LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2007/8/18   西荻窪 アケタの店

出演:明田川荘之ソロ
 (明田川荘之:p、オカリーナ)

 アケタの店月例の深夜ライブへ。都合でなかなか行けず、久しぶりに聴く。観客は3人と残念な入り。しかし熱のこもったライブだった。
 明日の朝が早いらしく、0時15分ごろに客電が落ちる。明田川はオカリーナを手に取り、静かにソロを始めた。足元に置いたベルをそっと揺らし鳴らす。
 スニーカーでリズムをとる音が、店内へ静かに響いた。

<セットリスト>
1.わっぺ
2.Down In Brazil
3.After you've gone
4.孝と北魚沼の旅情〜(?)
5.African Dream〜Black hole Dancing〜シチリアーノ

 今夜の選曲はなんだか新鮮。最近の深夜ライブではこういうレパートリーなんだろうか。
 日本情緒漂うオカリーナのソロがしばし続き、ピアノへ指を落とす。左手がゆっくりと4分音符の4つ打ち。丁寧にメロディをつづった。"わっぺ”をライブで聴くのは久しぶりかもしれない。

 指を伸ばし、内部奏法。ぱらぱらぱら、と数本引っかき、手のひらで低音部を低く叩く。
 じわりとアドリブへ展開。明田川の唸りが漏れた。たまに咳き込みながらも明田川は唸りを止めずに弾き続けた。
 曲が終わる。なんだか拍手をしそびれる雰囲気だ。意に介さぬそぶりで、明田川は次の曲へ向かう。
 
「さっき(曲から譜面を)取ったばかり。コード違うかも」
 つぶやいて曲目紹介。アーチー・シェップの"There's a Trumpet in My Soul"に収録の"Down In Brazil"だそう。ならばライブでやるのは初めてか。暗譜で(この曲に限らないが)弾き始めた。

 これが聴き応えたんまりの演奏。オリジナルは未聴だが、明田川節に曲が消化されている。
 スケール大きく、和音がくしゃっと奏でられた。熱っぽくコードが響き、アドリブと混在。テーマの変奏が即興と馴染み、じっくりと展開した。
 
 次はスタンダードの"After you've gone"。明田川のライブで何度か聞き覚えあるレパートリー。太いオカリーナから、極小のオカリーナへ。
 二つを吹き分けて、ピアノのソロに変化した。
 
 くつろいだ面持ちでアドリブを弾く。最後はピアノのコードをペダルで伸ばし、小ぶりのオカリーナでソロを。
 幾度も和音を変え、ふくよかにオカリーナで即興をした。

 "孝と北魚沼の旅情”もライブで馴染みあり。手持ちのCDでは"大勘定"、"Aketa live in Finland"に収録。
 この曲も名演だった。(2)とあわせ、機会あればレコード化をして欲しい。
 情感たっぷりにテーマとアドリブを混在させる明田川得意のスタイルで、猛然と鍵盤へ向かい合う。
 ぐいぐい音楽へのめりこむ。暖かい雰囲気が充満し、めっぽう濃い日本的なグルーヴが溢れた。

 後半はクラスターが混じる。フリーに盛り上がったところで、さわやかな曲調へ展開した。別の曲とメドレーだったのかも。

「最後の曲です」
 ぼそっと告げて、オリジナルの"African Dream”へ。今夜は少々コンパクトなステージかな、と思う。
 オカリーナを数本吹き分けた。

 最初の数本は単音メロディで持ち替え。音を立ててピアノの上へ置く。テンポを音を出さず、足で踏みながら。
 最後に持った白いオカリーナは、息を強く吹きこんでるのか、複音奏法で紡いだ。
 指で細かなメロディをつけつつ、強い音があわせて響く。

 ピアノでテーマへ。イントロをたっぷり置き、なかなかメロディへ向かわない。
 この曲で聴ける装飾の高音クラスターは、指を振り下ろすように強く鍵盤を叩いた。
 
 これも熱演。途中で足元のベルを持ち、左手でグルーヴを出しながら、高らかにベルを振り続けた。
 アドリブはぐいぐい長くなる。幾度もベルを持ち、振り続けた。このアレンジが新鮮。
 
 クラスターが飛び出す。顔を赤茶色に染め、鍵盤を強打した。テーマがクラスターに溺れ、またメロディが顔をのぞかせる。
 クラスターとメロディが次々続き、音塊がメロディーを飲み込んだ。明田川は目を閉じ、鍵盤を乱打した。
 足元のベルを踏みつけながら、クラスターが轟いた。あくまで両腕のみを使って。

 時間は1時10分過ぎか。クライマックスを迎えたとたん、メドレーで次の曲へ。自発的なアンコールっぽい展開がうれしい。
 曲は"Black hole Dancing”。性急にメロディが紡がれ、アドリブへ突入する。唸り声が出っぱなし。快調に即興が疾走した。
 またもやクラスターが爆発。幾度も鍵盤を叩きながら上半身を前へのめらせる。
 
 大きく叫び、次の瞬間に両肘で鍵盤を連打。明田川のライブは幾度も聴いてるが、このパターンは初めて見たかも。
 打ち鳴らす身体は両腕から足へ。かかと落しも飛び出した。
 鍵盤全体を叩きのめしから、こぶしが高音部から低音まで満遍なく動き、音塊の破片が飛び散った。

 息を切らしながら、明田川は鍵盤を叩き続けた。リズムがフリーになる。"African Dream”からさらに激しさを増した。  
 ライブはまだ終わらない。"Black hole Dancing”のテーマでまとめたあと、さらにメロディが登場した。曲は"シチリアーノ”。

 ロマンティックな旋律が丁寧に奏でられ、変奏される。
 クラスターで豪快に終わらず、最後は美しくまとめた。大きく息をつきながら、明田川はピアノを弾いた。
 
 およそ70分の演奏。笑顔で会釈し、明田川はステージを去る。
 深夜月例ライブでは少々短めながら、濃密なライブを聴かせた。今夜もライブは録音されている。そのうちにCD化されたら、いいな。

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