LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2008/12/19  東京 国際フォーラム・ホールA

出演:第九と皇帝
(熊谷弘:指揮、シンフォニーオーケストラ"グレイトアーティスツ"イン ジャパン
 上野優子:ピアノ、日下部祐子:ソプラノ、岩森美里:アルト、持木弘;テノール、有川文雄:バス
 合唱:東京混声合唱団 / 第九を歌う会)

 1981年以来、毎年演奏されているイベントで、ベートーベンの第九と皇帝が演目。今回、はじめて行った。5000人は入るホールAが埋まる人気だ。
 2階席から聴いた。ホールAはやたらエスカレーターで上がるな。1ベルが鳴ったところで、席に着く。

 ステージに6人の金管アンサンブルが現れた。ステージ後方、合唱隊のひな壇へ上がる。おごそかにファンファーレを吹き始めた。これは今年、初めての演出らしい。
 パンフレットによると、演奏は文教大学吹奏楽部。 
 柳田孝義作曲「金管アンサンブルのための"コラールとファンファーレ集"」よりキエザ、ユビラス、アントラクトを演奏したらしい。

 音は控えめ。2階席中ごろだと、ピアノくらいの音量で聴こえた。薄暗がりのなか、厳かなファンファーレ。観客が次第に席へ付いてゆく。
 2曲目ではライトがうっすら明るくなる。奏者が前を向いて演奏を始めた。
 オーケストラの団員が、ステージへ登場し始める。

 そして3曲目。ゆったりときれいな旋律が終わったところで、ピアニストと指揮者が無造作に現れた。
 こういう助走するようなステージ演出も楽しい。
 
 1曲目はベートーベンのピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調「皇帝」作品73。
 ちゃんと聴くのは多分初めて。初手からピアノが弾き飛ばす曲だった。まろやかな響きのピアノで、音量的には抑え目か。2階席だと音がふんわり丸くなる。
 熊谷弘の指揮は、きびきびしつつ柔らかい動き。タクトさばきは良く見えなかったが、メリハリありつつ優しさを感じた。

 クラシックは感想書くの難しいな。曲に詳しいわけでなく、演奏の比較対象も知識無い。
 正直言うと、"皇帝"の第一楽章は長いなあと思ってた。演奏が悪いとか、ましてや曲が悪いなんてベートーベンにケンカは売らない。単純に体感として。
 上品かつ気取った雰囲気の旋律を、ピアニストは軽やかに弾き飛んだ。

 第一楽章が終わったところで、げほごほがほぶほと咳が客席のそこかしこで鳴る。何でわざわざ音を出すんだ。ハンカチ口に当てればいいじゃないか、といつも思う。
 この合間にいったん客入れの追加。ステージ袖にスタッフが立ち、様子を眺めてるようだ。
 かなり長めに間を置いて、第二楽章へ。

 二楽章の冒頭は一転して、甘く緩やかに。この辺からぼくは没入してしまい、記憶が曖昧・・・。

 15分の休憩。幕間は一転して、民族音楽がステージを飾る。演奏者はブレスブレス(笛と太鼓)、金子健治(リコーダー)、平嶋淳摩(サズ)。ブレスブレスは即興で演奏してるそう。
 休憩のばたばたであまりじっくり聴かなかったが、これも雰囲気が変わっていいな。

 さて、曲はベートーベンの交響曲 第9番 ニ短調「合唱付」作品125。
 ちなみにぼくは第九をステージで聴くのは初めて。レコードでもろくに聴いたこと無い。
 第一楽章はほとんど初耳状態だった。熊谷の指揮に目が行く。指揮台をいっぱいに使って指揮していた。バイオリンの方向、チェロとコントラバスの方向。右へ左へ、身体を完全に向けて振る。
 テンポは全般的に速め、きびきびと聴こえた。

 次第に台ギリギリまで前へ進み、アグレッシブに。つと、足を下げて重心を戻す。
 ひとつの楽章のなかで、楽想にそって立ち位置や姿勢をさまざまに変えつつ指揮をしていた。

 第二楽章は旋律やティンパニのパターンに耳馴染みあり。あれはこの楽章だったかな。ホルンのソロがひときわ、くっきりふくよかに響いた。
 繰り返し冒頭の旋律が現れ、引き締まる。
 
 第二楽章が終わったところで、いったん指揮者は袖に。合唱隊がステージに向かった。大太鼓やパーカッション奏者もステージに現れる。
 ひな壇へ果てしなく合唱隊が集まる。総勢200人だそう。この規模は本イベントでも稀有らしい。
 最前列のみ衣装が違う。プロの人たちかな。見ていたら演奏中は腕をたらし、ぴくりともしない。蝋人形のように見えた。真似できないなあ。

 ようやく全員がひな壇へ乗った後、独唱の4人がステージへ。指揮者も戻って、演奏が始まった。
 第三楽章も初耳状態だったな。
 ちなみにオケの音量は"皇帝"よりも一段階上がり、ぐんっとダイナミクスが激しい。ピアニシモからフォルテまで幅広い響きだった。
 ホールの音質も耳に優しく、コントラバスのピチカートをはじめとして、低音がまざまざと耳へ届いた。

 間をおかず第四楽章へ。冒頭の旋律も耳馴染みあり。ただ、全体構成までは記憶に無かった。
 ひとしきり演奏が続き、あの歓喜の旋律が現れた。
 まず、チェロとコントラバス。こんなくっきりと主題を提示する曲だったのか。

 ビオラ、そしてバイオリン。主題が弦だけで明確に繰り返される。ビオラが弾いてるとき、別の楽器が奏でる副旋律が、さりげなくも美しかった。主題とじっくり旋律が捩りあって高まる。

 すっと独唱者が立ち上がった。一声。オケが盛り上がる。
 そして、合唱が高らかに。迫力あったな。二階席なのでいくぶん全体像が丸まって聴こえた。でも一階席の前方だと、凄まじいカタルシスあったのでは。

 幾度も主題が提示される。"皇帝"で感じたくどさが、この曲ではエンターテイメントな演出に聴こえる。もう一度聴きたい、もっと聴きたいという思いへ「わかってるよ」と応えるように、高らかに合唱が膨らむ。

 いったんゲネラルパウゼ、場面が静かに変わる。クライマックスの余韻をさらにダメ押しするように、穏やかなムードから一転して華やかに加速した。
 大編成のオケと合唱が飛び交い、迫力のエンディングへ。
 大きな拍手が飛んだ。

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