LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2009/1/31    渋谷 NHKホール

出演:山下達郎
 (小笠原拓海:ds,伊藤広規:b,難波弘之,柴田俊文:key,佐橋佳幸:g,土岐英史:ss,as、
  国分友里恵,佐々木久美.三谷泰弘:cho、
  山下達郎:g,vo)

 本格ツアーはひさしぶり。02年"Performance 2002 RCA/AIR Years Special"以来になる。単発のアコースティック・ライブがあったとはいえ、MCで達郎は本格ツアーへの体力的な不安を語っていた。蓋を開けたら、もっちろん問題なし。
 今夜はツアーのおおまか折り返し地点。
 達郎の音楽を存分に堪能できて、まるで新人お披露目公演みたいな初々しい趣きまで感じた。

 これまでツアーへ到らなかったのは、ビジネス的段取りや音楽的問題があったそう。前者はともかく、後者は青山純と重実徹。別のミュージシャンにべったり押えられ、年末のツアーが事実上不可能だったという。
「6年待ったが、もう我慢できない。今年は大阪フェスティバル・ホールの取り壊しを機会にツアーを決断、実行に至った」
 のニュアンスで達郎は説明していた。

「ここ数年間、すごく時間を無駄にした気がする。還暦まであと4年。もっと活動します」
 MCの一言が、ずしっと胸に響く。

 前置きが長くなった。
 会場のNHKホールのキャパは約3,600席と、定番の中野サンプラザに比べ千人強多い。もちろん、ソールド・アウト。

 東京公演はすれっからしのファンや業界客が多く「果し合いのようなライブ」と、達郎が言うことが多い。今夜は「オーディションみたい」って表現も使っていた。
 本ツアーで東京公演は今夜が初。かなり構えてたそう。
 ところが観客の空気を暖かく感じて、終盤には「リラックスできた」と感謝の言葉を述べていた。
 達郎ライブはMCまでがっちり構築だが、この言葉は素直な気持ちの発露と捉えたい。

 なかなかライブの感想へたどり着かない。でも、ぜひ書きたい。
 ライブの演奏以外でも、さまざまに気持ちが動いた素敵な一夜だったから。

 時間前に到着すると、4列縦隊の観客がびっしり。パッと見、年齢層がずいぶん高い。
 会場したら物販コーナーはたちまち列が出来た。だが今回は工夫が素晴らしい。02年のライブで感じた不満が改善されていた。
 パンフレット、CD、グッズが別コーナーで販売された。パンフはグッズ・コーナーでも買える(CDコーナーではどうだか、確認しそびれた)。

 すなわち観客ニーズで動線を分け、てきぱきと購入が可能。
 さらに会場時間も45分とゆとりをとり寛げた。会場規模のおかげか、スタッフの配慮かは不明。しかし出だしから、この心配りが嬉しかった。
 
 そして客席へ。今夜は2階席から見ていた。フロアは達郎選曲と思しき、ドゥ・ワップが次々にかかる。1曲だけ聴き覚えあったが、あとは全て知らない。残念。
 ステージのセットは市街の町並みを一望する屋上を模したもの。
 ビートルズの"Get Back"セッションがアイディアでは、の指摘に膝を打つ。ちっとも気づかなかった。

 両脇にビルの壁。達郎の足元へ大きく描かれた、丸に星印はヘリポートか。横にちょこんとオブジェで、階下の明り取り窓を表現した。
 ステージの背後には大きなビルボード。"08-09 Tatsuro Yamashita"の文字が、逆向きに立てられていた。
 今夜は舞台や照明もひときわ丁寧なつくりだった。これにはあとでも随時降れる。

 さあ、ようやくライブが始まる。一ベル。さっそく観客から、大きな拍手が飛んだ。

 BGMのドゥ・ワップがフェイドアウトし、達郎のアカペラ・コーラスのリフが響く。
 客電が落ちてステージに薄明かり。まずメンバーが。次に達郎が現れた。ニット帽をかぶった姿で。
 観客へ手を上げ、ブラウンのテレキャスターを手に取った。

 かき鳴らされる、耳に馴染んだシャープなカッティング。
 "Sparkle"だ。
 ステージ後方のビルボードがいきなり、クレーンでぐわんと動く。明るく文字を照らして客席へ向いた。

 "Sparkle"は若干、テンポが遅く感じた。歌声も抑え気味。シャウトの勢いも様子を伺うかのよう。
 この点が唯一、年齢を感じた点か。過ぎ去った時間が悔しい。
 他のステージは知らないが、今夜はスロー・スタートでじわじわと身体を温めていったた感あり。

 総じて達郎の喉は抜群。クオリティは変わらず。
 ステージが進むにつれ、ぐいぐいと声が出てきた。ならば1曲目を"Sparkle"にするかどうか。選曲バランスとの相談か。
 
 しょっぱなの出音はめちゃめちゃ硬い。ベースがずっしり出て、ドラムが重厚に響く。キーボードはほとんど聴こえぬロックな音作り。
 5曲目くらいからバランスは緩み、アンサンブルは耳に馴染む。でも最初は、極端な音作りに戸惑った。
 不満めいたことを言うのはこれで終わり。あとはひたすら、楽しかった。

 "Sparkle"のアレンジは"Joy"を踏襲。土岐英史が軽やかにサックスを吹き、"Wonderin'"でコーダへ向かう達郎の合図に沿って雪崩れこむ。
 達郎は足を細かく震わす、独特の姿勢で歌った。
 間をおかず、ずしんと重たいサウンドでジャングル・ビートが流れ出した。
 うわ、これが次か。"Jungle Swing"。

 新たなドラマー、小笠原拓海は24歳。山下洋輔のバンドにいたそう。多分ぼくは、初めて聴く。
 青山純のドラミングを踏まえつつ、ちょっとしたフィルの手数は小笠原の方が多そう。しゃきっとしたビートで、メリハリをつけていた。そこへ伊藤広規が強烈に低音を響かす。
 同じく新メンバー柴田俊文は佐橋佳幸の古いバンド仲間だそう。キーボードをいくつも積上げ丁寧な音使いだった。ハモンドB3、レスリー122、ヤマハMOTIF XS、DX7II-FD、 オーバーハイムMATRIX12が機材だった、って記述もネットで見かけた。
 いっぽうの難波弘之はピアノと、キーボード一台。あれはローズらしい。シンプルなセットで流麗なタッチを存分に披露した。

 客席をときおり、素早い光がさっと切り裂く。なんだろう、と思っていたが・・・どうやら、達郎が奏でるギターのボディへ、ライトが反射してるようだ。

 佐橋のギター・ソロからフェイド・アウト気味の"Jungle Swing"から間をおかず、膨らむシンセの響き。同じフレーズの連打で、レコーディングは伊藤が悲鳴を上げたとかいう、"Blow"。
 いきなり意外な2曲連発で、心が浮き立つ。
 
 タイトなリズムで達郎の喉はぐんぐん色気が出てきた。
 照明はさりげなく効果的。すっと幾本のスポットライトが達郎へ集中する。ヴァリ・ライトめいた演出は一切無し。素朴な動きのライティングのみ。
 しかし明かりプランを丁寧に作りこむ、演劇的な光だった。

 セットのあちこちに電球やネオンみたいな光源を仕込み、曲によって光らせ効果を出す。
 曲によって舞台の色合いを変え、アドリブ部分ではメンバーへもふんだんにスポットをあてた。
 達郎へのスポットは足元に円を描く。この直径も、場面ごとに大きさを変えていた。あるときはぎゅっと凝縮、あるときはゆっくり拡大していく。
 足元の光だけでも、複数のニュアンスを表現した。

 達郎が一言、挨拶。バックは"Donuts Song"のリフが流れる。
 2階席から見てたら、一番前の観客なのに、双眼鏡で達郎やメンバーを眺めるのが見えた。気持ちはわかる。

 ライブの幕開けを告げる言葉のあと、達郎は鼻歌みたいに童謡"春よ来い"を一節。"Donuts Song"へ雪崩れた。
 CDでのグルーヴ感は洗練され、ハイハットの滑らかな響きが耳に残る。

 ここから中盤。MCを挟みつつ曲へ、の構成。暗転の中、まず達郎は一番前の観客へ近づきなにやら一言。マイクに戻って喋った。
「録音してない?・・・一番前で双眼鏡は勘弁してください。集中力が・・・気持ちはよくわかります」
 苦笑する達郎。
 
 今夜の選曲は新旧ファンが楽しめるのを配慮という。客電をつけて初めて達郎ライブを見る人の確認をする。今夜はまずまずの比率らしい。
 80年代、活発にライブの時代によく演奏した曲、と紹介。
 
 "夏への扉"。柴田が紡ぐシンセが寛いで響く。背後のコーラス3人、国分友里恵、佐々木久美、三谷泰弘がばっちり整ったハーモニーで応えた。

 MCで大阪フェスティバル・ホールの解体への不満、さらに今夜NHKホールの存続を祈願した。

「フェスティバル・ホールに捧げる曲としてセット・リストに入れました。大阪でライブのとき、最初にやった一曲。フェスティバル・ホールは閉鎖されましたが、この曲は引き続きセット・リストに残すことにしました。」
 以前のライブはメンバーのソロも長かったが、そのときによく演奏したという。

 曲は"ついておいで"。達郎のファルセットが響く冒頭は、リズムの混み合い具合が複雑なアレンジになってそう。
 サビが幾度も繰り返される。達郎は身体をメンバーへときおり向けつつ、ギターをかき鳴らす。
 ソロは小笠原から土岐のソプラノ・サックスに繋がった。

 なお今夜のステージはほとんどの曲でエンディングは短め。「LPでフェイド・アウト後を聴かせるのがライブ」と、昔にラジオで聴いた記憶あり。
 でもさすがに今夜はエッセンスは残しつつ、さくさくと曲を続けた。

 メンバー紹介のMC。今回のバンド・メンバー、特に小笠原の才能を達郎は絶賛した。 
 メンバーのテクニックがよくわかる曲、と紹介したのが"Paper Doll"。
 ドラムとベースが強靭に、独特の不安げに響くグルーヴを存分にかもしだした。

 各人のアドリブをたっぷり挿入した。まず達郎のソロ。粘っこくギターのフレーズを重ねた。
 ちなみに達郎は背後にアンプを置いた。もちろん有線接続。

 アドリブは伊藤が短く、難波のピアノ・ソロに繋がる。華やかなピアノを響かせたあと、今度は柴田がぶいぶいシンセを唸らす、アドリブをたんまりと。
 さらに佐橋もほんのり歪ませた音色で、ソロを取った。
 
 間をおかず曲は"さよなら夏の日"。難波のイントロから。
 達郎はギターを置き、マイクへ向かって体を絞りながら喉を震わす。
 しみじみと、伸びやかに。
 
 ライティングの表情は曲に合わせて巧みに変化した。セットを奥行き深く魅せ、建物を照り返しや、建物の窓を光らせたり。
 切なさ、そして温かい雰囲気を。染まる光で表現した。

 「一つ前の、ヒット曲を」
 "Forever Mine"。大好きな曲だが今夜聴けると思っておらず、とても嬉しかった。
 アレンジもライブ構成。ストリングスはシンセ音源で響かせず、すっきりバンド・スタイルでまとめた。

 スタジオ版とは逆のアレンジ。ライブではベースががっしり入る。小笠原は小さなパーカッションひとつでビートは絞った。
 達郎はハンドマイク。中盤は無伴奏でしみじみと歌い上げ、最期にスパッとドラムがスティックをもってコーダだけ締めた。ゴージャスなCD版とは明確な違いをつけたアレンジが良い。

 ステージ中央へスタッフが小さな椅子を。お茶で喉を潤した達郎は、腰掛けてまた話し始めた。以前のライブよりは喋りが短くまとまってた気がする。
 恒例のアカペラ・コーナーは、新曲投入がなくて残念。次に期待か。

 インタビューでアカペラの製造過程をたびたび聞かれたと言い、歌にはデジタル加工無し「"偽装工作"はありません」と、にんまり笑う。

 アカペラは3曲。"LA VIE EN ROSE〜バラ色の人生"、"Chapell Of Dreams"、"Have Yourself A Merry Little Christmas"
 冒頭に「絶対音感が無いもので」と前置き、ハーモニカで軽く音を確認する。
 立ち上がってハンドマイクで、身体を揺らしながら歌う。

 "Chapell Of Dreams"は今まで作った中でも、もっとも気に入った出来だそう。
「初めて聴く人は、きっと楽しめます。前に聴いたことある人は・・・いいものは何回聴いてもいい、ということで」
 声がどんどん出てきて、ホールに達郎の歌が響き渡った。

「ちょっと季節はずれですが」
 ストリングス・アレンジの"Have Yourself A Merry Little Christmas"を。ステージ右側に立ち位置を移動し、切々と歌った。

 ここからの流れは明らか。ステージの明かりが落とされる中、一人アカペラによる"We Wish You A Merry Christmas"が流れた。
 メンバーが袖からステージに戻ってくる。達郎もテレキャスターを持った。

 耳慣れたギターのリフ。"クリスマス・イブ"。大きな歓声が上がった。
 ステージ背後の壁に、一面の星が映される。幾箇所もが瞬く、凝った照明だった。
 すうっと、一本の流れ星が落ちた。

 コーラスは出てこず、バッキングは達郎の一人多重のみ。演奏がすいすいと進み、エンディングはハーモニーと掛け合い形式で。
 ドラムはタイトにおかずを挿入した。

 拍手が止む間も無く"蒼氓"へ。ステージはビルの絵が背後から照らされ、朝へ向かうさまが表現された。前曲からの時の流れをたくみに示す。
 次は"Morning shine"か"Morning groly"、はたまた"太陽のえくぼ"か、と予想したが、そこまでベタな選曲は無かった。

 で、"蒼氓"。佐橋がギター・ソロを取った。達郎はアコギを。
 終盤のコーラスは粘っこく続くが、観客へハーモニーを促す演出はカットされ、スムースに続いた。現れたコーラスの3人が、滑らかに声を重ねる。
 恒例のカバーはインプレッションズの"ピープル・ゲット・レディ"、2曲目は不明。さらにディラン"風に吹かれて"、岡林信康"友よ"と続く。
 特に2曲目以降はほとんどメロディを崩して、歌詞のみで判別できるだけ。
 
 アコギを持ったまま"Get Back In Love"。コーラスは背筋を伸ばして立ち尽くし、一糸乱れぬハーモニーを加えた。
 達郎の歌声はどこまでも優しく、太い。
 アレンジは"Joy"を踏まえてたと思う。
 
 歌い終わるとギターをエレキへもちかえた。
 イントロが新鮮な短い刻みをバンドで効かせ、"Bomber"へ突入。ライブで聴くの新鮮だ。
 伊藤がリフを野太く貫き、アドリブへの道筋をしっかり作る。
 背後の照明はさまざまな部分が輝き、しぶとく明るく光った。

 ソロ回しは佐橋のギターから。上品なワイルドさを見せ、難波がピアノを強く叩く。
 ピアノに乗って、さらに佐橋はソロを続けた。
 続けて達郎のギター・ソロ。これまで"Loveland,Island"で披露してたカッティング中心のフレーズを。ステージ右側に移動して、腰を落とし刻みを鋭くばら撒く。
 前後にアクセントをずらす、小気味よいギターをいっぱい聴けた。

 伊藤のリフ。そしてソロのメインは小笠原。スポット・ライトが眩くあたり、かなり長尺のドラム・ソロだった。
 達郎も伊藤も難波の傍に寄り、ステージの脇から小笠原のプレイを見守る。難波が頭を振ってリズムに乗っていた。

 小笠原のソロはロック調でリズムを刻みながらタムを打ちのめすスタイル。フリーやジャズ的なロールは意識的に避けていた。バスドラが重く轟き、手数はひけらかさぬ程度に多い。
 しなやかなスティックさばきに、ソロの最中から幾度も、盛大な観客の歓声が起こった。

 あとはエンディングまで電車道。"Let's dance baby"から。
 観客のクラッカーはもちろんあった。かなりタイミングバラけたのはご愛嬌。達郎が両肩をすくめてみせる。
 ここでのカバーは、サム・クック"ツイストで踊り明かそう"から。アバ"ダンシング・クイーン"、ボビー・フリーマン"Do You Wanna Dance?"だったと思う。
 続けて達郎の"踊ろよフィッシュ"も、そうとうメロディを崩して淡々と歌われた。

 エンディングは幾度も繰り返す、馴染みのアレンジ。
 意外なことに、このあとプレスリー"Mean Woman Blues"へ。ロイ・オービスンのうがい声もきっちり入れた。
 ライトが賑やかに飛び交い、R&Bスタイルでバンドが盛り上がる。
 本ツアーならではのアレンジだ。

 ステージは"高気圧ガール"に続く。うわー、意外。RCA時代のアップ曲のかわりに持ってきた。
 "高気圧ガール"の声はコーラスが入れてたのかな?よくわからず。
 エンディングでサビを思いっきり伸ばすアレンジも、がっちり聴けた。

 大トリが"ライド・オン・タイム"。達郎ギターのイントロから。
 背後の壁は雲がかかり、きれいな青空が表現された。
 達郎はギター持ったままステージ背後、ちょっとした高台に。
 苦笑いした達郎は、両手を口に当てて観客へ呼びかける。
 「もう歳なんだから・・・」

 ギターをポイントで、ざんっと一弾き。ノーマイクでステージの隅々まで、達郎は声を響かせた。
 声を出したまま中央まで歩み寄って歌い継ぐ。
 いっきにバンドが加わった。達郎は足をじたじた揺らす、独特のスタイル。

 最期はアンプの後ろから、ひょいとトラメガを引っ張り出した。
 高らかな喉を響かせ、さくっと本編を締める。二時間半強くらいのボリューム。

 アンコールに応え出てきた達郎はシャツを着替えてた。
 いきなり"ずっと一緒さ"を。ここに持ってくるか。達郎はアコギ。アコースティックさを生かし、ちょっとCDとは趣きが異なった感じのアレンジだった。
 
 小笠原がすぐに、次の曲を。全て生音だろうか。
「手塚治虫、生誕80周年です!」
 達郎がシャウトし、"アトムの子"が始まった。夢中で聴いてて記憶は不確かながら、たぶんリズムは小笠原が巧みに叩き分けていた。

 "鉄腕アトム"の歌も、メロディを崩して強引に達郎が挿入する。
 土岐がたっぷりとアルト・サックスのソロを取った。 

 ついに"Downtown"の投入。背後ではコーラス隊が、くるくると身体を揺らしステップを踏む。佐々木の体が、ひときわ切れよくダンスを踊ってた。
「Pleeeease Listen this.Remenber Sugar Babe?!」
 達郎がシャウト。聴いてて胸が熱くなる。

 大団円。メンバー全員がステージ前に立ち、一列になって大きく礼をした。

 達郎だけが残る。無伴奏で"Your eys"を歌いだした。
 途中から多重アカペラが入るアレンジ。ステージ背後に、すっと土岐のみが現れた。

 滑らかなサックス・ソロ。吹きおわると、さりげなく姿を消す。
 舞台は黒く塗りつぶされ、達郎だけが明るく照らされる。
 エンディングに向けて、ひときわ大きく歌声が響いた。

 "That's My Desire"が流れた。客電がつく。達郎は深く礼を。
 マイクスタンドに引っ掛けた、小さなタンバリンを手に取る。
 観客の一人へ、すっと手渡した。ステージの途中、最前列で双眼鏡を持ってた観客に。
 達郎は観客を見渡しながら、ステージの左右でも礼をした。ゆっくりステージの端へ歩を進める。
 勢いをつけ、さっと舞台から去った。
 
 全部で3時間くらい。変わらぬボリュームのライブをたっぷりと楽しめた。
 掲示されたセットリストへ観客が集まる。スタッフがさりげなく、撮影禁止のプラカードを持って立っていた。
 何人かが熱心に、無言でセットリストのメモを取る。

 余韻いっぱい。ものすごく充実して、聴き応えあるライブだった。
 耳馴染みあるアレンジ、曲も全て知っている。でも、新鮮で力強い。ライブが持つ活き活きしたパワーにやられた。ライブ強者の達郎は健在だった。

 達郎はMCで「これからは毎年、どんな形あれライブを続ける」と宣言した。へんな言い方だが、達郎はぼくにとって「有言不実行」でも問題ない、数少ないミュージシャンの一人。
 "Joy 2"や"オンスト4"のリリースと同じように、ぼくは待ち続ける。実現の暁には、待ったに値する音楽を、必ず作ってくれる人だから。

 でも、本音はもちろん「有言実行」を期待。お願いします。

<セットリスト>
1.Sparkle
2.Jungle Swing
3.Blow
4.Donuts Song
5.夏への扉
6.ついておいで
7.Paper Doll
8.さよなら夏の日
9.Forever Mine
10.LA VIE EN ROSE〜バラ色の人生
11.Chapell Of Dreams
12.Have Yourself A Merry Little Christmas
13.Christmas Eve
14.蒼氓
15.Get Back In Love
16.Bomber
17.Let's Dance Baby
18.高気圧ガール
19.Ride On Time
(アンコール)
20.ずっと一緒さ
21.アトムの子
22.Down Town
23.Your Eyes

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