LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2008/2/2 西荻窪 アケタの店
出演:石渡明広+古澤良治郎
(石渡明広:g、古澤良治郎:ds)
このデュオを聴くのは初めて。前からデュオの機会あったのかは良く知らない。
ドラム・セットは真っ赤な胴の2タム1フロア、チャイナを含むシンバル4枚編成。 レコーディングの準備がきっちり整っており、マイクが幾本か立つ。ドラムセットには上からとバスドラに1本。マイクへかぶせるカバーも赤。古澤良治郎も赤いシャツを着て演奏した。
ちなみにステージ中央にもマイクを立てていた。
石渡明広はパイプ椅子二つを重ねた上に座り、ストラップを使わずエレキギターを膝に乗せ弾いた。
足元にはペダルが3種類。エフェクターをいくつも並べたが、音色はほんのり歪ませる、独特のブライトな響き。独特のビニール・チューブ製スパゲッティみたいな、暖かくて柔らかい響きをアンプから出した。
BGMが鳴る中客電がいきなり落ち、二人がステージへ向かう。すぐさま古澤はシンバルをいくつか、強く叩いた。
すかさず石渡がエレキギターを爪弾く。別々のペダルへ両足を乗せながら弾いた。
前半ではオクターバーでベース音域のアプローチから。ときおりユニゾンで実音と両方出す。古澤は賑やかにシンバルを叩き、バスドラを踏んだ。最初はハイハットを叩かない。
4拍子の痕跡は残るが、古澤は奔放に叩き、刻みは出さず。石渡は無造作にフレーズを展開した。
ギターはループなどを使わず、ディストーションもごくわずか。シンプルな音色で、ときおり速弾きを混ぜながら丁寧にメロディを紡いだ。
おそらく完全な即興。拍の頭で、二人がバシッと合う瞬間がかっこいい。
古澤がハイハットも叩き始め、ビートをより明確にした。手数は決して多く無いが、ポイントでシンバルを多く叩き、けっこう音量が大きい。
ユーモラスさは伏せ、真っ向勝負だった。けれども息苦しさは無い。二人の音楽が盛り上がり、グルーヴィな展開が満載。
ソロ回しは無い。ほぼ石渡はギターを弾き続け、古澤も手を休めない。互いの音は聴きあい、ぐっと音が盛り上がったり静かめへ行ったりも。
あえてリフ的なアプローチを取らず、石渡は淡々と弾ききった。
視線を交わさず、二人は音楽を続ける。ふっとサウンドの波が落ち着き、1曲目が終わった。約20分程度。
続いて古澤は撥のように太く短いスティックに持ち替えた。前のめりにタム回しを。一本を打面へ押し付け、ベンドさせながらもう一本で叩く。タムやスネアの音は野太く、シンバルは鋭い。
今度はハイハットもいきなり踏んでいた。
石渡がギターで突っ込む。鋭いフレーズながら、ゆとりとスペースを残して。
途中でスティックを持ちかえる古澤。竹ひごを束ねたような細長いブラシで、軽快に叩いた。
ひっきりなしにシンバルを叩き、派手やかなリズムを提示する。この曲でも音数少ないのに、ぐいぐいと前のめり。
石渡が3連符で音世界を広げ、付点を生かした旋律に切り替えた。ブルージーさを滲ませながらも、音使いは自由に展開する。
2曲目は約10分ほどであっさりと終わった。
30分くらい休憩を挟み、後半セットへ。ギターを構えた石渡は、ネックから素早くピックを引き抜いた。
ギターをピックでしばらく弾いた後、指弾きに切り替えた。オクターバーを混ぜて、低音を強調する。こんどはペダルから足を離して。
途中でノービートの静かな場面も現れた。しばらくして石渡はピックを持ちなおす。
古澤は初手からシンバルを多用する大音量プレイ。途中でハイハットに左手を突っ込み、右手だけで叩き始める。
ハイハットのネジがくるり、くるり。どうやら緩んだらしい。
ちらりと石渡がドラムを眺めるが、フレーズは休まない。
頃合を見て、古澤がバスドラを踏むだけに。そのままハイハットのネジを素早く締めた。
そこから両手でパルスのようなリズムを打つ。8ビートも混ぜる。ギターのフレーズへ絡むような、さりげない一打のやりとりが素晴らしく効果的だった。
石渡のギターは熱っぽさを増す。リフめいたパターンがいつの間にか登場し、野太くギターを弾きまくった。
いったん終わりかけるが、古澤が叩き続ける。音数を減らしながらも、コーダに次ぐコーダを。石渡は古澤のスイングを見ながら、フレーズをあわせた。
ついに最後の一音を二人が鳴らした。間髪入れず、同時に互いを紹介しあう。そんな息の合いっぷりも面白い。約25分。
全編あわせて1時間強と、かなり短め。とはいえぶっ続けでばら撒かれるコンビネーションは、実にダンサブル。決まったリズム・パターンは無いのに。ときに緩急を効かすアンサンブルは、柔軟に絡み合う。安定して心地よいサウンドだった。
3rdセットがあるかとしばらく待っていたが、特にそのつもりは無いみたい。スタッフがドラム・セットを片付け始めたのを頃合に、店を出ることに。
深夜の部に出演の渋谷毅は、2ndが終わった後に店へ姿を見せた。ドラム・セットを片付けるさまを見て、「もう終わってたの?早いなー」と微笑む。
二人の演奏は隙間を埋め尽くすような濃密さとは違うベクトル。だけどシンプルな手数で盛りたてるしたたかさが、さすがの貫禄だった。フロア対応でも似合いそう。
今夜は全てインプロだろう。探りあいはほとんど無く、いきなりノリをトップギアへ持っていく噛み合いっぷりが聴き物だった。今夜は短めで残念だが、もっと長尺で聴いてみたい。録音がリリースされる可能性はあるのかな。