LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2009/10/3 西荻窪 アケタの店
出演:明田川荘之ソロ
(明田川荘之:p、オカリーナ)
今夜はこれまで聴いてきた明田川荘之の深夜月例ライブと、ちょっと違う音楽の切れ味に、グイグイのめりこんだ夜だった。
演奏はオカリーナの独奏から。中ぐらいのオカリーナを持った。
しばらく吹くとオカリーナをピアノの上へ置いて、鍵盤を弾き始めた。
ピアノから流れるセンチメンタルなムードが次第に充満する。テーマは崩し、展開してゆく。
ふっと弾きやめた明田川は、ペダルを踏みながら身体をピアノの下へ。足元に置いたアタッシュケースから、オカリーナを取り出す。
その場でいくつかのソフトケースを開けて、オカリーナを選ぶ。数十秒くらい、ピアノの残響のみが漂った。
ようやくオカリーナを選んだ明田川は、ざらりと軽くピアノ線を撫ぜて鳴らす。
その残響をバックに、新たな曲を吹き始めた。"リンゴ追分"だ。
<セットリスト>(不完全)
1.津軽の故郷
2.リンゴ追分
3.大感情
4.ミヤコシノ
5.プレース・エバン
6.ジャズ・ライフ
7. ?
8. ?
9.マイ・フェイヴァリット・シングス
(アンコール)
10. ?
(3)は三上寛の曲。(6)はかなり久しぶりにやるオリジナルらしい。(7)もオリジナルかな。今夜は曲目紹介の丁寧なMCがあったけれど、(6)と(7)は聴き取り損ねた。
深夜ライブでは珍しいアンコールの(9)も、オリジナル曲かな。一部、聴き覚えあるメロディを中盤で混ぜていた。
(1)〜(3)はメドレーで演奏した。"リンゴ追分"はオカリーナで、再びピアノに向かい"大感情"をどっぷりと披露する。
ピアノの響きがシャープだ。(3)の冒頭で高音のクラスターを軽く入れるが、パキンと小気味良い鳴りだった。
テーマが膨らみ、アドリブからテーマへ。明田川の独特なグルーヴがたちまち溢れる。唸り声もひっきりなしに飛び出した。一瞬咳き込むが、それでも唸りは止まらない。
(3)は途中でクラスターへも。明田川流のメロディアスな音塊が気持ちいい。
続く(4)もクラスターがいっぱい炸裂の熱演。フリーなフレーズから高速フレーズのテーマに雪崩れ、アドリブに入る瞬間ブレイクする。ぐっとテンポを落とし一呼吸置いて、改めて即興へ向かった。
アップテンポと中間部のギャップが面白い。身体を大きく動かしながら、明田川はピアノを弾きまくった。
一転してしっとりと盛り上げたのが(5)。今夜は新鮮なフレーズがテーマの直後に奏でられた。
テーマとアドリブが混在し、幾度もテーマのフレーズが畳み込まれる。この明田川のスタイルがとても好き。
切々とメロディは崩され、するりと復活し浮かび上がる。その過程で旋律の流れが活き活きと強調される、特有のグルーヴ。聴いていてどんどんのめりこんだ。
(6)も熱演。テーマのフレーズが3つくらいあるが、次々と冒頭に弾かれる。それも、鋭く切って。
演奏の過程でアドリブを混ぜ、盛り上がったところで次のテーマのフレーズに行かず。最初のテーマをざらり弾いた瞬間、すぱっと次のフレーズに向かった。その素早さが印象に残る。
曲そのものも長尺でたっぷりと。唸り声が響き、ピアノは猛烈に轟いた。
(7)はゆったりなミドルテンポ。隙間を生かしてじっくりほのぼのな感じ。
(8)もグルーヴが気持ちよかった。粘っこくアドリブが高まり、クラスターも出たような気がする。
そして"マイ・フェイヴァリット・シングス"。圧巻だった。
ここまで曲目紹介をしてた明田川だが、(8)が終わって拍手に応えると、そのまま俯いて(9)を弾き始めた。イントロでピンとくる。大好きな曲なので、嬉しい。あまり明田川はソロでこの曲をやらないから。
ちなみにあとで伺うと明田川歩との最近のライブでは、この曲を取り上げてるそうだ。
テーマをロマンティックに奏で、アドリブへ突入する。
豪腕でグルーヴが膨らみ、幾度も繰り返されるテーマとアドリブの流れは力強い。クラスターもたちまち飛び出した。
中盤の解釈が素晴らしかった。
即興かテーマかは不明ながら、数音の切なげなメロディが登場。これが幾度も断続的にソロへ織り込まれる。
数音弾いて肘打ちクラスターへ、すぐまた浮かび上がったメロディは即座にアドリブへ溶ける。
途切れなく続くその対比は、DJミックスのようだ。ピアノソロを聴いてて、こんな独特の印象を持ったのは初めて。
歯切れよさが流れを産み、振り幅大きく音楽を揺らす。そのムードがとてつもなく気持ちよかった。
終盤はクラスターが頻繁に繰り出される。肘打ちが両手打ちに変わり、鍵盤をメロディアスに打ち鳴らした。
最期はテーマへ。力強く奏でて終わった。すっと屈みこむ明田川。
もう一曲あるかな、と予想したが、にこやかに立ち上がって終演を告げる。
ありゃ。と思っていたら、アンコールに応えてもう一曲やってくれた。
短くね、と呟きながらも長尺気味。猛烈なスピードのジャズだった。テーマともアドリブともつかぬフレーズがめまぐるしく駆け、ときおり明田川が演奏するスタンダードなフレーズが織り込まれた。
素早く駆け抜け、曲が終わる。一時間半近くにわたる、熱演ライブだった。
今夜はひときわ、聴きどころたっぷりなライブだった。例月同様に録音もあったし、いつかCD化されるといいな。
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