LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2007/12/31   西荻窪 アケタの店

出演:アケタの店:オールナイトJAM
(出演:明田川荘之、小林洋子、関根敏行、元岡一英、清水くるみ;p、
 宮野裕司:as、後藤篤:tb、翠川敬基:vc、チコ本田:vo
 小林陽一、早川岳晴、山崎弘一:b、野崎正紀、楠本卓司:ds)

 年末恒例、アケタの店オールナイト・ジャム。1部と2部を今夜は聴いた。これまた年末恒例の振舞いツマミ、ピーナツを食べながら開演を待つ。
 今年の1部ジャムの座長は小林陽一がつとめた。とはいえ特に進行を厳しくするわけではない。何回かアケタの年越しライブを体験したが、ひときわ奔放な進行だったと思う。

<第一部>
 まず小林陽一、野崎正紀、小林洋子のトリオで2曲。スタンダードとブルーズかな。一曲やるごとに次の曲をステージ上で相談する。小林陽一のベースはほとんど聴こえず、小林洋子のピアノも流麗ながら個性は控えめ。野崎のドラミングを眺めていたが、寛いだ様子で刻む。冒頭はスティック、次の曲がブラシ。
 助走のようにセッションが始まった。8バーズや4バーズでソロが回る。

 3曲目からベースが早川岳晴に変わる。ウッドを持った早川は、小林と曲を相談しながら1曲。まだエンジンが暖気中のようなベースだった。
 トロンボーンで後藤篤が参加したころ、ちょっと熱気がこもる。後藤の演奏はじっくり聴いてみたかった。歯切れいいフレーズ使いでアドリブを取る。
 もっとも基本的にはスタンダードのモダン・ジャズなので切れ味は物足りず。
 早川の手数が多くなり、ウッドベースを勇ましく鳴らした。

 ドラムが楠本卓司へ、ピアノが関根敏行に交代。関根はアタック強く鍵盤を鳴らした。
 若干アグレッシブなアドリブ。アンサンブルは破綻無いジャズを軽快に進めた。
 手馴れた感触のソロ回しでスリルを減らしたセッションなのは否めない。
 後藤は1曲でいったん下がり、宮野裕司がアルトで加わった。

 数曲やったあとで、チコ本田が現れる。ベースが小林陽一に戻ったかな。2曲を熱唱。真っ赤なマニキュアでマイクスタンドをつかみ、パーマの強くかかった髪の毛を降りたてた。
 オブリは宮野が続いて。ピアノの横で幽かにサックスを吹く。

 ドラムは野崎に戻り、インストへ。小林がウッドを引く横で、早川がエレベを構える。最初こそ遠慮がちに。しかし次第に音数が多くなった。
 小林が下がり、再び早川がウッドに。後藤も加わり2管体制になった。
 
 4バーズや8バーズのソロを交換しあい、さくさくセッションが進む。チコ本田も再び舞台へ戻り、さらに2曲歌った。
 ピアノは元岡一英に変わり、ベースで山崎弘一が1曲だけ弾く。

 休憩時間はとらず、10曲ほど。22時半頃になったとき。明田川荘之が翠川敬基を紹介する。満を持して登場した。
 ステージへチェロと譜面を持って進み、早川とデュオ。早川のオリジナル"Tango"を演奏した。

 ここまでのオーソドックスなジャズへの苛立ちを叩きつけるかのように、美しいフリーを奔放に翠川は奏でた。基本はアルコ弾き。テーマをフェイクさせ、早川と音を交錯させる。
 あえてアドリブの交換はしない。常に弦を軋ませてチェロは高音を引き出し続けた。指で複弦の間をさすりあげ、かすれた音を奏でる。
 早川もそれまでのジャズとは一転、激しいフリーでがっぷり受け止めた。

 二人の演奏で、一気にステージの空気が引き締まる。
 10分ほどのセッション。最後まで翠川はメロディをほとんど弾かない。テーマを崩しながら駆け抜けた。
 これ一曲で翠川の出番はおしまい。いつの間にかチェロを抱えて、店から姿を消していた。

 ステージは再びスタンダード・ジャズ大会に。小林や野崎、宮野や関根らが弾いてたろうか。チコ本田が三度、表れて歌った。
 最後は"スピーク・ロウ"だったかな。宮野の引き締まったサックスが印象に残った。
 23時半近くまで第一部は続いた。

 かなりの部分で早川岳晴がベースを受け持つ。ときに引き締める豪腕ベースを楽しめた。こうまで怒涛のスタンダードを、オーソドックスに弾くライブはなかなか無い。貴重な一時だったかも。

<第二部>
 後半セットはピアノ・ソロの企画だった・・・はず。明田川は調律を終えて、23時40分ごろに演奏を始めた。
 "アイ・クローズド・マイ・アイズ"で幕開け。テンポやアクセントを変えてサウンドの表情を変えつつ、じっくりと一曲を弾き連ねる。唸り声も飛び出した。
 
 続いてオカリーナでのオリジナル。2本を吹き分けて、バロック風のフレーズを積み重ねる。ピアノへ切り替えた。"たけくらべ"のフレーズを一瞬弾き、「あ、まだか・・・」とつぶやいた。

 次のオリジナル曲(おそらく。タイトル不明)が、聴き物だった。叙情あるフレーズが積み重なり、じっくりとアドリブが続く。かなり長めに盛り上がった。
 もっとも途中で新年を示す、タイマーのベルが小さく鳴る。とたん、強引に曲を終わらせてちょっと残念。

 "たけくらべ"をフェイクさせ、礼をしながらコードを弾く。小学校の号令でやった和音を重ねる、あれ。幾度も繰り返し、客の笑いを誘いながら。
 ここでなぜか、小林陽一を明田川が呼び出した。後ろで踊りながら聴いてた清水くるみが、すっ飛んで行き読んでくる。
 
 小林がベースを構え、幽かに弦をはじき始めた。明田川はかまわず、クラスターを混ぜながら熱演。いきなり完全無伴奏で、小林へソロを促す。
 口をもぐもぐさせ、フレーズをつぶやきながら小林のソロ。テンポがいきなりスローに下りた。

 さらに明田川は楠本と宮野も呼んだ。"アケタズ・グロテスク"を急転直下、弾き殴りだす。譜面も無しな楠本は戸惑い顔で明田川のピアノへ耳を傾けていた。
 そのうち、小林が弾きやめて早川へウッドベースをバトンタッチ。宮野がアドリブをしてる最中、なんと明田川がステージを下りてしまう。
 かわりに清水くるみがワイングラス片手に現れた。

 なんの気まぐれか、明田川はそのままステージへ戻らない。スタッフとして観客のドリンク手配などをしている。
 ステージでは完全にカルテット体制で、ソロ回しが盛り上がっていた。清水が軽快にピアノを叩き、早川が突っ込む。
 楠本は勇ましくドラムを叩き、宮野は音を膨らまし気味にアドリブを取った。

 この編成で2曲ほど。1時過ぎまでライブは続いた。いきなりジャムセッションの第二部へなだれ込んだかのよう。
 なんだか突拍子も無い展開に、戸惑ったライブだった。

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