LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2008/2/23   秋葉原 グッドマン

   〜グルグル祭り〜
出演:ACID MOTHERS GURU GURU / MANITATSU / ACID MOTHERS TEMPLE SWR

 グルグルのマニ・ノイマイアーが来日。吉田達也らと短いツアーを行った。今夜はその最終日。面白いサイケ・インプロが聴けるかな、と会場へ向かう。
 いくつか椅子席があったが、立ち見でぎっしり。ステージは中央に向かいあわせでドラム・セットが二つ並ぶ。その前のスペースに、ボウルや各種金属板、ウッドブロックやンビーラなどがばら撒かれていた。

ACID MOTHERS TEMPLE SWR
 (河端一:g、津山篤:b,g,ss,etc.、吉田達也:ds,per,vo,etc.)

「渋谷エッグマンへようこそ」
 冒頭でいきなり津山がギャグを。間違えて本当に行ってしまったらしい。「行ったの!」と、吉田も思わず津山の顔見て噴出していた。
 このユニットは初めて聴く。「アルバムの曲をやっているようだ」と、いちおう吉田が喋ったが、かなりの部分が即興か。

 津山はまずベースかギターのどちらかを弾き、ループさせて持ちかえる手法。最初の曲ではベースから。手数多いフレーズを弾きまくり、持ちかえでさらにギター・ソロを重ねた。

 河端のギターは左利き版を強引に逆に持ち替え、右利きで弾く。ジミヘンの逆パターン。足元のエフェクターを操りつつ、どっぷりサイケなギターを聴かせた。
 時にはボウイングで長いドローンを搾り出す。
 仏壇へ置く鐘をピックアップ前に構え、いんいんと鳴らし続ける場面も。鐘の周りで撥を動かすだけで、猛烈な歪み音をギターから搾る光景が刺激的だった。

 一曲目でいきなり津山がギターの弦を切る。かまわず演奏を続けた。
「張り替えないでいいの?」
「あっても無くても、おれの場合変わらないから」
 吉田が曲間で尋ねても、平然とにやり笑う。結局、本ステージでずっと弦が1本足りぬまま弾ききった。
 めちゃくちゃにフリーならわかるが、実際は細かなフレーズをばら撒く場面も多い。力技一発だけじゃないのに、ずいぶん豪快だった。

 吉田のセットはセカンド・スネア無し。フロアタムの横へサンプラーと、小さなカオスパッドみたいな機材を置いた。
 途中から歌いだし、サンプラーで音加工しつつ左右へパンさせたりも。津山がループを使う関係で、基本的には4拍子の連続。しかしアクセントやリフを自在に変え、聴き応えのあるビートを猛烈にばら撒いた。
 途中でハイハットの調子が悪くなり、バスドラのみ踏んでネジを締めなおす。もちろん演奏はとまらない。そんなさまも頼もしい。

 2曲目が20分、あとは5分程度のセッションを数曲。曲によっては津山も歌ったり、ソプラノ・サックスを吹いたり。サックスを吹く曲では吉田がダルブッカで静かに盛り上がった。
 最終曲で吉田がシンバルを叩いてはミュートする場面を多用。面白がって津山が横から手を伸ばし、吉田が叩く瞬間に押さえて回る。

 二枚のシンバルを吉田が叩きわけ、大きく腕を振って立ち上がる。
 そのまま勢い良く振り下ろし・・・ピアニッシモで。ネックを振り上げた津山や河端はさすがに音は釣られない。
 勢いを殺しそこねたように、三人全員がそのままステージ床へ、ずぶずぶへたり込んだ。崩れ落ちたまま手を伸ばす吉田が、シンバルを幾度か叩く。
 
 改めて座りなおし、コーダをきっちり。約40分の演奏。めちゃくちゃ面白かった。

MANITATSU
  (Mani Neumeier:ds,per,vo、吉田達也:ds,pre,vo)

 アルバム1枚リリース済みのマニと吉田のデュオ。演奏前に吉田が現れ、ドラムセットとステージ前の小物位置や、歩幅をマレット持って確認する。サンプラーは片付け、マイクもずらした。

 最初が10分程度の短いインターバルで、二人が登場。まず、ステージ前に座った。
 立ち見びっしりなのに、二人は座り込んでパフォーマンスを始める。見づらい・・・せめて高台に上るとか、視覚的な配慮も欲しかった。
 マニが予想以上に老いた風情で驚き。今年で67歳というが、70歳を軽く越えてそう。

 下にばら撒かれた金物を、二人で無造作に叩きだす。軽快な響きが膨らんだ。マニはシェイカーを振ると、吉田は中身の入ったお菓子の袋で応える。
 マニがポリ袋に持ち替え、ステージ前のマイクへ向かって二人で振った。音はともかく、絵面がそうとうに可笑しい。

 マニはンビーラを奏で、ウッドブロックを叩く。あくまで軽快に。吉田はドラム・セットそのものも叩いた。叩きながら二人はドラム・セットへすわり、本格的なデュオへ。
 2小節ごとのフレーズ交換から始まり、シンバルからタム回しへ。次第に音数が多くなった。
 手数は吉田が多く、マニはポイントのみ叩きのめす。両足かかとを浮かし、同時のタイミングでふわりふわりと優雅にバスドラやハイハットを踏んだ。

 こんどもあまり変拍子要素は感じられない。互いの音を聴きあい、空間を埋め尽くす濃密さは低い。かといってテクニックやソロの交換でもない。
 前のめりにビートが溢れ、リズム・パターンの変化のみで聴かせた。

 途中で吉田が立ち上がり、ぐるりと回ってマニの横へ。同じセットを叩きだす。するとマニも立ち上がり、同様に吉田のセットへ。向かい合った編成を利用し、演奏をとめず楽器を持ち替えた。
 まったく止まらずに25分くらい、ぶっ続け。展開は少ないが、リズムの流れが心地よく楽しめた。

 時計をマニが確認し「もう少しやろう」と吉田へ合図。再びステージ前へ座る二人。
 ダルブッカをもスティックで叩く吉田と、無心で金物を叩くマニ。マニがポリ袋をスティックで放り投げ、吉田はそれを空中で叩いた。
 しめて30分ほどのセッション。

ACID MOTHERS GURU GURU
 (河端一:g、津山篤:b,g,recorder,etc.、Mani Neumeier:ds)

 比較的短めのインターバルで3人が登場。マニタツよりもマニの視線に力がこもって見えた。
 基本はフリーか。グル・グルは未聴で判別付かず。ステージの最後は曲かも。
 70分ほど。いくつか場面を分割しつつも休まず疾走した。
 
 津山と河端のアプローチはアシッド・マザーズと変わらない。
 歪ませた音色でもうもうと奔放なギター・ソロを奏でる河端。ときおりシャープなストロークも織り交ぜるが、小節線を踏み越えるような、大ぶりのフレーズ展開が心地よい。

 いっぽうで幾度も楽器を持ちかえの津山はベースを野太く響かせ、ギターではめまぐるしく指が動いた。
 マニは叩きっぱなしながら、ときおり力を抜く。体力勝負はせず、ボリュームにメリハリをつけた。音圧は河端が引き受け、豪腕でギターを弾く。アンサンブルに膨らみを出すのが津山。鋭い勢いの旋律で引き締めた。

 ここぞという場面では、マニの腕に力がこもる。パワフルにタムを叩きのめした。音像にバラエティさを見せるセンスはさすが。
 リズム感は縦ノリ。揺らぐグルーヴはほとんど志向せず。バック・ビートも効かせるが、むしろパルス状の押しに軸足を置いてるように聴こえた。
 別に3人ともあわせてるわけじゃないのに、全部揃うと骨太な流れが産まれた。
 
 河端はボウイングに弓だけでなく、玩具の十手を使ってた。終盤ではエフェクタの調子が悪いのか、いきなりはずして投げ飛ばしす。素早く結線をやり直し、演奏を続ける場面も。
 津山は途中で笛なども使用。開放弦を利用するコード弾きのベース・フレーズをループさせ、ギターを弾きまくる瞬間がかっこよかった。
 途中の曲では3人でボイス合戦になり、コンビニ名を次々挿入して笑いを呼んだ。

 最後はブレイクを頻繁にいれ、メンバー紹介を入れる曲。マニが二人の名前を呼び、津山がマニを高々と紹介した。
 終わりそうで終わらない。最初は暗かった照明が、終盤を予感させる演奏に従い、次第にいくつもついていく。ついにはほとんどのライトが照らされ、ステージを眩く染めた。
 マニは終演に向けて、延々と演奏を続ける。エンディング近くだけで10分くらい盛り上げた気がする。迫力だった。

 アンコールにも応えた。もちろん吉田が加わる2ドラム体制。吉田の合図で、二人はまたステージ前で小物を叩きあった。楽でいいや、と津山と河端はステージ後方にごろんと寝転んだ。
 吉田の合図でまず津山が、続いて河端がドラム・セットを叩いてゆく。ひとしきり4人のパーカッション・アンサンブルが提示された。吉田とマニがドラム・セットへ座り、轟音セッションへ。

 吉田は鋭くビートを鳴らし続け、マニは手は休まぬがメリハリつけた演奏。全編フリーかな。ソロ回しは無く、全員が弾き続けで15分ほどの長尺を聴かせてくれた。
 ステージ後方の高台へ河端が乗り、ソロを取りつづける。
 目線で津山を呼んだが、シールドが足りず慌てて立ち位置へ戻る場面も。吉田が素早く抜けたシールドを手渡す。そんなときも、ドラム演奏は全く止まない。

 ちなみにマニは高台へ録音とおぼしき小型機材を置いていた。河端がソロを取る合間、すかさず演奏を止めて小型機材の位置を直す。吉田が叩き続けるため、サウンドは全く遅滞無し。
 仕切りなおしで津山が高台へ上った。ベースのループが轟き、二人はギター・ソロを。しばらく弾いたところで、あっさりと津山は元の位置へ戻ってしまう。

 勢い存分な展開だった。途中でストラップが外れながらも、河端は演奏を止めない。最後はステージ上部のバトンへギターを吊るして演奏を終えた。

 さくさくとステージが進行し、音楽はどこを切っても濃密なサイケ・インスト。河端と津山ががっちりとマニを支え、重厚で凄みのあるアンサンブルを創った。
 音は歪み、朦朧さの奥に繊細さを覗かせる場面も。録音物でこの多様性が果たしてだせるのだろうか。ライブならでは、の楽しさを堪能した。

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