LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2013/4/13  六本木 Billboard Live TOKYO

出演:George Clinton & Parliament/Funkadelic

 P-Funkのライブもビルボード東京も初体験。2nd Setに行ってきた。会場は予想よりステージが近い。階段席から見下ろす席もたっぷり。ぼくは1Fのステージ右横席から見た。
 ステージにはマイクが林立。背後はガラス張りで夜景が見える。21時の開演時間を5分ほど押して、するするとステージ背後のカーテンがしまる。メンバーがステージに現れた。
 今回はバーニーもブーツィーも同行無し。ブラックバードも離れて長い今、誰が参加してたらP-Funkの音になるだろう、とぼんやり考えていた。
 
 さて、告白する。実は最後まで、どちらの男がジョージ・クリントンか分からなかった。
 ポップスターはアイコンで記憶する癖がある。例えば。スーツ着た黒人男性と、星形サングラスかけた派手な男がいたら、ちょっとくらい様子が違っても星形サングラスの男をブーツィーかな?と思うでしょう?
 僕がイメージするジョージ・クリントンは派手なドレッド編みこみヘアのおっさん。
 その観点で、今夜はジョージ・クリントンの候補が二人いた。

 中央に立ってフライングVを持った、カラフルなドレッドヘアの太ったおっさんがジョージかな。思い切り無造作な登場だ。
 もうひとりが2曲目あたりから登場した、黒いダブルのスーツで決めた渋いおっさん。彼は最初から最後まで中央でMC、ステージをぐいぐい引っ張っていた。

 どちらをジョージとするかで、今夜のステージ感想は大きく変わる。
 ちなみにジョージ・クリントンは御年71歳。隠居してもおかしくない。したがってギター持ったおっさんの動きでも不思議はない。
 つまり「ああ、もうジョージはポップ・アイコンで、気まぐれにステージをうろつくだけか。それでもP-Funkは成立するんだ」って、営業的な視線で。
 便宜的にドレッドヘア男を以下文ではクリントンの風の男、ダブルのスーツで中央のMCをジョージと呼ぶ。

 さて。P-funkはそこそこ聴いてるが、マニアとは言い難い。今日も半分くらいは聴き覚えあるが曲名は出てこず。ここ見ると、あまり極端にセットリストを変えてないようだが。
 いきなり演奏が始まった。ちょろっと中央でクリントン風の男はギターを弾いたが、あとはほんとに自由だった。いつのまにか楽器置いて袖に消え、さらにどこかへ行ってしまう。
 演奏中にステージ奥のカーテン使い、早変わりのフリして遊んでもいた。つまりアンサンブルにほとんど寄与せず、本当に気まぐれでギターを弾くくらい。他のメンバーは時にコーラスも取ってたが、彼だけなにも務めなかった。

 楽器編成はドラム、ベース、ペットとアルト・サックスが一人づつ。ギターとキーボードが各二人。ベースとキーボードの一人は白人。しかしペットは太ってたなあ。
 メンバー紹介ないから、だれが参加か不明。P-FunkのオフィシャルWEBにもツアー・メンバーの表記無し。同Webから推測だが、BENNIE COWAN(tp),GARRETT SHIDER(g),Michael Hampton(g),FOLEY(ds),Danny Bedrosian(key)あたりがいたのかな。
 ドラムはシンプルなセットの割に、ハイハットを二本立てる不思議な編成。曲によってちゃかちゃか叩き分けていた。

 1曲が終わったところでダブルのスーツを決めたジョージが登場し、マイクを持つ。いきなりマイクを持って、ぶんぶん腕を振り回して客先を煽る。凄い貫禄だ。
 彼がステージを仕切ってた。ときどきハンド・サインで曲のブレイクやPAの出音指示を整える。
 
 もっと楽曲に軸足置いた演奏と予想してたが、実際は逆。コーラスやリフをぞくぞくばらまき、濃密なファンクを提示した。一方でミュージシャンらにもスペースはたっぷり与える。各メンバーはほぼまんべんなく、長めのアドリブを取っていた。
 Michael Hamptonと思しきギタリストが派手なソロを取る場面多く、ドレッドの男(GARRETT SHIDER?)はあまり目立たず。渋く刻んでたようだ。

 2ndセットのわりにPAバランスが冒頭はいまいち。ステージが進むにつれて、聴きやすくなってきた。でも、ステージ横だとさすがに音は団子だった。
 ステージに特段のセットは無し。いかにも営業風のステージングだが取り留めないわりに惹きつけられた。
 P-Funkらしくボーカルはぞろぞろ出てくる。女性コーラスは白人と黒人、ひとりづつ。白人のほうは狭いステージなのにローラースケート履きだ。時にハーモニーとりながら、その場でくるくるきれいに回転してた。
 男性ボーカルも数人。そのうちひとりはステージ半ばごろにワイングラス片手でおもむろに現れ、無造作にコーラスを取っていた。

 "Flash Light"で派手に盛り上げ、"P-Funk"で野太く吼える。ツアーまみれらしいアンサンブルで、カッチリ締まってる。
 クリントン風の男は既にステージから消え、入れ代わり立ち代わりのメイン・ボーカルと賑やかな曲回しでテンションは下がらない。
 ジョージは基本的にフロントに立ち詰め。ひっきりなしに観客へコール&レスポンスを求める。のびやかで力強いシャウトも披露した。
  Michael Hamptonは演奏で盛り上げる。ときに客席に降りてソロを弾き倒してた。

 CARLOS MC MURRAYがサー・ノーズで登場。上着を脱いでもろ肌で踊りまくる。いきなり倒立と思えば、腰を激しく振った。
 女性客を舞台へ引っ張り上げ、セクシーに踊ってわかせる。ぼくの位置だと、良く見えないが。ジョージ、邪魔だよう。
 CARLOS MC MURRAYはひとしきり騒いだ後、ふらっとコーラス隊のスペースへ。サー・ノーズ使ってマリファナ吹かすしぐさで、近場の観客を地味に笑わせてた。
 
 ライブはがんがん続く。数曲をメドレーでつなげてる感じも。ラップ風から歌い上げまでバラエティに富み、とにかく飽きさせない。
 中盤ではさらに女性シンガーMary Griffinも登場。"Crazy"を高らかに歌った。最初はしっとり、しだいに激しくゴスペルチックにシャウトする。裏声で吼えまくった。 

 いわゆる"主役"がいないステージ。メインのMCつとめたジョージも時に、ステージ奥に腰掛けて別のメンバーにスポットを当てる。曲によっては別の若手にMCを任せてた。
 毎夜毎夜のショー続きだろうに、ステージ進行の構成は希薄だがバイタリティはいっぱい。
 粘っこいファンクがひたすら続き、ときにビシバシとキメを連発。めちゃくちゃ上手いテクニックの披露が無くとも、強靭なグルーヴでとにかく聴かせた。
 クリントン風の男は途中でステージに戻り、フライングVをちょろっと弾く。だが別にメインを張らない。
 いったん観客席を降りて、二階席に向かう。コーラス隊が"We Want to come back!"とか歌っており、ぐるっと回ってステージに戻るかと期待したのに。そのままどっかへ行っちゃった。このへん、なんともユルい。

 再び戻ったときもドラマティックな演出無し。ほんとに何気なく、ぶらっとステージに出てくる始末。クリントン風の男は、もうほんと、好き放題な立ち位置だった。
 ステージ終盤で、CARLOS MC MURRAYが客席から女性客を何人も呼び上げる。恥ずかしがってオズオズ上がった女性も、いつの間にかノリノリで踊ってた。
 女性ボーカルに上げられた女性も、隅で楽しそうに体を動かしてたな。

 ステージが狭くセットや派手な演出は何もない。中盤で女性ゲストが"Crazy"を歌ったのが唯一のメリハリくらいで、あとは延々と似たようなテンポのファンクが続く。
 ステージ衣装もCARLOS MC MURRAYくらい。あとは普段着とさほど変わらない。

 彼らのステージの魅力は、ひっきりなしに客を煽る一体感か。アメリカでのツアーより少しはコール&レスポンスを減らしてるかもしれないが、それでも言葉に軸足置いたライブ。バラード的なテンポ・チェンジが無い。とにかくがんがん盛り上げててた。ステージ前だけでなく、左右のバルコニー席に座ってる客も。
 終盤でジョージは両耳の穴へ指を入れ舌を出す、コミカルなポーズを連発する。
 ちなみにステージ横の黒人男性コーラスは指笛を試みてたが音が出ず、苦笑して肩をすくめてた。

 ショーアップは薄くとも、サービス精神はいっぱい。終わってみたら、実に110分くらいの長尺ライブ。23時近くまで、P-Funk節をばら撒いた。
 せっかくなら聴いてみたかった"Magot Brain"や"One nation under the groove"やらなかったのが残念。1st setで、かな。ちなみに1stはフジテレビが生放送してたらしい。
 アンコールは無し。賑やかなエンディングが終わると客電がついて、ステージ後方のカーテンが開く。メンバーがぞろぞろステージを降りていった。

 さて、最後に。写真を見る限り上記の"ジョージ"がジョージ・クリントンだと思う。
 実はいまだに、実感はない。だって、71歳だぜ。あの恰幅で2時間近くも盛り上げるステージを、毎夜毎夜今でも繰り広げる躍動感は何なんだ。
 今回のライブは一過性の出稼ぎじゃなく、オーストラリアに続くワールド・ツアーの一環。日本公演後もP-Funkは、アメリカ・ツアーが控えてる。
 功成り名を遂げたジョージは引退もせず、パワフルなステージを続けてるってわけだ。しみじみ、すごい。
 見る前は営業っぽいかと懸念したが、とんでもない。
 良い意味で肩の力抜けた自由度と、しぶといファンクネスが産み出すP-Funkの底力を存分に味わえた。

(*)なお、以下がここで記載あったミュージシャンリスト。ベースは二人いなかった気がするけども?
George Clinton(Vocals)
Steve Boyd(Vocals)
Paul Hill(Vocals)
Kendra Foster(Vocals)
Mary Griffin(Vocals)
Kim Manning(Vocals)
Shonda Clinton(Rapper)
Tracey Lewis Clinton(Rapper)
Carlos”Sir Nose”McMurray(Dancer)
Bennie Cowan(Horns)
Greg Thomas(Horns, Vocals)
Michael “Kidd Funkadelic”Hampton(Lead Guitar)
Garrett Shider(Guitar, Vocals)
Rickey Rouse(Guitar)
Lige Curry(Bass, Vocals)
Jefferey Bunn(Bass, Vocals)
Michael“Clip”Payne(Keyboards, Vocals)
Daniel Bedrosian(Keyboards, Vocals)
Jerome Rodgers(Keyboards)
Foley(Drums)

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