LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2007/12/8  新大久保 EARTHDOM 

出演:RUINS alone、HIKO+西原鶴真

 Earthdomは初めて。打ちっぱなしなライブハウスの趣きで、フルキャパ150人くらいか。ステージ横の通路でドリンク・コーナーへ行くのが新鮮だった。
 この日は4バンド登場したが、ぼくが聴いた2バンドのみ書きます。

HIKO+西原鶴真
(HIKO:ds、西原鶴真:琵琶)

 GAUZEのHIKOと西原鶴真のデュオ。
 琵琶のセッティングにけっこう時間かかった。ディストーションが効いた琵琶がでかい音で轟き、観客がステージ前へ集まる。ハウリングを取り除きつつ準備を終え、いったん袖へ西原が消えた。
 
 暗転。静かにステージ横のドアが開き、スキンヘッドで上半身裸の巨漢、HIKOが登場。続いて、
 おもむろに西原が現れる。ステージ中央に置かれた座布団の上へ、そっと正座した。
 開け放たれたままの扉を、腕を伸ばしたHIKOが一挙動で締める。

 西原がコンタクトマイクを貼り付けた琵琶を構える。シールドは横のアンプに伸びている。大きな撥を振り下ろし、シタールのような低い轟音を響かせた。
 数音、低音を続けて高音域で微妙に音を揺らす。PAのセッティングによるものか、えらく凶悪な響きで琵琶が鳴った。
 特に低音部。サワリがびりびりと劈き、スリリングだった。

 HIKOは静かに座ったまま。ハイハットをそっと踏む。
 西原が歌いだした。平家物語の壇ノ浦について語りだす。古語調はほとんど無く、琵琶で唸る独特の節回しながら、言葉はくっきり聴こえる部分多い。

 ネットで検索したが西原の師匠、鶴田錦史の曲をやったようだ。タイトルはずばり"壇ノ浦"(作詞:水木洋子、作曲:鶴田錦史)。映画"怪談"(1964:小林正樹監督)の第三話"耳なし芳一"用に書かれた作品という。
 
 HIKOの手数が次第に多くなる。身体をぐいぐい前のめりに、シンバル中心で叩き始めた。西原の節回しが高まり、ときおり琵琶へ撥を叩き付けた。
 両足ペダルのバスドラが激しく打ち鳴らされた。HIKOは無闇にドラムを打ち鳴らさない。西原を立てる格好だった。
 琵琶の独奏から、声が入った瞬間でHIKOが叩く場面も幾度か。二人の共演歴は不明だが、リハーサルをきっちりやっていそう。

 一方で西原はHIKOのドラムに応答する場面は感じられず。あくまで自分の世界観を提示する。琵琶側へ即興要素はほとんどないかも。
 琵琶でフレーズを紡ぐ場面は少なく、語りが主眼。物語の調子あわせや伴奏として、ときおり琵琶が鳴った。
 二人のインプロが絡み合うセッションを想像してたので、ちょっと残念。

 中間部分で西原が歌をふっと止め、ドラムのソロへ。HIKOはペダル踏みっぱなしでブラスト・ビートをバスドラから引き出す。
 さらに両手は休む間無く、叩きのめした。僅かに4拍子を感じるが、基調はフリー・ビートのようだ。変拍子っぽさも僅かに。フィルの展開やタイトに刻むよりも、腕をしゃにむに振り下ろす切迫感を前に出した。次第にHIKOの身体へ汗が浮かぶ。
 ドラム・ソロの間、西原は背筋をピンと伸ばし、琵琶を構えたまま。身じろぎせずきれいな姿勢で間を保った。

 再び西原が唸りだすと、ほぼ彼女が主体的に音像を持っていく。しみじみした空気は間で表現する。琵琶の低音が炸裂し、ドラムは猛然と叩かれる。
 二位の尼が安徳帝を抱き、入水する場面が語られた。
 ふっ、と間が。
 西原は座って身体を動かさず、HIKOは息荒く、タムへ身体をつっぷした。

 ついに西原が締めの言葉を唸った。琵琶を置き、一礼。20分ほどの演奏だった。

RUINS alone
 (吉田達也:Ds,Vo)

 2スネア、2タム。ドラムセットそのものも、ぐっとステージ中央へ押し出される。さらに横へサンプラー(Roland SP-404)を。大幅なセッティング変更ながら、速やかに行われた。
 吉田は軽快かつ素早いスティックでタムを打ち鳴らし、期待をあおる。セカンド・スネアはハイハットの横へ置かれた。アシッド・マザーズ・ゴングのTシャツ姿。
 マイクは2本。双方でエフェクトをかけており、違いはよくわからず。マイクスタンドへセットリストを吊るすことなく、矢継ぎ早に演奏が進んだ。
 MCが全く無く、30分くらいの一本勝負。20曲くらい、メドレーでやったと思う。

 1曲目は聴き覚えあるが、曲名失念。"TZOMBORGHA"収録曲かな?記憶があやふやで、セットリストは割愛させてください。
 聴いたことあるのが1/3くらい。他の1/3は新曲か、ぼくの全く知らない曲。残り1/3は即興の趣きだった。
 メドレー形式で、曲の切れ間でサンプラーのボタンを操作する。その場で曲を決めたのか、セットリストあったのかは不明。

 4曲目辺りで"パラシュトム"を演奏。かなり荒っぽい演奏で、マイク・スタンドへ声をぶつけても拾わない場面も多し。テンポは幾分早め。CDよりも手数は多くなっていた。全てのボーカル部分を歌わず、メリハリつけたアレンジ。
 ルインズのレパートリーだけでなく、高円寺百景アローンや、是巨人アローンっぽい曲も。中盤で1本、スティックをすっとばしてた。

 この辺りから即興要素を前面に出す。ボイスをマイクへ叩きつけ、ループさせる。ファルセットのパターンをいくつか混ぜ、サンプラーのボタンでリアルタイムに歪ませた。
 スペイシーなシンセの白玉を宙へ回し、鋭いドラミングが突き刺す場面も。
 即興でもタイトな進展は変わらぬが、いくぶん構築性に綻びが出た。

 今日はマイクスタンドが垂れ下がったり、ハイハットの位置が動いたり。微妙なトラブルも発生して見えた。ライブの修羅場をくぐった吉田らしく、全くあわてず対処していたが。
 PAの音量がでかく、吉田のファルセットは、脳髄を揺らす感じ。途中で気分悪くなるほどで参った。体動かしながら聴くと、三半規管がおかしくなりそう。

 即興もえんえん続けたりはせず、短めに切り上げ曲へ移る。即興は3〜4箇所あったかな。メリハリついた構成だった。
 サンプラーのバッキングはベースだけでなく、シンセがかぶるときも。一糸乱れず、ドラムが轟然と疾走する。ブレイクつきの場面まで、びしばし縦が揃うのが圧巻。

 新しめの曲らしき場面では、ドラムが変拍子を軽々と操る。重たいベースは弱まり、よりリズムに特化してるように感じた。
 いきなり演奏が止み、一言挨拶して吉田があっけなく去る。タイバンありのルインズではよくある、そっけない演出だった。

 ひさしぶりにルインズ・アローンを聴いたが、ますますベース入りルインズも聴きたくなった。もはやアローンは定着している。とはいえライブのたびにテンポが速まり、新曲がばらばら投入されるステージは、ルインズでこそじゃないだろうか。

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