LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2009/1/24 落合 SOUP
出演者:T.Mikawa+Lasse Marhaug、ASTRO/Hiroshi
Hasegawa、ALPHA AILUROS、CRACKSTEEL
ライブ・ペインティング:Miyuki(from
OHPIA)
インキャパシタンツが90年代にカセットでリリースした作品の復刻、10枚組ボックス・セットの発売記念パーティ。会場のSoupははじめて行ったが、とってもわかりづらい。
銭湯の地下2階、打ちっぱなしの地下室。看板はそとに何も無い。狭い入り口の足元へ、申し訳程度に"Soup"と書かれた額が置いてあるのみ。
バーカウンターが小さくある以外は打ちっぱなしのスペース。入り口部分にかろうじてエアコンはあった。イベントの性質もあり、フロア後方のカウンターに豆電球がついてる以外、客電は無し。ステージを照らすスポット・ライト的な明かり以外は闇だった。
その照明も薄暗い。OHPの映写レンズの前に複数のカラーフィルムをぶら下げ、抽象的な色合いを照らす。空調でわずかにフィルムが震えてた。
さらにそのOHPが産む効果をビデオで映し、同時進行でプロジェクタ投影して重ね合わせるようなライティングだろうか。
換気もろくに無い中、フロアにタバコの煙が充満、DJによるBGMもハーシュ・ノイズ。CD−Jを使ってた。ときおりCDを変えるが、ビート感は無し。金属音がじわじわみしみし鳴る。
かなり胡散臭げな雰囲気が漂った。白人男性らの姿も目立ち、大声で英語が飛び交う。ほんとにここ、日本か。
50人くらい集まったと思う。これでフロアは7分の入りといったところ。
当日はライブ・ペインティングの企画もあり。壁に黒く塗られた1メートル四方くらいの板が、無造作に立てかけられていた。
ステージ・スペースはテーブルが組まれフロアとフラットな立ち位置。大きなテーブルの上に、さまざまなエレクトロニクスがごっちゃりと載っていた。どれがなにを意味するのか、残念ながらさっぱり。
PAはステージ左右にスピーカー2本、フロア中央にでかいのが2本。サラウンドで音像を回転の効果はたぶん、無かったと思う。轟音ではあったが、耳をつんざくほどでもない。
最期の美川らのステージまで、スピーカ横で聴いてても、耳鳴りしてる実感無かった。
CRACKSTEEL (19:05〜19:40)
95年に活動開始という日本のハーシュ・ノイジシャン。ここにディスコグラフィーがあった。以前に"Bitch Jap Run"を買って以来、一度ライブを見てみたかった。
開演時間を5分ほど押し、すっとCRACKSTEELが機材の前に立つ。前触れも無くライブは始まった。長髪をだらり垂らし、無表情に。
右手がせわしなくサンプラーと思しき機械を操作しまくる。左手が操作は、カセットの4trMTRだろうか。初手からハーシュをばら撒く。
忙しく動く右指と出てくる音の相関は、いまひとつわからず。同じようなノイズをキーアサインし、立て続けに頭だしかな?
細かい音使いは轟音に潰される。さらにエフェクターを7個ほど机の上に並べ、操作の合間に左手を交差させ、つまみやスイッチをいじる。右手はサンプラーを叩き続ける。
ときに右手の手首も使い、エフェクターのスイッチを入/切りを。
低周波が足元の空気を振動させる。
ペインティングもいつの間にか始まっていた。Miyukiは床へぺたんと座り込み、漆黒のキャンパスへ白いペンで細かな線を綴る。
アンモナイトのような細密画がいくつも描かれ、キャンパスを埋めていった。
興奮した観客がフロアで吼える。
CRACKSTEELはカセットを入れ替えた。操作しながら。轟くノイズは下腹部に来た。ドローン的なノイズが変わったようだ。
腰の下辺りの空気が、むずむずと振動する。
CRACKSTEELのノイズはビート性は希薄。濃密にノイズで空気を埋め尽くす感触。数種類のノイズを平行させ、積み重ねも意識した。
ステージ・アクションは特に無い。淡々と演奏を続け、ときにせわしなく動く手指にライブ感を持たせるくらい。
ふっとカットアウトで、ライブが終わった。
ALPHA
AILUROS(Government Alpha +
Reiko.A)(20:55〜21:25)
元メルツバウのReiko.Aと、95年から活動する吉田恭淑のGovernment
Alphaが、合体ユニットのALPHA AILUROS。ALPHA
AILUROS名義で既に何枚も音源がある。聴くのは初めて。
手早く機材がセットされた。DJのノイズが消える。
Reiko.Aは、ゆっくりと左手を宙へ持ち上げた。
手にあわせて、ノイズが高らかに鳴いた。
Government
Alphaの機材はよくわからず。幾つかの機材を積上げ、左手でときおりカオスパッドを操作する。さらに手元へ小型ゲーム機みたいなものを置き、タッチペンでせわしなく画面をこすっていた。
彼もビート面でアプローチはなし。ときおり音源を変え、カオスパッドに指を沿わせると、ハーシュの蠢きが音程を変え上下した。
Reiko.Aは左手の下に半球の機材。テルミンみたいなものか。手をかざす位置でピッチが変わり、離すほど高まるようだ。右手の操作はミキサーかな。ヘッドセットで出す声を、猛烈なリバーブでひしゃげさせ、ノイズと混ぜ合わせた。
若干、シャーマニックな雰囲気を醸すReiko.Aだが、パフォーマンス性を前面に出さない。
あくまでノイジシャンでステージに立った。左手の半球は位置の上下だけでなく、撫で回し押さえつけ、エレクトロ・ノイズを這わせるように操った。
耳をつんざく高音は機材からか、声の変調なのか、さっぱりわからず。
指先が忙しいGovernment
Alphaとゆったり凄みを利かせたReiko.Aの動きは対照的だった。
音像は思ったよりすっきり。Reiko.Aのシンプルなノイズが聴こえるくらいの音数に、Government
Alphaは音数を整理してた。
Miyukiのペインティングは細かな線が手でなすられ、ほとんどが白いもやけた状態に変貌していた。さらに白が重ねられる。
Government
Alphaがマイクを持ち、機材から手を離して絶叫。身体を上下に揺する。
声はがしゃめしゃにひしゃげ、フィルター・ノイズのよう。
再び手は機材に戻り、エレクトロ・ハーシュを。しばらくすると、またマイクを握った。
とはいえストーリー性は無く、淡々としたステージ。
高らかに二人のノイズが伸びて、そのまま消え去った。
ASTRO/Hiroshi
Hasegawa(20:55〜21:25)
元C.C.C.C、ベテラン・ノイジシャンのASTRO。05年の6月にASTRAL
TRAVELING UNITY名義で灰野敬二との競演を聴いて以来、久々にライブを聴く。もっともそのときはバンド編成、ソロでの演奏は今夜が初体験。
ステージのスペース、半分だけを使ってASTROは機材を広げた。カバン型のシンセ(?)がメインか。中央に置いたミキサーの開いた穴に、数本のお香を立てた。
タバコの煙が充満したフロアへ、甘いお香の香りが漂う。
面白かった。アナログ感覚を前面に出したハーシュ・ノイズで、ほんのりとメロディアスな味わいも。轟音は腰の上辺りを揺らす。低周波が漂い、うねりつつ舞い上がる。
スペイシーという表現で説明は陳腐だ。極低音に幾層もの電子音が折り重なる。
リズミカルなアプローチは皆無だが、ループのごとくゆったり繰り返す電気的なノイズは、じわじわとグルーヴを積上げた。
Miyukiのペインティングは、さらに複雑さを増した。中央でなすられた烏賊のような天使が大きく翼を広げる。
周辺へ忙しくMiyukiは白いサインペンを走らせる。細かいランダムな線が泡立つように、白を飛び散らせた。ストロボのようにせわしなく瞬くライティングと重なって眩しく煌めいた。
ASTROは両足を大きく広げ、中腰で機材を操り続ける。
マイクを持って、しごくような操作を見せたときも。
豪快なハーシュにまみれて、きらっと音程が上下するさまが刺激的だ。
なんらかの物語性を、彼のノイズに感じた。
ハーシュが高まり・・・・滑らかに宙へ離散した。
T.Mikawa + Lasse Marhaug(21:35〜22:00)
ヘッドライナーはインキャパシタンツ。ちなみにコサカイフミオが都合で不参加、ノルウェーのLasse Marhaug(from
JAZKAMER:http://www.lassemarhaug.no/)とのデュオになった。
なおLasseは今回10枚組のレーベル・オーナーでもある。
インキャパシタンツ関連はたぶん02年7月、Lasseはメルツバウとも競演した01年11月ぶりに聴く。
美川はずらり機材を並べる。サンプラーやエフェクターかな?どれがなんなのか、よくわからない。マイクらしきものもあった。
Lasseは小さなエフェクターを7〜8種類並べ、さらに鉄板にコンタクト・マイクをつけたと思しきノイズ・マシンを。今夜でもっともアナログなアプローチだった。
始まったとたん、予想通り最前方でモッシュが始まる。白人男性を中心に、奇声を上げて腕をノイジシャンへ突き出した。
前方で大騒ぎする観客を尻目に、二人はノイズをばら撒き続ける。
音数は少ない。しかし。いきなり、耳をやられた。
フィルター・ノイズっぽい鋭い電子音。爆発するノイズは、音数どころか隙間もたっぷり。
スピード載せて、勢いよくハーシュが疾走する。ループはあったのか覚えてない。
とにかく爽快でわくわくするノイズだ。
小柄な美川は観客の壁でふさがれ、何をやってるのかいまひとつ後方から見えず。
Lasseは幾度も高々と手を上げる。コンタクト・マイクか何かを持ってるみたい。仕草にあわせてノイズが動いた。
Miyukiはドリルでキャンパスに穴をいくつも穿つ。
背後に仕込んだ光源が、真っ白な中央の生命体をかたどって開けた穴から、真っ直ぐ漏れる。華やかに照らした。
美川がマイクを持って叫んでいるようだ。太い腕を、力強く上げる。
唐突に無音。すぐさま轟音が復活する。耳をつんざく高音で炸裂した。
わさわさと観客が揺れ、ノイズはパワーを保ってうねる。
幾度も音像はブレイク。歓声のなか、すぐさま轟く。低音よりも超高音が記憶に刻まれる。
そして、ついにカット・アウト。15分あまりの短いステージだった。
アンコールの合唱。ステージから降りぬまま、二人はもう一度ノイズを引きだした。
空気を切り裂き、抽象的な存在のまま駆け抜ける。
5分くらいやって、ついに終わり。
ハーシュ・ノイズと一口にまとめても、さまざまなアプローチあり。パフォーマンス性や機材、音像の組合せでバリエーションを楽しめた。
ひさしぶりに美川のステージを見たが、やっぱりパワフルで面白い。また、インキャパシタンツを聴きに行きたくなった。