LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2008/1/20   祐天寺 FJ's

出演:MASSA
(佐藤正治:per,g,vo,etc.、細井豊:key,vo,etc.、太田恵資:Vln,vo,etc.)

 初めてMASSAへ行った。佐藤正治のサイトによればMASSAは05年11月に結成。同じ顔ぶれでのセッションを重ねて、バンドへ至ったのかもしれないが。
 細井豊と佐藤正治を聴くのも、たぶん始めて。全く予備知識なしで臨んだ。

 FJ'sは落ち着いた感じのバー。駅から少々歩き、道を間違えたかと思った。道路に面した1階の店。カウンターはごく一部で、ほとんどはテーブル席。
 ゆったりした椅子が配置され、40人くらいのキャパ。詰めたら100人は入りそう。贅沢に寛いで聴けた。

 ステージはカウンター横へ設置され、エレピにシンセが2台。細井はフルートも準備してたが、今夜は使わず。太田惠資はエレクトリックとアコースティック・バイオリンの2本を準備し、メガホンも使う。 
 リーダーの佐藤はジャンベを中央に置き、横へWave Drumを。その上にウインド・チャイムをセッティングし、小さなシンバルや小物を周辺へずらり並べた。足にも鈴を巻きつけてたようす。

 佐藤と、おそらく細井の横にもミキサーあり。バランスやエフェクトをかけているみたい。基本はエレクトリックな構成。ステージからちょっと離れた位置にスピーカーがあり。目の前で演奏してるのに、ちょっと離れた位置から聴こえるのが奇妙な感じ。

 カウンターで酒を飲んでいる3人は、開演時間を20分ほど押してステージへ現れた。
 佐藤がまずWave Drumを鳴らす。トリガーでリズムが出る設定をしてるようだ。うっすらとキーボードがかぶさる。おもむろにエレクトリック・バイオリンも加わった。
 まずは即興かな。続いて曲へ。前半セットはかなりキーボードのバランスが小さかった。

 佐藤が強くWave Drumを一打ち。軽快なビートが現れた。曲の途中で表面をこするように手で押す。ウインド・チャイムも効果的に挿入した。
 ジャンベをメインに打ち、アクセントでWave Drumを使った。
 バイオリンを横抱えに、太田は弦を爪弾く。オクターブ下げてベース的に奏でた。

 佐藤の歌うオリジナル曲は、スケール大きいロマンティックな展開。細井はエレピだけでなく、ギターやアナログ・シンセ風の野太い音色も使う。さながらシンフォニックなプログレの香り漂うアンサンブル。
 コンパクトな編成ながら展開がダイナミックだ。
 細井が弾くエレピの上に、羽がくるくる回る機械仕掛けのオブジェがあり。ふくよかな展開を聴きながらつい、そのオブジェへ見入ってしまった。

 MASSAはライブ毎にいろいろアプローチを考えているらしい。この夜は即興が少なめで、太田はソロで絡むケースが多い。あとは爪弾きか。ぐんっと佐藤が前に出て、細井のキーボードで厚みを出すアレンジが頻繁に現れた。
 キーボードは音数や展開が派手ではない。むしろ、音が少なめ。しかし音を乗せるタイミングが見事だった。

 前半は4〜5曲か。要所でメンバー紹介を互いにしあう。
 低音で細井がコーラスを入れた曲も前半だったかな。響きがかっこよかった。

 佐藤が手のひらを体の前にあげ、玉を包み込むような仕草で歌うのが印象に残る。
 1stセットの最後が"オータのトルコ"。演奏予定は無く、唐突に佐藤が決めたらしい。MASSAでもあまり演奏しないレパートリーのようだ。

 テンポは遅め、がっつり重たいアレンジ。太田の即興イントロで、いきなりゆったりした。丁寧にバイオリンがイントロを奏で、太田の歌へ。
 佐藤の低音コーラスが、強烈な凄みを出す。びいんと声が響いた。約50分のセット。
 後半の幕開けもおそらく即興。佐藤が大きな笙を思わせる楽器を構えた。吹き口は楽器の中央。ぶおぶおと4拍子を吹き続ける。サンプリング・ループさせ、佐藤はジャンベを構える。
 今度はぐんとボリューム上がったキーボードが、太く飾った。後半のほうがアンサンブルのバランスがまとまっていた。

 どこかの場面で、佐藤は口琴をいくつか並べて次々と軽快な響きも重ねた。
 太田はメガホンを取り、中国風の即興ボイスで応酬する。
 リズムはくっきり、破天荒に崩れない。しかし即興要素もきっちりあり。即興だと変拍子もありうるそう。
 後半セットでは太田が、エレクトリックだけでなくアコースティックも使い分けて奏でた。

 MASSAはソロを張れるそれぞれが、一堂に会し相乗効果を狙うかのよう。一人が存在感を出すと、他の二人の音が無くても音楽が成立しそうな雰囲気がしばしば。
 極端な例が後半でやった、細井のハーモニカを前面に出す曲。
 キーボードを片手で弾きながら、細井は瑞々しい旋律を切々とハーモニカで奏でる。佐藤のパーカッションが飾るが、おそらくソロでも成立したろう。太田は潔く、カウンターに寄りかかって細井の演奏へ耳を傾けていた。

 ちなみに今夜、3人とも車できたそう。くいくいと酒のコップを傾ける。2ndセットの曲間で、唐突に太田がトイレへ行きたがる。佐藤が喋りで混ぜ返すまに、太田はステージから抜けた。
 続けて軽く、細井がキーボードを遊び弾きしながらランディ・ニューマン風の曲を鼻歌で。聴き覚えあるが、誰の曲だったかな。

 ほとんど演奏していない新曲も披露。"3人のハーモニーを強調"と紹介した。アドリブ場面は控えめに、テーマを繰り返した。
 微妙に3人の声が溶けず、混沌とした響きだった。奏者の手ごたえも違ったらしく、「今後のライブで進化する」と苦笑していた。
 ジャンベへブラシをあてていたのは、この曲だったかな。違うかもしれない。

 MASSAは曲順を特に決めてないそう。終演間近、太田が譜面を繰りながら細井と会話。
 ところが佐藤が全く違う曲を始めたようだ。細井は急いで違う譜面を出していた。
 クライマックスが"Apology 2005"かな?買ったCDを頼りに記憶をたどっており、自信なし。

 最後は3人の激しいソロ回し。太田が弾きまくり、ぐいぐい押す。続いて細井。音数は決して多く無いが、存在感溢れた。
 そして佐藤。顔をくしゃくしゃにして髪を振り乱し、汗まみれになりつつジャンベを猛烈に叩きのめす。穏やかな雰囲気をかなぐり捨て、激しいビートをばら撒いた。

 メンバー紹介をし合いながら、終演を告げる。拍手に応えステージを下りずにアンコールへ突入した。
 佐藤のオリジナル"Meet your child"を。体の前に手のひらを掲げるポーズで、切々と佐藤は歌った。細い歌声がそっと膨らむ。

 アンコールの拍手はやまない。相談後に選ばれた曲は"I clime the mountain"。
 鍵盤はシンセっぽい音色で、エレクトリックな風味をつけた。細井と佐藤のハーモニーが美しい。間奏で太田は滑らかにソロを奏でた。
 駆け抜けた本編のテンションをなだめるように、穏やかな曲で締める。およそ1時間のセット。

 シンプルな編成で構築したアレンジを提示する。ひとつひとつの音が力強いゆえに、アンサンブルが強靭だ。さまざまなアプローチをライブ毎に取るそうなので、次に体験したら、また違う感想を持つかも。少なくとも今夜のライブは、CDとは全く違う。さらにアグレッシブだった。またぜひ、聴きに行きたい。

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