LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2007/9/29 西荻窪 アケタの店
出演:明田川荘之+明田川歩
(明田川荘之:p、オカリーナ、明田川歩:vo)
明田川荘之と娘の歩によるデュオ。ぼくは今年の6月ぶりに聴く。
店へ入ると荘之自らピアノのチューニングの真っ最中。終わると一呼吸置き、0時半頃に客電が落ちた。
まず荘之一人がピアノへ向かい、ソロで演奏。指鳴らしのように鍵盤を叩いた。
ごつごつした音使いのアドリブから。やがて"枯葉"らしきフレーズが一瞬現れる。しだいに唸り声が激しくなった。即興へ展開し、"アローン・トゥギャザー"の和声へ。テーマも現れる。
ときおり咳き込みつつ、ピアノに熱がこもる。左手をシンプルなウオーキングにして、右手がメロディや和音を叩きまくった。
メロディは"アイ・クローズド・マイ・アイズ"へ行ったようだ。ルバートして音数がときおり減る、奔放な演奏。顔に力がこもり、音のアタックが強くなった。
まず15分近くピアノのソロが続いた。
曲が終わり、歩が紹介されステージへ向かった。マイクが一本、そして横に譜面台。
反対側にパイプ椅子が置かれていたが、使わず。立ったまま歩は歌った。
<セットリスト>
1.アイ・クローズド・マイ・アイズ(incl.枯葉/アローン・トゥギャザー)
2.アルプ
3.マック・ザ・ナイフ
4.クレイジー
5.レフト・アローン
6."即興"
(休憩)
7.りぶるブルーズ(?)
8.オーヨー百沢
9.オール・オブ・ミー
10.アフリカン・ドリーム〜ブラックホール・ダンシング
(アンコール)
11.ヘルニア・ブルーズ
ボーカル入りは、いきなり"アルプ"から。
イントロはフリーに、クラスターっぽいタッチも。イントロからブレイクを入れ、指先や手のひらで得意の内部奏法を聴かす。
自由にピアノを弾き連ね、歌の寸前でコードを明確にし、ボーカルへちらとピアノは視線を投げた。
まっすぐにボーカルが提示される。今夜はマイクのみPAを通したか。たまにはノーマイクで歌うのはどうだろう。声量は問題ないはず。
肉声でピアノのハードなアタックと渡り合うのも聴いてみたい。
アレンジが興味深かった。ピアノはテンポをすこしルバートさせ、さらにリズムも解体する。ボーカルの後ろで、そうとうフリーに弾いた。クラスターも織り交ぜる。
オブリで"猫ふんじゃった"っぽいフレーズもぶつけた。
ボーカルがいるゆえのアレンジだろう。ともすればあっさりまとまりかねないピアノ+ボーカルだが、ピアノが自由度を増すことで混沌となった。
そのうち二人が完全フリーで渡り合う瞬間も聞いてみたい。
3曲目は"マック・ザ・ナイフ"。ピアノへ置いた譜面へ視線を投げ「譜面が見えない・・・」とぼやく。
あまり弾きなれないのか、冒頭はオーソドックスなジャズ・ピアノ。中盤のアドリブあたりから、テンポもフレーズもみるみる解体し、激しく盛り上がった。
「ウエスタンの曲です。ぼくとは正反対のタイトル」
そう紹介した曲が、"クレイジー"。前回聴いたライブでタイトルがわからなかったやつ。
ウエスタンっぽい疾走は控えめ、むしろどっぷりジャズの感触だった。
1stセットはボーカル入りで"レフト・アローン"を涼しげに決めて、最後にピアノのソロで一曲。
今まで抑え気味だった鍵盤を炸裂させた。ひじ打ちから腕で。がんがんクラスターが高まり、一気に曲を終わらせた。約45分のセット。
20分ほど休憩を挟み、後半戦へ。やはりピアノのソロから始まる。
曲は明田川のオリジナル。"りぶるブルーズ"かな?ちょっと曲名に自信ない。硬質なフレーズを積み重ね、柔らかなメロディのテーマへ向かった。テーマの変奏は控えめに、すぐさまアドリブが始まる。
中盤でペダルを踏みっ放しで音を響かせ、足元のアタッシュケースへ。中ぐらいのオカリーナを二つ持ち、この夜初めて吹いた。
バロック調で淡々と音を連ね、加速する。持ち替えた小ぶりのオカリーナでは、ブレスをきつく強調し、かすれ気味に旋律へ音飾をつけた。
そしてピアノへ戻る。長尺だが、おっとりした雰囲気のソロだった。
ボーカルが加わり、オリジナルの"オーヨー百沢"。歌声はこの曲がよく出ていた。ビブラートを効かせ、歌い上げる。ピアノにぐっと熱がこもった。
中盤のソロでは唸りながらピアノのソロが展開する。
ボーカル入りは、続く"オール・オブ・ミー"で終了。あっけないが、深夜ライブだからしかたないか。
「最後にアフリカン・ドリームを」
つぶやいて、ソロで弾き始めた。厳かさは控えめに、ラフなタッチで曲を紡ぐ。音数がずいぶん少なく、イントロの高音部も鋭く提示した。
メロディはくっきり聴けるが、解体したアレンジが新鮮だ。
唸りながらアドリブへ突入。いったん、オカリーナのソロへ。ここで終わらず、さらに"ブラックホール・ダンシング"へ繋いだ。
ピアノの音量が高まり、クラスターの比率が増す。
「んん〜っ!」
唐突に音を切り、体全体で唸りながらグランドピアノを押す。
そのパフォーマンスで、唐突に曲を終わらせた。
にっこり笑ってステージを降りる荘之。
「もう一曲やるか」
すぐさま二人で相談し、アンコールとしてステージへ戻った。
"ヘルニア・ブルーズ"を軽やかに歩が歌う。コーラス部分は完全に荘之が弾きやめ、「イテテテ」と立ち上がって腰を抑えた。
途中で歩と観客の手拍子が始まる。ピアノは倍テンポで突っ走り、さらに加速して手拍子を振り落とした。
ひじ打ちから尻落しで、あっさりと終わったかな。約40分。
時間は2時10分ほど。休憩挟んだこともあり、かなり長めのステージだった。
残念ながら新しいレパートリーの投入は無し。膨大なオリジナルを誇る明田川だから、次の展開も楽しみにしたい。いっそ歌向けの新曲とか。
深夜ライブならではのフリーさも想定したが、そこまで炸裂はせず。おっとりとまとめた印象あり。楽しかった。
このコンビは次のライブも決定している。これから、どんな方向へ向かうんだろう。
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