LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2014/2/1 西荻窪 アケタの店
出演:明田川荘之
(明田川荘之:p,オカリーナ)
今夜の深夜月例ソロは、ごつっとした耳ざわりで幕を開けた。
どの曲も聴き覚えあるが、曲名を思い出せず。記憶力がどうも落ちている。明田川はピアノに向かい、じっくりと鍵盤を叩いた。一曲目は高音フレーズへ行かず、テーマから中音域を多用する。
滑らかにアドリブへ。太い響きのピアノに特殊奏法は使わない。左手が力強くランニングし、右手が切なく旋律を紡いだ。
「暑い・・・ちょっと待ってね」
一曲終わったところで、ぼやく明田川。いったん上着を脱いでTシャツ一枚になって、ピアノ上の照明を消す。うつむき加減に鍵盤へ向かう明田川の表情は、照明のかげんで、辺りにうっすら影が見えて凄みを出していた。
2曲目はひときわセンチメンタルが炸裂する一曲。がうん、がうんとピアノが響く。
明田川は「違う音が色々聴こえるような気がする」と、休憩時間に今夜のピアノの音色を表現してた。
時に性急なテンポでピアノが鳴り、一転して緩やかなムードへ。ひときわ振り幅多い演奏を聴かせた。
3曲目で取り出すオカリーナを。中くらいのサイズなオカリーナを構えてバロック的なフレーズを一吹き。
かがんで低音のオカリーナ持ち替えフレーズを繰り返す。さらに小ぶりな一本へ持ち替えてもう一度。そして最初のオカリーナに戻る。
最後に繰り返したフレーズは、さらにフェイクされた。ピアノに戻り、曲へ。
ピアノの音に違和感あるのか、ちょっと休憩して調律にはいった。
既にこの時点で40分くらいたっている。10分くらい一息ついて、第二部へ。"わっぺ"もやったかな。
第二部を1〜2曲弾いたところで、唐突にリクエストを求められた。「りぶるブルーズ」を上げる。"Place
Evan"(2002)収録曲で、フリーさとロマンティシズムが同居する名曲だと思う。
最近はあまり弾いてないらしく「覚えてるかなー」とつぶやき弾きはじめた。暖かなタッチがふくよかに響く。ときおり、ごつっと引っかかるうねりを残して。
グッとテンポを落してソロに向かった。アドリブが転がりながらリフレインに繋がった。エンディングでの雪崩れる旋律も好き。
「次は、"アローン・トゥギャザー"ね」
明田川は一言告げ、そのまま弾きはじめる。この曲も好き。
アドリブではがっつり太いグルーヴがうねった。ここからはよどみなく、次々と楽曲がメドレーで披露された。
フリーなイントロから和音が響いたとき、大好きなスタンダードと分かる。"マイ・フェイヴァリット・シングス"。
軽快な左手とくっきりとメロディーを叩く右手。ときおり咳き込みつつ、唸り声も密やかに続く。
クラスターが一度だけ、ほんの少し炸裂した。
しかし今夜は敢えてクラスターへ向かわない。どこまでも丁寧なメロディとアドリブ展開できれいに曲がつながる。アップは控えめ、ミディアム曲が多かった。後半もオカリーナを一曲で吹いた。
曲は続いていく。ふと、繰り返されるメロディ。明田川のソロ・ライブでよく聴く、細川たかしの"心のこり"(だよなあ・・・たぶん)。
今夜は遊びで一節でなく、幾度か旋律を重ねていた。
ライブが終わったのは、深夜2時を回った頃合い。クラスターの連打は無く、静かにピアノは響き続けていた。
「もう一曲くらいやるよ」とアンコールを示唆され、リクエストを募って弾いてくれたのが「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」。
「あまり得意じゃないな」とぼやき、いちどイントロをやり直しす。短めのイントロからテーマへつなぎ、アドリブ・ソロをたっぷり。
明田川自身はピアノの響きに違和感あるそぶりだったが、演奏そのものは熱のこもった長尺ライブ。じっくり楽しめた一夜だった。
また聴きに行こう。彼のピアノはぐっと胸に来る。