LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2015/4/17  吉祥寺 ROCK JOINT GB

出演:高円寺百景
(吉田達也:ds,vo、坂元健吾:b,vo、小森慶子:ss、Ah:vo,key、矢吹卓:key、藤井友信:g,vo)

 現編成で高円寺百景のライブは、昨年12/20の秋葉原GOODMANとなる。ぼくは05/8/7の初台 Doors以来に見る。うわー、ほぼ10年ぶり。
 百景のメンバー変遷はWikiで丁寧にまとめがあり。
 05年は第11期で、今は第16期にあたるようだ。前回見たときから坂本と小森以外は全員変わり、ひさびさにギター入りの百景で嬉しい。
 
 最初の曲は大好きな1st収録の"Sunna Zarioki"。軽快な鍵盤が爽快だ。
 でかい音で耳がやられたらしく、細かいところは聴こえなかった。この日のPAは極端な振り幅でエレキギターがほとんど聴こえない。ボーカルを立てたかな。

 鮮やかなAhの歌声に惹かれた。麗しさ担当の小森に加え、Ahの加入で百景はさらに華やかさを増した。あの複雑なフレーズをにこやかに、ファルセットまで含めた幅広い音域で楽しげに歌いまくるAhが凄い。
 手振りやポーズも頻繁に混ぜるAhのしぐさで、ぐっと百景がキュートになった。99年頃の暗黒風味な男臭いストイックさと、えらい違いが面白い。

 もっとも次に演奏の"新曲1"では、怒涛のプログレぶり。場面がガラガラ変わり、抽象的なムードで吼えた。
 逆にこの辺の音楽性が、過去の百景と違う。むしろ口ずさめるフレーズを繰り返しつつ、複雑にアレンジ施したのが過去だとしたら、現在は整然たる混沌。とはいえテンポも場面も頻繁に変わっても、きっちり構築されている。刺激的だ。

 ステージ通して旧曲は暗譜だった小森は、一応"新曲1"で譜面を立てる。見てるそぶりないが。
 ちなみに矢吹とAhが譜面。藤井はなぜかアンコールだけ譜面立てたが、ほとんど暗譜。坂元と吉田は当然の暗譜っぷり。

 特に後半セットで坂本がノリノリの演奏だった。ベースとギターは早弾きをユニゾンでまくしたてる場面が多い。
 そこへサックスとボーカルが別フレーズで乗り、鍵盤やドラムが複雑さを加える。
 全体のユニゾンと交錯するフレーズのバランスが抜群に良い。

 サックスと鍵盤がアレンジに複雑さを出す。時に高速フレーズのアドリブを混ぜる小森のサックスが、貫くような勢いで緊張と引き締めをサウンドに与える。
 鍵盤二つを弾き分ける矢吹は、ときにクラシカルな旋律で落ち着きを出し、次の瞬間スピーディにシンセで高速フレーズを叩きこむ。
 ステージの絵ヅラは、Ahと小森で引き立てた。サックスとボーカルがユニゾンで突き進む疾走っぷりがかっこいい。

 アレンジはギターが聞こえにくいせいか、鍵盤とサックスに耳が行った。淡々とベースとギターがサウンドの芯を支える。
 さらにボーカルは、いざとなれば4人体制。小森と矢吹以外がボーカルをとり、がつんと厚みあるコーラスも迫力あった。

 しかし吉田の朗々たる歌とドラムの存在感が凄い。
 シンバル横にスネアを一つ加えた変則セットは、むしろ手数を抑え気味。ドラムはアレンジと一体な印象だった。
 曲によって他のメンバーはソロっぽい場面もあるが、ドラムはソロ無し。猛然だが落ち着いていた。
 けれども切れ味鋭いスティックさばきはメリハリたっぷり。ある曲でAhや矢吹の無伴奏演奏へ、さらりと数枚のシンバルを叩き分ける繊細さも良かった。

 選曲は過去4枚からまんべんなく。いくぶん4th曲が多いかな。旧曲もアレンジを変え、スピーディに再構築された感じ。
 ある曲でのAhと吉田のオペラ風掛け合いにやられた。静かな鍵盤が序奏となり、ドラマティックにAhと吉田が歌いまくる。他の楽器が彩りを添え、素晴らしかった。
 ライティングも凝っており、スポットや色合いが曲に合ってきれいに変わる。演劇的な照明演出が、演奏にばっちりハマっていた。

 1stセットではこれまた好きな"Rissenddo Rraimb"(2nd収録)も演奏してくれた。
 吉田のMCによると、前回のライブで久しぶりに演奏し面白かったらしい。Ahがショルダー・キーボードを構えると「ソロ交換する?」と藤井が笑う。
 Ahが鍵盤弾きつつ唄うため、踊り担当は小森が努める。サックス吹く合間に、華麗に腕を動かして見せた。
 この曲前半部分で「Ah,Ah,Ah,」って歌を乗せる所が、整然たる重みを出すアレンジ施されており、かっこよかったなあ。

 後半セットは1曲、過去のレパートリーから。大胆かつ緻密なアレンジに聴き入る。
 次が初演の"新曲2"。吉田が「新しい新曲です」と喋り、笑いを取っていた。 
 小森は譜面用にメガネを掛ける。「新曲恒例ですね」と藤井に突っ込まれていた。

 これがハードロック風の重たさと、スピード感を併せ持つ重厚な曲。ボーカルも入るがポップさはあえて抑え、抽象的で暗黒レコメンなムードだった。
 さまざまな要素がクルクル変わる場面転換で、前進感は途切れない。この路線でアルバム一枚作ってほしい。聴きこむほどに奥深さが滲む気がする。
 Ahが譜面を真剣に見つめてたな。

 "Rattims Friezz","Nivraym"と旧曲が続き、アルバム未収録という"ドリンビスタ(?)"へ。
 確かこの曲で、ライトがステージ下から奏者を照らす。小森の影が背後の壁に大きく映り、幻想的な風景を演出した。 

 しかしAhの歌声は冴えていた。ドスを効かせた低音から朗々たるファルセットまで、超ロングレンジで歌う。どの曲だったか、ホーメイ風に響かせるシーンも良かった。
 ギターは比較的抑えめだったが、藤井は一曲でガシガシにギターを弾きまくる。
 
 最後は"Angherr Shisspa"。重戦車のような重たさと、主にAhが身振り手振りで親しみやすさを醸し出す。二つの相反する要素がしっくりと溶け合うのが、このバンドの凄いところ。
 ちなみにフレーズの合間で、Ahと小森が視線を合わせキュートに軽くうなずき合う場面も頻繁に味わえた。
 アンコールは"Avedumma"でハードかつポップに決める。2ndセットの最後で長めのMCのほかは、ぶっ続け。各1時間程度のセットだが、非常に濃密だった。

 次の百景は8/21に高円寺Highの"変拍子で踊ろう!"。NATSUMEN、WUJA BIN BINの3マンだそう。その次は「年末かな?」の吉田MC。
 10年ぶりに見たぼくが言うセリフじゃないが、またぜひ聴きたい。今の編成はバランスがとても良く、テクニシャン揃い。
 幅広いアレンジが具現化した。百景は進化が続く。  

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