LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2015/4/18 西荻窪 アケタの店
出演:明田川荘之ソロ
(明田川荘之:p、オカリーナ)
月例の深夜ライブ。深夜0時を過ぎてすぐ、演奏が始まった。
最初に一曲やったあと「暑い」とピアノ横の扇風機を操作する。一曲目はイントロで"I'll
Closed my eyes"かな、と思ったら違ったみたい。二曲目に"I'll Closed my
eyes"が演奏された。明田川のピアノ・ソロでは定番の印象あるレパートリーだ。ソロ・ライブではこの曲で幕を開けるイメージが強い。
ステージ全体を通して前半はゆったりめのミドル・テンポで統一された。左手がコードを穏やかに押さえ、右手が穏やかに旋律を奏でる。引っかかるような譜割の独特なノリだ。三曲目は演奏途中で、扇風機の調子が悪いと中断。改めてピアノに向き合った。曲名は思い浮かばず。
今夜は曲間をおかず、次々と演奏が続く。選曲はスタンダードを多く投入だろうか。
4曲目が"Crazy"。彼の娘である明田川歩とのデュオでしばしば演奏されるが、完全に明田川のピアノ・ソロでは聴いた記憶が無く、新鮮だった。
この"Crazy"がしっとりと雄大に盛り上がった名演。じっくりスイングする左手へ、つっこみ気味の右手。アドリブの細かなフレーズが幾度も小刻みにかぶさり、そそがれる。 曲の区切りで両手で連打される和音が、優しく鳴った。
センチメンタルで暖かな明田川の世界が広がる。切ないコードの響きと、滴るメロディのゆるやかなグルーヴ。たまらなく惹かれる。ピアノは穏やかに、温かく包み込んだ。
次の曲もスタンダード?聴き覚えあるが、曲名浮かばず。メロディがじわじわと崩れ、アドリブへ突入した。6曲目はキャッチーなメロディが良い曲だった。もう一度聴いて見たい。
そして明田川が得意とするスタンダード、"Alone
Together"へ。
今夜は音数少ない譜割で、力強さを強調する新鮮なアレンジだった。左手が延々と強靭にランニングし、右手のフレーズがぐいぐい唸る。もちろん、本人の唸り声も。
鍵盤へ叩き付ける指が力強く、しぶとく粘っこいフレーズを絞り出した。クラスターが飛び出し、しだいに激しく盛り上がる。フレーズの端切れが宙を舞い、細かく降った。
テンポは加速し、熱気を帯びる。クラスターの比率が増し、混沌へ突入。
クラスターの連打へ。手や肘を使い分け、響きを細かく変えながら鍵盤が乱打される。 最後はテーマに戻り、メロディックに幕を下ろした。この演奏が今夜のクライマックス。
ステージ最後は"My
Favorite things"。曲の前半は"Alone
Together"でのドラマティックさを引き継ぎ、スケール大きく音楽を揺らした。
後半はクラスターを混ぜつつ、アラビックなムードが滲む。幻想的な風景を醸す明田川スタイルに変化していった。ペダルを多用し、残響が店内いっぱいに広がる。
最後はクラスターの連打でざっくり切り落とした。もしかしたらエンディングで、違う曲へつなげたかも。
ここまでオカリーナなし。全てピアノのみ。内部奏法など特殊奏法も無し。穏やかなアプローチのライブだった。もしかしたら1〜2曲を除き、スタンダード集の選曲だったかもしれない。
アンコールとして明田川はリクエストを求めた。最初に出た"りぶるブルーズ"はコードを忘れた、とのこと。もう一つのほう、"You'd
Be So Nice To Come Home
To"を弾いてくれた。
初めて、オカリーナの投入。ペダル踏みっぱなしで残響を漂わせ、足元のケースから2本のオカリーナを取り出す。素焼きっぽい、前となんか違うオカリーナだ。
そっと静かに、細かなフレーズを持ち替えながら吹き分ける。テンポを取る足のビートが、静かに鳴った。ピアノに戻って、アドリブからコーダへ。
これで今夜のライブは終わりかと思いきや。そのままメドレーで"りぶるブルーズ"に繋がった。若干テンポアップして、前のめりのアプローチ。ロマンティックなメロディがいっぱい。じっくりとアドリブも含めた、たっぷりの完走アレンジだった。
約1時間、濃密で寛げるステージだった。今夜は普段演奏しない曲を多数弾いた、という。深夜ライブでは、色々と試みを施してるようだ。またぜひ、聴きに行きたい。