LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2011/1/29 西荻窪 アケタの店
出演:明田川荘之
(明田川荘之:p,オカリーナ)
今年最初の深夜ライブ。明田川荘之は11月にひねった右手の小指が完治せず、苦労しているそう。
ピアノに譜面台をはめた後、そのままライブが始まった。
前半3曲ほどは、タイトルがよくわからず。3曲目はあまり聴いた記憶のない曲だった。2曲目が古澤の"エミ"だったかな?
冒頭から熱っぽい。1曲目は情感たっぷり、2曲目は日本的なセンチメンタリズムが炸裂する。
ていねいに、柔らかく。じっくりとピアノが膨らんだ。
いきなり怒涛だった。テーマがリフレインされつつ、勢いよくアドリブが挿入される。
右足がペダルをゆっくりと踏んでいく。
今夜はMC無し。ほとんど拍手する間を観客へ与えず、次々と曲が進行した。
1曲目の最後で、ぐっと体を乗り出してピアノ線を指で、ざらり撫ぜた。
どの曲もテーマとアドリブの溶け合いが心地よい。粘っこいグルーヴを左手で表し、右手は次々にメロディを奏でた。
その路線を踏まえつつ、3曲目の展開も興味深い。左手はゆっくりと和音のアルペジオを鳴らし、右手がガンガン突っ込む。
双方が相まって産み出す、サウンドが気持ちよかった。聴いていて、演奏に引き込まれた。
4曲目が先日も聴いた"Twilight wave before
dark"だったろうか。
一音一音が華やかに舞い、切なく切り込む。途中でテンポはぐっと早まり、高まった。
一呼吸おいて、次の曲。オカリーナを持つ。演奏前に「右手小指でオカリーナを押えるのがつらい」と漏らしていたが、聴いていてさすがに気にならず。
最初に吹いたのは、"枯葉"っぽい響きの曲。二つのオカリーナを時に持ち替えつつ、ふっくらと鳴らす。
やがてオカリーナを片手で持ったまま、ピアノの鍵盤へ指が落ちた。そのままピアノ独奏へ進む。暖かなプレイ。
次の曲もイントロはオカリーナ。"南部牛追歌"だったろうか。くっきりとメロディを響かせつつ、テンポよく繰り返す。
そのままピアノへ流れた。日本調の旋律がジャズにぴったりマッチする、明田川による独特の世界観を堪能できた。
曲の最後は、再びオカリーナのソロ。吹きながら立ち上がり、そのまま別のオカリーナに持ち替えた。
そして、アドリブは続く。
ピアノに向かった。曲は"アフリカン・ドリーム"。雄大な世界観が広がる。
ざらり、とかき上げたグリサンドの響きが美しい。
途中のフレーズ感覚が新鮮だった。
このあたりから、明田川のクラスターが増えてゆく。今夜は両肘で鍵盤全体を打ち鳴らすより、ひじや掌で細かくクラスターを叩きのめす。
幾度も繰り返す音の響きは、鍵盤から音楽をわしづかみに持ち上げるような凄みと、痛快な大胆さだった。
ひとしきり、いや、たっぷりとアドリブ。
さらりと世界が切り替わり、"ブラックホール・ダンシング"へ。
素早いテンポでメロディが駆け抜ける。しゃっきり鋭くエッジが立ったフレーズは、芯が温かい。
ここでもクラスターをたっぷり。高音部や特定の音をたたくたび、ぴいんとピアノ本体か、店の壁あたりに共鳴を感じた。刺激的なひと時。
最後はゆったりしたコーダへつなぎ、穏やかな風景でライブをしめた。
約1時間。ちょっと短めだが、とても濃密で素晴らしい演奏だった。ぜひ、本ライブの音源をCD化してほしい。
今夜は聴いてて、すごく音楽へのめりこめた。