LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2011/11/19   三鷹 三鷹市公会堂

出演;渋さ知らズ 〜三鷹市公会堂回収寸前大感謝祭〜
(ヒゴヒロシ/山口コーイチ/鬼頭哲/渡部真一/吉田隆一/立花秀輝/磯部潤/
 山本直樹/辰巳光英/斎藤良一/宝子/ギデオン/若林淳/川口義之/関根真理/
 北陽一郎/大塚寛之/佐藤帆/青山健一/高橋保行/すがこ/山下恭弘(写真)/
 不破大輔/ファンテイル(ギター)/ペロ/さやか/南波ともこ/東洋/横沢紅太郎/
 田中篤史/とっくん/片山広明/太田惠資/シモ/ようくん)

 改修する三鷹公会堂の最終公演とし、公益財団法人三鷹市芸術文化振興財団の主催で、渋さ知らズのライブが行われた。出演メンバーは地底新聞からコピペ。
 同時に音楽、美術、踊り、パフォーマンスのワークショップも行われ、発表の場として開場時間が開演の一時間前と、ゆとりもったスケジュールだった。

 開演時間を30分ほど経過して中へ入ると、ちょうどワークショップの子供たち+渋さの演奏が終わったところらしい。壇上で不破大輔が挨拶をしていた。残念、聴きそびれ。
 手作りの楽器で子供たちは演奏したみたい。終わった後、ロビーに楽器群が飾られていた。
 
 最終公演だし。壁に絵が塗りたくられ壁がぶち抜かれの阿鼻叫喚図もちょっと期待したが、そこまではっちゃけは無し。
 でもロビーの中央に、美術部の作った大きな前衛オブジェを飾っていた。さまざまな雑貨を組合わせたもの。モニターが置かれ、作る過程などを映していた。

 中へ入るとステージを扇方に客席が囲む、ちょっと変わった設計。ステージがずんと前へ広々せり出している。座る位置によってはステージが見切れそう。
 ステージ後方には渋さの垂れ幕がいくつも飾られ、中央に映像が映されていた。
 この会場はかつて、全員集合の第一回放送を収録した場所でもある。渡部真一のMCやさやペロのダンスに、それを思わせる演出もあった。

 ちなみにチラシではドラゴンが飛ぶと前置きあり。ずどんと天井高い構造で、ドラゴンは映えると思ったが・・・ライブ中に渡部より説明あり。倉庫を掃除中、ドラゴンが行方不明になったそう。

 さて、開演時間をちょっと過ぎて、まず不破が挨拶。ワークショップの大人の音楽組を呼び出した。
 向かって右からパーカッション、鍵盤に木管金管、中央前にアコギ2本の10人以上編成の並び。即興です、の不破の前置き。そしてハンドキュー。
 ワークショップの素人組だけで、演奏が始まった。

 不破のサインに従い演奏が盛り上がり、順に楽器が鳴る。ある程度、キーは決まってたのかも。ギターのポジションはあんまり変わってなかった。
 完全フリーの混沌が、しだいにちょっとメロディアスに。いかにも渋さらしく、ソロパートも次々に。不破の合図で一人、また一人、前に出てはソロを取る。
  いつの間にか、ステージ下の階段に6人の女性が。ゆったりと体を揺らす。踊り組のワークショップたちか。
 背後の高台でも白塗りのワークショップ組が数人、踊っていた。

 パーカッション以外は、全員ソロを短めながら取ったみたい。
 したがって、しっかり長めの演奏。不破のキューで全員休符。ギターのみがイントロ・・・らしかったが、一人が落ちて平謝り。素早く仕切り直しで、メロディが現れた。

 耳馴染みある、"ナーダム"のフレーズが。本当なら、すかさず渋さのメンバーがステージに現れる段取りだったろう。
 不破がワークショップ・メンバーの中をかき分け、袖に向かって鋭くサイン。この厳しさも、ほんわか素人を指揮するさまも、両方が不破らしい姿だった。

 "ナーダム"のテーマが繰り返され、渋さのメンバーがスタンバイ。すっと不破の指が動き、音楽が炸裂。ステージが明るく照らされた。
 タイトなビート、迫力あるアンサンブル。
 ワークショップのミュージシャンがハケる。片山広明が、高らかにソロを取っていた。
 さやかとペロが現れる。広々したステージ前のスペースで、優雅で見事なダンスを披露した。

 今夜のステージは一曲が長め。ほとんどのミュージシャンが長尺ソロを取る。それぞれが2回くらい、かな。メモを取らず、記憶頼り。
 片山の後はファンテイルの硬質なエレキギター・ソロ。ギデオンが立ちあがり、野太くソロを吹いた。
 
 曲の最後は、川口義之のハーモニカだったろうか。すぱっとアンサンブルがブレイクし、無伴奏で暗闇の中、ハーモニカの音が鋭く響いた。

 合間を置かず、"股旅"に。渡部真一が勇ましく吼え、背後ですがこがゆったりとバナナを振る。つるつるしたチェックの一枚ものブラウスに、頭に載せて布をかぶせてるのか、ぷっくら膨らんでいた。
 ちなみに写真はクレジットある山下恭弘に加え、もう一人いたように見えた。山下は精力的にステージ下を動き、シャッターを切っていた。

 "股旅"で太田惠資の素晴らしいソロ。時折抽象的なフレーズを重ねる冒頭部から、どんどん旋律に熱がこもっていく。
 太いアンサンブルの上で、真っ赤なエレクトリック・バイオリンを弾きまくった。

 ステージの背後で、前で、白塗りの東洋たちが身をくねらす。今夜はコミカルで素早い動きも。
 ちなみに頭に被り物したサングラスの巨漢は誰だろう。
 背後のスクリーンはロビーに置いたオブジェの制作風景から、リアルタイムっぽいCGに変わる。あちこちで見どころあり。混沌としたステージこそ、渋さの醍醐味。

 弾きまくった太田が喝采を浴びたところで、ソロは吉田隆一へ。いきなりハイトーンでバリサクを軋ませる。横の鬼頭哲らがマイクを合わせたり、コロガシのモニター・ボリュームを指示したり。
 構わず吉田は吹きまくる。やがてすっくと立ち、ステージ中央へ。
「どこ行くのよ」と、渡部の声も聞こえぬそぶりで、そのまま客席へ雪崩れこんだ。ノーマイクでスパイ物っぽいリフを吹きながら客席通路を歩いてゆく。
 すかさずもう一人、カーブド・ソプラノを持ったメンバーが追っかけ、しばらく客席練り歩きに。
 これがきっかけか、この後も客席練り歩きの演出が幾度もあった。
 ステージに戻った吉田は、もう一度高らかにバリサクを轟かせた。
 
 次が"樺太チョッパー"だっけ?"火男"かな。渡部の「ザッパ〜!サンラ〜!アイラ〜!」ってシャウトが、とても印象に残ってる。
 さやペロの踊りは、ますます凄みを増す。フロアへ体を横たえ、足を高く上げる。開脚前屈や倒立も。柔軟な身体の動きが綺麗だった。
 前半では東洋も、ステージ下から三転倒立で舞台に戻る場面もあったな。すがこはステージ前にやってきて、のびやかにバナナを振った。

 このあたりで立花秀輝、辰巳光英、大塚寛之らもソロを。メロディアスからどんどんフリーク・トーンへ突き進む立花。どんどん鼻眼鏡になり、演奏中に素早く戻すそぶりも相変わらず。
 辰巳はテルミンで幻想的なフレーズをばらまき、大塚寛之はディストーション効いたフレーズをぐいぐい繰り広げ、観客から大喝采だった。
 北陽一郎のトランペットは鋭く鳴り、斎藤良一もぐわんぐわんスライドを使ったソロを。なお斎藤のソロは、予想よりクリーンな響きだった。

 "犬姫"では、ペロだけがステージに立ち尽くす演出。もう一人白塗りの男が現れ、ゆるやかにステージ前に立つ。睥睨する存在感がすごい。
 混沌と山口コーイチがキーボード・ソロ。たっぷりインストやソロで盛り上がった後、関根真理がのびやかな喉を聴かせた。

 高橋保行や鬼頭のソロも中盤だった記憶あり。トロンボーンのソロは、すっごく力強く迫った。

 "Fisherman's Band"の前後で、渡部のMCがたっぷり。前述の「竜が無くなった」のあと、応援と称してワークショップのパフォーマンス組が順番に登場する。
 はっぴ着てシュールな一発芸を繰り広げるが、ぎりぎり白けることはない。
 しかし「カレーを振舞います」と一言のみ。そのまま立ってる芸(?)が凄かった。
 まさに司会っぽく、渡部が大笑いしながら進行する。

 弾ける"Fisherman's Band"あたりで、再び踊り組のメンバーが布地少ない恰好でステージに現れた。さやペロも加わり、賑やかに踊る。白衣姿に包帯ぐるぐるサングラスな渋さのメンバーも。今夜は踊りが豪華だ。

 なお、渋さのメンバーはドラム二人にベースがヒゴヒロシのみ。ホーンは10人くらいと中規模な編成。しかし高い天井のためか、音の抜けは良かった。
 PAの出音も耳に優しい。混ざり具合と、ばらけ具合のバランスがちょうどよかったと思う。

 "ライオン"からバラードに。"渡"だったかな?白衣の渋さの男は、包帯を取ってビニール傘を高く上げ、観客通路をゆっくり歩いてステージに向かった。
 不破が指揮しながら、大きく手を横に。曲は、"ひこーき"。
 たっぷり溜めながら、関根が歌う。ソロは2回目に回り、太田が滑らかなフレーズを、静かに奏でた。やがて、アンサンブルと混ざっていく。

 次が"Pちゃん"だっけ?さやペロがステージ前で、ドリフ"いい湯だな"よろしく、"ババンバ、バンバンバン"と手を振るしぐさも。
 ドラム二人の同時ソロも、このあたりだっけ?

 終盤で片山の歌謡曲ソロ。忘れた、とか間違えた、とか。途切れさせながら、次々に吹く。山本リンダの"困っちゃうな"と"ポパイ"をやってた気が。時に、伴奏も加わりにぎやかに盛り上がる。
 最後は"サティスファクション"で締めるが、ファンキーなソウル・リフがあっさり終わっちゃった。

 渡部が「椅子の後ろに封筒があります。中に10万円の商品券がある・・・かも?」とMCし、観客を立ちあがらせる。
 演奏はもちろん、関根のパーカッション・ソロ。ギターが唸り、"本多"のリフが流れた。観客の手が上に上がり、ぐるり回される。
 
 ホーン隊がテーマを吹き始めると、ワークショップのメンバーが次々にステージに乗った。子供たちや大人の楽隊、踊り組にパフォーマンス組。ステージは人でギッシリ、盛り上がった。

 エンディングからすかさず"仙頭"。すぱっと切って、"すてきち"をバックにステージからメンバーが去って行った。
 ちょうど3時間くらい、たっぷりのステージ。"すてきち"が袖からずいぶん長く聞こえており、アンコールを求める観客も。しかし場内アナウンスでステージの終了が告げられた。
 ステージ後方のモニターにも、終わりの挨拶が映った。

 主催やワークショップのためか、客席には年配夫婦や子供連れなどさまざまな客層。渋さは独自の百花繚乱さを提示しつつ、音楽は比較的わかりやすい。とんがったさまを見せつつも、懐深い。
 親しみやすさと前衛が滑らかに同居する、渋さの実力をたっぷり味わう楽しいひと時だった。

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