LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2009/7/5 吉祥寺 Manda-la 2
出演:渋さ知らズ劇場
(片山広明、立花秀輝、鬼頭哲:sax、辰巳光英;tp、磯部潤:ds、関根真理:per,vo
山口コーイチ:key、室舘彩:fl,vo、東洋、たかこ、すがこ、加絵:舞踏
不破大輔:b、ゲスト:小森慶子:b-cl,ss、久住昌之:g,vo)
ゲストに久住昌之と、渋さ知らズには半年振りかの小森慶子を迎えての渋さ知らズ劇場。マン2での渋さは、ずいぶん久しぶりに聴く。中央右に関根真理が配置されるセッティングで、彼女のパーカッションさばきがよく見え、楽しかった。
久住は数曲だけ歌うのかと思いきや。ほぼ1ステージぶん、10曲近く歌った。なお久住のゲスト参加は数ヶ月前から決定するも、具体的な構成は数日前に決まったとか。
ちなみに久住は渋さのライブは数度体験あり、99年前に東急裏で演奏の時も見てたという。
ライブは2時間半ほどで、休憩無しの一本勝負。小森は踊るわ歌うわその他もろもろ。とても楽しそうに演奏をしていた。アルト・サックスでなくバスクラとソプラノを持ち込んだのがこだわりだろうか。バスクラのストラップはちょっと前に出るような棒がつき、一方向からのみ脇でも支える、3点支持の見慣れないものだった。
メンバー紹介から演奏へ。"パ!"から始まった。ホーン隊が揃ってテーマをかなで、すささっと雪崩れる瞬間の響きが滑らかで、すごくきれいだ。
最初のソロは、片山広明の目合図で小森が立った。バスクラを支えながらマイク・スタンドを立てる。
正直、PAバランスの按配でちょっと音量が厳しい場面が幾つか。最初はきれいなメロディを紡ぐ。曲が進むにつれ、激しいブロウっぽいアプローチでバスクラを吹き鳴らす場面も。
ソロは立花秀輝に回る。抽象的ながらメロディ感覚を残したフレーズが印象的。
わきからしずしずと、東洋が現れた。
今夜の舞踏も新鮮なアプローチ。ゆっくりしたポージングと、激しい表現が入れ替わる。
さらに片山が、辰巳光英がアドリブを盛りたてた。
なんといってもサウンドはリズム隊の強靭さが快感だった。磯部潤は刻みながらもフィルをひっきりなしに噛ませる。
がっつりグルーヴを持っていったのが不破のウッドベース。
関根がひっきりなしに楽器を持ち替え、シェイカーからティンバレス、ジャンベと次々にビートを出す。それを山口コーイチのピアノがワイルドに支える。
特に短い場面転換のように、ベースがいきなりテンポを変え、素早くドラムとパーカッションがくっつく。
"パ!"で20分強。そのなかで、ソロの最中でも、ぐんぐんテンポが倍や半分に変化し、スリリングな展開を。
片山がすっと目合図し、途中でテーマが挿入される。揃ってホーン隊が、流れるように旋律を奏でた。
次は"犬姫"。室舘彩がしみじみと歌い上げ、テーマへ向かう。
すっと立った鬼頭哲は、朗々とソロをじっくり取った。
たかこも姿を現し、東洋と舞台の左右で舞う。ときおり、立ち位置を交換して。
バリサクのソロがじっくりと。次はフルートのソロだったかな。片山がブロウをかまし、混沌へ向かう。
途中で室舘が歌ってるそぶりだったが、マイクがオフでいまひとつ聴こえず残念。
2曲で約1時間。そのままゲストの久住昌之を不破は招いた。
久住の演奏は聴くの初めて。最初はカントリー、次いでブルーズ。赤いシャツと薄いサングラス姿、さっきだれかが作ったばかりという帽子を被った。帽子のつばのよこから、ぶらり下がる鎖がアクセント。顔の横でふらふら揺らしながら歌った。
バナナを持ったすがこと加絵が客席、カウンター横から現れる。渋さのステージで馴染みの振り付けで、久住の歌にあわせバナナを振った。
久住の声はよく通る。コミカルな歌詞の曲を次々と、10曲弱やったかな。
基本的に渋さは伴奏。最初の曲で片山が短いソロを取り、あとは野太くアンサンブルを重ねる。そのアレンジが基本だった。
曲によっては混沌なフリーを混ぜる場面も。エレクトリック・ウクレレを久住が演奏する、"落ち武者"って曲で。
久住は基本、アコースティック・ギターをかき鳴らしながら歌った。一曲だけエレキを弾いたくらい。
ドレミの歌では小森や室舘、不破も後ろでコーラスを入れる。とりわけ小森が楽しそうだったな。
渋さと競演ならではの曲が、詩の朗読と"ひこーき"。
詩の朗読では"皇帝"を演奏するなか、ときおり大笑いしながら久住が語った。どれも楽器のソロ回しを短くして曲を多くしたぶん、さくさく進行して小気味よい。
"ひこーき"はメインを関根、コーラスを室舘が歌う。さらに低い声で久住が歌うスタイル。この曲は演奏もじっくり、ボーカルもいっぱい。室舘のハーモニーでマイクがオフ気味で惜しい。
山口がピアノの上に載せたキーボードで、オルガン音色のソロを取ったのはここだったろうか。
基本的に久住は自作曲を演奏。一曲だけ、詩は自作、曲は鈴木慶一が作ったと言う"骨"を演奏。符割がひろびろした久住の自作曲とはちょっと違う、慶一らしい小刻みなメロディが楽しい。
舞踏は途中から全員参加。バナナを両脇で振る中、東洋とたかこは着衣で登場。
ワンピース姿でにこやかにたかこが舞う横で、東洋はレディースのジャケットを着て、考え込むようなポーズやじっくりと動きを見せた。
久住のソロは"自由"ってタイトルの曲で締めた。清志郎が歌っても似合いそうだな、と思いながら聴いていた。この曲のメロディは、特によかった。
ここまでで2時間弱。再び渋さのみのステージに。最初の曲はタイトルわからず。すいすいと流れるアップテンポのメロディだった。
演奏は盛り上がり、次第に加速する。そのままメドレーにて、不破か片山どちらかの合図で、テンポはそのまま"ナーダム"へ。
勢いよく疾走し、小森はソプラノに持ち替え吹きまくる。
最期は賑やかにエンディング、不破のシャウトで"仙頭"が締めだった。
歌伴だとひときわ、渋さのしぶとさを実感。シンプルなフレーズから一気に加速、自在に展開できる。
さらに渋さのみのステージではテンポをがらがら途中で変えつつ、まったくブレない着実さで確かな演奏力を実感した。
実質、休憩無しのステージも流れが出来てて良かった。渋さの多様性としたたかさを味わえる、刺激的なライブだった。