がもうちょい締まれば、完璧な盤なのに。

   奥さんとのデュオの2作目。4人のドラマーを曲によって使い分け、
   ギターとベース、キーボードはほぼレオンが多重録音した。77年発表。
321・Leon & Mary Russell:Make love to the music:
☆☆☆★
   メロウで溌剌なデュオが行き交う爽快な盤。しゃがれたレオンの声が
   いいアクセントとなる。マリーのほうは伸びやかだが、さほど癖が無い。
   ひょこひょこしたシンセに時代を感じる。でも前のめりなドラムと、がっつり
   グルーヴを叩きだすレオンのベースが織り成すリズムはなかなか良い。
   スワンプ色強い曲より(1)、(4)、(5)、(7)、(9)など華やかなほうが好み。
   レオンの志向とは真逆かも。スピード感が心地よい(5)がベストか。
   (9)のほのぼのさや、西海岸ポップな(4)も面白いなあ。

   菊地成孔の新作は6人編成のコンボ・ジャズへダブを施したバンド。
   まっとうにストレートなジャズを提示するアルバムは、ある種キャリアで
   初だと思う。それでいて、演奏は加工され一筋縄では行かない。
320・菊地成孔 Dub Sextet:The revolution will not b computerized☆☆☆☆
   ジャズのスタイリッシュさに満ちた一枚。作り物っぽさを逆手に、優美さを緻密に構築した。
   菊地のサックスが存分に聴けると思いきや。ダブを駆使して、そう簡単にはいかない。
   冷徹なクールさを前面に出し、取っ掛かりをそぎ落とした。
   さらにダブで浮遊感と不条理さを強調する。実際には菊地のエレガントなテナーもどっぷりあり。
   本盤ではダンサブルさよりも、フリーと惑うつんのめったノリを前面に出した。
   過去を引き絞り新たなステップへ。強靭なドラムを足がかりに、
   瑞々しいパワーを噴出させる。それすらもダブで押さえ込む捻りっぷりが
   多面性をよしとする菊地の真骨頂か。
   ストレートは避け、変化球と癖球の集合体で、ど真ん中を演出する。

   他界してなおリリースが続くフランク・ザッパの新作。膨大なテープから
   掘り起こされたのは、1972年のザッパ・バンド。"Ground Wazoo"に繋がる
   大編成の演奏だ。全く聴いたこと無いので楽しみ。
319・Frank Zappa:Wazoo:☆☆☆
   演奏はどこかヌルく曲間もあり。ザッパにしてはまったりなライブだ。
   低音が軽く、のぺっと平板な印象のミックス。ザッパが存命なら本音源をどう編集したろうか。
   各楽器のソロも長尺で現代音楽的なアプローチ。
   ただし希少性は別。プチ・ワズーの様相を追体験できる意味では、本盤は本当に嬉しい。
   ということでマニア向け。"グランド・ワズー"をまずお薦めする。

   ZABADAKの吉良知彦の個人レーベルから出たコンピレーションで、
   周辺ミュージシャンの作品を集めた。原マスミ、太田惠資ソロ、Lovejoy、新井昭乃など
   興味深い顔ぶれが並んでいる。1995年リリース。
318・V.A.:Songs:☆☆
   ほのぼのスケールが大きいポップスを、エコーたっぷりの音像で
   ゆったり綴ったコンピレーション。ふくよかさが共通テーマか。
   趣味の問題だが、もうちょいスリルあるほうが好み。
   興味あった太田惠資の楽曲はすごく面白い。捻ったメロディもさりながら、
   甘く滑らかなボーカルが、すごく意外だった。後半のバイオリンや
   ヴォイスで、彼の強靭な個性が滲んでくるけれど。

   60年代前半、アメリカのガール・グループを集めたコンピ。
   英サンクチュアリから02年にリリースの3枚組廉価盤。超有名曲も
   あるが、珍しい曲もありそうだ。少なくともこの曲名やミュージシャンを見て
   「***系の盤を集めた」と即答できぬ、ぼく程度の知識ならば
   勉強の意味も含めて楽しめそう。もちろん、サウンドも面白いはず。きっと。
   作曲者とレーベル、発売年くらいはクレジットあり。ライナーに簡単な英文解説付き。
   サウンドのクオリティはまちまち。いい音もあれば、こもった曲も。
317・V.A.:Chapel of Love and Other Great Girl Group Gems:☆☆☆★
   有名無名をごっちゃに混ぜてるのかな。このジャンルは詳しくなく詳細はわからず。
   スペクター的ゴージャスなアレンジの曲も多く、味わい深いコンピに仕上げた。
   ややこしいこと考えずシンプルにBGMで楽しめる。キュートな曲が多くて良い。

   05年に英アクロバットがリリースした、50年代初期にテキサス州で録音された
   ゴスペルのコンピ。えらくマニアックな企画で、SP盤起こしとある。
   ボーカル・グループを集めた。全員の音楽をはじめて聴く。
   ヒューストンのDuke/Peacock音源のようだ。07年12月現在、第二弾は未リリース。
316・V.A.:Texas Gospel Vol.1~Come on over here:☆☆☆★
   マイナー・グループだからと侮れない。いなたくも骨太な無伴奏カルテット式
   ハーモニーを片端から味わえる。SPノイズ除去処理も施された。
   初心者には薦めないが、ゴスペル好きには応えられない快盤。
   まとめていろんなグループが聴けるのもうれしい。
   歌がぶれたり、録音が危うかったり。細かい瑕疵はさておいて。
   炸裂まで行かぬが、洗練でもない。じわじわな熱狂を野太い雰囲気で
   歌い継ぐパワーを、どの曲からも感じられる。
   これは、という名曲は無いが、一定の曲の粒は揃った。

2007/12/1   最近買ったCDをまとめて。

   メルツバウの新譜が2枚発表された。
   本盤はウクライナのレーベルから。500枚限定。近年のアニマル・ライツの
   主張を前面に出した作品のようだ。
315・Merzbow:Peace for Animals:☆☆☆★
   アナログ・シンセがうにょうにょと動く。ハーシュは背景へと一歩引き、
   全体に明るいイメージの作品となった。
   ラップトップ・ループ主体から自作楽器含めたアナログ系の混載に軸足を移したスタジオ作。
   1曲目で軋み音のノイズが、雅楽的なフレーズを提示する場面は鮮烈だった。
   そのほかにもハーシュの森から、ぎゅっとメロディが登場もあり。

   Borisとの共演ライブを2枚組にまとめた。主導権はボリス側かな。
314・Boris with Merzbow:Rock Dream:☆☆☆☆
   メルツバウとロックの理想的な蜜月。実際のライブは分からないが、本盤では巧みに
   ミックスやバランスを施し、ノイズ鳴りっぱなしの轟音混沌音像へ
   陥るのを見事に避けた。ノイズはフィードバックと同質の効果であり、スリルであると
   本盤は雄弁に語っている。重たく、引きずるロックのダイナミズムとカタルシスを、メルツバウは素晴らしく表現した。
   ボリスとの共演の中でも、格別の一作で飛び切りの傑作。

   元GbVのロバート・ポラードが、新譜を二枚同時発表。すさまじい
   リリース・ラッシュは衰えじ。プロデューサーは馴染みのトッド・トビアス。
   演奏もほぼ全て、トビアスが担当した。曲調によってアルバムを分けたか。
313・Robert Pollard:Coast to coast carpet of love:☆☆☆☆
   ライブで演奏が映えそうなポップでくっきりアレンジされた曲を集めた。
   曲数は多いが、40分足らずのコンパクトなボリュームも過剰になりすぎずありがたい。
   GbV時代とは異なり、ライブを意識したコンボ・アレンジでもパーソナルな
   要素を残し、ソロの立ち位置を強調した。地味なジャケットではあるが、
   どれも耳へ残る佳曲をずらり並べた好盤。

312・Robert Pollard:Standard gargoyle decisions:☆☆☆
   こっちはロバート流の前衛作品をコンパクトにまとめた。
   あちこち捻った曲が詰まった作品。統一性などなんのその。違うアイディアが
   秒単位で披露される。トビアスがきっちりプロデュースし、音質やアレンジの根底は
   整然とまとまった。良し悪しは別にして、聴きやすいのは確か。
   無造作にロバートはシャウトし、メロディだって作りっぱなしな印象も。
   でも、楽しい。支離滅裂な思考回路をそのまま音像化したがごとく。

   エルトン・ディーン存命中、彼とヒュー・ホッパーが来日。
   ホッピー神山と吉田達也と03年に録音したスタジオ盤。07年に
   英Hutからついにリリースされた。全て即興の模様。
311・Soft Mountain:ソフト・マウンテン:☆☆
   フリーに展開。ヒュー・ホッパーが僅かに主導権か。決して全員があさっての
   方向へ拡散せず、一つのうねりを睨みながら進む。エルトンは時に神経質なほど
   やせ細ったサックスを軋ませる。スペースを作ることもあるが
   基本は吹きまくりかな。吉田達也は手数はともかく、テンションは控えめ。
   アンサンブルを尊重した緩急を魅せた。むしろホッピー神山が手控えな印象も。
   全編が無造作なインプロ。部分的に耳をそばだてても、総合では散漫な感触を受けた。
   個人的に、この手のプログレへ無頓着なせいかも。

   カルメン・マキが板橋文夫、太田惠資とトリオ編成で繰り広げてきた
   ライブが、ついにCD化された。オリジナルとスタンダードをレパートリーに。
   板橋と太田のインストも2曲収録。07年発表。
310・カルメン・マキx板橋文夫x太田惠資:時には母のない子のように2007:☆☆
   歌が前面に出たため、太田と板橋の即興を期待したら拍子抜け。
   2曲のインストも、至極あっさり終わってしまう。ライブでは
   違う感想持つかもしれない。マキの叙情的な歌声を前面に出したアルバム。
   ベストは"Over the Rainbow"かな。アドリブでテーマを強烈に打ち出す
   エレクトリック・バイオリンの迫力が痛快だ。

   サックス奏者のカルロ・アクティス・ダートが太田惠資、立花泰彦と共演した
   01年大阪でのライブから1枚にまとめた盤。英LEOから02年リリース。
309・TAO:Tomorrow night gig:☆☆☆
   場をきっちり作る太田/立花に対し、ずるずると吹きたらすサックスが若干浮くか。
   明確な音場は作らず、セッション的にジャズ~アラブ~フリーを行き来する。
   この顔ぶれならサックスしだいでオリジナリティを出せるはず。ちと物足りず。
   うねるジャズが根本の志向かな。録音はほんの少しこもり気味。
   太田ファンは聴いて損が無いアルバム。バッキングとフロントを自在に行き来する
   さまがまじまじと聴ける。

   アルゼンチンの音響系(?)音楽らしい。詳細不明だが面白そうなので購入。
   エレクトロとアコースティックが混在という。07年の盤。
308・Emilio Hazo:PANORAMICO:☆☆☆★
   メロディは希薄に、SEやささやかなノイズの音色をループ風にうまくまとめ、
   心地よい浮遊感を表現した。音響系と滑らかな即興音楽のはざまを漂う。
   しかしこれ、どこまでが即興要素だろう。多重録音はしてそうだが、基本はコンボ編成。
   リズムやリフを明確にせず、爽やかに音を重ねてゆく。
   抽象的な音像がきれいなアンビエント。

2007年11月

2007/11/13   ここ最近買ったCDをまとめて紹介。

   福岡を中心に活動する歌手/ピアニスト、深水都の自主制作盤。本作が2ndで
   いいんだろうか。4曲入りCD-R。チェロとのデュオなど、スタジオ録音か?
   全てオリジナル。共演者のクレジットは見当たらない。盤デザインもおそらく本人。
307・深水都:(タイトル無し):

   ジャケ買い。ノルウェーのジャズらしい。裏ジャケの不適な面構えが気に入った。
   94年の発売でポーランドのGOWIレーベルから。5人編成。
   リーダーはアメリカ人でトランペットやギターなどを演奏している。
   ニルス・ペッター・モルヴェルやブッゲ・ウェッセルトフトらが参加した。
306・Dennis Gonzalez Band of Nordic Wizards:Welcome to us:☆★
   なんとなく混沌や猥雑なジャズを期待したが、クールさを保ったサウンド。
   音が分厚く感じる場面も。メロディは涼やかで、タイトに刻むドラムを筆頭に
   すべらかに進んで聞く。(7)が好み。

   仕切りはアンドリュー・シリルか。オリバー・レイクの名へ惹かれ購入。
   95年の日本製昨盤で、アフリカ録音にこだわり吹き込んだらしい。
   デヴィッド・マレイも参加した。
305・African Love Supreme:Ode to the living tree:☆☆
   アフリカ風味はうっすらと。予想よりもストレートなジャズだった。
   ロマンティックな(3)あたりから演奏へ惹かれる。
   ずるずるとひきずるフレッド・ホプキンスのベースがちょっと好みと違うかな。
   フリーもビート物もスマートにこなすアンドリュー・シリルの
   刻みといまひとつ調和せず。ホーンはさほど覇気無し。まずまずか。

   手ごろな価格で見かけたら買ってる、ビル・フリゼール関連盤。
   89年のリーダー作で、6人編成の録音。1曲をジョン・ゾーンがアレンジした。
304・Bill Frisell:Before we were born:☆☆☆
   硬質なサウンドに仕上げた。自分のバンドによる演奏を中心に、
   アンビシャス・ラバースや、ジョン・ゾーンとの交流で断片かつスリリングな
   音像をはさみ、ソロ回しよりもアンサンブルを志向した。
   ゾーンの大作がイメージ強く、若干散漫な印象が残る。
   全般的にはレーベル移籍でさまざまな要素の音楽をしたいフリゼールの
   意欲がつまったアルバム。

   本盤は90年のリーダー作で、プロデュースはウェイン・ホーヴィッツ。
   カルテット編成ながらベースレス、チェンバロが加わった変則アンサンブルだ。
303・Bill Frisell:Is that you?:☆☆
   アンサンブルよりスペイシーなエレキギターのソロが印象に残る、静かな盤。
   (10)などでコンボ形式ながら、かなり構築された構成だ。
   抑えたパワーを炸裂させず、溜める美学か。"In Line"の続編めいた音像。
   個性的なメンバーを集めたが、あくまでもギターへ焦点を当てた。
   幽かに煌びやかなフレーズ使いを聴かせる。

   リリースは98年。ビルは一歩引いた立場か。ピアニストとのデュオで、
   スタンダード集らしい。ノンサッチからの発売。
302・Fred Hersch + Bill Frisell:Songs we know:☆☆
   耳なじみある曲を、根本のメロディ・ラインから逸脱せず滑らかに展開する。
   二人の手馴れた貫禄で聴かせるアルバム。細かく耳を澄ますと、伴奏役とアドリブや
   メロディの分担、リズムの交錯など丁寧なアレンジが施されてるとわかる。
   聞き流すもよし、細かなインタープレイを楽しむもよし。複層の楽しみが出来る。
   根本的にスリルを追求しない分、物足りなさも残るが。

   01年に発売したビルとデイブ・ホランド(b)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)との
   トリオ編成盤。がしがしなジャズの展開だろうか。
301・Bill Frisell:with Dave Holland and Elvin Jones:☆☆★
   激しいインタープレイは控え、ビルの音楽性が前面に出た。
   どこかゆったりのんきな調子を残し、カントリー要素も漂う。
   アコギとエレキをビルは使い分け、寛いだサウンドへ仕上げた。
   ソロの交錯もあるが、セッションでなくビル主導のインストな印象。
   なぜこの二人を、と思う。細かく耳をそばだてると興味深い
   アンサンブルだが、デイブとエルビンである必然性は薄い。

   メルツバウ関連盤。沢口みき(voice)に1st収録のタイトル曲からのシングル的位置づけか。
   リミックス、全長テイク、ライブ・テイク、の3種類をまとめた。
   00年にアルケミーからリリース。秋田昌美はリミックスのみに参加した。
300・沢口みき+JOJO広重+秋田昌美+大野雅彦:子宮と人:☆☆☆
   舌足らずでオンマイクの語りを沢口みきが喋る。滑舌や発音が
   舞台の素養無いことを、どう評価するか。(1)はメルツバウらのハーシュへ飲み込まれそうな
   不安定な役割と解釈するなら、このアプローチはあり。
   メルツバウは棘棘しいハーシュをほぼ休み無く左でぶちまけ、JOJO広重は唸る
   エレキギターで右チャンネルを埋め尽くす。左右くっきりと奏者を分けた。
   (2)は中央に歪みまくったギター・ノイズを付け加え、凄みを増したリミックス。
   かすかに左でシンセっぽい高めのベースラインが聴こえる。クレジットでは
   それらしき楽器が見当たらず。幻聴だろうか。
   (3)のライブテイクは、尾谷直子のドラムが入り前のめり感覚くっきり。沢口も明るく
   シャウトし、生々しい出来。言葉が聴き取り辛いが、音はハーシュながら分離良い。
   このテイクが本盤でベスト。叫びとギターノイズが溶ける瞬間にぞくっときた。

   灰野敬二率いる不失者の10作目あたりか。96年録音でトリオ編成。
   徳間ジャパンからリリースされた。吹き込みはロンドンにて。4曲入り。
299・不失者:来る時:☆☆☆★
   4曲入りで前半2曲がソロ?前半はドローンのように歪んだギターがえんえん
   うねり、灰野の歌が静かに入る。轟音で聴くほど凄みを増す。スピーカーで
   空気を振動させながら聴きたい。びりびりと張り詰めた雰囲気が素敵。
   後半の(3)はバンドスタイルで淡々と音像を唸らせつつ、くっきりと灰野が歌う。
   ギターのリフはみりみりと輪郭を蹴散らし、震える。ベースはのっぺりと空気を
   這うようだ。バンド形式だと、もうちょい展開が欲しくなるのが不思議。
   中盤でのゆったりしたギター・ソロのフレーズが冷徹に美しい。
   最終曲も終盤まではギター・ソロな趣き。フィードバックが荒れ狂い、
   ノービートで猛烈に吹きすさぶなか、灰野が言葉を鋭く紡ぐ。
   CDを通して基調が単色なため、集中しないと聴き流す。壮絶なテンションの持続を楽しむ盤。

   ジョン・ゾーンが比較的最近に稼動させたプロジェクトの1st。06年に発売。
   マイク・パットン(vo)、トレバー・ダン(b)、ジョーイ・バロン(ds)との
   カルテット編成。クレジット上では、ゾーンは演奏に参加しておらず。
298・Moonchild:Moonchild:☆★
   ドラムとベースはさほどスピード感ない。テンポが速くても、ゆったり希薄な
   印象あり。ほぼ全て、譜面ありそう。スタート&ストップはその場で
   ゾーンがキュー出しかな?パットンの喉を絞るシャウトも、根本でスリルは無い。
   ジョン・ゾーンにしては鋭い外見ながらも、スリルが控えめ。
   パンキッシュな前衛音楽を、くっきりと丁寧にまとめた印象を受けた。

2007年10月

2007/10/29  バーゲンでインディ・ソウルをあれこれ購入。

   これのみ別に購入した。ジョン・ゾーンのMASADAが94年にニューヨークで
   行ったライブ音源を、CD1枚モノでJazzDoorがリリース。半ブートっぽい。
297・John Zorn Masada:Live:☆☆☆★
   演奏はばっちり。クレジットは間違いで、94年11月12日、ドイツは
   ハンブルグ公演との説もある模様。比較的初期の演奏で、溌剌さとゆったりさが
   からみ、スリリングな演奏が楽しめる。"bithaiveth"は本盤でのみ聴ける
   ようだが、メロディラインは聴き覚えあり。タイトル違いかな?
   他の収録曲は、基本的に1~3に収録。5へ収録の"hobah"が当時は
   レアだったのかもしれない。

   ヴァージニア出身の男性ソロ。04年発売。レーベルはMarigold Productions。
296・Goldee Heart:Chapter 3:☆★
   C級ながら味がある。プロデュースから演奏までマルチな才能は有るが
   強烈な個性として、突き抜けるまでは行かないかな。
   カバーはマーヴィン・ゲイの"Too Busy Thinking About My Baby"と
   Ambrosiaのカバー"How much I feel"(こっちは良く知らないが、いい曲)。
   基本は打ちこみソウルで、ノーザン系からスイート、ファンクまで幅広く歌った。
   マスタリングがやたらこもっており、音像イメージ的に損してる。
   歌はまあまあ。野暮ったいアレンジで、地方で頑張るソウル歌手が、
   営業用のCD出しましたって感じ。
   トロトロのバラードから派手に吹き上がる、初期プリンス風の(6)が良い。
   もっと丁寧に演奏や録音したら、映えると思う。惜しい。
   もろにPファンクな(9)あたりは、ラフでぶっといシンセがむしろハマった。
   多重録音でエコーがバリバリな(10)あたりから、ちょっと音の抜けが
   良くなるのはなぜだろう。(12)の荒っぽいキーボードの多重録音は
   むしろライブっぽかった。

   ラスベガス出身の男性ソロかな?ラップっぽい。03年盤。Tanasa Productions発。
295・Damone:Hot-n-club:☆☆
   さほど声は伸びないが、歌物。打ち込み中心のすかすか伴奏と中途半端なメロディも
   物足りなく、ソウルとしてはいまいちだが・・・。5曲目辺りから、80年代ザッパ
   (具体的にはアイクやレイら)を連想する、詰まった男性ハーモニーが飛び交い
   なんだか引き込まれた。ちょっと茶色い声のせいだろう。
   メロウな要素もあり、耳ざわり良い。BGM向か。
   これは!という曲を見つけられず。

   アフリカンっぽさも。05年リリース、男性ソロ。レーベルのクレジットも無い。
   完全自主制作かな?
294・Rahjwanti:Soul Remember:☆★
   シンセ中心のメロウなソウル志向らしいが、妙な音程の揺らぎあり。
   特に(10)。くらくらしてきた。パンチが弱く、かといってBGMには
   個性が滲む。少々中途半端な出来か。
   むしろ歌の無いシンセのインスト(12)に
   すがすがしさを感じた。

   05年、男性ソロ。ゴスペル。オハイオのLivin'Creation Recrdsから発売。
293・Robin:Crying Holy:☆★
   打ち込みで曲は悪くない。作曲から演奏まで全てこなす才能は
   尊重するが・・・いかんせん、歌が下手。たまらなく音程が揺れ、リズム感も悪い。
   曲がそこそこ聴かせるだけに、なんとも惜しい・・・。
   聴いてて不思議な酩酊を感じる。良く言えば。

   とぼけたスタイルのファンクっぽい。男性ソロだと思う。
   04年、T's UP Recordsより。テキサス発。
292・Tommy Brown:Nostalgia Expresion:☆☆
   ファンクっぽさは皆無だった。歌もの寄り。
   安っぽいシンセのリズムだが、はまったときは心地よいソウル。
   (2),(3),(6)あたりか。歌は少々線が細い。
   途中で挿入されるカラオケが中途半端なテクノのようで奇妙だった。

   女性3人組。イリノイのMajesty Creationsより05年に発売。
291・Yahaweh's Tribe:Harmony:☆☆☆
   打ち込みを基調に丁寧に音を重ねるアレンジと音色の上手さで、繊細なゴージャスさを演出した。
   歌声も癖が無く、滑らかなゴスペルだ。ほんのりラテンな風味も漂わす。
   圧倒的な毒や色気は皆無だが、そのぶん安心して聴けると取るべきか。
   (5)みたいにアグレッシブな曲より、(2)や(3)みたいに
   小粋なほうがぼくの好み。EP盤だがトータル性ある構成も良い。
   買ったきり棚に放りこんでたが、心地よい女性ハーモニーなポップスを味わえる。
   ただしこの1作で消えたようだ。

   蓮っ葉な女性ソロか。06年、Blue Reality Recordsから。コネチカット州かな。
290・B.A.D. H.A.B.E.T:Stuck on love:
   蓮っ葉に上滑りする打ち込み女性ソウル。メロディは軽やかだが、なんだか
   心に響かない。スローよりミドル/アップで押すのがキャラクターか。

   アフリカンな要素もうかがわせる女性ソロ。05年、ニュージャージーのKFT Recordsから。
289・Kimbute:November Morning:
   レゲエなポップ。裏拍リズムは全編に漂うが、さほど強調はしない。
   バッキングの演奏までこなす才女だが、歌声やメロディは
   少々線が細い感触。基本は打ち込み。聴きやすいが、いまいち単調だ。
   (4)の雰囲気がまずまず心地よい。

   本盤もちょっとアフリカっぽい。男性ソロ。キザイア・ジョーンズがゲスト参加のもよう。
   イギリスはロンドン発かな。発売年度は見当たらない。
288・Siji:Good-givin:☆☆☆★
   初手からスティーヴィー・ワンダーの影響があからさまな歌声に苦笑した。
   キザイアの参加曲も、さほどハードじゃない。
   キザイアのギターはサウンドに一体化してる。
   全編が耳ざわり良い横ノリのソウル。展開や間奏部分がやけに長く、BGMを
   意識した出来に聴こえた。フロア対応では静かすぎるので。
   アレンジをコンパクトに絞れば締まると思うが、狙いはそこじゃあるまい。
   ジャケットからのアフリカ要素はごく少ない。パーカッションの一部に感じる程度。
   決して熱せず、たゆたうように演奏がたなびき、甲高い歌声が載る。
   ビートは軽々と、しかし強靭に跳ねた。寛いだ気分で聴きたいアルバム。

   男性ソロ。ボストン出身で04年の盤。347 Music Groupより。
287・Terry Gresham:To Sasha...from Langston:☆☆☆★
   Tracey M. Lewis著"The Gospel According to Sasha Renee"(2004?:Moonchild Pub)を
   テーマにサントラ化したものらしい。物語は黒人女性をテーマにゴスペルを
   描いた小説な模様。本ミュージシャンによる一方的なオマージュなのか、
   たとえばテレビドラマなどのサントラなのかは不明。全編ボーカル入りのため、
   前者な気もする。全編の作曲はテリー・グレシャム。コーラスも多重録音した。
   音楽や録音関係はフェリックス・J・ムワンギ。この二人だけで基本的に製作された。
   サックス奏者は外部。あとは静かな打ち込みソウル。録音はボストンだが
   ニューヨーク寄りの甘さと冷静さが同居するサウンドが心地よい。
   メロディも甘めに流れず、しゃっきりとふくよか。
   数曲に女性(クレジット無し)の朗読が入り、トータル・アルバム的に仕上げた。
   ヴァン・マッコイ"Giving up"のカバーや、テディペン"Love TKO"の引用もあるみたい。
   喋りが長めな部分もあり、BGMだとちょっと個性が強い。
   しかしシンセが穏やかに膨らむバッキングと、ファルセットも駆使した歌声で
   心地よいバラードがほとんどの、ゆったりしたアーバン・ソウル盤に仕上げた。

   妙に目元が鋭い男のソロ。06年、ノースキャロライナのJotashe Recordsより。
286・Johnnie Foster Jr.:Testimony:
   しゃらしゃらと高音を強調したアレンジの、静かな打ち込みソウル。
   さほど歌い上げず、軽やかにメロディを紡ぐ。
   なのに軽快さは少なく、どこか冷たい。そっけなさが漂った。
   典型が(7)。甘いバラードなのに感情へ雪崩れず、淡々と真っ直ぐに展開した。
   少なくとも(7)のムードは、ぼくの好み。抑えたクールさが心地よい。シンセ・ストリングスが安っぽいが。
   最終曲(15)のゴスペルも、滑らかで冷静な距離感が心地よい佳曲。
   ただしミディアムでは野暮ったさが滲む。これがいただけない。
   全般的には小粒な仕上がり。熱がこもれば印象変わるかも。

   女性二人組ユニット。ろくにクレジットが無い・・・。
285・The Piano Room:Harmony:
   整ったアレンジ形式が好みと違う。根本的にメロディの力が無い上、
   つるつるにまとまったサウンドは、あまりにもそっけない。
   バラードも中途半端に整理され、作り物っぽいR&Bに
   仕上がってしまった。売れ線狙いなのはわかるが・・・。
   打ちこみの硬いビートと、甲高いボーカルはなんとももどかしい。情感が機械仕掛けに聴こえる。

   男性ソロ。愛国心ばしばしな盤か。ジャケットにちらと国旗をあしらった。
   04年発売で、イリノイ州のTriplett Recordsより。完全自主制作か。
   "演奏がMartin Dumas"とわざわざ別クレジット。どういう内容だろう。
284・Leon Triplett Project:Love America:
   アルバムとしては中途半端。でっち上げ的な感触が漂う。
   レゲエ風だったり、シカゴ・ソウルだったり。浮ついた感触あり。
   12曲中3曲がカラオケ。打ち込みソウルのアレンジだと、単に無味乾燥なテクノを
   聞いてる気分でいまいち。なんだか水増しっぽい。
   タイトルはアメリカ賛歌かもしれない。ゴスペル風のボーカルはそれなりに力強いが
   シンセの打ち込みアレンジがなんとも脱力で、デモテープな味わいを拭えない。
   しかし曲で(4)はまずまず良いメロディ。アレンジがしょぼいのと、
   ボーカルの線が細くピッチが怪しいため、物足りない出来ではあるが。
   選曲眼がプロデューサーに有るとは思いづらいアルバム。(4)を主軸に
   きっちり作りこみ、アルバムを仕立てればいいのに。

   CD-R。男性ソロで、サンノゼsのGruve Recordsから。うーん、いかにもインディ盤な作り。
   サンタナのバンド歌手でキャリアを築いた歌手らしい。
283・Tony Lindsay:Tony Lindsay:☆☆☆★
   少々線は細い。が、生演奏中心の暖かなバックで、のびのびとハイトーンを
   響かせる。メロディも滑らかでアレンジもけれんみ無し。
   じっくり聴ける、穏やかに整ったAORソウル。丁寧な作りが嬉しい。

   あどけないの女性ソロ。これもアフリカンっぽいな。発売年度やレーベルへの
   連絡先はクレジットなし。ネットで調べろってことか。
   シカゴの生まれで05年発表の本作が1stか。07年に2nd"One word"を発売済。
282・The Kyna Kyles project:Live-Spoken word:☆★
   無伴奏の詩朗読。韻も含めて英語がわからず、本盤を楽しめてはいない。
   歯切れ良くぽんぽんと言葉を並べるさまは、ラップとは違う小気味よさがあるけれど
   シリアスなことを喋ってるのか、かなりシビアな肌合い。
   その合間に数曲、歌物ソウルが挿入される。
   これがなかなかメロウで心地よかったりする。
   ほんのりゴスペル風味。この路線でまとめたら良質なソウルだろう。
   あくまで彼女は朗読のおまけに聞かせたいのかもしれないが。

   これも女性ソロ。SSW風のジャケットに賭けた。06年発売。
281・Rhapsode:Spoken Inward:
   ポエトリー・リーディングのようなラップ。ほのぼのしたムードが漂うのは
   ある種、新鮮かもしれない。しかし凄み無いヒップホップが
   こんな退屈とは思わなかった。瞬間を切り取るとユニークな場面もあるが、
   総じて呟きを淡々と聴いて終わる。彼女のラップぶりに依存もしそうだ。
   何曲かはアップテンポもあるが、むしろそちらのほうが個性無く飽きてしまった。
   アコースティック感覚を残したアレンジの曲はそこそこ楽しめる。

   しゃれて気取った男性ソロ。イギリスっぽい感じだが、アメリカ出身みたい。06年。
280・Mike Hammond:Mike Hammond:☆★
   NY出身らしい。本盤が1st。穏やかなダンサブル路線を基調とし、イギリス的なソウル。
   華が無く、穏やかなムード。しみじみ聴くより、小さな音でBGMのほうが
   似合いそう。メロディもいまいちはじけず、バラードの切なさも薄い。
   ねっとりとムードを漂わすソウル。どこか冷たい。さほどボーカルは歌い上げず。
   あえて言うなら、(6)が耳に残った。

   顔の彫りが浅い女性ソロ。98年にExpansionから。カリフォルニア録音。
279・Erica Berry:Life & Love:☆★
   打ち込みのクールなソウル。ほんのりプリンスの影響を感じた。
   歌声もさほど特徴無し。冒頭2曲のそっけなさにめげるが、
   ちょっとほんわかな(3)から、そこそこ聴ける展開になる。根本が単調で
   いまいちな仕上がり。上品でなく優等生的にまとめてしまい、華やほころびに欠ける。
   引っ掛かりが無く、BGMで聞き流してしまった。メロディに力強さ
   あれば別だが、さほど個性もなし。ミドルが本盤でのポイントかな。
   (3)や(7)など。アレンジの冗長さが難点。

   ニュージャージーの男性ソロ。06年にSoulmindzから発売。
278・John Jones:Love's Smile:☆☆☆
   打ち込みソウル。さほど声を張らない歌。例えば(7)のように
   寸断しつつたゆたうグルーヴが耳をひく。
   軽やかなビートであっさりアレンジされるが曲は出来がいい。
   ボーカルがちょっと耳につくのが難点。

   ラッパーっぽい風情の男性ソロ。04年にMusic Montajiから。アトランタ録音。
277・Adam:Determination:☆☆☆☆★
   まっとうな生演奏のソウル。ちょっとうわずり気味で線の細いボーカルと、
   あっけらかんとしたバッキングが醸すサウンドは、ほんのりサザン風味か。
   硬い響きの音像がからりとした涼やかな魅力をはからずも演出した。
   予想外の傑作。わずかにラップ風味あるのは時代でやむをえずか。
   がっしりと歌に集中してほしかった気もするが。

2007/10/21   最近買ったCDや頂いたCDなどをまとめて。あとまだ届くはず。
            そしてまだ聴きたいものが色々と・・・。ああ、聴きたい。
   
   片山広明の新作は渋さチビズの面子による、ライブ録音。
   スタンダードから片山のオリジナル、渋さの"Dust Song"、立花の曲まで
   多様なレパートリーが収録された。
   いまだ公式発表が無い、チビズの演奏(音楽性は片山のソロだが)が聴ける意味でも貴重。
276・片山広明Quartet:Dust Off!:☆☆☆☆★
   二管でのほんのり切ないジャズにどっぷり浸れる。冒頭のデュオの煌びやかさから、
   ごっつり太いアンサンブルまで幅広い。リズム隊の濃厚な埋め尽くしが
   歯ごたえしっかりに仕上がった。テナーのブロウは軋み、朗々とアドリブを
   奔出させる。片山独特のロマンティックさを、しっかり凝縮した快演ぞろい。
   録音はほんのりエッジが甘い。それがまた、不思議な甘さをかもし出した。
   ライブとは思えぬ構築度がそこかしこにある。あえて統一性を出さず
   バラエティさを狙ったか。輝かしくクラシカルなサックス・デュオから
   (ここだけスタジオ録音?)、怒涛のフリーへ雪崩れる(1)、輪郭くっきりで軽やかな(2)、
   泥臭いメロディへ歌もぴたりとはまる(3)。タフにエレキ・ベースがうねる
   グルーヴィな(4)、そしてリバーブ効かせ場末風の貫禄を見せ付けた(5)。
   最後はしみじみと歌い上げな、渋さの(6)。どの曲もすごくいい。
   片山広明を未聴の人へ、自信もってお薦めの一枚。

   即興ユニットmetaphoricの1stアルバム。自主制作の2枚組CD-R。07年発売。
   セッションを元にした1枚と、セッション音源を加工した1枚らしい。
275・metaphoric:metaphoric:☆☆☆☆
   1枚目は滴るようなエレキギターの対話が美しい即興一本勝負の約1時間。
   2枚目はドラムを加えた即興と、PC仕立てでエレクトロニクス。
   互いに自らの美学を静寂の中でぶつけ、空気の振動で対話する。
   衝動を抑え揺れ続けるストイシズムが美しい。ぴりぴりくる緊迫が希薄なのもポイント。
   長尺演奏はOKだが、どの曲もトラック信号は細かく複数切って欲しくも。
   細切れに聞き返すとき、ちょっと不便なため。
   全体を通じ、クールな酩酊が漂う快感を味わえる。

   フランス人かな?ピアノ・トリオ盤。日本では澤野商会からリリースされたらしい。
   00年の発売。1974年産まれの中堅ピアニスト。
274・Baptiste Trotignon trio:Fluide:☆☆★
   涼やかで流麗。ちょっぴりナルシスティックな香り。苦悩や粘っこさとは
   逆ベクトル。かといって透明さや細いタッチとは違う。ロマンティックな
   趣味を軽やかに力をこめ放出した。ほんのり、性急に。(5)の甘い響きが耳に残った。

   小松亮太(バンドネオン)がピアソラの音楽を取り上げた、映画のOST。
   99年のリリース。鬼怒無月、コシミハルらも参加。タンギスツ名義だから
   鬼怒が参加してるかっこうか。
273・OST:Labyrinth Original Sound track:☆☆
   サントラのため音楽の自己主張は少なめ。さらりと聴ける。
   アドリブなどで豪快に個性は滲ませないが、聴き応えあり。
   もっさりときれいにまとめてしまったマスタリングが、なんとももどかしい。

   最近凝ってるビル・フリゼール。ソロ名義でノンサッチから01年に発売。
   曲名を見てると、トータル・アルバムな仕上げっぽい。
272・Bill Frisell:Blues Dream :☆☆☆★
   カントリー要素をうっすら残しつつ、丁寧なアンサンブルを追求した。
   短い曲も織り交ぜ、トータル・アルバムに仕上げた。
   じっくりとギターが紡がれ、ホーン隊の暖かな響きにまとわり付く。
   ギターだけでなく、参加楽器それぞれに見せ場をしっかり作った。
   ほんのり不穏なムードを醸しだすサウンドは聴き応え有り。
   さりげなくこだわって吹き込んだ作品に聴こえる。

   ビル・フリゼール参加関係のつもりで買ったが、彼は1曲のみ。
   後は全く関係なし。ノンサッチから01年に発売。歌ものっぽい。
271・Duncan Sheik:Phantom Moon:☆☆☆
   しっとりしたタッチのSSW。ストリングスまで取り入れるきめ細かい
   アレンジと弾き語りまで、両極を志向する。じわじわと熱気を感じさせるも
   炸裂はしない。寛いだ夜に似合う。メロディの線は細い。
   折れそうで耐える歌声な印象。低音からハイトーンまで幅広い。
   フリゼールは(8)で独特のふわふわと漂うエレキギターで歌へ寄り添った。

2007/10/7   ここ最近購入したCDをまとめて。

   明田川荘之の新譜は、今年1月のライブから1stセットを全収録。
   実際に奏者のケンカが始まった様子まで、全部詰め込んだ。
   このライブは聴きに行った。でも後で、音だけ聴いて凄さに初めて気がついた。
270・明田川荘之/藤川義明/翠川敬基:シチリアーノ:☆☆☆☆★
   明田川のライブ盤では稀有な、ハプニング性の"ライブ感覚"を生かした。
   活き活きしたジャズを求めてか、常に明田川はライブ盤でリリースを続けてきたが、
   本盤は1stセット通し収録、セッションへ参加した翠川+藤川の個性までも封じ込めた。
   フリージャズへのスタンス、個々の音楽性、そしてライブの空気。
   あの場所へいたときの緊迫感が、音楽の水準のみ抽出してじっくり聴ける。
   曲よりもむしろ、即興やアドリブの対話こそが聴きもの。
   安易なソロ回しでなく、互いの音楽をぶつけ合うスリルがすごい。
   鋭い藤川のサックス、安定を嫌うシビアな翠川の視点。全てを受け止め
   全体を考え続ける明田川。トリオとはトータル性ではなく、存在を確かめ合う。そんな傑作。

   先日の翠川敬基による"クラシック化計画"で演奏されたのをきっかけに、聴きたくなった。
   フォーレ、フランク(1番)、ドビュッシーのチェロ・ソナタを収録。
   チェロはArto Noras、ピアノがBruno Rigutto。95年フィンランドでの録音。
269・Faure/Franck/Debussy:Cello Sonatas:☆☆☆
   穏やかな演奏と録音。けれんみなく丁寧に奏でられる。
   おっとりと旋律が流れる印象あり。曲は三者三様だった。
   ぐいぐい押すフランク。流麗なフォーレ。そしてバラエティに富んだドビュッシー。

   梅津和時KIKIバンドの新譜。ドラマーがジョー・トランプに交代した作品、
   さて、どう盛り上がるか。トランプも含め、全員が曲を提供した。しばらく
   KIKIバンドのライブを聴けてないなあ。
268・梅津和時KIKI Band:DEMAGOGUE:☆☆☆☆
   作曲者の個性の違いで微妙に味わい違う曲群を、骨太にまとめた一枚。
   豪腕な早川、ひねった梅津、躍動感ある鬼怒に、ストレートなトランプ。
   重低音をがっつり聴かせ、フロント二人の鋭く滑らかなアドリブが駆ける。
   ハードさ一色でなく、(4)に代表されるロマンティックで穏やかな側面も織り込んだ。
   メロディとグルーヴががっちりまとまった傑作。

   筒井康隆の短編小説をフリージャズ化した1973年作品の再発。
   音楽は佐藤允彦+がらん堂ってのに興味を持って買った。
   市原宏祐オール・スターズとの混合かな。
267・筒井康隆/市原宏祐/佐藤允彦:デマ:☆☆
   二つのセッションをぐしゃぐしゃに混ぜたアルバムか。カットアップ的な
   展開を想像してたが、もっとひとつながりの展開。シンセがほんわり漂い
   フリージャズながら、ビートよりもストーリー性を意識したかのよう。
   感覚的に、市原グループの色合いが強い。どういう風に二つのセッションを
   混ぜたかが、いまひとつぴんとこず、が正直なところ。
   筒井の小説を下敷きにしつつ、単独でも聴ける。さほど密接さは感じなかった。
   個人的にはがらん堂をじっくり聴きたかったので、物足りず。

   大友良英が参加のユニット、I.S.O.のライブ盤。98年に京大西部講堂や
   岡山でのライブ、さらにフランスでのラジオ音源などを収録した。98年発表。
266・I.S.O.:LIVE:☆☆☆★
   前半に長尺、後半は短めの構成でなだらかに聴かせる。電子の粒がさざめき、
   生々しい金属音が混じるノイズは、単純に気持ちいい。ランダム要素を
   踏まえつつ、どこか一定のムードで漂う流れ。時間軸のたゆたいがテーマのように
   聴こえた。盤の一番最後で、音域がみるみる高まり、加速する。

   抜群の1stを提示した女性SSWの2ndが出た。One little Indianレーベル
   からのリリース。インディかな。ドラムとベース以外は、ギターや鍵盤を
   ポリーが多重録音している。
265・Polly Paulusma:Fingers & thumbs ☆☆☆★
   曲は充実してる。より練られた音楽世界へ到達したと思う。
   しかしドタバタ響くドラムの騒々しさが、本盤の魅力を明らかに減じた。
   繰り返し聴くと、メロディラインのしっかりさや歌の
   伸びやかさへじんわり来るだけに、このミックスは本当に惜しい。
   ロック・アンサンブルを志向だろう、おそらく。一般論では間違ってない。
   しかし繊細で弾き語りなポリーの世界を追求してほしかった、とも思う。

   上記リリースに伴う1stシングル。3曲入りで2曲はシングルのみ発表曲。
   表題曲もラジオ・ミックスを収録した。
264・Polly Paulusma:Back to the start(single):☆☆☆★
   シングル・テイクは中域を強調した粘っこい出来で良し。コンパクトにまとまった。
   同時収録曲もアコースティック感覚あっさりしたアレンジで良い。この曲調で、アルバム一枚まとめたらと
   つい後ろ向きなことを考えてしまう。繊細なポリーの呟きが聴けるだけに。

   ベーシストのソロ作品。ビル・フリゼールが全面的に参加かな。
   ノンサッチから04年に発売。
263・Viktor Krauss:Far from enough:☆☆★
   ビル・フリゼールのファン向けかもしれない。ベーシストのアルバムなためか、
   ヴィクター・クラウスはさほど前面に出ず。ジャケットの色あいと似た、
   薄暗く影を纏ったカントリー風味のインスト音楽が穏やかに続く。
   ノスタルジーに堕さないが、張りがあるわけでもない。
   独特なビルの小さくはじけるトーンを基調に、ゆったりと音世界が漂う。
   アリソン・クラウスが数曲でボーカル参加。存在感あるが、
   大人びたマスタリングが歌声も演奏の一部へ溶け込ませてしまう。

   メンバーは全員知らない。トッド・ブラウニング監督のサイレント映画
   "ジ・アンノウン"へ音楽をつけたジャズ作品。ディスクユニオン系の
   AVANTからのリリースだし、ぎしぎしのフリージャズと思ったが、
   もうちょい聴きやすいインスト作品っぽい。1994年の作品。日本語ライナー無し。
262・Pillip Johnston's Big trouble:The Unknown:
☆☆☆
   ほんのりノスタルジックなジャズだが、無国籍で鋭さも。類型的な
   ふりをして、意外につかみづらい。コラージュ要素もちょっとありそう。
   アンサンブルはかっちり締め、メリハリ効いたアレンジが肝か。
   不思議な夢見心地の感触が全編に漂う。

   セシル・テイラー66年の作品。ベースがヘンリー・グライムズに惹かれて買った。
   本盤では2ベース体制の7人編成みたいだ。本盤は今回、初めて聴く。
261・Cecil Taylor:Unit Structures:☆☆★
   ブルー・ノート1作目。評価を得たアルバムらしい。
   単なる力押しでこそ無いが、翳りあるフリー・ジャズがぐいぐいと展開する。
   緩急効かせても、1曲だけでおなかいっぱいになりそう。
   こもり気味の音質が残念。
   長尺が多いが、パルスのようにアドリブが繋がる。
   ドシャメシャ一辺倒でなく、少なくともテーマはアレンジ練られた。
   グルーヴをあえて避けるように、うねうねと曲が炸裂する。決して分裂しない
   ところがポイントか。かなり頭を使って、構成を理解したくなる。
   そんなスコアになってるか別として。

2007年9月

2007/9/24   ネットやらCD屋やらで購入。

   再発を待ちわびてた。過去の再発を買い逃し、廃盤のままだった。
   大滝詠一が年間4枚の契約に苦しみながら、強引に日本人の琴線を狙ったという
   インスト集。2枚を1度に全曲収録。さすがに2回に分けて発売はしないか。
   ボーナストラック4曲入り。聴くのは今回初めて。"30th Anniversary"で再発。
260・多羅尾伴内楽団:Vol.1&.2:☆☆☆
   選曲へはそうとう気を配ったマニアックな盤のようだ。演奏は滑らかに
   すいすい進む。Vol.1のアメリカン・ポップスの哀愁もとりまぜたアレンジが
   個人的には好み。スピーディさや爽快さより、琴線を突く切なさに
   軸足を置いた。そのウェットさへ馴染めれば、楽しい盤。
   解説は至極あっさり。レココレ誌と連動で重箱の隅をつつけということか。

   復活した岡村靖幸のシングル第一弾。新曲2曲に、04年のライブで演奏された即興の
   弾き語りを2曲収録。ジャケットの写真、かなり痩せたなあ。
259・岡村靖幸:はっきりもっと勇敢になって(single):☆☆☆
   出所1作目はテンポを落し気味、メロディと歌詞の輪郭がくっきりし
   "家庭教師"直後頃あたりの作風に戻った印象。声はいくぶん音域幅が戻ってきてる気が。
   まだ物足りないけれど。アレンジもストリングスっぽい響きをちりばめ、
   復帰を飾るゴージャスな方向性だった。同時収録曲はミドル・ファンク。
   声をうまく使った粘っこいセンスは岡村ならではな佳曲。
   後半2曲はライブでの弾き語りテイク。
   つくづく、再逮捕が惜しい。

   Circus Devilsの新作。ジャケットに"Guided by Voicesの棚で本盤見たら、
   蹴っ飛ばすぜ!と小さなシールが貼られて面白い。
   短い曲をつるべ打ち。32曲も入ってる。
258・Circus Devils:SGT.Disco:☆☆★
   とっちらかった感触の曲をぎっしり詰め込むこのバンドのスタイル。
   録音も編曲も丁寧で作りこんでるようすなのに、全体を見通すと
   混沌な風味漂う。歌詞を見てないので、トータルアルバム性は不明。
   今作は特に洗練された印象を受けた。
   一曲があまりにも短く、演奏(特にリフ)へ軸足置いた曲も多いため、
   個々の曲で楽しむよりも全体の流れで聴きたくなる。
   するとへんてこなイメージがひときわ強調されるという・・・
   トビアスの趣味性が炸裂なゆえに、取っ掛かりのきっかけ作りが気持ちに必要。
   ロバートによるきれいなメロディの断片もあるけれども。

   吉田達也が参加した、サムラ・ママス・マンナのライブ盤が再発された。
   02年に千枚限定で発売。今回は02年に東京でのライブ音源を8曲収録、
  (前回のボートラ2曲は削除)大ボリュームで復活。ジャケットは1stプレスの
   物を流用したため、盤以外では区別できない。
257・Samla Mammas Manna:Dear Mamma (Reissue ver.):☆★
   歯切れ良いミックスと、タイトなアンサンブルのボートラは楽しめた。
   本編はいまひとつ趣味と違い、馴染めないのは変わらず。なにが理由だろう。

   メルツバウ関連で購入。93年の発売。ヴァニラ・レコードから
   発売された、日本の第一世代ノイジシャンを集めたコンピ。
256・V.A.:Come Again II ~戯れ2:☆☆☆☆
   日本のノイジシャンをごっそり集めた傑作コンピ。ドラムを叩かぬ吉田達也のテイクや
   妙にリズミカルな暴力温泉芸者のテイクも楽しい。本盤で代表的な
   ミュージシャンはごっそり聴ける。貴重で、勇ましく尖ったノイズがいっぱい。聴いてて、わくわく。
   短い持ち時間で、つぎつぎ曲が変わるのも集中力が続いて良い。

   リバーサイドで59年に6月に吹き込まれたセッションを集めたCD。
   サド・ジョーンズ(cor)がモンクと初共演したアルバムらしい。
   ボートラが2曲あり。91年発売国内CDを最近、千円の廉価で発売盤で購入。
255・Thelonious Monk Quintet:5 by Monk by 5:☆☆
   地味な仕上がりのアルバム。拍をあえてずらし、音数少なく挿入する
   ピアノが、しみじみと無常観をかもした。ミドルテンポの切ない雰囲気が全編を漂う。
   ボートラの"プレイド・トワイス"別テイクで、セッションのこなれ具合を
   マニアックに楽しむ方法もあるが・・・むしろ、(2)、(4)、(5)での
   グルーヴする寂しさに浸るほうが楽しい。(5)のロマンティシズムは格別。
   トランペットはいたずらに激しく責めず、スケール大きく広がる。

   山下洋輔のNYトリオ作品を聴きたくなり、購入した。
   99年にニューヨークのスタジオで録音。
254・山下洋輔:Fragments 1999:☆☆
   爽やかな印象漂う。破綻は無い。アップよりもスローでじっくり聴かせるイメージが強い。
   ピアノ・ソロのCM曲"Brightness"を収録。そういえば、イントロの鮮烈な
   フレーズは聴き覚えあるなあ。
   ドラムは控えめにシンバルを叩き、むしろベースが
   さりげなく存在を主張する。ボリュームをがつんと上げて聴きたい。
   かなり上品なミックスなので。

   ヨーロッパ・フェスを経て録音。「おじいさんの古時計」を再録した。
   93年にニューヨークで吹き込まれた作品。
253・山下洋輔:Dazzling days:☆☆☆☆
   山下NYトリオの魅力を見事に凝縮した一枚。
   瑞々しい音質で軽やかに駆ける、独特のサウンドが炸裂した。
   鋭いメロディで幕開けの(1)からいきなりセンチメンタルな(2)へ。
   一曲一曲を丁寧に演奏し、メリハリ良い熱っぽさで魅せた。
   アヴァンギャルドよりはポップな印象あり。個々は豪快な響きも多いのに。
   数曲で参加するテナー・サックスは、アンサンブルへの必然性は薄いのが本音。
   しかしよりによってタンギングの嵐な(7)へ管を加えるあたり、
   きっちりテクニックを見せる、山下のアレンジがさすが。
   最終曲、(8)のロマンティックさが素晴らしく良い。

   フィル・コリンズのドラムを聴きたく、ブランドXを買ってきた。聴くの初めて。
   79年作の5th。ジャケットが廉価盤でクレジット無く、詳細は不明なしまつ。
   一曲目でいきなり、フィルのどたばたドラムとボーカルが入る。
   Wikiによれば本盤は4(1)と(3)がシングルで発売、
   シングルB面曲の"Pool Room Blues"は公式アルバムには唯一、未収録という。
   なお(7)はフィルが始めてドラムマシンを使用した曲らしい。
   2種類のセッション・メンバー体制で録音された。
252・Brand X:Priduct:☆☆★
   整然と並べ立てた変拍子と速弾きが、矢継ぎ早に繰り出される。
   基調がポップで、アンサンブルの根本が非即興アプローチなため
   非常に聴きやすい。プログレよりもフュージョンのような感触も。全体を覆う
   うっすらとしたヒリヒリ感が、かろうじてプログレの味わいを残す。
   粘っこさを求める人には向かないが、ほんのり影ある爽快さを求めるならば楽しめる。
   まずまず聴き応えある盤。

   同上の理由で購入。ところが本盤はフィルが不参加。なんてこったい。
   78年発売の1st。プログレは詳しくなく、他のメンバーへの知識無し。
251・Brand X:Masques:
   上手いと思うが、もろにフュージョン系で好みとは異なる音楽。
   中近東へ傾倒でもなく、耳ざわりよい音像でタイトに
   リズムが変わりながらくるくると進む。アドリブはあくまで
   ソロのみで、アンサンブルはかっちり譜面のようだ。
   透き通ったシンセの音色に時代を感じた。

   詳細不明。03年にニューヨークで吹き込まれたインディ盤。レーベルは
   Omnitoneとある。Vln,g,bのアコースティック・ジャズ編成に興味引いて購入。
250・String Trio of New York:Gut reaction:☆☆
   スイングだけでなく、ヨーロッパのクラシカルなフレーズも使う
   バイオリニスト。ギターも単なるバッキングに陥らず、アンサンブルとして機能する。
   バイオリンの手の内が限られるため、いまひとつのめりこめない。
   耳ざわりはよく、さらりと味わえる。そこそこ聴き応えもあるし。
   欲を言えば、着地の見えぬスリルが欲しかった。おそらく彼らの志向とは違うが。

   ジャッキー・マクリーンが57年にプレスティッジに録音。マルらのカルテットで3曲、
   ウエブスター・ヤングら6人編成で3曲を収録した。
   98年の29bit- HQマスタリングの日本盤を購入。
249・Jackie McLean:Makin' the changes:☆☆☆
   溌剌としたハード・バップ。特にワンホーンの2/15録音が良い。しかしちょっと
   サックスの線が細めで残念。8/30もウエブスター・ヤングのペットが
   スピーディで快調。スタンダード集とシンプルな企画ながら、演奏は前のめりだ。
   2/15のタイトなアート・テイラーによるドラムも素晴らしい。
   2/15の(3)~(4)の流れが、特にばっちり。

   ブッカー・アーヴィン63年の作品。92年の日本盤で入手。
   ジャキ・バイアードのトリオと共演した。
248・Booker Ervin:The Freedom Book:☆☆☆☆
   青白くクールでアグレッシブ。ジャキ・バイアードのピアノがひときわ、
   涼しげに鳴る。それでいて甘く流れない。気持ちいいテナーのソロだが、もうちょっと
   線が太いと嬉しい。録音のせいかもしれないが。スタイリッシュのふりして
   渋い味が滲み出すジャズだ。アラン・ドーソンのハイハットもしゃっきりしてて良い。

   予備知識無し。黒人のバイオリニストで、基本はp,g,b,dsの編成をバックに
   弾いている。ジャズらしい。シカゴ産まれで、イリノイのDelmarkから05年にリリース。
247・Savoirfaire:Running out of time:☆★
   ジャズ・ロックな風味をベースにおきつつ、拡大する余地を残した音楽性。
   広がりあって心地よいし、バックの演奏もタイトだと思う。
   しかし、根本的にバイオリンのピッチが危うい。アドリブ使いの旋律センスは
   まずまずなのに、どこか調子はずれな感触が連発し
   聴いてて不安をあおる。わざと音程をはずしてるわけじゃなさそうだが・・・。
   なんとも惜しさが残るアルバム。

   菊地雅章が76年に吹き込んだエレクトロ・ジャズ、かな?98年再発盤にて。
246・菊地雅章:Wishis/kochi(東風):☆☆☆★
   シンセで押すエレクトリック・ファンクが中心。録音のせいか
   軽やかさが漂う。アレンジはすっきりまとめ、スマートさを
   強調した。最後の曲でロマンティックに仕上げる構成も見事。
   個々のアドリブ回しより、グルーヴへ軸足を置いた。
   今聴くとスリルは控えめで、フュージョン的な疾走を感じた。
   76年に本作を作り上げたセンスへの評価は、きちんと踏まえた上で。

   フランスの白人バイオリニスト、ディディエ・ロックウッド(元マグマ)の
   ソロ作品。カルテット編成で、ドラムがスティーヴ・ガッドってのが
   面白そうで買った。フュージョンじゃないといいな。96年の日本盤にて。
245・Didier Lockwood:Storyboard:☆☆★
   ちょっと大味な感触が印象に残る。ハイスピードで押すより穏やかな
   メロディのほうが持ち味か。バイオリンの妙にぶわっと広がる音色に
   違和感あり。最終曲がベストかな。同曲でのジョーイ・デフフランコによる
   トランペットもかっこよい。

   最近興味が続くビル・フリゼールがらみを何枚か。
   本盤は91年スペインのライブ。ジョーイ・バロン、カーミット・ドリスコルの
   ギター・トリオ編成で録音された。Gramavisionから95年に発売。
244・Bill Frisell/Kermit Driscoll/Joey Baron:Live:☆☆☆☆
   ソロ名義で初ライブ作。過去に発表した自らの曲を中心に演奏。
   ソニー・ロリンズ(3)"No Moe"、ジョン・ハイアットの(4)"have a little faith in me"の
   カバーを含む。後はビルのオリジナル。凄腕二人へ奔放にバッキングさせ、柔らかく歪む
   エレキギターで、ビルはのびのびとソロを遊ばせる。滑らかなギター、そして
   音数少ないが、鋭く立ち上がるバッキングとのからみが、すごく刺激的。
   メロディと前衛が絶妙のバランスで混ざった。小さめのマスタリングで、どんどんボリュームを
   上げたくなる。ジャズの文脈から、カントリーなどアメリカの各ジャンルを睨んだ
   音使いも滲む。幅広いビルの振り幅を豪快に盛り込んだ盤。
   つぶやくようなギターが次第にのびのび、スケール大きく舞い上がるさまや、
   つんのめるスピーディなリズム感覚が快感。どんなに譜割が崩れても
   あっさり食いつくリズム隊のテクニックはさすが。
   なお収録曲の初出盤は以下。ベスト盤みたいに、満遍なく過去作から取り上げた。
   "In Line":(1),"Rambler":(7),(11)"Lookout For Hope":(8),"Is That You?":(2),(6),
   "Before We Were Born"(5),"Where In The World?":(9),(10),書き下ろし:(3)前半,
   カバー("Have a Little Faith"収録):(3)後半,(4)

   97年にノンサッチからリリースした、ビルのソロ。
   タイトルが示すように、カントリー寄りの作品か。
   ニール・ヤング"One of these days"(1992)、カントリー歌手ヘイゼル・ディッケンスの
   "Will Jesus wash the bloodstains from your hands"(1987)、
   スキーター・デイヴィス"The end of the world"(1963)をカバーした。
   サイドメンはナッシュヴィルのミュージシャンら。パット・バージェソン(harm)以外は
   アリスン・クラウスが共通項らしい。
   本盤の完成へ時間をかけた。録音は95年の9月。ミックスを96年の10~11月まで、
   なぜか時間を置いている。プロデュースはウエイン・ホーヴィッツ。
   もともとノンサッチのボブ・ハーウィッツにカイル・レニングを紹介されたのが、
   本盤制作のきっかけとクレジットにあり。ナッシュヴィルの作曲家かな。
   肉親と思しきジェイソン・レニングが録音助手を勤めた。
243・Bill Frisell:Nashville:☆☆
   端正なアンサンブルと思うが、カントリーの活き活きさは無い。
   冷徹かつ丁寧に積み上げられたインストが続く。ビルのルーツ確認だろうか。
   カタルシスは感じられず、きれいな音の向こうにビルの意図を探る一時が続く。
   カントリー色の強いBGMが欲しい時に、ぴったりかもしれない。

   詳細不明なギタリストの作品。歌も歌うのかな。1曲でビル・フリゼールが参加。
   00年の盤だが、彼の自主制作盤くさい。
242・Tony Scherr:Come Around:☆★
   ほんのり捻ったカントリー調の曲が延々続く。脱力気味なアレンジは
   細かく聴くと凝っていそう。アルバム全体はさらりと聞き流してしまう。
   (8)のビルはエフェクタでナイロン弦みたいなタッチで、カントリーを弾いた。
   妙にゴージャスな(10)が印象に残る。
   歌物中心だが、必然性がいまいち。もっと演奏して欲しかった。

   リューネ・グラモフォン関係を2枚。エレクトロ系のサウンドらしい。
   2曲ボートラ入り、邦盤を入手。05年に発売。
241・Alog:Miniatures:☆☆☆★
   デジタルな要素もランダムに混ぜ込み、不安定ながら心地よいふわふわした
   エレクトロを聴かせる。ノイズまで行かないが、寛いで聴くには刺激あり。
   奇妙な存在感あり。一曲をあまり長尺にせず、目先を変えた構成も嬉しい。
   オリジナル盤の最終曲で生演奏の人間くささを、厳かに前面へ出す。
   ソロ回しの概念は薄く、メロディも微か。淡々と進む。
   ノイズを操る瞬発力と、退屈さを回避するセンスが合わさった一枚。
   ボートラの印象は、(10)がアフリカ民族音楽のフィールド録音っぽい始まりに、
   ギターのストロークが重なりテクノ・ダブ風な噛み合せに変わる曲。
   (11)はギターのストロークに、電子音が絡む。どちらも習作風の作品。
   それぞれ聴ける曲だが、アルバム全体の構成の観点ならば、当然不要。
   おそらく彼らは、(9)の肉体的な余韻で、しっとりした終焉を狙ったんだろう。
 
   リューネより。轟音クラブジャズ、らしい。05年の発売。邦盤で入手。
240・Shining:In the kingdom of kitsch you will be a monster:☆☆
   エレクトロとアコースティックを混ぜ合わせ、いくぶん電気仕掛けの
   編集要素へ軸足を置いた。聴きやすいしメロディック追求でもなく
   本盤が3rd。そのせいか、こじんまりまとまった。
   何が起こるか危うい破綻ぶりやスリルが希薄なのは彼らの構築センスゆえか。
   さまざまな要素を手の上で操るような、知性先行な感触がちょっと好みと違う。

   全く知識無し。北欧のバンドらしい。95年結成で本作が
   3rdとある。ポップスだろうか、それともロックだろうか。
239・Mummypowder:Consternation!:
   メロディを意識したバンドとは思うが、この歳になると若さを
   しみじみ感じて、素直に聞けないなあ。瑞々しいメロディを、類型的な
   ギター・ポップなアレンジで薄めてしまい、魅力があせる。
   (7)のメロディが耳をひいたが、アレンジがいまひとつ物足りない。
   (9)もアレンジを練ってテンポを落としたら、個性を出せたはず。
   ドラムの単調な音色と平板なミックスが一番のネックか。アレンジと
   ミックスに気を配れば、バンドの色合いを変えられそう。

2007/9/8    ひさしぶりにCDを色々買ってきた。

   イギリスのバンド(?)Discordance Axisの2005年リリースのアルバム。
   未発表曲、本バンドのフォロワーによるカバー曲、バンドとメルツバウのコラボ、
   新曲などを収録した企画盤的な作品のようだ。
238・Discordance Axis:Our Last Day:

   つぎにインディ・ソウルを色々と。
   裏ジャケでアコギを担いだ黒人男性。05年リリース。
   シンプルなサウンドで明るいソウルを歌う。
237・KUKU:Unexpected Pleasures:☆☆☆☆★
   アコースティック感覚を生かしつつ、多重録音のコーラスや最小限のダビングで
   グルーヴ感を表現するソウル。好みのサウンドだ。爽やかでか細げな
   表層の向こうに、芯の強さが仄見える。メロディ作りも見事。共同プロデューサの
   的確な音作りに支えられ、スカスカながら隙の無いアルバムを作った。
   自主制作なのに丁寧なクオリティが嬉しい。
   聴き込むほどに味わい深い好みのソウルへ、久々に出会った。
   ジャケットのしょぼさが残念。もっと暖かい作りにすればいいのに。
   (11)で"この曲は共同プロデューサーが音楽性の違いから、クレジットを辞退した"と
   律儀に書いてるのが面白い。

   ジーパンで草を加えた黒人男性。サザン・ディープ・ソウルかと購入。
   クレジットをよく見たら、ロスの録音だ。06年の発売。
236・Missippi:The book of life - Chapter 1:☆☆★
   ラップ風味のソウル。ほんのりレゲエの要素も。メロディラインの起伏より
   軽やかなムードで次々と曲が進む。性急さや妙な凄みは無く、寛いだ感触が
   アルバムを通じて漂う。ぐっとくる名曲は無いが、和やかに聴ける。(7)が耳に残った。

   ジョージア州で録音。サングラスを掛けかっこつけた黒人男性。
   ゴスペルっぽい雰囲気もうっすらある。06年の録音。
235・Lafayette Charles:The Merry-Go-Round of life:☆☆☆
   1stにしては老成感が漂う。鼻から息を抜いた歌声で、軽やかに歌う。暑苦しさが無い。甘さも控えめ。
   バックは打ち込みが基調だが、生演奏っぽい感触も。
   気楽に穏やかに、のんびりと。寛いで聴けるソウル。好みなタイプだ。
   スリルをかもしそうで、どこかするりと抜けるしたたかさ有り。
   メロディよりもサウンド全体の、重心軽いイメージがまず印象に残る。

   ヴァージニア産まれの黒人男性。ゴスペルみたい。05年発。
234・Duawne Starling:Duawne Starling:☆☆☆
   オーソドックスなモダン・ゴスペル。個性は見出しづらいが、伸びやかな
   声でゆったりな歌は寛げる。バック演奏は生っぽさと打ち込みをうまく混ぜた。
   スティーヴィー・ワンダーやプリンスなどの要素も。クワイアな素養を
   ソロのスタンスで盛り上げる。メロディもきれい。寛げる佳盤。

   オークランドのレーベルからリリースされた黒人男性ソロ。裏ジャケは南部系、
   表ジャケは薄物を纏った女性の後ろ姿。デビューはハービー・ハンコックの
   ヘッドハンターズ""Straight From the Gate"らしい。本盤は06年発。
233・Deryo:Unveiled:☆☆
   ほんのりジャジーな甘いソウルと、ザップを連想するシンセ・ファンクが混在。
   ジャジーなほうが素直に聴けた。生演奏っぽいドラムとピアノが優雅な漂いを演出する。
   ボーカルはいまひとつ線が細い。やたら声へリバーブがきつくミックスされ、逆に薄っぺらい。
   全体像の耳ざわりは良いが、個々の曲は小粒だ。
   (4)や(11)、(12)あたりはいい曲だが、アレンジを丁寧に
   煮詰めて欲しかった。手なりな感じ。ベストは(3)のスロー。

   ギャラクティックのスタントン・ムーアが参加したインスト盤。
   ジャム・バンド系だろうか。04年のCD。スライ・ストーンのカバー集みたい。
232・The Clinton Alministration:Take you higher:☆☆★
   そつなくまとまり、スライの世界をジャズ・ロックへうまく仕立てた。
   アレンジも曲によって変え、目先を変える。ただし繰り返し聴いてると、
   根本のところでスリルが足りなく感じてしまった。
   丁寧に構築したアンサンブルがゆえに、破綻は無し。
   むしろイージー・リスニング的にも聴ける。ボリュームを
   がつんと上げたら、ノリのパワーは増すが。

   男女混交の黒人グループ。ファンクっぽさと、南部系の要素が
   ジャケットから伝わる。サイトが消えており、詳細は不明。リーダー
   ソロ活動してるようだ。05年発売。ラテン要素もありそう。
231・Leon and the peoples:The Road less Travelled:☆☆
   レゲエ・タッチのハッピーなソウル。リズムはレゲエ風味程度へとどめており、
   ゆったりしたグルーヴを心地よく感じた。歌は少々弱いが、屋外で聴いたら気持ちいいだろうな。
   何曲かはキャッチーなメロディをうまく操る。レゲエをあえてはずし
   自由にアレンジしたら、もっと良くなったのではとも感じた。
   例えば弾き語りから展開する静かな(9)などが映えたように。

   ビル・フリゼールをあれこれ聴きたいと思っている。これはECMへ82年に
   録音の、アリルド・アンデルセン(b)とのデュオ。初リーダー作とある。
230・Bill Frisell:In line:☆☆☆★
   多重録音でギターがうっすらとサイケにたなびく。グルーヴよりも音像を
   優先したかのよう。心地よい酩酊と、予定調和しない展開のスリルの両方を味わえる。
   (4)でのむっくり体を起こす音の拡がりが心地よい。
   ベースとの絡みもセッションでなく、音を積み重ねる要素として噛み合った。
   派手さは皆無だが、単調になりがちな展開をさりげないアイディアで刺激的に仕上げた。
   初リーダー作とは。一聴して華が無いのに、奥が深い。

   フリゼールをもう一枚。これは03年のノンサッチ盤。ヴィシニウス・カントゥーリアらが
   参加した、無国籍のアコースティック・アンサンブルだろうか?6人編成。
229・Bill Frisell:The Intercontinentals:☆☆☆☆
   弦楽器奏者を多く入れ、端正なアルバムに仕上げた。世界各地の要素を
   取り混ぜ、なおかつビル独自の流麗に漂うギターを溶かす。ビルの狙いは
   自らの空間をさりげなく埋めるギターの色合いを華やかに広げることか。
   ジャズの粘っこさを越え、爽やかに即興を取り混ぜた。
   重心軽く滑るグルーヴが心地よい。全員がでしゃばらず、全体像を意識しながら
   個性を殺さぬ演奏で、ラウンジ風の響きながら単なるBGMに収まらぬ
   強烈に瑞々しいアンサンブルとなった。

   デイブ・ダグラスの3人編成。95年にチューリッヒのラジオ局で録音された。
   02年リイシュー盤を購入。当時3000枚だけ再発ってことかな。
228・Dave Douglas' Tiny Bell Trio:Constellations:☆☆★
   純粋なジャズでなく、跳ねるビートはクレツマーか。ギター・トリオで
   トランペットとシンプルなソロ回しに陥らず、インタープレイが練られている。
   勢いはあるが、破天荒さは無い。きっちりと構築された印象あり。
   破綻を全く感じさせぬ、理性をアピールするかの即興演奏だ。

   佐藤允彦、富樫雅彦、ゲイリー・ピーコックのトリオの盤。もとはNECアベニューへ
   88年に吹き込まれた。BAJのリイシューCDを購入。
   元はA面がスタジオ録音。B面は同年収録、オーケストラとの共演音源みたい。
227・Wave:Wave III:☆☆★
   佐藤允彦、富樫雅彦、ゲイリー・ピーコックがそれぞれ主導権をとり、アルバムを
   1枚づつリリースするユニットの3作目。富樫、ピーコックに続き、本盤では
   佐藤が作曲を受け持った。前半はトリオのフリー、後半がオーケストラとの共演。
   前半はスピーディな富樫のリズムにひっぱられ、ピアノとベースが暴れる。
   しなやかな佐藤のピアノが、しぶといベースと絡み、皮がぴんと張ったドラムは跳ねる。
   スローですらきめ細かく弾ける太鼓が快感。
   3曲目ではちょっと時代を感じる音色のシンセがうにょうにょと。
   オーケストラとの共演は、くっきりとアレンジされた。当然ながら。
   さほど難解でなく、サントラを聴いてるかのよう。
   しかし3人は構築を踏まえつつ、鋭さを失わない。
   おっとりと整ったフリー・ジャズなアルバム。

   続木力(harm)と谷口賢作(p)のデュオ。06年発売で4thかな?ゲストで
   山田晴三(b)と山村精一(per)が参加した。
226・パリャーソ:ウルガ:☆☆☆
   全体的にシンプルなアレンジを採用した。
   音が過剰に鳴らず、絞った感触。オリジナルよりもカバーが多い選曲だ。
   繰り返し聴くほどに、しみるアンサンブル。すとんとおなかにメロディが
   落ちる。日本情緒ふんだんのセンチメンタルな旋律は、
   逆に馴染むまで時間かかった。柔らかい優しさへ親しみ感じたとたん、
   本アルバムは急に魅力を増す。くっきりと輪郭きれいなハーモニカが
   うっすらリバーブのピアノと馴染んだ。編成増やしたアレンジもばっちり。
   寛ぐ時に、心がちょっとすさんだ時に。どちらのときも、この音楽は
   気持ちへすっと暖かい幕をかける。(6)が特に好き。

2007年8月

2007/8/14   最近買ったCDをまとめて。

   メルツバウ関係を何枚か購入。ボリスが01年に録音した盤。秋田昌美は
   4曲目にパワーブックで参加した。全体的にはへビィ・サイケロックかな?
225・Boris:Heavy Rocks:☆★
   ストレートなハード・ロックのスタイルを踏まえ、ギターやドラムに
   かなりのエフェクタをかけて、音響ノイズへの興味をうかがわせる。
   このスタイルが趣味で無いため評価はしづらいが、
   低音やギターの迫力はなかなかだと思う。メルツバウの参加はかなり地味。

   アメリカのレーベルからリリースの2枚組。ブラスト・デスロックみたい。
   1枚は98年に録音のアナログ盤をCD化らしい。もう1枚はさまざまな
   ミュージシャンによるリミックス集。メルツバウは1曲で参加した。
224・Agoraphobic Nosebleed:PCP Torpedo:
   2枚組とはいえ1枚は10曲で6分。あっという間のブラスト・ビート。
   聴きどころは2枚目か。14曲で57分、アプローチを変え加工する。
   三三五五の展開なため、ファン向けか。

   ブラスト・ビートのバンドらしい。96年にアメリカで録音された。
   Thanks欄にメルツバウらの名前があり、関係盤かと購入。
   細かい情報が見当たらず、秋田昌美が参加してるかは定かでない。
223・Japanese Torture Comedy Hour:Voltage Monster:
   ヴァージニア州出身、グラインド・コアのバンド、ピンク・デスのスコット・ハル
   (元アナル・カント)を中心のノイズ・ユニット。秋田昌美のの参加は無し。
   wikiによると本作は9作目のスタジオ作で、数年ぶりのリリースらしい。
   平板なフィルター・ノイズが炸裂するハーシュ。さほど細切れにならず、
   緩やかに展開する。メルツバウに比べたら刺激が少ないかも。
   音の質感は似てるが、アイディアの詰め込みや多層性がシンプルなので。
   音域幅はそこそこ広いが、高音ノイズに軸足を置いたかな。炸裂が欲しい時にタメてしまう。

   ジョージ・デュークが74年に発売したアルバムの初CD化盤を購入。
   2曲で変名使い、ザッパが参加してる。
222・George Duke & Feel:George Duke & Feel:
   シンセの音色、フレーズ、アレンジ・・・さすがに時代を感じる。
   リズムのタイトさのみ、時代を超えた。ザッパのギターはひしゃげて響く、いかにもな
   感触。ゲストでのオーバーダブ以上のものではないが。

   アメリカのSSWが05年にリリースしたアルバム。この年は3枚もの
   アルバムを発売したらしい。内省的な感じか。
221・Ryan Adams:29: ☆★
   才能あるミュージシャンだと思う。しかし音楽的にぼくの好みと違う。ごめん。
   C&W要素がかなり強い。搾り出すようなメロディが切ない。

   エリック・サティの作品をCD5枚組にまとめた廉価版。代表曲は
   ほぼ全て網羅してるのかな。発売は06年に仏EMIより。ピアノ演奏は
   アルド・チッコリーニ。67ー71年の間で録音されたようだ。
220・Aldo Ciccolini:Satie L'oeuvre pour piano:☆☆☆★
   滑らかな録音で癖が無い。ダイナミクスはさほど強調せず、淡々と吹き込まれた。
   耳に引っかからない分、カタログ的に聴いてしまう。5枚一気に聴きとおすのは
   かなり集中力がいるだろう。ぼくはムリ。
   どういう曲順で盤を分けたか、コンセプトを理解できていない。
   ともあれボリュームが膨大ながら、サティへの足がかりに使うには良い盤かも。
   ピアノ曲がえんえん続くので、メリハリがアルバム構成的に欲しかった。

   欧BMG廉価盤。24ビットリマスター品で、新品にて500円程度とは。
   価格破壊がすごいな。本盤はモーツァルトのクラリネット協奏曲(K-622)と
   クラリネット五重奏(K-581)を収録。前者はリチャート・ストルツマン(cl,cond)と
   英室内オーケストラ。後者は東京ストリング・カルテットとの競奏による。
219・Richard Stolzman/Tokyo String QuartetMorzart,Clarinet concerto & quintet:☆☆★
   整然と上品な響きに仕上げた。滑らかにすいすいと音楽が流れる。
   室内楽のほうもおっとりした感触だ。ストルツマンのクラリネットは薄く響く。
   クラリネット協奏曲はクラを吹きながら指揮も。するすると聴いてしまった。
   協奏曲でイギリスのオケがぐわっとクレッシェンドするときの
   厳かなパワーはぐっとくる爽快さ有り。

2007/8/5   メルツバウ関連を色々購入。

   ポーランドのレーベルからリリース、メルツバウの新作。
   廃屋の日本家屋前で佇む秋田昌美の写真が裏ジャケなどでデザインされた。
218・Merzbow:Coma Berenices:☆☆☆☆
   りりしいハーシュ。ループはリフとなりメロディックかつ鮮烈な
   エレクトロ・ノイズがアナログ演奏だろうか。かっちりした構築性を維持しつつ
   音数をへらし気味。それでいて空間は凛と張り詰める。
   ぬめった鋼鉄の響きを全編に漂わし、ドラマティックさを演出した。すごい。

   米のレーベルが発売のメルツバウの新作。ジャケットの文字が
   見づらくデザインされてるのが辛い。
217・Merzbow:Zophorus:☆☆☆★
   比較的、短めな尺のノイズが5曲。冒頭からベースラインの上で、極太精妙なハーシュが轟く。
   痛快な作品。力任せ一辺倒ではなく、じわじわと蝕む世界も提示する。
   デジタルの上で、アナログ的な躍動感があふれる傑作。

   米イリノイ州のレーベルからリリースのコンピ盤。Val Denhamなるミュージシャンが
   本盤の仕切りだろうか。詳細は不明。メルツバウは06年の未発表曲を提供した。
216・V.A.:Radio interference from unknown orgasm:
   メルツバウのマニアなら買っていいかも。他の曲も、魅力に欠ける。
   レーベル参加ミュージシャンのコンピ。本盤のみ収録曲を集めたか、の
   詳細は未確認。何故メルツバウが本盤へ参加したかは想像付かない。
   "Merzbow and The Haters"の配給してる関係か。
   収録曲は前衛を踏まえつつ、まちまちな音楽性。へなちょこ打ち込みサイケ・フォークなVal Denham。
   空虚な電子音のドローン音響派なMykel Boyd。ちなみに彼は本盤のまとめ役でもある。
   12分で三部作がBlack Sun Productions。サンプリングで延々と
   時にノイジーなループを繋ぐ方式にて酩酊を狙ったか。リズムがダンサブルでなく、単調。
   メルツバウは12分程度。鳥の鳴き声をサンプリング/フィルター加工を基調に
   鈍いハーシュが地を這う。隙間も感じるおっとりした作品。タイトルも"September,06"と至極あっさり。
   あとはアンビエントなちりちりドローンのWyrmと、コラージュ的な
   静寂ノイズのThe Sword Volcano Complex。チルじゃなく、どこか刺激を残してる。
   メルツバウ以外に一バンド選ぶなら、まずThe Sword Volcano Complex。
   次に稚拙なタッチがシミー的なVal Denhamか。

   なんとなく面白そうで買った1枚。マイルス・デイヴィスのオマージュな
   エレクトリック・ジャズだろうか。元マイルス・バンドのアダム・ホルツマンが
   数曲で参加した。イタリアのレーベルから発売。
215・Cesare Dell'Anna:MY MILES:☆★
   打ち込みも取り混ぜたファンク。ライブだと迫力あると思うが
   本盤ではコンパクトにまとまってしまい、いまひとつ単調か。
   マイルスの亜流から抜け出す個性までは至っていない。

2007年7月

2007/7/29   ネット注文のCDが到着。

   元GbVのロバート・ポラードが立ち上げたFading Captainレーベルが活動
   終了となった。本盤は最後のリリースで、2枚組ベスト盤。未発表6曲入り。
214・V.A.:Crickets:☆☆☆☆
   ロバートの奔放で膨大なFCSでの概聴が可能なセットだが、ファン向の企画では。
   代表曲を収録とも言いがく、初心者がこれ聴いて楽しめるかな。
   むしろ片端から聴いてきたファンが、ロバートの創造力に再圧倒のためにある盤では。
   未発表コラージュもはいり、お得な一枚。今では入手叶わぬ盤の紹介をみて
   歯噛みする罪作りな盤。未発表曲はGbVのデモを除き、適当(?)な
   ユニット名をつけている。ブックレットに未発表曲のクレジットは非記載のようだ。
   それにしても。溢れるメロディをざっくばらんに放出する、ロバートの才能に感服。

   本作リリース後に隠遁の噂もあるプリンスの最新作。えらく聴きやすい仕上がり。
   米盤を買ったら、デジパック仕様。ブックレット無し、曲名も記入無し。
   えらくストイックなデザイン。英では雑誌の付録で実質タダみたいに配ったとか。
213・Prince:Planet Earth:☆☆☆☆
   高音を強調した華やかで軽くポップなアレンジ。ファンクも黒さを減じ、
   丁寧に仕上げた。細部までアレンジやミックスが行き届いたサウンドになっている。
   何か吹っ切ったような、親しみやすいアルバム。バブルガムのような
   味わいすらある。しかしプリンス印はねっとり染み出す傑作。

2007/7/22   久しぶりにレコ屋でCDを購入した。

   06年にあちこちで行ったライブ音源を2枚組2セットのアルバムに
   大友良英はまとめた。その第一弾。ごった煮でなく、一貫性を狙ってるようだ。
212・Otomo Yoshihide's New Jazz Orchestra:LIVE Vol. 1 series circuit:☆☆☆★
   濃密な音世界がぎっしりで、聴くにはかなり集中力が必要。
   しかしライブでしみじみ感じてた「微妙な音世界を、ステレオでゆっくり聴きたい」の
   欲望はばっちり満たせる。音質は細部まで良く聴き取れた。
   編集は控えめで、生の様子をさらりと提示した。丁寧で細密かつ重くのしかかる
   大友良英のジャズをぎっちり詰め込んだ。過去のライブ盤と
   比較して、ソロや各ミュージシャンの色合いよりも、音像そのものへ向き合った印象あり。
   さまざまな編成でのライブを、一気に聴けるのも嬉しい。
   しかし冒頭に述べたように、あまりに濃厚なため、受け止めるにも覚悟がいる。
   聞き流すことを許さず、聞き流すには細かな響きが惜しいジャズ。
   "Climers high opening"の情熱的な立ち上がりが、あまりに美しい。

   ライブを積み重ねた川下トリオ、ついに1stがリリースされた。
   オリジナルとカバー曲、耳馴染み深いレパートリーを6曲収録。
   すでに今のライブでは、次のステージへ向かっている。
   よって、ここまでの集大成と捉えるべきか。GOKでのスタジオ録音。
211・川下直広トリオ:ナポリタン:☆☆☆☆
   きりきりと締め付け、突き進まず。どこか突き抜けた余裕あり。
   当時の川下トリオの特徴を無造作に、かつきれいに切り取った盤。粘っこく
   じわじわとサックスが迫り、ドラムは軽快に弾む。そしてベースがぐいぐいと迫り
   グルーヴをばら撒いた。一曲を長めに取り、充実したソロ回しを楽しめる。
   ベースがもうちょいめだっても嬉しかったが。
   バランス取れた選曲。最後は勇ましい"ニュー・ジェネレーション"で幕を下ろした。

   ビル・フリゼール・カルテット・バンド名義の91年作。
   ハンク・ロバーツ(vc)、カーミット・ドリスコル(b)、ジョーイ・バロン(ds)が
   メンバー。ビルはウクレレも弾いている。
   プロデュースはウェイン・ホーヴィッツ(録音へは不参加)
210・Bill Frisell:Where In The World?:☆☆☆★
   ハンク・ロバーツのチェロがアンサンブルの芯で鳴り、エフェクトの効いた
   膨む影となって立ち上がる。ビルのギターがまとわりつき、ぎらぎらと
   重たく凄みある音像を作った。派手なソロ回しよりも、アンサンブルを志向した。
   ひたひた忍び寄るスリルがたまらなくカッコいい。

   アメリカのゴスペル・グループらしい。打ち込みのモダン・スタイル。
   テネシーのレーベルから06年にリリースされた。
209・Darrell McFadden & The Disciples:I've Got A Right:☆☆
   コンボ形式でクワイア志向のモダン・ゴスペル。ちょっと大味なところもあり。
   アップで熱く押すほうがましか。バラードがいまいち単調。
    (7)はアップ。女性コーラスが絡むアレンジが凝ってて面白かった。
   基本は生ながら、ちゃかぽこと軽い感触の演奏。

   サーストン・ムーア、ジム・オルーク、ニルス・ペッター・モルヴェル、
   マッツ・グスタフソンら、そうそうたるメンバーによるセッション盤。
   07年のリリース。録音は05年、イタリアでのライブより。
208・Original Silence:The First Original Silence:☆☆☆
   やりたいことはわかる。しかしこの音楽を、CDでなくライブで聴きたい。
   贅沢な話だが。そして叶うこともすごく難しいのはわかってる。そもそも次作が
   ありえるのだろうか。全員が隙間を埋めぬ即興で突き進む。2曲入りだが、
   さほど意味あるとは思えない。テンションあげっぱなし、てんでに
   ポリリズミックに突き進む。ダンサブルさは皆無。2曲目はエレクトロニカへ
   比重を高め、スペイシーに蠢く場面も多い。
   テクニックを追求せず、ノイズ的なアプローチが主体か。
   刺激も理解できるし、面白いとは思う。
   しかし豪華メンバーのソロ回しや個性を期待したら拍子抜け。
   個々の演奏は聞き取れるが、むしろぐしゃっと一丸にミックスした。
   互いのエゴは発散でなく、混沌を全員で作り出す方向へ集中する。
   メロディや展開も皆無。幾度か発生する自然な場面転換は
   インプロをわかったメンバーゆえか。強烈で濃密なセッションの記録。

   ノルウェーのクラシック系作曲家の作品を集めた盤。
   ルーネ・グラモフォンから99年にリリースされた。
207・Fartein Valen:The Eternal:☆☆
   バリバリの現代音楽クラシック。ヴァーレンはノルウェーで十二音技法の
   無調音楽を中心に作曲し評価された人らしい。英文解説は細かそうだが、実は読めていない。
   作品番号や録音時期は、もう少しわかりやすくクレジットして欲しかった。
   本レーベルから出た必然性がいまいち不明。
   せせらぎのように瞬くオーケストラの演奏は、聴いてて緊張をはらみつつも
   穏やかに耳へ注がれる。特に(2)が好み。
   ただしアルバム一枚を通して聴くのは、かなり集中力いる。
   収録曲は管弦楽曲、バイオリン協奏曲、そして交響曲1番を軸に、
   2曲のピアノ作品で構成を引き締めた。ダイナミックでノービートな
   緊迫感漂う、鋭い感触のピアノ曲だ。本レーベルからリリースならば
   いっそ室内楽曲やピアノ曲のみで固める手もあったのでは。
   ヴァーレンのベスト盤的構成を狙ったか。ならば歌曲も入れて欲しかった。
   ちなみに(4)はKlavierstucke(ピアノのための小品),Op22の1曲目、
   (6)は同作品の3曲目だろうか。もしそうならば、
   なぜ作品集を分断、かつ中途半端な収録にしたのか。
   ピアニストに主眼を置いた作品集ならばありえるが、本作はヴァーレンに
   着目したアルバムのはずなのに。残念。

   NYのインディ・レーベルからリリースされた、黒人ソロ歌手の1st。06年作。
   作曲は本人だが複数プロデューサーを立て、バラエティさを出したか。
206・Oshy:Da Life Of A Singer:☆★
   打ち込みでヒップホップも取り入れた、密室系の不穏なソウル。
   そこそこトラックは練られてるし、プリンス直系の鼻歌ボーカルもまずまず。
   しかし、根本的にメロディへ色気や魅力が無い。淡々と過ぎ去ってしまう。

   ゴスペルにも向かったスモーキーが、スタンダードのカバーを中心に吹き込んだ
   06年のアルバム。自作は"I love your face"をカバー。
205・Smokey Robinson:Timeless Love:☆☆☆
   穏やかなコンボ形式で、ストリングスが入ってもノリが持続する。
   単なるムード・ミュージックに仕上げないセンスはさすが。
   枯れて歌も細いところがあるけれど。流麗なスモーキーっぷりは残ってる。
   ファン向けの一枚で、BGMに最適ながらスピーカーと対峙し
   聴き込むことも可能な一枚。2曲の"Time after time"をメドレーで繋げた
   アレンジの茶目っ気も聴きもの。基本は変に捻らずカバーした。

   94年にミシシッピで結成された5人組黒人男性ボーカル・グループ。
   05年発売の本作がデビュー盤かな?インディ・レーベルからのリリース。
204・Compozitionz:Compozitionz:☆☆☆
   伝統的なクワイア、マーヴィン・ゲイ、そしてプリンス。さまざまな要素が
   シンプルな打ち込みビートと熱くならぬアレンジに乗って、つぎつぎと
   現れては消える。コンパクトなアレンジながら、一曲一曲は丁寧に作られた。
   アルバム一枚通して聴くと、単調感じてしまうのが玉に瑕。
   ゴスペル要素をうっすら漂わせ、感触はコンテンポラリー
   しかし冷静で理知的な視点を常に持ったソウル。歌声は張り上げず
   淡々としてるのは好み。あと一歩、スリルか刺激があればバッチリなんだが。
   メロディは聴き心地良いが、これっと突出する部分を未だ見出せず。

   元タワー・オブ・パワーのボーカリスト、ソロ何枚目だろう。
   04年にカリフォルニアの自主レーベルからリリースした盤。
   タワー・オブ・パワーのカバー"So very hard to go"あり。
203・Lenny Williams:My way:☆☆
   おっとりと押すソウル。刺激は少ないが、手堅くまとまった。打ち込み中心の
   バッキングなため、ちょっと重心軽い形が否めない。TOPのカバーは本家の
   ノリはさすがに出せず。あくまでオマケで聴くべき。
   ミドルの滑らかな(3)やスローの(6)など良い。
   
   スタイリッシュに決めた黒人男性シンガー。DVDを収めたオマケCD付き。
   デトロイト生まれで、本作は06年リリースのデビュー作にあたる。役者でもあるそう。
202・Christian Keyes:Day By Day:☆☆☆★
   滑らかでセクシー。線の細い歌声ながら、スムーズなアレンジで
   ハイトーンをメインに軽やかなソウルが詰まった。煮詰め方が足りない感じで
   惜しいけれど。爽やかに聴き込みたい一枚。今後の活躍が楽しみ。

   vln,ds,clのトリオ編成なジャズ。97年にバンクーバーで録音。詳細不明。
201・Eyvind Kang/Dylan Van der Schyff/Francois Houl:Pieces of time:☆☆☆
   リズムは控えめ。三人が互いに音を出しつつ、静かな流れある。
   メロディや民族的な情緒は無い。ストイックな音の少ない即興が詰まった。
   テンション高く押さないし、音響的なノイズ嗜好でもない。
   中心をあえておかず、抽象的な即興が狙いか。
   聞き込むには集中力が求められる。退屈と取るか、
   聴き応えを探すか。音楽が暴力的なノイズでカタルシスを目指さぬだけに、
   聴き手のスタンスで評価がガラッと変わりそう

   白人女性シンガー。別のライブでたまたま1曲歌を聴き、
   上手いと思って購入。本盤がデビューかな。07年発売。
200・Kelly Sweet:We are one:☆☆★
   丁寧なアレンジで歌唱の上手さを強調する。ひっかかりが少ない
   甘さが物足りなくもあるが。今後キャリアを積んで、しぶとさを出した
   アルバムに期待したい。ポップス、ジャズ、カントリー系など、さまざまな
   可能性ありそう。もっとシンプルなアレンジでも良い。リバーブたっぷり
   コーティングされた仕上がりのため。

2007/7/4   先日買ったCDたち。

   元GbVのロバート・ポラードによるユニットの2nd。
   ボーカル関係はロバートとトッド・トビアス、演奏関係はブライアン・ベーグと
   クリス・サスサレンコが録音した(一部例外はあるが)。
199・The Takeovers:Bad football:☆☆☆
   荒っぽいギター・バンド的なアレンジを基調ながら、メロディは丁寧。
   録音もノイズやSEをダビングするなど、細かな目配りあり。
   テンポはミディアムを基調か。アコギ弾き語りぽい曲もうまく膨らませ
   バラエティ豊かなアルバムに仕上げた。強烈な華になる曲が無いのが何点か。
   収録曲のいくつかは08年のボストン・スペースシップ名義ライブでレパートリーになってる模様。

   メルツバウ関連盤として購入した。非常階段が91年に吹き込んだアルバム。
   91年6月に新宿アンティノックでのライブ音源が収録され、インキャパの小堺と
   ともに、秋田昌己がドラムで参加してる。ちなみに非常階段の顔ぶれは
   JoJo広重、Junko、T.Mikawaの3人組。このとき、美川はインキャパと
   両方に参加してたのかな。アルケミーからの発売。
198・非常階段:Wisdom:☆☆☆☆
   前半2曲のスタジオ作が濃密で素晴らしい。決め事も展開も何もなく、
   ただ轟音が埋め尽くし震える。個々の識別不能な作品ながら、音圧の酩酊感が
   ひたすら降り注いだ。(3)のライブ盤はメルツバウのドラムが逆に酩酊を
   押さえつける。ランダムとパルスのようなビートが異物としてノイズにぶつかるため。
   とはいえ(3)も凄みと揺らぎが鼓膜を襲い続け、楽しめた。
   聞き終わった時に、ほんのり脳みそが朦朧とするほど。聴き応え抜群の勢い溢れる傑作。
   安易に薦めないが、ハーシュ・ノイズ好きならぜひ聴いて欲しい。

   吉田達也と内橋和久の即興ユニットによる新作が磨崖仏から発売。
   最新作は3枚組のボリューム。04年から06年にかけてのライブ
   音源を吉田達也がミックス/マスタリングした。
   ゲストで山本精一、梅津和時、佐藤研二、ナスノミツル、小森慶子が参加。
   本盤収録の4種類の公演は以下の如し。これらを3枚のアルバムへ振り分けた。
   梅津和時+佐藤研二がゲストは06年8月24日、吉祥寺Manda-la2の公演。
   ナスノミツル+小森慶子は同年8月7月7日、同会場で参加。
   山本精一は04年9月28日、京都Indipendantsのライブに加わった音源より。
   純粋デュオは上記の各日並びに、06年7月10日(クレジットの7/7は誤記)の
   名古屋得三の音源も使用した。吉田達也のマスタリングの妙も味わえる。
197・内橋和久&吉田達也:インプロビゼーションズ2:☆☆☆☆
   音もヌケがいいし、各種ライブ音源を細切れにじっくり聴ける構成も嬉しい。
   演奏はタイトで構築性あり、聴いてて飽きない。即興であるゆえに
   一つのベクトルをつかみ、疾走する傾向あるけれど。
   ゲストが多彩でアルバム全体にもメリハリあり。しかし、全貌をつかむのに一苦労。
   3枚組のボリュームはお得感の面でもさまざまな編成を聴きたい好奇心へも申し分ない。
   その上での贅沢なのは、良くわかる。もし本盤を1枚に凝縮したら、どれほどスリルある
   アルバムが生まれていたか、と。本盤を聴いて、初めて実感した。
   吉田達也はドラムとボーカルへ専念かな?内橋がループも駆使し、サイケな音像を作る。
   ギターとドラムのテクニックひけらかしでなく、互いのバランス感覚で
   整えられた、猛然たる即興が主になる。繰り返しをユニゾンや
   展開の切っ掛けの手法をさまざまなバリエーションで提示する。
   Disc1は梅津/佐藤による怒涛のアンサンブル。"B-3"のように
   がっつり全員が雪崩を打つ勢いが聴きもの。
   Disc2はベースが加わることで重心がしっかりした。サックスが加わった
   テイクでは、鋭い抽象フレーズが飛び交った。
   Disc3はデュオもサイケ色強い。生ギターも使用の模様。山本精一が
   入った音源も混沌が激しく面白い。

   パニック・スマイルの石橋英子と吉田達也のデュオの初CDが出た。
   オマケのシングルCD付き。ディス・ヒート、ソフツ、ジェネシスの
   カバーも演奏しているようだ。
196・石橋英子+吉田達也:Slip beneath the distant tree:☆☆☆★
   コンパクトなチェンバー・プログレを上品な味わいで仕上げた。
   ミュージシャンのテクニックや演奏もさることながら、吉田達也のバランス感覚の
   繊細さに感服する。アルバム作成者として一歩大きく踏み出し、
   全体をかっちりと構築した。ゆとりと軽やかさを見事にアルバムへ封じ込めた
   ミックスやマスタリングのセンスが何より素晴らしい。
   無論、音楽の良さもしかり。激しいドラミングやキーボードのパワーに寄りかからず、
   丁寧な全体像を紡ぐ。せわしなさをあえて避け、ほのぼのと仕上げた。
   たとえば是巨人のレパートリー、"Poet and Peasant"。あえてトリッキーに
   激しくせず、キュートなアレンジを採用。"クラシック・メドレー"も
   キーボードを生かし、曲間のつなぎを場面によってはあえて
   窮屈に流すことで、スリルを強調したか。

   ドーナル・ラニーがプロデュース、トラッド系のとんでもない豪華なメンバーを
   集めたオムニバス盤。トラッドとオリジナルを演奏してるもよう。
   参加ミュージシャンはU2やケイト・ブッシュ、コステロのようなロック/ポップ系から、
   ポール・ブレディ、シャロン・シャノン、クリスティー・ムーアといったトラッド寄りの
   ミュージシャンまで幅広い。ブズーキなどでドーナル自身も演奏に参加した。96年発売。
195・V.A.:Common Ground:☆☆☆☆★
   良質のトラッド系コンピに仕上がった。曲も演奏も丁寧に作られ、
   傑作ぞろい。盤を通した切ない一貫性も聴いてて心地よい。
   ともすればあくの強いミュージシャンぞろいなのに、見事に真綿でくるんだ。
   ドーナル・ラニーのバランス感覚を見せ付ける一枚。おっとりときめ細かい。

   電気グルーヴのメンバーによる、アンビエント・テクノらしい。
   評判いいので聴いてみたかった。01年リリース
194・砂原良徳:ラブビート:☆☆☆
   端正な構築をめざした。優しさを表面にまぶし、根底は冷静に
   ビートを刻む。リズムの音色は刺激を抑え、つぶやきのごとく。
   常にビートが着実に存在し、本当の意味のアンビエントとは
   ベクトルが違うと思う。しかしくつろぎを誘う方向性。
   繰り返しのみでなく、構成を意識したアレンジでBGMとも
   鑑賞音楽とも聴ける。丁寧なつくりのテクノ。

   アコースティック・ポップかな。英ドーン・レーベルが原盤。
   面白そうなので購入。1970年のリリース。
193・Trader Horne:Morning Way...Plus:☆☆☆★
   トラッド要素を踏まえつつ、サイケな感触を受けるのはドローンっぽい
   淡々とした演奏か、ハーモニーの響きか。シンプルなメロディながら、アレンジがかもす
   奇妙な響きで聴かせる。ラフな感触あるのが惜しい。とことん丁寧に
   作りこんだら、もっと良さが増した気が。とはいえ聴き応えあり。
   ボーナス・トラックもポップ色強くて面白かった。

2007年6月

2007/6/27   ここんとこ買ってたCDをまとめて。

   ポール・マッカートニーの新譜。レーベルを変わって、心機一転。
   いろんな豪華版が出てるが、きりがないので通常版を購入。
192・Paul McCartney:Memory almost full:☆☆☆☆
   ほとんどの楽器を自分で演奏だが内省的なおとなしさより
   まだまだ前へつっこむ活き活きした感触がした。
   アレンジは多様。音像のエッジが若干丸くなった印象ながら
   現役感覚に溢れたアルバム。聴き応えある。歌詞カードをネット任せ
   なのが気に食わなかったが、サイトへ行くと本人による曲解説も。
   手間をかけずに多数の周辺情報提供の一案ってことか。

   メン・アット・ワークのカバー集。全員が女性シンガーなため、
   このタイトル。参加ミュージシャンは不勉強にして知らない。
   なんとも素人くさいカバーばかりで首を捻る。05年の発売。
191・V.A.:Women at work~sing the hit songs of Men at work~inspiring women everyware:
   演奏はしょぼいし、アレンジは目端効かない。なによりも歌が下手。
   アイドルの曲を集めただけか?聴いてて気がめいった。
   キーが低いのか、どの曲も暗さが漂う。(4)、(6)辺りがマシ。

   オーストラリアではヒットを飛ばしたロック・バンドの2枚組ライブ盤。
   86年くらいのFM雑誌で本盤の存在を知り、ずっと聴いてみたかった。
   鋭いレゲエっぽさで、ポリスに繋がる音楽性か。LPでは1981年の発売。
   盤起こしみたいなジャケの、初期なCD再発盤で購入。
190・Cold Chisel:Swingshift: ☆☆
   ハイトーンのボーカルが特徴的なロック。耳ノリの良いメロディで軽快に
   ステージが進んでゆく。ほんのり情緒的な雰囲気はヒットしてもおかしくないキャッチーなもの

   先日のライブ物販で購入。すずきあおい、吉田隆一、荻野和夫、壷井彰久などが
   参加したバンド、エレファント・トークの2nd(03年)。バンドのサウンドを
   聴くの初めて。チェンバー・プログレっぽいのかな?
189・エレファント・トーク:夜のボタン:☆☆☆
   冒頭のポップス性はアルバムが進むにつれ希薄になり、シンプルだが深みある
   オーケストレーションとシアトリカルな展開に引き込まれる。
   素朴な響きに弦や管で巧みに捻った味わいを加え、一ひねりしたロマンティシズムを提示した。
   キュート&ストレンジな世界観が魅力。

   同じく物販にて。自主制作、6曲入りのCD-R。
   トラッドを踏まえリュートの演奏を貴重に、静かなポップスを聴かせる。
   ニルヴァーナ"smells like teen sprit"のカバーを収録。
188・蒼二点:蒼二点:☆☆☆
   アコースティックで涼しげなアレンジ、女性ボーカル。どこか緊迫感を
   漂わせ続ける点がポイントか。センチメンタルをあえて排除するかのよう。
   ニルヴァーナのカバーが印象に残る。

   クラシック。帯の「静謐な美しさ」って表現に惹かれた。20世紀に活躍、
   1987年に他界した作曲家のピアノ曲を集めた作品。Naxos版を購入。
   奏者はホルディ・マソ(p)。

   第2集。帯によればドビュッシーなどの影響を受けてるそう。
   「12の前奏曲」「郊外」「対話」「魔法の歌」「子守唄」「遠い祭り」を収録。
187・Mompou:Piano music vol.2:☆☆☆★
   とにかく美しく繊細なピアノの音が噴出した。マソはダイナミズム
   豊かに鍵盤を叩き、丁寧にモンポウの音楽を奏でる。
   全て譜面なのにアドリブかのごとく、ルバートが映えそうな曲ばかり。
   じっくりと音を噛み締めたい。
   小さな音だけでなく、ときおり強打な和音のふくよかさも心地よい。
   モンポウのオリジナリティが炸裂した一枚。くつろぎながら、なるべく
   ボリュームを上げて聴きたい。細かな音の響きまで、聴き取れるように。

   第3集「ショパンの変奏曲」「3つの変奏曲」「エキスポの思い出」等を収録。
   奏者はホルディ・マソ(p)。
186・Mompou:Piano music vol.3:☆☆☆
   凛としたピアノがきれいだ。耳馴染みあるメロディから変奏が続く前半で
   音世界へすうっと入り、その後は抽象的な展開に耳をそばだてる。
   きいんと張りつつ、ふくよかなピアノの響きも良い。
   手数の多さで無く、和音の残響へ耳が残る。寛ぐには音世界の緊張が
   あるけれど、すうっと貫く清々しさとルバートのゆったりさは快感。
   さほど情感に溺れた曲が無い。

   第4集は代表曲の「ひそやかな音楽」(1959-1967)に、「橋」(1946)、
   「山(舞曲)」(1915)を収録。00年2月にスペインで録音された。
   奏者はホルディ・マソ(p)。後者2作品は、本盤が世界初録音とある。
185・Mompou:Piano music vol.4:☆☆☆★
   旋律が揺らぎ、ときおり不協和音的な響きも。しかし基調は繊細で美しい。
   きっちりしたテンポよりも、拍子を感じづらい曲のほうが、瑞々しい
   音使いに浸れた。めちゃくちゃ気持ちよく、音楽へ沈む。
   個々で特に良い曲もある。でもむしろ、
   数分の短い曲が連なって織られる流れのほうに惹かれた。

2007/6/10   ここんとこ購入したCDをまとめて。

   待望のコリン・ヘイ(元メン・アット・ワーク)の新作。
   バンド編成ながらシンプルでスワンプ色漂う、しっとりした仕上がり。
184・Colin Hay:Are you lookin' at me:☆☆☆☆
   味わい深い。メロディは素朴で、アレンジもカントリーを連想する
   暖かくてシンプルな音像を採用。アンサンブルはよく練られてる。
   寛いだ面持ちでコリンは歌い、じわじわとメロディがしみた。
   ハイトーンで歌い上げるより、つぶやくような歌唱のアルバム。
   バンド・サウンドだが弾き語りも想定したかのよう。
   複数の曲で共作者あり。バラエティを求めたか。
   コリンが円熟すると、こうなるのか。ブルースっぽさは希薄に聞こえた。

   ルインズの旧作が5曲の追加を含め再発。リミックスは吉田達也自身。
   佐々木恒が参加直後の作品で、手書きクレジットはイラストに差し替え。
   (1)~(16)がスタジオ作で、基本はベースが佐々木。(8),(10),(11)のみ増田のベース。
   (13)~(16)がボートラのスタジオ音源で、のちに是巨人で演奏の"You Know What You Like"もあり。
   (17)~(25)は97年2月に高円寺ショーボートでのライブ。
   そのうち今回(17)"Hyderomastgroningem"が、今回の発掘ボートラ音源になる。
   このライブは曲毎に違うゲストを招いており、(17)~(21)が菊地成孔、(22)がエミ・エレオノーラ。
   (23)は山本精一で(24)は小口健一(KENSO)が参加した。
183・Ruins:Refusal Fossil:

   2枚組の細野晴臣トリビュート・アルバム。さまざまなミュージシャンが
   上品に彼の曲をカバーした。細野のデモも1曲収録。
182・V.A.:細野晴臣トリビュート・アルバム:☆☆☆★
   カバーは玉石混交ながら、バラエティに富んで効き応えあり。
   オリジナルをすんなりカバーせず、スローや軽やかにアレンジした曲が目立つ。
   グルーヴィで才気煥発な細野の世界を追求した曲も聴きたかった。
   "ろっかばいまいべいびぃ"のデモなど、細野ファンへのお宝も。
   ユキヒロの"Sports man"、コーネリアスの"Turn Turn"などが特に好み。

   Hip-Oが発掘したファンカデリックによる、89年の未発表アルバム。
   ボートラで89年発売の12インチから4曲を収録した。
181・Funkadelic:By way of the drum:☆☆
   未発表音源のほうは、シンセ・ドラムの賑やかな響きがやたら強調されたファンク。
   Pファンクの粘っこさを期待したら外れる。気が抜けて物足りなかった。
   エディとブラックバードとおぼしきギターが交錯する(7)がクライマックスか。
   12インチを収録は、野太いシンセがフロア・テクノぽく響く、別次元のファンクネスを
   感じた。のちにジョージはヒップ・ホップへ興味を示すが、
   その萌芽かもしれない。最終曲のボーカルを強調した
   アカペラ・ミックスがドロっと粘っこく迫る。

   95年に発売されたアニメのサントラ。当時ヒットしたかはいまいち記憶無し。
   音楽監督が難波弘之、に惹かれて購入。
180・OST:アミテージ・ザ・サード 音楽篇:☆☆
   BGMより一歩進んだ打ち込みアンサンブル、な印象。生演奏もあるが
   硬いビートの印象が。アドリブで押し倒すわけじゃないため、
   いまひとつ食い足りなさも。2曲でBAKI(g)が参加。
   アニメと難波弘之のファン向けかな。

2007/6/3   ここ最近買ったCDをまとめて。

   GbVが04年11月9月にオースティンでのスタジオ・ライブを収録の2枚組CD。
   発掘音源のような位置づけと見るべき。
   同内容のDVDもあるが、未入手。オフィシャルではあるが、ロバートは
   特に製作へ積極的にかかわってなさそう。クレジットに名前無し。
179・Guided by Voices:Live from Austin TX:☆☆☆
   05年1月22に放送用音源らしいが、音の分離はいまいち。ちなみにライブの
   完全収録でもない。記録性を踏まえたファン向け。寛いだムードで
   演奏が進み、ひりひりするGbVらしい緊張感に欠けるため。
   会場のキャパは325人。もっとも当日は満席にならなかったという。もったいない。

   ロバートの最新ソロ。曲をロバートが書き、バックをトッド・トビアスらが担当。
   7曲入りのEP。ストリングスなどゴージャスなアレンジも採用のようだ。
178・Robert Pollard:Silverfish Trivia:☆☆☆
   インストも取り混ぜ、穏やかに漂うイメージ。ロックンロールのビートを
   控えて、トビアスの趣味に合わせたか?それともツアーを意識せずアレンジで、
   無造作に楽曲を並べただけか。老成な要素を覗かせた盤。

   MASADAにも影響受けたらしき、クレツマー・ジャズ・トリオの1st。TZADIKから00年発売。
   ダニーはサックスを吹く。1管編成ながら、ゲストでジョン・ゾーンが参加した。
177・Danny Zamir:Satlah:☆☆
   激しいインタープレイより、クレツマーっぽい情感溢れるメロディのほうが
   耳に残った。ハイテンション一辺倒でなく、語りも織り込む遊び心も。
   ゾーンが加わると、一気にフリーキー化が愉快だ。一曲選ぶなら(7)かな。
   舞い上がるスケール大きいテーマと、けだるげなジャズの混交が爽快だ。

   01年の2ndはNYトニックのライブ盤。ゲスト無しで3人編成のみ。
   前作のタイトルがバンド名に変わった。00年11月15~16日のライブから抜粋とある。
176・Satlah:Live at Tonic・Exodus:☆☆
   性急で切ないサックスは悪く無いが、いまひとつとっちらかった印象。
   若さゆえの勢いか、アンサンブルにまとまりが無い。
   熱気も中途半端でもどかしい。メロディ展開やアレンジは
   興味深いが、ちょっと落ち着きと熱気の狭間でうろうろな感じ。
   良質のクレツマー・ジャズとして一聴の価値はあり。
   センスはまずまずなので、今後の活躍を待ちたい。

   87年10月に行われたインプロ・イベント"Octobermeeting"からの収録。
   ジョン・ゾーン、マーク・ドレッサー、ルイ・スクラヴィスらの音源を収録。
175・V.A.:October meeting 87:☆☆★
   フリーキーさから聴きやすいフリーまで幅広い作風の盤だ。
   ミーシャ・メンゲルベルグのオマージュな、ジョン・ゾーンのユニット"Total loss"では
   オーソドックスなサックスでかっちりとジャズを提示。トロンボーン3管の
   深みが立ち上るガス・ジャンセンのユニットも興味深い。
   ベストはクリスチャン・マークレーとルイ・スクラヴィスのデュオかな。
   ターンテーブルなどでランダムな音像をぶつけるマークレーへ、
   上品でおっとりアヴァンギャルドなクラリネットやサックスをスクラヴィスが
   提示する。かみ合っていそうで、てんでばらばら。それでいて根本は調和する。
   30分以上の長尺で、ふと聞くには敷居高いけれど、刺激がいっぱい。

   89年に仙台で行われたライブ音源。ドラム二人とPCの3人組による
   ノイズ系インプロ。出身はスイスかな?ギュンター・ミラー他のユニット。
174・Nachtluft:時間と空間:☆☆
   混沌さを追求し、激しさと静けさが混在する。静寂もノイズの一員と
   みなして展開した。CDだけでは当時の雰囲気全てをつかめたか
   自信が無い。この手の音楽はライブで味わいたいと羨ましさが募る。
   静かな環境でスピーカーと向かい合いたい。
 
   mixCDが急に聴きたくなった。ソウル系が聴きたかったが、若干ラップ寄り。
   精力的にミックスCDをリリースと思しき日本人DJの作品。06年10月リリース。
173・DJ Tomiken:Luv game ver.36:
   歌モノ寄りでヒット曲中心の選曲か。
   冒頭のカチカチな音飾と色気のない売れ線ソウルな連発にメゲる。
   根本的にDJが狙う選曲と、趣味が合わないみたい。12曲目、モニカの
    "Gotta move on"から音像が若干聴けるが、それでも馴染めず。
   最後に朗々とかかる、ボビー・バレンチノ"Turn the page"も冒頭のピッチから
   違和感あり。うーむ。DJミックスは選曲が好みあわないと、聴きとおすのが辛い。

   関西の女性DJらしい。扇情的なジャケとは裏腹に、硬質な黒人音楽を
   並べたmixCDのようだ。05年に発表された。
172・DJ Megumi:The best of 2005:
   重ためのラップ寄りR&Bが淡々と続く。フロアで聞くならまだしも
   歌モノを期待したら当て外れ。ラップの流行概観には良いかもしれないが。
   いまひとつ好みと違うタイプのラップを選曲してる。

   スリランカのイベントへ行ったときに、ふと購入した1枚。
   ジャケットには年配の女性一人、横にタブラなどが並ぶ。
   民族音楽っぽいといいな、と期待し購入。唯一読める文字は以下のみ。
   詳細は全く不明。アルファベット・フォントでないため、検索も出来ない。
   ミュージシャン名なのか、アルバム・タイトルなのか。発売クレジットも見当たらず。
   CDジャケットにはレコード番号らしきものが"THA 2000-05"と書かれ、
   盤には"THA 2000-4"とあり。どういうことよ?フォントの感じから盤違いではなさそう。
   プロデュースでVijiya Ramanayakeの名が読めた。
171・?:Nadamalini:☆☆
   煌びやかなバック・トラックだが暑苦しさは希薄。タブラを中心に
   軽やかな女性ボーカルが複数絡む。基本は歌謡曲的なアプローチかな。
   ジャケットの女性だけでなく、違う女性も歌っていそう。
   情緒的なメロディが溢れるも、タブラの響きが軽みを付与し
   深刻さを減らす。気楽に聞き流しても違和感無し。

2007年5月

2007/5/13   GWも終わり・・・休み中や今週に購入したCDを。

   山下洋輔プロデュースによる林栄一のスタンダード集。サイドメンが加藤祟之、
   外山明、是安則克と豪華だ。96年録音。GOKで録音、エンジニアは無論、近藤祥昭。
   共同プロデューサーは現ノートラの村上寛。オーマガトキからのリリース。
170・林栄一:プレイズ・スタンダード「モナ・リザ」:☆☆☆☆
   しっとりスタンダードの小品を丁寧に詰め合わせた。フリーク・トーンや
   鋭さは控えめ。即興巧者でトリッキーなプレイも得意とするメンバーが揃っていながら、
   このまとまった穏やかぶりが素晴らしい。そして細部は、リズムやフレーズのせめぎあいを
   色々と楽しめる。のんびり聴いてもよし、さりげないインタープレイを楽しむもよし。
   さまざまな味わいが詰まった傑作。

   03年に録音された、臼井康浩とエリオット・シャープのデュオ。
   ニューヨーク録音で、ミックスとマスタリングは臼井が担当した。
169・臼井康浩/Elliott Sharp:Volcanic Island: ☆☆☆☆
   スリリングなエレキギターの即興交錯。拍子もテンポも曖昧に、
   混沌しつつも轟音でない。きっちり自らの音を提示し、独自に走る一方で
   互いの調和がうっすらと滲んできた。双方を両チャンネルにくっきり分けた
   明確なミックスが嬉しい。じっくりと双方を味わえた。
   比較的、だが。E#は細かいフレーズを積み重ねて音を紡ぎ、臼井は若干だけ
   音を太く歪ませた感触。それぞれが曲によって違うアプローチを取るため
   個性は書きづらい。ここにはテーマやソロ回しは無い。あくまでも
   互いのギターソロを並立で共演する。聴くほどに新しい興味が沸く一枚。
   燃え立つテンションはあえて押さえ、クールで抽象を追及した。
   あまりにあっけないエンディングの突き落としすらもある。

   大渓安弘(laptop)と内橋和久(g)のデュオで、00年に神戸でのライブ音源。
   大渓の自主レーベルによるシリーズ作かな。本作は第二弾。
168・大渓安弘/内橋和久:夏の逸話 2:☆☆☆
   エレクトロ・ハーシュがまず耳に残る。断片のカットアップとコラージュ。
   リズムやビートはほぼ無く、無作為にランダムな電子音が交錯する。
   セッションとは思えない抽象的な空気が心地よい。
   ノイジーではあるが、轟音で空間は埋めない。隙間を作り
   合間を縫ってギターがわずか響く。どちらかといえば
   ラップトップ側に軸足が置かれた。

   ブッチ・モリスやトム・コラがサイドメン参加に惹かれ購入。
   スイス盤かな。89年の録音。リーダーの二人はサックス奏者と電気五弦チェロ奏者。
   ハードなフリー・ジャズを期待して。さて、実際はいかに。
167・Martin Schutz & Hans Koch:Approximations:☆☆★
   五弦電気チェロとサックスのデュオが、各種ゲストを招き
   短尺のインプロを連ねるフリー・ジャズ。たとえドラムが入っても、
   基本的にはノー・ビート。ストイックに音を紡ぐ。アンサンブルより
   パルスな切り合いを主眼にした即興のためCDだと魅力が伝わりづらい。
   ハマればスリリングだが。(5)、(7)などが好み。

   英Enjaから02年リリース。プロデュースはウェイン・ホーヴィッツ。
   フェローン・アクラフ、マーク・ドレッサー、エリック・フリードランダー、
   ネッド・ローゼンバーグなどNYあたりの前衛ミュージシャンが20人ほど
   ずらり並ぶ。集団即興の作品かな、と期待して購入。
166・Marty Ehrlich:The long view:☆☆
   どしゃめしゃな格闘と逆ベクトル。
   アンサンブルを踏まえたオーケストレーションなジャズだった。
   リズムは控えめで、ホーンや弦の白玉がぐわっと動く穏やかさが主流か。
   ダイナミックで聴き応えあるが、全体の印象が暗め。聴いてて落ち込んできた。

   林栄一、川端民生、古澤良治郎によるバンドの、おそらく唯一の盤。
   95年にリリース。シドニー・ベシェの1曲以外は、メンバーの
   オリジナルを演奏している。全9曲、長尺ではなさそう。
165・Hopper's Duck:Far out: ☆☆☆★
   捻りを入れたフリージャズ。リズムは寸断され、林の鋭いサックスが
   空間を切り裂いて幅広いグルーヴを作った。
   長尺一本勝負でなく、曲を元にした構成のため
   メリハリついてすっきり聴ける。優しさは音像のごく奥へひそやかに置き、
   表面はスリリングで雑多なアクセントが溢れかえる。
   川端のベースも抑えに回らず、積極的にビートをひねくれさせた。
   細かく聴くほどに、3人のインタープレイが濃密に混ざる。

   日野皓正、富樫雅彦、菊地雅章が初めて競演したという93年の
   浜松ジャズフェスのライブ音源を全曲収録した。
   ベースはジェームス・ジナスが担当。
164・Hino-Kikuchi-Togashi:Triple Helix:☆☆
   淡々とアドリブが交錯する。グルーヴは見えづらく設定され、
   ピアノ・ドラム・トランペットが隙を伺いあうかのよう。
   ベースは一歩引いた立場。とっつきづらいジャズ。
   手なりのセッションとも聴けるし、インタープレイの探りあいとも聴ける。
   何度か聴いたが、ぴんとこない。もうすこし聴き進めたい。

   69年産まれ、NYのジャズ・バイオリン/ビオラ奏者のアルバム。
   西洋音楽で言う微分音も操るようだ。本作はソプラノ・サックス奏者の
   ジョー・マクフィーをゲストに向かえ、5人編成のフリージャズを
   聴かす。リズムよりも浮遊感を優先するかのよう。02年リリース。
163・Mat Maneri featuring Joe McPhee:Sustain:☆☆☆★
   じわっとしたフリージャズ。激しい曲もあるが、基調はゆったりと重厚な
   ポリリズムっぽく音が積み重なり、互いに溶けては漂う。
   緊張がしずしずと立ち上り、カタルシスは溜めたまま。
   さりげなくスリリングな快演。ライブを聴きたい。

   E#が93年にカーボン名義でリリースの作品。
   ボーカルも入れたパンク・ジャズか?
162・Elliott Sharp:Truthtable:☆☆
   ハードコアなマシンガン・ビートが似合う重たい曲調。しかしヘヴィな
   ジョゼフ・トランプのドラムが、頑強にリズムを支配しロックに仕上げた。
   全体的に彩り無く、すさんだ空気が漂う。一曲づつだと、鈍い爽快感に惹かれた。
   しかしアルバム一枚だと、いまひとつ飽きる。インプロ要素は少なめ、
   あくまでコンボ編成の勢いにこだわった一枚。

    米フリージャズのピアニストによる完全ソロ作。95年発売。
161・Matthew Shipp:Symbol Systems:☆☆★
   硬質なタッチでグルーヴとは逆ベクトルに向かう。(6)などで流れを
   出すときも、故意にフレーズを捻らせ孤高さを出した。
   きれいなメロディも稀に覗かせるが、すぐさま崩し聴き手を寛がせない。
   あくまでもフリーにこだわり、色気を廃し鍵盤へ向かう。とっつきにくいが
   音楽性は実直で、旋律の選択や曲展開にも乱暴さはない。
   印象深いのは(7)。前半は清々しく気持ちよい。後半はどしゃめしゃフリーへ行くけれど。
   ちょっとエッジがボケた録音が残念。迫力が滲んでしまう。
   BGMには向かず。音がギリギリとんがり、硬柔織り交ぜ耳へ迫ってきた。

   98年にTZADIKからリリースのピアノ・トリオ盤。リーダーは
   アンソニー・コールマン(p)か?
160・Sephardic Tinge:Morenica:☆☆
   短めに10曲つるべ打ち。スリリングなバップに仕上げた。しかし燃焼不足。
   和音感覚で妙に不穏なのが、ユダヤ流なのか。一定のビートで進んでいてすら、
   妙に隙間や揺らぎを感じることも。軽快なピアノへ無骨なベースが絡む。
   ドラムは素早いタッチで刻んだ。溌剌としてる。細かくアレンジされ、
   くっきり輪郭の涼しげなジャズ。悪くは無い。作り物っぽい熱気なのがいまいち。

   女性3人組のヒップ・ホップ。ウータン関連の傍流ユニットらしい。
   製作にウータン関連の名前は特に見えず。
159・Deadly Venoms:Still Standing:
   空虚な耳ざわりのラップが、特に盛り上がりも無く淡々と連なる。
   打ち込みと太めなシンセが伴奏の基調路線か。あまりにぬぼっとしたイメージ。
   凄みも無く、ラップの掛け合いも特に無し。

   マイルス・ブートを買いあさった一瞬に注文した一枚。
   JAZZ Door盤。コルトレーンが加わった、58年と59年の
   3種類のセッションから寄せ集めた1枚。
158・Miles Davis & John Coltrane:Live in New York:☆★
   録音日詳細クレジット無しのダメ盤。58~59年にかけて3公演からまとめた。
   コルトレーンは1曲のみ、未参加。テイクの出来では、その不参加な
   "It never entered my mind"が、ロマンチックなピアノとベースで秀逸だった。
   その他の演奏もほのぼの溌剌な印象で悪くない。音質もたまにノイズが入るくらい。
   少々こもってるが、まあ許せる程度。楽器の分離も良い。
   クレジットにこだわらず、コルトレーン時代のマイルスを楽しむなら
   手軽な盤かもしれない。

   これもコルトレーン参加時代のセッションを寄せ集め。
   ハーグでのライブを5曲、あとはニューヨークでの放送音源や
   フィラデルフィアのライブなど。半分以上がハーグ以外の音源だ。
157・Miles Davis Quintet:Live in Den Haag:
   複数の音源をまとめたCDで、タイトルは若干偽りあり。
   1~5曲目は1960年の欧州ツアー4/9付。オランダはハーグのライブ音源。
   放送音源でまずまずのクオリティだが、ところどころで音がヨレる。
   どのアドリブも緊張感高く、良い出来。ストレートなマイルスと
   吹きまくりで気弱げなコルトレーンの対比が聴ける。
   曲順がオリジナルと違うようなのが残念。なぜ変えたのか。
   6曲目は1959年4/2にNYでテレビ放送音源。当日は複数
   演奏したが、1曲のみ抽出。ちょっと演奏は上滑り気味か。クールにじっくり。
   7~8曲目は1955年11/17。NYで、テレビ放送音源。
   演奏曲は全て抽出。当時はよく演奏してたのかもしれないが、
   残された音源ではほとんど記録が残ってない。
   "Max is making wax"はパワフルで楽しい。
   "It never entered my mind"ではミュートをじっくり。
   9~10曲目が1956年のフィラデルフィアのブルーノートにて収録のライブ。
   ラジオ放送音源らしい。ちょっと演奏が上滑り気味で元気なさそう。

2007年4月

2007/4/30    買ったCDをまとめて書きます。

   素人の女性、ササキ・ミカのCD。携帯電話の作曲機能を使い
   日記を書くように数百曲を作曲したと言う。そのなかから38曲を収録。
   アンビエントで不安定で心揺れるテクノが聴ける。06年に日本の
   Powe Shovel Audioレーベルからリリース。。
   ジャケットは凝っており、写真やイラストもササキさんが担当した。
156・Sasaki san:Return of Sasakisan:☆☆☆★
   日常のあちこちでフィールド録音することで、異化効果を強調した。
   単なる音列が街のノイズと重なり、不思議な音楽へ変わる。
   断片のメロディを淡々と、次々に流すことでミニマルな
   安楽感を演出した。無表情な一連の長い曲と捉えることも可能だが、
   あえて細切れを強調するフィールド録音は成功してると思う。
   安定とは真逆な曲たちだが、不思議に和む一枚。

   タワレコの千円セレクション・クラシック。世界初CD化とある。
   大阪万博開催の1970年に読売交響楽団のメンバーが演奏した盤。
   三善晃、八村義夫、松村禎三の作曲した室内楽を、fl,vln,pの編成で演奏。
155・室内楽'70:室内楽'70:☆☆☆☆
   ストイックで涼やかなな現代音楽をコンパクトにまとめた一枚。
   確かな技術に裏づけられた3人のアンサンブルが見事。
   クラスターな八村義夫の曲でメリハリをつけた構成も好ましい。
   真の魅力は美しい三善晃と松村禎三の曲。明確なメロディでなく、
   アンサンブルの絡みで透徹な音世界を作る。
   いろいろフリー・ジャズを聴いた耳で味わうと、構築された音像へしっかりと進む
   3人のベクトル性に、根本で通低を感じた。総収録で30分強。
   コンパクトな時間でぎっちり味わおう。お得な盤。

   黒人男性のソウル新譜。売れてるのかはよくわからず。なんとなく
   甘そうなジャケの感触に惹かれて購入。これが1stらしい。
   詳しくは下のリンクを参照お願いします。手抜きな紹介だな。
154・Donell Jones:Journey of a Gemini:
   つるつるしたメロディは耳ざわりいいが、あまりに引っかかり無し。
   歌声もいまいち心に響かず。形のいい砂糖菓子のよう。

   いわゆるジャズの名盤。ロリンズとコルトレーン、唯一の共演盤と帯に記載あり。
   実は今まで聴いたことありませんでした。プレスティッジへ1956年に吹き込まれた。   
153・Sonny Rollins Quartet:Tenor Madness:☆☆☆
   売りなはずのコルトレーンとのトラックはいまひとつ、ぴんと来ず。
   手馴れた感じで進んでしまった。むしろ4人編成のシンプルな2曲目以降に
   ぐっとくる。ベストが(3)かな。派手さはないが、着実なテクニックでジャズをした。

   メルツバウの新譜を数枚購入。
   インポータント・レーベルからの動物シリーズ最新作。
   06年の11月に自宅スタジオで録音された。楽器名は書いていないが、
   中ジャケの写真を見るにパワーマックのほか、ドラムやアナログシンセ、
   自作ノイズマシンなどを使っていそうだ。
152・Merzbow:Merzbear:☆☆☆★
   サイケなアナログ感覚溢れるハーシュが、轟き続ける傑作。
   下味はループだが、上層でぞんぶんにノイズと戯れるメルツバウを味わえた。
   多層構造の音像もばっちり。どの曲も極端な長尺でなく、コンパクトにまとめた。
   パワー・ノイズと戯れつつ、テンションはそれほど高くないのがユニークだ。

   06年に日本で開催されたカルロス・ジフォニの"楽しくない音楽会"関連盤2種が出た。
   本作は11/30に渋谷アップリンクのライブ盤。ゲストにジム・オルークが参加して、
   本盤の編集やマスタリングもジムが担当した。当日の筆者の感想はこちら
151・Merzbow + Carlos Giffoni + Jim O'rourke:Electric Dress:☆☆☆
   前半はくっきりと音を整理し、闇雲なハーシュは避けた。当日がここまでシンプルな
   音楽だったかは記憶に無いが、編集段階でジムが大胆に再構成していそう。
   途中でリバーブがかかったりと、凝った音使いも聴ける。録音段階で発生か、
   後付の効果かは不明ながら。60分近く一本勝負は、たしかにライブの
   様子を収録してる。しかし細かくトラック切りしてメリハリもつけて欲しかった。
   中盤からハーシュ度合いを増す。音圧はさほどでもなく、超高音の鋭さは聴きもの。
   音の分離はきれいで、エッジがすっと立ったノイズだ。

   カルロス・ジフォニとメルツバウによる06/9/25スーパー・デラックスでの
   ライブ音源。音盤化に伴う編集にメルツバウは関与してないのか、クレジット無し。
150・Merzbow + Carlos Giffoni:Synth Destruction:☆☆★
   ライブ録音の流れを強調した。ひとつながりに演奏がのめってゆく。
   アナログの生々しい要素もあるが、むしろ繰り返しやドローンめいた
   電子的世界感がくっきり漂った。なんとなく想像はつくが、メルツバウと
   ジフォニの役割分担は、はっきりとわかってない。

   セミ・オフィシャル盤。レコーディング・クレジットらしきものは
   "1989 USA"のみ。年代が正しいと仮定し、セットリストから推測するに
   1989年4月11日のパリ音源っぽい。おそらく完全音源。放送素材が元か。   
149・Miles Davis:time after time:☆☆
   予想よりもクールなファンク。スリルには欠けるが、きっちりと
   アレンジがまとまってる上、個々のアドリブも雑然と入る。
   パーカッション強調でダンサブルでは無いが、前のめりな勢いを感じた。
   マイルスの鋭さを求めるには酷だが、聴いて楽しめるクオリティはあり。
   本盤は音質もまずまず。ちょっとエッジがボケるくらいか。

2007/4/28   ここんとこ購入したCDをまとめて。

   ロシアのホルン奏者シルクロペルのソロ。98年に発表らしい。
   前衛ジャズのみならずクラシックも吹ける確かなテクニックに惹かれた。
148・Arkady Shilkloper:Hornology:☆☆☆
   圧倒的なテクニックで滑らかなインストを聴かす。即興要素はあるのかも
   知れないが、構築性が先に立った。これがホルンとは。まるでシンセも使ってるみたいだ。
   多重録音で硬質かつ整ったシンプルなアンサンブルを作った。
   ジャズよりもクラシックの音世界を広げたかのよう。
   端正でおっとりさが耳に心地よい。
   耳馴染みよいが、細かく聴くと凄まじい。ストイックかつポップ。

   マイルスのセミ・オフィシャル盤。スペインのLonehilljazzから05年に発売された。
   中身は57年12月にオランダのアムステルダムで放送のライブ音源より。全曲収録と謳ってる。
   サイドメンはBarney Wilen (ts); René Urtreger (p); Pierre Michelot (b); Kenny Clarke (d)。
   確かに1st/2ndセットの両方をCD1枚にまとめた様子。
147・Miles Davis Quintet featuring Barney Wilen:Amsterdam Concert: ☆☆★
   "死刑台のエレベータ"録音後に、オランダで行われたライブ。
   若干タイトな風味だが、基本はリラックスしたモダンジャズ。
   ほんのり陰のあるマイルスのトランペットが涼しげに響く。
   音質はまあまあ。ときおりノイズが入る。

   これも欧州のセミ・オフィシャル盤。60年のスイス・ライブをメインに、
   ボートラで58年のNYライブを4曲収録した。
146・Miles Davis Quintet with John Coltrane:Live in Zurich:☆☆☆
   前半は60年4月8日、ノーマン・グランツ仕切りの"Jazz at the Philharmonic"欧州ツアー音源。
    終盤に差し掛かった頃で、音源はFM放送が元らしい。少々輪郭が錆びつく、
   いまいちな音質。ジミー・コブがシンバルを盛大に鳴らし、アグレッシブに
   突き進む。コルトレーンの饒舌さは気弱げ。マイルスの強さが耳に残った。
   ピアノはウイントン・ケリー。鍵盤を柔らかく押さえ、二人の演奏を妨げない。
   後半は58年5月17日、NYはカフェ・ボヘミアでの録音で、こちらも
   ラジオ用の録音より。"Two Bass Hit"は、最初に発掘された48秒バージョンで
   収録された。この時期、マイルスは2週間ここへ出演。5/15は最終日前日になる。
   コルトレーンは饒舌ながら音は太く、好ましく聴ける。こういうテナーが好き。
   音はちょい割れ、くらいか。はつらつな快演。テープが終わっちゃうの、惜しい。
   これこそ完璧音源が聴きたいぞ。

2007/4/22   今回もCD購入。

   聴きに行ったイベントで面白いと思った、サインホ・ナムチェラクのCDを早速購入。
   トゥバの女性シンガー。6オクターブの声域を持ち、ホーメイを見事に操る。
   本盤は完全ソロ。即興で声を絞ってるようだ。1992年にドイツのレーベルからリリース。
145・Sainkho Namtchylak:Lost Rivers:☆☆☆★
   ボイス・インプロとして良質とは思う。ハイトーンから低音ホーメイ、
   シャウトから即興言葉によるフレーズ使いなど。メロディの断片は
   あるが、むしろ声による抽象的な世界を作ることに軸足を
   置いてるようだ。困るのは、絶叫やうめき声までふんだんに使った
   即興を駆使すること。音楽性の興味深さはわかる。テクニックのすさまじさも。
   しかし女性の断末魔や悲鳴を聴き続けてる気がして、精神衛生上よろしくないのが玉に瑕。

   00年にアメリカでの録音かな?ネッド・ローゼンバーグ(sax)が参加。
   ギターやループ奏者も参加し、コンボ編成でハードな即興をやってる予感。
144・Sainkho Namtchylak:Stepmother City:☆☆☆☆
   エキゾティックなサインホの幅広いボーカル・スタイルをベースに、
   きれいなポップスへうまく仕上げた。アレンジのロベルト・コロンボの手腕か。すごい。
   レゲエ、オリエンタル、シンプルなポップ。流行やポピュラリティへ
   おもねらず、見事な親しみやすい完成度に舌を巻いた。サインホを初めて聴くなら
   本盤が入門に手ごろでは。

   ビクターから1枚千円の激安シリーズが始まってると知った。
   価格破壊がクラシックからジャズにまで広がったか。
   とりあえず一枚、ピアノ・コンボ盤を買う。プレスティッジで1960年に
   吹き込まれた。恥ずかしながら初耳。ゴスペルっぽいジャズらしい。
143・The John Wright Trio:Nice'n'tasty:☆☆☆
   ジャケットのグルーヴィさと一味違う、甘いピアノ。予想以上に
   上品な仕上がりだった。暖かくてほんのりファンキー。
   熱く迫る凄みは無いが、寛いで聴くのによい。サイドメンのリズムも堅実だ。
   スケールが意外に広いジャズ。

   吉田達也がらみの新譜。ワルシャワで録音されたデュオ。相方は
   ピアノとベースを演奏するPiotr Zabrodzki。
142・Piotr Zabrodzki/Yoshida Tatsuya:Karakany:☆☆☆★
   趣きとか情緒とか全く考慮せず。ひたすらスピーディに噛み付くがごとく
   インプロを戦わせる。ところが背後でベースなどをダビングしてる辺り、
   構成に気を使ってるということか。一聴し迫力に惹かれ、
   聴きこむほどにアレンジの組み立てへ耳をそばだてる。
   痛快にはじけるぶん、繰り返し聴けるインプロ作品。

   大滝詠一が"Niagara Fall of sound orchestral"名義でリリースの、
   イージー・リスニングにアレンジした"ロング・バケイション"。
   ちゃんと聴くのは初めて。リリースは82年。91年のCD選書盤で購入。
141・Niagara Fall of Sound Orchestral:Niagara Song book:☆☆☆
   ロンバケに限らず、幅広い選曲。弦が涼しげかつ強く鳴り、
   単純に聞き流せぬ意思を感じた。リズムを取って流麗さを
   仕込んだアレンジ。"スピーチ・バルーン"や"シベリア鉄道"を
   この編成で聴いてみたかった。古い曲も含めるならば
   "空とぶくじら"とか。主旋律はフルレンジ。"恋するカレン"の
   めくるめく展開がクライマックスか。

   マイルスのブート盤。独JazzDoorのセミ・オフィシャルにて。
   1955年にボストンでのライブ音源。CD1枚モノ。
140・Miles Davis & the Hi-Hat All stars:Live at the Hi-Hat/Boston:☆★
   現地ミュージシャンと"NYの有名ミュージシャン"の競演を
   売りにしていたボストンの"Hi-Hat"でライブ録音。
   しめて2週間、マイルスは滞在したという。ぼろぼろとは言わないが、
   勢いや雰囲気一発で駆ける演奏なのは否めず。
   悪くは無いが、新しさは感じられないのも正直なところ。
   音源自体も切れるわ揺れるわ、かなり厳しい。表舞台のみならず、
   クラブ稼業なマイルスの、記録として聴くべきか。
   テナーと疾走するマイルスの様子など、深く考えなければ悪くない。
   マイルスのオリジナルやモンクの曲など、演奏のみならず
   選曲も現地ミュージシャンたちは頑張ってると思う。

2007/4/15   レコ屋にて。欲しいCDいっぱいあるなあ。

   DCPRGのスタジオ盤3rd。ライブをずっと見そびれており、本盤が楽しみだった。
   ホーン隊の加わった14人編成の2枚組。それぞれが50分程度で、むやみに
   長尺の編集にしてないところが、なんだか好感持てた。
139・Date Course Pentagon Royal Garden:Franz Kafka's America:☆☆☆☆
   最終作だが最高傑作。ダンサブルさやくっきりしたメロディをあえて回避し
   即興とジャムと(編集と)ポリリズムが淡々と続く。2枚組のボリュームで
   極上の退屈なグルーヴを演出した。一枚単位ではさほど時間は長くない。
   あえて長尺でCDぎっしり詰め込むのは回避した。推測だが音源はまだあるだろう。
   しかし真実の空虚さへ陥らぬバランス感覚を意識し、聴きやすさの手がかりを残した。
   アルバム一枚へ凝縮する潔さも期待したかったが、今度は長尺のデカダンさを
   演出はしづらかったろう。ともあれ強力アゲアゲなCDデビュー初期の
   DCPRGがオリジナルで凝縮した2ndを経て、達観したファンクを表現した。

   ブートくさいボックス。フランスからのリリースでマイルスのライブ音源を
   集めた。10枚組のボリュームで、1948-1955年までを収録。各ライブから数曲を
   抽出し、包含するコンセプトを取った。この手のボックスにしては珍しく
   きちんとしたブックレット付。しかもデジタル・リマスターまで。じっくり聴くぞう。
138・Miles Davis:The Complete Live Recordings 1948-1955:☆☆☆★
   音質がひどい音源もかなりあり、マニア向けとはいえこれだけのボリュームを
   まとめて廉価で聴ける企画は嬉しい。まだマイルスが完全に個性を出さず
   手馴れたセッションで流すような瞬間もいくつかある。
   さまざまな顔ぶれでハードなライブを繰り返す毎日の、片鱗が伺えた。

   Disc1:☆★
   音質はいまいち。かなり遠い。観客のおしゃべりも演奏の奥に聞こえる。
   少なくとも耳を済ませて聴いていたわけではなさそう。
   1948年のライブ2種類、九重奏団へボーカルが曲によって加わる。
   さらにボーナスで46年の九重奏編成で1曲、48年8月にシカゴで演奏、ガレスピーらも加わった、
   16人編成の編成で2曲。スイングから一歩踏み込んだ演奏を目指していそうだが、
   いかんせん音質が悪く細かなとこまで聴き取れない。いきおいソロお
   合間にアンサンブルが深くかぶさる、程度しかピンと来なかった。

   Disc2:☆☆   4種類のライブを収録した。
   冒頭4曲はNYで1948年9月25日、Royal Roost公演のラジオ放送音源。
   マイルスはここで2週間の公演を行い、9重奏を主に日ごとに編成を変えた感じ。
   この日はリー・コニッツ、マックス・ローチらとの5重奏。音源が残る4曲全てを
   収録したが、なぜか曲順をちょっといじった。1曲でボーカルのケニー"パンチョ"ハグッドが
   参加。マイルスのトランペットはスムーズだが、ライブそのものは
   いまひとつ元気無い。手馴れた感じで流れてしまう。
   次のセッションは49年1月17日、NY WPIXラジオの放送音源で、5曲演奏中、3曲を本盤で収録。
   8人編成の演奏は、音質がこもり気味。スインギーに決めた。
   アドリブはバディ・デフランコのクラリネットが気持ちいい。
   3公演めは、49年2月19日、NYのまたRoyal Roost公演。MCをカットし
   演奏は4曲全てを収録した。10人編成だが、音質のせいか
   さほどビッグ・バンドに聴こえぬのが残念。(9)がかっこいい。
   最後は同年同月26日、同じ場所でのWMCAラジオ放送音源。
   放送された2曲全てを収録した。メンバーは本盤3セッションめと同じ。
   若干スケールの大きさが出たか。アンサンブルがちと甘い。

   Disc3:☆☆
   冒頭10曲が49年5月にタッド・ダメロンとの6人編成でパリのツアーより。
   音質悪い。ラジオ音源らしいが、DJの喋りまでそのまま使った編集。
   ヒスノイズが目立つ。演奏はバーニー・スピーラーのベースが溌剌とし、
   タッドのピアノも弾んでかっこいい。時に滑らかすぎるジェイムズ・ムーディのサックスは
   もどかしいが、マイルスのペットは常に鋭くつっこんだ。
   演奏がまずまずだけに、音質の悪さが残念。一曲づつ切れ目在りも興ざめ。
   (11)も同時期のライブ音源。途中で切れるバージョンを使用。
   (12)~(14)は音質が若干マシになる程度。演奏は活き活きで良い。
   1949年12月のNYクリスマス公演より。バド・パウェルの転がるピアノを筆頭に、猛烈な
   バップが炸裂する痛快な演奏。本盤はこれが聴きもの。

   Disc4:☆☆☆
    前半は50年2月18日のWNYCラジオ放送用音源。マイルス=ゲッツ・セクステットとして録音。
   NYバードランドで一週間のライブ直後に録音した。前のめりなテンションはあるが
   いまひとつ突き抜けず。聴きものはまず、ゲッツのテナー。マイルスの
   ペットもはじけるが、少々音の分離が悪い。"Max is making wax"がベストかな。
   後半は同年6月30日のNYバードランド公演より。オーディエンス録音のようだ。
   本盤へは1stセットの抜粋を収録。ちなみに2ndセットは本ボックスのDisc5に収められている。
   そもそもはバードランド・オールスターズで出演した。
   演奏はアグレッシブで良い。ブレイキーのドラムが気を吐き煽りたて、ホーンは
   どれもめまぐるしいソロを聴かす。特に"Wee"が良かった。音質はかなりラフ。   

   Disc5:☆☆☆
    1950年6月30日のNYバードランド公演、2ndセット。長尺の曲が続き、どこか落ち着いた雰囲気。
   アップテンポながら、少々上滑りさを感じた。生で聴いてたら楽しめたと思う。
   音質はやはりかなりラフ。
   後半は51年2月17日のNYバードランド公演。ソニー・ロリンズが加わり、ピアノがケニー・ドリューに変わった。
   WJZラジオ放送用音源。曲順を替えつつ、全曲を本盤へ収録のようだ。
   ちょっと揺れる箇所もある音質。
   マイルスは元気。バンドが一丸となり、突出せずまとまった。
   音質が良ければ、魅力が増した気がする。

   Disc 6:☆☆☆★
   4種の音源を収録。場所は全てNYのバードランドにて。順番に感想を書こう。
   1)3曲。51年6月2日の演奏で、Disc5のおよそ一年後にあたる。6人編成で他のフロントはロリンズとJ.J.ジョンソン。
   性急にまくし立てるロリンズと、どこか優雅なジョンソンの対比がポイントか。
   ブレイキーのドラムも溌剌で、ソロ回しでがらっと風景変える。WJZの放送音源が元のはずだが、かなり音はラフで惜しい。
   ベストは"Half Nelson"。音も比較的きれい。マイルスのソロがいいなあ。
   2)3曲、同年8月29日に。フロントはエディ・ロックジョウ・デイヴィス(ts)、ビッグ・ニック・ニコラス(ts)に変わった。
   同じなのはドラムだけ。ベースはミンガスが弾いている。"Miles Agead"の解説によると、マイルスはヘロ中毒の治療でボロボロ、
   ミンガスはRed Norvoのトリオを止め仕事を探しにNYへ来てたとか。これもWJZの放送音源。1)より音質はいくぶんマシ。こもってはいるけれど。
   マイルスのペットはちょっと平板か。表面を撫でるように動く。演奏全体は活き活きしてかっこいい。どたばたとドラムが煽り、サックスも熱い。
   特に"Move"ではテナー二人のチェイスが存分に聴ける。
   3)3曲、52年4月25日より。これもWJZの放送音源。バードランドとライブ放送提携か、マイルスに着目の特別番組か、どちらだろう。
   周辺メンバーはがらり違い、6人編成ながらフロントの管はマイルスのみ。ヴァイブとギターが脇を固めた。
   それも当然、これはマイルスがベリル・ブッカー(p)のバンドへゲストで加わったそう。
   へロ治療で数ヶ月NYを離れてたマイルスが、この演奏をきっかけに翌月の一週間公演が契約できたという。
   初手からいきなりマイルスが吹きまくり。元気いい。ヴァイブが柔らかく包んだ。ただし1曲は3~4分程度。1)や2)が6~9分に及ぶ演奏に対し短い。
   4)2曲、同年5月2日。これが3)に続く自らの公演にあたる。気に入ったのか、3)のメンバーからヴァイブとドラムを引き抜いた。
   横に立つのはジャッキー・マクリーンの6人編成。ドラムの手数は多いがブレイキーより洗練されたイメージ。
   ヴァイブとアルト・サックスのからみが聴きもの。
   途中でノイズが入るイマイチ音質だが、スピーディーな魅力がつまったライブだ。

   Disc 7:☆★
   1952年春、Barrel Club, St. Louis MOにて。Jimmy Forrest Quintet with Miles Davisの形式らしい。
   メンバーはMiles Davis (tpt); Jimmy Forrest (ts, voc); Charles Fox (p); Johnny Mixon (b); Oscar Oldham (d); Unknown (cga)。
   しかしまあ、リズム隊がけっこうごっちゃごちゃ。マイルスとジミーの息も、いまいち合ってない。
   互いにそこそこ無難に吹きまくってる印象を受けた。
   だがバラードの"What's New?"は鋭い緊迫感がきれいな快演だ。オーディエンス・ノイズバリバリで
   ろくに音楽聴いてなさそうな観客のテンションに引きもするけれど。
   音が揺れるオーディエンス録音。記録した観客の好事家に拍手したい。
   
   Disc 8:☆☆
   前半はジャッキー・マクリーンも加わった6人編成で、52年3/3のNYCはバードランドにて。
   フロントは溌剌だが録音の音質もあいまって、リズムが妙にしょぼい。
   ヴァイブのドン・エリオットが気を吐くが、どうにも中途半端な印象あり。
   後半が53年初期にボストンでの録音。メンバーはがらり変わり、ピアノが
   二人クレジットされている。フロントはジェイ・ミグロニ(ts)との二管。
   颯爽さがそこかしこに感じられ、演奏はこちらが良い。甘くペットが弾み、
   ジミー・ジターノのドラムが軽快に刻む。ピアノもいいな。

   Disc 9:☆☆
   53年はじめのボストン公演、53年5/16と5/23のNYバードランドでの公演から収録。
   ボストンは"Miles Ahead"にも記録見つからず。
   ボストン公演では、アル・ワルコットのピアノがところどころでシャープ。耳をひく。
   基本はのんきで寛いでる。5/16のNYは音がかなり悪いが、初手からアグレッシブ。
   けれど途中からアンサンブルが穏やかに。
   5/16NY公演はトロントにいたガレスピーのトラで、マイルスが入ったらしい。
   バリサクでサヒブ・シハブが入る変則5人編成だが、聴こえづらく残念。5/16は1曲で
   キャンディード・キャメロがコンガで参加。軽快にリズムを飛ばすのがベストか。
   5/23はガレスピー、パーカーにマイルスとシハブの4管体制。
   音質悪くて辛い。アル・ジョーンズのシンバルがゴングのようだ。
   2曲中ともジョー・キャロルが歌う。軽快なジャンプの"The Bluest Blues"と、小粋なジャズの
   "On the sunny side of the street"。どちらもソロが短くもどかしいが、溌剌さでは3公演中1番。

   Disc 10:☆☆☆★
   3公演を収録。
   冒頭3曲は53年9月13日、Lighthouse Café, Hermosa Beach CA。Lighthouse All-Starsでメンバーは
   Miles Davis (tpt); Rolf Ericson (tpt); Bud Shank (as, bs); Bob Cooper (ts); Lorraine Geller (p); Howard Rumsey (b); Max Roach (d)
   冒頭のピアノと執拗に絡み続ける(1)がベスト。ピアノは端正で上手い。
   (2)以降はソロ回しのセッション。小粋だが、緊迫感はさすがに薄まった。(3)は逆にスインギーな気楽さが良い。
   (4)-(7)は55年7月17日、Festival Field, Newport RI。名義はAll-Star jam sessionでメンバーは
   Miles Davis (tpt); Zoot Sims [John Haley] (ts); Gerry Mulligan (bs); Thelonious Monk (p); Percy Heath (b); Connie Kay (d); Edward "Duke" Ellington (ann)。
   モンクやマリガンとの共演が興味を引く。しゅわしゅわハイハットが鳴る
   妙な音質だが、独特なピアノの和音感は味わえた。全体的には寛いだソロ回しの趣き。
   さらに"Round~"ではマイルスとモンク、二人の対話を存分に味わえる。このテイクだけで、本盤はOK。
   最後の2曲が同年11月18日(17日かも)。John Coltrane (ts); William "Red" Garland (p); Paul Chambers (b); Philly Joe Jones (d)と
   顔ぶれは壮絶だ。Steve Allenがホストのテレビ番組に出演の音源。マラソンセッションは既に終わってる。
   音質はかなり悪いが、演奏の緊迫感は格別。各楽曲は短く、あっという間なのが無念。
   

2007/4/12    一噌幸弘関係の新譜を購入。

   鬼怒無月、吉見正樹とのトリオでのスタジオ録音盤。05年と06年に収録された。
137・一噌幸弘トリオ:カカリ乱幻:☆☆☆☆
   超絶技巧でうねりまくる切ない笛を堪能できる。鬼怒や吉見は一歩引いた
   印象あり。とにかく一噌の鋭い旋律が存分に撒き散らされた。
   ユニゾンを多用し、見事に駆け抜ける爽快感と、叙情性が溶け合う
   音楽は美しい。厳粛ながら見通し良い余裕も感じた。
   すっきりした録音で、甲高い笛の音が粒立った。
   強烈な笛の個性がまず耳を惹き、続いてアンサンブルの妙味へ。
   即興要素はあえて控え、笛をくっきりとロマンティックに聴かせるコンセプトだ。

   壷井彰久、高木潤一、吉見正樹、茂戸藤浩司(太鼓)とのライブ盤。
   05年10月のピットインと、05年11月に浅草アートスクエアで収録した。
   彼のユニット、"しらせ"名義。
136・一噌幸弘:ふ、ふ、ふ、 しらせLIVE:☆☆☆☆
   ライブ感溢れる音像で急転直下に迫る。タブラ、バイオリン、ギター、太鼓、そして笛。
   アンサンブルが破綻しそうな組合せにもかかわらず、きっちりと凝縮した演奏を
   繰り広げるさまがスリリング。日本情緒を根底に据え、高速で駆け抜ける笛の
   勢いにまず耳が行くが、滑らかで切ないメロディも聴ける。
   一噌だけでなく、他ミュージシャンのソロも一杯。
   めくるめく音の渦を楽しめる、爽快な一枚。

2007/4/9   CDが到着。

   TBS系ドラマ「年下の男」のサントラ。太田惠資が参加を目当てに購入。
   ジャケ写にも登場し、かなり音楽でも活動してそう。作曲は栗山和樹。
   2003年の発売。ほかのミュージシャンは元パール兄弟のバカボン鈴木や窪田晴男、
   スタジオ系サックスの大御所ジェイク・H・コンセプションなどが目に付いた。
135・OST:年下の男:☆☆
   エスニックな風味。サントラにしては力強くランダムな感触で
   音楽が紡がれる。たしかに冒頭から太田惠資のヴォイスが入ったり
   するものの、さほど強烈に前面へ出たとはいいがたい。
   あくまでアンサンブルの一要素か。
   無国籍かつ多国籍なインストを聴くには楽しい。一曲は短め。
   硬派でリズミカル。それでいて、どこかユーモラス。いったいどんなドラマに
   この音楽は使われたんだろう。

2007/4/7   新譜を購入。

   メルツバウの新譜は04年発表なNordvargrとのコンビ第2弾。
   録音は05年の9月に行われた。
134・Merzbow vs nordvargr:Partikel II:☆☆★
   どの曲をどちらが主導権もったかクレジットは無し。あくまで勘だが、4曲中
   (2)と(3)がメルツバウかな。ノードバーグは一定のビートを意識し、ダンサブルさをもつ。
   どこかすっきりさをめざしていそう。メルツバウはノービート、体内時計の
   赴くままにノイズを展開さす。全体的にノードバーグの意識が強まった
   音像でハーシュは彩りとなった。混沌さや重層性はさほど無し。
   インダストリアルやアンビエント・テクノっぽい場面もあり。

   06年に韓国(ソウル)で行われたライブ盤がリリースされた。
   三上のファンクラブ"三上工務店"製作で、1000枚限定。
   競演は辛恵英(玄琴, vo, perc)佐藤行衛(electric machine)。
   全18曲入りでキャリアを俯瞰するレパートリーを演奏してる模様。
133・三上寛:寛流:☆☆☆★
   音質はいまひとつこもってる。細かなところは聴きづらく、三上の吼え声は
   割れんばかり。ノイジーなギターやメタリックなパーカッションがサポート
   しているようだが、アンサンブルというより全体で混沌を紡ぐかのよう。
   三上は次々に歌い継ぐ。音盤は2公演から抽出編集され、ひとつながりの公演
   めいた流れは作られていない。怒涛なライブの熱狂を旨く切り取った傑作。
   枠線からはみ出しつつ、どこかコンパクトな印象残るのは録音のせいか。
   三上を初めて聴く人には薦めないが、ある程度のファンならば聞き逃すべきではない。

   三上寛の新譜スタジオ盤。PSFからリリースされた。
   エレキギターの弾き語り一発録音らしい。帯には"ソロ・シリーズ・新たなる
   旅立ち・第一章"とある。再び膨大なスタジオ盤群の前触れか。
132・三上寛:吠える練習///白線:☆☆☆★
   すさまじく濃密な三上の歌世界が広がる。リズムもテンポも解体した、
   エレキギターのさりげないストローク。それ以外の楽器は何も無い。
   あとは、むせび泣くように軋む歌声のみ。
   白黒のジャケットが飾りっけを消し、あからさまな三上をさらした。
   歌声は切なく空気を刻む。
   わずか28分曲、あっというまの10曲。
   言葉の奔流はセンチメンタルなグルーヴへ変わり、細かく揺れる。
   あらたな三上の方向性を、きっちりと切り取った傑作。

2007年3月

2007/3/31   最近買ったCD。

   シナトラが69年に録音した、ストーリー仕立てのアルバム。
   プロデュースがボブ・ゴーディオ、アレンジがチャーリー・カレロほか。
   すなわちフォー・シーズンズのスタッフが製作をつとめた。
   "The Genuine Imitation Life Gazette"の裏盤にあたる作品らしい。
131・Frank Sinatra:Watertown:☆☆☆☆
   コンセプトは切なくてよい。歌詞をじっくり読むと味わいはさらに増す。
   アレンジは秀逸、メロディもキュートでフォー・シーズンズのファンには
   是非聴いてほしい盤。しかし、惜しむらくは・・・シナトラの歌を目立たせるためか
   コーラスをまったくフィーチュアしてないことと、訥々な彼の歌が
   溌剌さと対極なこと。ロマンティックに歌い上げるとき、ヴァリの粘っこさを
   聴きながらつい、求めてしまう。ポップス・ファンの視点で聴くと、とてももどかしい。

   泉谷しげるのデビュー35年を記念した盤。エレック、フォーライフ、ワーナーなど
   レーベル横断で代表的な10枚を抽出し、さらに自主レーベルからリリースした
   ライブCD1枚+DVDをボーナスにした12枚組のボックス。
   ジャケットはカラーコピー並みで、デザイン的にはイマイチ。音質はリマスター。
130・泉谷しげる:黒いカバン:
   ボックスとしては評価できかねる。ジャケットはカラーコピー並みで愛情を
   感じられず、ブックレットも資料性はイマイチ。たとえば本人による全曲解説とか
   読んでみたかった。リマスターはうれしいが、レア・トラックもないし。
   ケースも凝っておらず、がっくり。各盤の価値は別。個別に感想書きます。

    "泉谷しげる登場"(1971)☆☆☆
   あまりな照れ具合がなんとも初々しい・・・と言うべきか。弾き語りと
   バンド・サウンドを旨く混ぜた。バンドのドタバタなリズムっぷりは時代かな。
   青臭い歌い口ながら、メロディの聴き応えはなかなか。"白雪姫の毒リンゴ"、
   "東西南北"、"人生を越えて"など、佳曲も。

   "春夏秋冬"(1972)☆☆☆:フォーク路線ながら、曲によっては弾き語りに留まらぬアンサンブル志向。
   加藤和彦アレンジの成果か。ドラムはつのだひろ、ギターやベースは高中正義。
   ピアノは加藤和彦がつとめた。ギターは加藤と泉谷。
   結構ラフな演奏。"春夏秋冬"の他には、ベースがメロディアスな
   "行きずりのブルース"が聴き応えたんまり。
   声域はずれでシャウトの"地球がとっても青いから"も勇ましい。
   泉谷の素直さキュートさ、叙情性を若々しく封じ込めた。

   "黄金狂時代"(1974)☆☆☆☆:初期の傑作。ロック色が強まり、泉谷のシャウトも力強い。
   演歌調の叙情性には戸惑う。この両立が、泉谷なのか。C&Wへの
   傾倒も感じた。"火の鳥"や"Dのロック"でのシャウト、ディラン調の"摩天楼"、
   ブルージィな"眠れない夜"など聴き所多し。

   "都会のランナー"(1979)☆★:AOR。泉谷には合わない。シャウトの勢いはかうし、
   歌詞も良い。根本のメロディも滑らかだと思う。しかし軽快なドラミングと
   ぬっぺりと上品なアレンジで、聴いててかなり辛い。"王の闇"や"君の心を眠らせないで"など、
   もっと骨太ならばのめりこめるのに。アレンジは加藤和彦。

   "ELEVATOR"(1984)☆★
   もどかしく、届かない。厚塗りなシンセ全開のアレンジは、まだいい。時代だ。
   しかしベールをかぶったごとくな歌声のリバーブと、いまひとつ力の無い
   節回しが苛立たしい。"SEDAI"のように、いい曲もあるのに。
   ハードなシャウトと、ぐっと前へ出るパワーが欲しくなる。

   "IZUMIYA-SELF COVERS"(1988)☆☆☆☆☆
   最高傑作。泉谷の世界が再構築され、がっつり野太くタイトなリズムで
   吠え立てる。ゲストも豪華でアレンジも練られ、キャリア総括な選曲も
   ばっちり。何度聴いても飽きない。肝心の泉谷も痛快に吼える。
   ロックな泉谷の魅力が迸った、隙のないアルバム。

   "起死回生"(2001):☆☆☆☆
   活き活きと様子が伝わる痛快なライブ盤。
   アコギ一本で初期レパートリーを連発するが、ラフにメロディを崩し吠え、
   単なるノスタルジーに終わらせない。弦切れの事故もそのまま収録し、
   生々しく仕上げた。アコギ一本によるアレンジの限界はあるものの、ロックを通過した
   フォークに持ちこむキャリアのしたたかさが伝わる。
   新曲群もスケール大きく、きっちりしたアレンジで聞きたくなった。
   30年を経て枯れぬ、しぶとい男の音楽。

   "No Self Control"(DVD)(1989)☆☆:映像作品として物足りなさ残る。冒頭の延々続く車の中、
   良く聞こえないインタビュー、表情の見づらいライブ映像など。しゃにむに押す"おー脳!!"や、
   エンディングでばあっと広がる花火は壮絶できれいだったが。
   当時の記録と割り切ったら、貴重な作品。

   吉田達也/河端一(AMT)/南條麻人(High-Rise)によるムジカトランソニックの新譜。
   ポーランドのvivoからリリースを、磨崖仏がディストリビュート。
   99年の未発表音源から長尺のみを抽出したリミックスした。
   クレジットがろくに無いのが残念。おそらく吉田のミックスとは思うが。
129・Musica Transonic:Kyosfibgkou:☆☆
   一発即興で突き進むムジカ節は変わらず。モコモコな録音が多い
   ムジカにしては、比較的抜けが良い。後半へ進むと相変わらずの
   音質も現れるが。分離良くするためか高音が強調され
   聴いてると耳が疲れるのが玉に瑕。
   奔放な即興に酩酊を味わう。構成はさほど重視してなさそう。
   音質はイマイチながら、勢いと構成がせめぎ合う(6)が印象深い。
   何度も聴くほどにフレーズの流れが見え、面白さ増すであろう音楽。

   マイルスのブート(?)をごっそり入手できた。

   60年のストックホルム公演ほかを収めた。コルトレーン、ケリー、チェンバース、
   コブのクインテット編成。1枚モノ。マイルスの記録まとめサイト"Miles Ahead"によれば、
   これらは3/21から4/10までノーマン・グランツ主催"Jazz at the Philharmonic"の一環で
   行われた欧州ツアー音源らしい。非常に過酷な日程が組まれてる。
   本盤には3/22の2公演から1stセット全曲と、4/9の公演から2曲のみ抽出されたもよう。
   どちらも放送用音源からの音盤化らしい。
128・Miles Davis:On Green Dolphin Street:☆☆☆
   ちょっと痩せたところもあるが、音質はまずまず。テープヒスの
   ノイズが聴こえる。はつらつとしたマイルスとウイントン・ケリーが、まず聴きもの。
   爽快かつ軽やかにジャズを奏でる。コルトレーンはひよひよと音を連ねる
   さまが、アンサンブルにそぐわないと感じる場面も。
   揺らぎ気味ながらリズム隊ががっちりグルーヴするひとときが味わえた。
   どちらかといえば、3/22のほうが音が締まってる。
 
   61年にカーネギー・ホールで行われたとクレジット。上記盤より、コルトレーンが
   ハンク・モブレーに変わった顔ぶれ。ギル・エヴァンスのオケと競演ライブ。2枚組。
127・Miles Davis:and the Gil Evans Orchestra at Carnegie Hall:☆☆
   おそらく1961年5月19日のライブ音源。全曲が収録されてるようだが、
   曲順は完全に変えて、CDとしての完成度を優先させた格好。
   マイルスの演奏はしゃっきりしてるが、全体的にはおとなしめ。
   上品な雰囲気を優先させ、いまひとつスリルに欠ける。

   63年と66年のライブ音源。前半はサックスがジョージ・コールマン、後者はショーター。
   リズム隊はハンコック、カーター、ウイリアムズ。音質はこもって、まあまあ。1枚モノ。
   "Miles Ahead"によると、63年6月の音源はオーディエンス録音。
   当時9日間のショーを収録場所で行っている。各夜3セット、週末は昼公演もあり。
   すごいボリュームだ。今でもアメリカは、そのレベルのライブをしてるのだろうか。
   なお本盤の録音日特定はできないようだ。
   演奏時と曲順は異なるが、全曲を収録らしい(本サイトのset listではCDの
   (3)-(1)-(2)で演奏とある)。こもり気味の音質だが、楽器の分離は聞き分け可能。
   なお(3)はフェイドインで演奏が始まる。
   (4)~(6)もオーディエンス録音で、さまざまなツアーをしていた頃らしい。本音源
   直後に、マイルス抜きの顔ぶれでハンコック4でもライブがあったとこのサイトに記載ある。
   ポートランド州大学の仕切りで行われた当日、10曲を演奏した。
   本盤では前半3曲のみを収録。曲順は変えられており、当日は(6)-(5)-(4)
   の流れだったらしい。音質はかなりもやけてるのが残念。
126・Miles Davis:No(more)Blues:☆☆☆
   前半はオーソドックスでタイトなモダン・ジャズを聴かす。
   先鋭さこそ控えるも、サウンドの端々に尖りが漏れる。特にウイリアムズのドラム。
   たとえば(2)でコールマンのサックスとユニゾンのごとく、スネアをびしばし
   叩きのめす瞬間がスリリング。(3)の燃えさかる演奏がすさまじくも
   素晴らしい。フェイドインが惜しくなる、本盤のベスト・テイク。
   後半は浮遊感溢れる、個性的なジャズ志向をストレートに出した。
   くっきりとグルーヴするが、ドラムは明確なビートを刻まない。波間のように
   せわしなくシンバルを打つ。ぼやけた音質がなおさら揺らぎを強調した。
   ロン・カーターのみがビートを明らかにし、ソロイストはどこまでも
   滑らかにアドリブを紡ぐ。フリー要素も強まった。(5)がクールで良い。
   音楽性は後半が刺激的。全曲版を高音質で聴きたい。
   ほぼ全曲版の記録は存在するようだが。

   64年にタイトルの各地で行われたライブ音源より抽出された2枚組NYがジョージ・コールマン、
   ベルリンがショーター、東京がサム・リヴァース。リズム隊は上記と同様。
125・Miles Davis:Milestones:New York/Berlin/Tokyo:☆☆
   サックスの聴き比べには最適な盤だろう。あえて3公演をごしゃまぜに
   しており、ライブの追体験には向かない。大雑把な感想だと、ベルリンで
   マイルスがくたびれてるかな・・・。とにかくドラムとピアノがピカイチ。
   サックスはニューヨークのコールマンが今は好み。
  
   69年のパリ。ショーター、コリア、ホランド、デジョネットが脇。1枚モノ。
124・Miles Davis:Miles Davis:☆★
   メドレー形式で一気に疾走するパターン。この時代のマイルスは
   聴き込んでおらず、曲名がわからず。勉強不足だ。場所と時代のクレジットが
   正しいならば、1969/11/3のパリ公演。完全収録ではなさそうだ。
   疾走するディジョネットと、不安定にエレピを奏でるコリアは面白い。
   しかしショーターがどうも上滑り気味だな。せわしなく弦をはじく
   ホランドも含め、リズム隊は聴きもの。肝心のマイルスはいまひとつ存在感なし。
   
   71年、73年それぞれにベオグラード(仏?)のライブ音源を収めた2枚組。
   メンバーはガラッと変わってる。71年はキース・ジャレットら。73年だと
   ピート・コージーらによる顔ぶれ。
123・Miles Davis:Another Bitches Brew:☆☆☆
   ジャック・ディジョネットが抜け、レオン・・シャンクレが
   加わったメンバーによる、ヨーロッパ・ツアー音源。Disc 1が11/3、Disc 2が11/7
   どちらも完全テープでなく、欠落もあり。メドレー形式で演奏されるが、
   CDは1曲扱いでセッティング。まとまった時間無いと聞きづらい。
   ここはトラックを分けてほしかった。
   どちらも混沌なファンクで押す、カッコいい演奏。
   ラジオ音源らしく、音質もきれいだ。あえて日を選ぶなら
   11/7のほうがしゃっきりエッジが立ち気味・・・かなあ?

   89年のモントルー・フェスより。2枚組。8人編成。"Human Nature"では
   ゲストにチャカ・カーンが参加してる模様。
122・Miles Davis:In Montreux:
   純粋にサウンドとして耳を澄ます瞬間は確かにある。しかし
   マイルスに期待する前衛性はここに無い。改めて実感した。
   ミュートのかかったきついペットが、クールに鳴るフュージョン。
   演奏のできはそこそこ良く、後半が面白いかな。ベストは"Time after time"。
   ロマンティックなムードがなかなか。チャカ・カーンの
   ゲスト登場はさほど盛り上がらず残念。

   クラシックも何枚か購入。
   バッハの"フルートとチェンバロのためのソナタ"を集めた盤。
   Aurele Bicolet(fl),Karl Richter(Cembalo)で、BMV 1020,1030-32を演奏。
   さらに"無伴奏フルートのためのパルティータBWV.1013"も。1973年の録音らしい。
121・J.S.Bach:Floten-Sonaten:☆☆☆☆
   酩酊する清清しい演奏。感情を抑えた印象だが、フルートは軽やかに
   歌い、チェンバロもここぞのタイミングでぐっと押す。端正に紡がれる
   ひと時が心地よい。旋律が絡み合うバッハの世界を、かっちりと構築した。

   19世紀後期の作曲家、ショーソンによる室内楽(op.21/op.30)を収録した。
   83年の録音でフランス盤にキングが帯をつけた廉価盤を購入。
120・Chausson:Concert pour violon,piano & quatuor a cordes op.21:☆☆☆★
   華やかで流麗な旋律が美しい。ちょっと高音がきついか。
   コントラバスでぐうっと低音も欲しくなった。ともあれゆったりとメロディがたゆたい、
   芯に強い勢いある"Op.21"は寛いで聴けた。"op.39"はチェロとピアノの対話。
   滑らかでロマンティックなひととき。上品な演奏だ。

   65年にスイスでイタリア弦楽四重奏団が吹き込んだ、ハイドンの弦カルを
   4曲(17番"セレナード",67番"ひばり",76番"5度",77番"皇帝")収録。
   Philipsが05年に出した廉価盤シリーズで購入。
119・Haydn/Quartetto Italiano:String Quartets No.67,17,76 & 77:☆☆
   曲は端正な旋律が凝縮されて動く。ちょっと堅苦しいかな。
   弦の鳴りはしっかりと響く。エッジを立てつつ、情感こめて。

2006/3/23   CDを購入。・・・うーん、ひねりが無い前置きだ。

   大友良英の新譜。CDとDVDでさまざまなアプローチのソロ作を集めた。
   アイディアをコンパクトにまとめたショーケース的な面持ちも。
   ライブでは見えぬアングルで楽しめそうなDVDも期待。
118・大友良英:Multiple Otomo:☆☆☆★
   まず、カメラがぐっと手元へ寄った映像が見られる、DVDが貴重。
   ライブへ行っても、到底叶わぬ構図だ。CDは短めのノイズ作品を詰め込んだ。
   ターンテーブルを中心に、一つのアイディアですっきりと1曲を仕上げる
   俳句のような作品が多い。CDはもっと長尺の作品で曲数を減らし、DVDとの関連性を
   もたせるなど(例えば映像作品の全尺もしくは再編集とか)の演出を希望は贅沢か。
   ボリュームが多いのに、コンパクトな印象あり。ターンテーブルとスマートに
   格闘する、大友良英のスタイルへ触れるには最適な作品。

   ナイアガラの30周年記念再発シリーズ。CM specialがボートラや
   未発表デモ満載でリリースされた。三木卵郎こと大滝の解説は比較的あっさり。
   レココレ誌4月号を副読本にすべきか。当時の歌詞カードも封入された。
   本盤では"土曜の夜の恋人に"を割愛、とことんCMソングにこだわった選曲となった。
117・大滝詠一:Niagara CM Special vol.1:☆☆☆☆
   デモや稀少テイクをがっつりくわえ、ますますマニアックな仕上がりに。
   どんどん新たなファンを置いてきぼりにしてるような気も。よけいなお世話か。
   丁寧なリイシューが嬉しい。当時のライナー再発も含めて。すなわち、
   すれっからしには興味深い。今回初出がやっぱり嬉しかった。
   さまざまなアイディアの奔出が楽しめる。しかし同じ曲の別バージョンが
   延々続き、通して聴くのに飽きるのも事実。恥ずかしながら。
   "Pa-Pi"や"Rock'n Roll 退屈男"に繋がる、"スパイス・ソング"が楽しいな。
   解説は今回も読み応えあり。好きなアレンジ"Nissui"が、多羅尾の"雪やコンコン"だと
   初めて知った。"多羅尾伴内楽団"も再発して欲しい。聴いたことないんだ。
   "MG5"の別テイク集も面白かった。なんだ、今回も楽しんで聴いてるじゃないか。

2007/3/21    ネット購入と店での購入と。

   バッハのピアノ曲が聴きたくなった。当時はチェンバロか。
   「ゴールドベルク変奏曲」の全曲集です。
   モスクワ人のピアニスト、アンドレイ・ガヴリーロフが92年に
   吹き込んだ盤を06年に再発廉価版で購入した。
   クラシックは無知で、このピアニストが有名なのかはよく知らず。
116・J.S.Bach (Andrei Gavrilov:p):Goldberg-Variations:☆☆☆
   端正な演奏。ダイナミズムがかなり大きく、前半に焦点を合わすと
   中盤でボリュームを絞るはめに。硬質なタッチで淡々と音を紡ぐ。
   聴いてて寛ぐよりも、穏やかな気持ちを呼び覚ます。

   武満徹の作品集。二対のオーケストラ向に書かれた"ジェモー"(1972-86)、
   オーケストラ曲"夢窓"(1985)、同じくオケ曲"精霊の庭"(1994)を収録。
   指揮:若杉弘。コロムビアのDenon Crest 1000シリーズの1000円盤で購入。
115・武満徹:ジェモー/夢窓/精霊の庭:☆☆☆★
   メロディが明確でなく、音が浮かんでは消えていく。解説を読むと
   複雑な計算の楽想で作曲したらしい。したがってまだぼくは、この作品を
   きっちり鑑賞できたと言えないだろう。
   しかし何回か聴いて、浮かんでは消えるストリングスのスリルと心地よさを味わえた。
   構造をくっきち意識させない。まどろんでる時に、ふっと高まっては沈むような、
   オーケストラのたゆたう緊張が美しい。特に"夢想"や"精霊の庭"へ惹かれた。
   雄大な映画のサントラをイメージする。
   音楽で語りつつも映像を引きたてる、美しさを拡大する力を感じた。

   山本邦山(尺八)が菊地雅彦、ゲイリー・ピーコック、村上寛と1970年に
   吹き込んだジャズ。タワレコからの再発。作曲は全て菊地。
114・山本邦山+菊地雅彦:銀界:☆☆☆
   日本情緒とジャズの天秤。若干、日本情緒へ傾いたか。尺八にありがちな
   ブレス・ノイズは控えめで、すんなり聴けた。透徹なサウンドが引き締まって
   響く。(2)のダイナミックな展開がベスト。
   アドリブ合戦やグルーヴでなく、尺八の清清しさを強調する
   音像センスにはまれるかで、本盤の評価は変わる。がっぷり噛みあわず、
   一瞬にきりあう殺陣のようなジャズ。脂っこさは無い。

   ウータンのRZAソロ。03年のリリース。過半数のプロデュースは、
   当然ながら彼が行った。ゲスト・ラッパーはいないのかな?
113・RZA:Birth of a prince:☆☆
   バラエティに富んだ仕上がりと、引きずるようなシンバルの打ち込みはRZAらしい。
   しかし不穏さがいまひとつ物足りない。足取り軽やかなヒップ・ホップとして
   聴けば、トラックや構成は配慮してるので飽きない。
   しかしウーを期待すると、いまひとつか。太っ腹な余裕が滲んだ一枚。

   フリーペーパーで紹介されてた、アメリカのインディ・ジャズ。
   録音はペンシルヴァニア州で行われた。
   サックス奏者がリーダーで、カルテット編成。06年のリリース。
112・Jeff Darrohn:T-Bind '60:☆☆★
   カルテット編成で、サックスのみ多重録音でビッグ・バンド風味。
   サックスのみが端正にアレンジされ、スリルは薄い。しかしアドリブはきっちり取り
   ジャズにはなっている。BGMに堕さず、もう一歩進んだサウンド。
   しかしサックスの音はかなりざらつき。柔らかいリード使ってるのかな。
   全てオリジナル曲で固めた潔さはかう。

   高円寺ジロキチのオーナー、ABO(ディジリドゥ)によるユニットの2ndで
   04年のリリース。片山広明、太田惠資、ポンタ、バカボン鈴木、山下洋輔など
   すさまじい豪華メンバーが演奏に参加。怒涛のサイケ・インプロを聴かす。
111・ABO:Didgerido Magic:☆☆☆★
   豪華な参加メンバーに囲まれたセッション集。ディジリドゥの破壊力もさりながら、
   アンサンブルの強靭さにまず耳が行く。あえてメンバー固定せず、
   さまざまなサウンドをまとめて楽しめるのが本盤の売り。
   どっぷり自由な即興がいっぱい。

   短編映画の長編化で07年封切りのサントラ。数曲を除き、既発曲をあつめた。
   大熊ワタル、フェビアン・レザ・パネ、黒田京子トリオ(既発曲)などが参加。
   太田惠資がソロ名義で1曲提供し、それを目当てで購入。
110・OST:世界はときどき美しい:☆☆
   アコースティック感覚を活かし、ミドル・テンポで切なげな
   曲調を集めたオムニバス。映画のサントラだから
   やむをえないが、芯が見づらく、どこか食い足りない盤なのは否めない。
   個々の曲はくっきりとマスタリングされ、ヘッドホンで
   聴くと、透明な寛ぎが強調される。映画のファンか本盤書き下ろし
   曲のためならば、購入する価値はあり。

   復活したシミーの第2弾CD。女性の2人組で、シミーから再発(?)に
   あたり、クレイマーはリマスターのみを担当の模様。演奏には参加せず。
109・Jessie And Layla:Kinetic:☆☆★
   明るく前のめりなサイケ・ポップス。クレイマーはリマスターのみで関与。
   エッジが立って華やかに仕上げたのかな。オリジナル盤を未聴で効果を言えない。
   シミーでリリースされるにふさわしいアレンジとは思う。
   どこか影を持った曲調は良く練られており、ポップで楽しめた。
   アコースティック感覚と、ディストーション効いたギターを同居させ、
   きれいなメロディを刻みで映えさせるセンスが良い。

2007/3/13  ネット注文のCD到着。さらに頂いたCDも。ありがとうございます。

   ウータンの一軍、マスタ・キラのソロ。06年発売。
   サイドメンがすさまじい。ウータン本体がぞろっと参加し、
   (ゴーストフェイス、レイクォン、U-God,RZA,メス、GZAら)
   プロデュースにピート・ロックの名まで。聴くの楽しみ。
108・Masta Killa:Made in Brooklin:☆☆
   ウーの不穏さはあるし、ラップのスピード感もいかしてる。
   しかしトラックがいまいち軽い。エッセンスを絞ったあとの
   すかすかな感じ。ものたりない。ベストはウー勢ぞろいっぽい
   (4)かな。勇ましく繰り返されるサンプルも良し。ピート・ロック製作の(8)は
   重たい空気でちょっと以外。内容はいまいち。
   むしろ軽やかなサンプルの(7)がピート・ロックっぽかった。

   イタリアのプログレだそう。78年リリース。本バンド唯一のアルバムらしく、
   ジャズ・ロックを聴かせるという。初めて聴くなあ。
107・Bella Band:Bella Band:☆☆☆★
   ジャケットの渋いジャズを想像したら、中身はほんのりシンフォニックな
   チェンバー・プログレ。テクニックひけらかしでなく、メロディを生かした
   構成が嬉しい。フュージョンの影響を漂わせ、上品な音像へ仕上げた。
   アドリブ要素を高め、耳にくいっと引っかかる箇所いくつも。
   リズムがせわしなくまくし立て、サックスがか細げに旋律を紡ぐ。
   アンサンブル全体の構成も目配り効いた。
   アルバム一枚、30分程度。ライブを聴きたくなるバンドだ。

   こちらはチェコのプログレ。シングル2曲をボートラに加えた再発版。
   アルバムのリリースは1980年で4thにあたる。インストがメインらしい。
   こちらもまったく知識なし。どんな音楽だろう。
106・FERMATA:Dunaska Legenda:☆☆☆★
   うっすらシンフォニックで、キーボードとギターで変拍子のキメを
   つぎつぎかます、チェンバー・プログレ。個々の楽器がくっきりとミックスされ
   純粋さを強調した。アップテンポのユニゾンでもスピード感が希薄なのは
   あっけらかんなミックスのためか。アドリブはソロ程度。インプロではなさそう。
   複雑な奇数拍子をぴたり決めるテクニックゆえに、どこかユーモラスな
   空気を感じた。曲構成そのものは青臭いほどまじめ。

2007/3/11   ライブの物販で購入。

   鬼怒無月率いる5人組ハイパータンゴ・プログレのユニット。
   まぼろしの世界からリリースされた1st。数年前からバンドとしては
   活動しており、満を持しての録音か。GOKで06年の4月に録音。
   鬼怒の曲だけでなく、佐藤(acc)と林(p)の作品も1曲づつ収録した。
105・Salle Gaveau:Alloy:☆☆☆★
   アドリブもさることながら、コンパクトでキュートさとダイナミックでワイルドさを内包した
   幅広い志向のアンサンブルを詰め込んだ。
   凄みや陰を漂わす、一味の捻りが特長。聴き応えあるアルバム。
   次世代を担う中堅がずらり揃っただけに、瑞々しく着実なアレンジが楽しい。
   リズム楽器を廃し、全員がメロディ楽器でアレンジにスリルを出す。
   あえて鬼怒以外の曲を収録でバラエティさを出した。あえて鬼怒は弾きまくらない。
   全体のまとまりを意識か。あちこち尖がりつつ、破綻せぬ上品さで仕上げた。

2007/3/10   ネット購入のCDが到着。

    ウータン・クランの一軍、ゴーストフェイス・キラーのソロ。6thかな。
    06年の発売。曲ごとにプロデューサーを変えており、ピート・ロックが
    1曲をプロデュース。ゲスト・ラッパーはノートーリアス・ビッグなど。
    ウーからはレイクォンが数曲で参加。(6)はウータン全員参加の名義。
    ただしプロデュースは残念ながらメタル・フィンガーズが行った。
104・Ghostface Killah:Fishscale:☆☆
   軽い仕上がり。短い曲を連ねてさくさく進むが、ウータンを期待したら
   拍子抜けだ。おっとりした実直な感触あり。丁寧な
   トラック作りは耳ざわりいいが、ラップやトラックに華か凄みが欲しい。

2007年2月

2007/2/23   メルボルンへ行く機会あり。そこで買ったCD群をまとめて。ロック中心。たぶん。
             ジャケ買いなので、ほぼ全てのバンドへ予備知識なし。どんな音だろ。

   一番嬉しかった盤。80年代に活躍したバンドの再結成。リリースを
   まったく知らなかった。2003年発売。Zep Musicより。自主レーベルかな?
103・Jo Jo Zep & the Falcons:Ricochet:☆★
   当時のレゲエ調はきれいに消えた仕上がり。むしろもっと50年代色が強い。
   前半は甲高いシャウトも多用し、メロディラインがシンプルなブルーズ・ロックが
   続く。曲としては単調か。むしろ(10)あたりからのホーンが前面にでた
   ロックンロールとR&B調こそ聴き応え出る。新しさや先端性はどこ吹く風、
   あくまでも古きよきサウンドを志向と感じた。03年の新譜とは思えぬ仕上がり。

   これも80年代に活躍。豪州では有名だったらしい。
   1981年発売の2ndで、6人組のロック・バンド。
102・Australian Crawl:Sirocco:☆☆☆☆
   売れたのが良くわかる快盤。塩辛くうわずるメロディと
   スカッとノリが抜けた演奏。決して旨くないが
   一体感あり。ライブで鍛えていそう。どの曲も粒が良く
   とっつきやすい一枚。レゲエ風味をまぶした80年代前半の
   オーストラリア・ロック。当時のスタイルならば、ぜひライブを聴きたかった。

   83年のライブ盤。上記盤のツアー音源らしい。
101・Australian Crawl:Phalanx:☆☆★
   ライブらしく、幾分スケールが大きい。鷹揚なアレンジでくいくい押す。
   ちょっと大味に感じてしまった。ドラムのリバーブを筆頭に広がりある
   音質が心地よかった。EP"Semantics"(1983)のヒット直後か、本盤4曲中3曲を
   収録する選曲が以外。アルバム化しないゆえの選択かもしれない。あとは2nd曲がメイン。
   カバーで"ルイ・ルイ"も。アメリカ人はよくこれカバーするが、
   オーストラリアでも有名なのかな。

   82年リリースの3rd。アルバムは全豪1位になったという。
   本盤から3曲がシングル・カットされた。
100・Australian Crawl:Sons of beaches:☆☆
   シングル曲はどれも、さほど印象に残らぬロック。時代性を感じる。
   ほんのりうわずり気味で軽いボーカルがトレード・マークか。ギター3人の
   わりに激しさは控えめ。押せ押せのロック調な前半より、抜けた感じの
   後半がいまだと耳に残る。ただし大ヒットに至る強烈な個性までは
   聞き出せなかった。(3)の浮世離れしたスローのアレンジが気にいる。後半は
   リズミカルだが、前半のみで一曲にしてほしかった。(10)や(12)も妙に惹かれた。

   メルボルンからトラムで30分弱。海岸のあるリゾート地的な雰囲気の町、
   セント・キルダ。そこのローカル・バンドを集めたCDらしい。
   2ドルで売っていた。05年のリリース。
99・V.A.:Sounds of St Kilda:☆☆★
   ローカル・バンドのコンピらしく玉石混交だが、妙に老成したロックンロールが多い。
   ライブで鍛えられてるのか、へなちょこ要素は薄い。どの曲も、そこそこ聴ける。
   バンドだけでなく、アコースティックなソロ演奏っぽい作品も。
   ハッピーで明るいのがセント・キルダ地区の特徴か。暖かいリゾート的な場所だったもんな。
   しかし完全に突き抜けず、ほんのり湿った色合いが音楽にに残る。それが、味。
   楽しんで聴けるサンプラーだ。16曲入り。

   メルボルンの3ピース・バンドらしい。発売年度は不明。
   7曲入りミニ・アルバムで、プレス盤だが手作り感強し。
98・The Impossible Cinema:The Impossible Cinema:☆☆
   尺が50分ほどのフル・アルバムだった。1曲が長いのか。
   サイケながらまっすぐな感触のインストとスコーンと抜ける
   ボーカルが特徴。影のある音楽を志向しつつ、リズムや歌、メロディの根本に
   爽やかさや軽みを帯びて、独特の浮遊を産んだ。好みではもうすこし毒が欲しい。
   インプロ要素はギターのソロ程度。きっちりアレンジされた。
   リバーブがもんやり。根本の所で音像に明るさが無い。
   闇の上澄みを漂うような、微妙なバランスがユニークな狙いだと思う。

   04年発売の7曲入りミニ・アルバム。ソニーからリリースなので、
   それなりに活躍しているバンドなのかも。
   メルボルン出身らしい。本盤が2枚目のEP。
97・The Hampdens:Even World:☆☆☆★
   女性一人、男二人のトリオ。60年代ソフトロックの要素を振りかけた、
   サイケ・ポップスを聴かす。2面性あり。男性ボーカルだと、もろにソフト・ロック。
   女性ボーカルでは切ないメロディラインをスケール大きく響かせた。
   ミドルテンポで甘く奏でるアレンジは、いがいに凝っている。
   まだEPを数枚出したのみらしい。今後も活躍して欲しい。
   1st"The Last Party"を既に録音、07年3月に発売を控えてるという。

   4曲入り05年リリース。盤は500枚限定だが、その後もi-tunesなどで音源は聴ける。
   "Singles Society"と銘打った4種EPの第三弾。アコースティックで甘くサイケなポップを聴かせる。
96・Offcutts:The lake:
☆★
   静かなアコギを踏まえ、つぶやくように歌う。ほんのりブルーズの
   香りか。穏やかな感触。さほど突出はしないが、ゆったり聴くにはいいかも。
   生々しくもドリーミーな風景だ。ミディアム~スロー切々と語りかけた。
   きれいなメロディをシンプルなアレンジで色づける。

   豪ブリスベンの出身で2012年までに7枚のアルバムをリリースしてる。
   これは3rdアルバム"Faith & Science"(2006)からのシングルで、ニール・ヤング"After the gold rush"、
   エリオット・スミス"I don't think I'm ever gonna figure it out"をカバー。この2曲はアルバム未収録だ。
95・Shane Nicholson:I know what you need:☆☆☆
    オリジナルは爽やかなギター・ポップ。ネオアコとか、そのへんの路線かな。
   素朴だがほんのり甘い歌声で、ゆっくりと歌い上げた。ニールの曲はアコギの弾き語りを基調。
   しかしうっすらと弦を入れたり、一ひねりしてる。
   E・スミスの曲は多重録音のデュオで、エヴァリー風が気持ちいい。

   06年発売の4人組ローカル・バンド。5曲入りシングル。
   手書きのクレジットで、何書いてるかわかりづらい。
94・The Vandas:in the morning:☆☆☆
   アメリカとブリティッシュ・ロックの両方をごちゃ混ぜにした感じ。
   バラエティに富んだミニ・アルバムに仕上がった。高音を強調したシャカシャカ
   したミックス。フィードバックも無造作に仕込む、あっさりした録音だ。
   まだ個性を模索しているかのよう。今後に期待。

   03年発売。デュオでほとんどの演奏を多重録音してるらしい。
   UKのミュージシャンだった。
93・It's Jo and Danny:But we have the music:☆☆☆
   ふわっとサイケなポップス。歌が軽くて和める。
   どしゃどしゃと響くドラムのセンスも好み。
   開放感と多重録音独特の密室性を重ねた、心地よい世界が広がる。
   アコースティック性を基調に置きつつ、エレクトロニカな
   音作りを施した。じっくり聴きたい一枚だ。

   男女デュオっぽいが、四人組バンドの模様。01年リリース。
92・Motor Ace:Five star laundry:☆☆
   メルボルン出身、98年に結成された。オルタナ系に分類のようだ。
   7枚のシングル、1枚のEP,3枚のアルバムを残し、バンドは05年末に
   解散したとある。本盤は1st。グランジっぽい鈍いギターが響く一方で、
   メロウな曲もあり。がっちりライブをやってそうな、手堅いアンサンブルを聴かす。
   むしろアルバムはさほど凝ったレコーディングをしていない。
   本盤からは3曲(1、2、6)がシングル・カット。(2)はドラマ"The secret life of us"のテーマソングに
   なったとwikiに記載あり。同ページには豪チャート4位まで
   あがったとある。強烈な個性は無いが、すっきりした切なげなメロディ・ラインは
   センスあり。ちょっといなたいか。女性ボーカルは無く、男がかすれ気味の声で熱唱した。

   かなりベテランなSSWの模様。17枚目のアルバムかな。01年発表。
91・Paul Kelly:...Nothing but a dream:☆☆
   ほのぼのイナタいAOR。なんだかするすると聴ける。特に毒やスピード感を
   志向せず、寛いだロックを破綻無くまとめてるためか。ベテランの円熟、って感じ。

   メジャーななSSWっぽい。2ndで05年発売。
90・Pete Murray:See the sun:☆☆☆
   塩辛いメロディを丁寧に歌うSSW。寛いだムードで仕上げた。
   先進性でなく、地に足が着いたアレンジを採用した。
   弦や管の活き活きした響きも上手く取り入れたロック。アップテンポもどこか
   老成した雰囲気を漂わす。2ndとは思えぬ落ち着きっぷり。
   メロディにもう少しパワーがあればベスト。アルバム全体の統一は、
   ジャケットのようなオレンジ色にまとめた。

   彼も弾き語りのようだ。02年の発売。
89・Mick Hart:upside down in the full face of optimism:☆☆
   内省的なフォークっぽい曲とサイケで大味なロックが交錯する散漫な仕上がり。
   おそらくどちらも持ち味とは思うが。好みで言うと、静かな曲のほう。
   切なげに奏でるメロディは単調ではあるが、じわじわとしみる。
   バンド・スタイルでバイオリンが入ったアレンジのほうがいいな。
   アコギの弾き語りもあるが、無骨な構成のわりに芯の無い歌声がアンマッチな気分。
   次へのステップへ向けた習作な印象。複数の要素を織り込んだだけに。
   一曲あえて選ぶなら、(2)かなあ。

   四人組のギターバンド。テレビの主題歌なども演奏してるようだ。
   06年発売。2ndかな。
88・The Dunaways:Great western tears:☆☆
   ほとんどの曲をMark Markowicz(g,vo)が書いている。経歴分からず苦労したが
   かろうじてMyspaceの跡地を発見。米カントリーと英パブ・ロックに影響受けた様子。
   楽曲によってはXTCに通じる密室ポップの要素もあり。いかにもルーツ・ロック的な大らかなメロディを、
   アコースティックを生かしたアレンジで軽快に演奏する。ドラムの軽やかさが気持ちいい。
   豪らしくバンド・アンサンブルはバッチリ。カラッと晴れた日に似合いそうなサウンド。

   98年の盤。ジャズの欄に入ってたが、ギター弾き語り女性シンガーかなあ?
87・Monica Weightman:Calm before the storm:☆☆★
   カントリー・ロックなソロ。ほんのりハスキーな声は肝っ玉太さを演出した。
   メロディくっきりで演奏が確実なあたり、ライブ盛んなオーストラリアらしい。
   (4)を筆頭に、じわっと胸にしみる声と旋律だ。1stにしちゃ、落ち着いたムード。
   曲によりニッキー・ボンバによる多重録音なリズム隊も加わる。
   毒はないが、ひとひねりしたメロディがアメリカとはちと違う。英トラッドな趣も狙わず。
   のちに"Lost Generation"(2005)をリリースは辿れたが、ライブ活動履歴などがネットで
   ほとんど見当たらず。地元メルボルンで着実に活動中ってことか。

   4ADっぽいジャケットが気になって購入。1stらしい。発売年度不明。
   サイト見ても、よくわからん・・・エレクトロ・サイケかな?
86・Howard:intermental music and collage:☆☆
   静かなビートで軽やかに広がるエレクトロニカ。メロディよりもリフの積み重ねで
   じわじわ盛り上げる一人打ち込み世界な構造だが、どこか生演奏っぽい
   揺らぎを取り入れてるのが個性か。

2007/2/13   注文してたCD到着~。

   リリースされてたの、ちっとも知らなかった。06年発売。ソロから
   フェアグラウンド・アトラクション時代の曲まで満遍なく演奏してる、
   05年8月シドニーでのライブ盤2枚組。
85・Eddi Reader:St Clare's night out:Live at the basement:☆☆☆
   3回目の豪州ツアーを控え、地域限定でリリースされた盤らしい。
   寛いだエディの雰囲気と、シンプルなバッキングがかもし出す
   のびのびした演奏が楽しい。ラフなところもあるので、ファン向け。
   喋りも多い。英語圏だと、こういう風に観客とコミュニケーション
   とりながら、ゆったり歌を楽しんでるんだな。
   一部、編集が雑なところもあるのがちょっと難点。
   レパートリーはキャリアから満遍なく選ばれ、ベスト盤的な側面もほんのり。

2007/2/6   新譜CDが到着。

   エディ・リーダーの最新作。前作のトラッド路線を踏まえつつオリジナルに
   もどったようだ。ブー・ヒューワディンやロイ・ドッズといった仲間も継続参加。
   トラキャンのカバーが1曲。今のエディのパートナーがジョン・ダグラスだったとは。
   もともとエディの弟がトラキャンのボーカルらしいし。
84・Eddi Reader:Peacetime:☆☆☆☆★
   前作のトラッド回帰を踏まえ、ぐっとモダンなオリジナルの世界へ戻った傑作。
   ルーツへの情愛に目配りしつつ、アレンジはどの曲もさりげなく凝っている。
   アコースティック一辺倒と思ったら大間違い。丁寧に製作された。
   ジョン・ダグラスの(8)が愛おしく響く。(6)のブラス・バンドも甘くて素敵。
   エディはむやみに声を張り上げず、そっと歌う。硬い音像も生音でも、自然に馴染んだ。
   繰り返し聴くほどに、細部へのこだわりに気づく一枚。

   発売は06年。simが佳村萌とコラボで録音した一枚。何曲かはライブで聴いた
   記憶もあり。本作はスタジオ録音。ワイアットの"Sea song"カバーを収録した。
83・sim + kamura moe:common difference:☆☆☆
   きっちり決め事多いイメージのsimだが、佳村が入ったとたん
   サイケな雰囲気が広がり興味深い。タイトな決めうちで疾走は控え、
   ギターとシンセのノイズを前面に出し、ふわふわと浮遊する。
   水と油のような顔ぶれだが不思議に馴染み、ストイックで
   きりもみのような音楽を展開した。アルバムはゆったりテンポの感触。
   次作以降に繋がるユニット化は不明ながら、人間くささを旨くsimへ溶け込ませたと思う。


2007/2/5   PR誌の記事を見て知った一枚。

   LP時代は200枚のみプレスだったという。吉祥寺のサムタイムで初代ハウス・ピアノを
   つとめた関根敏行のリーダー作。78年の録音でトリオ編成。
   販売に澤野工房が絡んでる。意外だ。
82・関根敏行トリオ:ストロード・トリオ:☆☆☆★
   ほんのりと、いなたいバップが爽快に疾走する。とても気持ちよく聴けた。
   録音は78年だが、50年代の香りが濃厚に漂うほど。リズムの切れが
   いまひとつな気がするのは贅沢というものか。
   ピュアなジャズへの想いが、びんびん伝わる。老成せず、
   勢いばっちりで駆けるピアノ・トリオ。素朴なロマンティックさが好ましい。

2007年1月

2007/1/29   気になった最近の盤を購入。

   TZADIKの新譜を購入。本レーベルにしては珍しく、詳細な解説がついてるようだ。
   図形楽譜などを描く、現代音楽家アール・ブラウンの作品を本人だけでなく
   TZADIKゆかりのミュージシャンが曲提供したコンピで、。生誕80年記念盤。
   アール・ブラウンは02年に他界してるので、彼の録音は当時の未発表音源ってこと?
   メルツバウがプリペアード・ギターなどで一曲提供のため、購入。
81・Earle Brown:Folio and Four Systems:☆☆☆★
   硬質で聴き応えのある即興の盤と受け止めてしまった。かなり単調で
   メロディ性の希薄な現代音楽ながら、重厚な緊張がそこかしこに漂い
   楽しく聴ける。メルツバウも全体の音像へあわせ、静かめのサウンドで録音した。
   もともと別々の録音だろう。となると、楽譜の指定がそこまできっちりしてるのか。

   インディ・ポップになるのかな?バルカンやロシアっぽい音楽性が
   気に入って買った。これでアメリカ人の新人ミュージシャンらしい。
   層の厚さにあきれた。ボーナスEPがついた盤もあるが、ぼくが購入したのは
   1枚物の輸入盤。2005年の発売。
80・Beirut:Gulag Orkestar:☆☆☆☆
   老成した落ち着きと、欧州を連想する雄大なスケール感に惹かれる。
   とてもアメリカの一角でほぼ宅録したとは思えない。甘酸っぱい切なさが
   持ち味の寛げる音楽だ。奥行き深いアレンジが素晴らしい。今後の活動が
   とても楽しみな才能が現れた。

2007/1/13   塔のバーゲンに再アタック。

   これは新譜。渋さ知らズ、エイベックスからのリリースで、新曲を多数
   収録し、さらに個々の楽器をくっきり録音した新機軸の作品。
79・渋さ知らズ:渋響:

   以下は塔のバーゲンで購入品。ほとんどジャケ買いで詳細不明。

   ソウル。ボーカル入り、打ち込みありのファンク風。02年の発売。
   2枚組で一枚は02年のアトランタでのライブを収録したらしい。
78・Plunky & Oneness:Got to move something:☆☆☆★
   スタジオ盤は打ち込みビートも利用したファンキーなソウル。かなりな出来。
   しかし真髄は同梱のライブ盤。強靭なリズムとグルーヴで、ごきげんな
   生演奏ファンクを聴かす。アフリカンな押しや電車道のGo-Go,さらに
   重たいファンクまで。ライブでこそ真髄でそうなバンドだ。

   ソウル。テキサスのインディ・レーベルからリリースされた男性ソロ。
77・Quedon:Quedon:☆☆
   打ち込みビートとスカスカなバック。メロディはそこそこきれいだが、ボーカルの
   音質がめっちゃ固い。コーラスはNJS直系の、ぴたっと吸いつく感じ。
   悪くは無いがトロトロさが欲しくなる。
   ギターの生々しい演奏は良い。全般通して、いまひとつ単調。
   リボルバー拳銃みたいな指鳴らしの音色が面白い、(9)がベストか。程よい人間くささあり。

   ジャズ。04年録音でサックス+ベース+ドラム編成。ほんのりフリー寄りか?
   フランスのレーベル、"Chief inspector"より。
76・OZ:The Thread:☆☆★
   重たくごつっと展開するフリー・ジャズ。ボンフルや大友オケが好きな人なら
   良さがわかるのでは。日本で受けそう。独特の着実さが心地よい。
   アドリブの回しやとっぴなアイディアではなく、アンサンブルをじっくり
   構築するアプローチが聴き応えあり。

   ジャズ。ノルウェーの録音で、オーソドックスな5人編成かな?
75・Ole amund gjersvik quintet:Circus:☆☆☆★
   クラシックやタンゴの素養もあり、きっちり音楽を勉強したミュージシャンのようだ。
   ストレートなジャズながら、ぐいぐい惹かれた。
   バイオグラフィーの競演者にはニール・セダカ、ギルバート・オサリバン、ニルス・ペッター・モルヴェルの名も。
   脈絡無い活動をしてるみたい。どっしり重たいリズムで優雅なアンサンブルだ。
   ソロよりも全体のノリが聴きモノ。どれも5分前後で13曲。
   全てリーダーのオリジナル。といっても奇矯さは皆無。
   耳馴染みのいいメロディをじっくり奏でる。
   粘っこいベースが全編で唸り、ダンディなジャズを振りまいた。
   古いスタイルのジャズを演奏しつつ、音楽に強烈なパワーあり。
   ファンキーさはあまり無いが、強靭でしぶといグルーヴがたまらない。
   時折とっちらかうリズムは・・・わざとなんだろうなあ、やっぱり。

   フリージャズ。01年にNY録音で、zintir(ってなんだろう)バンジョー+ドラムの
   トリオ編成。2000枚限定という。
74・William Parker/Joe Morris/Hamid Drake:Eloping with the sun:☆★
   黙々とリズムを刻む上で、無鉄砲にきらきらとフレーズが動く。混沌さが
   一定のビートでたゆたうさまは朦朧としてくる。音だけだと少々物足りない。
   大きな展開が無くとも、ひたすら世界観を持続させる体力がすごい。

   ソウル。10年以上前に、彼の盤を聞いたことある。HPを見つけたが
   継続して活発に活動してることを知った。92年の"I Love My Job"や
   93年の"The Storyteller"を聴いたことある。
73・Vinx:Vinx:☆☆★
   全般で陰がうっすら漂う。アフリカンな要素を底味に、じわじわと
   ファンクネスがひろがる。地味ながらじっくり聴ける一枚。
   もうすこしメロディに華も欲しいが。低音のボーカルから暖かさが滲んだ。
   アレンジも派手さは無く、音数少なめにグルーヴする。
   多重ボーカルでメロディを綴る(11)が特にいい。

   テクノかな?詳細不明。ドイツ語らしきライナーで内容も不明。
   エレクトロ・ノイズ系のコンピみたいな感じ。ライナーには写真も多数使われ、
   何らかのコンセプトも伺われる。Tritonレーベルからの発売。
   ISBNは3-85486-060-2。何かご存知な方、ご教示頂けるとうれしいです。
72・V.A.:Landing:
   ミニマル要素もあるエレクトロニカ。展開は少なく淡々としてる。
   曲が短いので、バラエティには富んでるが。なんらかのストーリー性あるのかも
   しれないが、聴いてるだけだと単なるコンピだな。
   収録曲は、いまいち面白くない。不安をあおるビートに馴染めばいいのか。

   前衛ジャズ。ロシアのアンダーグラウンドでは著名なミュージシャンがプロデュースした
   85年頃のアルバムらしい。英文ライナーをちゃんと読んでません。
   テープ・コラージュの要素強し。サックスが加わる。
71・Popular Mechanics:Insect Culture:
   テープ・コラージュ中心。ジャズの一環らしいが、過激さは薄い。
   80年代の作品とは、正直思えぬ。60年代半ばというなら、納得。
   テープの早回し操作に若干混沌さあるくらいで、個々のサンプルも長尺。
   つなぎもスピーディとは違うベクトルで、狙いがいまひとつ見えなかった。
   1987remixは幾分、リズミカルに動く。

   シンセ入りのジャズ。ホーンがメインと期待して購入。ストレートなジャズかな?04年製。
70・Marc Bernstein:Our Colours~Beats Reeds'n Brushes:☆☆
   打ち込みの上でサックスが軋むクラブ・ジャズ。派手さを廃して軽やかに流れる。
   ちょっと刺激が足りない。ビートが単調なだけに盛り上がりに欠けた。
   音色のエッジを立てたら、もう少し勢いが増しそう。
   ホーンやキーボードもゲストに加え、曲構造は面白い瞬間がいくつか。
   ジャケットに使用された油絵とのコラボが当初のコンセプトらしい。
   ならばむしろ、ライブか映像でこそ、楽しめる作品なのかも。
   小品の(6)がポップだ。クールなリズムと鈍いフルートの重なりで、
   わかりやすくスリルを提示した。

   ソウルっぽい音楽を期待して購入。ジャズの欄にあったが、サン・ラみたいな
   エキゾティック・ビッグバンドか?04年リリース。
69・Nicole Mitchell-Black earth ensemble:Hope,Future and Destiny:☆☆
   AACMのメンバー、ニコラス・ミチェル(fl)が、シカゴ周辺ミュージシャンを集めて作ったユニット。
   プロフィールを見る限り、そうそうたる経歴の持ち主ばかりらしい。
   やたら「教師」って肩書きを持つミュージシャンばかり。
   呪術っぽさも漂わすアフリカンな音楽を基調に、構築と混沌が混在する
   多人数アンサンブル。AACM派だけあり、サン・ラと通低するものも。
   生真面目さがそこかしこに漂い、通して聴くとちょっと堅苦しい。
   アグレッシブな(1)や、美しいサウンドにうっとりな(7)が聴きもの。
   4分間のプロモ・ビデオ付き。本人による簡単なバンドの紹介と、演劇(?)のようすが映される。

    ブルーズ。ピアノの弾き語りがメインか。ケンタッキー産まれ。下のwikiではジャズに分類されてる。
68・Herman Chittison:1933-1941:☆★
   ジャズ、ブルーズ、そしてカントリーっぽさも。ラグタイムより
   一歩進んだ、えらく指先の速いピアノを聞かせる。風のよう。
   流麗さはいたずらにカクテル・ピアノへ向かわずファンキーさを残した。
   強烈でなくとも、単なるBGMを超えた個性はありそう。
   どのトラックも意外に同じような感じ。アコーディオンやボーカル入りなど
   当時全ての録音をマトリクス順に入れたため、たまたまバラエティさが出た。
   曲としては軽快な(2)が耳に残る。バンジョー・ジョーが「ジャ~ズ♪」と塩辛くシャウト。

   インドネシアのバンスリ(竹笛)奏者によるユニット。シタールやシンセとの組合せで
   92年から活動してるそう。93年に発売。音金に出演するような音楽家と期待して購入。
67・Indra Gurung:DIPA:
   中途半端なエコーと多重録音、さらにシンセと打ち込みのような
   規則正しいビートが耐え難い。ヒーリング音楽へのアプローチにめげた。
   ジャストのリズムと規則正しいは明確に違う、と実感。
   生演奏で一切の加工無しに聞いたら、楽しめたかも。

   ジャズ。デンマークはコペンハーゲンのユニットで、本作が2枚目かな。
   レーベルはILK。05年のリリース。
66・Mold:Rotten in Rodby:☆★
   ビート追求でもアドリブ提示でもなく、つかみどころ無い感じ。
   聴いてて集中力が切れ、つるつると時間が流れてしまう。
   おそらくライブ聴いたら、評価がガラッと変わる。
   空間を上手く操るジャズのようだ。しかし今は、
   いまひとつのめりこめない。

   もとPINKの二人が即興で演奏した盤。04年の発売。
65・Yen Changホッピー神山:ママタンゴ:☆☆
   フリーの交歓。ホッピーはメロディやリズムを使わず、シンセやテープ・コラージュでの
   ときおりハーシュなアプローチ。混沌さで足場を膨らませた。
   そのため少々とっつきにくい音像となった。アルバム一枚通して聴くには集中力が必要。
   Yen-Changはハイトーンの喉を高らかに響かす。カオス・パッドらしきもので
   声の加工も行ってる。バトルでなく、構築性でもなく。ふわりふわりと即興。
   「出会い頭の音玉」って帯の表現がぴったり。性急さを見せず、ランダムに奔放な音楽を構築した。
   そっけないデザインでもあり、一期一会でさくっと聴かれることを狙ったのかと思いたくなるほど。
   今後本作が、二人の代表作になるとは思いがたい。しかしキャリアのひとときを
   切り取った、貴重な記録になるだろう。

   ヒップホップかな?いまいち詳細が不明。
64・Kamal:Once a jerk always a jerk:
   ラップぽい曲も数曲あるが、基本は男と電話越しな男女との会話がメインか。
   ぼくの英語力では歯が立たず。コメディアンの語りギャグなCDかも。
   英語わかる人なら、評価変わると思います。

2007/1/8   1/6に塔のバーゲン購入品の第三弾。これで全部終わり。さあ、ゆっくり聴くぞう。

   ジャズ。ノルウェーのギタリスト、Jon Ebersonのリーダー作で、ドラムとベースのトリオ。
   ベースはBjorn Kjellemyr(英語表記ご容赦)、ドラムはAudun Kleive。ロックっぽい曲もあるようだ。
   86年の録音。Odinから発売。
63・Jon Eberson:Stash:
   エレキギターがメインのギター・トリオ。ハードロックでもジャズでもない。
   グルーヴや攻撃性、破天荒さがかなり希薄。
   爽快だしテクニックもあり。かといってBGMでもない。
   ・・・だからそれで?と言いたくなってしまった。どの点を表現/聴かせたいかまだ、掴めて無い。
   リズムが少々おとなし過ぎるのか。アドリブが淡々と続く物足りなさ。
   場面転換的に挿入される、アコギのソロのほうが面白かった。

   ジャズ。スウェーデンの盤かな?トロンボーンとギターのデュオ。 
   04年の発売。がちがちのフリージャズを予想したが、ほのぼのしてるみたい。
   曲によってはトロンボニストがピアノを演奏。
62・ULI GUTSCHER,WERNER ACKER:Duo Conceptions: ☆☆☆★
   ほのぼのとスケール大きくスイングするさまが素晴らしく心地よい。
   メロディアスなオリジナル中心。耳に柔らかくしみこむ。
   トロンボーンの訥々さ、ピアノの流麗さ。西欧のせつなさ、カントリーっぽい
   いなたさ。振り幅大きい演奏を、ギターが懐深く包んだ。
   ブルージーさが皆無な一方で、メロディラインやコードの感触は繊細な表情でくるくる展開した。
   くつろぎながら聴くのに似合う一枚。傑作。
   派手さも力強さも志向せず、気負わずに淡々とジャズを楽しんでる。

   ジャズ。モーズ・アリソンが00年にロンドンで行ったライブ版。バックはギターのトリオ。
   01年にブルー・ノートからリリースされた。
61・Mose Allison:The Mose Chronicles Live in London,Vol.2:☆☆
   まず、72歳と思えぬ溌剌とした歌声に驚いた。端正にスイングする歌モノを
   楽しめる一枚。ドラムとは長年付き合ってるという。細かなとこまで
   すっと拾う、リズムのカンのよさに耳を澄ます。派手さはないが、枯れてもいない。
   軽々と弾むサウンドが楽しい一枚。

   ジャズ。ウィーンの出身らしい。検索したが良くわからず。後期マイルスな印象。
   リバーブたっぷりのトランペットが響き、広がりあるシンセとタイトなビートで
   浮遊感を出すユニット。ギタリストも鋭く弾く。88年の録音。
60・Bumi Fian:Fian:☆☆
   まっすぐなトランペットを主体に、シンセなどが開放さをかもした。
   ビートでぐいぐい押さず、清涼さをねらったか。
   変拍子もあるのかな?ひとひねりした音像だ。
   フュージョンのような軽快性は希薄で、混沌が陰の軸となる。

   アヴァン・ジャズ。UKで録音された、Ken Ramm(g)が主体のユニット。スライド・ギターに
   打ち込みのトリップ・ホップが漂う。女性ボーカル入り。アンビエント系かな?97年発売。
59・Euphoria:Euphoria:☆☆☆★
   ダンディで陰のあるメロディが聴きもの。エレクトロニカの要素をほんのり
   まぶしたダークサイケで、インスト志向もあり。穏やかなBGMにも
   似合う魅力的なメロディがある一方で、どこか病んだ香りも漂う。
   ギタリストがリーダーか。複数のボーカルを曲で使い分け、飽きさせない。
   鮮烈なアレンジを施したら、ぐっとキャッチーなポップスになるだろう。
   しかし彼らの魅力は無くなってしまう。さほど分厚くない音像だが、
   耳を澄ますと細かなところまで目配り聴いている。
   勢い一発で録音していない分、緻密さも。けだるいダンサブルさが心地よい。
   特に前半2曲の旋律は素晴らしい。

   ヒップホップ。Rocafellaレコードのコンピか。Young Gunz, Beanie Sigel Feat. Jay-Z,
   Peedi Crakk, Freeway, Dirt Mcgirt (Ol Dirty Bustard), Lil Ceaseらが参加。
   Young Gunzのヒット曲"Can't stop,Won't stop"収録が売りらしい。03年の発売。
58・V.A.:State Property Presents The Chain Gang Vol.2:☆☆★
   チープなシンセをすっきりと多用するトラックに乗ったラップは、溌剌として 
   ほとんどの曲が楽しめた。あまり薄暗くなく凄みも利かせない。
   かといって、軽薄でもない。ポップ寄りの耳ざわりいいヒップホップを集めた好コンピ。

   ヒップホップ。ミシガン出身でM.A.G.とB12によるデュオ。1stらしい。02年リリース。
57・Midwikid:Something wikid this way comes...:☆☆☆
   素朴なラップで、鋭さは無い。いなたいが、着実な音作りに好感持てる。
   節回しは歌心がほのかにあり、意外と聴き応えあり。
   ギャングスタ的な音作りなので、素朴さはむしろ逆効果。
   革新性は薄いし、歴史に残る傑作とも言いがたい。
   しかしミディアム・テンポのリズムに乗ってラップを聴きたく
   なるとき、本番だとあんがい充実感を味わえる。
   1stにしては良く練られた盤だ。

   ヒップホップ。二人のDJが組んだユニットか。詳細不明。デビュー盤らしい。04年発売。
56・Abdominal & DJ Fase:Flowtation device:☆★
   不穏な空気もほんのり。スカスカで軽やかな雰囲気も。後者へ軸足を置いたか。
   生演奏を思わす、奥行き深いトラックがいかしてる。
   ラップはいまいち凄みが無いなあ。もっとビートとスクラッチがキツいと
   予想したが、さほどでも無し。中途半端だ。どのベクトルでもいい、極端に走ったら好み。

2007/1/7   1/6に塔のバーゲン購入品の第二弾。今日はここまで。
          あと、もう一弾が、わずか残ってます。

   JBとメイシオのライブ発掘盤かと買う。ライナーによればJBのほうは
   81年LP"Live in NY"の再発(数曲、カットしてるっぽい)。
   メイシオは良くわからず。70年に"Housse of fox"の著作権で録音された。
   いいかげんなコンピと思いきや、メイシオのほうはクリフ・ホワイトが
   ライナーをきっちり書いている。どういう盤なのやら。
   03年に米Fuel 2000 Recordがライセンス販売。ユニバーサル系列らしい。
   ブートじゃなさそうだが、なんか危なっかしい盤。
55・James Brown & Maceo Parker:The Greatest soul on earth!:
   JBのライブは溌剌ながら、凄みが物足りなし。メイシオは曲の出来よりも、アルバムとして散漫。
   結果的に中途半端な2枚組だ。安っぽいジャケのままな印象を受けた。
   正式な二人の作品をきっちり聴け、と後押しされるような編集盤だった。

   モーマスの05年作品。ベルリンで録音された。おそらく多重録音による
   ひねくれポップス。(3)は"バカ殿バカ殿、変なおじさん"と日本語フレーズまで
   含まれる歌。サイトには志村けんとミニモニ姫の写真まであり。
   相変わらずわけわかんないことをやっている。初期の幻想性はどこへいったやら。
54・Momus:Otto spooky:☆★
   メロディがきれいな曲もあるが、へなへなシンセのアレンジにとにかくへこたれる
   今のモーマスの志向かもしれないが、アコースティックなアレンジに
   したら、だいぶロマンティックさが増すと思うが・・・。

   男性ソロのソウル。アル・B・シュア!がデビューを画策、02年に録音するもオクラ入り、
   05年にNYのインディからリリースの情報あり。ただし本盤のクレジットではプロデュースが
   ダニー・ゴールドの名義。どういうこと?本盤が1stか。インディ"Other side"レーベルから発売。
53・Dean Phil!:Hold on:
   大味な産業ロックみたいなバック。ゴージャスな録音とはわかるが、
   ミックスがごちゃっとしてスリルに欠けた。華美すぎ、隔靴掻痒な感じ。
   演奏に埋もれて、ボーカルが生きてこない。
   ソウルと思わず、ポップスとして聴くべきか。

   テンプス01年のアルバム。発売はモータウン。ナラダ・マイケル・ウォルデンと
   オーティス・ウィリアムスなどがプロデューサー陣。
   こわもてなジャケットにヒップホップかと勘違いで購入。帰ってからテンプスと気がついた。
52・The Temptations:Awesome:☆★
   打ち込みの軽いビートに、ハーモニーが柔らかく乗る。
   丁寧な作りのプロダクションで安定して聴けるが、いかんせん曲の魅力がまちまち。
   小粒なイメージ残る。耳を惹くのは(4)、(5)、(13)あたりか。
   ベテランの安定さから一歩踏み越えた、何かが欲しい。

   K.K.NullJon Roseと組んで00年にオランダと日本で録音された。
   Nullはカオスパッドやギター、ヌルソニックを演奏。ジョンが演奏するのはバイオリン主体の
   自作楽器らしい。音だけ聴くとエレクトロニカ系の即興ノイズ合戦みたい。
51・KK NULL & JON ROSE:Transgenic Nomad:☆☆
   短めの作品を集めた。パワー・エレクトロニカ。ノイズ的な要素もあるが
   メロディを希薄にした太いシンセの響きと
   低音の唸りが耳へ残る。ビートをガシガシ押さず、どっしりとごつい電子音が
   空気を振るわせた。爽快感はあまり無い。ポップではないが、聴きやすい。
   低音弦との無拍子テクノと聴くべきか。

   静音響系ミュージシャンのコンピレーションか。オランダのV2_archiefから発表。
   "Brandon labelle"の紹介らしい。すなわちレーベル・コンピか。
   日本人も何人か参加してるが、詳細は不明。
   細かく書かれた英文ライナーあるので、読めばわかるのかな。
50・V.A.:Just about now:☆☆☆
   2000年7月にロッテルダムの展示会「Just about Now」へ参加した
   ミュージシャンの作品コンピだった。佐藤実、BMB.con、Peter Duimelinks、
   Frans de Waard、Edwin Van Der Heide、志水児王、三輪真弘、Roel Meelkop & Reinier Schimmel
   角田俊也、Justin Bennettが参加。残念ながら全員、初めて聴いた。
   丁寧なブックレット付だが、英文を読むのに挫折。
   音楽は小音のミニマム・エレクトロや波形の揺らぎが傾向。
   リズミカルではなく、震えやランダムさを強調した。一曲を細かに聞き込むよりも、
   ゆったりと空間へ身を任す作品。なので各曲を長くし、収録メンバーを絞ってほしかった気も。

   即興。フィラデルフィア在住の牧原利弘(per)がジム・メネシー(per)とデュオ。
   ジムはミディ・マリンバも使い、エレクトロニカ風のアプローチもあるようだ。
   00年の3月に録音された。
49・Toshi Makihara/Jim Meneses:Next Bug:
   ミニマル要素も薄く、ランダムに細切れの打音が弾んでは消える。散漫気味なところも。
   個人的には(9)や(10)のように、たとえ断片であっても
   ビート感あるほうが好き。デュオの掛け合いは希薄。で、ミディ・マリンバの効果もわかりづらい。
   まるでテープ・コラージュのよう。
   肉体性を感じにくい作品だ。録音は、音の感じからセッションと思うけれど。
   音数をあえて減らす狙いが、スリルの減少につながったか。

   ブレイキーの59年パリにてライブ音源。リイシューみたい。4曲入りでサイドメンは
   リー・モーガン(tp,)、ショーター(ts)など。フランス盤で94年再発のようだ。
48・Art Blakey et les Jazz Messengers:Au Theatre des Champs-Elysees:☆☆☆
   新鮮味は無いが、勢いあるハード・バップを肩の力抜いて安定して聞かす。
   曲によってはソロを編集してるかも。ツッコミ気味に叩くシンバル・ワークは
   本盤でも爽快だ。リー・モーガンのペットが迫力。ショーターはいまいち元気ない。

   ストレート・アヘッドなジャズ。発売元のCellar Liveはカナダの自主レーベルらしい。
   クラブのオーナーが所有、ライブ音源を発表してるようだ。本盤はギタリストのマイク・ラッドの盤。
   05年の発売。素朴な響きで軽快に、オリジナル中心で演奏。3リズムにテナーが加わる編成だ。
47・Mike Rud:Live from Lotusland:☆☆☆★
   シンプルなスイング・ジャズ。50年代前半へ戻ったかのよう。
   オリジナルも多数。でも全体の違和感は無い。やはりギターが音数多くなるが。
   ところが単なるミューザックを超えた覇気とスリルがあって、引き込まれる。
   音量絞ってBGMにするもよし、ボリューム上げて上品で締まったアンサンブルへ
   浸るもよし。フリーさや破天荒さは皆無、アドリブもとっぴさは無い。
   時代性を意識しないジャズだが、端正で真摯な雰囲気がきらりと光る魅力あり。

    ジャズ。仮装した男女が8人。音はダンサブルでまっとうなストリート・ファンク・ジャズだ。
    活発にライブをやっている様子。これはステージを見たいな。03年発売の1stらしい。
46・Revolutionary Snake Ensemble:Year of the snake:☆☆☆
   3管から5管くらい、太鼓も曲によって複数のメンバーが入り乱れ
   明るいファンクを繰り広げる。ソロも含め、明快なユニゾンのアンサンブルを
   主軸に置いた。根本のところで迷いが無い、ハッピーな音楽。イベントで映えそう。
   ライブで豹変の可能性もあるが。テクニックはまずまず。
   サン・ラからJBまで多彩なカバーを取り入れて、バーバンドのような
   下世話さも少し。あくまで自らの音楽を提示したい芯の強さは感じた。
   ちょっと抜けの悪い録音で残念。 

   一種のヒップホップに分類されてるが、エレクトロニカなアプローチにも聴こえる。
   サウンドは弦など生楽器の感触あるけれども。フランスのミュージシャン。04年の発売。
   やたら凝ったサイトがあるが、フランス語でいまいちわからず。
45・Le professeur inlassable:Lecon N.1:☆☆
   ビート強調せず。ゆったりと部屋で聞けた。ループを多用し、淡々と紡ぐ。
   明確なメロディはあまり志向しない。バックトラックのみのアイディアで
   一曲を聴かせる感じ。仏語訛りの日本語サンプリングが登場する(6)もあり。
   モーマスのように中途半端に暗いポップス系統が無ければ、BGMとして楽しめたんだが。
   (11)ではタブラが登場。バラエティを持たせた曲構成をとった

   99年にテネシーのレーベルRenaissanceからの盤。60年代後半、キャピトル時代の
   ベスト盤らしい。なお、ファンサイトを見つけたのでここでリンクを貼ります。
44・Ohio Players:Backtracks:
   キャリア極初期、"Observations in Time"(1968:Compass/Capitol)から
    "Find Someone to Love"を抜き、"You to me are everything"を足したよくわからぬ盤。
   "You to me~"を初収盤が何か見つけられず。当時未発表なの?
   本盤はオリジナルの曲順をめちゃくちゃに変えており、必然性が不明。
   音楽性そのものも南部要素を生かしたファンクだが、荒削りでとっちらかった
   印象あり。オハイオの試行錯誤な時代の一枚。

   白人男性SSW。非公認ファンサイトはここ。ノルウェー出身で、本作が2th。04年発売。
   78年産まれで、ジャケではモノクロの渋さだが、中の写真はあどけないほど若い。
   広がりあるミックスだが、基本はコンボ編成でアコースティックに仕上げた。
43・Kurt Nilsen:A part of me:☆★
   無邪気で爽快な音楽性。ブルーズ感覚は薄い。しゃがれ声ながら
   サビで聴かすハイトーンも涼やかだ。バンド・サウンドで歌い上げるが
   シンプルなバックのほうがはまりそう。切なげな色合いもあり。
   老成したころが楽しみ。つまり、渋みが欲しい。
   才能のみで歌い流してるように感じてしまった。
   メロディも悪くないが、全般的に大味。全10曲、40分弱で
   さくっとまとめた潔さは評価する。もっとアレンジを固めて、独自性も望んでしまう。
   もっともっと奥が深そうな歌手。今後に期待。

   NYの白人男性SSW。1stフルアルバムか。カントリー/フォーク・タッチの軽快な弾き語りに
   楽器を加える構成。04年の発売。
42・Luke Temple:Hold a match for a gasoline world:☆☆☆★
   隠しトラックもあり。ポール・マッカートニーあたりに影響受けたような
   アレンジやメロディがそこかしこに見られる。ボーカルの線は細いが
   ファルセットも使った柔らかなタッチが心地よいポップスに仕上げた。
   なかなかの完成度だ。アコースティックが主体か。シンセもうっすら響く。

   白人男性フォーク歌手。John Brown's Bodyのメンバー、ケヴィン・キンセラによるソロ。
   アコギの弾き語りを基調に、やけにグルーヴィなリズム楽器などが乗る。
41・Kevin Kinsella:I-Town Revial:☆☆
   打ち込みカントリー風で始まって、みるみる南米あたりの要素が多くなる。
   アレンジは凝っており、内省的なレゲエ・フォークに変貌した。
   なんともユニークな音楽性だ。

   デンマークのブルーズ・ロックバンド。69年発表の2nd。ギターでアレクシス・コーナーが参加。
   Repartoireの再発と期待して買ったが、ちょっと趣味とは違うかも。
40・Beefeaters:Meet you there:☆☆
   ブルーズ・ロックが基調ながら、ソロ回しも取り入れジャズ的なアプローチも。
   あまり期待してなかったが、けっこう楽しめた。ブルーズが
   好きならば、より楽しめるはず。ぼくはブルーズにさほど思い入れないからなあ。

   白人女性SSW。サイケ風味でアコースティックに歌う、好みの音楽性。
   デンマーク産まれの英国育ちと情報見つけた。03年発売の3rdアルバム。
39・Leona Naess:Leona Naess:☆☆☆
   覚束なげながらしっかりと歌い上げる。アコースティック感覚なバックとの
   からみも楽しい。叙情さと切なさのバランスが好みなメロディだ。派手さは無いが
   じんわり聴かす。レオナはギターがメインで、テンポは静かにかき鳴らす。
   ほかの盤も聴きたくなった。基本はバンド編成だが4つ淡々と打つ
   弾き語りノリが基本かと感じた。

   白人女性SSW。キーボードと弦、ほかを多重録音してしっとりとサウンドを作った。
   本盤が3rd。99年にリリース。01年にボートラ付で再発されたそう。
   聞いたことある名前だな、と思ったらデビュー作が大ヒットしたとか。
38・Sophie B. Hawkins:Timbre:
   かっちりアレンジされているが、いまいち大味。明るい曲調が多いと
   予想したが、以外に暗かったり、ブルージーな要素もあるのが意外だった。
   そういった点でも、統一感に欠ける。全体には重たいイメージ。

   白人女性SSW。NY出身でニーナ・シモンやジョー・ジャクソンを聞いて育ったらしい。
   プロデューサーを複数立て、打ち込み寄りのスケール大きな歌を聴かす。
   02年発売で、現時点で唯一のアルバムみたい。
37・Aja Daashuur:Before the Beginning:
   気が強そうなしゃがれ声と、コケッティな口調が交錯する。
   部分的に面白くもあるが、全般的には大味で単調。
   演奏は生が中心だった。彼女の音楽性がいまいちつかめなく、
   のめりこめず。内省的な(7)は心地よかった。

   白人女性SSW。プロデュースと演奏のほとんどをPJ・ハーヴェイが担当。
   さらに数曲ではドラムにJ・マスシスが参加。すごいな。ダイナソーJr.などで
   バッキング・ボーカルを担当してた関係らしい。
   01年発売の、おそらくソロでは1stにあたる盤。
   うっすらとサイケの風をまぶし、陰をまとって歌う。
36・Tiffany Anders:Funny cry happy gift:☆☆
   曲調は似通っており、アルバム全体だと一本調子なのが残念。
   個々の曲は暗いサイケ・フォークで好みなのに。(3)や(8)などがよい。
   ダブル・トラックでもやもやと歌う、サウンドがしっとり漂う。

   白人女子歌手。内省的SSWを期待したが、気が強いポップス。ダブリン出身。
   プロデュースや作曲の何曲かでNew RadicalsのGreg Alexanderが担当。
   本作でデビュー、03年のリリース。どたすか喧しいバックだが、かろうじて
   アコースティック志向か。本作時は10代らしい。そのわりに堂々たる歌いっぷり。
35・Carly Hennessy:Ultimate High:☆☆☆
   おきゃんにほんのり塩辛く喉を張り上げる歌とバタバタするドラミングながら、
   生演奏中心の伴奏は、まずまず聴き応えあり。メロディもムードが似かよりつつ、
   耳ざわりいい。細かなアレンジの妙に耳を済ませつつ、のんびりと聞き流すには
   最適な盤。スローの曲はほとんど無く、ミドルかアップで派手に迫る。
   しっとりした曲でメリハリをつけて欲しかった。力任せに元気を炸裂させた感あり。
   節々でちょっと声を軋ませるセンスはなかなか。丁寧に歌ったらコケッティな
   路線もありうると思う。それ以降の活動が見えないけれど、続けてて欲しい。

   ヒップホップ。NAS主催レーベル"ILL WILL PRESENTS"第一弾、デビュー作。
   NY出身。女性をはべらせ気取る写真封入のライナーあるあたり、いかにも
   ギャングスタ・ラッパーっぽい。03年リリース。
34・Bravehearts:Bravehearted:
   打ち込みリズムがなんとも軽い。スリルに欠けてのめりこめなかった。

   ヒップホップ。ベイエリアのラッパーによる5th。03年リリース。
33・PSD Tha Drivah:U ain't heard of me???:
   ベテランの余裕なのか、地方性なのか。かなり緩い。メロディ志向の曲は
   聴けるが、全体的には退屈。(16)のほのぼのラップあたりを期待すべきか。
   (8)や(17)などミドル・テンポでちょっとスリルあり。

   02年にTZADIKより。"Radical Jewish Culture"の一環でクレツマーを
   エレキギター風味を加えたハードなタッチで演奏。Albrecht Kopfに捧げられた。
   誰だろう。検索するも良くわからず。
   一部のトラッドを除き、作曲(プロデュースも)はリーダーのポール・ブロディが担当。
   彼の音楽は00年の"Klezmer Stories"を聴いてるかも。リーダー作では5th、
   Paul Brody's Sadawi名義では1stのようだ。拠点はベルリンか。
32・Paul Brody's Sadawi:Kabbalah Dream:☆☆
   エレキギターが入る部分で若干個性が見られるが、基本はパワフルな
   クレツマー。聴くには楽しいが、いまひとつのめりこめず。

   元スペシャルズのテリー・ホールの名前に惹かれて買う。CCCD。
   03年リリースで、Mushtaqとのコラボらしい。アラブ・ポップなリズムに
   最初は腰砕け。こういう嗜好がテリーにあったのか。
31・Terry Hall & Mushtaq:The hour of two lights:☆★
   テリーのポップ・センスは影を潜め、アラブ音楽へどっぷりと愛情を
   注いだアルバム。現地の音楽を尊重しつつ、中途半端にオリジナリティを
   めざしたのか、なんとも大味でへにゃへにゃなポップスに仕上がった。
   幾度か聴いたが、どうにも馴染めない・・・。

    ソウル。GAP BANDが99年にカリフォルニアのインディ、Big Traxからリリースした盤。
    ヒップホップまで取り入れてるようだ。リズムは打ち込みっぽいがコーラスはきっちりあり。
    3兄弟がきちんと残ってます。作曲者にウィルソン名がやたらある。身内か。
    二曲目などは作曲、プロデュースがブライアン・ウィルソンとあってあわてた。無論別人。
    スヌープ・ドッグやDJ Quickが数曲でゲスト参加。ファンキーなアップも、甘いスローも収録。
    オフィシャルじゃないが、詳しいのでここへリンクを貼っておこう。
30・The GAP BAND:Y2K Funkin' till 2000 COMZ:☆☆
   オーソドックスなアップ・テンポにいまひとつのめりこめない。
   メロディがあまりにキャッチー過ぎて既聴感がぬぐえなかった。
   ベテランの円熟な一枚。しかしバラードの(6)にははまった。名曲。
   この一曲のためだけだとしても、本盤は聴く価値あり。

    トリップホップ。99年に米ミルウォーキー出身、男女のDJ3人で結成らしい。
    99年発売?1st。クラブ系の打ち込みにアンビエント要素も取り入れた方向性か。 
29・Def Harmonic:Embrace:☆☆
   テクノっぽいウワモノにタイトなビートが乗る。テクノとヒップホップの中間を行く
   かなりドライな展開だ。スカスカな音と変調した声もあいまって、
   クールな感触が楽しめた。   

    コーラス物ソウル。西海岸はオークランドで結成された3人組で、プロダクション・チームらしい。
    ヒップホップの要素も多分に含めた。00年録音。3rdかな?彼らは93年の盤を聴いてる、たぶん。
28・Somethin' for the people:issues:
   ヒップホップ系の味わいを足したソウル。いまいちボトムが軽く
   つるつると引っかかり無い。メロディや歌声に線が細く、物足りなし。
   プロデュースに気取りやお洒落さを加えてるが、底が浅い。
   曲はプリンスの影響著しい(10)がベストかな。
   メロディはスティーヴィー・ワンダー色漂う(12)や、軽快で滑らかな(9)も良い。
   しかし歌声とアレンジが、根本的に物足りなし。
   スカスカな音作りはやる気無しに聞こえてしまう。積極的にのめり込めず。

    ジャズ系ポップスか?ノルウェーのBarbro Husdalが歌をつとめる四人組バンド。
    弦カルや管も含めて厚みを出す。99年頃のリリースか。30分未満のミニ・アルバム。
    Carsten Dyngeland(p)がリーダーで、voは彼の妻。90年初頭から本バンドは
    活動しているそうだ。
27・Cocoon:Cocoon:☆☆★
    ロマンティックでダンディな演奏がうれしい。時間短いのがもったいない。
    歌声は爽やかで、ディープに走らないが、BGMに堕さないサウンドの志向が心地よい。
    かすれ気味に響かすOystein Sobstad(英語表記ご容赦)のテナー・サックスが素敵。
    たとえば(4)。菊地成孔ファンに聞かせてみたいな。

    ヒップホップ。元Ruff Ryders所属、今はHood Environmenの主催ラッパーだそう。
    NY出身でいいのかな。00年リリースの1st。Swizz Beatz、DMXらが参加。
26・Drag On:Opposite of H2O:☆☆★
   ほんのりユーモラスで凄みを漂わす。きっちりバック・トラックを作りこみ
   興味深く聴けた。ラップは歯切れ良く、ゲストも効果的。
   強烈な個性は無いが、メロディアス。いなたさをわずか漂わす洗練っぷり。

    ジャズ。tpとtsの2管アコースティック・カルテットで、ベースでなくチューバの参加が個性か。
    ひょろっとした白人四人組。メインストリームかもしれないが、ラウンジ・リザーズ系の鋭い
    ジャズだったらいいなあ、と購入。05年にシカゴのデルマークからリリース。1st。    
    カンは当たり。やたら短い曲も多数やり、フリー気味の鋭いジャズを聴かす。
25・Chicago Luzern Exchange:Several Lights:
   CDでは退屈。散漫なフリーが、ビート感皆無ですすむ。
   ライブでは印象変わるかもしれないが、盤では自己満足的な印象強い。
   拡散してしまい、集中力が続かない。

    失敗~。表題からなんとなく、マイナーなシカゴ・ジャズのコンピと誤解。
    ふたを開けたらサッチモやビリー・ホリデイ、エリントンら20~30年代ジャズのコンピだった。
    聴いたことない曲ばかりで、これはこれでOKとしよう。03年に仏Hot Club de Franceより発売。
    それぞれの曲が、さまざまなカフェやクラブに捧げられている。
24・V.A.:Jazz in Chicago 2 - Les clubs de Jazz:☆★
    バラエティに富んだ選曲、曲も良いのでこれはこれで良いコンピ。気軽に聞くのにいい。
     音は盤起こしっぽいSPサウンドのため、そこそこ。でもノイズはよく除去している。
    録音時期や曲によってはミュージシャンクレジットもある、シンプルなライナーも良し。

2007/1/6   塔のバーゲンでどさっと購入。順番にアップさせてください。まず第一弾。

   ヒップホップ。詳細は不明。フロリダあたりで活動らしい。03年リリース。本盤がデビューらしい。
   オフィシャルHPはリンク切れみたい。解散したの?詳細不明。
23・Humble Thugs:This be the lik:
   すかすか気味なトラック。曲ごとに印象は違う。
   ラップは軽快なのが多いかな。
   賑やかなパーティ・ラップ。不穏な感触もあるが、あくまでスパイス程度。
   女性声のサンプリングもキュートに決める。ぬめっとした雰囲気が中途半端だな。
   いっそとことん疾走したほうが爽快なのに。はじけ損ねるタメがもどかしい。
   停滞感こそがラップの狙いかもしれないが。
   リズムはぐいぐい押さず、漂う感じ。やたら曲が多い・・・もっと絞れば
   アルバムがまとまるはず。散漫な印象が否めない。

   ヒップホップ。オークランド・ベイエリアの白人ラッパーで、これが1stソロ。04年発売。
   ピート・ロックらがプロデュースで参加した。彼はForeign Legionというユニットのメンバーだそう。
22・Prozack:Death Taxes & Prozack:☆☆
   トラックはあっさり、グルーヴの希薄なラップのスピード感で聴かす。
   テンポは決して速くないが、畳み込む感じが小気味良い。
   いまいちやぼったいのが難。凄みが滲んだら、もっと好み。
   ベストは(8)。涼やかさがいい。

   ヒップホップ。西海岸が拠点だそう。これは04年リリースの2nd。ゲストでレイクォンや
   イグジビットらが参加してる。ボートラ3~4曲あるみたい。ブックレットに"hidden bonus track"と
   律儀に書いてるのがおかしい。隠してないやん。なんでわざわざ書いてるんだろう。著作権関係?
21・Phil the Agony:Aromatic:☆★
   前半のたるさにめげるが、(4)からぐっと引き締まった感触。
   レゲエっぽいかと思ったが、爽やかさの中に芯の通ったラップだ。
   中盤にゲスト参加トラックを集め、全体の構成にメリハリつけた。
   やたらボートラが多いが、いっそ取ってコンパクトなほうがうれしい。

   ヒップホップ。デトロイトのラッパー、Phat Katのソロ。デトロイト版(13曲)と全世界版(15曲入)と
   2種類あり、これはデトロイト版。なぜかオフィシャルに本盤の記載が無い。ローカル・レーベルの
   編集盤か。詳細不明。03年リリース。
20・Phat Kat:The Undeniable LP:
   ビートはまあまあスピーディ。ほんわか太いシンセを使うアレンジが
   奇妙なスリルを演出する。ラップはいまいち切れが無い。
   ポップで耳障りは良いが、ぐっと来ないな。

   米Dave Matthews Bandの黒人バイオリニスト、ボイド・ティンズレイの1stソロ。03年リリース。
   DMBに通じる、スケールの大きなロックをやっており、バイオリン弾きまくりとは違う。
   デイブ・マシューズやダーティ・ダズン・ブラス・バンドがゲストで参加した。
   発売当初は単独サイトがあった模様だが、今はリンク切れ。
19・Boyd Tinsley:True Reflections:☆★
   バイオリンを前面に出した怒涛のインプロ化と思いきや、重たいルーツ・ロック。
   デイヴ・マシューズ・バンドと通じるものがあり、逆になぜソロを志向したのか
   いまひとつぴんと来なかった。ほとんどの曲で自身がボーカルを取る。
   ニール・ヤングの"シナモン・ガール"をカバー。ちょっと大味かな。

   UKソウルかな?98年発売。ジャケットにはひざを抱えた黒人女性が写った。
   詳細情報は検索できず。バンド編成だが打ち込みっぽいリズムにけだるげなムードで歌う。
18・Chezere:Upfront...and personal:☆★
   ドラムはジャミロクワイのデリック・マッケンジー、ベースはジェフ・ベックなどと
   競演してるランディ・ホープ・テイラー(非全曲)か。かっちりしたバックで
   グルーヴでたゆたう。一本調子のメロディだが、ところどころハッとする
   色気あり。むしろライブ盤でラフなほうが魅力でそう。

   ジャズ。83年の録音でニルス・ペッター・モルヴェルらによるユニット。
   M.I.Z.さんのサイトによると、80年にオスロ周辺ミュージシャンで結成、初の盤だそう。
   クレジットに"ソロ:誰々"とあるが無伴奏ソロではない。単にそこでクレジットされた
   ミュージシャンを前面に出したということのようだ。
17・Oslo 13:Anti-therapy:☆☆☆
   多人数ホーンによる爽快で凝った演奏が楽しい一枚。
   リズムを基調にしつつ、ホーンのアドリブも聴き応えある。
   インストが主体ながらボーカルが活躍する(5)がすごく気に入った。
   ディキシーからアヴァンギャルド寄りまで幅広いアンサンブルだ。

   クラブ・ジャズ。カリフォルニアはサンノゼを拠点のドラマー、Wally Schanalleによるユニット。
   フュージョンの香りするシンセを置きながら、シャープなリズムが刻む。05年リリース。
   人力の東京ザヴィヌルバッハと言えばいいか。ただしリード楽器はキーボードと軽いエレキギター。
16・Wally Schnalle:The suit:
   ドラマーがリーダーのインスト。キメが多く、ドラムは饒舌にリズムを刻む。
   さらにドラマーが打ち込みビートをくわえ、テクノっぽいアプローチも。
   本アンサンブルにキーボードは不要では。中庸で鋭さのないフュージョンに
   陥ってる気がする。いまひとつスリルも特徴も感じられない。ドラムのテクニカルさは
   聴いてて楽しいが。

   ヒップホップ。03年発売。DJ Mind Motionの仕切りによるコンピみたい。
   レーベルのサンプラーかな。サイトのURLをたどったが、情報とれず。
   ベイエリア / サンフランシスコのラッパー、San Quinn,Bailey,Big Richなどが参加。
   同メンバーによるThe Done Deal Famのクレジットもあり。
15・V.A.:Mind Motion Rocks: The Done Deal Party: ☆
   群唱っぽいラップが次々進んでく。ビートは重たくもポップでもない。
   ただ、淡々と流れるのみ。一曲をじっくり聴かず、ぼやっとBGMで聴き流しに最適。
   残念ながら本盤を気楽に聴いてしまい、新ためて買いたいラッパーはいなかった。

   9thソロかな。05年発売。アメリカのスワンプ系か。クレジットに作曲やプロデュースがない。
   デイヴィッドは彼のマイ・スペースによるとミネソタ出身。
14・David Dordero:South of the south:☆☆★
   それなりに饒舌な言葉遣いでC&Wどっぷり影響の音楽を軽やかに歌う。
   歌詞はわからないが、曲調はすこんと明るい。もっとも単なるBGMにおわらさぬ
   こだわりはあるようだが。ベテランらしい余裕を感じる一枚。

   TZADIKから02年に"Radical Jewish Culture"の一環でリリース。
   ロブ・バーガーによるアコーディオンや鍵盤楽器、ハーモニカなどの多重録音がメイン。
   クレツマー系のサウンドか。脇はベースがグレッグ・コーエン、ドラムでケニー・ウールフセン。
   ロブはkeyでノラ・ジョーンズの録音へも参加のもよう。ネットでインタビューを発見。
13・Rob Burger:Lost Photograph:☆☆★
   ドラムとベースをバックに多重録音で、骨太のクレツマー・アンサンブルを構築。
   きっちりアレンジが良い方向に出て、安定した演奏に仕上がってる。
   いたずらな即興路線は選ばず、端正な面持ちで穏やかにまとめた。

   モノクローム・セットのBidによるユニット。98年に活動開始、99年発表の本作が1st。
   女性ボーカルによるサイケ・ポップかな。トラッドの影響も感じられる。
   ストリングスがシンセなのがいまいち安っぽい。
12・Scarlet's well:Strange Letters:☆★
   トラッド・サイケ。激しさは無く、甘く奏でられる。うわずりぎみの
   女性ボーカルががんばる。ポップスに流れず、トラッドからは踏み出した。
   曲がおとなしいため、中途半端な立ち位置と感じてしまった。
   ときおり顔を出すシンセが安っぽいためか。
   曲は全てオリジナルのもよう。プログレっぽいアレンジがいまいち。
   とことん突き詰めたアレンジとプロデュースならば魅力をより引き出せたと思う。
   99年の盤とは思えない。70年代半ばのプログレ崩れならば納得いくが。
   キュートな(9)の路線で押して欲しい。といいつつ、すでに
   数枚のアルバムをリリースしてるもよう。

   NY出身のフォーク系歌手の1stアルバム。発売年度のクレジット無し。
   Sim Redmondが数曲、ギターで参加している。
11・Crow Greenspun:Bever be it's own:☆★
   か細い声でつぶやくように歌う。ゆったりしたフォークが基調か。
   メロディ・ラインが弱弱しく感じてしまった。曲によってはアレンジも配慮してるが、
   線の細さが否めない。むしろラップ調の(10)や、徹底的に淡々と語り重ねる
   9分の大作(9)が素直に興味持って聞けた。もう一歩、アクの強さあると好み。

   ボストンを拠点の女性フォーク歌手。これは4thアルバムかな。03年のリリース。
   モーフィンのビリー・コンウェイと共同プロデュース。彼は演奏もドラムで全面参加した。
10・Kris Delmhorst:Songs for a hurricane:☆★
   悪くは無いが、声が低くて少々暗く重たいイメージが漂う。
   アレンジも抑えた響きで、スローなテンポが多い。
   たとえば(11)のような、トラッド系の歌はゆったり聴けた。   

   フォーク系の女性歌手4人によるユニット。01年発売。構成メンバーは、
   Jess KleinErin McKeown, Rose Polenzani 、Beth Amsel
   個々で活動する4人が、それぞれの曲を持ち寄り演奏するスタイルみたい。
   現時点で本作以外に録音を残していないようだ。
   活動のきっかけは98年のライブ。たまたま競演したら楽しかったという。
   本作はフィラデルフィアのスタジオに観客をいれ、ライブ形式で録音された。
   ギターの弾き語りにコーラスやわずかな楽器を付け加える程度。簡素なサウンドに仕上げた。
9・Voices on the verge:Live in Philadelphia:☆☆☆
   切々とゆったり歌う曲が多く、寛げる。好みのサウンド。ハーモニーも和んだ。
   4人の個性があからさまに出て、さながらオムニバスのようだ。
   ハモりの共通性で、ぎりぎり統一感を出す。なかでもRose Polenzaniに惹かれた。

   オスロ出身の女性シンガー。音楽一家に産まれたそう。
   本盤は04年リリースの3rd。WikiによるとUSチャートで102位まで行った。
   ノルウェーのシングル・チャートで8位の"You're the Only One"を収録。
   初ワールド・ワイド発売な盤らしい。
   プロデュースや共作曲、ギターで全面サポートのArvid Solvangはノルウェーで
   レコード会社まで持つ凄腕のようだ。
8・Maria Mena:White turns blue:
   内省的なSSWを期待したが、がっつり賑やか煌びやかなバックで、イメージがちと違う。
   どんすか深いドラムがあると、やかましい。歌声は爽やかです。ちと気が強そう。
   メロディはきれい。もっとアコースティックなアレンジだと好み。
  (8)のがさがさした生っぽいアンサンブルのアレンジが興味深かった。

   ヒップホップ。クウィーン・ラティファゆかりのレーベルが出したコンピらしい。
   サントラらしいが詳細は不明。00年の発売。
7・V.A.:The takeover:☆★
   東海岸の不穏なラップがあれこれ。歌ものもあり。けっこう聴かせる。
   ほわーんとしたシンセの古臭さもあるが、コンピ盤ゆえのバラエティさで楽しめた。

2007/1/5   昨年注文したCDが到着。前衛系です。ゆっくり聴こう。

   01年リリース。麻布十番「デラックス」で、ブレット・ラーナー(箏)の仕切りで
   00年3月よりほぼ月一回の即興音楽シリーズがあったという。
   それらから抽出されたコンピ。01年7月「デラックス・インプロヴィゼイション・
   フェスティヴァル」の開催にあわせて制作されたコンピレーション2枚中1枚。
   斎藤徹、Sachiko M+中村としまる、エヴァン・パーカー、
   杉本拓ギター・カルテット(杉本拓、秋山徹次、中村としまる、大友良英)、
   糸(高橋悠治、高田和子、西陽子、神田佳子、田中悠美子)、
   サム・ベネット+ジャンニ・ジェビア+今井和雄+ブレット・ラーナーを収録。
6・V.A.:Deluxe Improvisation Series Vol.1:☆★
   ミュージシャンの選定は目利きだと思うが、エヴァン・パーカーがいたりと
   完全な日本人ミュージシャンを集めた選定になっておらず。
   静謐系ミュージシャンと、日本伝統楽器をまぜて、えらくストイックな
   感触に仕上げた。
   聴いてて緊張を求められる音楽が続く。

   チェコのイヴァ・ビトヴァ(vln)が、米の現代音楽系フェス"Bang on a Can"ゆかりの
   6人組ユニット"Bang on a Can"と吹き込んだ作品。
   ビトヴァは歌も歌っているようだ。
5・Iva Bittova/Bang on a Can:Elida☆☆☆☆★
   混沌とした前衛を想像したが、まったく違う。ロマンティックで懐深く、エキゾティックさも
   兼ね備えた素晴らしいアンサンブル。ライブをぜひ見たい。
   ケイト・ブッシュを連想したハイトーンが伸びる、コケッティな歌声が美しい。
   地に足の着いた独自性ある音楽だ。アルバムを多数リリースしてる模様。
   ほかの盤も是非聴きたい。

   03年5月にアルプスはシオンの旧刑務所内にて、イベントでのライブ録音。
   淡々としたエレクトロ・ノイズ作品。現場だと響きがもっときれいだったろうな。
4・Tomas Korber/erikm/中村としまる/大友良英:Brackwater☆☆☆☆
   寄せては返す波のように、電子音が折り重なって高まり、展開する。
   とどまらずに音像が常に動く。蠢く低音の震えで空気を引き締めた。
   ノイジーな電子音やクリック、スクラッチ等が素材なのに
   ハーシュさは感じない。むしろストイックさと揺らぎが産み出す
   くつろぎが酩酊を誘う、ノイズ・ヒーリングの傑作に仕上がった。

   Sophie AgnelとChristine Wodrasckaによるピアノ2台のデュオ。04年録音。
3・Agnel/Wodrascka:Cuerdas Cinq Cent Trente-cinq:☆★
   内部奏法やピアノ線の上に物を置く奏法も使用しての、アコースティック・ピアノによる競演。
   音だけだと個々のミュージシャンの個性がわかりづらく、折り重なる音の波に耳を任せる。
   完全にフリーでストイックな展開多し。メロディよりも即興の高まりが主眼か。
   かといってテンション一発でなく、静謐なアプローチから盛り上がる場面も。
   かっちり対峙しなくてはわかりづらい音楽であり、ぼんやり聞き流すには向かない。

   04年発売。ペーター・コヴァルト(b)によるプロジェクト、Global Elephantの
   トリオ演奏と、ゲスト(大友良英(electronics)、Jin Hi Kim(玄琴)、
   Pamela Z(voice,electronics)を加えた演奏を収録。録音は99~01年。
2・Peter Kowald:Global Village:
   ストイックな即興がひたすら続く。ライブで見てたら興味深いと思うが
   音だけだと集中力が続かない。盛り上がりは無く、かといって無気質でもなく。
   ランダムなフレーズのつながりが浮かんでは続く。短めの曲が多く、各トラックへ
   とっつきやすさはある。互いの音を尊重しつつ、あくまでも真摯に音を紡いだ。
   攻撃性も物語性もあえて避けたかのごとく。

   良質な各国の前衛音楽を流通するImprovised Musicからの最新刊。
   ベルリンに住む12人のミュージシャンのインタビューを記載。
   本書に同梱して、ベルリン即興音楽のコンピを2枚収録した。
1・Improvised Music from Japan EXTRA 2006 (book):☆☆☆
   ハーシュから音響系まで幅広い。たどたどしい日本語の喋りや、
   日本語のサンプリングが入るのは本盤収録を意識してか。既発曲のコンピか
   新録集かは知らないのだが。インタビューだけではミュージシャンのイメージが
   つかみにくい。あまりに淡々と進むため、聴きこむにはかなり集中力が必要だ。
   いっそ数ページのベルリンのシーン概況記事と、収録曲の解説を入れてほしかった。
   そして各ミュージシャンの、もっと細かい紹介記事も。数行では物足りない。


2006年12月

2006/12/19   ライブへ行く前にレコ屋をサクッと物色。

   ギリシャの男女フォーク・デュオ。1969年発売で、再発は06年。
   サイケの棚に並べられており、興味を持った。ボートラが7曲。
   別アルバムからや、シングル曲を入れたみたい。
259・POPI ASTERIADI WITH LAKIS PAPPAS:ANOTHER SUNDAY GONE :☆☆
   アルバム本体はコンボ編成もありつつ、シンプルなバッキングで切々と
   歌うバラードが続く。ほとんどが女性ボーカル。トラッドとは違ったウエットな
   メロディで沁みるが、ちょっと暑苦しい曲も。こちらは☆3つ。
   ボートラはリバーブをたっぷりまぶした、思い切りびっしょりな歌が続き
   かなり聴くのがつらい。韓国リイシューと知り、頷ける。
   たしかに大陸方面でも受け入れられそうなセンチメンタリズム全開。
   もっとカラッとしたほうが好みではある。ギリシャの音楽って
   こんなに情感モロなのかな。聴いてて落ち込んでくるほど。
   アルバム本体だけのほうが和める。好みの問題だが。

   カナダのサイケデリック・フォーク・バンドの1st。初めて聴く。
   60年代後半の作品かな?コーラスを強調したサウンドらしい。
   2005年にリマスターされ再発。
258・PLASTIC CLOUD :PLASTIC CLOUD :☆☆★
   もっとも前面に出るアレンジな、ファズ・ギターに時代を感じてしまう。なんとも脱力。
   しかし跳ね広がるコーラスは心地よい。メロディもまずまず。オルガンも時代を感じるが、
   こっちはドリーミーさの強調としてOK。要するにギターを横に置けば
   今でも楽しめる。ちょいと気だるげなメロディへ、西海岸風のハーモニーが
   乗っかる。いまひとつテンポが緩く、疾走感が欲しくもある。
   アレンジも構築の配慮を感じた。テクニックが追いついてないけど。特にリズム。

   キューバ出身のミュージシャン、オラシオ(ds)とカルロス(b)を迎え
   佐藤允彦(p)がセッションした一枚。2004年発売。
257・マゴッジャッ:トリアングロ・レベルデ:☆☆☆☆
   強靭なリズムの上で、清冽なピアノが厳しく動く。アドリブ要素も
   多いはず。だがキメも多いのに、全てがかっちりとはまった。
   かなりリハーサルしたのかな?全てが書き譜のような完成度。
   3人が一丸となって疾走する快感が、アルバム全体で味わえた。
   タイトで猛烈に弾むドラム、涼やかなピアノ、太いベース。録音も良い。
   3人ががっぷり噛みあい、ワイルドなグルーヴと佐藤の上品さを生かした快演。

   ポンタ率いるトリオが、吉田美奈子を迎えたジャズ・アルバム。
   スタンダードを演奏してる。ポンタのドラムが聴きたくて購入。1998年作。
256・Ponta Box:meets Yoshida Minako:☆☆☆★
   饒舌なドラミングに支えられた、繊細なアンサンブルと美奈子節のからみに
   しびれる。これはやはり、ライブで聴きたい。曲によってくっきりとドラムの音色を換え、
   メリハリをつけるセンスがさすが。芳醇な演奏だ。
   カバーばかりなのがうれしいような、オリジナルを聴きたかったような。
   大きい音で繊細なシンバル・ワークを聴くもよし、小さいBGMで甘さにしびれるもよし。
   美しくまとまりすぎたゆえのそっけなさや、気軽な立ち寄りをためらう厳しさすら漂わす。

2006/12/10   最近買ったCDなど。

   フランク・ザッパの新譜。ライブでのギター・ソロを集めたアルバムで、
   全16曲入り。88年のツアーを中心に、77年、79年、84年のライブからも
   選曲されている。蔵出し音源、もっとリリースされて欲しいもの。
255・Frank Zappa:Trance-Fusion:☆☆☆☆
   ギター・ソロの第三弾アルバムは88年ツアーを中心に以前のライブを取り混ぜた構成。
   そのためコンセプトがちょっとピンボケか。基本的にザッパのギター・ソロは
   指癖だと思っており、時代の推移は音色使いに興味が行ってしまう。より時代を経るごとに
   クリーンな歪みをうまく扱ってる気が。
   もうひとつの特徴は、サイド・ギターの存在。88年ツアーではマイク・ケネリーが
   オブリ的なフレーズを入れる曲もあり、アンサンブルが複雑に構築される。
   そして何よりも、ドラム。特にチャドは単なる刻みに留まらず、おかずをいっぱい入れるから楽しい。
   ファン向けだが、楽しく聴き応えあるアルバム。

   吉田達也と今掘恒雄によるデュオの1st。録音素材を元にファイル交換を行い
   各自が編集やダビングをしまくったとある。マスタリングは吉田。
254・吉田達也/今掘恒雄:Territory:☆☆☆★
   混沌の中でもブロック編集と思しき箇所にて構成を固めた。即興ベースながら形どられてる。
   疾走するドラムのビートが心地よいが、多重録音の
   コーラスやキーボードの太いアンサンブルも楽しい。
   ラストはトロピカルなギターがたゆたい、リズムが暴れる。
   聴くのに集中力いる。味がぎっしり詰まってるから。面白い。

   キーボードとベースのデュオ、獏による1stミニ・アルバムが出た。
   別のコンピで発表した"胎児の夢"も収録してる。
253・獏:現状維持:☆☆☆☆
   活き活き瑞々しいメロディと、ほんのり捻るエリーニョのボーカルが
   愛おしくなる、今後が楽しみなバンド。はつらつとしたキーボードへ、ベースが
   がっちり絡む。どの曲も聴き応えあるが、(2)や(5)の躍動感が特に好き。
   語りや音色の変化など、レコーディングも丁寧。もうちょい、抜けのいい音だとばっちり。

   クレイマーがプロデュースした日本人バンド、Caucasの先行無料配布の1曲入りシングル。
252・Caucus:Sing (single):

   74年にスタックスから発表。コーラス・ソウルでは傑作といわれるが聴くの初めて。
251・The Dramatics:Dramatically yours:☆☆☆★
   バラードを中心にファルセットやバリトンが交錯する、スウィート・ソウル。
   ちょっと演奏がいなたくスカスカな点もあるが、きれいなメロディが
   心地よく聴ける。舞い上がるファルセットがきれい。

   ラップが聴きたく買ってきた。スクラッチ集団のアルバムらしい。2004年発表。
   ゲストでサイプレス・ヒル、ゴーストフェイスなどが参加。
250・X-Ecutioners:Revolutions:☆☆☆
   鋭いラップとスクラッチがいかしてる。トラックも練られて、丁寧な作り。
   不穏さはあるけれど、根本が健康的な気がした。
   多彩なゲストが功を奏し、バラエティに富んだ仕上がり。
   破綻の無さがある意味、上品さに繋がる。破天荒さがほしくなった。しかし彼らの
   冷静な職人的な魅力は良くわかる一枚。聴いてて素直に体が揺れる。

   詳細不明。マイアミ出身かな?男性ソウル歌手盤。2005年発売。
249・Corey Clark:Corey Clark:
   耳障りはいいが、つるっとして特に残らない。
   ハイトーンのヒップホップがらみのサウンド。
   個性が滲まず、綺麗にまとめてしまった気がする。
   打ち込みビートが軽やかに響き、強烈さは無い。
   同梱のDVDもプロモとインタビューらしきものが無秩序に流れるのみ。
   20分弱とやたらに長いわりに、編集や構図が素人くさく、退屈してしまった。
 
   テキサス録音みたい。詳細不明。3人組の男性コーラス(?)ソウル盤。
   2002年のリリースになる。結構若そうだ。
248・Deep Threat:Deep Threat:
   前半のヒップホップめいたアップは、硬質すぎてつまらない。
   (7)のメカニカルなハーモニーはユニークで耳を惹いた。
   後半でやっと聴く気になる。
   (9)のパワフルなミディアムからソウルさが増し、スローが数曲だけ続いた。
   一枚で全方位を志向したため、かえって中途半端に陥った。歌が格別旨くも無いので、
   個性を見据えた製作が欲しかった。
   ベストは(9)のミディアム。あとは(12)のスローもあんがい良い。

2007/12/1  CD到着。じっくり聴くぞぅ。

  上質な日本ジャズを出し続けるStudio Weeの最新作。水谷浩章(b)率いる
  アンサンブル"フォノライト"の、二種類の編成を集めた。
  今年の6月のピットインでの11人編成アンサンブルのライブと、
  今年7月にトーン・マイスターでのトリオ編成ライブを、それぞれ4曲収録した。
  通販名物ボートラは、"Lazy Fighter"のラフミックス。
247・フォノライト・トリオ&アンサンブル:My Heart Belongs to Daddy:☆☆☆☆
   トリオとアンサンブルの交錯が心地よい。独特の浮遊感と穏やかな
   和音と編成が、寛ぎつつも刺激に満ちたジャズを滴らせる。
   ライブ演奏だが、空気感はくっきりと寄り添う。
   やたらテンション高く、迫ったりはしない。あくまでもロマンティックに、じわっと。
   そしてひとひねりもふたひねりもしたサウンドが滲み漂う快盤。

  同じくStudio Weeより。2005~06年に国立のノー・トランクスで録音された音源。
  このカルテット2ndにあたる。ボートラは松風の曲 "ナンバー513"(未発表音源)。
246・松風鉱一カルテット:ゲストハウスで昼寝:☆☆☆☆★
   うねりと揺らぎ。暖かさとしたたかな複雑さ。凄腕ぞろいを暖かくまとめて
   メロディ感覚を活かしつつ、素晴らしく刺激的なジャズが詰まった快盤。
   ひとつひとつの音を追うも良し、全体のグルーヴへ身を任すも良し。
   水谷+外山の強固なコンビの繰り出すリズムはべらぼうに心地よく、加藤が
   切れ味鋭くさりげない切り込みを魅せる。そしてほんの少し輪郭の甘い
   松風のアドリブが果てしなく続く。ああ、気持ちいい。

2006年11月

2006/11/26    最近買ったCDをまとめて紹介。

   GbV関連。トビアス兄弟のユニットCFCの新譜がバルティモアのレーベルから
   リリースされた。特に目新しい要素は入れてなさそう。
245・Clouds Forming Crowns:Race to the blackout:☆★
   ロバートに比べボーカルのヌケがいまいちで、メロディもハッチャケ度が
   少なく感じた。トラックのアイディアはバラエティよりもバンド・サウンドを狙ったか。
   ある程度のトータル性を意識してそう。ちょっと捻ったロックンロール。

   ビートルズの"新譜"。元のテープをリミックス/編集して新たな切り口で表現する
   コンセプトらしい。何でもありになってきたな。
244・The Beatles:LOVE:☆☆
   文句ない布陣だが、ビートルズとしては聴けない。BGMとして聴くか、
   とことん分析するか。コラージュとしては興味深く聴けた。オーディオ的にも
   分厚くて深みのある音色にびっくり。ここまでひろびろと世界を出せるのか。
   ビートやつなぎも滑らかで、丁寧な作り。トラック単位で聴く世界へ向かいつつある。
   ビートルズとして素材を売る時代に来たのか。
   たとえばポールが、リンゴが、音を重ねたらビートルズとしての意義も見出せる。
   しかし、おそらく二人は関与していない。それこそが本作の中途半端なところ。
   繰り返すが、BGMとして聴くには、とても楽しい。

   TZADIKの新譜でMasadaの世界をさまざまな編成で広げる"Book Two"シリーズの一環作。
   ウリ・ケイン(p)によるピアノ一台によるマサダの曲演奏をしてる。
   プロデュースはジョン・ゾーン。2006年9月6日にNYでさくっと録音された。
243・Uri Caine:Moloch:☆☆☆
   アドリブから即興へ、すべるように雪崩れる。アグレッシブな演奏だが、
   上品で硬質な録音が、目の前にベールをたれ下げたよう。クラシック寄りの
   アプローチで音色が響く。もっと泥臭く、体臭強い音が好みなため、物足りなさは正直あり。
   しかしピアノだけで透徹に世界観を構築するセンスとテクニックはさすが。
   破綻の要素を露も見せず、余裕たっぷりに駆けた。

   これ、ずっと聴きたかった。1987年にアケタの店で収録。国安良夫(ts)の追悼ライブ音源より。
   今でも演奏される各曲を収録した一枚。参加した板谷博もすでに鬼籍なのが悲しい。
   7人編成のアンサンブルで明田川のジャズが繰り広げられる。
242・明田川荘之&アケタ西荻センチメンタル・フィルハーモニー・オーケストラ:エアジン・ラプソデー:☆☆☆★
   独特のこもり気味な音質で、がっつり熱いライブを詰め込んだ。
   オケらしく長尺のソロ回しで、たっぷりなボリューム。怒涛の"エアジン・ラプソディ"と
   朗々な"西都"がメイン。スピーディな"アケタズ・グロテスク"もいい。
   タイトル曲は代表曲でもあるが、初心者には向かない盤かも。
   ポイントを締めずアルバムへ無造作にまとめたため聴いてるうちに最後へ到達してしまう。

   谷川賢作(p)と続木力(harm)のデュオ3作目。2005年の発売。ヤヒロトモヒロ、
   高木潤一、宮野裕司、さがゆき、山田晴三ら、ゲストも多彩。
241・パリャーソ:グリオ:☆☆
   素朴な響きのアンサンブルが心地よい一枚。曲によってゲストが現れるため
   全体の進行にメリハリあり。切なげな(4)、活き活きした歌声が楽しい(5)、
   弦の響きが印象に残る(8)、スティールパンが弾む(11)あたりが好み。

   1985年に小山彰太(ds)+吉野弘志(b)のトリオで吹き込んだアルバム。
   ゲストで梅津和時、広木光一が参加した。今は廃盤。
240・板橋文夫トリオ:レッド・アップル:☆☆☆
   板橋にしてはおとなしめの演奏。がんがんなクラスターは控え、
   メロディアスさを志向してる。録音時期のためか、いまいち音が細い。
   梅津和時が大活躍。バリバリ吹きまくったブルージーな響きがたまらない。
   ベストトラックは板橋のオリジナル"ミナ"かな。もちろんロマンティックな
   板橋のピアノも素晴らしい。ハイハットはモタり気味ながら
   タムを軽くまわす小山のフィルにもしびれた。

   立花のセルフ・レーベルからのリリースかな?エアジンとピットインで1993年に
   行われたライブを収録。サイドメンは渋谷毅、林栄一、片山広明ら。
239・立花泰彦"立花氏の立ち話セッション":神無月:
   ビバップかと思いきや、かなりフリー色強い。林栄一のサックスが軋む。
   ライブだと良さがわかるが、CDでは混沌さが先に立った。
   聴くのに集中力が必要なサウンド。

   リリースの存在すら知らなかった。ジャズ・オルガンのロニー・スミスが来日の際、
   梅津、片山、吾妻光良(g)、佐野康夫(ds)らとセッションした貴重な音源。
   録音は1992年、高円寺のジロキチにて。むろん、今は廃盤です。
238・The Jazz Funk Masters featuring Lonnie Smith:Live Jam!:☆☆☆
   おっとりしたグルーヴの曲を集めた気がする。ライナーによれば
   かなりファンキーに盛り上がったようだが。炸裂は最後の曲にて。
   ややこしい決め事無しに、ぐいっと突き進むのを楽しむジャズ。
   個々のミュージシャンが突出せず、オルガンを中心にうねる。
   じわっとしみてくる一枚。

   怒涛の連日ライブ"大仕事"の音源を集めたCD。これは3日間のテイクを集めたのかな。
   板橋文夫、どく梅、翠川敬基や太田恵資、友部正人といった面子とのセッションを収録。
   1995年にリリースされた。現在は廃盤です。
237・梅津和時:大仕事アンコール'94Live:☆☆☆★
   たまのメンバーをフィーチュア、別の日に収録なDUBのテイクも含め
   ほのぼのしたイメージが全編に漂う。歌物のイメージが強く、じんわりと
   演奏の味が染み出す。ちなみに翠川敬基と太田惠資はこのライブが初共演らしい。

   梅津和時がDUB解散後に結成したユニット。高田みどり、橋本一子、れいちの
   3人を集めて作った。アルバムはこれ一枚のはず。1988年発表。これも廃盤。
236・どくとる梅津DIVA:DIVA:☆☆☆★
   良く練られたアルバム。ミュージシャンの個性に寄りかからず
   弾むアンサンブルが産まれた。切ない"西日の当たる部屋"を筆頭に、
   軽やかなメロディ多し。あっさり聴き流す軽みを持ちながら、
   ベースレスのアレンジがピアノやサックスのアドリブへ
   鮮烈さを出した。バラエティに富んだ曲調も楽しい。

   古沢良治郎のユニット"ね"のひさびさな新譜。10年ぶりかな。
   アケタの店で2006年に行われた複数日のライブから集めた一枚。
   ゲストで外山明、高岡大輔、かわいしのぶらが参加した
235・ね:Live at Aketa:☆☆
   のんきでとっちらかり、粘っこいファンクな"ね"の音楽性を
   ぎゅっとまとめた一枚。矢継ぎ早に曲をどんどん聞かせる。
   歌物の印象が強い。アドリブをもっと聴きたかった気も。

   "ね"の前身となるアルバムかな?川端民生、片山広明といった面子も参加。
   永六輔の映画"大往生"がきっかけで生まれたバンドらしい。1998年のリリース。
234・古沢良治郎:大往生:☆☆☆
   飄々とした古澤流の気楽なジャズが奏でられる。しかし川端のベースと
   外山のパーカッションがリズムを強靭にし、じわじわと熱い鋭さも産まれる。
   泥臭く地へ足をつけたブルーズやカントリー要素の強調を感じた。意図かは不明だが。
   個々のアドリブ云々よりむしろ、サウンド全体のたゆたいに耳をゆだねる。心地よい。

2006/11/23   最近買ったCDをまとめます。

   明田川荘之の最新ソロはアケタの店での深夜月例ライブ音源より。
   今年3/4のライブをメインに使い、一曲だけ05年11月の録音。
   3/4のライブは聴きに行ったが(感想はこちら)、素晴らしい演奏だった。
   CD化されて、とってもうれしい。初期の"外はいい天気"や、
   初CD化という"ブラックホール・ダンシング"、"黒いオルフェ"のカバーなど
   聴き所もたくさんあり。
233・明田川荘之:黒いオルフェ:☆☆☆☆★
   厳かに始まるピアノだが、本盤の本質は激しく鍵盤を打ち鳴らすテンション。
   ミスタッチもピアノのホンキートンクも物ともせず、唸りながら指を振り下ろす。
   内面へ激しく切りこむ熱い即興をたっぷりと味わえる一枚。
   "アルプ"の広がる世界、おっとりとした"外はいい天気"、ぐいぐい絞り込む"理ぶるブルーズ、
   情熱が炸裂する"黒いオルフェ"、猛烈に畳み込む"ブラックホール・ダンシング"。
   あの夜の鍵を搾りだした一枚。そして最後は"ロマンテーゼ"が、柔らかく迫る。
   明田川のピアノ・ソロは各種出ている。中でも本盤は、アグレッシブさを蒸留した一枚。

   是巨人の3rdがリリースされた。今度はスタジオ録音。
   おまけとしてYesメドレーの入った3インチCDつき。
232・是巨人:Jackson:☆☆☆★
   タイトル曲を筆頭に、スコーンと抜けた明るさが滲む演奏。
   猛スピードのユニゾンで突入する圧倒性は本盤も健在で、
   メリハリ激しい展開がぞくぞくとばら撒かれる。
   録音は隅々まで聴けるきれいなもの。アドリブよりも
   一気に疾走するアンサンブルのスリルへまず耳が持っていかれる。
   ほんのりロマンティックさ漂うメロディ作りの妙味も味わえた。
   アルバムを出すごとに充実さが増してゆく。

   大友良英とカナダの音楽家マルタン・テトローがー3年に行った欧州ツアー音源集。
   もともと3枚ばら売りだったCDを、今回は未発表音源として1枚新たにつけ、
   4枚組ボックスとしてリリースしなおした。
   6種類の公演を、ほぼ全曲収録。それぞれのCDには各日のテイクを実にばらばらに
   ふりわけ、CDで聴く時のバラエティさを意識してるのがライナー見ると良くわかる。
231・Martin Tetreault, Otomo Yoshihide:6 concerts Reconstitution:☆☆☆☆★
   根本に優しさがある。鋭い音すらも、深い懐の深さあり。
   ハーシュ。静謐。混沌。対話。さまざまな要素が次々に現れ、
   立ち上がる電子ノイズの交錯にうっとりする。これは素晴らしい。
   ボリュームを上げても、小さな音でも。どんな楽しみ方でも聴くポイントが表れる。
   6公演を5枚組みに振り分け、ライブの空気感も寸断した編集が功を奏した。
   じっくり、しみじみと聴き継ぎたい。ターンテーブル奏法の多様性にしみじみやられた。

   元GbVのリーダー、ロバート・ポラードの最新アルバム。すごいペースだな。
   バックは盟友トッド・トビアスがつとめた。プロデュースも、トッド・トビアス。
230・Robert Pollard:Normal Happiness:☆☆☆☆
   メロウでポップなロバートの持ち味を出す曲調が多い。アップテンポに
   走り過ぎず、実験的でも極端にならず。ある程度、汎用性を意識したかのような
   曲が集められた。トッド・トビアスのアレンジも、ちょっとざらつかせた
   以外は、素直に飾る。ギターを主役にソリッドさを強調した。
   勢いは抑えたが、鮮烈なロバートの魅力を封じ込めた傑作。

   トッド・トビアスとロバート・ポラードによるユニット、サイコ&ザ・バーズの
   新作EPが出た。これって、一回限りのユニットじゃなかったんだ。
   ロバート所有のレーベル、Fading Captain Seriesより。ロバートはマージと契約
   してるが、サブ・ユニットは自由に活動できるのかな。
229・Psyco and the birds:Check your zoo:☆☆☆
   一風変わったロックが詰まったEP。左右バランスもなんか極端だ。
   もしやロバートのデモへトビアスが好き勝手に味付けしたのか。
   曲はどれもとっちらかった、一筆書きメロディが炸裂。

   トッドとティム・トビアス兄弟によるユニットの作品。これは1stアルバムリリース前に
   録音したデモ音源集らしい。HPでの限定発売盤。
228・Clouds Forming Crowns:All the Pharmacies:☆★
   ファン向け。ラフなアレンジはともかく、覇気の無いへなちょこボーカルが辛い。
   アレンジや曲調に耳をそばだてる箇所がいくつも。だからなおさら、歌声の低いテンションで
   出来が足踏みしてしまう、もどかしさ。

   同ユニットの2006年リリース最新作(HPの限定発売盤)。
227・Clouds Forming Crowns:Rough giants and cardiac dippers:
☆☆★
   からっとしたロックンロールを主体に明るくまとめた。
   トビアスならではのとっちらかった混沌さも無論あるが、表面的にはポップ。
   抜けのいいミックスで、高音くっきりなサウンドは、無造作なパッケージ・デザインに
   そぐわぬ親しみ安さあり。短い曲を立て続けに16曲、40分足らず。
   GbVほどの突き抜け感は無いが、あんがい良い。

   ルナのディーンによるデュオ・ユニットの新作EPがリリース。
   内容は1stアルバムのリミックス集。ソニック・ブーム(元Specemen3)が担当。1曲だけ1stのプロデューサー、トニー・ヴィスコンティーの手による。
226・Britta Phillips/Dean Wareham:Sonic Souvenirs:☆★
   妙なエレクトロに流れることは無く、スマートな色合いにちょっと味付け程度にとどめた。
   それが聴きやすくもあり、中途半端でもあり。

   ハンガリー人バイオリニストの2004年作品。今のところ最新作のはず。
   バンド編成で録音された。
225・Lajko Felix:7:☆☆☆☆
   とんでもなく分厚いサウンドだ。実際はベースとビオラの三人編成、数曲でチェロも加わるが。
   多重録音もしていそう。ダンサブルな疾走を中心に、痛快なフレーズがあふれ出る。
   かきむしる弦はどこまでも鋭く、温かい。

   オカリーナ奏者の中塚純二が00年7月に行ったライブ(アケタ・オカリーナ祭り)音源と、
   スタジオ録音を組み合わせたアルバム。01年のリリース。
224・中塚純二:帰れソレントへ:☆★
   ジャズでなく丁寧に曲を演奏する。アドリブやインタープレイは志向でない。
   メンバーのやりとりの期待でなく、あくまでオカリナの柔らかな響きを
   求めて聴くアルバムだろう。各国の大衆音楽がレパートリーだろうか。
   スリルでなく、穏やかさが漂う。

2006/11/3   最近買ったCDをまとめて記載。このパターンが多くなってきたなー。

   ハンガリーのジャズ・バイオリニストのアルバム。自国の文化を踏まえたとおぼしき
   即興の音使いが興味深く、もっと彼のバイオリンを聴きたくて購入。
   97年から02年までのライブ音源やレア曲を集めたコンピレーションらしい。
223・Lajko Felix:ライコー・フェーリクス&ヒズ・バンド:☆☆☆★
   爽快でありつつ陰を見せる旋律が美しい。本盤はコンピゆえのとっちらかりが、
   奔放な多面性となった。観客ノイズも気にせず、無造作に良いテイクを
   ガシガシまとめた一枚。バイオリンのみならずツィターの鮮烈なサウンドも聴ける。
   軋みつつ鋭いフレーズが駆ける。即興性もたっぷり。
   ルーツから完全逸脱せずかといって縛られもしない。
   叙情性はフレーズに残し、疾走する生命力が心地よい。

   メルツバウ関連のコンピ盤を数枚入手。
   
   イギリスのレーベルから出たコンピ盤。他のミュージシャンはぜんぜん知らない・・・。
   メルツバウは15分にもわたる1曲を提供。2001年の発売かな?
222・V.A.:1-8 Split series:
   インダストリアル系のテクノがメインのレーベル、でいいのかな。
   いまひとつ煮えきらぬ、けだるげなムードが聴いててもどかしい。
   メルツバウのトラックもおとなしめなため、マニア向けの作品。

   たぶん、2003年の発売。カナダのレーベルより。
   フランシスコ・ロペスが企画したビデオ・アート・イベントのライブ音源みたい。
   6人のミュージシャンが参加し、メルツバウは1曲を提供。
   編集はロペスが行った。
221・V.A.:Blank Field:☆☆★
   酩酊するような電子系静寂音響を集めたコンピ。実際にはイベントのライブ音源を
   キュレーターのフランシスコ・ロペスが編集した。どの程度いじってるかは
   良くわからないが、自然で滑らかなトラックに仕上げた。
   さらに個々の曲も滑らかにつなぎ、一枚のディスクとして統一感持って聴ける。
   一番心地よいのは、エレキギターの爪弾きと電子音が交錯するOren Ambarchiの作品だった。
   深夜にじっくりと聞きたい一枚。確かにノイジーなひとときもあるが、
   全編に漂うのは電子音の緊張とストイックさ。

   94年に発売されたコンピ盤。ノイズ関係を集めてるようだ。ジャケに
   「オーバー・レベルやサブ・ベース音がスピーカーやステレオを壊す危険あり」
   と書かれている。その直後に「でかい音で流せ!!」とあるあたり、いかにもだが。
   同年にメルツバウはこのレーベルから"Venerology"をリリース。しかしこのコンピへ
   収録されたのは、その盤へ未収録の曲。未発表音源を提供したのかな。
220・V.A.:Release your mind:
   さまざまなハードコアをまとめた編集盤。デス・メタルや
   インダストリアル・ノイズにいまいち勢いないのが物足りず。
   アラブ風の(2)がシンプルながら楽しめた。全般としてはピントがぼけている。
   ところが、メルツバウは猛烈なブラスト・ビートとハーシュで襲い掛かる、痛快な一曲。
   Nananaxの低音がぐいぐい滲むパワーノイズも良い。
   これらのために買っても損はない。

   バロック以前のクラシックを追う興味は続いている。廉価盤を数枚。
   灰野敬二のライブ前にかかるような音楽は、いまだ見つからない。
   どういうジャンルを探せばいいんだろう・・・。

   デュファイはルネサンス期の作曲家で、教会/世俗の両方にまたがった創作をしたとある。
   短い曲をいっぱい、21曲を収録した。1980年の録音。
219・デュファイ:世俗音楽集:
   爽やかで荘厳なハーモニーが楽しめる。トラッドを聴いてる
   気分だが、それよりも格調高い面持ち。ベルカントは控えめ。
   個人的な好みでは、あまり積極的に聴けない。毒を求めるせいか。

   17世紀に宮廷音楽家のヤーコブ・ルードヴィッヒが、パトロンの誕生日に
   プレゼントしたという当時の楽曲らしい。良く意味がわからない・・・。
   さまざまな作曲家の器楽曲を11曲あつめた。
218・V.A.:パルティトゥールブッフ~17世紀ドイツの宮廷器楽集:☆☆
   滑らかなクラシック。バロックよりあと、って印象受けた。実際は違うが。
   あくまでメロディやアンサンブルは流麗に。
   細かく聴くと耳に残るが、BGMでさらっと聞き流してしまった。

   解説が英語でよくわからない・・・日本語帯を見る限り、スペイン系ユダヤ人の
   伝統音楽を集めた曲集、とある。クレツマーとはまた違うのかな。
   歌付きとインストがまざっている。ぱっと聴いた限りでは、マサダヘ通じる感じ。
217・V.A.:セファーディ・ロマンス~スペイン系ユダヤ人の伝統的音楽:☆☆
   丁寧にユダヤ音楽を演奏した盤。クレツマーなどの躍動感はさすがに無いが、
   確かなテクニックで穏やかにユダヤ音楽を聴くにはいいかも。
   アドリブ要素が無しにせよ、小さなアンサンブルで破綻なく
   心地よく奏でられる。バイオリンが味のある音色出すのはさすが。

   十字軍の頃に歌われた哀歌などをまとめたらしい。12~13世紀の音楽かな?
216・V.A.:十字軍の音楽:
   空白の多い素朴ながら荘厳さも兼ね備えた音楽。
   予想よりも上品で、少々物足りず。サロンで歌われていそう。
   心を鼓舞より、穏やかに寛がせる印象か。

2006年10月

2006/10/24   ここんところ買っていたCDをやっと更新。

   ついに復活!クレイマーが拠点をマイアミにうつし、"セカンド・シミー"と
   銘打ってレーベルを立ち上げなおした。本盤はその第一弾。
   ダニエル・ジョンストンへのトリビュート盤で、さまざまなミュージシャンが
   彼の曲をカバーした。無論、クレイマー名義で1曲提供。演奏では数曲に
   参加してる。クレジットを見ると、全曲への録音に立ち会ったわけではなさそう。
215・V.A.:I killed the monster:☆☆☆★
   クレイマーのマスタリングで、全体にスモーキーなサイケの、シミー・サウンドに
   まとまってる。あんまりへんてこな曲は入っておらず、アップテンポでも
   分離がややくっきり。とても聴きやすい、大人なシミーのアルバムに仕上がった。
   クレイマーの新曲がとにかく嬉しい。

   英のレーベルが出した2枚組サンプラー。メルツバウが参加しているので買った。
   レーベルの宣伝文を読むと、このコンピは全て新曲もしくは別テイクを収録らしい。
   2006年の発売。メルツバウはNORDVARGRとのコラボ音源みたい。
214・V.A.:Swarm:☆☆
   電子音楽は静かな傾向が多く、歌物もトラッド風味が。どこかスケールの大きい
   沈鬱さを感じる。派手な展開も少なく、流して聴いてたらジワっと空気が重たく揺れる。

   先日"Psychedelic sally"を別バンドのライブで聴き、オリジナルが聴きたく購入。
   5人編成の2セッションを一枚にまとめたようだ。ブルーノートへ1968年に吹き込まれた。
213・Horace Silver:Serenade to a soul sister:☆☆
   タイトル曲の勇ましさは素晴らしい。しかしどこか硬質でファンキーさに
   欠けるしあがり。クールな路線を狙ったか。弾まず揺らぐ音像に物足りなさも。
   むしろ最終曲のピアノ・トリオのロマンチックな世界こそ本盤の聴きもの。
   (1)のアグレッシブなノリと対極が同居する、過程的なアルバム。

2006/10/14   レコード屋でいろいろ買っちゃった。

   菊地成孔のユニット、ペペ・トルメント・アスカラールの1stがリリースされた。
   ライブを全て見逃しており、どんなサウンドか聴くの初めて。いきなり2枚組の
   ボリュームだ。今年の菊地はすさまじいリリース量だな。  
212・菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール:野生の思考:

   メルツバウの新譜は英のレーベルより。CDは1枚ものだが、パッケージが特殊。
   石膏石製という重たいケースに入ってる。アンモナイトの化石がパッケージ表面に
   デザインされた。500枚限定。
211・Merzbow:Metamophism:

   セールをやってたので、ひさびさにごっそりブートを買った。

   Red Zapp盤。1981年9月29日のカリフォルニアでのライブをCD3枚組に収めた。
   昼公演と夜公演を収録してる。両方とも曲目がガラッと違うのが、ザッパらしくすさまじい。
   スティーヴ・ヴァイが参加して、リズム隊はスコットとチャドという、ぼくにとっては
   ベストのメンバー。このツアーではアイクがいないのが惜しい。
210・Frank Zappa:Heae comes Santa Cruz (boot):

   Red Zapp盤。1981年11月17日のNY公演を収録。フェイド・インやアウトがある
   不完全音源のようだ。アル・ディミオラが参加したのがこの音源の貴重なところ。
   たぶんヴァイも含めた3人でギター・バトルが聴けるだろう。
209・Frank Zappa:Putting on the Ritz (boot):☆☆☆
   高域が強調された音質。演奏はもともと破綻無いので、細かな部分に耳を凝らす。
   ディスク1は当時のライブで定番曲をずらり並べた。ある曲ではレイが
   声を出し切れぬところあって残念。"Drowing witch"あたりがクライマックスかな。
   一気に雪崩れる場面がスリリングだ。たっぷりザッパのギターが聴ける。
   ディスク2がゲストありの大盛り上がり。数箇所でテープ編集あるけれど
   丁寧なツナギで気にならない。アンコールの盛り上がりが凄まじいな、しかし。
   アル・ディミオラのゲスト演奏だけでなく、"Whippin Post"のレゲエ・アレンジや
   "Watermelon on Easter Hay"の盛り上がりで締めるなど、聴き所がいっぱい。

   Red Zapp盤。1988年4月25日のデンマーク公演より。究極のメンバーを集めた
   ザッパの至高のライブが楽しめるといいな。
208・Frank Zappa:Comenhagen DAT's (boot):☆☆☆
   オーディエンスながらもなかなかの録音。丸ごとライブを収録したことで、
   曲間なしにうぞぞぞと演奏を連ねる88年バンドのすさまじさが良く伝わる。
   隙がまったくなく、完璧な演奏を提示する一枚。キーワードはエアホース。
   88年の新曲や過去の代表曲が怒涛で続くセットリストもうれしい。

   Gold Standard(?)盤。1969年のマザーズのライブを1枚へ収めた。
   不完全音源かなあ。"WPLJ"くらいしか曲目へ見覚えない(マザーズは詳しくないが)が
   ずらりと並ぶ。いったいどんなライブだろう。
207・Frank Zappa and the mothers of invention:Pachugo Hop (boot):☆☆☆
   実際は69年2月23日の公演音源らしい。クレジットが少々わかりづらい。
   ラジオ録音か、くっきり細部まで聴こえる。まだメドレーでぐいぐい
   押さずに、一曲づつ丁寧に演奏。マザーズらしい荒っぽさも残す。
   ストレートなビッグ・バンドジャズな要素が、妙に新鮮だった。
   観客参加と思しき即興前衛要素もあり。無造作ながら活き活きしたライブ。
   前衛をエンターテイメントへも孤高へも突き抜けず、試行錯誤な感あり。

   シンボル時代のプリンスのライブを集めた2枚組。Quick Line盤。
   ワーナーと揉めて、片っ端からCD化されてない音源をばら撒いてた頃にあたる。
   1997年のツアーから4公演を抜粋した構成のようだ。
206・Prince:4 the gigs in you eyes (boot):☆☆☆
   アフターショー集。音質はかなりクリアなオーディエンス。臨場感ばっちりだ。
   寛いだ雰囲気に満ちており、プリンスが全てのボーカルをとらず。
   ギターやキーボードにそれっぽい雰囲気な箇所もあるけれど、基本は参加してなさそう。
   選曲は思いつくままカバーを織り込む感じ。ゆったりしたファンクが充満する。
   が、演奏はめっちゃタイト。滑らかにステージが進むのがすごい。
   稀少性として楽しむ盤か。オハイオ・プレイヤーズのカバーらしい、"Skin tight"がかっこいい。

   キザイア・ジョーンズのブートなんてあるんだ。レーベル名は読めず。
   1995年7月16日のライブとある。CD1枚で12曲を収録した。
205・Keziah Jones:Lesson number one (boot):☆☆
   2nd"AFRICAN SPACE CRAFT"発表時のライブを受け、前半~中盤まで2ndからずらり並べた。
   (1)は収録アルバム不明。(10)以降は1stの代表曲を。
   崩しやアドリブなどライブらしい勢いが詰まった演奏。
   音はこもり気味だが、3リズムのシンプルな編成なため楽器の聞きわけは可能。
   ファンなら聴いて損は無い音源か。

   BIG PRO DISCS盤で、2枚組。68年のライブを複数の音源から不完全ながら集め、
   さらに66~67年のヨーロッパのテレビ出演から落としたとクレジットがある。
   初期の曲が並び、ファンキー路線は控えめなようだ。"Cold Sweat"とかやってるが。
204・James Brown:The godfather and the dreamer (boot):☆☆
   複数の音源を足した前半のライブは溌剌としており楽しい。音質はドンシャリで
   ざらついた感じ。ノイズなどは無い。こもってはいるけれど。
   テープのせいか、よれたところもちょっとあり。Disc2の11-17は声援が凄まじい。
   擬似声援っぽいが。音質はそこそこ。やたら低音を強調処理してる。演奏はこじんまりだが悪く無し。

   BIG PRO DISCS盤で1枚物。1974年にアフリカはザイールでのライブを
   収録したとクレジットある。ファンキー路線突っ走りな曲目が並ぶ。
203・James Brown:The godfather goes to Africa (boot):☆☆
   ノイズはないがこもった音。音質は5。ある箇所では音が途切れる場面も。
   サウンドボードというより、放送用音源ではないか。猛烈な大歓声は演奏が始まると
   次第にフェイド・アウトして演奏へ集中する。
   よりによって大盛り上がりな"It's a man's man's man's world"の最中に
   音が途切れて残念。演奏はまずまず。油の乗ったスピーディさが楽しめる。
   ライブ完全収録ではないと思うが、美味く編集してひとつながりさを味わえる。

2006/10/8   レコード屋やライブハウスで入手。

   「中央線ジャズや渋さ知らズ好きにお勧め」のポップに惹かれて買った。CD-R。
   フィンランドのカルテット編成らしい。サックスとトランペット、ドラムとベースの
   カルテット編成。作曲は全てサックスのマーティン・クーチェン(でいいの?)の
   オリジナル曲。2004年に行われたライブ音源のようだ。
202・Exploding Customer:Live at Tampere Jazz Happening:☆☆☆
   フリーなハードバップな趣き。あまりにまじめさがストレートに出るが
   思わず身を乗り出す瞬間もいくつか。(9)のように、うねったほうが、ぼくは好き。
   たしかに渋さチビズが好きな人に薦められそう。あれほど強靭な凄みは無いけれど。

   ライブを聴いて気に入って買った。2ndにあたるらしい、3曲入りデモCD。
   チャラの影響を感じる、R&Bフレイバー溢れるポップスを聴かせる。
   バンドとしてはボーカル&keyとベースのデュオらしい。ここではトラでドラムも参加。
201・獏:行:☆☆☆☆★
   インディーズ時代の傑作。バンドも解散だし見つけたら、即買いを。
   スピーディーなインストの(1)と性急なアップの(3)に挟まった、(2)の切なさがめちゃくちゃ素晴らしい。
   エリーニョの瑞々しい歌声を封じ込めた、CD-R。
   この切迫感が何よりの魅力。
   
   若手バンド36グループを集めたインディ・レーベルのコンピ盤。
   3枚組のボリュームがすさまじい。新譜のプレスCD。タイトルどおり、第2弾にあたる。
   バンドのプロフィールが載ってるが、今はどのバンドもHPを持ってるね。
200・V.A.:Wild Gun Crazy compilation vol.2:☆☆
   甘酸っぱいギター・ポップが詰まったコンピ。全体的にこもったマスタリングで仕上げた。
   いろんなバンドがいるな、としみじみ。きれいなメロディを操るけれど、
   強烈な個性を出すには至らぬ場合が多くもどかしい。
   特に耳へ残ったのは、Disc1-1,6,10、Disc2-4、など。

   44年から47年までの音源をラッカー原盤から起こした、とある。
   サイドメンはマイルスにバド、ローチとジョン・ルイス(p)たち。
   タイニー・グライムズのギターも良い。
   別テイクが曲順に整然と並ぶ、勉強じみたお行儀の良い編集はなんとかならんか。   
   1991年に日本コロムビアがリリースした盤を購入。
199・Charlie Parker:The immortal of Charlie Parker:☆☆☆
   断片も含め曲順に並べたアルバム。アドリブでの
   瑞々しいメロディ作りは楽しいが、聴いてて学問的な
   アプローチを強いられてしまう。記録として本盤のような
   編集は必要だろう。しかしその一方でクラブ風に
   美味しいところを抽出し、アルバムとして楽しめる展開も
   求めたくなる弱腰の興味も確かに生まれてしまう。

   大友良英がBusRatchと競演したターンテーブルの盤。2006年に発売された。
198・BusRatch & Otomo Yoshihide:Time MAgic City:☆☆☆★
   即興的な録音だそう。しかし構成を意識した編集で、スリリングな
   盤となった。とにかくワイドレンジなノイズの響きが格別。にじむ低音、軋む高音。
   こういう盤こそ、スピーカー・チェックにいいかも。
   ターンテーブルのみとは思えぬ、多彩な音色を楽しむ音楽。
   6分前後とコンパクトに曲をまとめたのも功を奏した。
   回転体ゆえの周期性がグルーヴとなり、ビートが無くても前へ進む。
   ターンテーブル演奏の多様性を思い知らされた一枚。

2006/10/1  レコ屋をぶらぶら。新譜コーナーを横目に、何枚かを買う。

   ONJQの新譜。今回はマッツ・グスタフソンを加えた5人編成。
   リスボンでのライブを収録した。バランスよい選曲だ。
197・Otomo Yoshihide's New Jazz Quintet:ONJQ live in Lisbon:☆☆☆★
   2ホーン編成ながら、ぎゅっとシンプルなアンサンブルに聴こえた。
   大友のフィードバックが高く吠え、空気を振動させる。
   音響ジャズを志向した傑作。低音が薄めのミックスと感じた。ベースを持っと
   ぐいぐいと聴きたい。"Flutter"や"Serene"でのノイジーな軋み音の連続が生む
   緊迫感と空気の震えに耳が引き締まり、興味が進む。

   10枚組廉価盤シリーズで、アフリカ音楽のコンピを発見。つい、買ってしまう。
   ケニヤ、ガーナ、ザイール、ウガンダの音楽を収録。といっても、モダンなルンバ・ポップを
   収録してるようだ。相変わらずクレジットが皆無で、詳細はさっぱり不明です。
196・V.A.:Africa:
   レゲエっぽいものも。中途半端な音楽が多く、退屈。せめて解説が
   きっちりあれば楽しめたかもしれない。ボリューム過多での謎盤。

   中世音楽を聴きたく、クラシックの棚を物色。これは作曲家バイパーの室内楽を
   集めた盤。弦カルにトランペットの入った編成みたい。ほとんどの曲が短く(組曲含む)
   全部で30曲入り。05年のEU盤でレーベルはOWHMS。
195・Clemencic Consort:H.I.F.Biber:Balletti & Sonatas for Trumpets and Strings:☆☆
   ファンファーレがずっと続くような、高音が印象に残る曲。
   各楽器のからみがあっても、トップのトランペットがまず前面に。
   荘厳な雰囲気が漂う。似通ったムードの曲がえんえん続くため、通して聴くにはちとつらい。

2006年9月

2006/9/27   ネット注文アルバムの到着。

   菊地成孔のサントラ盤。前半がライブダブ、後半が打ち込みと
   ソロアルバムに近いつくりになっている。ライナーの対談を読むと
   即興的に作った曲も多そうだが。
   しかし対談の頭文字は漢字にしてほしかった。カタカナだとイトイさんの
   独白を読んでいるかのようだ。
194・菊地成孔:O.S.T.『パビリオン山椒魚』:☆☆☆
   OSTではあるものの、きっちり菊地のソロ作に仕上げた。ライブ・ダブで始まり、
   シンプルなミニマル・テクノをはさんでジャズへ向かう。
   ダンディでブルーでエキゾティックな世界へ。
   とりとめのない、漂うような構成。ある意味、菊地のさまざまな側面を
   一枚で味わえる好盤かもしれない。
   (16)のセクシーなサックスがなんとも素晴らしい。
   もうすこし一曲が長いといいのにな。

2006/9/24   PC壊れてから今日まで、買ったCDをまとめておきます。

   喜多直毅がライブでここ数年、積み重ねてきたオリジナル曲をまとめたCD。
   鬼怒無月、黒田京子、佐藤芳明、さがゆきなどサイド・メンがすさまじく豪華。
   "板橋区"が、"ナオキチカルシラマ"が、"夢"が、"機械の体"が、やっとCDで聴ける。
193・喜多直毅:Viohazard:☆☆☆☆
   タンゴを足がかりにインストの幅を広げ、即興要素を情熱的に織り込んだ
   痛快な無国籍室内楽の傑作。ジャズとは違うアプローチで自らの音楽性を解放した。
   むせび泣くようなバイオリンの響きが切なく炸裂し、東京インプロ界の
   凄腕たちががっしりと脇を固める。跳ね返る意志の強さを熱いメロディに乗せ、
   強靭なアンサンブルが聴き応えあり。隙を作らず、濃密に押し込めた。
   録音上のテクニックは前面に出さず、楽器演奏のぶつかり合いをまっすぐに提示した。

   林正樹(p)が組むトリオの最新盤。3rdにあたるのかな。
192・宴:Tappy:☆☆☆
   ジャンルでいえばフュージョン・・・になるんだろうか。柔らかで爽快、かつ変拍子も含んだメロディを、
   活 き活きとした生演奏で奏でる。インタープレイよりは書き譜のアンサンブル重視と感じた。
   ギターっぽい高音域も使うベースが アクセントをつけ、ピアノがするすると鍵盤を叩く。ドラムのタイトさも気持ちいい。
   ベストは"花吹雪"。痛快なインタープレイが素晴らしい。ライブを聴きたいバ ンドだ。

   梅津和時が97年にシャクシャインで米ニッティング・ファクトリーより
   リリースした音源を見つけた。名曲"ベルファスト"を収録してる。
191・Kazutoki Umezu/Shakushain:Desert in a hand:☆☆☆
   スタジオ録音のせいか、すっきりまとまった。ごしゃっとアンサンブルが
   せめぎあうも、個々の粒立ちはくっきり。
   アドリブを聞かせるよりは、全体の集合体で攻める感じ。
   録音スタッフはGOK関連。マスタリングまで
   日本人製作ながら、どこか音が硬い。海外プレスでこんなに変わるの?
   バラードも甘く流れず、緊張感漂う。シャクシャインはもっと混沌とした
   イメージだっただけに、新鮮な盤だった。

   どくとる梅津バンドが清志郎と残したDangerのミニ・アルバムが2in1で
   再発された。これをずっと探してたんだ。うれしいな。
190・Danger:Danger:☆☆★
   清志郎が予想以上に前面へ出ていた。なおかつホーンのダビングが多く
   アンサンブルの勢いが減じてしまった気がする。DUBのぶつかり合う
   音の凄みと、清志郎のシャウトを期待してたんだが・・・。
   なんだかニュー・ウェーブぽさまで漂う一枚だった。当時の趣味性に走った盤か。

   日本のジャズ/即興系の尖ったミュージシャンをコンパイルした"Boycott Rhythm Machine"の第二弾。
   今回は油の乗ったミュージシャンと、若手ミュージシャンのコラボを集めた。
   ほぼ、初対面どうしだという。ボーナスで録音風景やインタビューを収録したDVDつき。
189・V.A.:Boycott Rhythm Machine II:

   詳しい録音クレジットが無い・・・91年にアメリカへ世界各国のインプロヴァイザーが
   集まり、一週間のライブ(?)演奏音源を集めた盤らしい。
   これは金曜と土曜の音源。9人の即興演奏家が入れ替わり立ち代り
   演奏している。ぼくが名前知ってるのは、ジョン・ゾーン(sax)、バケット・ヘッド(g)、
   デレク・ベイリー(g)あたり。
   あとは名前のみ列記します。Yves Robert(tb),Paul Rogers(b),Vanessa Mackness(voice),
   Paul Lovens(per),Pat Thomas(key),Alexander Balanescu(vln)
188・Company91:vol.3:☆☆
   勢い一発の即興が続く。デュオが3曲あるが、それ以外は3~5人編成。
   人数が増えるとアンサンブルに多様性が出て面白い。
   ぶかぶかとサックスと吹き鳴らすジョン・ゾーンは若い頃から
   かわんないんだなー、と苦笑してしまった。
   ラストの12分にわたる、デレク・ベイリーとバケットヘッドの
   デュオがものすごく聴きモノ。

   ダラー・ブランドがイブラヒム名義で95年にNYで吹き込んだトリオ編成盤。
   アフリカ感覚どっぷりなジャズだといいな。
187・Abdulla Ibrahim trio:Yarona:☆☆★
   上品に始まるあたり、イブラヒムも丸くなったということか。
   1曲目の終盤頃から、スケール大きい和音使いが聴こえる。全般的におとなしげな
   印象あり、濃密なグルーヴを求めるには物足りない。
   客層を踏まえたか、おっとりと音を紡ぐピアノ・トリオ盤。
   わずかにアフリカっぽいぬめりは残るが。

   メルツバウがらみで買った。2000年のリリースで、たぶん実験音楽を集めたコンピ。
   海外勢が多い。メルツバウは1曲を提供した。ほかに大友良英の名前もあり。
186・V.A.:Sonar 2000:
   拡販のサンプラー盤だろうか。退屈なハウスやミニマル・テクノが続き、アルバムとして
   さほど面白み無し。トラックによっては耳を惹くが。
   淡々としたエレクトロ・ビートの連続に朦朧としてくる。
   肝心のメルツバウは、おそらく"Merzbox sampler"からの転載。まだ聞き比べは
   してないが、もし正しければ特に買う必要の無い4枚組みだ、これは。
   なお大友良英も、おそらくフィラメントのExtreme盤から転載。

   予備知識なし。ハンガリーのトップ・サックスマンって帯のあおりに惹かれた。
   どんなジャズを演奏するんだろ。バイオリンを含む4人編成で94年リリース。
   アオラが解説付きで輸入した日本盤を購入した。
185・ミハーイ・ドレッシュ:ザ・サウズ・オブ・ソウル:☆☆☆☆
   即興を中心にすえるが、ジャズのグルーヴを優先はしない。
   アンサンブルはおそらく彼らのルーツである香りを踏まえ、
   独特のスピード感で音符を操る。スリリングなやり取りが
   素晴らしく面白い。ミハーイ・ドレッシュの軋んだブロウも
   聴き応えあるが、ここでのベストはとにかくフェリークス・ライコーのバイオリン。
   フリーキーさとメロディアスを共存させ、バランスのいい極上の即興を聴かせる。
   彼のバイオリンをもっと聴きたい。
    
   97年に出た灰野・トシ・三上寛のバサラによる3rd。
184・Vajra:七識:☆☆
   日本語歌詞でいくつかの曲が繋がれてる感じだが、実際には全て
   メドレー形式。起伏ある展開だが即興要素が強い。
   リズムも繰り返しも解体し、ひたすら混沌が広がった。
   聴き続けるには集中力が必要。濃密な40分弱。

   比較的最新の盤だと思う。ジャケットから見て、ドラムの即興演奏かな?
183・灰野敬二:この気配 封じられてる 創まりに:
   間を生かしたドラムの即興。ライブなら凄みで聴かすだろうが、CDでは正直集中力が続かない・・・。
   激しくなる部分があってすらも。ファン向けの作品か。

   灰野敬二がライブの前に流している、中世音楽に改めて興味持った。
   しかし、何を聴いていいのかわからない・・・しかたないのでクラシック棚の
   "古楽"とかかれたところから、器楽風のを何枚か買ってきた。
   ちょろっとどれも聴いてみたが、全てイメージする音楽と違うみたいだ。くう。

   ベルギーの盤らしい。91年の録音かな。レーベルはRene Gailly。
   フランドル地方の民族音楽を集めた盤のようだ。クラシカルな音楽と、トラッドを
   連想する室内楽。あくまでサウンドは上品だ。
182・The Brabant Traditional music band:Flemish Folk Music Vol.2:
   ベルギー・オランダ・フランスにまたがるフランドル地方の民族音楽らしい。
   舞踊音楽集で、ポルカ、マズルカ、ショッティッシュなど、曲形式がクレジットあり。
   Kaloem,Krebbel,など検索しても、詳細が良くわからぬ曲形式もいろいろあり。
   優雅さを踏まえたが、基本は民衆向けかな?
   影はあえて消し、顔をほころばせて踊れる曲を集めた。
   演奏はクラシック奏者のためノリは控えめ。おっとりと仕上げてる。
   バグパイプやパーカッションを持ち替えて、アンサンブルは多彩で飽きない。
   歌無しの室内楽。毒は特にない。
   解説は奏者の紹介のみ。なぜ曲紹介を載せない・・・。

   96年にリリース。Arte Novaレーベルから。どこの国だろう。それすら不明・・・
   ザルツブルグなる14世紀の作曲家の作品集なんだろうか。クラシック好きな人は
   いったいどうやって情報を集めてるのかね。ネット検索してもうまく出てこない。
181・Monch von Salzburg:Lieder:☆☆☆
   ザルツブルグの大司祭ピルグリム2世の時代の曲、と解釈すればいいのかな。
   器楽曲を挟み、基本は歌物。物語性ある歌も。宗教歌かもしれない。解説に
   色々書いてあるが未読・・・。トラッド的なおっとりと厳かなサウンドを
   シンプルな編成で紡ぐ。ベルカント歌唱的な大仰さは無く、ある意味
   民族性をドラマティックに聴けた。
   ほとんどの曲が本盤で世界初録音とある。
 
   イタリア語でさっぱり・・・四重奏による古そうな音楽を演奏してる。
   この説明、紹介にも何もなってませんな。96年にHarmonia mundiレーベル(?)からの発売。
180・Gerard Zuchetto:Les Troubadours D'Italie:☆☆
   12世紀頃、イタリアあたりの吟遊詩人の曲を歌ったアルバムか。朗々と
   切なげな節回しで唸る声は、ほんのり塩っ辛い味。一曲をじっくり聴くよりも、
   流れでたのしみたい。そもそも歌詞をわからず聴いてるから、根本のところで
   きちんと鑑賞できてない気も。伴奏はギターっぽい音色を中心に、ときおり
   厚みある弦楽器のアンサンブルが加わる。クラシックな範疇の盤だが、堅苦しさは
   あまり無い。生々しさと仰々しさがうまくまとまり、重々しく響く。
   ハーモニーは無く、男性独唱。ベルカントではない。ときおり絞られる喉が渋い。

   90年の発売の聖母マリア頌歌集。アルフォンソ10世がまとめた
   中世時代のマリア信仰に対する民衆宗教歌らしい。民族音楽的なアプローチのもよう。
179・Ensemble Micrologus Rene' Zosso:Cantigas de Santa Maria:☆★
   荘厳に漂う宗教性が基本ながら、揺らぐ音色の響きが地に足の着いた民衆性も感じた。
   きっちりコントロールされたクラシカルな録音。音楽と歌が交互に出る。
   シンプルな伴奏で朗々と歌われ、ちょっととっつきにくい。
   繰り返し聴いて、トラッドにも通じる清清しさを理解し始めた。
   アルバムとしてのトータル性を意識した作り。学術的に淡々と曲が並ばない。

   クラシックの弦楽4重奏が聴きたくて、買ってきました。しかしクラシックの
   輸入盤はどうしてこんなに探しづらいんだろう。せめて英語ならいいのに~。
   これは92年発売の米TELARC。マサチューセッツ州で91年に録音された。
   コンサート音源かな?クリーブランド・カルテットにより、
   モーツァルトの四重奏(の?)14番(K.387)と15番(k.421)を収録。
178・Morzart:Quartet no.14,Quartet no.15:☆☆☆
   ハイドンに捧げられた四重奏曲の二つだそう。演奏がやたらタイトで、
   するすると楽想が流れ、盛り上がる。マスタリングが弱めなため、
   ぐっと音量を上げて聴くが良し。クリーヴランド・カルテット最終期メンバーによる演奏。
   迷いがなく、すかっとモーツァルトを演奏してる。変に甘さに流れず爽やか。

   ブラームスの4重奏、1番と3番を収録。録音年度が書いてない・・・86年の盤らしい。
   アメリカ版のようだが、演奏者はTokyo Strings Quartet。第一バイオリン以外は日本人です。
   Vox Uniqueなる、アメリカのレーベルより。
177・Brahms:String Quartets:☆☆
   かっちりしつつ、情感をうっすらかぶせた演奏。若干影ありなのは、
   もともとブラームスがそういう曲調なのかな。No.1(Op.51)のほうが好みな気がする。
   どっちみち曲に対しては、もっと聞き込まないと偉そうに言えないな。
   東京カルテットは30年以上もの歴史あるグループらしい。今はだいぶメンバーが
   変わっている。ネットで調べたが、本盤はすでに廃盤らしく情報を拾えなかった。

06/9/9   メルツバウの新譜を購入。

   2枚組スタジオ盤。オフィシャルHPによると本作のテーマは、
   "「FUR IS DEAD!」毛皮反対を訴えるプロテスト・ノイズ音楽。"だそう。
   動物の写真をふんだんに使った、キュートなジャケットだ。
176・Merzbow:F.I.D:☆☆☆☆
   濃密なノイズの奔出を詰め込んだ2枚組。力技一辺倒でなく、抜いた
   ハーシュというアイディアもほのめかした一枚。
   メルツバウの多彩さを実感できる。一曲が15分強の中ぐらいな長さのため
   比較的とっつきやすいのも嬉しい。

2006/9/4   実際には一昨日ライブの物販とか、昨日買ったCDなんですが。

   沖至が1998年にリリースしたwith ストリングスもの。
   渋谷毅(p)、中牟礼貞則(g)、翠川敬基(vc)、望月秀明(b)、芳垣安洋(ds)ら、
   凄腕メンバーが脇を固める。96年11月30日に三重県で行われたライブ音源より。
175・沖至6重奏団:コンサート・ウィズ・ストリングス:☆☆
   基本はwith ストリングスの都会的で穏やかなジャズ。スリルは控えめで
   おっとりと演奏される。フリーな要素も無い。音色や音使い以上の個性は見えづらい
   スタイルをとった。破綻は無いが、どこかぎこちないリズムに聴こえた。
   芳垣のドラミングにしては、どこかもっさり。
   いきおい沖のオリジナル曲へ耳が行ってしまう。骨太の日本情緒を漂わす(6)、
   小粋な雰囲気が楽しい(8)が気に入った。

   メルツバウの新譜は、Jamie Saftによる素材のミックス集。だから、このタイトル。
   ただし素材は新録音のようだ。
174・Merzbow/Jamie Saft:Merzdub:☆☆☆
   メルツバウがあくまで素材化してるため、強烈なノイズを期待は出来ない。
   しかしノイズを上手くSEでまとめ、バラエティ豊かな音世界を作ったサフトの
   センスは素直に評価できる。メルツバウをとことんミックスしたもの、
   自らの音楽へ溶け込ませたもの、とさまざまなアプローチで
   メルツバウをもてあそんだ。
   メルツバウやサフトのキャリアを意識せず、ダブ風のノイズ加工作品と聴けば楽しめる一枚。

   70年代のガーナで録音された、マイナーなファンクやアフロ・ポップの
   コンピ集らしい。詳しくは不明。ハイライフかな?
173・V.A.:Ghana Soundz vol.2:☆☆☆☆
   しぶといファンクが詰まった好コンピ。JBを筆頭にアメリカのファンクから
   影響を受けつつ、リズムの強靭な揺らぎはアフリカ独自。70年代とは思えぬ
   ぶっとい録音も嬉しい。きちんと読めていないが、英文ライナーも詳細そう。
   安っぽいシンセとハイライフに通じるコーラス、そしてうねるグルーヴ。
   聴き応えたっぷりだ。フル・アルバムの音源あるか不明だが、これを
   足がかりに聴き進めたい。テクニックは素朴だが、アンサンブルの一体感がすさまじい。
   当時の未発表曲も収録あり。

   リズム中心にトランス系へ追求した音楽のようだ。プロデュースは
   西新宿のレコード屋Los Apson?のスタッフ(店主でいいのかな?)
   2004年のリリース。
172・Flying Rhythms:フライング・リズムス:☆☆
   アフリカン・ドラムとドラム・セットの融合。アフリカン・グルーヴの熱気をあえて沈めた。
   民族音楽ではなく、トランスへのアプローチで迫る。個々の音は面白いが、CDよりも
   フロアで、できればライブで聴きたい音楽だ。
   ライブを味わった後の追体験として有効活用できそう。
   CD単体で聴くと、ミックス・テープの素材的な印象が先にたった。
   トランス路線をダブで盛り上げ、淡々とビートが続く。
   対話がじっくり続く(4)みたいな曲がCDだと特にいい。

2006/9/2   久しぶりにレコ屋をふらふらと。

   こんな盤があるとは知らなかった。帯によると
   古澤良治郎、佐藤眞司、大沢順三の3ドラムと山岸潤史(g)や松川純一郎(g/vo)を 
   全面に立てたユニットらしい。津上研太(sax)や北陽一郎(tp)、
   青木タイセイ(tb,cho,Horn arrange)らもメンバーでクレジットされてる。
   1998年にPヴァインからリリースされた。
171・アッシュ:フィーチャリング 松川純一郎:

   アレクサンドロ・フラノフのソロ・ピアノ作品。2005年リリース。
   彼のことは良く知らない。アルゼンチン音響派らしい。
   勝井祐二や山本精一がカブサッキラとレコーディングした盤にも
   フラノフは参加してるようだ。教会で録音したとか。
170・Alejandro Franov:en piano-melodia:☆☆
   ロマンティックなピアノがミニマルな要素をまとって、滑らかに流れる。
   ファンキーさは皆無だが、格段の美しさにやられた。
   全てが即興かな?アップテンポに迫る曲も凄みあるが、
   むしろスローのほうに魅力あり。甘いなら、とことん甘く。
   彼は冷静な視線を保ったまま、ピアノを弾く。

   ウェイン・ホーヴィッツのピアノが聴きたくて、なんとなく買う。
   ブッチ・モリス(cor)とウィリアム・パーカー(b)のトリオ。
   作曲はホーヴィッツ名義で2つの長尺曲。両方ともフリーかな?
   1983年にリリースされた。
169・Wayne Horvitz-Butch Morris-William Parker:Some order,long understtood:
   カタルシスの無いフリージャズ。ライブで見たら良さは
   分かると思うが、CDでは集中力が続かない。
   シンセっぽい音も少しする。どうやって音を出してるんだろう。
   ホロヴィッツは内部奏法も取り混ぜて、抽象的な音使い
   誰もがメロディを志向せず、淡々と音塊を作っては溶かしてく。

   ジャケ買い。裏ジャケにジルジャンのシンバルを奉るあたり、ドラマー主体の
   クールなジャズかと期待して買う。1996年のライブ録音らしい。
   リーダーはドラマー。他にはp,b,sax,tpの五人編成。
168・Pierre Courbois Quintet:Live in Germany:☆☆
   ストレートなバップに上品な雰囲気を加味したジャズ。
   耳ざわりは良い。それ以上の個性を見出すにはなかなか難しいが。
   酒を飲みながら楽しむジャズ、だろうか。丁寧なアドリブとは思う。

2006年8月

2006/8/20    セコハンで何枚か掘り出し物を見つけた。

   前田有希(vo)が12人の日本ジャズ・ピアニストを招いて1998年に
   吹き込んだ、ガーシュウィン作品集の第二弾。
   黒田京子、山下洋輔、佐藤允彦、南博、渋谷毅、大口純一郎ら、
   すさまじく豪華なメンツが一曲づつをアレンジした。
167・前田有希:Jazz Age II:☆☆
   ベルカント風に朗々と張り上げる唱法は好みとは違うが、
   バラエティに富んだバッキングに惹かれて幾度も聴いた。基本は伴奏ながら
   それぞれの個性が滲み出る。流麗で硬質なマスタリングの後ろで
   ピアノが時に熱く、時に捻って響く。派手さはないが、ユニークな発想の一枚。

   ユセフ・ラティーフ(sax)のリーダー作を2枚入手。
   本盤は1977年の録音で、CTI移籍初リーダー作だそう。
   フュージョン寄りのサウンドで意外だった。こういう音楽やってたのか。
   ドラムの一人はスティーヴ・ガッドだもの。
166・Yusef Lateef:Autophysiopsychic:☆☆☆
   フュージョン・ファンク。上滑りする洗練されたアレンジと、時代なシンセな
   音にまずめげる。中途半端なボーカルがP-Funkの脱力オマージュ。
   リズムもファンク狙いはわかるけど、どうにも上品すぎ。ラティーフのアドリブは、
   冗長気味ながらそこそこ聴ける。

   1993年に録音された、近年の作品。6人編成を基本に、弦が入ってるのかな?
   組曲形式で、大仰なジャズ・シンフォニーをやっていそう。
165・Yusef Lateef:The African American Epic Suit:
   中途半端なストリングスとの合体がなんとも退屈な一枚。
   シンフォニーへのコンプレックスのような・・・
   聴いていてつらさが先にたつ。3楽章はタブラやフルートによる静謐さが面白かったが。
   意欲は買うが、ジャズをがっつりやってくれたほうが好み。

   高木幹晴(ds)と坂本昌己(p)のユニットらしい。
   2002年3月、吉祥寺ゴールデン・バットでのライブを収録。
   ゲストに加藤祟之(g)と是安則克(b)が参加した。
164・Vertige:溺愛:☆☆☆☆
   流麗でロマンティックなジャズ。それでいてフリー要素も兼ね備える。
   軽やかに不可思議できらきら輝くひと時を味わえる、飛び切りのサウンドだ。
   ギターとドラムが自由に動き、ベースとピアノがそっと支えた。
   洗練さと自由度が混在する、非常に聴きこみがいあるジャズ。

   ジャケに惹かれて買った。1958年ごろに仏Vegaより発売のようだ。
   ギタリストのヘンリ・クロラによるジャンゴへのオマージュ盤か。
   演奏曲は全てジャンゴのオリジナル。
   アンリ・クロラ(g)のリーダー作で、バイオリンにグラッペリが参加した。
   8人編成のアンサンブルのようだ。
   カップリングに1956年にヘンリ・クロラがリリースしたEPを収録。
   曲はスタンダードのようだが、ジャンゴに何か関連するのかな。
   単にレア盤のため、カップリングだろうか。
163・Henri Crolla & co Norte ami Django:Jazz in Paris:☆☆☆
   ジャンゴ盤のほうは、おっとりしたアンサンブルで、身体を
   左右に揺らす穏やかで上品なジャズが楽しめる。
   録音も、少々籠り気味だがまずまず。
   寛いで聴ける一枚。
   カップリングは若干スピードを上げ、スイングを基礎にしつつも
   爽やかなテンションを魅せる。あえて選ぶなら、ジャンゴ盤のほうが好み。

2006/8/19   ソウルの廉価版"~ Connoisseurs"シリーズを、何枚か。
           一枚あたり千円しない。その代償か、どれにもまともなクレジットや解説なし。
            ちぇ。すべて英のコンピ盤。

    2000年発売。モータウン音源の掘り出し物を集めたコンピのようだ。
    有名曲のカバーもしくは、ヒット曲のオリジナル、がテーマか。
    60年代中ごろから70年頃までの音源が中心。
162・V.A.:Tamla Motaun - Big hits & hard to find classics:☆☆★
   有名曲のモータウン内カバーがなかなか赴き変って面白かった。フィリーっぽいアプローチも
   感じられて興味深い。モータウンっぽさが希薄なぶん、逆に楽しんで聴けた。
   数曲収録されたオリジナルズの曲が好み。

    モータウンのマイナー曲を集めたConnoisseursシリーズの第一弾。
    並んでるミュージシャンは有名どころも多い。60年代中ごろから
    70年くらいの音源が多い。2001年の発売。
161・V.A.:Tamla Motown Connoisseurs:☆☆
   B級が多い印象強い。中にはいい曲もあるんだけど・・・。
   音がいまいち籠り気味。盤起こしかな?
   有名バンドも多数いるが、選曲はふたひねりしている。
   モータウン好きで、さらなる深さを知るとっかかりにいいかな。

    モータウン系のマイナー曲をまとめたコンピのようだ。2001年発売。
    英盤だから、アップ系が多いのかな。年代が60年~70年代まで
    多岐に渡っていそう。掘り出し物音源も含まれてそうな雰囲気。
    ミューs時シャンはシュープリームズあたりから、マイナーどころまで様々。
160・V.A.:Northern Soul Connoisseurs:☆★
   玉石混交。石の方が多い。イギリス人選曲らしい、
   アップのノーザンがひたすら続く。珍しい曲があるのかも
   しれないが、ライナーが不親切でピンとこないのが残念。
   丹念に聴いたうえで選曲してるのは伝わる。ノーザン好きなら
   オムニバス盤として楽しめるだろう。

    70年~80年にかけてのソウルを集めた。レーベルは多岐に渡り、
    選者(DJ?)の趣味で「隠れた名曲」を集めたのでは。
    2002年のリイシュー。マイナーそうなミュージシャンに混じって、
    マーヴィン・ゲイやブッカー・T・ジョーンズの名前もあり。
    両方とも選曲はひねってますが。
159・V.A.:Modern Soul Connoisseurs:☆☆☆★
   いい曲が目白押しで、素晴らしく楽しい!
   シカゴあたりのソウルを集めたように聴こえる。
   音はいまいちだが、ややこしいこと言わずにのめりこんで聴けた。
   不勉強で知らないミュージシャンばかり。
   この収録曲を足がかりに、あれこれソウルを聴きたくなったよ。

2006/8/10   ネット通販したり先日買ったりのCDをまとめてアップします。

   吉田達也と佐藤研二(b)の即興デュオ1stが出た。
   クレジットは無いが、ライブ音源にダビングかな?
158・石窟寺院:Sekkutsu Jean:☆☆☆★
   ドラム+ベースだけでなく、互いにキーボードや打ち込みとチェロなど
   使い分け、音楽にバラエティを持たせた。全て即興。勢いで押す迫力から
   混沌なやりとりあり。曲間を無くし、つぎつぎ短い曲が場面展開する。
   63分もの長尺ながら、曲パターンを変えることで飽きさせない。

   壺井彰久と鬼怒無月によるデュオの新譜。3rdにあたる。
   まぼろしの世界からリリース。ゲストを呼ばず、真っ向から製作した。
157・Era:Totem:☆☆☆☆
   民族音楽やトラッドの要素もどっぷり仕込み、芳醇なメロディを疾走とともに
   混ぜ込んだ傑作。前作の歌心がさらに増した。余裕すら感じられる、堂々たる
   ふたりのやり取りに浸れる。曲によってはダビングも混ぜたか。より複雑さを増し
   バイオリンとギターのアンサンブルを多彩なアプローチで充実させた。
   優雅なバイオリンと懐深いギターのからみが心地よい。曲は過半数が
   鬼怒無月のオリジナル。プロデュースも鬼怒。壷井が主導権と思っていたが、
   より鬼怒の意思付けが深まったか。録音はGOK。みずみずしい響きは、
   ボリューム大きくするほど実感する。

   民族楽器系を使った、インプロ・バンドかな?
   本盤が1stになる模様。新譜です。ゲストで岡部洋一、勝井祐二が参加。
156・旅団:Iyaoi rhythm:☆☆★
   ダンサブルさやミニマル追求でなく、民族音楽にも影響受けたサウンドを
   重ねてゆくうち、次第にグルーヴが生まれていく狙い。岡部と勝井の参加で
   ROVO的なアプローチが強調されたが、単独ライブではもっとゆったりな感じだろうか。
   じわじわくるしぶとさは魅力。

   買いそびれてました。当時、気鋭のトランペッターだったという沖至が、
   新人の翠川敬基(b)、田中保積(ds)の二人を起用し製作した盤の再発。
   オリジナルは1970年の発売。こういうリイシューは本当にありがたい。
155・沖至トリオ:殺人教室:☆☆☆
   盤起こしらしく、所々にスクラッチ・ノイズが入る。
   定型ビートを排除し、スピードで押し切るフリー・ジャズ。
   勢いがすばらしいが、やはりCDでなくライブで聴きたい。
   翠川の怒涛のベースソロにくわえ、猛然とドラムやペットが暴れる(3)がベスト。

   ROVOが2005年にリリースした公式海賊盤の第2弾。
   2004年6月4日にブリュッセルでのライブを収録。CD一枚だし、
   抜粋収録かな?4曲を収録した。
154・ROVO:Live at Magasin 4:☆☆☆★
   音が歪み気味だし分離は確かに悪いが、きちんと聴ける音源だと思う。
   むしろライブPAのダイナミズムを追想できる・・・というのは褒めすぎか。
   全体的に、重たくどんよりとした雰囲気が支配する。ファン向の音源。
   がっつり一丸となって疾走するスピーディな"Sukhna"で幕を開け、
   粘っこいバイオリンが続く"Haoma"。後半はモコモコに音が劈く。
   チューニングのようにじわじわ始まって淡々と"Reom"がたなびき、メドレーで"CISCO"に。
   "CISCO"は淡々と突き進み、加速しつつも重厚さを残す。

   92年にドイツのレーベルから発売されたソロ・アルバム。録音はイギリスかな?
   サックスにメル・コリンズが参加。アラン・トゥーサン"Get out of my lif woman"のカバーもあり。
153・Gerry Rafferty:On a wing & a Prayer:☆☆★
   ちょっとひねったメロディに、華やかなBB風ハーモニーも織り込まれ
   聴き心地の良いポップスに仕上がった。ほんのりしょっぱい英国風
   ボーカルは、聴いててワクワクしてくる。
   惜しむらくはアレンジ・・・どたすか喧しいドラムと、分厚いシンセにげんなりする
   場面が多数。もっとあっさりアコースティックに録音したら、
   魅力がもっともっと増す。時代的に仕方ないか。

   上記ミュージシャンが88年にリリースしたアルバム。
   "Baker Street"が大ヒットしたそう。おそらく2ndソロにあたる。
152・Gerry Rafferty:City to city:☆☆☆
   良く出来たAOR、と聴くべきか。ほんのり苦さやしょっぱさを混ぜたところが
   かれの個性かもしれない。本盤だけでは、うまく彼の魅力をつかみきれていない。
   多重録音のコーラスをうまく使い、きれいなメロディをうまく操る。
   ロック寄りのアレンジだが、あんまりがたすかしないところが好み。

2006/8/5   メルツバウ関係の新譜を入手。

   捕鯨反対を強烈に打ち出した、メルツバウの新譜。
   ポーランドのレーベルからリリースされた。
151・Merzbow:Bloody sea:☆☆☆★
   CDは反捕鯨のアジビラみたいな有様。中身も濃密なハーシュでぎっしりだ。
   時に生じる隙間も、すぐさま次のノイズで埋められる。PCだけでなく
   アナログ要素を多分に含んだ。スピーディでメリハリあるノイズが中央で蠢き、
   力強さを強調する。強烈なインパクトに満ちた作品。

   海洋生物の鳴き声を素材に、世界各国の電気音楽家が集まった
   コンピ盤のようだ。ジム・キャスコーンしか知らないな・・・。
   日本からは、メルツバウが参加した。2006年のリリースかな?
150・V.A.:Belly of the whale:☆★
   静かなテクノ・アンビエントが続く。ジャケットのキュートさから連想した、
   雄大さも軽やかさも控え、沈鬱なムード漂う異様な作品となった。
   曲によっては、涼しげな曲もあるんだけど。メルツバウの作品とか。
   コンセプトとは別次元で楽しむ作品かもしれない。

   "origami replica"なる集団が、初期メルツバウのカセット作品を
   中心にリミックスした作品のようだ。メルツバウが新たに何らかの
   サポートをしたかのような痕跡は無い。
149・Origami Replica:Kommerz:
   メルツバウ・ファン向けと位置づけてしまった。
   電子音楽としては、オリガミ・レプリカのオリジナリティは
   今ひとつ理解しがたい。一方で作品として、メルツバウのハーシュの
   迫力や凄みも薄められ、中途半端な仕上がり。
   狙いはなんだろう。

2006/8/2   ネット注文の新譜CD到着。頑張って聴かねば。また未聴CDたまってきた・・・。

   GbV関連盤。トミー・キーンを相棒にロバートが歌うユニットの1st
   フル・アルバム。同時並行でいろんなユニットをやるなあ。
   ゲスト・ミュージシャンも何人か招いた。2006年の発売。
148・Keene Brothers:Blues and boogie shoes:☆☆☆★
   瑞々しいロバートのメロディと、爽やかなアレンジでポップにまとめたロック。
   ライブ映えを意識しつつ、細部まで目配り効いた構成でシンプルかつ丁寧に
   アルバムをまとめた。コンパクトながら噛み締めるほど味わい深い作品。
   実際にGBDdb.comの記録では(2)と(7)が発売同年の06年11月9日に披露とある。
   アルバム全体で、なぜか音がいまひとつヌケ無い。

   川嶋哲郎が鬼怒無月とがっぷり組んだデュオ盤。
   互いのオリジナルも演奏しあい、鬼怒がゲスト扱いってわけでもなさそう。
   意外な組み合わせだ。何度かライブはやったことあるようだ。
147・川嶋哲郎 meets 鬼怒無月:Resident of earth:☆☆
   サックスが前面へ出て、あまりギターが目立たない。耳ざわり良い
   サウンドが軽やかに続く。セッション要素よりもギター伴奏でサックスの
   ソロを、お洒落にまとめたアルバムな印象あり。ジャズ要素も控えめ。
   サックスはときおり音を軋ませつつも、上品な色合いで響く。
   鬼怒のオリジナル(7)がベストか。

   元たまの柳原陽一郎が鬼怒無月が率いるウエアハウスと組んだ。
   ライブを幾度も繰り返してる、継続性あるユニット。
   残念ながらライブは未聴・・・。"満月ブギ"のような、たまのレパートリーも
   今回取り上げている。ほのぼのポップス、かな?2006年発売。
146・Warehouseと柳原:Ladies and Gentlemen!:☆☆☆★
   柳原を前面に出していつつ、サウンドはwarehouseとうまく溶け合った。
   歌物とインストが交互の構成というだけでなく、warehouse各メンバーの
   曲を、柳原がうまく歌物に仕立ててる。各メンバーが1~2曲歌物で提供、
   さらに(14)では全員の共作とバランスもとれている。
   コンパクトでキュートな演奏は変わらず魅力。ただ、特殊サイズの
   ケースは何とかして欲しかった。棚に入らない。
   なじみのレパートリー"満月ブギ"をwarhouse版へ仕立てっぷりもいい。
   新曲では"ふたりぼっちー"がとりわけ好き。

2006年7月

2006/7/28   ライブで買ったり、通販が届いたり。

   ライブで購入。さがゆきと林正樹のユニットの1stかな?新譜になる。
   スウェーデンで録音された。それぞれのオリジナル曲を収録している。
145・Kokopelli:Spirit of the forest:☆☆☆★
   とにかくタイトル曲が白眉。ボサノヴァ風の弾むリズムで、さがの
   即興ボイスが炸裂する大傑作曲。多くの人に聴いてほしい一枚。
   おっとりしたサウンドだが緊張感を保った。さがの鋭さとコケティッシュさを
   同居させたバラエティ豊かな声が滑らかな林のピアノと絡む。
   即興要素も多分にあるが、根本が歌物を意識したアレンジのため、聴きやすい。
   おもちゃなどの小物も積極的に加えピアノ一本の演奏に彩を添えた。
   数曲でベースが加わった。明るくふくよかなピアノの響きがすごい。
   さがと林の曲提供は半々くらい。さがは"Fairy's Fable"といった昔の曲も演奏してる。
   編成のシンプルさと対照的に、曲調はさまざま。日本風味が漂うのは
   林の降り注ぐようなピアノの故か。

   英フォーク・シンガーの1stアルバムで、トラッドをカバーしたアルバム。
   1972年発売。本盤は2000年に英Fellsideからのリイシューで、
   カップリングでRoy Harris, A.L. Lloyd, Martyn Wyndhamらと
   吹き込んだバラッド集"The valiant sailor"(1972)から5曲、
   コンピ盤らしき"Room For Company"(1972)から2曲を追加で収録した。
144・Frankie Armstrong:Lovely on the water:☆☆
   鋭い歌声がほぼ無伴奏で、ぱあんと通るのはシンプルに心地よい。
   しかしアルバム一枚聴きとおすには、トラッドへの深い愛情が無いと
   少々しんどい。音楽的な展開が微妙なのと、アレンジがシンプルすぎて
   間が持たなくなってしまう。一曲ごとのインパクトは素晴らしい。
   ボートラもさほど世界観を変えないものばかり。
   長尺となり聴きとおすには集中力いるが、輝くナイフのような
   歌声を聴くには良い盤だと思う。余計なかざりっけが無いから。

2007/7/23   レコード屋にて。知らない新人の新譜買いたいが、手が伸びず・・・。

   ウエイン・ホーヴィッツ(p)がおそらくリーダーの、ソニー・クラークへ
   捧げたカルテット盤。1986年に伊ブラック・セイントで発売。
   ジョン・ゾーンが参加してたため、早速買う。
   過激さは控えめで、わずかにシャープなくらいのテンションだ。
143・The Sony Clark Memorial Quartet:Voodoo:☆☆☆
   外枠はモダン・ジャズ。薄っぺらい響きで、時折フリーク・トーンを混ぜる
   ジョン・ゾーンのおかげで80年代の時代性をかろうじて保った。
   肩抜きか気紛れセッションの一枚か。演奏は悪くないので、BGMにはぴったり。
   軽快にスイングするテクニックはきっちりしてる。
   フリーよりの"Voodoo"が個人的にはベスト。スピーディな"Minor Meeting"もいいな。

   2001年録音。藤井郷子/田村夏樹が、加藤祟之とE#を迎えた。
   というより4人のセッションなのかな?
   さらにCDの盤面は中村シキカツというミュージシャンのコラボになってるそう。
   中ジャケにマニフェストが載ってるが・・・こういうのはいまいち好みでない。
   2001年3月20日に"熊谷文化創造館さくらめいと"でのライブを収録。
142・Tamura+Sharp+Kato+Fujii:In the tank:
   ライブでみたら面白いと思うが、CDではポイントのつかみづらい
   即興が続く盤となった。ぐっと集中力を要求される。
   互いが自由に音を重ね、うねりを作る。後半ほど、音に密度を増した。

   名前は知ってたが、聴くの初めて。1960年にブルー・ノートに吹き込まれた。
   トリオ編成で、ホレス・パーラン(p)の代表作・・・なのかな?
141・Horece Parlan:Us three:☆☆★
   指2本が不自由とは思えない、流麗なプレイ。クラブ・ジャズの観点で
   再評価されたのはどの曲だろう。ロマンティックなアドリブのほうに
   惹かれた。例えば"the lady is a tramp"のように。
   奥行き深いピアノ・トリオだと思う。スピード感は控えめか。

   1962年にブルー・ノートへ吹きこみ。ミュージシャン名もはじめて知った。
   "ジャズ・ファンクの名盤"と帯にある。五人編成。ピアノがソニー・クラークだな。
140・Don Wilkerson:Preach Brother!:☆★
   ほんのりラテンの香りを感じた。小奇麗にまとまったファンキーさで
   破天荒さが欲しく物足りない。ブルーノートらしいアレンジといえば
   それまでだが。むしろソニー・クラーク(p)やグラント・グリーン(g)の
   プレイのほうが耳に残る。彼の評価は当時低く、幻になってたのはむべなるかな。
   ライブで酒飲みながら騒ぐには楽しいと思う。しかしレコードでの
   彼の魅力をとどめてるとは言いがたい。むしろ、ライブ盤のほうがいいんじゃないかな。

   1973年にコペンハーゲンで行われたライブ音源を収録。
   ピアノはケニー・ドリュー。リズム隊のAlex Riel(ds)と
   Niels-Henning Orsted Pedersen(b:つづりは英語表記)は
   現地のミュージシャンかな?
139・Jackie Mclean:A Getto Lullaby:☆☆
   ハード・バップ形式だろうか。録音のせいか、音が細い。
   今ひとつ色気やしっとりさに欠ける一枚。
   したがってどうしても耳はバラードな(3)や(5)へいく。
   ジャッキーへ太いメロディアスな演奏を求めてるせいだろう。
   流麗なカッチリとしたアップは、いまひとつスリルがない。
   どっぷりとジャズの匂いが漂うスローなほうが、本盤では好み。

2007/7/21   Guided by Voices関連盤を2枚。ロバート・ポラードの創作力は果てしない。

   2006年発売のユニットの1st。ロバートがアコギと歌、作曲も全てロバートかな?
   楽器演奏はトッド・トビアスがつとめた。サーカス・デヴィルズと
   同じ編成だが、バンド名を変えたのはなぜだろう。
   ジャケットは紙一枚で、なんだかそっけないデザイン。
138・Psycho and the birds:All that is holy:☆☆☆
   ボーカルも素材の一部。アコギと歌のロバートのデモへかぶせた盤か。
   一筆書きなロバートの魅力を無造作に飾って仕上げた。
   マニア向けのラフな仕上がりだが、磨けば光る宝石は確かに、ある。
   作曲する日常の脳活動を、さりげなく切り取ったかのような一枚。
   ぶっとんだ展開も多いが、確かなメロディも埋もれてる。トッドのアレンジで
   ポップさを付与した作品もあるし。

   これも2006年のリリース。クリス・スルサレンコ(後期GbVのベーシスト)が
   ほとんどの楽器を担当。何人かゲスト・ミュージシャンを呼んでいる。
   曲は基本的にロバートとクリスの共作で、幾つかはソロもあり。
   サウンドをクリス主導で録音し、トッド・トビアスの仕切りで
   ロバートがボーカルをダビング、完成させたようだ。
   本作が1stにあたる。継続したユニットになるのかは不明。
137・The Takeovers:Turn to red:☆☆☆
   30分くらいの短い作品。冒頭に語りをいれ、実験的な曲も織り交ぜるが
   (2)や(10)などロバートの瑞々しいメロディを味わえる作品もしっかり。
   ラフな感触のサウンドだが、丁寧なアレンジで製作された。

2006/7/19   アマゾンからCD到着。まずは第一弾。

   菊地成孔とUAのコラボ・ジャズ盤。どっぷりと甘く骨太な
   ジャズをやってそう。1曲目を聴いただけで、耳が飛びついた。
136・UAx菊地成孔:cure jazz:☆☆☆☆★
   UAの歌声が降り注ぐ、豪華で獰猛で官能的で真摯なジャズ。
   唯一の不満は菊地が全曲で吹いていないこと。彼のサックスを、セクシーなサックスを
   もっともっと聴きたかった。UAに寄りかからず、たとえば(4)のように
   菊地特有の突き放したクールネスを振りかけることも忘れない。
   リズム隊は藤井信雄、鈴木正人、坪口昌恭。曲によって
   参加してないこともあるが、全ての基本グルーヴは彼らが担い、
   アルバムへ統一感を出した。サウンドは菊地が隅々まで目配りし、
   UAの歌声とサックスをさりげなく載せる。"Over the rainbow"の凄みと祝祭性は
   びっくりするほど感動的だった。何度も聞き返したい快盤。

   スコットランドのSSWらしい。トラッド系かな。"英国ロックの深い森"で
   べた褒めされており、ためしに買ってみた。同誌によれば"フォーク・ルーツ"誌の
   10年間のベスト選に入ったとか。1981年発表の6thアルバム。
135・Dick Gaughan:Handfull of earth;☆☆★
   塩っ辛い声でトラッドを歌う。くつろいだムードが漂うのは弾き語りなせいか。
   弛緩はしないが。ブライアン・マクニールやフィル・カニンガムらの
   さりげないサポートもうれしい。
   トラッドを聴きなれてない耳には、トリオ編成でじわっと
   盛り上がる(10)がもっともはまった。

2006/7/17   あれこれ買ってきました。

   ギリシャのポップ・ミュージック"ライカ"の歌い手だそう。
   これは50~60年代の録音(彼の初期)を集めた2枚組ベスト。
   ギリシャ盤に解説をつけて日本のアオラからリリースされた盤
134・ステリオス・カザンジディス:ザ・ベスト~ライカの声:☆☆☆
   ライカの知識不十分で、どれもリズムやタッチが同様に聴こえてしまう。
   とはいえカザンジディスの老成した伸びやかな歌声の魅力はわかった。
   デビュー初期音源とは思えぬ貫禄っぷり。ゆったりとこぶしをまわす喉は
   しぶとく渋く光る。音質のばらつきがかなりあり。マスター保管条件は
   よくわからぬが、きっちりと1曲ごとの解説付きで
   聴き進めたい音楽でもある。根本は流行歌であったとしても。

   ファラオ・サンダーズ1964年録音のクインテット盤。
   ESPからリリースされた。フリー・ジャズかな。初リーダー盤らしい。
133・Pharoah Sanders:Pharoah's first:☆★
   フリー・ジャズ色はぐっと薄い。特にB面。長尺過ぎて集中力が
   続かないなあ。もっと締めたほうがよかったのでは。フリー色を強めるかは別次元で。
   ファラオよりもベースとピアノが気になった。
   特にA面でクールなコードを淡々と弾くジェーン・ゲッツと、
   ぶんぶん弦をはじいて空間を埋めるウイリアム・ベネットのベースが本盤の聴きどころ。
   ドラムはあまり目立たない。フルセットだとは思うが。
   ボートラのインタビューは、ぼくの英語力では歯が立たない・・・
   モゴモゴ気味で、聴き取りにくい・・・早口ではなさそうだが。

   仙波清彦が2003年にリリースした小編成のユニット。
132・Semba Sonic Spear:Sonic Spear:☆☆☆★
   タイトであるがゆえに、生演奏すらブレイクビーツに変貌する。
   すさまじく疾走感溢れた一枚。アクセントのベースもかっこいい。
   アレンジは練られ、音数少なくとも刺激は保たれる。
   "オレカマ"文脈も使っているのに、アフリカンなしぶといビートに心が踊る。

   板倉文、清水一登らが在籍したキリング・タイムが88年に吹き込んだ盤。
   これが代表作、といっていいのかな?ボートラ2曲収録の05年リイシュー盤を買った。。
131・キリング・タイム:Irene:☆☆☆
   微妙に揺らぐリズムに乗って、アンビエントで静かに震える凝った音楽。
   昼下がりの居眠りみたいなくつろぎ感が堪らなく心地よい。
   サンディの歌声がいつまでも耳に残った。
   ボートラ2曲は当時のライブ演奏曲かな?いくぶんエッジが強く、
   アルバムの印象にはそぐわない。当時、割愛して正解と思う。
   曲としては揺らぎ間や生々しいバンドっぽさに惹かれるが。
   せめてボートラの素性など、後追いの人への解説がほしかった。

   1972年の録音。ミュージシャンがいっぱい参加してるようだ。
   オーケストラっぽい音なのかな?
130・Archie Shepp:The city of my people:☆☆☆★
   トータル・アルバム。まるでサザン・ゴスペル盤みたい。いきなりシェップが参加しない曲から始まり。
   全編にボーカルを加え、ポピュラー音楽全体を使って自分を表現した。
   シェップのサックスは歌伴のソロから現れ、じわじわと存在感を前面に出す。
   A面最期の"The Lady"が分岐点。甘いボーカルで綴って、場末のショータイムさを演出。
   確信犯的に超一線級の歌手を使わず、強烈にひしゃげたサックスの個性を強調する。
   A面は全体に野暮ったく漂わせ、じわじわとジャズへ足を踏み入れた。
   B面はどっぷりビッグバンド・ジャズ。とはいえスイングじゃなく、70年代らしい
   不安げな様子をかもす。組曲形式でボーカルは一要素。分厚いサウンドで熱っぽくはじけた。
   スピーディさに欠けるが、じゅくじゅくと泡立つ勢いが魅力。
   シェップのサックスは今にも崩壊しそうにミリミリと鳴る。

   1978年の来日ライブ盤。クインテット編成で、コルトレーンの
   "至上の愛"などを演奏してる。
129・Elvin Jones:Jazz Machine:☆★
   今の耳で聴くと、ちょっと冗長さが残る。エルヴィンのドラムソロも
   タム回しメインで、とたんにリズムがモタリ気味なのもいただけない。
   ホーン隊も手癖っぽいフレーズが多いなあ。
   一番の聞きものはローランド・プリンスのギターかもしれない。
   もっとエルヴィンを聞き込めば良さが分かるのかもしれないが、
   全般的に物足りなく感じてしまった。
   ベストのテイクは、むしろテンポが緩めの(2)。

   スウェーデンのジャズ・バンド。予備知識は無い。2ndのようす。
   なんとなく面白そうだから買った。五人編成で、当時に
   グラミー賞などを受賞してるらしい。本盤は2003年の録音かな?
128・Oddjob:Koyo:☆☆
   音数は少なめ、アンサンブル重視でゆったりと進むジャズ。
   打ち込みのようなタイトさを踏まえ、スケール大きいファンクネスも併せ持つ。
   派手さを狙わず優雅なスリルで、着実なジャズを膨らませた。

   ジャマイカのジャズだそう。ギタリストとピアニストをフロントに立てた
   カルテット編成。1965年に録音された。
127・Ernest Ranglin:Guitar imernest:☆★
   耳ざわりは悪くない、ギター・ジャズ。あまりにスリルが無い、
   職人芸を聴いてる気分。解説を読むとこのミュージシャンは、
   コマーシャルな活動といわゆるアーティスティックな活動の
   合間を揺れ動いた印象を受ける。強烈な個性でギターを弾いてくれると、
   好奇心がもう少し動かされる。本盤を聴いてて、上手い演奏だなとは思う。
   しかし、もう一枚買ってみよう・・・とならない。

   1990年くらいのブラジル北東部、ペルナンブーコの音楽を集めた
   編集盤。レニーにやナソーン・ズンビーなどが有名だ、とある。
   日本のライスより2005年頃にリリース。
126・V.A.:ペルナンブーコ新世代:☆☆
   自分らのルーツを見据えつつ、打ち込みなどテクノロジーを踏まえた
   曲のアンソロジー。威勢のいい曲が多く、聴いてて元気が出てくる。
   更なる足がかりを作るのに、なかなか適した一枚では。
   めちゃくちゃ前衛な音楽は抜き、あくまでポップスやロック色が強い。

2006/7/15    先日通販でとどいたメルツバウの新譜。

   江ノ島水族館で昨年死んだ、ミナミゾウアザラシ"美男象"への
   追悼盤。vol.1ってことは、シリーズ化するんだろうか。
   中ジャケに秋田昌美による小文が日本語/英語で載っている。
   ジェニー・秋田による美男象のポートレートもあり。
   しかし曲名や作曲クレジットが見当たらない・・・むう。2006年の新譜。
125・Merzbow:Minazo vol.1:☆☆☆
   メルツバウ流のレクイエムか。ループだけでなく、生々しいシンセの
   ノイズが一面に広がる。寂しさが漂う瞬間多し。強烈な生命力も感じたが。
   みるみる音世界が変わる展開ながら、物語よりも自然の偶発性を表現か。

2007/7/8   在庫処分で安くなってたCDを、ザザッと購入。

   仏の5人編成コンボ。2003年の録音で、現時点で唯一の盤みたい。
    イスラム文化圏を踏まえたジャズのようだ。
124・Quinte & Sens:Karibu:☆☆☆★
   かっちりユニゾンでテーマが雪崩れ、アドリブが炸裂する。
   即興フレーズが少々大味なのと、演奏の詰めが甘いとは思う。
   それを差し引いても、かなりかっこいい出来。クレツマー要素を
   勇ましく高らかに奏でる。マサダのようなスピード志向でなく、
   むしろスケールの大きさで迫った。エレキギターの味付けも悪くない。
   さらなる活躍に期待するバンドだ。

   エリック・ドルフィーに捧げた盤。Rino Adamo (vln)が
   ピアノやベースと組み、ドルフィーの曲(オリジナルもあり)を
   演奏する。イタリアの録音かな。2004年の録音。
123・Adamo-Corbini-Maier:Playing with Eric:☆☆☆
   クラシカルな要素をそこかしこに漂わせつつ、エレクトリックな色合いも
   振りかける。エレピもふんだんに出るし。バイオリンが前面に出ず
   フラットな立場のユニットっぽい音だ。隙は多いが、自在に絡むアンサンブルは
   かなり楽しめた。メロディアスさが今一歩なのと、ユニゾンでカッチリ
   固めちゃうアンサンブルが堅苦しい。だからアドリブでの、豊かな響きが聴きもの。
   ドルフィーでイメージした激しさは皆無。ふくよかなアンサンブルが
   味わい深い。もうちょいスリリングさが伝わると、完璧に好み。

   NYで活動するジェイムズ・フィン(ts)がドミニク・デュバル(b)、
   ワーレン・スミス(ds)のトリオ編成で吹き込んだ盤。フリー・ジャズかな。
122・James Finn Trio:Faith in a seed:
   微妙に切なさが漂う。明確なリズムも展開も無く、たらたらと演奏が
   続くわりにスピード感に欠ける。指は早いが、どうも物足りない。
   無造作過ぎる演奏って気がする。ライブで聴くならまだしも、
   CDでこの手の音楽を1枚聴きとおす集中力の維持は難しい。

   豪が演奏拠点らしいジャミー・オーラー((ts)で発音は正しいのかな?)と、
   サム・キーバー(p)のデュオ作。2003年録音。
   元は欧州FM局のABCクラシックFMのために録音した音源らしい。
   曲は全て、二人どちらかのオリジナルで、1曲だけ競作。豪Jazz Headレーベル発売。
121・Oehlers & Keevers:Grace:
   ほんのりサブトーンをまぶしたサックスが、ロマンティックに
   アドリブを奏でる。BGM向きで、刺激に欠ける。
   どろっとしたノリが皆無で、あくまでクリーンな感触を志向する。
   メロディのセンスは手癖っぽく聴こえてしまった。酒を飲み、寛いで聴く一枚。

   イタリアのビッグバンド・ジャズ。写真見るとベテランぞろいのようだ。
   ローマで2000年に録音された。曲はメンバーのオリジナルばかり。
   盤はエンヤからリリースされたものを購入した。
120・Itarian Instabile Orchestra:Litania Sibilante:☆☆
   フリー・ジャズ寄りのとっ散らかったでたらめさのある音楽性はユニーク。
   惜しむらくはアレンジがかなり構築され、オーケストラ全体で音を出す
   カタルシスがなかなか味わえないこと。
   個々の楽器は分離良く録音され、耳障りは良い。クラシカルな大仰さを
   残しつつ、奔放な空気を常に発散するさまが楽しい。
   これはライブをぜひ見たいバンドだ。

   イタリアのts奏者ステファノ・ダンナ がds、bと組んだ盤。
   2003年に録音された。詳細は不明。
119・Stefano D'anna:Runa:☆☆★
   コルトレーンを連想する。ハード・バップ系か。音数はまあまあ多い。
   メロディ・タッチは手癖っぽいのに、なぜか惹かれる。
   新奇さは無いが、着実なジャズへの愛情を感じる盤だ。
   ドラムとベースもオーソドックスに地へ足ががっちりついた演奏で
   あんがいファンキーなジャズを聴かせる。

   アルゼンチンのジャズらしい。Gustavo Bergalli(tp)をリーダーにクインテット
   編成でオリジナル曲を演奏する。バンドメンバーの曲を満遍なく採用
   しており、継続性あるバンドらしい。HPは見つけられず。
   ゲストでバンドネオン奏者がはいるあたり、場所特有の個性か。
   これは1989年の録音。発売クレジットは2004年だが発掘音源なのだろうか?
   単なるリイシューかな。書いてある言葉が読めない・・・。
118・Gustavo Bergalli Quintet:Night cats:☆★
   基本はストレート・アヘッドなジャズ。毒は無く、BGMに良さそう。
    けっこうテンポが速いので、寛ぐにはやかましいか。たまに入るホイッスルや
   メロディから滲み出すラテン風味が彼らの個性か。
   時代性は皆無で、逆に不思議な気持ちがする。

   ポーランドのジャズ・バンドで、本盤のときは五人編成。
   1976年の盤を、ポーランドのレーベルが2004年にリマスター再発した。 
   フュージョンの影響どっぷりな音楽だ。
117・Laboratorum:Modern Pentathlon:
   "この頃の彼らはジャズ・ロックに近づいた"とライナーにあるが、
   かなり上品なアンサンブルだ。アップテンポでのせめぎあいも
   混沌のふりして、すっきりしたアレンジに仕上げた。
   大仰な組曲もあるが、今聴いても洗練を感じる編曲のセンスは評価する。
   はじけたら面白くなりそうなのに。もしかしてライブのほうが
   彼らの魅力が伝わるのかもしれない。ワイルドな志向があれば、だが。
   もしくはクラシカルな方向に進むか、だね。
   ときおり入るスキャットの奔放さが好ましく聴けた。

2006/7/1   チュニジア音楽に興味が出て、色々買ってみる。

   興味を持った切っ掛けとなった、日本のアンサンブルがリリースした
   ミニアルバム。当時はナイ、ウード、ヴァイオリンのトリオ編成。
   現在はバイオリンが抜け、ダルブッカの加わったトリオになっている。
   2000年発売、7曲入り。チュニジアの古典音楽だけでなく、エジプトの曲も
   入っているようだ。もちろん、タクスィーム(即興)もあり。
116・ル・クラブ・バシュラフ:チュニジアとエジプトの古典音楽:☆☆★
   アンサンブルものとナイ、ウード、バイオリンの短いタクスィームで、
   あっという間に終わる22分間のミニアルバム。即興好きなので、
   もっとたっぷりタクスィームを聴きたかった気も。
   アンサンブルはかっちりまとまり、コンパクトに締める。
   このジャンルへの興味がわいてくる一枚。
   楽曲の歴史的解説もあるといいなあ。贅沢すぎか。
   ユニットはメンバーが変わっているが、まだCDは発売されていない。次の作品が楽しみ。

   上のCDをリリースしたパストラル・レコードからのリリースで
   94年にチュニジアの首都チュニスで録音された。
   チェロとタールをバックに、ナイのタクスィームをやっているらしい。
115・Slah Eddin Manaa:チュニジアのナイ:☆☆☆
   非常に丁寧な解説もつき、勉強になる。惜しむらくは字間が開きすぎ
   読みづらいのと、フォントも妙にぎこちない。編集にもう一工夫欲しかった。
   演奏は躍動感溢れ、ナイの音が瑞々しく心地よい。全編がタクスィームでなく、
   伝統曲の合間にタクスィームが挿入される。
   淡々とタールがリズムを刻む上で、涼しげなチェロとユニゾンで
   ナイは音色を微妙に揺らしながら、ふっくらと鳴った。

   同じくパストラル・レコードからのリリース。これも94年のチュニス録音になる。
   ナイ、ウード、タール、ヴァイオリン、カヌーンによるアンサンブルで
   タクスィームもある模様。で、カヌーンってどんな楽器だろう。
114・Ensemble Slah Manaa:アラブ・アンサンブルの愉しみ:☆☆☆☆★
   チュニジア音楽の入門にぴったりの盤ではないか。
   断言できないのは、僕自身が知識無く門の前でうろうろしてる程度だから。
   アンサンブルとそれぞれの楽器のタクスィームをバランスよく
   編集し、なおかつ曲順も考慮して飽きないように設定した。
   ユニゾンを基調にきらびやかなアンサンブルが進行し、時に幾つかの
   楽器が対位する心地よさが堪らない。解説も詳しい。
   初心者向けでありながら専門用語を惜しまずに提示し、好奇心をくすぐる。
   録音レベルがちょっと低めなので、ぐっとボリュームを上げて聴きたい。
   音量上がると、豊潤な楽器の響きを見事に捕らえていると分かる。

   91年に日本で録音された、エジプト国立アラブ音楽アンサンブルの演奏。
   オーケストラっぽいのかな?99年に民俗音楽では老舗のイメージある、
   キングからリリースされた。
113・エジプト国立アラブ音楽アンサンブル:エジプトの音楽ーナイルの調べ:☆☆☆★
   歌モノとインストがそれぞれ長めに収録され、たっぷりと楽しめる。
   おっとりした印象で毒はないが、逆に滑らかな演奏へ浸れた。
   エジプト音楽の入門編にちょうどよさそう。
   後半は10分~20分とじっくりなマカームあり。カーヌーン、ナーイ、ウードの
   即興へ存分に浸れた。幅広い音楽性をコンパクトにまとめた一枚。

   同じくキングから00年にリリースされた。エジプト国立アラブ音楽アンサンブルの
   ほかに、カヌーンやナイ、ウードの独奏を含めた。
   1曲目にある"ロンガ・ナワーハンド"はアラビンディアのレパートリーで
   聴ける曲("Longha Farafaza")ただし奏法で作曲者クレジットが違う。
   ナワーハンドとは奏法(マカーム)らしいので、別の作曲者が
   解釈したってことなのかな。良く分からない。
112・V.A.:エジプトの音楽ー遙かなるナイル:☆☆★
   楽器別3種にアンサンブル5曲。キッチリしてると思うが、いまいち毒が無い。
   おっとりした雰囲気のBGMに聴くのにちょうど良さそう。
   "ロンガ・ナワーハンド"のスピード感は単純に楽しいが。
   マカームのほうがすんなり聴けた。

2006年6月

2006/6/8   東芝EMI"ジャケガイノススメ"シリーズから、まず2枚を購入。

   フィル・スペクターの原点。テディ・ベアーズが59年にImperialから出したアルバムが世界初CD化。
   "逢ったとたんに一目ぼれ"はDoreから発売ゆえに。
   ステレオ・バージョンやシングル曲など13曲がボートラ収録された。
111・The Teddy Bears:Sing!: ☆☆☆
   スペクターはブレていない。アレンジこそこじんまりだが、曲調の好みをずっと保ち続けた。
   純朴なアメリカン・ポップスで50年代のお行儀良いマナーを踏襲している。
   ギターなのか、ハープっぽいフレーズで彩ったりとアレンジのさりげないテクニックがスペクター流か。
   (1)のみならず(4)などの美しいスペクター作のメロディも聴きもの。
   やはり素直にサウンドを楽しむには、その後の歴史の重みが邪魔をする。
   遡って素直にサウンドだけ聴くのが難しい。ごく素直にポップスを仕上げてるだけに
   原石探しの思いをいかに込められるかで、本盤の価値が変わる。

   "Spring Rain"をじっくり聴いてみたかった。達郎ラジオでかかったことあるけど。
   電気グルーヴ"シャングリラ"のサンプリング曲です。
   しかしこれ、世界初CD化だったんだ。ボートラは無し。1977年作。
   サルソウルからリリースされた。こういう音楽もあれこれ聴きたいなあ。
110・Silvetty:Spring rain:☆☆
   ゴージャスなディスコ・サウンド。1曲目のマジックに匹敵する
   曲が無くて残念。アレンジは凝ってるし、曲もかなり複雑そう。
   しかし根本的に物足りない。ボーカルのマイナス・ワンを聴いてるようだ。
   もう一歩、主旋律を入れたら力強くなるだろうに。
   (3)、(5)、(7)、(8)あたりが聴いてて楽しい。
   爽やかな昼下がりのBGMにいいな、これは。
   (1)以外はむしろ、自己主張が少なめだから。

2006/6/5   ライブハウスで購入。

   西荻窪のライブハウス、音や金時が自主CDをリリースした。レーベル名は
   ずばり"音や金時"。継続レーベルだといいな。
   本作はスタッフのMAMA-Kinが作詞し(ジャケットの題字も)、作曲を夏目雅生が担当。
   5曲入りのミニアルバム。歌モノのようだ。ギターで高木潤一(ボーカルもかな?)、
   バイオリンで太田恵資が参加してる。録音は今年2月19日に音金にて。ライブ録音だろうか?
109・回転する銀幕の猫:回転する銀幕の猫:☆☆
   フォーク調の曲。陽水と三上寛が混ざったみたい。ボーカルがむせび泣くように切々と歌う。
   バッキングは程よく溶け合っており濃密に響いた。
   ぼくの趣味よりも叙情的。

2006/6/3   ジャズをあれこれ買う。目移りしてどれもこれも欲しくなるが、ぐっと我慢。

   この欄ではDVDを買っても書いてないが・・・。CDと間違って買っちゃったから書いておく。
   こんな映像残ってたなんて。他界したサックス奏者、武田和命カルテット、1988年の
   ライブ映像だと。サイドメンは渋谷毅、故・川端民生、渡辺文男。すげー。
   渋谷の個人所蔵映像だったらしい。5曲入り。じっくり見ます。
108・武田和命:Live at 柳川「ファンクール」(DVD):

   川下直弘が地底から出した新譜。トリオ編成でスタンダードを
   演奏してるようだ。ロマンチックなジャズだろうか。
107・川下直弘:Only you:
☆☆☆★
   ライブ音源をベースに様々な楽器をダビングし、厚みある音像へ仕上げた。
   温かい雰囲気が全編に漂い、切なさが染み渡る。
   強烈なブロウではなく、叙情的な川下を堪能できる一枚。
   少々音がこもり気味なのが難か。出来る限り、大きな音で聴きたい。
   ぶわっと永見のオルガンが広がる"Only you"(プラターズ)がベストかな。
   ライブ音源はおそらくテナー。さらにバイオリンを重ね、艶やかに音が広がる。
   多重録音で訥々と漂う"And I love her"(ビートルズ)もしみた。

   デレク・ベイリーが聴きたくなった。出来ればソロで。
   ちょうどいい盤を見つけたので買う。71年から87年まで
   いろんなLPからのコンピ盤らしい。概観するのにちょうどいいや。
   何曲かではデュオになるが、基本はアコギorエレキのギター・ソロ。
   99年に英Emanemから出た盤らしい。14曲中4曲は本盤での発掘音源。
106・Derek Bailey with postscripts:Fairly early:☆★
   メロディを廃し、リズムを廃する。手癖がどこまであるのか
   良く分からないが。年代によって微妙に演奏が違う。71年の演奏では
   まったく音楽を避けて、ギターをノイズ発生器として使用してる。
   弦をはじいて音を出さず、タッピングやこすりで音を作った。
   かなりの部分が偶発性に頼った音楽とは思うが、曲によっては
   メロディらしき音も登場する。演奏が進むにつれ、微妙なグルーヴが
   産まれるのは人間が演奏するが故かもしれない。
   BGMで聴くには抽象的過ぎる。しかし聴きこむべきなのだろうか。
   音の流れに耳を済ませながら、色々と頭の中を様々な考えがめぐる。

   ジャケットは前から見かける有名盤。今まで聴いたことなかった。
   植草甚一の本で紹介されて知ったんじゃなかったかな?
   1966年にアトランティックへ吹き込んだ。ピアノがキース・ジャレット、
   ベースがセシル・マクビーにドラムがジャック・デジョネットと、
   ジャレット・トリオの顔ぶれだ。
105・Charles LLoyd:Forest Flower:☆★
   これがなぜもてはやされたのか、ぴんとこなかった。
   切ないジャズではあるが、サックスの印象はむしろ薄い。
   ピアノ・トリオ+サックスっぽいなあ。
   21歳のキース・ジャレット・トリオの若かりしジャズを味わう、という
   別視点の聴き方もあるらしい。彼らを大舞台へ
   連れ出した、チャールズの度量と耳もたいしたもの。
   3曲目ではキースの曲すら取り上げている。
   抽象的なタイトル曲の漂いに身を任す。

   ベニー・ゴルソンのリーダー作を見かけたので、何枚か買った。
   月光茶房で聴かせて頂き、気になっていた。これは1962年の録音。
   ピアノはトミフラ、ベースがロン・カーター、ドラムがアート・テイラー。
   静か目のバップ・ジャズかな?原盤はアーゴ。
104・Benny Golson Quartet:Free:☆☆☆
   ワンホーンでのびのびとゴルソンのサブトーンと滑らかな
   アドリブが堪能できる一枚。しかしアップテンポではアレンジの
   音の薄さが目立つ。むしろスローでの甘さが本盤のキモか。
   ドラムもピアノも気心知れた中なのに、なぜかアンサンブルが
   今ひとつ一体感が薄い。とはいえゴルソンのサックスの美しさは棄てがたい。
   じっくり飽きずに聴ける一枚。

   プレスティッジで1959年に録音。カーティス・フラー、トミフラ、
   ダグ・ワトキンス、アート・テイラーといった布陣。
   上の盤より、ちょっと熱そう。
103・The Benny Golson Quintet:Gettin' with it:☆☆☆★
   後半3曲のオリジナルがとにかく素晴らしい。2管なのに
   やたらサウンドが太く感じる。アンサンブルもばっちり。
   静かなランニング・ベースが、やたら沁みる。むろんゴルソンのサックスも
   活き活きとアドリブを溢れさせた。
   派手さは無いが、じわじわとよさがにじみ出る快盤。

   ブッカー・アーヴィンの名前に惹かれました。ちょっと硬そうなジャズだ。
   1964年にプレスティッジで録音。ピアノはジャッキー・バイアード。
102・Booker Ervin:The Space book:☆☆
   サックスはかなり振り幅大きく吹く。ちょっと音色の線が細い。
   ドラムのシャープさがかっこいいな。ピアノトリオの緊張感がすごい。
   ちなみにドラマーはアラン・ダンソン。
   全体的にはとっ散らかった印象で、むしろ小粒に聴こえてしまった。

   レッド・ガーランドも何枚か。バップよりのガーランドを聞いてみたくて。
   プレスティッジへ1957年に吹きこまれた。サイドメンはドナルド・バード(as)、
   ジョン・コルトレーン(ts)など。
101・The Red Garland Qunintet:Soul Junction:☆☆☆
   溌剌としたモダン・ジャズ。ピアノとサックス、ペットが図抜けているが
   ときおりクールなソロをリズムも聴かせる。派手な前衛性は無いが
   がっちりとジャズを楽しんだ一枚。フェイド・アウトが惜しい
   (5)がもっとも惹かれた。さりげなくグルーヴィな(2)もいい。
 
   これはいろんなセッションをあつめたコンピみたいな盤。
   59年から61年までのセッションを集めた、プレスティッジ盤。
   お、二曲でオリバー・ネルスンが参加してる。
100・Red Garland:Soul Burnin':☆★
   それぞれリズム隊の違う3種類のセッションを集めた盤で、
   ホーンが加わっているのは2曲のみ。
   ニュアンスの違いを楽しめる盤・・・だが、ぼくの耳ではまだ
   リズム隊の違いまで聞き取れていない。全体的には地味。
   アップテンポもあくまで上品に、レッド・ガーランドは小粋なピアノを奏でる。
   ファンキーではあるものの、くつろぎがにじみ出る。
   しかしまだまだこの盤はニュアンスを秘めていそう。聞き込んだら印象変わるかも。

   ユセフ・ラティーフ(ts)って前に聴いたことあったかな?
   名前が引っかかり、ふっと買う。1994年の録音。
   2テナーにエレベとドラムのカルテットだそう。
99・Yusef Lateef & Ricky Ford:Tenors of Yusef Lateef & Ricky Ford:
   さまざまなテナー奏者へ捧げたフリージャズ。ライナーにラティーフの
   コメントで「肉体的、精神的、霊的な本質から生みだされる音楽である」と
   あるとこみると、おそらく全て即興だろう。
   プロデュースはラティーフ自身。勢い一発で斬りあうタイプとは違う。
   べったり地に足をつけ、じりじりとすり足で近づいては離れる。
   どんよりと重たいグルーヴはあるが、全体的に印象が暗め。
   どっぷり対峙すると、薄暗い音楽のムードにひきずられそう。
   微妙に呪術的な香りも漂う。

   ビリー・バング(vln)の名前に惹かれて買う。Abbey Rader(ds)との
   デュオらしい。99年にAbbey Raderの自主レーベルからリリース
   されたようだ。CD-R盤。
98・Abbey Rader & Billy Bang:Echoes:☆★
   作曲はほぼ全てバングの手による。手癖で綿々と流れるパターンが
   多いものの、(8)のようにメロディを影に仕込んだ作品もあり。
   即興性が強いため、幾度も繰り返し聴くのはしんどいが、
   聞き込むほどに味が出る部分も、確かにある。聴き手へ集中力を
   要求する作品だ。基本はフリー・ジャズ。レイダーのドラムは
   ビートを意識させず叩くため、メリハリが掴みづらくなったともいえる。

2006/6/2   通販CD到着~。

   Studio Weeの最新作。フェダインの未発表音源がリリースされた。
   1991年に吉祥寺のバウス・シアターで行われたジャズ・フェスに
   出演した音源を。"Rolling Down"は初CD化。タイトルも今回CD化にあたり
   題されたという。Wee特製ボーナスCDは、同日ライブ音源の"Around The World In 80 Days"。
   フェダインはまだ未発表ライブ音源がぎっしり、と噂聴いたことある。
   もっともっと評価されるべきバンドだ。さらに音源を発掘して欲しい。
97・Fadayien:Live 1991:☆☆☆★
   生々しいライブの状態が伝わる快盤。とにかくベースのうねりがすさまじい。
   3人ががっぷりぶつかる、ハードなジャズをどっさり。後年の殺気立った
   様子は控えめに、熱く燃える。ボートラはバイオリンを奏でる
   あっさりしたエンディングの一曲。

   買いそびれてたWee盤。今年の1月に発売された、片山広明4年ぶりソロ。
   ライブを続けてるから、活動が久しぶりって感じはない。
   With ストリングスならぬ、with 渋さ知らズで設定された。
   2005年10月19、20日に江古田バディで行われた、二日間の公開ライブ録音音源。
   CDなのに録音にはダンサーも、きっちり参加してるところがいかにも。
   ゲストに早川岳晴(b)と泉邦宏(as)が加わった。
   Wee特製ボーナスCDは、同じライブ音源の"ひこーき"。
96・片山広明:With 渋さ知らズ:☆☆☆☆
   かなり凝ったアレンジを聞かせる、ビッグバンド・ジャズに仕上げた。
   いたずらに片山を前面に出さず、アンサンブルは渋さ節。
   各種楽器のカウンターのフレーズも美味しく聴き応えあり、改めて渋さの凄腕振りを実感。
   ボートラの"ひこーき"では室彩と関根真理のボーカルが絡む、ドリーミィな
   演奏にうっとり。ごっつり低音を膨らませた、味わい深いアルバム。
   本編最後、渡部の語りがライブっぽさを良く伝えてる。貫禄の一枚。

2006年5月

2006/5/27  新譜見てたら、何枚か欲しくなっちゃった。

   アイズリー・ブラザーズの新譜が出た。ジャーメイン・デュプリなど
   複数のミュージシャンをたてて、デフ・ジャムよりリリース。
   アイズリーがデフ・ジャム・・・ラップのイメージあるので、
   なんだかとっても似合わない。
95・The Isley Brothers:Baby makin' music:☆★
   耳ざわりのいいソウル・アルバムになっているが、アイズリーである
   必然性がかなり希薄。ロナルドの"ララララ~♪"やアーニーの
   ギターは織り込んでも、単なる素材のひとつに聴こえてしまう。
   大物プロデューサーを複数立てて、丁寧なつくりなのは分かる。
   しかしもっと素朴なアルバムを聴きたくなる、贅沢なぼくがここにいる。
   プロデューサーの個性が出すぎた曲が多い。
   気に入ったのは(3)、(8)、(11)かな。全体的に小粒なイメージが強い。

   J・マスシスの発掘音源が出た。93年にCBGBで行ったライブで、
   12曲中10曲は未発表曲だそうな。残る二曲はカバーのようだ。
   レーナード・スキナードの"Every Mother's Son"と、ニルヴァーナの"On the run"。
   ライノからの発売。へなへなアコースティック・ライブかな。
   限定盤のクレジットに惹かれ、つい購入した。
94・J Mascis:Live at CBGB's:☆☆
   未発表「ライブ・テイク」だったんだね。しかしそれ、ライブ盤出すなら
   当たり前のことだろ。わざわざ宣伝文句になぜするのやら。
   ダイナソー時代の曲も含め、アコギ一本でかき鳴らしの弾き語り。
   轟音要素はかけらもないが、音楽としてきっちり成立する。
   惜しむらくはJのへなへなボイスだってことだが。
   でも、ダイナソーに彼のボーカルは欠かせないしなあ。
   初めて聴くなら、ダイナソーを薦める。あくまでファン向けの盤。

   ウータン一派とはちょっと違うようだが、プロデュースはゴーストフェイス。
   さらにカパドンナも参加してる。スタジャン着こんでスポーツマン・スタイルを
   (そのわりにギャングっぽさが残るが)気取った6人組ラッパーのようだ。
   2004年のリリース。こんなの、ぜんぜん知らなかった。
      ユニット名のセオドアはゴーストフェイス、周辺ユニットのキラー・ビーズに
   参加してたソロモン・チャイルズ、キラー・バンズらがメンバーらしい。
   その他メンバーのウィグスは、カパドンナのソロに参加してた人だとか。
93・Theodore Unit:718:☆☆
   ウータンの重たさを踏まえながら、重心は軽め。
   ライムは唾を吐くように言葉をぶつける。リズム感はまずまずで
   BGMで聴くには楽しい。曲ごとのごつっとしたパワーに欠け
   小粒感が若干あり。引用が大仰なのが、ちょっと好みと違う。
   スピード感を増せば、いいアルバムになると思う。

   スティーブ・コールマン&ファイブ・エレメンツが2001年にリリースした盤。
   80年代停滞してたジャズでは、元気ある存在だったイメージあり。
   東海岸変拍子ジャズだと思うが・・・さて、どんな感じだろう。
92・Steve Coleman and Five Elements:The ascention to light:
   ドライブ感が無く、なんとも退屈。内面世界へ埋没するような
   孤独さが充満した。テンポの速さにかかわらず。ライブで見たら
   印象は変わるかもしれない。しかしCDで聴く限りは、なんとも
   憂鬱な気持ちになってくる。そっけない音楽だ。

2006/5/20   メルツバウの作品を何作か入手した。

   現時点での最新作の一枚。4枚組ボックスで900枚限定。
   全てが2005年に自宅での新録音。しかも11月から12月に録音時期は
   集中している。PCとSynth Aを合成させたノイズ。
   100枚限定でTシャツなどを収めたボックスもあるが、通常盤を購入した。
91・Merzbow:Turmeric:☆☆☆☆
   アナログへの移行も示唆する音素材。強烈なハーシュは無論あるが、
   空虚さを強調するなど、新たなアプローチも詰まった。メルツバウのニヒリズム、
   もしくはストイシズムが仄見える。大作なため繰り返し聴くにはたっぷりと
   時間が必要。全体像をつかむには、まだ時間がかかる。

   "Turmeric"の派生作品か。別売り(ボックスは同梱)の"Fan-Disc"と
   呼称されたシングルCD。レトルト・パックのようにシュリンクされた
   梱包形態で、1曲が収録された。タイトルから判断すると"Turmeric"未収録曲。
90・Merzbow:Black Bone Part.5(single):☆☆☆★
   がっつり突き進むハーシュノイズの周辺を、新たなノイズがかぶさっていく。
   多層的なメルツバウ流サウンドを、シンプルにまとめた。16分一曲勝負。

   しばらく前から探してたライブ盤。ジュネーブで2005年に行った
   ライブを編集無しでリリースした。500枚限定。
89・Merzbow:Live in Geneva:☆☆☆★
   編集なしのDAT録音。細部がくっきりしたノイズだ。
   この時期のメルツバウにしては珍しく、重厚なシンセのパターンをイントロへじっくり置いた。
   じわじわとハーシュの波が押し寄せて移り変わってゆく。
   中盤には海鳥っぽい電子音で動物愛護の主張も入れる。
   この音が場面を変え、メリハリをつけた構成なライブ。だから骨太で豪腕さも引き立つ。
   ハーシュ一辺倒でなく、雄大なウネリが。ダーク・アンビエントとしても聴けそう。

   ATAKが主宰したコンピ盤。イラクへのアメリカによる武力行使に反発し、
   「60秒の抗議」をキーワードに、60組のミュージシャンが素材を寄せた企画らしい。
   メルツバウのほかには、kim cascone、ヤマンタカEYE、numb、高橋悠治、
   fenneszなどさまざまなノイジシャンが参加しているようだ。2003年発売。
88・V.A.:60 Sound Artists Protest The War:☆☆☆
   一分間の電子音楽が次々に現れては消えていく。めまぐるしく音像が
   変わるわりに、自己主張が強いノイズは少なく、気軽に聴ける。
   メロディなどは皆無に近い。強引なアジテーションに悩まされることもなく、
   ただ電子音の漂いに身を任せて聴こう。
   ときどき、個性強いノイズがぶわっと来て、緊張を強いられるのも又良し。

2006/5/14   ぶらっとCD屋に出かける。ちょっと腹立たしいことがあって
           不機嫌になってしまった。すみません。

   「卓越したサウンド・プロダクション」のポップにひかれて買った。
   本作が2ndに当たるそう。初めて聴く、男性ソウル・シンガー。
   ただしクレジット見ると、一曲ごとに違うプロデューサーを立ててるな。
87・Javier:Left of center:☆★
   i-podではあまりの平板さに駄盤と決め付けてたが、きちんとステレオで
   聴いたら、そこそこ和めるソウルだった。i-podみたいな媒体では、
   思い切り本盤の中で違和感ある最終曲のダンサブルな曲を。
   ステレオでは静かなバラードがはまる。(12)とか。
   打ち込みリズムにアコギ、さらにキーボード。そのくらいのシンプルな
   アレンジのほうが清清しい。ボーカルに太さがないせいだろう。
   メロディが圧倒的に弱いのが難。BGMとしてさらっと流してしまう。
   強烈な個性を出せるようになったら、べろりと一皮向けそうな才能だ。
 
   オージェイズ7枚目のアルバムで、おそらく1979年にリリースされた。
   プロデュースはギャンブル&ハフ。作曲も全て。時代的にフィリー・ソウルは
   ディスコに押され、低迷してた気もする。さて、どんな盤だろう。
   1993年にCD化された米盤を購入。
86・The O'jays:Messege in the masic:☆☆
   ディスコっぽい軽いノリがいまいち。(5)など、バラードは
   しっとり聞かせるんだが。
   全体的にトゥー・マッチな印象。
   逆に(1)のお洒落っぷり満載なイントロは、妙に惹かれた。
   ディスコだが、軽快な(6)もいいな。ミドルのいい曲があればなあ。

   CDで買いなおし・・・たような気もするが。
   ヴァン・ダイク・パークスの1st。めくるめくインスト・・・だったように思う。
   もうずいぶん、この盤を聴いていない。1968年のリリース。
85・Van Dyke Parks:Song cycle:☆☆★
   ストリングスでふわっとサイケなポップスを繰り広げる。
   ドリーミーなんだが、妙に浮遊感あるのはアレンジなのかミックスなのか。
   確かにエコーが強めだけど、この不安定感はサウンドそのものに
   ありそうだ。コード進行なのかなあ。
   楽典の知識が欲しい。まだまだぼくは本盤を聴きこなせてないようだ。

2006/5/6   ネット通販で購入。

   ザッパの復刻シリーズの第4弾。"プチ・ワズー"と仮称される
   "グランド・ワズー"前、10人編成でツアーした音源から
   ザッパが編集をほどこしたという1枚もの。
   詳しくはこちらを参照ください(すごいよ、このページ)。
84・Frank Zappa:Imaginary diseases:☆☆☆★
   ホーン隊中心のアンサンブルを楽しめる貴重な音源。だが、それ以上でないのも確か。
   ザッパの編集による凄みはあっても、アウトテイクだ。
   どこか、物足りない。記録の貴重さ、音源の楽しさは間違いない。
   しかしザッパがなぜ、お蔵入りさせたかを考えてしまった。
   ザッパは本ツアーで、アンサンブルの手管を披露したかったのか。吼えるギターソロの
   合間を、分厚いホーンが埋め尽くす。かっこいいが、どこか物足りぬ。

2006/5/4   塔でダブルポイントだったため、ついあれこれコンピを買っちゃった。

   意外なリリースだ。吉田達也が主導権を取ったバンド形式の音源。
   吉田達也、勝井祐二、ナスノミツルを基本に、二人のギタリストが
   加わる格好となる。クレジットによれば、前半が、鬼怒無月のギターで
   2004/6/16にマン2で是巨人+勝井祐二セッションの音源より抜粋。
   後半は山本精一をギターに向かえ、2004/3/26にFABで高円寺百景のライブ時に
   行われたセッションから収録している。
   両方ともライブへ行きそびれたため、当日演奏からどのように編集もしくは
   ダビングをしているかは不明だが・・・。
   プロデュース、ミックス、ジャケットも全て吉田の作品。磨崖仏だけでなく
   別レーベルからもこういうライブ音源がリリースされるのは歓迎だ。
83・ザ・ワールド・ヘリテッジ:北回帰線:☆☆☆
   プログレでポップな展開。おそらくほとんどが即興と思うが
   垂れ流しとは一味違う。鬼怒のほうがメロディアス、かな。若干だけ。
   今ひとつヌケが悪い音なのが残念。凄腕ぞろいの貴重なセッションのひととき。
   あえてリーダーを置かなかったぶん、あいまいな音像気味か。

   最新のソウルが聴きたくて、プリンスっぽいジャケに惹かれて買う。
   基本はマルチ・プレイヤーらしい。予備知識なし。
82・Van Hunt:On the jungle floor:☆☆★
   プリンスに影響を受けた密室性ソウル。好みだが、ちょっと迫力が薄い。
   メロディもまずまずだが、毒やスリルや煮詰め方が足りない。
   ボーカルも弱いしな・・・アップよりミドル/バラードに聴ける曲が多い。
   一曲選ぶなら、ニッカ・コスタがコーラスで入った"Mran Sleep"かなあ。

   発売は2004年。中西部っぽいジャケがなんとなくバラード上手そうでね。
   黒人ソロシンガーで、インディの"Behind Gates"レーベルからの発売。
   初めて聴く人だ。どんなソウルだろう。
81・O.Cooper:O.Cooper:☆★
   大味なメロディと、打ち込み中心の空虚なアレンジが空虚に響く。
   線の細いアイズリー風のボーカルでは、アレンジにあわないと思う。
   野太くシャウトしたら存在感出るのにな。
   バラードとミドルにぐっと来ない。1曲選ぶなら、最後のアップ(12)かな。

   最新のアフリカ音楽を聴きたくて、ジャケ買いする。予備知識なし。
   コラ2本にドラム&ベースのバンドらしい。アフリカンなロックか?
80・Ba Cissoko:Electric griot land:
   ポップス寄りの軽い印象が強い。
   ヨーロッパの録音かな。アフリカンな香りもリズムの強度も
   むろんある。しかしどこか、弱い。耳を引くキャッチーなメロディを
   うたってないせい?サウンドとしては悪くない。ただし個性が
   薄く聴こえてしまったのも、正直なところ。
   コラはアンサンブルの中へ自然に溶け込ませてる。

   実は今まで聴いたことなかった。編集を積極的に取り入れた最初の
   アルバムって印象ある。たしかボックスも出てたはずだが、これは
   オリジナル・シークエンス。2002年のリイシュー盤を買った。
79・Miles Davis:In a silent way:☆☆☆★
   あちこち編集を施してるそうだが、滑らかに音楽が進む。
   それでいて、引っかかり多し。35年以上たった現在でも新鮮に響く。
   当時のマイルスの頭で鳴ってた音の斬新さに舌を巻いた。
   ジャズでありながらソロ回しの形式から脱却し、フュージョン
   (当時、こんな言葉ないが)の構築性からも自由だ。
   酩酊感を伴い、音はふわふわと漂う。そして個々の音はくっきり鮮やか。
   10回や20回聴いたくらいじゃ、この盤を味わえない。
   繰り返し聴くほどに、発見が増す音楽だ。すごい。

   2枚組の廉価版ファンク・コンピ。70年代のちょっとマイナーなソウルを
   集めたようだ。2005年のリイシューで、イギリスのレーベルから発売かな?
78・V.A.:Black Music Explosion:
   どこがファンクなんだろう・・・ディスコ・ソウルを集めた盤。
   今聴くと、どうにも古臭くて辛い。洗練された曲はわざとらしいし。
   アップばかりでスローで聴かせはしないのがまた辛い。
   キャッチーな曲が多いからBGMにはいいかな。たまに挿入される
   いなたい曲のほうが、じっくり聴ける。
   バンド名から期待させても、どれもディスコなんだよね。ううむ。

   廉価版3枚組ノーザン・ソウルのコンピ。DJのKev Robertsが選曲した。
   解説無しで30曲をつっこんだが、むしろ2枚組に凝縮できそうな気もする。
   収録されたのは、ぼくの知識不足で知らないミュージシャンばかり。
77・V.A.:Northern Soul:☆☆
   ノーザンと一口に言っても、幅広い選曲で入ってる。
   洗練されたものから荒っぽいものまで。盤起こしにしては
   テープ・ピッチがめろめろなものまであり、質は荒い。
   スクラッチ・ノイズもあるし、廉価盤ならではの音質だ
   知らないミュージシャンが多いが、もしレア盤が入ってるなら
   お買い得だが・・・発表年度、オリジナル・レーベルなどのクレジットも皆無。
   BGMに流して聴いて、興味を惹いたら盤を探しに・・・って
   ルートの道しるべってとこか。それにしちゃ音質がいまいちなので、
   深く気にせず楽しむ人向け。
   値段に対するボリュームは多いので、お得感はある。

2006年4月

2006/4/24   最近買ったCDをまとめて書きます。すっかり更新しそびれてた。

   祝復刻。梅津和時の最初期音源に当たる・・・はず。たぶん。
   当時、彼が経営を任されていたという、八王子の"アローン"で
   録音されたフリージャズ。ジャケットも、多分当時のデザインをそのまま復刻。
   当時を感じる広告ぎっしりな裏ジャケが楽しい。1977年リリース。
   共演は原田依幸(p)、菊池隆(ds)、森順治(sax)。ベースレスなんだ。
   今まで活字でしか聴けなかった音がをやっと聴ける。嬉しいな。
76・集団疎開:その前夜:☆☆☆★
   熱気がぎゅっと詰まったフリージャズ。基本は勢いよい疾走。
   頭でっかちさは無く、ユーモラスな肉体感覚がにじみ出る。
   最終曲で甘いバラードを収めたところが、バランス感覚に
   溢れた梅津らしい。"スロー・バラード"に通じる、軋んだ
   メロディが本当にいとおしい。梅津は若いころからあのロマンティシズムを
   確立してたんだ。一方で、アップならば1曲目の長尺かな。
   隙間を厭うかのように、てんでにばら撒き収斂する。
   盤起こしだろうか。少々ひしゃげ気味で低音が薄い音質が残念。
   当時のライブ音源は残ってないのかな・・・もっと聴いてみたい。
   東京のフリージャズの原型を味わえる傑作。

   TZADIKの新譜。大友良英+ビル・ラズウェル+吉田達也のセッション盤。
   Soupの別バージョンと考えればいいのかな。
   ニュージャージーで昨年に録音された。プロデュースはビル・ラズウェル。
   マスタリングなどに吉田がかかわってはいない。
75・大友良英/ビル・ラズウェル/吉田達也:episome:☆★
   3人の即興セッションだと思うが、写真が載ってるのは大友だけ。
   プロデュースはビル・ラズウェル。吉田はすっかりバック・ミュージシャン
   扱いだ。せっかくならフラットな状態でクレジットすればいいのに。
   ビルのモコモコしたベースが、音像に中途半端さを
   与えてしまった。ライブで聴いたら凄みあるのかもしれないが、
   CDで聴くには少々単調さが否めない。
   ベストは(4)かなあ。3人の才能だけで作り上げた音楽って印象がある。

   Masadaの別ユニット。弦楽三重奏で、ウッドベースをグレッグ・コーエンが
   つとめる。ジョン・ゾーンは2004年に300を越える新曲をMasadaのために書き、
   今後それを発表していくそう。プロジェクト名は"The book of angels"。
   これはその第2弾にあたる。すさまじいペースだな・・・。
74・Masada string trio:Azazel:☆☆☆★
   弦の厳しい響きが、マサダの曲調に似合った。ウッドベース調に
   ひたすら指弾きするグレッグ・コーエンの力強さが、むしろ
   ノリの強靭さを産んだのかもしれない。
   しっかりしたアンサンブルのアレンジをベースに、迫力ある
   アドリブもいっぱい。最初はどれも一緒に聴こえたが
   じっくり聴くと、個性を活かしたアレンジになっていた。

   板橋文夫が片山広明らとスタジオで録音した一枚。当時の代表曲を
   集めた盤だろうか。1995年のリリース。アルファベットのクレジット
   ばっかリだな・・・日本語でいいじゃない、と思う。時代かな。
73・板橋文夫:The mix dynamite 游:☆☆☆
   スタジオ録音ゆえの音の硬さはあるが、そのぶん隅々まで音が届く。
   竹澤悦子(箏、十七弦、三絃)が加わっても、とっぴなアンサンブルにならず
   ごく自然体で暖かい板橋節を聴かせた。片山広明のブロウがきめ細かな鍵盤と対比される。
   ピアノ・ソロでメリハリつけ、動から情へ。かっちりまとまったアルバム。

   東京で3月に行われたイーノの展覧会のみで発売されたCD。
   1000枚限定、中身は全て未発表曲だそう。
72・Brian Eno:77 million:☆★
   音数少ない、聴きやすいポップなテクノを連発する。リズムもくっきり
   アンビエントじゃないんだ。BGMに最適の軽快な電子音楽を聴き続け、
   ラストでみっちりと長尺のアンビエントで締める。うーん、うまい。
   1000枚限定で埋もれさすには惜しいCD。別に埋もれてないかもしれんが。

   コンピ盤で一曲聴いて、気になって買った。カーティス・メイフィールドによる
   "カートム"の傍系レーベル、"ジェミゴ"から1975年にリリースされた。
   シカゴ・ソウルでいいのかな。CDはボートラ一曲入り。
71・The Notations:The Notations:☆☆☆★
   プロダクションとアレンジのセンスかな・・・。曲は悪くない。
   ボーカルも上手い。ただ、アレンジがちょっと洗練されすぎ。
   上滑りするような噛みあわなさが、傷になっている。
   今でも魅力的なアップや、いかしたミドルも聞きもの。
   ドラムとベースが弱いのも難か。
   あえてけちをつけさせてもらったのも、この盤が素晴らしいから。
   惜しいよなあ。いいソウルだ。ソウル好きなら、ややこしいこと言わずに
   十二分に楽しめる。もっと評価されておかしくない。

   1958年に録音されたブルー・ノート盤。CDには一曲ボートラ入り。
   ブッカー・リトルのトランペットを中心に、2種類のセッションから
   収録された。一つがクインテット、もう一つがオクテット。
   比較的編成の大きなアンサンブルだ。"&マックス・ローチ"とあるが、
   かれが参加してるのはクインテットのセッションのみ。
70・Booker Little:Booker Little 4 & Max Roach:
   破綻が無くきれいにまとまっていて、今ひとつ物足りない。
   むしろボートラ2曲の多めな編成のほうが、ソロ回しに緊張感ある。
   流れるようなアンサンブルは、BGMに気持ちよくはあるが・・・。
   ボートラでのスムーズなフランク・ストロゼイアのアルトがなかなか聴きもの。

   チャールズ・トリヴァーはきちんと聴いたことがない。1975年に
   スとラタ・イーストからリリースされた。「超高テンションジャズ」の
   帯びに惹かれて買った。どんなジャズだろう。かなり大編成っぽい。
69・Charles Tolliver:Impact:☆☆
   凛と流麗なホーンのアンサンブルとの対比を楽しむ盤か。
   アレンジがしゃっきりしており、特に金管のハイトーンが気持ちいい。
   即興性のスリルよりは勢い一発で駆け抜ける爽快さが狙いかな。
   勇ましく刻み付けるビート感が魅力になっている。
   まとまりすぎて物足りなさも残るが。BGMとするには自己主張強いし。

2005/4/1   Beatleg誌最新号を買うついでに、CDを買う。
          CDのほうが買った枚数多いが、気にしない方向で。

   灰野敬二と吉田達也の第二弾コラボ盤。TZADIKからリリースされた。
   昨年の12月にニュージャージー州でのスタジオ録音。
   同時期に灰野も吉田もニューヨークのStoneでゾーン企画の
  「日本人特集」週間ライブを行ってた。そのついでに録音したんだろう。
   しかしわざわざNJまでいくとは。NYにスタジオなかったのかな。
68・灰野敬二/吉田達也:New Rap:☆☆
   前作デュオが様々な楽器を使ったバリエーション豊かな傑作だった
   だけに、今回のエレキギターとドラムの対話のみは物足りない。
   贅沢な話だが。調和やストーリー性よりも、パワー全開で
   渡り合う印象が強い。音質も若干こもらせ、混沌さを強調した。
   デュオを聴くには前作を薦めるが、こういうのもいいかな。
   ループなども使ってるが、いまいち単調なので星は少なめです。

   長崎俊一が監督した『闇打つ心臓』のサントラ盤。大友良英が音楽を担当し、
   パンフ付属の形でCDがリリースされた。映画館と一部タワレコでのみ
   販売の限定盤だそう。ミュージシャンは江藤直子(org)西村雄介(b)
   植村昌弘(ds),カヒミ・カリィ(vo)、原みどり(vo)ら。デモ・テイクも入っているようだ。
67・OST:『闇打つ心臓』:

   リーダーはミドリトモヒデ(sax)でいいのかな?ライブを聴いてみたい
   バンドの一つ。これが1stフルアルバムにあたる。日本の次世代ジャズを
   期待して買った。他のメンバーは塚本真一(key),菊地雅晃(b),イトケン(ds)。
66・飛頭:Crumbling steeple:☆☆☆★
   浮遊するリズムがとことん心地よい一枚。低音もふくよかでいい。
   個々のフレーズが聴き応えあるだけでなく、全体像のイメージが強固。
   メロディやアドリブもきちんとあるが、それでもたゆたう不安定さが
   第一に来る。つかみ所なく、それでいて耳の奥へスムーズに
   滑り込み、快適に脳をくすぐる音楽。肉体感覚はきっちりあるが
   汗の無さこそが、このバンドの魅力になっている。ライブ見たいな。
   ベースのしぶといフレーズが、特に聴きもの。

   ソウルを何枚か。出身はNYかな。アコギを抱えた男性ミュージシャン。
   ブルーズぽいのかな。アポロ劇場で5回優勝経験あり、とジャケにシールが
   貼ってあった。2004年のリリース。
65・Lyle Jennings:Lyfe 268-192:☆☆★
   打ち込みもある静か目のソウル。歌の線も細い。ブルーズさは希薄だった。
   メロディがシンプルでヒップホップ寄り。あまり強烈な個性は
   感じないものの、耳ざわりは良い。ストリート感覚が
   あるため、淡々と甘ったるく流れないため。
   もっとキャリアを積んだら、面白くなるかも。

   帽子を目深にかぶった男性が映る。70年代風ソウルだといいなあ。
   西海岸で録音されたようだ。2005年リリース。
64・Anthony Hamilton:Ain't nobody worryin':☆☆☆★
   打ち込みをベースに、肩の力を抜き飄々と歌を聴かせる。
   薄そうなアレンジなのに音圧が太く、ボリューム大きく聴いてると心地よい。
   ファルセットも取り入れた、カーティス系の歌唱スタイル。
   微妙なファンクネスもうっすら透けて見え、なかなか楽しい。
   惜しむらくは曲調が軽いことか。今ひとつ、求心力に欠ける。
   しかし聴き重ねて愛着でたら、じわっと魅力が染み出しそう。するめソウルの予感。

   英の独立レーベル、サンクチュアリから2004年に発売されたコンピ。
   アフリカ音楽を集めた盤らしい。えらく安かった。
   18曲入りなのに。サンプラーの位置づけなのかな?
   不勉強にして知らないミュージシャンばかり。
63・V.A.:The music of Africa:
   真ん中にはアラブ風味のインスト(6),(7)やビートある即興も
   聴ける。しかし前後に収録された、能天気なアフリカン・ポップにくじけて、
   一枚を聴きとおすのがつらい。全般としてはいまいちな印象が残る。

2006年3月

2006/3/27   日記とリンクしてるな。アマゾンに注文してた菊地成孔の関連盤が到着した。

   2006年発売。映画「雨の町」のエンディング・テーマ曲。
   エクストラトラックで、映画の予告編ビデオクリップつき。
   1曲だけの収録。インストなのかな?
62・菊地成孔:愛の感染(single):
☆★
   打ち込みサウンドなため、肝心のロマンティックさが
   硬質になってしまったのが否めない。映画そのもののムードに合わせたのかも。
   無機質で軋むようなメロディが響く。テーマの旋律は
   せめてテナーで聴きたかったが、これもイメージ優先のアレンジかな。
   映画の予告編はまあまあ。映画を見たくなるには、ちょっと編集がもさっとしてました。

   2005年発売。映画「ソラノ」のサウンドトラック。菊地成孔がほとんどの
   モチーフ作曲を行い、その他はshingo2、MICHIHARU SHIMODAが曲提供した。
61・OST:ソラノ:☆★
   ほとんどの曲で菊地成孔が作曲クレジットを取り、ライナーも彼が書いている。
   その上で、彼が音楽監督として音楽を挿入する場面まで指揮できたのだろうか。
   他のミュージシャンの作品もいくつか含み、彼がライナーで主張する
   意図をどこまで強調できたかさだかではない。
   どこか偏執的な彼の作品を集めて聞いたほうが、より個性が増すかも。
   というのは、他の作品はかなりアッパーだったりチルアウトできたり。
   緊張を僅かに強いる菊地の音楽とは、明らかにベクトルが違うから。
   揺らぎのあるテクノは、やせ細った菊地のジャズと異質だ。
   いいとか悪いとかじゃない。映画のサントラとしての出来も、
   映画を未聴なぼくには分からない。
   少なくともアルバム全体で聴いたとき、どこか中庸のあいまいさを
   残してしまったのでは、と思う。

2006/3/25   日本ジャズのセールをユニオンでやってて、あさってしまった。

   富樫雅彦率いる凄腕ミュージシャンのカルテット。1994年末にピットインで
   行われたライブを収録した。オリジナル曲は控え、スタンダードが中心。
   1995年にVenusなるレーベルから発売。不勉強で知らないが、インディーズだろうか。
60・富樫雅彦&J.J.Sprits:Explosions:☆☆☆☆
   抜群に活き活きした真っ向勝負のジャズ。バスドラが無いせいか
   浮遊感が常に漂い、流麗なピアノと饒舌なサックスを奔放に泳がせる。
   ベースがいなければ、このグルーヴは出ないだろう。
   はたき込むきめ細かなシンバル・ワークが本当に美しい。
   アドリブばっちり、極上クールなひととき。ジャズを聴いててよかった。

   1976年にアナログ二枚組でリリースされた、パーカッションの
   多重録音によるソロ・アルバム。おそらく00年に再発されたCDで購入。
59・富樫雅彦:Ring:☆☆
   メロディ打楽器を多用しているが、旋律ではなくループのような
   アプローチが目立つ。力任せに押さず、ほのぼのと穏やかに。
   打楽器が軽やかに弾む。ふわんと奥行きあるタムの響きが心地よい。
   じっくり味わうべき音楽。BGMで聴いてると、するすると
   リズムが耳をくすぐり、いつの間にか通り過ぎてしまう。

   片山広明、林栄一らが組んでいたバンド、De-ga-show!のたぶん1st。
   1994年にオーマガトキからリリース。片山、林の双頭名義になっている。
58・Hayashi-Katayama:De-Ga-Show!:☆☆☆
   ごっつり骨太なジャズ。4管と2ギターの厚みがはまると迫力。
   CDだと埋もれてわかんなくなる場面もあるが・・・。
   林栄一の3曲が本盤のカラーを決めた。スピードと猥雑さが同居する。
   片山広明はリーダーのはずだが、しごく控えめ。
   メンバーの自由に任せる鷹揚さはさすが。
   一旦吹いたら、片山は主導権を持っていくが。
   最後の"花"は終わりが甘くなってしまうため、個人的にはいまいち。
   オリジナルで大鉈を振るうように決めて欲しかった。

   1992年、ヤヒロトモヒロ(per)とのデュオ・ライブを収録。
   板橋の自主レーベルからのリリース第一弾かな?
57・板橋文夫:自画像 作品I:☆★
   音が籠り気味で記録的な意味合いが強い作品。がんっとボリュームを
   上げたら迫力は増すが。全方位に広がるデュオではなく、
   こじんまりと内省的な印象あり。パーカッションは刻まず
   ランダムにビートを弾ませ、ピアノが震える。
   最後の曲(6)がもっとも胸に響いた。
   ちなみにときおり、「すーっ、すーっ」って呼吸する音が耳について気になる。幻聴だろうか。

   2005年にTZADIKから発売。巻上公一の完全ソロで、録音も自ら行った。
   オーバーダブ、編集無しでひたすら声のパフォーマンスが続く強力な盤。声の万華鏡が聴ける。
56・巻上公一:KOEDARAKE:☆☆☆
   たぶん、全て即興。呼吸のノイズすらほとんど無いのがすごい。
   様々な声や言葉の並びだけで聴かせる、アイディアに満ちたスリルにたまげた。
   オーバーダブも編集もなしのシンプルな編成。
   一曲くらい、多重録音で分厚い声の構築も聴きたかった。
   その方向だと、巻上の志向とは異なるのかな。

   1992年にリリース。バーニー・ウォレルやブーツィ・コリンズが全面参加し、
   ビル・ラズウェルがベースとプロデュースで噛んだ盤。6人編成で
   エレクトロ・ファンクをやってるのかな?
   当時、息を吹き返したPファンク人脈だろうか。菊地以外は全てアメリカ人のようだ。
55・菊地雅章:Dreamachine:☆★
   安手のテクノ・ファンクな趣が消せない。どっぷりアメリカ勢の
   無個性が出てしまい、平板な一枚になった。ライブなら分からないが、
   少なくとも本盤では単調だ。"Straylight"のように、菊地が
   一人で演奏する曲はまだ楽しめる。しかしシンセの響きが
   どうにももどかしい。時代に溶け込みすぎた一枚で、今聴くと
   古びてしまった箇所が目に付く。
   ブーツィやバーニー・ウォレルの名前に惹かれたが、
   はっきり行って期待はずれ。

   1982年に発売。"ススト"に連なる音楽性の盤、とイメージあり。
   聴くのは今回が初めて。さて、どんな音楽かな。
54・菊地雅章:One way traveller:☆☆☆☆
   フュージョンってこんなにかっこよかったのか。聴いてみないとな。
   これまでのジャズ風味をかなぐり捨てて、多重アンサンブルで
   多層的なビートをたたき出すさまがかっこいい。
   テクノ風味が漂うのは時代か。ジャズから突き抜けたダンス・ビートを
   強調した一枚。傑作。最後はシンセが静かに鳴って幕を下ろす。

   1979年の録音。ピアノカルテット編成で、クール・ジャズをやってるのかな?
   曲を見ると、リー・コニッツやトリスターノの音源を多数取り上げた。
53・高柳昌行:クール・ジョジョ:☆☆☆
   ころころと無機質にタイトにクールにジャズが転がる。違和感なく
   かっちりとアンサンブルが成立した。ギターとオルガンがユニゾンで
   駈けていく響きが快感だ。井野+山崎のリズム隊で
   こういうジャズが聴けるってのは意外だった。
   JOJOのギターは訥々さを残し、着実に語りかける。
   ピアノははじめて聴いたが、堅い響きでしっかり鳴った。
   クール・ジャズに詳しくなく、その論点では語れない。
   ギターを味わうには物足りないかな。
   アンサンブルのひとつとして埋もれてる。
   個性や崩しに走らず、がっぷりクール・ジャズに向かい合った。

   本職は鳶じゃなかったっけ?ピアニストの原田が、石渡明広(g)、
   アンドリュー・シリル(ds)と1988年にピットインで行ったライブ音源。
   アケタ・レーベルからリリースされた。
52・原田依幸:イヒャン:☆☆★
   せめぎあうフリージャズ。ごつっと角突き合い、対峙する。
   ただただ集中しては弛緩し、また迫り来るが、純粋に楽しめる。
   あえて中心を置かず原田とアンドリュー・シリルがバトルする。
   そこを石渡のギターとベースががっしり支える。
   特にベースが聴きもの。ずっしり弾む。
   ビート感と乱打を行き来するシリルのドラムを
   どこ吹く風と、原田は強烈に鍵盤で舞う。聴くのに集中力が必要。
   だからこそのフリージャズだが。

   佐藤允彦のユニット(でいいのかな?)ランドゥーガの1990年
   ライブ録音を収録。9人編成に特別ゲストでウエイン・ショーターを
   迎えた一枚。梅津和時(sax)、峰厚介(sax)、岡沢章(b)らが参加。
51・佐藤允彦:ランドゥーガ~セレクト・ライブ・アンダー・ザ・スカイ'90:☆☆☆★
   込み入ったアレンジでダンサブルに盛り上がる。ファンクの
   要素はほとんどなく、あくまでジャズやフュージョンとしてのダンスな
   ところが、今の耳で聴くとユニークだ。DCPRG好きに聞かせてみたいね。
   さまざまなワールド・ミュージックの要素をごちゃ混ぜに
   かなり複雑なアレンジがスリリングだ。
   佐藤は指揮もしてたのかなあ。観客の歓声飛ばす気分が良く分かる、
   構築されたジャズ。でかい会場で爽快に聴きたい。
   今ひとつ音が遠いが、細かく聴くほど味わいを増す。

2006/3/21   しばらく前の、ネット注文分が届いた。

   モータウンの良心(と勝手に思ってる)、コーラスグループの
   フォー・トップス。これはモータウン・リイシュー界の良心(と勝手に言っている)
   ヒップ・オー・レーベルからの4枚組ボックス。2001年リリース。
   1956~1992年まで、シングル・テイクを中心に編んだ。
   ディスコグラフィーやクレジットもきっちりしてる。リイシュー、かくあるべし。
   さあ、じっくり聴くぞぅ。
50・The Four Tops:Fourever:

2006/3/18   新譜のついでに目に付いた盤を購入。

   プリンスの新譜が出た。店内のBGMで聞いた感じだと、
   なんだかスカスカな音使いのファンクをやってるようだ。
   てっきり3/21の発売かと思ってた。バンドのメンバーによる
   バッキングを入れながらも、基本は多重録音みたい。
   共演してるTamarのソロアルバム告知の小紙片も。5/1発売だとさ。
   この派手な家の写真は、本当の自宅写真だろうか。
49・Prince:3121:☆☆☆☆★
   ロック寄りの曲調が多く、親しみもてる。アップテンポの曲ないのが
   物足りない。今のプリンスは、その辺に興味ないのかな。
   アレンジは細かく手を入れられ、隅々に目配り効いた。
   ちょっと冗長なところもあるが、良く出来ている。
   聴くほどに味が染み出る傑作。
   とにかくメロディがいいよ。スッと耳に入ってきた。
 
   またもや移籍。慌しいな。今度はポリドールから、ヴァン・モリスンの新譜。
   カントリーとジャズ中心のカバー集で、数曲のオリジナル入り。
   このオヤジもほんとコンスタントにリリースする。
48・Van Morrison:Pay the devil:☆★
   ヴァンの愛情は伝わる。しかし基本的な素養や知識が蓄積に無いので、
   本作をどっぷり楽しめない。ある意味、聞き手を選ぶ。
   きっちりとこの手の音楽に知識あるひとならば、楽しめるだろう。
   耳ざわりはいいのでBGMで聴くにはかまわない。
   しかしイギリス人の愛情こめた本作を聴く前にアメリカ人のオリジナルを
   じっくり聴くべき・・・って気もした。粘っこいヴァン節は健在だ。

   板橋文夫が1999年に自主レーベルMix Dynamiteからリリースした2枚組。
   1998/9/13に名古屋のラブリーで行われたカルテット編成を収録した。
   一部編集してあるそう。演奏時間を各セット、オーバーしたそうで・・・。
   メンバーは板橋(p)、太田恵資(vln)、井野信義(b)、小山彰太(ds)。
47・板橋文夫:005:☆☆☆★
   ちょっと音質が内にこもる感じで残念。
   演奏はスピーディで、板橋流のロマンティシズムが溢れる。
   2枚組の長尺でインプロが炸裂する。曲もバラエティに富んで飽きない。
   今よりも若干タッチが上品かな。アジア大陸への方向性が仄見える。
   太田の中国的なアプローチも当時ならではか。
   凄腕4人によるアンサンブルをじっくり味わえる傑作。

   忌野清志郎が昨年出したソロアルバム。聴きそびれてました。
   名作"King"と同じメンバーで、清志郎のプライベート・スタジオにて
   録音された。エンジニアやドラムも清志郎が担当してる。
46・忌野清志郎:God:☆☆☆★
   大傑作な前作"King"と同様に自前スタジオで自ら気のあうメンバーと
   録音した丁寧な一枚。ちょっとこもり気味でアナログな音質はわざとだろうか。
   パーカッションの音がときどき、すごくクリアに聴こえるあたり、ミックスや
   マスタリングは気を使ってる。
   独特な清志郎の節回しは健在。ほんのり甘い、独特なブルージーさを溢れさせす曲が詰まった。
   バンド・サウンドだがパーソナルな雰囲気が強い。くっきりと清志郎の個性を
   前面へ出したためか。"King"でのエンターテイメント性は押さえ、
   内省的な作品をまとめた印象有り。音の質感が揃ってるせいもある。
   そのぶん開放さが抑えられ、聴きこむ中でしずしずと音世界へ馴染んだ。

   アイズレー・ブラザーズのロナルド・アイズリーが、バカラックと組んで
   彼の曲を歌った一枚。2003年のリリース。
45・Ronald Isley & Bart Bacharach:Isley meets Bacharach:☆★
   ピアノはバカラック本人。コンボ形式が基本ながら
   ストリングどっさりが想像される、甘いアレンジがほどこされた。
   ロナルド・アイズリーは細く甘く歌うが、彼である必然性が
   あまり感じられない。するっと聞き流すイージー・リスニングだ。
   ただし、とても聴き心地の良い、イージー・リスニング。
   寛いで聴くには良い音楽。コラボが産みだすスリルを求めたら間違い。
   "Love's (still)the anser"はその中でもエッジが立ったミドル・テンポの
   曲で良かった。"Raindrops keep falling on my head"は有名曲なためか
   むちゃむちゃにメロディラインを崩してる。しかしロナルドの
   個性が出るほどじゃないんだよな・・・中途半端で悔しい。

   1978年にヴァージニアで録音された5人組ソウル・グループ盤。
   詳細知識無しです。元はワシントンで、モーションズとして結成、
   同名ガール・グループの出現で名前を代えたとか。
   けっこうなレア盤らしい。2000年に英EXPANSIONが再発したCDを購入。
44・Positve Change:Positve Change:☆☆☆☆
   今まで再発されなかったのが不思議。演奏がちとルーズで
   いなたい感じ漂うが、曲はどれも味わい深い。スイート・ソウル好きは
   ぜひ聴いてほしい一枚。特に(9)が名曲。アップはディスコの
   影響受けて、今聴くと野暮ったいが、ミドルやスローは今でも
   魅力を失ってない。きっちりプロデュースして録音してたら
   大ヒットしてたんじゃないかな。隠れた傑作ソウルだ。

2006/3/8   翠川敬基がらみのレア盤を通販で入手。

   たぶん1998年のリリース。藤川義明(as)、翠川敬基(vc)、豊住芳三郎(ds)による
   フリージャズ・ユニット、FMTのスタジオ盤。
   ALAGOASレーベルからのリリース。藤川の個人レーベルかな?
43・FMT:Tango:☆☆☆★
   リズムもフレーズもフリーなジャズ。サックスが分かりやすく
   メロディを提示することもあるが、ほとんどはてんでに音楽が
   発展する。それでいて、親しみやすく歌心あり。
   根本に流れるのは優しい温かさ。もっと激しいジャズかと
   思ってたから、意外だった。
   音質は鋭く軽い。低音要素をもっと聴かせたら、凄みが出たかも。
   エンディングはかなりあっけない。余韻を否定するかのように。

   野村喜和夫(朗読)、翠川敬基(vc)、大友良英(tt)によるコラボ盤。
   1996年のリリース。完全一発録音ではなく、すくなくとも朗読は
   オーバーダブをされてるようだ。それともディレイ処理かな?
   "Atelier El Sur"レーベルからのリリース。
42・ututu:独歩住居跡の方へ:☆☆
   セッションというより朗読を中心においた音楽作品な面持ち。
   耳に残る瞬間や美しいひとときはいくつもあるが、もっと自由に
   展開してくれたほうが、ぼくは好み。
   ストイックな詩の世界へ、音楽が寄り添う。
   ノイズと美学と混沌がやたらきれいな音世界で成立した。

2006/3/4   久々にCDを購入。

   元ゾンビーズの二人が、デュオで活動の一環として(?)
   ゾンビーズ名義のライブ盤を出した。最近の録音のはず。
   選曲はアージェントやソロも含め俯瞰した。
   曲によってストリング・カルテットが入ってる模様。
41・Colin Blunstone & Rod Argent:The Zombies Live at the Bloomsbury Teatre,Lodon:☆★
   ファン向け。演奏はトロい場面もあるし、歌も弱い所あり。
   日本公演を嬉々として聴きにいくようなファンには、逆にヒット曲
   メドレーで楽しいんだが。ちょっとのっぺりしてるけれど、
   音もそれなりにくっきりしてるし。MCはカットしてるようだ。
   ゾンビーズやコリンを未聴な人には薦めません。まず、オリジナル・アルバムをぜひ。

   著作権切れの音源を集めたか、10枚組で1460円と破格の値段設定。
   ビッグバンド・ディキシーだけじゃなく、スコット・ジョプリンなど
   ラグタイムのコンボも入ってるようだ。解説などは何も無し。
   まあ、この値段設定だしなあ。
40・V.A.:Dixieland Jazz~This was the Jazz age:

   上記と同様、廉価版の10枚組セット。解説ないのが痛い。
   8枚組でいいから、解説つけて欲しいぞ。せめてクレジットだけでも。
39・Duke Ellington:Duke Ellington:☆★
   演奏はまだしも、解説もなんも無しの10枚組はきつい。集中力が続かない・・・。
   コンピレーションにも愛情が必要だと実感した。
   これはBGMでタラタラ聴いて、ふと耳に残る曲を探すしか
   ぼくには使い道なさそうだ。そんなゆとりをとる時間がどこにあるかは
   置いといて。とにかくじっくり楽しむべき、かつ知識を聴き手に
   要請する、色々考えさせられえたコンピ。
   繰り返すが、演奏には文句ない。ビッグ・バンド時代のコンピなのかな。
   いまいちマスタリングがしょぼく、音がこもりぎみ。ううむ。

2006年2月

2006/2/13   先週買ったCDですが。更新できなかったので・・・。

   メルツバウが昨年、イギリスのレーベルから出した新作。
   過去作品のバリエーションやライブ音源、むろん新録も
   集めたようだ。6枚組の大作。1000枚限定セット。
38・Merzbow:Houjoue:

   福岡で活動するタンゴのバンド。普段はジャズなどを
   演奏するミュージシャンが集まったトリオらしい。
   渋さのさやかや斉藤徹とセッションしたこともあるとか。

   本盤は1st。曲はタンゴの名曲を集めたようだ。2004年のリリース。
   ぼくはこの手の音楽、詳しくないからなあ。
   バイオリン、アコーディオン、ピアノのトリオ編成。
37・トリオ・ロス・ファンダンゴス:1:☆☆
   即興要素は抑えて、まっすぐにスタンダードと向かい合った。
   僕自身がこのジャンルをあまり聴いておらず、充分に味わえないのが
   もどかしい。響きがきれい。かなり自由度が高いと思われる、
   スケール大きい(5)がベスト。

   05年にリリースされた2nd。
36・トリオ・ロス・ファンダンゴス:2:☆☆☆
   リラックスして瑞々しい演奏になった。響きも深い。
   全曲がたぶんスタンダード。オリジナルも聴いてみたいな。
   (3)がまず耳に残った。重厚な(6)も聴きもの。

2006/2/5   CD買うの最近は控えてるが、やっぱりメルツバウは買ってしまう。

   Tmarinなるユニットとのスプリット盤。500枚限定。アメリカからのリリース。
   このユニットはDaniel De Los Santosといい、テキサスのノイジシャンらしい。
   互いの音素材を元に作成した盤のよう。リリースは2006/1/3発売の新譜。
35・Merzbow vs. Tamarin:Merzbow vs. Tamarin:
   ハーシュ・ノイズにしては煮え切らない。メルツバウにしては珍しい作風だ。
   時折、ノイズの響き処理におっと耳を済ませる箇所はある。
   全般的には、リズム物を意識したノイズ。
   スプリットのタマリンは、いまひとつ物足りない。
   もっと炸裂するか、とことん穏やかなほうが、ぼくは好み。

   John Wieseはアメリカのノイジシャンかな?テープ交換で作り上げた
   作品を収録。録音は2004年のようだ。2005年に米レーベルから発売。
34・Merzbow & John Wiese:Multiplication:☆☆★
   郵便(メールかな?)で音素材を送り、互いにプロデュースした作品
   を集めた、コラボ盤。メルツバウ特有のドラマティック性は
   希薄(最後のメルツバウが仕切った曲は別だが)なので、
   実にシンプルなパワー・ハーシュに仕上がった。
   あっけらかんと轟音ノイズを楽しむには良い盤かもしれない。
   ジョンのほうは、音素材を切り刻んだ冷静さが、とにかく強く印象に残った。
   メルツバウはじっくりとノイズを楽しむ。時間をかけて。
   精神性をあえて前に出さず、より力づくのノイズに迫った一枚。迫力はある。

   ロシアのレーベルからリリースされた。最近のメルツバウのテーゼ
   "焼き鳥はいらない!"のポスター付。2005年リリース。
33・Merzbow:Scene:

   ノルウェーのOHMレーベルがリリースしたDVD。ノイジシャンに焦点をあて、
   日本からはメルツバウと大友良英、中村としまるのインタビューを
   収録しているようだ。CDが付いていて、そちらはJazzcammerなど
   ノルウェーのノイズ音楽を12曲収録。DVDはPAL方式のRegion free。
32・V.A.:norNoize:

   シタールとドラムのデュオ、Contiが企画したコンピ盤。
   サンプラーの要素が強い。リミックスや未発表など貴重な音源を集めた。
   ルインズ・アローンやMUMU、simなどの名前に惹かれた。
   レコ発ライブで先行50人に無料配布された時に入手した。
31・V.A.:Conti 5th Anniversary:

   360℃ recordsからリリースされたコンピとある。睡眠の誘発が
   テーマで、5人のミュージシャンが曲を提供している様子。詳細不明。
   第一弾もあるようだ。沖縄の民宿が音頭とってリリースしたのかな?
30・V.A.:ねむりのためのコンピ 第2弾:☆☆☆☆
   静かなアンビエント・テクノからノイジーな電子音まで、バラエティに富んだコンピ。
   たしかに寛げる。寝ることを押し付けがましく促す、
   平凡なコンピではない。うとうととまどろむ心地よさを、さまざまな
   切り口から表現した素敵にキュートなコンピ。寛ぐときのBGMにばっちりだ。

2006/2/1     ネット注文のCDが到着。
  
   GbV解散後のソロでフル・アルバムは初のはず。米Mergeからの
   リリースとなった。さらに一歩前へ踏み出した活動となるのか。
   70分目一杯詰め込んだようで、全26曲入り。
   プロデュースはGbV時代の盟友トッド・トビアス。
29・Robert Pollard:From a Compound eye:☆☆☆☆
   ライブでの再現性をある程度は意識しつつ、根本でサイケでメロディアスな
   ロバートの個性を前面に出した。アレンジの統一性や曲調の一貫性はなんのその。
   溢れるアイディアを片端から詰め込んだ奔放なアルバムに仕上げた。
   ほぼ全ての楽器をトッド・トビアスが演奏し、ギターなどをロバート。
   多重録音ぽさは控え、バンド的な味わいに。Mergeでの販売を意識したか
   くっきりなメロディがまず耳を惹き、ごたまぜのガジェット要素もあり。
   今後の活動の名刺代わりになりそう。

   先日見たライブがすっばらしく良くて買った。
   1990年に名古屋でのライブを収録してる。1991年のリリース。
   "渡良瀬"、"グッドバイ"、"サンライズ"と先日のライブでの曲もあり。
28・森山威男カルテット:ライヴ・アット・ラヴリー:☆☆☆☆
   噴出す熱気と炸裂するテンション。すげえ勢いで突っ走る。
   惜しむらくは録音が痩せていること。でかい音で聴くと
   多少は緩和されるが。連打するドラムとピアノの沸き立ちの間隙を縫って
   テナーサックスが軋ませる。ベースは録音の加減で、いまひとつ
   聴き取りづらいのが惜しい。収録は全て板橋の曲。
   どれも長尺でたっぷり聴けるのが嬉しい。
   熱いジャズがほしいとき、ぴったりの一枚。観客も大熱狂だ。
 
   興奮の復刻盤。1975年、アケタの店で行われたライブから
   3曲を収録した。LP時代にカットされた部分も復活したという。
   ベースは早川岳晴、ドラムは亀山賢一。うわー、すごい。
   板橋文夫の極初期の演奏が聴ける貴重な機会だ。
27・板橋文夫トリオ:Rise and shine:☆☆☆★
   音質はこもり気味。がんっとレベルを上げて聴こう。
   極端なステレオになってるが、擬似だろうか?ドラムとベースが
   一緒くたに左チャンネルへ押し込まれてるのは、アケタのセッティング
   配置から行って違和感ある。ベースとドラムが、もうちょい離れててもおかしくない。
   しかし演奏そのものはとても貴重で、なおかつ素晴らしい。
   ガッツたっぷりでドライブする(1)、ロマンティック炸裂の(2)。
   そして両方が融合した(3)。(3)はちょっと冗長なので、カットした気も良く分かる。
   ともあれ骨太なジャズが聴ける一枚であり、当時の貴重な音源を
   きちんと聴けるいい機会でもある。素晴らしい。
   ぼくは(2)が特に気に入った。

   2005年発売の映画サントラ。どの程度ヒットしたんだろう。
   大友良英が参加してるのに惹かれて買った。他にはゆらゆら帝国、
   サイコアイ、ジュール・マスネ、池田亮司らが参加。
26・O.S.T.:乱歩地獄:☆★
   乱歩の短編を幾つか取り出した、オムニバス映画らしい。
   ノイズからクラシカルなピアノまで幅広く、単体で楽しむにはとっ散らかりすぎ。
   順番に並べてるだけで、アルバムのトータル性やストーリー性を
   もたせてるわけじゃないから。それぞれの曲はじっくり聴くと
   面白いんだけどね。ただしあくまでサントラ。単体だと物足りなさも。
   大友良英の作品はドローンのようなギターノイズ。淡々と進む。
   他のミュージシャンでは、池田亮司のノイズが好きだな。
   アラマキコウヘイの(20)も重たいサイケロックにアコギをまぶし
   なかなか聴き応えあり。

2006年1月

2006/1/25  買うの控えてたけど、欲しいCDがいろいろと・・・
       通販で頼んでたのが幾つか届き始めました。

   ルナのディーンとブリッタ・フィリップスによるデュオ盤。
   こんなの出てたなんて知らなかった。カバーとオリジナルが
   半々かな。2003年のリリース。プロデューサーにトニー・ヴィスコンティの名前あり。
25・Britta Phillips & Dean Wareham;L'Avventura;☆☆
   よく出来た気だるげなポップス。じっくり聞き込んで愛聴盤へ
   変わるかもしれない。しかし、もう少し毒と靄が欲しい気もする。
   つい、ルナとの共通性を求めてしまうがゆえに。
   カバーもオリジナルも、同様の世界観できれいにまとめた。
   予想よりシンセの比率が高く、ストリングスもごく滑らかに音像へ馴染んだ。

   渋さ知らズの初ベスト盤が、なんとエイベックスからリリース。
   新曲、新録、リマスターありと、昔からのファンでも楽しめる
   サービス精神に溢れた構成。初期の曲も織り込んで、バラエティに
   富ませた選曲。渋い並びだなあ。
24・渋さ知らズ:渋全:☆☆☆☆
   "ライオン"や"本多"、"犬姫"、"ナーダム"といった盛り上がり定番を
   あえて外した選曲なのに、初心者にも進められる傑作ベスト。
   新録やリマスターでマニアにも楽しみ多し。すれっからしな
   意見としては、"渚"の再演が嬉しかった。"ニューゲート"での新たな局面も
   ありがたい。全曲新録で・・・ってのは欲深だね。
   全曲に参加してるのは片山と北のみ。過去と現在、双方の渋さを
   概観できる展開となった。
   現在のキーマンである小森が8曲、立花が6曲。
   どっちかといえば、今の渋さに軸足を置いてるが。
   
   1982年にリリースされた、おそらく自己名義では4thアルバム。
   ピアノ・ソロで名曲"渡良瀬"や"グッドバイ"を演奏してる。
23・板橋文夫:Watarase:☆☆☆
   スケール大きくダイナミックなピアノだが、現在聴ける
   荒々しいクラスターは控えめ。叙情性を前面に出し、旋律を生かした
   ピアノが中心。アタック強く滑らかに旋律がはじける。
   若いころの板橋のほうが、優しさが素直に出してる。
   初々しい板橋の味わいを楽しめる一枚。
   "渡良瀬"や"グッドバイ"など代表曲も収録された。
   半分がカバーで、半分が自作曲での構成。

   イギリスのジャズ・サックス奏者・・・でいいのかな。
   1969年にデラムからリリースされたクインテット盤。
   英ヴォカリオンより2005年にリイシューされた。
22・Alan Skidmore Quintet:Once upon a time:☆★
   アヴァンギャルドではないが、普通のリズムでない。
   浮遊感が心地よい。ちょっと捻っているが、グルーヴが
   消えていないのが貴重。1970年録音だが、まったく古びていない。
   メロディがいまひとつあいまいで、ぴんと来なかったが
   聴き込めばもっと親しみ沸いてくると思う。

2005/1/7  新年購入第二弾です。いろいろ掘り出し物あり。

   神戸を拠点に活動してたロックンロール・バンド、25m Floaterは
   昨年末に惜しくも解散。本盤は解散ライブで販売されたレア&未発表&新曲の
   10曲収録ラスト・アルバム。(隠しトラックあり)
   限定60枚でナンバリング入り。ネットで買えます。
21・25m Floater:25m Floater:

   フィル・スペクターのレーベル、フィレスの傘下レーベル、エメラルド。
   本盤のみを出して、レーベルは閉鎖された。1965年リリース。
   バーニー・ケッセルは当時、スペクターの録音にも参加してた。
   その縁で製作されたアルバムか。ナイトクラブでのライブ録音らしい。
   プロデュースはゲイリー・パクストンとバーニー。
   エンジニアも含め、フィレスゆかりの名前は残念ながら見られない。
20・Barney Kessel Trio:On fire:☆☆☆
   時代を考えると、ずいぶんストレートで穏やかなジャズ。
   上品さを崩さず、スムースなギターを奏でる。
   リラックスしたパブに似合いそうなサウンドで、観客も寛ぎまくり。
   耳を澄ますと観客のお喋りが聴こえる。贅沢な話だ。
   この時点で、時代をリードする先端性とは別ベクトルに
   美しくスイングするジャズを志向した、心地よい演奏だ。

   坪口昌泰が1995年にリリースした、おそらく1stソロ・アルバム。
   サポートに菊地成孔、鬼怒無月、水谷浩章、芳垣安洋が参加した。
   ジャケットに全員の写真あるが・・・若~い。10年前だから当たり前か。
19・坪口昌泰Project:M.T.Man:☆☆☆☆
   スマートなアンサンブルを、凄腕ミュージシャンがきっちりこなす。
   フュージョンよりのアプローチだろうか。隙が無くそれでいて
   自由度もたっぷりで楽しい。ライブを見たかったよ。
   軽やかにメロディが弾み、芳垣と水谷のリズムががっしり支える。
   複雑なんだけど、親しみやすい。メロディがきれいなせいかな。
   キーボード一辺倒のアレンジではなく、あくまで志向は曲全体の構成だ。
   だから一人一人の演奏が活き活きと聴ける。

   Enjaから2002年にリイシューされた坂田4のアルバム。
   サイドメンはフェビアン・レザ・パネ、吉野弘志、高良久美子。
   曲は全て、坂田のオリジナルを弾いている。
   当初はビデオ作品"ミジンコの宇宙"のため、1996年に作成した音源。
   これに"Ballad for Tako"を1998年に新たに録音、日本で1998年にCD化された。
   坂田明のHPコメントによれば、2000枚は好評完売したという。
   Enja盤は日本盤の、たぶんストレート・リイシュー。
18・坂田明:海~la mer harpacticoida:☆☆☆☆★
   べらぼうに美しいフリージャズ。ドラムレスの編成で、坂田のサックスが
   滑らかに切なく、スケール大きく響く。フリーキーさは皆無。
   優しさいっぱいのアドリブが堪らなく心地よい。
   たゆたうフェビアンのピアノも、低音を飄々と弾ます吉野のベースも素晴らしい。
   高良のパーカッションはさりげなく、効果的に味付けする。
   隅々まで暖かさに満ち、懐深い作品。たっぷり寛いで聞ける。
   リズムではなく情念で音楽を紡いだ。センチな色合いが素晴らしい。

   1981年にリリースされた、完全パーカッション・ソロ。初めて聴く。
   全7曲はどれも富樫のオリジナル。どう曲を表現してるんだろう。
17・富樫雅彦:フェイス・オブ・パーカッション:☆☆
   多重録音も駆使してパーカッションで歌うことを追及した。
   リズムはフリーで、明確なメロディよりは鋭いパルスの音程違いを
   積み上げて曲を組み立てた。音は透徹に響き、まっすぐに突き立つ。
   一定の音塊=オスティナートを重要視し、シャーマニズムを
   意識するかのように、ドラミングは畳み込む。

   2005年にリリース。比較的若手の気鋭ミュージシャンを集めたコンピ。
   sim、Gnu、飛頭らを収録した。ライブハウスのスケジュールで見かけたよ。
   この中の何人が、今後の東京の音楽を引っ張っていくんだろう。
16・V.A.:Le son sauvage~Tokyo next texture:☆☆☆★
   次の時代を伺うスリルを兼ね備えた音楽が詰まった快盤なのは間違いない。
   インプロよりも音像を作る志向を主流と感じた。
   ライブを見てみたいな。若手というより、セミ・ベテランクラスを
   集めた感触あり。抜き身の刀を眺めるようなスリル。
   ガシガシに切りあうようなアクティブさはさほどなさそう。
   そういう志向は、ロックのほうにいってるのかな?

   2003年にリリースしたウッド・べースのソロ・アルバム。
   コンパクトな曲をアクセントで差し込んでいるようだ。
15・吉野弘志:On base:☆☆★
   深い低音でメロディアスに暖かく弾む。一曲一曲は面白い。
   しかしアルバム一枚を集中力持続させるのは至難の業。
   ベースって不利だなあ、なんか。オリジナルありカバーありと
   曲はバラエティに富んでいる。音質も深く響いて心地よい。佳作。
   早弾きやトリッキーな奏法に頼らず、吉野は真摯にメロディへ
   向かい合う。自作の"Puccio"がいい曲だなあ。

   クール・ジャズの代表ミュージシャン、でいいのかな?
   盲目の白人ピアニスト。名盤ってメディアで語られる本盤だが、今まで
   聴いたことありませんでした。1955年録音。
14・Lennie Tristano:Tristano:☆☆☆★
   メカニカルさは薄められ、まさにクールなダンディズムに
   溢れた作品。スイング感覚をきっちり残して、強烈なスマートさへの
   意思を感じた。ピアノの多重録音やアレンジのひとひねりなど
   実験精神も好み。目の前で一本、線を引かれるようなそっけなさを
   感じるが、親しみは消せないジャズだ。
   後半セッションのほうがシンプルに聴くには楽しい。
   コニッツのサブトーンを含んだソロが柔らかく響く。
   5曲目以降はライブ。後ろでずいぶん、お喋りや皿のノイズが聴こえる。

   1967年リリースの5人編成で演奏。本盤をブルーノートからリリース後、
   ジャッキー・マクリーンは約4年の沈黙に入る。
   サイドはウディ・ショウ(曲も提供)、ジャック・ディジョネットら。
13・Jackie Mclean:Demon's dance:☆★
   ソロが良い曲もあるが、総じて軽い。大味に過ぎてしまう。
   ファン向けの盤かな。彼のサックスを聴くなら他に良い盤はある。
   (2)のロマンティックさが気に入った。

2006/1/1   新年一発目のレコ屋詣で。買いすぎた。

   アケタ・ディスクの最新作は3枚組のボリューム。松風鉱一が
   80年台前半に率いたグループの初CD化。公式盤はなく、
   本盤が最初の発掘音源となるそうだ。他のメンバーは梅津和時や
   清水くるみ、山崎弘一など。バンドの存在自体、本盤ではじめて知った。
   1982年1月に浜松で行われたライブの音源より。完全収録かな?
12・Sax Workshop:Live in Hamamatsu:☆☆☆☆
   ずいぶん濃密なライブだ。一曲が長く、みっちりとソロが回される。
   どれも15分以上、ときに25分くらい一曲を演奏する。
   ライブだとさぞかし圧倒されたろうな。
   3枚組の大作で聴くのに躊躇いあるが、聴き始めたら
   ぐわっとグルーヴする独特の響きにやられる。
   当時の様子が良く伝わる快盤だ。
   渋オケのレパートリーでもある"What Masa is..?"も演奏してる。

   梅津和時KIKIバンドの新作。ドラマーが新たにジョー・トランプに
   変わった第一作にあたる。2005年リリース。ライブで馴染みある曲を
   CD化したようだ。このバンドもずいぶんライブ聴きそびれてるなあ。
11・KIKI Band:Dowser:☆☆☆★
   トランプのドラムはごつっとした肌触りな音の感触へ、ごく自然にはまった。
   アンサンブルそのものはタイトだが、あまりに上手すぎるゆえか、
   あっさり過ぎるほどのあっけない印象ある。皮肉なことに。
   コンパクトに各曲がまとめられ、するするとギターとサックスが
   交錯した。もっとノイジーな、毒が欲しくなってしまった。

   1997年に大友良英と内橋和久が音楽を担当した映画のサントラ。
   聞いてみたかったんです。大友のメロディ・メイカーぶりを
   聴くのにぴったりなのがサントラだから。バックのメンバーは
   芳垣や千野、水谷やナスノといったそうそうたるメンバーがつとめた。
10・大友良英:Kitchen(OST):☆☆
   呟きのように素朴なテーマのメロディが、繰り返しアレンジを変えて
   登場する。しごくまっとうなサントラ盤となった。
   したがって映画とあわせ技でないと、今ひとつしっくりこない。
   優しくかぶさるメロディは、そっと耳をくすぐる。映像と合わさったら
   さぞかし似合うんだろうなあ。
   女性ボーカルによるテーマ・ソングも切々と歌いかけて沁みる。

   はじめて見た盤。1999年のリリース。Dragon Blueがユニット名らしい。
   天鼓がリーダーかな?大友良英、今堀恒雄、加藤英樹、吉田達也と
   すさまじい顔ぶれのバンド。ライブ見たかったなあ。
9・天鼓:Dragon Blue:
   吉田達也が参加してるわりに、シンプルなリズム。加藤英樹のベースが
   パルスのように刻まれる。圧倒的に天鼓を前面に出したアレンジで
   この手のパンキッシュな曲へ思い入れが薄いため、どうも
   評価が辛くなってしまう。ボーカルのメロディラインが単調に
   聴こえてしまうのよ。名曲は"Passing though the night"。
   ここでの天鼓の歌声、スリリングな演奏は聴き応えある。
   録音もいまいち籠り気味。92年にクロコダイルでのライブ音源らしい。
   記録としても貴重なアルバム。

   詳細は不明。ギュンター・ミラーが指揮を取った即興アルバムらしい。
   1999年の作品。大蔵雅彦,ギュンター・ミュラー,杉本拓,大友良英が参加した。
8・大蔵/ミュラー/杉本/大友:Metal Tastes like Orange☆☆★
   全て即興。激しく切りあう即興ではなく、音が沸き立って
   ぐつぐつと煮込まれる。展開が静かなため、BGMで聴くのもよし。
   ライブを聴いてたら、テンションの高さに緊張するかもしれない。
   しかしCDでは寛いだ感触が、常にある。
   パーカッションに、サックスにギターにターンテーブル。
   どれもが豪快に吼える可能性を秘めつつも、
   ここでは優しく尖ったサウンドを聞かせる。
   短い曲をインターミッションで挟みつつ、じわじわと
   エレクトロな音響ノイズが広がった。さりげなく耳を刺激する一枚。
   張り詰めた気分をほぐすにも、気を引き締めるにも。
   どちらの立場でも、楽しめる稀有な音楽だ。

   高柳昌行がオーソドックスな路線を追及した一枚。
   録音は1970年でアレンジを渋谷毅が担当した。
7・高柳昌行:A jazzy profile of JOJO:☆☆☆★
   耳ざわりはいいが、ぴいんと緊張は常に感じた。強く弦を
   ピッキングし、一音一音を丁寧に奏でる。メロディは凛と研ぎ澄まされる。
   BGMだけでなく、聞き込むにも良い。
   渋谷によるホーンアレンジいは、良いけれど・・・
   耳ざわりが肉厚に聴こえてしまう。もっと絞り込んでもよかった。
   (9)のホーンアレンジが渋オケを連想して面白かったな。

   フィラデルフィアのスウィート・ソウルバンド、ブルー・マジックの
   2ndと3rdがリイシューされた。わーい。コレクタブルズ盤ってのが気に食わないが。
   本盤は2nd。オリジナルは1974年にリリースされた。
6・Blue Masic:The magic of the blue:☆☆☆☆★
   演奏、曲、アレンジともに素晴らしいスイート・ソウル。
   どの曲も聴き応えあり、特にバラードは捨て曲無し。なぜこのグループが
   評価低いのか、不思議でならない。
   わずかに籠り気味な音質が惜しい。マスターがしょぼいのか。
   70年代ソウルを聴くなら、自信を持って薦める一枚。
   アレンジャーを曲によって変えているが統一感ある。
   どこか寛いだ感触残る一枚。すこし緩めかな。

   3rdアルバム。オリジナルは1975年のリリース。もちろんプロデュースは
   ノーマン・ハリスがつとめてる。
5・Blue Masic:Thirteen blue magic lane:☆☆☆☆★
   シンセとストリングを組み合わせたアレンジが抜群。今でも古びてない。
   もちろんメロディも歌も秀逸。演奏も曲によってはなかなか。
   バラード~ミドルは名曲ばっかで文句ない。
   悲しいことにディスコ・タッチのアップが、今聴くと間が持たない。
   しかし隙のないアルバム作りが素晴らしい傑作。

   リッシャル・ガリアーノは有名なアコーディオン奏者らしい。
   黒田京子トリオでカバーされる"Spleen"を聞いてみたく買った。
   本盤は2005年にリリースされた、2004年イタリアでのライブ盤。
   ドラムとベースをくわえたトリオ編成で演奏される。
4・Richard Galliano New York Trio:Ruby,my dear:☆☆☆
   穏やかなスリルが聴き所か。カバーもバンドネオンの音色で
   すっかり独自色を出した。寛いで聴くもよし、真面目に対峙するもよし。
   どういう聴き方をしても、応えてくれる。
   後半のオリジナル群でテンションが高まるのは演出だろうか。
   ふり幅大きいグルーヴで楽しめる好盤。
   ガリアーノの代表作ではないと思う。しかし彼のよさを味わえる一枚だろう。

   たぶんオリジナルは1982年にリリース。ロスを拠点に活動した
   4人組コーラス・グループらしいが、詳細は不明。
   売れたという話も聞かないし・・・リイシューを素直に感謝です。
3・Numonics:Rollin':☆★
   そつなくまとまってるし、バラードは聴かせるのに・・・
   何かこじんまりして、惹かれない。小奇麗なアレンジのせいか。
   もう一歩、踏み込んだ個性が何か欲しい。なんだかヌルい。
   (2)や(4)あたりがお薦めかなあ。

   70年代スウィート・ソウルのコンピ盤らしい。発売年度も何も無い。
   不親切だなー。そういうマニアを対象としてないのか。
   マンハッタンズやデルフォニックスといった有名どころもあるが、
   代表曲ではない。重箱の済選曲かな。2005年、米サンノゼのLatin Soulなるレーベルから。
   初めて聞くレーベルだ。vol.3まで出たうちのVol.1を購入した。
2・V.A.:Soulful thangs vol.1:☆☆★
   収録曲はいなたいスイート・ソウルが詰まっててまずまず。
   盤起こしらしく針音あったり、どれもくしゃっと籠り気味の音がいまいちか。
   有名グループまでこの音質なのは、権利をきちっと取ってないのかもしれない。
   やたら低音が強調されたマスタリングなので、音質は意図的なのかもしれないが。
   ライナーに情報皆無なのが、入門版としては物足りない。
   スイート・ソウルの深淵をうかがうには適当なコンピ。
   これを元に、他の盤も聴きすすめたくなる。
   ソウルもシングル盤へ手を出さねば、十二分には楽しめないのかも。

   ジャケが気になって購入。本職はドラマーらしいが、本盤はボーカルアルバム。
   1968年の録音。ジャズ寄りか。サイドメンが豪華だよ。Herbie Hancock(p),
   Chuck Rainey(b), Bernard Purdie(ds)といったメンバーが脇を固める。
1・Grady Tate:Windmills of my mind:☆☆
   つかみとりにくい盤だ。基本はナイトクラブのようなゴージャスな
   ボーカルだろうか。ジャズメンによる演奏は上手いんだけど、
   どこか上っ面をするする滑ってしまう。
   もっとソウルフルなほうが好み。毒が少ないんだ。
   むしろBGMで聴くにはこのほうがいいのか。
   逆に(3)のようなAOR風味のソウルは素直に心地よい。

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