LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2015/10/31   西荻窪 アケタの店

出演:明田川荘之+畠山芳幸+石渡明廣
 (明田川荘之:p,オカリーナ、石渡明廣:eg、畠山芳幸:b)

 今夜の月例セッションはドラム抜きのトリオ編成で行われた。石渡はエレキギターにマルチ・エフェクターとワウペダルを、店置きアンプへつなぐ。畠山はウッドベース。ピックアップ・マイクを付け、店置きアンプに接続あるが、さほど音量は上げなかったかも。 20時を回った頃、さくっとライブが始まった。

<セットリスト>
1.アイル・クローズ・マイ・アイズ
2.オカリナ・ブルーノート・ブルーズ
3.インバ
4.エミ
5.アフリカン・ドリーム(incl.アケタズ・ブルーズ)
<休憩>
6.枯葉
7.アルプ
8.?
9.室蘭・アサイ・センチメンタル

 最初は探るように、スタンダードの(1)から。なんだか明田川のピアノが硬く聴こえた。エッジ効かせたフレーズを奏でていく。畠山は今夜もメロディアスなプレイ。たんなるビート刻みでなく、常に変化つけたフレーズ使いがかっこいい。
 石渡は静かにブライトな音色でギターを載せた。全体的に、どうにも緊張の漂う演奏で幕を開けた。

 かっちりした音使いで明田川のピアノ・ソロ。空気を削るようにフレーズが動いてく。石渡にするっとソロが回った。ショート・ディレイを使うアドリブで、上下に生き生きとフレーズが動きながら、きれいにディレイの音とリアルタイムの音が混ざる。涼やかで見事なアドリブだった。
 ベースにソロがつながる。ドラムレスのアンサンブルで、比較的今夜は畠山がビートを保つ場面が多かったが、単なるランニングは全く弾かない。常に旋律感を生かした自在な演奏が良かった。

 (2)は最近作ったオリジナル曲だそう。Cのブルーズね、と他の2人に告げた後、明田川は立ち上がってオカリーナを構える。加工するフレーズが次々と調を変え繰り返される。幾本ものオカリーナを持ち替えて、明田川はテーマを吹いた。
 すごく小さいものから特大まで。幾本もオカリーナを持ち替える。

 前半は長尺で、ギターからベースへ律儀にソロが回る。石渡のプレイは次第に熱を帯びた。時にフレーズが速くなる。2曲目以降はフレーズの合間に、ショート・ディレイを使ってることがわかる。アドリブとディレイ重ねで、サウンドは濁らせない。
 ギターは明るい音色や中抜きのスカッと軽い音色。曲ごとに変えた。汚しや歪みの音色は使わなかった。

 1stセットは残る3曲、すべてオリジナル。明田川も(3)あたりからエンジンがかかり始め、アドリブ弾きながら唸りだした。三人が自由にフレーズを動かすダイナミックさが今夜の聴きどころ。
 明田川が熱気を帯びて鍵盤を強打し、畠山が柔らかく低音を響かせる。そこへ石渡が無闇に寄り添わぬフレーズを弾く。
 
 曲によってピアノがテーマやアドリブを弾いてても、構わずにギターがソロを重ねてた。三人なのに分厚く音が響く。軸はウッドベースだ。
 すっと畠山が弾き休むと分かる。とたんに音像がすっきり。
 石渡は弾きまくるわけでもなく、メリハリつけたプレイ。気が向くとカウンターでアドリブをぶつけるが、手を休め聴きに入る場面も多かった。

 4曲終わったところで、ほぼ一時間。休憩と思ったら、さらに明田川が(5)を弾きはじめて驚く。この演奏が圧巻だった。
 グランドピアノの中へ手を入れ、ピアノ線の爪弾きから低音の平手打ち。テーマの途中でキラキラと高音鍵盤を叩く。ここまで指弾きだった畠山も、アルコでじっくり弾いた。
 
 明田川はひとしきりピアノでアドリブを弾き、ソロは石渡へ回る。明田川はタンバリンを取り出し、無造作に叩く。さらに足元から馴染のアフリカン・ベルを掴みジャラジャラ振った。
 石渡のソロの間も、まったく違うテンポでタンバリンを叩き、ピアノの枠に軽く叩きつけて鳴らす。アドリブはベースに変わる。ピアノの譜面台の位置に載せたタンバリンの小さなシンバルが、明田川がピアノを弾いてたらシャランと一音、きれいに鳴った。 

 中間部は完全フリー。三者三様に混沌とフレーズを絡ませる。ベースもギターもピアノも全く違うタイム感。けれども散漫さは皆無。不思議な調和が面白かった。

 急に明田川が"アケタズ・ブルーズ"を弾きはじめ、三人が合わせる。さらにフリーへ。
 ひとしきりたってフレーズがちょうど途切れた瞬間に、明田川が"アフリカン・ドリーム"のテーマを奏でて、きれいに曲を戻した。
 前半は75分くらいのたっぷりなボリューム。

 短い休憩をはさんだ後半は、スタンダードの"枯葉"から。オカリーナを数本吹き分ける。明田川のライブでこの曲、聴いた記憶がパッと浮かばない。曲調は確かにバッチリ似あうが、新鮮な選曲だった。
 しかめつらでギターを弾く石渡。テーマを全く外して、奔放なフレージングでグイグイとアドリブをドライブさせた。

 後半セットもいちおうピアノからギター、ベースとソロ回しはあり。しかし特に明田川が合図は送らない。というか、石渡は明田川を見てないみたい。ピアノを弾き終わりのボディ・アクションで、何となく明田川がアドリブを終わらせるタイミングが伺える。
 けれども石渡はその辺全く気にせず、音楽の流れでスパッとソロへ入ってた。
 
 石渡のソロが冴えたのは、"アルプ"。この曲はイントロからして新鮮だった。
 重厚で重々しいバラードのイメージあったが、冒頭のピアノは練習曲みたいにアレンジをガラガラ変える。左手で8分音符を5度跳躍で軽やかに彩り、次は分散和音でばらりと響かせる。軽み帯びたアレンジかと思わせると、和音をじっくり響かせるオリジナルの雰囲気へ。
 遊びを効かせて、明田川は"アルプ"のテーマを料理した。
 
 かまわず石渡は、軽やかなフレーズでアドリブをつなぐ。テーマの曲調を気にせず、スピーディにソロを取った。途中でテーマのフレーズを崩した旋律も。この崩し具合が絶妙で、かっこよかった。

 後半三曲目の(8)は、聴き覚えある曲だがタイトルが結びつかず。情感あふれるプレイで、切なく熱く盛り上がる。明田川のピアノがどんどん厚みを増して、グルーヴィに鳴る。 
 
 最後の(9)が何ともはや。ピアノとベースが弾きまくる中、ちょっとギターを鳴らしてた石渡が、ピアノ・ソロの間にすっと席を立ってしまう。いったん店の外へ。トイレにでも行ったか?
 演奏はピアノとベースでぐいぐい熱っぽく盛り上がっており、止むことは無い。明田川はクラスターも炸裂、テンションは右肩上がりだった。
 やがて石渡がステージに戻る。ピアノとベースは演奏が続く。なぜか石渡はギターを再び置き、客席へ移ってしまった。

 明田川はクラスターとフレーズを混載させる。高音部分へクラスターで駆け上がり、勢い余ってピアノをはみ出してしまうマイムも登場した。この仕草も初めて見たかも。
 盛り上がったところでフレーズを切り、ギター・ソロを促した。

 が、石渡はステージにいない。客席でタバコを吸ってる。さすがに戸惑い顔の明田川。石渡は涼しい顔でステージに戻るそぶりは無さそうだ。すかさず畠山がアドリブにつなげる。
 なんか拍子抜けの展開だったが、演奏そのものは特に物足りなさは無い。ベースのアドリブは鋭く、旋律感をたっぷり味わえる。

 そのままデュオで曲が終わり、ライブの幕が下りた。後半は1時間くらいかな。
 なし崩しに明田川も弾き終わってステージを降り、店の奥からメンバー紹介の風変わりな幕引きだった。

 メンバー構成としては、ドラム抜きの明田川トリオにギターが加わった格好。とはいえ石渡をあまりゲストめいた立ち位置にせず、肩の力抜いたセッションっぽいスタイルの演奏だった。
 このアレンジが効果的な、リズムやパターンのアプローチにつながったと思う。曲によって三者三様のリズムやソロへの入りが楽しめる。コクを味わえるライブだった。   

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