LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2013/6/16  荻窪 Velvet Sun

出演:rabbitoo
 (市野元彦:g,electronics、藤原大輔:ts,electronics、千葉広樹:b,electronics、田中徳崇:ds、佐藤浩一:p,key,syn)

 今まで聴いたことない音楽を味わいたくて、ライブへ行った。楽しかった。この音楽はどこか新しい。だが、その先鋭さを上手く説明できない。

 観客は満席、休憩なしの2時間1set構成だった。市野元彦(g)の前にはKorgのミニキーボード、藤原大輔(ts)の前にはミキサーとShermanロゴの入った機材があり。千葉広樹(b)の横にもいくつか機材が並び、曲によりコントラバスとエレキベースを弾き分ける。
 佐藤浩一(key)はnard electro2の上にmini Moogを置いた。田中徳崇(ds)のみ1タム1スネアのシンプルな生ドラム。もしかしたらマイクで拾い、藤原がリアルタイムで音色操作してたかも。
 
 藤原と田中は過去に聴いたことあるが、他は初めてライブを聴くと思う。You tubeでちょっと聴いた音楽に惹かれ、ライブへ行った。

 まず市野がブライトな音色でミニマルにフレーズを重ねる。アイコンタクトでバンドがすかんと音を重ねた。
 彼らのサウンドはビート・チェンジは少なく、シンプルなリズムを田中が刻み、その上で楽曲が変化していく。だがソロ回しの発想は無く、時に市野や藤原、佐藤が並行してソロを重ねる場面も。
 
 ちょっと硬めのフュージョン的な印象をまず受けた。もっともジャズっぽいのがベース。次にドラム。だが田中は4ビートをまず刻まない。曲によっては奇数拍子と思う。決してフィルが多いわけでもなく、淡々と重ねるドラミングがクールなグルーヴを築いた。

 音色バランス的にはリーダーと思しき市野のギターが目立つ。だがソロは藤原を筆頭に曲毎で順繰りに取っていた。
 音量的には埋もれがちだったが、藤原のダイナミックで知的なソロにグイグイ引きこまれる。
 滑らかで芯の有るテナーは、時に変調された音色をまといながら、しっかりと落ち着いたフレージングを提示した。
 ブロウもフリークトーンはほぼ無し。アンサンブルでひときわ軸を強調するかのような、きれいな旋律を次々に繰り出す。存在感たっぷりだった。

 着実に叩くドラムへ千葉のベースがじっくり絡む。特にウッドベースでのプレイが良かった。底支えする低音が音楽をドライブさせる。
 佐藤は独特の指使い。ぺたっと手のひらで撫ぜるように鍵盤を操る。市野の音色と時に混ざりつつ、ときおり存在感を明らかにした。

 10曲くらいやったかな。数曲づつ曲間を空けず演奏もしばしば。楽曲構造はきっちりとアレンジされ、展開に即興性を持たせてるようだ。
 ほぼ全員が電子機材を装備するが、エフェクトの一環で使用しいたずらなノイズ方向へ向かうことはない。

 平行進行で構築アンサンブルのため見どころがいっぱい。演奏中もソリストにスポットを集めず、集合編成での印象を受けた。
 指弾きで通した市野は、メインセットで1曲とアンコールでのみ、コロッとした箱を使ってプレイする。あれは何だろう。
 ライトが弦にあたり、ピックアップへ近づけてるだけでギターが鳴る。ピッキングがないぶん、滑らかに音が続いて面白かった。大友良英が使ってるのを見たことあるかも。

 田中のドラムもすごい。むやみな派手さはないのに、鋭いドラミング。曲によってめまぐるしくスティックからマレット、ブラシへと持ち替えた。中盤の曲で右手にブラシとスティックを同時に持ち、ビブラスラップみたいに叩くのが面白かったな。

 佐藤は数曲でピアノを弾くが、キーボード的なアプローチだった。あえて、だと思う。
 ソロでもやはり音数は少なめ。撫ぜるような独特のタッチだった。

 静かで落ち着いた印象だが、一気にバンドが炸裂するときの凄みは格別だ。
 どこまで激しくなっても、コントロールされたムードを崩さない。だが、フュージョンみたいなテクニックの応酬とも違う。アンサンブルを第一に、エレクトロニクスで味付けをしつつ、基本は生演奏。個々の楽曲演奏が重なって、大きな流れを作った。

 今夜のライブはVelvet SunだからどっかにUstのログが残ってるかな?帰ってちょっと検索するも見つけられず。
 いずれにせよ。このバンドは凄い。次は7/24、新宿ピットインに初登場、だそう。

 とりあえず興味ある人は、過去の音源をどうぞ。
  2012/2/21 Velvet Sun  http://www.ustream.tv/recorded/20599232

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