LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2008/2/21  新宿 MARZ

 〜LITE『A Tiny Twofer』release tour 2008 / brother's sister's daughter Japan tiny tour 2008 〜
出演:brother's sister's daughter、LITE

 共に14日間に14公演を日本各地で繰り広げた"tiny"ツアーの最終日。
 MARZは初めて。スタパにイメージ似てる。ただし構造は真四角。
 地下二階がステージで、地下一階にも眺めるスペースあり。キャパは200人だが、かなり混む動員だった。フロア後方にどかんと太い柱があった。
 開演前にクレイマーはドリンクバー前をうろうろ。カップのアイスを手に持ち、楽屋へ消えていった。

LITE

 本ツアーは初日も聴いた。彼らの演奏は、初日よりもしなやかな印象あり。コーダはきっちり提示するが、前半はメドレー風の構成。5拍子や7拍子のリフを淡々と積み重ねた。
 彼らはリフの重なりで曲を組み立てるスタイルで、即興要素は薄い。ダンサブルさは考えず、シンプルにロックの魅力を追ったか。
 あれでギターなりがアドリブいれたら、好みなんだが。

 音楽は変わらないが、ステージ・アクションは幾分おとなしくなっていた。少なくとも初日のステージより広々なのに。
 前回は豪快な動きを見せたベーシストを眺めてたが、けれんみが無くなった感じ。ギターをスパッと指差す曲で、ポーズを決めたのは一回だけで残念。

 PAは低音を効かせ、じわり空気を震わす。後ろで聴いてたため、ボリュームはさほど気にならず。ステージ上空ではスモークがたなびき、ライトが派手にぐるぐる回り視覚的にも華やかだった。
 音楽性は前回同様シンプル。ドラムの刻みは奇数拍子を意識したものか。
 4拍子2小節、続けて3+3+2拍子の符割な曲が興味深かった。長めのMCもはさみ、約1時間。

 ステージ前にすっと薄布の幕が降り、転換が始まった。

brother's sister's daughter
(Mike Watt:b、Kramer:Fuzz:b、あらきゆうこ:ds、+Samm Bennett:ds、?:g)

 本ツアーの後半数日は、あらきゆうこがドラムをつとめる。
 なぜかステージ前にもパーカッションをセッティング。首をかしげたが、サム・ベネットがゲスト扱いで登場のためだった。
 あらかた準備終わったところで、クレイマーが薄布に身体を押し付けておどけ、観客が歓声を上げた。

 まずマイク・ワット、クレイマー、あらきゆうこ3人でのセッション。しばらく聴いてて、正直拍子抜け。今夜はインプロじゃない。手なりのジャムな趣き。
 クレイマーはステージの途中では、ほとんど弾かず。様子見が多い。ひいき倒しな見かたかもしれないが、自らの役割をきっちり把握していた。

 冒頭の3人セッションでは、あらきがずっとエイト・ビートを刻む。ときおりパターンが変わっても、テンポが変わらず同じビートを提示したまま。
 インプロのドラミングとは言いがたい。単調なビートでマイク・ワットのベースが蠢いても、単に噛合わぬように聴こえてしまう。

 しかしこのセッションでは、まだクレイマーはベースを弾いてくれた。今夜もバイオリン・ベースをストラップ無しで操る。軽々とベースを持ち、歪んだ音色で長い音符のフレーズを。
 時にメロディっぽい展開も。やたらとファズやディストーション・ノイズだけのアプローチはしない。

 ドラムのビートに乗って、マイク・ワットはロックよりのアプローチへシフト。1曲目は途中でブルーズっぽく歌いだす。即興かは不明。
 クレイマーは歪んだ音色でさりげなくバックアップし、コンボっぽいアレンジに。
 このままクレイマーも弾きまくりと期待するも、本人はインプロ寄りを志向だったか。単に連続ツアーでくたびれてただけかも。ショッカビリーよろしく、ぐしゃぐしゃなパンク大会でも面白かったが。

 2曲目からサム・ベネットと素性不明なギタリストが加わる。ベネットはWAVE DrumとAir synthを各1台。横にミキサーを置き、小物もいくつか。びっしりとスティックを並べたが、ほとんどは手のひらで叩いた。
 さらにWAVE Drumにピックアップ風の何かを置き、小物を近づけモーター音増幅もやってたようだ。
 ぼくの位置だとPAの出音は、ほぼドラムがメイン。次にワットのベース。さらにギタリスト。クレイマーとベネットはほとんど聴こえず。
 
 ギタリストは歪ませた音で、断片的なフレーズを弾く。役割はクレイマーと同一なため、なおさらクレイマーは用無しな風情。頻繁に弾きやめて演奏をにこやかに眺めてた。
 遠慮なのか、ギタリストもほとんど弾かない。ギターとクレイマーが妙に中途半端な立ち位置に陥る場面もしばしば。するとギターを加える必然性が理解できなかった。

 ベネットは小刻みなビートで乗りの惑乱を考えるが、がっしりとドラムがリズムを支配。アンサンブルは固定していた。
 2曲目の途中でベネットが歌いだした。ワットは激しく指が動くわりに、溢れる音数は少ない独特のプレイ。
 ドラムを意識しつつ、彼だけはアグレッシブに弾く。縦線をドラムとそろえる気は無さそう。突っ込んだりモタったり、奔放にフレーズを溢れさせた。

 約1時間のセットで5〜6曲やったか。長尺は無し。途中からクレイマーは椅子に腰掛け、たまにベースをいじる。
 しかし音量が小さく、横のギタリストと音色がかぶるため、いまひとつ存在感がもどかしい。
 
 ベネットは派手にWAVE Drumを叩き、Air Synthでノイズを引き出す。ぐいっと大音量で聴きたかった。クレイマーも全く参加しないわけじゃない。ポイントでは音数少ないながらも、ベースを操った。
 頭の上にベースを乗せて弾く場面も。あれは一曲目だったかな。

 ワットが吼える歌で締めたのが最後だろうか。初日に聴いたのと同じフレーズなので、彼の持ち歌かも。
 汗びっしょりのワットと比較し、のんきなベネットとクレイマーが対照的だった。

 アンコールの歓声へ、まっさきにクレイマーが登場。おっと思ったが、アンプからシールドを抜いてさっさと消えてしまう。
 やがて他のミュージシャンが登場。さらにLITEも加わって、大ロックンロール大会となった。ベネットがリード・ボーカルで、派手に盛り上がる。

 それを尻目にクレイマーはドリンク・カウンターへ。後方からちらりと演奏を見たのみ。ふらっと楽屋へ消え、ステージへは現れなかった。そんなところも、クレイマーらしくはあるのだが。
 いっぽうステージでは終わりを派手に決め、ハグしあって濃密なツアーの終わりを称えあった。ともあれ予想とはかなり違って、インプロへのアプローチの違いを実感したライブだった。

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