LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2010/10/17  大宮 ソニックシティ

出演:山下達郎
 (小笠原拓海:ds,伊藤広規:b,難波弘之,柴田俊文:key,佐橋佳幸:g,土岐英史:ss,as、
  国分友里恵,佐々木久美.三谷泰弘:cho、
  山下達郎:g,key,vo)

 一年半ぶり、短いスパンで今年も達郎のライブ・ツアーが行われた。ぼくは去年の1月ぶり。達郎のライブはこれまで間が空いてたため、ほとんど待たされた気がしない。
 
 今後はライブも活動の軸足にする、の有言実行を果たしてくれた。
 ソニックシティは、多分初めて行ったかな。キャパは2500人。会場時間ちょうどにつくと、既にロビーは人でいっぱい。どうやら早めにロビー開場してたらしい。
 けれども物販は人の山・・・相変わらず「開演時間までに皆様お買いになれないかも」のアナウンス。これは何とかならないか。せめて、もっと早くロビー開場するとか。

 達郎のライブでは開演前のBGMなドゥ・ワップも、達郎の選曲。せっかくだから、これも全部聴きたいじゃない。
 長蛇の列に並ぶ。しかしある程度サクサクと列は進み、開演前に座席へつけた。

 今夜はファンクラブ優待で、最前列。92年くらいのライブで前から3列目はあったが、最前列は初めて。わくわくしながら開演を待っていた。
 だからとてもメモは取れず、ライブへのめりこんでて細かいところは記憶がごっちゃ。あっさりめにライブ感想は書かせてください。

 ステージのセットは今回もしっかり。アメリカの田舎家屋がイメージだろうか。大きな木造の建物が、上手と下手にひとつづつ。双方とも二階建てのセットで、一軒の二階では映ってるテレビがブラインド越しに見えた。
 ちなみに番組はSSBによると"Big Wave"だったそう。

 その他はけっこうシンプル。ステージには人工芝が敷かれ、達郎のスペースだけは板張り。ステージ奥には小型トラックが置かれ、サックスの立ち位置になる。
 小さな鉄製のテーブルなどもあり。庭先でのライブってコンセプトかな。

 達郎の立ち位置にはアンプとエレキギター。横にいつものゴジラが置かれ、さらにチョコソースの大きなボトルが、でんっと置かれていた。
 スタッフが楽器の最終チェック。

 開演時間ちょうどに、1ベルが鳴った。観客から沸く、大きな拍手。

 待つこと数分。客電が落ちる。テープで達郎のアカペラが流れ出した。"希望という名の光"のコーラス部分だ。
 セットの建物のドアが開き、ミュージシャンたちが登場する。そして一呼吸おき、達郎が現れた。
 
 バンドメンバーは昨年と同じ。一曲目はなんだろう、と思ったら。達郎のカッティングで導かれたのは"HAPPY HAPPY GREETING"。意外だ〜。もちろん、ライブでは初の始め方。
 デビュー35周年ツアーが今回のテーマなため、それにもひっかけたんだろう。

 出音はそれほど大きくない。しかし前だとPAが混ざり合うまでは行かず。反対側で弾いていた、難波のキーボードはステージを通じて、余り聴こえなかったのが残念。
 達郎はカッティングも軽やかに、抑え気味な歌い方でスタート。バンドの演奏はがっちり頼もしい。
 間をおかず、"SPARKLE"に繋げた。テンポはちょっとゆっくりめ。

 エンディングはあまり引っ張らず、コーラスとの掛け合いからコーダへ向かう。
 達郎のギターが、すごくかっこいい。声もぐいぐい出てきた。

 続く"DAYDREAM"あたりからか、バンド全体を聴かせるアレンジが身体に馴染んできた。
 今回のライブはソロ回しを多用しつつ、常に達郎のギターを生かす。シェイクハンドでカッティングを刻む、ブラウンのテレキャスターがライトを反射してギラギラ輝いた。
 バンドメンバーのソロも、けっこうじっくり。グルーヴィさが溢れた。
 ステージの陰で、スタッフTシャツを着た女性スタッフが、楽しげに踊ってたのがチラリ見えた。

 "DONUT SONG"では大滝の"ハンド・クラッピング・ルンバ"へつなぎ、手拍子を観客に求める。
 佐橋がカウベルをオフマイクで、ちゃかちゃか楽しげに叩いてるのが見えた。
 メドレーで"アイコ・アイコ"に。このへんは実に手馴れてる。小笠原のドラミングは、粘っこいニューオリンズ・ビートを着実に叩いた。

 一転してスロー、"僕らの夏の夢"に。エレアコに持ちかえる達郎。
 ちなみに今夜は基本がテレキャスター、あとはこのアコギ。二本のギターだけを達郎は弾きまくった。
 
 長めのMCが入り、シュガーベイブの想い出を語る。当時の"完コピ"と称し、"Windy lady"に。シカゴ・スタイルの陰あるビートが、ぐいぐい胸に来る。夢中で聞いていた。
 たしか佐橋や柴田とのソロ回しも。達郎がステージに背を向け、ミュージシャンのほうを向きながら、ひたむきにカッティングを続ける。そう、楽しそうに。
 エンディングのフレーズは、耳馴染み無くて新鮮だった。
 
 鈴木茂の"砂の女"に。シュガーベイブのレパートリーとはいえ、地味なところを無造作についてくる。
 達郎の震える歌声が、ホールいっぱいに響いた。

 そして"SOLID SLIDER"へ。くわー。こうくるか。すごい。
 タイトなキーボードのフレーズ、着実に刻むベース。ドラムが静かに煽り、達郎のギターが空気を震わす。抜群のアンサンブルだった。
 もちろん、達郎のシャウトもがっつりと。
 
 ここでまた、ペースを変える。ステージ横に置かれたローズに座り、弾き語りで"潮騒"が始まった。ライブでやるのは、ずいぶん久しぶりだそう。
 途中からバンド演奏も加わるが、このアレンジが素晴らしい。ごく自然にさりげなく、しかし分厚く音楽が膨らんだ。
 正直このときは、歌声や個々の演奏じゃなく、音楽そのものに浸っていた。

 メンバーがはけて、達郎のアカペラ・コーナーへ。
 ちなみにこのアカペラのテープ出しを袖で操作するスタッフを、「このツアー中に、ステージに引っ張り出したいんだよね」と、達郎が誘う。
 登場こそしなかったが、このスタッフへも拍手が飛ぶと、「拍手が来たの、ツアー中で初めてだ」と達郎が笑った。

「次は新曲を準備しなくちゃな」と言ってくれたが、今回は2曲とも既発表音源なのが、ちょっと残念。
 ハーベイ・フークァに捧げたムーングロウズの"Most Of All"、「ステージで歌うと、広がる声が気持ちいい」と話した、フラミンゴスの"I Only Have Eyes For You"へ。
 伸びやかな歌声がいっぱい。
 PAの出音は爆音じゃない。もっとボリューム上げて、ぐわっと歌声に包まれたかった。
 ちなみに"Most Of All"では、セットの2階で人影のスライドが映写された。

 達郎へエレキギターをスタッフが渡す。メンバーがステージに現れた。
 流れるアカペラは、"O Come All Ye Faithful"。
 達郎はギターを持ち、俯いて音楽へ耳を傾ける。馴染みあるギターのイントロ。
 そう、"クリスマス・イブ"。

 ステージ背後のホリゾントには、クリスマス・スタイルにライトアップされた街並みと、満点の星空が映し出された。

 続いて最近のバラード"希望という名の光"に。途中で"蒼茫"を挟む。
 観客へ歌わせたいそぶりを、達郎の掛け声でちらっと感じたが、そのままあっさりとエンディングに行った。
 
 間をおかず歌う曲は"さよなら夏の日"。ステージの一番前まで、達郎がハンドマイクで出てきた。ゆっくりとステージの右へ、そして左へ。歌いながら歩いていく。
 ある程度移動すると、マイクのケーブルをくるっと廻して勢い良くさばく。そんな仕草も決まってた。

 目の前で達郎が歌ってる。改めてすごい。
 ニット帽をかぶり、ブルーのシャツにスリムなジーンズ。シャツにはいくつもの汗染みが滲んでた。

 もう一曲、シュガーベイブの曲を。当時は毎回、ライブ最期の曲だったそう。
 "今日はなんだか"。
 達郎の声がぐうんと伸びた。キーボードやギターのソロ回しも、抜群だった。
 明るくて切ない楽曲が、しみじみ良い。30年以上前の曲だが、今でも生々しい。

 ステージはクライマックスへ。まずは"LET'S DANCE BABY"。
 クラッカーも当然鳴り、達郎はいったん歌いやめてまで「君たち、ほんとうにしつこいよ」と笑った。
 中盤のメドレーは、趣向を変えて日本の曲シリーズ。
 "おもちゃのチャチャチャ"、"真っ赤な太陽"、"津軽海峡冬景色"、"天城越え"。「おまけ!」と歌ったのが"北酒場"だったかな。

 さらにロイ・オービスンの"ミーン・ウーマン・ブルーズ"に。この曲も、この位置が定番とは知らなかった。
 なおクラッカーの関係で、"LET'S DANCE BABY"だけはどのツアーでも必ず演奏してきたそうだ。

 今度はぐっと時代が進み、"アトムの子"へ。冒頭のドラム・テープは無く、小笠原の生演奏でタイトに進む。
 中盤ではなぜか、"ウルトラマン"の歌が挿入された。達郎、佐橋、柴田らがスペシウム光線のポーズを取り、笑いを取る。

 そして最期が"LOVELAND,ISLAND"。達郎のギター・ソロもばっちり。軽快なカッティングが響いた。
 エンディングは幾度も繰り返される。既に総立ちになった観客が、手拍子で応えた。
 佐々木久美が楽しげにダンスしてた。
 もちろん、終わり際にトラメガ。アンプの後ろからすっと取り出し、達郎はメガホンで高らかに喉をふるわせた。

 アンコールはちょっと間を置いて始まった。達郎はピンクのシャツに着替えてる。
 ここまで3時間弱、出っ放しで弾きつづけたことになる。

 一曲目は最新シングル"街物語"。揺れるグルーヴが心地よい。
 ライブで聴くと、バンド・サウンドがしみじみいかしてる。

 "RIDE ON TIME"に。バンドメンバーの紹介を兼ねたソロ回しに。
 佐橋はカントリー・スタイルのフィンガー・ピッキングを聴かせ、達郎が「地味だけど、難しい」と紹介。
 続く難波は小笠原と視線を合わし、7拍子のフレーズを繰り返した。
 後ろで佐々木が踊りながら、指で表紙を数えて見せたのに吹き出す。

 達郎の生声シャウトは無し。でも、ハイトーンから低音まで響かせて、「これで3オクターブ半」と幅広い声域を披露した。
 最期は唇に指をつっこむ。ぽこん、と頬を鳴らす。今回はこういう演出なんだ。

 メンバー全員がステージ前に出てきて、観客へ挨拶。
 これで終わりかな・・・と思わせて。そのままメンバーは楽器へ戻る。
 "いつか"にアンコールが続いた。観客から大きな歓声。
 中盤のフレーズは、佐橋のギターと柴田のシンセ、双方で奏でてたようだ。

 ステージに残ったのは、土岐と達郎だけ。
 観客へ力強いエールを送ったあと、アカペラのイントロがテープで流れる。
 "Your Eyes"。じっくりと達郎が歌いかけた。

 しめて3時間20分。今回もじっくりどっぷりたっぷり。
 がっつり逞しいリズム隊に支えられた演奏の力強さにまずやられ、達郎の変わらぬ伸びやかな歌声にのめり込む。
 素晴らしいライブだった。
 しばらく達郎はライブも重点的に活動するらしい。まだまだ、このアンサンブルを生で聴ける。楽しみだ!

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