LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2014/12/26 新宿 ピットイン
出演:大友良英
(大友良英:eg,vo)
ピットインで年末4days6stageの初日、昼の部は大友良英ギターソロ。休憩なしで約1時間半のステージだった。
ステージは中央にアンプとギターが置かれ、横のテーブルに小物がいくつかの簡素なもの。
ステージ中央の椅子へ腰かけた帽子姿な大友は、最初にしばらくMC、まず演奏するギターの紹介をした。
「植木等の愛用でも知られる」と口火を切ってGibson
ES-175を観客へ見せる。なんと高柳昌行が演奏していた実機だそう。20年くらい弾かれずにいたため修理に出し、ちょうど今日の昼に終わった、とか。
F孔にガムテープみたいな跡あり。何だろと思ったら「フィードバックがきつい」と高柳に言われた若かりしボーヤの大友自身が、ガムテープ貼った跡という。
「演奏できるよう修理はしても、楽器屋の人に『傷とかは一切直さないでくれ』と言ったんだ」
しばらく高柳がらみの事を喋り、ふと軽く目じりを拭うしぐさ。ギターを構える大友の姿が印象に残った。
「高柳さんも80年くらいに、ここで演奏した曲です」と告げ、オーネットの"Lonely
Woman"からライブの幕が開いた。
鈍く重たいテーマ。訥々とメロディが崩された。速弾きはせず、粘っこくフレーズを揺らす。
つとフィードバックと歪んだ音色をばら撒いた。高らかに響かせる。U字型の金具を取り出し、そっと弦やピックアップをひっぱたく。そのまま金具をピックアップ横にひっかけ、単音のシンプルなフレーズでアドリブを始めた。
やがてノイジーに振れ、抽象的なフィードバックの嵐に変わった。
しばらくピック弾き、途中から弦にひっかけたU字金具へ持ち替え、ノービートのノイズ中心に変化した。大友の足元や手先が良く見えない場所で聴いてたため、双方の詳細は分からない。足元のエフェクターを切り替え、ノイズをコントロールしてたようだ。
「高柳さんは当時『歌はジャズじゃない』と言ってました。・・・あえて、高柳さんに怒られそうなことをやります」
ブライトな音色に変えたギターを構え、マイクを口元に寄せる。軽くストローク。前置き無しで呟くように歌い始めた。
曲目紹介は無かったが、たぶん加川良の"教訓T"。
ギターはリズムを取らず。じゃらんと鳴らしては歌、さらにギターを、って語りかけるようなアレンジ。
間をとりながら、ゆっくりと歌っていく。2コーラス目から、ギターの音色はどんどん崩された。
フレーズの合間に、たっぷりの間。時にハウリングするフィードバックで、フェルマータ入れるのが、大友流か。
シャウトしない歌をかき消すかのように、ハードにエレキギターが鳴った。サビで軋み音が充満するときも、大友はほとんど声を張らない。雑音の中でマイペースに主張、するかのように。
「ずいぶんチューニングが狂うなあ」
呟きながら一曲ごとに、チューニングを確認する大友。率直な所、ディストーションとフィードバックの嵐なのに、丁寧なチューニングするのが面白かった。いや、だからこそなのかな。
ここから3曲、曲目紹介無しに弾いた。どれもメロディを聴いたことあるような気もするが、曲名を思い出せず。
まずはロック寄りの曲。最初は切れ目なくメロディが続いて流れる。何かのエフェクターかな。ピックを使わずに音が変化していた。
やがて歪んだ音色へ。左手はシンプルなダウン・ピッキング。音程を変えながらザクザクとギターを弾く。
4拍子の頭で白玉、4分音符から8分音符としだいに速くなり、ついにオルタネイトへ。じゃかじゃかとかき鳴らす。つまりテンポは変わらず、ストロークのパターンがどんどん加速する。
フレーズはシンコペートせず、まっすぐなアプローチだった。テンポが上がってもスピードはさほど強調せず。ディストーションで崩さつつがっぷり疾走する、剛腕な力強さが全面に出たロックでかっこいい演奏だった。
次はぐっとノイズ寄り。いくつか単音の連なる無骨なテーマがちょっと繰り返され、すぐに無秩序なディストーションとフィードバックの波に変わった。
U字金具を多用し、ノイズが荒れ狂う。たぶん足元のエフェクタ操作が加わっており、指が動いて無くとも音がどんどん変貌した。
まな板ギターみたいなハードコアを連想するフレーズ感。つまりロングトーンから拍裏で急発進、きりもみし疾走する譜割り。フィードバックを存分に噴出させる瞬間と、間の双方が交錯した。
そしてグッと音量を落し、ほんのりボサノヴァ風の曲へ。
これはけっこう短め。綺麗なメロディが崩され、わずかにフリー要素をかぶせた演奏だった。ここまでで50分くらい。
最後の曲は、何も決めずに即興で演奏する、と大友が告げた。
弾きながら小さなクリップをいくつか弦にはさむ。倍音がどんどん増えた。さらにU字金具でピックアップを叩き、ハーモニクスも加える。伸びやかで、ひずんだ音色の和音が美しい。
ここでもジャズのスイングさは希薄にして、がっつり頭拍が主体のビート感だった。
しばらく弾いたあとでクリップを外していき、U字金具を多用するノイズの嵐に潜る。乱暴では無いが、野太いパワーは常に噴出し続けた。
音色がどんどん変わる。時に弾いてる姿以上の出音あり。足でエフェクタ操作かな。
15分ほどのエレキギター・ソロは、歯ぎしりする微妙な切迫さを混めた力強さだった。
大友のノイズは訥々として派手な飛び道具も無い。持続するがミニマルな要素は薄い。どこか変化する。演奏の姿に緊迫感はあるが、鷹揚さを滲む。つまり観客へ緊張を迫らない。
さほど轟音じゃなかったためか、穏やかに大友のノイズギター・ソロを楽しめた。
ここではメロディ性はほとんど無く、ハーシュ・ノイズをたっぷりと。
ライブの終わりを告げて楽屋へ戻る大友。しかし観客の拍手へ、すぐに応えてくれた。
「アンコールあると思わなかった・・・。今度は弾きなれた自分のギターでやります」
弾きはじめてすぐ一声、悔しげに唸る大友。だいぶ弾き馴染みが違うらしい。
曲はもう一度、"Lonely
Woman"だったかな?メロディは崩され、ノイズに。
心なしか、先ほどより派手にU字金具で弦をひっぱたいている。さらにボディの後ろから一打ち、残響を響かせた。
「10年以上弾いてる自分の楽器の方が、やっぱり慣れてる・・・今日は、高柳さんに完敗、で終わりにします」
と、反応に困るMCを大友は苦笑しながら告げ、今度こそライブが終わり。
長尺一本勝負と思ったら、バラエティに富んだ大友のギター・キャリアを概観するかのような構成だった。どこか穏やかな余裕と、頑固なひたむきさが同居する、そんな音楽だった。