LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
07/10/06 東高円寺 LosAngeles Club
〜 natural gift - vol.122〜
出演:One Chord
Ensemble/foopas/えくおとさず/maikotobranco/nyaaano
若手バンドを次々紹介する活発なイベント、natural
gif。聴きに行ったのは05年6月ぶりか。そのときがvol.72。今回が122回。凄いなあ。
ギターポップとアヴァンギャルドが交錯するイベントだが、今回はnyaaanoやOne
Chord Ensembleが出演だから、前衛寄りかと期待。実際、いろんな意味でトリッキーなバンドを色々聴けた。
nyaaano
もともとソロ名義だが、今回はユニット編成。最終的に5人編成の告知ながら、1人都合悪くなったらしく、4人演奏となった。
ステージ前にテーブル4つが並ぶ。3つはそれぞれラップトップ。もうひとつはミキサーや機材を載せた。どうやらリズムボックスらしい。
BGMが鳴る中、メンバーがステージへ向かう。nyaaanoは向かって一番右側。白いマックを操った。
BGMが消えるのを待たず、音が静かに鳴り始める。客電も落ちた。
基調はミニマルで抽象的な電子音楽。nyaaanoはi-tunesを操る。全員が無表情にラップトップや機材の画面を見つめる。誰がどの音を出してるか、いまひとつ不明なのが残念。
リズムはほぼ不定期。たまに連続したビートが登場しかけても、すぐに途切れてしまう。淡々と音が浮かんでは消える。言葉や古いジャズらしき音がぐしゃぐしゃに解体されて、浮遊した。
おそらくこの音を操っていたのがnyaaano。他の3人より若干動きが激しく、マウスを動かした。たまに持ち上がる過程で、マウスから赤い光がぴゅっと伸びる。
一連の言葉が流れるシーンも。明確な言葉はやがて混沌に溶けた。
展開や明確な音像は無く、不安定な断続が次の断片に移り変わる。
中盤でいきなり倍テンポに盛り上がり、全体の音像が雪崩れる瞬間がスリルあった。
交錯する電子音をだれがどう操るのかわからず、もどかしい。リズムとi-tunesで二人なら、一人がドローンで一人が電子音か。
ひよひよと漂う電子音は関連をつかめない。次第に低周波のドローンが滲み、空間を押した。
じんわりと音圧が空間を漂う。轟音ではない。ある程度のボリュームでくるくると世界が形をかえる。
15分ほどの演奏。目をつぶって聴いてると、朦朧となってきた。
ふと音が途切れ、目を開ける。nyaaanoは既にラップトップを閉じていた。静かに他の三人を眺めている。
やがて全体の音が消え、ひそやかに音楽が終わった。
maikotobranco
でかいシンセが二台にカオスパッドが準備され、全体像はギターバンドな面持ち。いや、本質はパワー・ポップかもしれない。四人組。
しかし冒頭からアコギを抱えたボーカルは、エフェクターをめちゃくちゃに効かせる。歪みまくった音質はもはやアコギの面影無い。冒頭からいきなり、無造作なノイズのロングトーンで始まった。
演奏が始まると、濃密なサイケ・コアな世界が提示された。キーボードはショート・ディレイを駆使し、さほど音数を出さない。ベースがかなりタイトだった。ひじを曲げ、トリッキーな演奏の姿。
音域高いボーカルのメロディは、けっこうポップだ。とはいえスピーカーからまともに音が届かない。マスクされたかのよう。おまけにベースのコーラスは耳にさっぱり届かず。
一番鳴り響くのは電気加工されたアコギの、シンプルなストローク。次いでドラムのリバーブたんまりなビートだった。
滑らかなメロディをつぶし、ひたすらギターで押し続ける、異様なミックスだった。バンドの意図かは不明ながら。バランス考えてミックスしたら、お洒落なポップスに仕上がりそうなのに。
アコギに限らず、間奏のソロはほぼ無し。音色の炸裂だけで空気を押した。
えくおとさず
笑ったー。ステージ的には寒い空気流れてたのが残念。
ステージ中央に大きい譜面台を置き「えくおとさず」とバンド名の書かれたプラカードを表示した。メンバーはセッティングが終わるといったん袖へ消える。
おどろおどろしい女性ボーカルの曲が流れた。丑三つ時の釘打ちかなにかがテーマらしい。メンバーがじんわり現れ、プラカードをめくった。「呪い」と書かれてる。
楽器を構え、ゆっくり腕を振り上げ音を出した。あっさり終わり。
「わからなかった人のために、後でもう一度やります」
そういってメンバーはプラカードをめくった。次のカード表記を失念。
中央に立った男がエレキギターを構え、イントロを始める。
いきなりギターからプラグを引き抜いた。先端を押さえ、ビープ音をリズミカルに出す。ついにギターを置いてしまう。一度も音を出さずに。ギターを構える必要ないじゃん。面白いなあ。
淡々とビープ音を続ける。マイク・スタンドへ触ると、音量が上がった。メンバーは真剣に演奏を続ける。
ギタリストはスキンヘッドの巨漢なベーシストの頭へ指をあて、ビープ音の音量を上げた。大真面目な表情で繰り広げるから、妙におかしかった。
「なみだ」→「なみ」と数曲続ける。板で文字の一部のみを隠す、さりげない演出に目が行く。
譜面台の奥で大きく腕を動かすと、電子音が響いた。テルミンを仕込んでるかのように。実際はシンセみたい。サイケな音のセンスが楽しい。
何曲か終わったところでバンドの演奏が止む。ギタリストが喋り始めた。若手のお笑い芸人みたいな口調で。
そして演奏へ。「のろい」。今度はひらがなで。
メンバーは構え、"ゆっくりと"楽器演奏をした。
最後にプラカードをめくるったら、「終わり」とある。一つのネタをもう少し短くし、手早い展開にしたら笑いが増すと思う。そういう路線を狙ってるか不明だけれど。
foopas
中央で男が情熱的に叫びまくる、パワー・ロック。U2と尾崎豊を混ぜたイメージがわいた。演奏はちょっとグランジ系か。
ベーシストの指が回り、パルス調のタイトなフレーズがぐいぐい決まる。ギターはあまり前面には出ず、シンプルなリフを矢継ぎ早に提示した。
やはりリードボーカルのパフォーマンスが目をひく。間奏ではマイクを振り下ろす仕草で、シールドがふわりと宙を舞った。
ボーカルはディレイを山盛りかけて、歌声が繰り返される。曲の合間、「ありがとうございました」と一言すら、エコーがかかるありさま。
サイケっぽく盛り上がるあたりは、興味深く聴けた。
One Chord
Ensemble
本日のクライマックスにふさわしい。本イベント主催者のバンドで、今までに数度ライブをやっている。過去の履歴はこちら
。ぼくは聴くの初めて。
ギターが4人、前にずらり並ぶ。ドラムセットはタムのセッティングで手間取ってたが、終わったら袖へ消えてしまう。
おもむろに中央へ、イベント主催者が登場した。ステージ前にぺたりと座り込む。
手に持った紙の上に置いたのは携帯か。紙には「進行表」と丁寧なワープロ打ち。時間はかりつつ進行のパフォーマンスか。
客電が落ち、静寂の中で主催者が軽く一人へ腕を振った。ギタリストが淡々と単音を刻み始める。
しばらくそのまま。ゆっくりハンドキューが飛び、一人、また一人と音が増える。それぞれが淡々と刻んだ。
キューの後で速やかに音が出ず、一小節ほど間を置いてフェイド・インがもどかしい。スピーディにさくっと反応が好みだから。
全員が単音(だと思う)を一定のリズムで弾き続ける。同じ音かな?
微妙にピッチが違うのか、モアレ状に音が揺れる。アルペジオのような幻聴が耳を離れなかった。
しずかにドラマーが現れ、座った。
キューが飛び、ギタリストはストロークへ。シンプルなビートをドラマーが刻み始める。
単に同一のコード。リズムは全て同じストローク。ビートはときおりフィルが入るが、トリッキーさは無い。
ギターはフレーズや譜割の変化無く、ドラムのカウンター・フィルで変化をつけた。
これだけの材料なのに、素晴らしく提示される音像がかっこよい。
ロックンロールの原初的な快感原理を、単純に明示したコンセプトだ。
ハンドキューはときおり動き、ドラムを止めてギターを抜き出す。さらにストロークと単音も場面ごとに切り替えた。
いっせいにギターが押し寄せるストロークは、純粋な迫力ある。
エンディングはギターの単音に戻り、ひとり、またひとり。キューにそって弾きやめていく。
最後の一人が音をとめ、静寂へ。厳かに幕を下ろした。
わくわくするライブだった。コロンブスの卵なアイディアが画期的で、効果は格別。
編成も曲展開も構成も、この路線でバリエーションはさまざまにあると思う。もっと活動して欲しいバンドだ。
音源もリリースして欲しい。環境音楽的なアプローチながらロックンロールな音楽を、じっくり聴きたい。