LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2013/1/13  高円寺 Showboat

出演:ERA
 (壷井彰久;vln,鬼怒無月:g)

 ERAのライブはそうとうに久しぶりに聴く。自分のWEBで感想書いた記憶が浮かばないので、10年以上ぶりかも。
 ちなみにERA自体は活発にライブを行っている。とはいえゲストなしのワンマンだと、ひさしぶりの東京公演らしい。
 今夜は昨日のCoilに続き、stopmotion.jpが主宰のUst生中継有り。当日の様子はこちらのURLをご参照ください。
 はい、ライブ感想終わり。

・・・と終わらせるのも芸が無い。
 ライブ感想書くとき、録音は一切しない。なまじ記録あると、正確さを求めて記憶をたどりづらい。今夜はUst中継あり。全く無視しようとも思ったが、やはり曖昧な記憶だけで事実と異なるのも気がひける。
 かといってアーカイブ見ながら遂次に感想書くのも、なんか違う。ううむ。行けない時にUstの記録はありがたいが、こういう時は痛しかゆし。

 ということで、ライブ感想。USTは2カメラでスイッチング。アップ映像なため、好きな時に好きな奏者の演奏姿を、常に見られるわけではない。これを味わえたのが、ライブでのメリット(その1)か。
 爆音ではないが、そこそこPAの出音は大きい。今夜は鬼怒無月がアコギ2本、壷井もアコースティック・バイオリン。どちらもエフェクターを通し演奏していたが、鬼怒はあまり派手に音加工はしていなかった。

(Set List)
 1.  02:40〜  09:26: Sailing Stone
 2.  13:09〜  21:27: Propella
 3.  25:49〜  33:06: 忘れられた舟
 4.  37:28〜  44:20: Uncle Einar
 5.  47:58〜  58:10: Pica
(休憩)
 6.1:18:15〜1:24:49: Lavender Hill
 7.1:28:42〜1:34:44: (新曲:鬼怒 作曲)
 8.1:38:11〜1:43:10: (新曲:壷井 作曲)
 9.1:49:34〜1:56:49: Three Colors of the Sky
10.1:59:31〜1:06:35: 金環食
(アンコール)
11.2:11:00〜2:18:49・Foghorn

 アーカイヴでUstでも追体験できるため、セトリ書くのは簡単でいい。タイム・チャートは演奏のみ。全曲の曲間でMC入る。ある意味、丸ごとERAのライブを放送することで、今まで断片的にYou tubeなどで配信のみ見てた人にも、ライブでの秘密が明かされた。
 すなわち、演奏のスリリングさとMCの気楽な落差がすさまじいところ。ボンフルと同様に。

 今夜は4thアルバムの曲がほとんど。(1)から涼やかに壷井のバイオリンが疾走する。つややかなソロをたっぷり聴かせ、アイコンタクトで鬼怒へアドリブをつなぐ流れがかっこいい。
 この曲に限らず、どの曲もあっという間に終わってしまう印象あり。実際にタイム・チャートで見ると、5〜8分くらい。合間に数分のMCをはさむ構成だ。MCの内容が気になる人は、Ustをどうぞ。

 (2)はウエスタン調の軽快な曲。ワウをかけたバイオリンで明るいフレーズへ、猛烈なアコギのストロークが絡む。今度は比較的じっくりとギターもソロを取った。
 エンディング間際でパワフルかつ緻密に弾きまくるギターが強烈だ。同じ指のポジションで激しく指板を左手が上下し、シェイクハンドでガシガシかき鳴らした。ううむ、かっこいい。
 なお直後のMCによれば、この曲はそうとうにギター弾くのがしんどいらしい。
 
 イベリア半島あたりを連想する(3)は、繊細なギターのソロに耳をそばだてた。フラメンコっぽく切ないフレーズが美しい。滑らかな指の動きは、軽々と複雑なフレーズを奏でた。そして高らかに、バイオリンがのびやかに高音を響かせる。
 
 (4)はアルバム未収録。ブラッドベリの「10月はたそがれの国」に所収の同名(邦訳"アンクル・エナー")にインスパイアされた、鬼怒の曲。こんどは柔らかいカントリー・タッチ。楽曲ごとに同じアンサンブル、同じ楽器で多彩な色合いを魅せる。
 くるくると踊るように、それぞれがソロを聴かせる。ギターのフレーズは歯切れよい。
 ERAはライブでも平行アドリブや完全即興ではなく、互いにソロを交換しサクッと曲が終わる。1曲くらい、完全インプロも聴いてみたいな。

 1stセット最後の(5)も4thアルバム収録。ぐっとダーク・プログレなムード。切ないギターのイントロへ、深く重たくバイオリンが乗った。
 二人のソロをたっぷり堪能できた。

 後半セットは壷井の(6)は基本が7拍子。途中に6拍子が挟まる。二人のアドリブも7拍子が基調で、ふくよかなフレーズと拍子感の鋭さが合いまったムードがとても良い。
 ちなみに冒頭でいったんやり直しあり。上のタイム・チャートは再スタートのタイミングから記載しています。

 ここから新曲コーナー。鬼怒、壷井ともに1曲づつ持ち寄ったが、どちらも数日前に書き下ろした作りたてほやほや。タイトルは双方未定。その日のMCから"大王烏賊"(鬼怒:作)、"脱力"(壷井:作)と、互いの曲へ好き勝手な仮題をつけて笑いあう。

 新曲(7)へは、鬼怒がまだ曲構成に手を入れたいそぶり。Ustのアーカイブがどの程度残るか知らないが、貴重な"初期テイク"の記録になりそうだ。
 たぶん6拍子。ときどき別の拍子をはさみ、流れをひとひねりしてる。ギター・ソロでは指が一時も休まずうねうねとネックの上を動き回った。ほんのりヨーロッパを思わせる曲調だ。
 いっぽうで壷井の新曲(8)はぐっとセンチメンタルさを前面に出した楽想。4拍子が中心ですすり泣くようなメロディは、アドリブでさらにしとやかさを増した。

 ここからさらに圧巻。弾きなれた(9)は先日発表の再録音盤2ndのボートラにも収録された、3rdアルバムのタイトル曲。
 MCではそのまま「5枚目になる2ndへ収録の、3rdアルバムタイトル曲」と、非常にややこしい説明をそのまましていた。

 新曲での微妙な緊迫感を抜けたように、鬼怒は素晴らしくロマンティックなギター・ソロを聴かせる。そっと音が弾み、滑らかにフレーズが展開する。一時も留まらず、溢れ出すメロディが、すごく綺麗だった。
 壷井も一歩も引かぬアグレッシブなプレイ。晴れやかなソロをたっぷりと聴かせた。

 (10)の猛烈な演奏が2ndステージの最後。互いにアドリブでは高速フレーズを惜しみなくばら撒く。テクニックを感じさせぬ飄々とした二人だが、ここでは明確に早弾きをたっぷり。メカニカルなフレーズではなく、ゆっくりした譜割からがっつり弾き倒しを織り込み、メリハリつけた。

 アンコールは1stに収録の曲。ライブで聴くと、メロディの交換から展開する曲だと実感した。訥々とした爪弾きから、深遠なメロディを呼び寄せる。
 鬼怒が左足首を寝かせ、その足首内側へ右足を足台代わりに載せてたのが、ちょっと面白かった。
 演奏はばつぐんに淑やかだ。ゆったりと透明なフレーズが空中を漂った。

 今夜は18時スタートと、普段よりかなり早いライブの幕開け。第三部があるかと期待したが、さすがにそれは無いか。
 たっぷり曲を聴けたわりに、とてもあっさりとライブが終わった印象。もっともっと聴きたい。10年間ぼくがライブを見そびれていたことが、改めて惜しい。

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