LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

2007/7/28  日比谷野外大音楽堂

   〜「細野晴臣と地球の仲間たち」〜空飛ぶ円盤飛来60周年・夏の音楽祭〜
出演:細野晴臣、他
 (細野晴臣、ヴァン・ダイク・パークス、坂本龍一、高橋幸宏、コーネリアス、カヒミカリィ、ジム・オルーク、 嶺川貴子、コシミハル、ワールドスタンダード、高野寛、サケロック、畠山美由紀、小池光子(ビューティフルハミングバード)、寺尾紗穂、Bophana、片寄明人、ヴァガボンドcpa、□□□(クチロロ)、たまきあや、といぼっくすbits、miroque、浜口茂外也、徳武弘文、高田漣、鈴木正人、伊賀航、MICA BOX、ほか)

 出演者のリストは本イベントの紹介サイトから引用。細野晴臣の2枚組トリビュート盤に引っ掛けたイベントだろうか。
 立ち見も含め観客はぎっしり。3000人くらい入ったようだ。入場したらチラシと一緒に、うちわが配られた。客席で辺りを見回すと、大勢の人間が思い思いにうちわであおぐ。その動きが波うち、なんだか面白かった。

 開場してしばらくすると、BGMが生々しい歌声に変わる。下手にサブステージが設定され、MICA BOXが歌ってた。

 MICA BOXは聴くの初めて。和太鼓のセットに打ち込みリズムやシンセを足し、女性シンガーが滑らかにハイトーンを響かせる。大陸的な広さとサイケな幻想性を併せ持つ、雰囲気あるポップスだった。
 オープニング・アクトで20分位のライブ。最後は"風をあつめて"を滑らかに歌った。

 定刻の18時を数分回った頃。まず、スーツ姿の男が一人現れた。上下は白で、一面にストーンズのベロマークがデザインされた派手なもの。
「登場したら"はるおみさ〜ん!"とみんなで呼ぼうね。さ、練習しようか」
 のんきに前説を務める男、竹中晴男。細野を呼ぶ。

 おもむろに細野が登場。さらに二人の男も現れる。いきなり坂本龍一と高橋幸宏が現れた。全員がサングラス姿で。
「大人になって、こんなに仲良くなりました」
 にっこり微笑む幸宏を受け、坂本が細野に向かってうちわで扇いでみせ、笑いが起こる。
 マイクを細野が持ち、簡単に挨拶。そしてヴァン・ダイク・パークスを呼び出した。

 第一部はトリビュート盤へ参加したミュージシャンが次々登場。ほぼ1曲ごとにメンバーが変わった。

<第一部:セットリスト(不完全)>18:10〜19:20
1.イエロー・マジック・カーニバル:ヴァン・ダイク・パークス,サンディ、他
2.風来坊:カヒミカリィ、ジム・オルーク、他
3.ミッドナイト・トレイン:畠山美由紀、高野寛、他
4.終わりの季節:イシイモモコ、高野寛、高田漣、他
5.ブラック・ピーナッツ:ヴァガボンドcpa、片寄明人、高野寛、他
6.北京ダック:□□□(クチロロ)、他
 <MC:竹中直人+α>
7.日本の人:寺尾紗穂、サケロック、高田漣、他
8.三時の子守唄:小池光子、ワールドスタンダード、他
 <MC:竹中直人+α>
9.ターン・ターン:坂本龍一、高橋幸宏、コーネリアス
10.風の谷のナウシカ:坂本龍一、嶺川貴子、他

 書いてあるのはボーカルなどを取ったミュージシャンのみ。ウッドベースやパーカッションはほぼ固定だったし、高野寛や高田漣は上記で書いた以外でも演奏してたはず。
 アレンジはほぼCD収録どおりか。演奏のクオリティはミュージシャンによってかなり違う。正直、長い長い前座を見てる気分になった。

 ヴァン・ダイクは8人ほどのストリングスや、スティールパン奏者を入れたゴージャスでトロピカルなアレンジ。"イエロー・マジック・カーニバル"を聴かせた。
 サンディがボーカルで、初手からくっきり豪華だった。ヴァン・ダイクはテンポを示したのち、かなり自由に腕を振って演奏へ膨らみを出す。
 ジーンズのオーバーオール姿な、かなり太った野暮ったいおっさんになってたが・・・音楽への姿勢は真摯だった。

 1曲だけで引き下がってしまい、たちまちセットの変更。続いてジム・オルークとカヒミ・カリィが登場した。ストリングスやスティールパン奏者は残り、リズムはコンボ編成に。"風来坊"を歌った。
 オルークはアコギを弾くのみ。カヒミのウィスパー・ボイスはPAバランスがいまいちで、最初は聴こえづらかった。
 ちなみにこのとき、袖で坂本龍一が眺める姿をちらり見えて興味深かった。

 とにかくこの日はPAバランスがまちまち。1曲毎にバンド編成すらガラリ変わるため、スタッフが大急ぎでマイクから何からセットしなおす。大変そう。
 あとは高野寛、高田漣がほぼ出ずっぱりで伴奏に参加。ボーカルが入れ替わる格好だが、微妙に編成が変わるためにセッティングは時間かかる。曲間はせいぜい数分程度といえ、少々間延び気味だったのは否めない。

 耳をそばだてたのが、"終わりの季節"。素晴らしいアレンジだ。
 アコースティック感覚を残した上で、ほんのり上品なポップスに仕上げた。主旋律をイシイモモコが歌い、高野はコーラスで別ラインを乗せる。
 スティール・ギターの硬質な響きが、曲へ絶妙の味わいを付け加えた。

 寺尾紗穂らが出る前、竹中直人が再度登場した。ダークスーツ姿に着替え、もう一人若めの男を合い方に、コミカルなMCで場を繋ぐ。
 笑いながら怒る芸をはじめ、竹中の持ちネタを久しぶりに見れて楽しかった。
 最後はくるくるその場で回転した後、「まっすぐ歩ける!」と宣言して袖へ消える芸でしめた。

 。続く"三時の子守唄"もなかなか雰囲気あり。ワールドスタンダードや高田漣がしっとり決めた。ボーカルは小池光子。
 ステージ下手のスタッフのスペースへ、ヴァン・ダイクがふらりと現れる。目の上に手をかざし、しばらく彼女らの演奏を眺めていた。別の人に声をかけられ、そのまま曲の途中で楽屋へ戻ってしまったが。

 長いセット・チェンジが入るため、ここでまた竹中直人と先ほどの若い男が登場。
 その場でギャグを作ってるような喋りで場を繋いだ。が、それでも時間が余る。
「準備が出来るまで回り続ける!」
 竹中が宣言、その場で回転し始めた。数分近く回ってるはず。ステージ前ぎりぎりだから、本人も「ここで落ちたら大怪我だな」と、ポツリつぶやいた。回り続けたままで。
「まだ大丈夫」「まだ回れるぞ」
 ひたすら回り続ける竹中。ようやっと、ステージの準備が整った。竹中はそのまままっすぐ袖へ歩いてゆく。すごい平衡感覚だな。

 ステージへ現れたのは、坂本龍一に高橋幸宏、コーネリアスがベース。実は後で聞くまで、ベースが誰か良くわからずでした。
 一曲、派手にテクノっぽいアレンジを決めた。聴いてるときはタイトルを思い出せず。スケッチ・ショウのレパートリー、"ターン・ターン"だった。

 それまでスポットくらいだった照明がいきなり派手に。ステージ上部や後方で細かな光の筋が飛び交う。
 イントロは電子音のインプロっぽい展開から。曲へ雪崩て演奏をばっちり決める。さすがの貫禄だった。

 1曲だけで幸宏は袖へ去ってしまう。変わりに嶺川貴子が現れ、教授の伴奏でウィスパーっぽい歌声で"ナウシカ"を。高田漣らもバックをつとめたかな。
 前曲もそうだが、打ち込みらしき音もスピーカーから聴こえ、どの音を教授が弾いてるか、いまいちわかりづらいのが残念。
 ここでようやく第一部が終わり。15分の休憩が宣言された。
 
<細野晴臣&ザ・ワールド・シャイネス>
(細野晴臣:vo,g、浜口茂外也:ds、徳武弘文:g、高田漣:steel g,mandlin、伊賀航:b、コシミハル:acc)

 まずMCで竹中直人と高橋幸宏が登場。ギターを竹中が暗い歌謡曲調で弾き語りし、幸宏がツッコミいれる形式。
 ぼそぼそっと幸宏の喋りがおかしかった。けっこう長めに引っ張り、
「その場で考えてるでしょ。そろそろ止めない?」
「・・・素に戻ることを言うなぁ」
 竹中がつっこみ入れ、袖へ戻った。

 暗転し、メンバーがスタンバイ。「ベントラベントラ〜」とUFOを呼ぶ子供らの声がいくつも交錯するテープが流された。
 背後から目潰しの照明。光の中で、ポーズを決めた細野が立っていた。歓声のなか、中央へ細野が向かう。床に寝転び再びポーズ。

 ちょっと喋って演奏へ向かう。ほのぼの寛いだステージ進行だった。
 今夜の細野ライブは東京シャイネスみたいな代表曲を、ゆったり演奏するスタイルを想像してた。
 とんでもない。現在レコーディング中の最新形。ノスタルジックではあるが、気負わずに好きな音楽をのびのび演奏した。
 メンバーでコシミハルの姿がキュート。足を出す服装でアコーディオンを演奏するさまがきれい。最初は誰かわからず、メンバー紹介をされてびっくり。

 まずカントリー・スタイルのインストから。ペダル・スティールの高田が耳馴染みあるメロディを演奏する。"未知との遭遇"をアレンジした曲だった。
 今夜はとことんカントリー・タッチのアレンジ。
「40年代のカントリーが特に好きでね。もう60歳越えたから、テクノは止めますよ」
 ユーモラスな喋りをふんだんに入れる。ジャケット姿が暑いらしく、ひっきりなしに顔を拭う。
「暑いからね。さっとやってさっと終わろう。・・・曲、飛ばそうか」
 メンバーに向かって細野は笑った。

 続いて新曲。"As soon as possible"とタイトルを告げたかな。"チャンスは今♪"と歌われる曲だった。寛いだカントリー形式で渋く細野は歌う。
 にこやかな細野の雰囲気がステージ一杯に広がった。

 「次は"ボディ・スナッチャーズ"」
 ウエスタン・タッチで演奏されるのに仰天した。
 テクノな原曲のアレンジは見事に改変、歌物ポップスとして仕上げてる。前半は英詞、後半は日本語で。ちなみにこの曲も、次のアルバムに収録予定らしい。
 意外性や勢いでは、これがもっとも面白かった。

 特に曲名を告げずに歌う場合も。古いカントリー・ソングをカバーしてるらしい。
「この歳にならないと、このアレンジは出来ないんだよ」
 メンバーを見渡しながら細野は説明する。真っ白な髪の毛の細野らはともかく、高田はまだ若めだと思うぞ。

「ポリリズムはもういいよ。大変だし。この曲、コード2つ。楽ですよ〜」
 そう説明したのが、次の曲だったかな?タイトル不明の英詞曲。カバーのようだ。
 次がオリジナル。何とかブギ、と聞こえた気がする。"モーガン・ブギ"かな?
 
 そして英詞曲をもうひとつ。タイトルは"ピストル・パッキング・ママ"と聴こえた。アップテンポのカントリー。軽やかに駆け抜けた。カバーかな。検索するとアル・デクスターの曲で同名のタイトルあり

「次はゲストで、マエストロが二人・・・」
 と、かなり細野が喋った説明したあとで。メンバーから段取りを1曲忘れてることを指摘され、照れ笑い。
「ほら、暑いから。譜面がくっついてるんだよね」
 色々忘れてるな、と言いながら、初めてメンバー紹介をした。

 バンドはインストで"ミスター・サンドマン"のカバーを。徳武のギターがメロディを1コーラス、フェイクしてアドリブへ。アコーディオンからスティール・ギターへソロが回る。
 ギターに戻り、もう一度ソロを。細野はアコギを爪弾くのみで、アドリブはおろかリフでも目立たないのが惜しい。

 改めてキーボードが前へずいっとセッティングされ、坂本龍一とヴァン・ダイクが現れた。
 ヴァンの"ディスカバー・アメリカ"から1曲を演奏。ヴァン曰く、ほとんど初めてライブで歌うらしい。
 手元に盤がなく確認できず、曲名も思い出せない・・・歌詞に"ビング・クロスビー"と歌われ、"I ain't got nobody"のフレーズが挿入される。

 演奏終わると潔くヴァンや坂本は袖へ去ってしまう。
 ワールド・シャイネスのみで、こんどは"Pom Pom 蒸気"を。とにかくカントリーにこだわるステージだ。
 古きよきアメリカン・スタイルでゆったりと演奏された。

 最後の曲で、ゲストに幸宏が現れる。シェイカーひとつ持って。
「テンポが速いよ。大丈夫かな?」
 細野がにやり微笑み、いきなり"スポーツマン"に雪崩れた。これもテクノなアレンジがあっさり拭われ、C&W調のポップスに塗り換わった。かっこいい。

 シェイカー振りながら幸宏とデュオ。2コーラス目で主旋律を幸宏だけが歌う。
 改めて細野の歌は上手い、と思った。幸宏も上手いと思ってたが、デュオだと二人の安定度が違う。音域のレンジはともかく、着実にメロディを載せる細野の歌声がくっきり響いた。軽やかにコーダへ。

「ついていけた?」
「なんとか、これくらいなら」
 いきなり、サビを細野が歌い始め、すかさずメンバーもリフレインを。
 歌い終わって、幸宏と二言三言。細野がまた歌い戻す。そのパターンで、じっくり"スポーツマン"を味わえた。
 
 アンコールの拍手にのって、細野が現れる。女性コーラス二人を連れて。
「アメリカにもカントリーがあるように、日本にも民謡があります」
 演奏は"幸せハッピー"かな?いまひとつ曲に自信なし。とにかく歌詞でこの節を幾度も繰り返した。

「みんな、出てきて〜」
 細野の呼びかけで、ステージにマイクが一杯たつ。出演者が片端から舞台にのった。
 ヴァン・ダイクはコシミハルのアコーディオンを持って、ステージ前に出た。
 曲はもちろん"さよならアメリカ、さよならニッポン"。シンプルなリフレインが軽やかに続く。『ヨーイトナット』はなかったな。

 終わるなり"ハッピー・バースディ"を歌い始めたのはサンディだったか。
 細野の誕生日は7月9日らしいが、イベントにあわせたらしい。メロディを聴きながら、細野は照れくさげに、ステージ中央奥へ座り込んでしまう。
 袖からケーキが登場。細野は立ち上がり微笑みながら、ろうそくを吹き消した。
 キーボードを弾いてるのが坂本龍一。アコーディオンがヴァン・ダイク。
 坂本の手合図で"ハッピー・バースディ"を終わらす光景は、良く考えたら凄まじく贅沢だ。

 拍手は続く。改めて、細野、坂本、幸宏が現れた。
「"ライディーン"、やるの?」
 細野がつぶやき、おおっと身を乗り出す。ところが続いて現れたヴァン・ダイクが
「Yellow Magic Orchestra! I like it! Sayonara!」
 と叫んだもんだから、そのままなし崩しに袖へ去ってしまった。うーむ、残念。

 ともあれ第二部は、今の細野の志向をどっぷり表現した"現役感覚"のステージだった。
 嗜好はレイドバックながら。着実なバックに支えられ、軽やかに音楽と戯れる細野の姿。そして提示されるリラックスした音楽が、なんとも楽しい。
 アルバム"Flying Saucer 1947"は9/26発売だそう。二日間で9曲レコーディング、とある。発売が待ち遠しい。

 願わくばその後、じっくりライブをフルセットで聴きたい。
 肩の力を抜いて冗談交じりのMCを取り混ぜた、細野の演奏姿を改めてライブで味わいたい。

<第二部:セットリスト(不完全)>19:35〜20:35
1.未知との遭遇(テーマ)
2.As soon as possible(?)(新曲)
3.ボディ・スナッチャーズ
4.(?)(カバー)
5.モーガン・ブギ(?)(カバー?)
6.ピストル・パッキング・ママ(カバー?)
7.ミスター・サンドマン
8.(?):+ヴァン・ダイク・パークス、坂本龍一
9.Pom Pom 蒸気
10.スポーツマン:+高橋幸宏
(アンコール)
11.幸せハッピー
12.さよならアメリカ、さよならニッポン

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